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CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

心不全とは?(Fig.3) 心機能低下に起因する循環不全 と定義され 心臓が全身の組織における代謝の必要量に応じて 血液を十分駆出できない状態です 発症の仕方により 急性心不全 (acute heart failure:ahf) と慢性心不全 (chronic heart failure:chf)

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

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エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

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上原記念生命科学財団研究報告集, 27 (2013) 151. オートファジーからみた重症心不全に対する左室形成術の効果 新宮康栄 Key words: オートファジー, 左室形成術 * 北海道大学病院循環器外科 緒言左室形成術は左心室容積を縮小させることで, ラプラスの法則 ( 球体の壁応力は内圧と半径に比例し, 壁厚に反比例する ) により壁応力を減少させ心機能を改善させる可能性がある. 臨床においては 2004 年に欧米を中心とした RESTORE グループが左室縮小術の多施設共同研究を発表した. 手術死亡率 5.3%,5 年生存率 69% と比較的良好な成績であった 1). 一方, これを契機に施行された STICH trial の結果が 2009 年に報告され, 虚血性心筋症に対する左室形成術の心不全症状と生存率における有意性が否定された 2). 心筋症に対する左室形成術の効果や適応に関してはいまだ議論の余地がある. 左室形成術の長期的な効果や問題点を明らかにするためには, 心臓ポンプ機能と心筋エネルギー効率の観点からの研究が必要であると考える. 心不全のあらたなメカニズムとして近年心筋オートファジー (self-eating or self-digestion pathway) が脚光を浴びている. 心筋オートファジーの大きな役割は細胞内蛋白や構造物の品質管理をすることで細胞の生存に寄与することと, 病的な構造物を分解することで細胞死の抑制に寄与することである. オートファジーには異常な細胞内蛋白や構造物を Autophagosome に取り込み,lysosome で最終的に分解し再度 ATP 産生のエネルギー源とする働きもあり, さまざまな病態での研究がすでに行われている 3). 今回, ラットの虚血性心筋症モデルを用いて左室縮小術のポンプ機能に対する効果と, 心筋エネルギー代謝に大きく関係する心筋オートファジーとの関連を検討した. 方法週令 10 週のラット ( 雄 ) を用いて全身麻酔, 気管挿管下に左開胸にて左前下行枝を結さつして左室前壁の広範囲心筋梗塞を作製した. 心筋梗塞作製 4 週後に再度正中より開胸し心筋梗塞部を肉眼で確認し 7-0 プロリン糸のマットレス縫合および連続縫合で縫縮した ( 左室縮小術群 :AMI/LVP 群, n=4).ami/sham 群 (n=6) では開胸のみ施行し左室形成を施行しなかった. 心筋梗塞作製も左室縮小術も施行しない群を sham/sham 群 (n=4) とした. 左室形成 4 週後にケタミン, キシラジンによる全身麻酔下に心エコー, 心カテーテル検査を施行し心機能を評価する. その後ラットを犠牲死させ, 心筋重量と肺重量を測定後に液体窒素内に心筋を入れ - 80 で保管した. 後日 Western blotting 法を用いてオートファジーのパラメーターである LC-3 蛋白を定量した ( 図 1). 連続変数は平均値 ± 標準偏差で表示した.3 群間の統計学的比較には one-way ANOVA を用い,post-hoc 解析には Tukey 法を用いた.P 値が 0.05 未満を統計学的な有意差とした. * 現所属 : 北海道大学病院循環器 呼吸器外科 1

図 1. 実験プロトコール. 結果図 2 に 3 群の左室心筋重量 / 体重比および肺重量 / 体重比を示す. 左室心筋重量 / 体重比は群間に有意差はなかった. 肺うっ血の程度を反映する肺重量 / 体重比は有意差ないものの AMI/sham 群において最も大きい傾向にあった (p=0.06). 図 2. 左室心筋重量 / 体重比および肺重量 / 体重比. 図 3 に 3 群の左室駆出率および左室拡張末期径を示す. 左室駆出率は AMI/sham 群と AMI/LVP 群において sham/sham 群と比較して有意に低値であった.AMI/sham 群に比較して AMI/LVP 群で左室駆出率が大きい傾向にあったが有意差はなかった (37±10 % vs 29±6 %, p=0.20). 左室拡張末期径は AMI/sham 群と AMI/LVP 群において sham/sham 群と比較して有意に高値であった.AMI/sham 群と AMI/LVP 群に差はなかった. 左室形成術 4 週後 2

において左室形成術は左室駆出率を改善する傾向にあったが, 左室基部のリモデリング ( 拡大 ) に対する影響はなかっ た. 図 3. 左室駆出率および左室拡張末期径. **p<0.01 vs sham/sham 群, 図 4 に 3 群の大動脈および左室カテーテル検査結果を示す. 平均大動脈圧は群間に有意差はなかったが AMI/LVP 群においてやや低値を示した. 左室拡張末期圧は AMI/sham 群において sham/sham 群と比較して有意に高値を示した.AMI/LVP 群と sham/sham 群の差はなかった. 左心室の拡張能および収縮能のパラメーターの一つである min dpdp と max dpdt は AMI/sham 群と AMI/LVP 群において sham/sham 群と比較して低い傾向にあった.AMI/ sham 群と AMI/LVP 群に差はなかった. 左室形成術は左室充満圧を低下させる効果を認めたが, 能動的拡張能と収縮能に対する影響はなかった. 3

図 4. 大動脈および左室カテーテル検査結果. *p<0.05, **p<0.01 vs sham/sham 群, 図 5 に 3 群のオートファジーの程度を反映する LC3-II 蛋白の発現の結果を示す.AMI/sham 群では sham/sham 群 と AMI/LVP 群に比較して有意に LC3-II 蛋白の発現が大きかった (p<0.001).ami/lvp 群と sham/sham 群の差は なかった. 4

図 5. ウェスタンブロッティングによる LC3-II 蛋白の発現の結果. **p<0.01 vs sham/sham 群,##p<0.01 vs AMI/LVP, 考察慢性期心筋梗塞心 (8 週間 ) において心筋オートファジーは有意に亢進していたが, 梗塞心に対する4 週後の左室形成術 ( 縮小術 ) は心筋オートファジーをコントロール群 (sham/sham 群 ) と同程度まで低下させていた. これは, 左室拡張末期圧の低下および肺うっ血の軽減効果と連動していた. 一方, 左室のリモデリング ( 拡大 ) や拡張能, 収縮能との関連は認められなかった. 左室形成術による左室拡張末期圧の軽減や肺うっ血の改善効果は臨床的にも心不全症状の改善効果を示唆するものであり重要である. 今回示された左室形成術によるオートファジーの抑制は左室内圧の低下と関連している可能性がある. 慢性心筋梗塞においては左室充満圧の上昇に伴い, 心筋エネルギー代謝効率が低下して相対的に ATP 産生が低下しオートファジーの活性化に関連していると推察する. 左室形成術は左室充満圧の低下により, 心筋エネルギー代謝を改善し相対的に ATP 産生を増加させている可能性がある. 今後は遺伝子発現レベルでも左室形成術がオートファジーを抑制しているかどうかと ATP 産生に関する検証が必要である. また, 左室形成術においてオートファジーを逆に活性化することで今回は示されなかった拡張能, 収縮能の改善や心拍出量, 体血圧の増加, 心筋リモデリングの改善につながるかどうかが今後の検討課題であり, 重症心不全治療の発展に寄与する可能性がある. 最後に, 本研究に御支援を賜りました上原記念生命科学財団に深く感謝申し上げます. 文献 1) Suma, H., Isomura, T., Horii, T., Buckberg, G. & the RESTORE Group : Role of site selection for left ventriculoplasty to treat idiopathic dilated cardiomyopathy. Heart Fail. Rev., 9 : 329-336, 2004. 2) Jones, R. H., Velazquez, E. J., Michler, R. E., Sopko, G., Oh, J. K., O'Connor, C. M., Hill, J. A., Menicanti, L., Sadowski, Z., Desvigne-Nickens, P., Rouleau, J. L. & Lee, K. L., for the STICH Hypothesis 2 Investigators : Coronary bypass surgery with or without surgical ventricular reconstruction. New Engl. J. Med., 360 : 1705-1717, 2009. 3) Kanamori, H., Takemura, G., Goto, K., Tsujimoto, A., Ogino, A., Takeyama, T., Kawaguchi, T., Watanabe, T., Morishita, K., Kawasaki, M., Mikami, A., Fujiwara, T., Fujiwara, H., Seishima, M. & Minatoguchi, S. : Resveratrol reverses remodeling in hearts with large, old myocardial infarctions through enhanced autophagy-activating AMP kinase pathway. Am. J. Pathol., 182 : 701-713, 2013. 5