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熱力学 Ⅱ 第 章自由エネルギー システム情報工学研究科 構造エネルギー工学専攻 金子暁子

問題 ( 解答 ). 熱量 Q をある系に与えたところ, 系の体積は膨張し, 温度は上昇した. () 熱量 Q は何に変化したか. () またこのとき系の体積がV よりV に変化した.( 圧力は変化無し.) 内部エネルギーはどのように表されるか. また, このときのp-V 線図を示しなさい.. 不可逆過程の例を 3 つ以上挙げよ.

問題 ( 解答 ) () 熱量 Qは系の分子の運動エネルギー ( 内部エネルギー ) と仕事 ( 系の膨張 ) に変化した. () 熱力学の第 法則より内部エネルギーは ΔQ = ΔU + ΔW = Δ U + = ΔU + ΔU = ΔQ p Δ V ( ) p V V p V V ( ) p 仕事 V V V

問題 ( 解答 ). 不可逆過程の例を3つ以上挙げよ. ---------------- 摩擦 気体の自由膨張 異なる物質の混合 化学反応 有限温度差の伝熱 塑性変形 抵抗を流れる電流... など

自由エネルギー 熱力学第 法則 エネルギーの保存 熱力学第 法則 エネルギーの移動の方向 ( 可逆変化, 不可逆変化, エントロピー増加 ) 自然に放置 Q H 大気に熱を放出 T 0 T 0 <T<T H T H T 0 熱機関を設置 T 0 <T<T H Q H Q L T 0 仕事を発生 W 仕事を発生する潜在能力

自由エネルギー 周囲と熱的 力学的 化学平衡でない系は, 自然に放置すれば外部に何も仕事をせずに平衡状態に戻ってしまう. ここに何らかの装置を付加することにより, 仕事を発生する可能性を持つ. 自由エネルギーとは発生可能な仕事の潜在能力.

自由エネルギーとエクセルギー エクセルギーと自由エネルギー基本的な考え方は同じ. その違いは, 過程および最終平衡条件にある. 自由エネルギーの場合は, 等温 等圧 あるいは 等温 等積 の条件における最大仕事エクセルギーの場合は, 可逆過程 であれば, どのような経路であってもよい. ギブス自由エネルギー (Gibbs free energy) 等温 等圧等圧 気体の状態変化ヘルムホルツ自由エネルギー (Helmholtz free energy) 等温 等積等積 固体 液体の状態変化

自由エネルギー (Free energy) 周囲と熱力学的平衡にない系から有効な仕事を外部に取り出 す方法. 熱 媒体の温度上昇 ( 内部エネルギーの増加 ) 媒体の体積膨張 pv 仕事の発生 エネルギー変換の方法は様々化学結合エネルギー熱エネルギー化学結合エネルギー 化学反応による仕事についても熱力学の手法で扱うことができる.

自由エネルギー (Free energy) 等温 T で A の外から内へ, 熱 ΔQ が伝わる場合, A 内のエントロピー変化 : ΔS A 外のエントロピー変化 : ΔQ ΔS E = T A ΔQ 罕片 T ΔS E ΔS ΔS T 全体のエントロピー変化 : ( 熱力学第二法則より ) ΔS T 0

自由エネルギー (Free energy) 全体で Δ S + Δ S E = Δ S T が成り立つから, A ΔQ ΔS E ΔS T ΔQ ΔSΔ S = Δ S T T 0 より TΔS Δ Q 罕片 T ΔS 熱力学第一法則から, Δ Q = ΔU + ΔW を上式に代入して, TΔ S ΔU + ΔW ( ΔU TΔS ) ΔW ここで, 等温なので Δ( U TS) ΔW すなわち, U TS の減少量が仕事に変換される TS は, 熱力学第二法則により制限を受け, 利用できないエネルギーを表している. U TS TS : 自由エネルギー : 束縛エネルギー

ヘルムホルツ自由エネルギー (Helmholtz free energy) 閉じた系の等温 等積過程について可逆過程において体積膨張以外の仕事 dl Ch を考えると dq = TdS = du TdS = du + + dl Ch pdv + dl Ch したがって dl Ch = du TdS = d ( ) U TS この式を積分することによって, ( L ) = ( U TS ) ( U TS ) L Ch max

ここで F ヘルムホルツ自由エネルギー (Helmholtz free energy) = U TS をヘルムホルツの自由エネルギー ( ヘルムホルツ関数 )F と定義する.Fは, 状態量である. よって, ( ) = F F = ΔF. L Ch max 等温 等積過程における化学反応等による最大仕事等積過程における化学反応等による最大仕事 ( 可逆 ) は, ヘルムホルツの自由エネルギーの減少量に等しい. ここで G = F + pv.

< ヘルムホルツの自由エネルギー (Helmholtz s free energy)> 等温定容変化の場合, 内部エネルギー U から束縛エネルギー TS を引けば, ヘルムホルツの自由エネルギーが得られる. F = U TS ヘルムホルツの自由エネルギー F は状態量である. 固体 液体の状態変化の方向を示すために用いられる. dq < 倌嚊鐃 S S T = 嚊鐃 dq T ds dq TdS

< ヘルムホルツの自由エネルギー (Helmholtz s free energy)> 熱力学第 基礎式 dq = du + pdv を代入して, du + pdv du TdS TdS pdv ヘルムホルツの自由エネルギーの定義 F = U TS より, 等温変化なので, df = du d( TS) = du TdS これを代入して, df pdv さらに, 定容変化なので, dv = 0 df 0 < 倌嚊鐃 = 嚊鐃 等温定容不可逆変化ではヘルムホルツの自由エネルギー F は必ず減少し, 可逆変化ならば変わらない.

[ 可逆的な化学反応による理論最大仕事 ] 閉じた系の体積変化による微小仕事 pdvのほかに化学反応による仕事 dl Ch を発生する場合 熱力学の第一法則は dq = du + pdv + dl Ch ここで dq = TdS ( エントロピーの定義式 ) より TdS + = du + pdv dl Ch

[ 可逆的な化学反応による理論最大仕事 ] 温度 圧力を一定とし で積分すると ここで T G ds = du + p dv + = U + pv TS dl ( L ) ( ) ( U + pv TS ) Ch = U = H max + pv TS TS を, ギブスの自由エネルギー ( ギブス関数 )G と定義する. G は, 状態量である. Ch

[ 可逆的な化学反応による理論最大仕事 ] ( ) = ( U + pv TS ) ( U + pv TS ) L Ch max = G G ( ) = G + G = ΔG. L Ch max 化学反応 ( 等温 等圧 ) の理論最大仕事 等温 等圧過程の可逆の化学反応による最大仕事はギブスの自由エネルギーの減少量に等しい.

<ギブスの自由エネルギーギ (Gibbs free energy)> 等温定圧変化の場合 エンタルピー H から束縛エネルギー TS を引けば, ギブスの自由エネルギー : が得られる. G = H TS G = H TS = U + pv TS = ( U TS) + pv = F + pv 気体 ( まれに液体 ) で用いられることが多い. 多くの化学実験は大気圧下で行われるので, 化学平衡の平衡定数を定めるために用いられることが多い. ギブスの自由エネルギーギは状態量である. dq T dq T S ds dq TdS S G < 倌嚊鐃 = 嚊鐃

< ギブスの自由エネルギー (Gibbs free energy)> 熱力学第 基礎式 dq = dh Vdp を代入して, dh Vdp TdS dh TdS Vdp ギブスの自由エネルギーの定義の定義 G = H TS より, 等温変化なので, dg = dh d ( TS ) = dh TdS これを上式に代入して, さらに定圧変化なので, dp = 0 < 倌嚊鐃 dg 0 = 嚊鐃 dg Vdp すなわち, 等温定圧不可逆変化ではギブスの自由エネルギー G は必ず減少し, 可逆変化ならば変わらない.

変化の方向を支配する因子 自発的な変化は系のエンタルピーが減少する方向に起こりやすい. ΔH = ΔU + Δ ( pv ) < 0. 系のエントロピーが増大する方向に起こりやすい. ΔS > 0. 例 : 大気圧での水の蒸発エンタルピー : 蒸発には多量の蒸発熱が必要 ( H > 0). エントロピー : 水蒸気の方がエントロピー増加. 蒸発 : エンタルピー増加 平衡 : エンタルピー減少? 液化 : エントロピー減少エントロピー増加? 水の蒸発の変化の方向

変化の方向を支配する因子 ある状態でのエントロピー変化の総和を考える. ΔS total = ΔS + ΔS Δ H = ΔS. T 両辺に-T をかけると, surrounding TΔStotal = ΔH TΔS ここでギブスの自由エネルギー (Gibbs free energy) G より TΔStotal = ΔG ΔG は -TΔS total を置き換えたものに相当.

変化の方向を支配する因子 等温 等圧の変化ではギブスの自由エネルギーの等圧の変化ではギブスの自由エネルギの変化 ΔGの正負が変化の方向を示す. 自発的な変化では ΔS total T Δ S > 0 ttl total = Δ G < 0 ΔG < 0: 自発的な変化 ΔG > 0: 非自発的な変化 ΔG = 0: 平衡状態 不可逆変化では系のギブスの自由エネルギーは必ず減少する.

変化の方向を支配する因子 同様に 等温 等積過程では熱の出入り ΔQ は系の内部エネルギーの変化 ΔU に 等しいため ΔS total = ΔS + ΔS surrounding Δ U = ΔS. T TΔS = ΔU TΔS. total ヘルムホルツの自由エネルギー (Helmholtz free energy) F より TΔStotal = ΔF

変化の方向を支配する因子 等温 等積過程ではヘルムホルツの自由エネルギーの変化 ΔFの正負が変化の方向を示す. 自発的な変化では > 0 ΔS total TΔS total = ΔF < 0 ΔF < 0: 自発的な変化 ΔF > 0: 非自発的な変化 ΔF = 0: 平衡状態 不可逆変化では系のヘルムホルツの自由エネルギーは必ず減少する. G = H TS F = U TS F,G: 自由エネルギー TS: 束縛エネルギー 仕事に変換されないエネルギー例えば系の温度を保つために必要なエネルギー

問題 熱容量が無限に大きな断熱孤立系 A,B がある. 系の温度は各々 T,T(T > T) とする. 図のように系を接触 させ, わずかな熱 ΔQ がAからBへ移動したとき, 各系および系全体でのエントロピーの変化量を求めよ. A ΔQ B T T エントロピーの変化

問題 3 燃料電池に応用される次の反応について答えよ. H (g) + O (g) H O(l) ただし,5 における標準エントロピーは各々以下の通り. H (g):30.6 J/Kmol, O (g):05.0 J/Kmol, H O(l):69.9 J/Kmol 5 における標準生成エンタルピーは H O(l):-85.8 8 kj/mol 5 における標準生成自由エネルギーは H O(l):-37 kj/mol () 反応系の5 における標準エントロピーの変化を求めよ. () 反応系を取りまく外界の5 における標準エントロピー変化を求めよ. (3) 5 における全体の標準エントロピー変化を求めよ. (4) この反応は自発的に起こるか否か. (5) この反応の 5 におけるギブスの標準自由エネルギーの変化をギ求めよ.

問題 4.00, 気圧で水 mol が水蒸気に変わる時のヘルムホルツの自由エネルギーの変化を求めよ. ただし, 気体定数 R=8.3 J/Kmol とする..00, 気圧で水 molが水蒸気に変わる時のギブスの自由エネルギーの変化を求めよの変化を求めよ. いずれの反応も理想的な状況で進行すると仮定する.