■リアルタイムPCR実践編

Similar documents
はじめてのリアルタイムPCR

PrimeScript RT reagent Kit (Perfect Real Time)

PrimeScript™ RT reagent Kit (Perfect Real Time)

Human Housekeeping Gene Primer Set, Mouse Housekeeping Gene Primer Set, Rat Housekeeping Gene Primer Set

PrimeScript® II 1st strand cDNA Synthesis Kit

Multiplex PCR Assay Kit

IFN Response Watcher(for RNAi experiment)

TB Green™ Fast qPCR Mix

Probe qPCR Mix

TB Green™ Premix Ex Taq ™ II (Tli RNaseH Plus)

SYBR® Premix Ex Taq ™ (Perfect Real Time)

Premix Ex Taq ™ (Probe qPCR), ROX plus

リアルタイムRT-PCR実験法

Multiplex PCR Assay Kit Ver. 2

Pyrobest ® DNA Polymerase

Premix Ex Taq ™ (Perfect Real Time)

取扱説明書

リアルタイムPCR実験のためのガイドライン

遺伝子検査の基礎知識

PrimeScript® RT-PCR Kit

PrimeScript®One Step RT-PCR Kit Ver. 2

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

【 目 次 】

解析法

リアルタイムPCRの基礎知識

MightyAmp™ DNA Polymerase Ver.3

取扱説明書

PrimeScript® One Step RT-PCR Kit Ver. 2 (Dye Plus)

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

【 目 次 】

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set

遺伝子検査の基礎知識

TaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0

PrimeSTAR® Max DNA Polymerase

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set

BKL Kit (Blunting Kination Ligation Kit)

手順 ) 1) プライマーの設計 発注変異導入部位がプライマーのほぼ中央になるようにする 可能であれば 制限酵素サイトができるようにすると確認が容易になる プライマーは 25-45mer で TM 値が 78 以上になるようにする Tm= (%GC)-675/N-%mismatch

17-05 THUNDERBIRD SYBR qpcr Mix (Code No. QPS-201, QPS-201T) TOYOBO CO., LTD. Life Science Department OSAKA JAPAN A4196K

Microsoft Word - KOD-201取説_14-03_.doc

るため RNA ウイルス遺伝子や mrna などの RNA を検出する場合には予め逆転写酵素 (RNA 依存性 DNA ポリメラーゼ ) により DNA に置換する逆転写反応を行う必要がある これを Reverse Transcription-PCR(RT-PCR) という PCR 法によれば 検査

PrimeSTAR® GXL DNA Polymerase

Human Mitochondrial DNA (mtDNA) Monitoring Primer Set

Microsoft Word - ~ doc

5’-Full RACE Core Set

PrimeSTAR® HS DNA Polymerase

2 被検材料逆転写反応は AI ウイルス陽性 RNA(H3 H5 H7eu H7am) を鋳型とし 酵素に M-MuLV Reverse Transcriptase プライマーに Random 6 mers を使用し相補鎖 DNA( 以下 cdna) を合成した 反応条件は 37 で 15 分 85

Quick guide_GeneArt Primer and Construct Design Tool_v1(Japanese)

3'-Full RACE Core Set

Virus Test Kit (HIV, HTLV, HCV, HBV, ParvoB19) Ver.2

PrimeSTAR® Mutagenesis Basal Kit

DNA/RNA調製法 実験ガイド

DNA シークエンス解析受託サービスを効率よく利用して頂くために シークエンス解析は お持ち頂くサンプルの DNA テンプレートの精製度 量 性質によ って得られる結果が大きく左右されます サンプルを提出しても望み通りの結果が返っ てこない場合は 以下の点についてご検討下さい ( 基本編 ) 1.

DNA Fragmentation Kit

16S (V3-V4) Metagenomic Library Construction Kit for NGS

- 目 次 -

遺伝子検査の基礎知識

遺伝子検査の基礎知識

PowerPoint プレゼンテーション

平間崇 PCR,RT-PCR,real-time PCR 1047 講 座 研究手法入門 : 生化学的 免疫学的実験法 PCR,RT-PCR,real-time PCR 平間 崇 要 旨 PCR は, 基礎研究や臨床検査などの幅広い分野において欠かせない手法として確立している PCR,RT-PCR,

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

リアルタイム PCR 用試薬 Luna Universal qpcr & RT-qPCR be INSPIRED drive DISCOVERY stay GENUINE

NGS_KAPA RNA HyperPrep Kit

LA PCR™i n vitro Cloning Kit

鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス検出マニュアル(第2版)公開用

Tks Gflex™ DNA Polymerase

QuickPrimer 結果判定用エクセルシート は QuickPrimer (Real Time) シリーズ病原因子遺伝子検出用 ( 製品コード MR101 ~ MR107 MR109 ~ MR113) および細菌遺伝子 (16S rdna) 検出用 ( 製品コード MR201 ~ MR205 M

Tks Gflex® DNA Polymerase

EpiScope® ChIP Kit (anti-mouse IgG)

O-157(ベロ毒素1 型、2 型遺伝子)PCR Typing Set Plus

Bacterial 16S rDNA Clone Library Construction Kit

TaKaRa PCR FLT3/ITD Mutation Detection Set

Microsoft Word - NPK-801F取説(10-04) doc

Western BLoT Immuno Booster

(2) (2) (3) (3) (5) ABI PRISM 7700 (5) Roche LightCycler TM (7) BioFlux LineGene (9) 1 RT-PCR (10) (12) (13) F. Hoffmann-La Roche Ltd. Roche Molecular

- 目 次 -

酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は

MLPA 法 Q&A 集

CycleavePCR™ Library Quantification Kit (for Illumina)

無細胞タンパク質合成試薬キット Transdirect insect cell

Microsoft Word - H30eqa麻疹風疹実施手順書(案)v13日付記載.docx

Oligotex ™-dT30 <Super> mRNA Purification Kit (From total RNA)

実験操作方法

O-157(ベロ毒素1 型、2 型遺伝子)One Shot PCR Typing Kit Ver.2

(2) (2) (3) (3) (4) ABI PRISM 7700 TaqMan (4) Roche LightCycler TM (5) BioFlux LineGene TaqMan (6) 1 RT-PCR (7) (9) (10) F. Hoffmann-La Roche Ltd. Roc

遺伝子検査の基礎知識

Mighty TA-cloning Kit/Mighty TA-cloning Kit for PrimeSTAR

Microsoft Word - dcasdf003_dstd_ doc

取扱説明書

in vitro Transcription T7 Kit (for siRNA Synthesis)

ISOSPIN Blood & Plasma DNA

PowerPoint プレゼンテーション

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery

Cycleave®PCR 呼吸器系感染症起因菌検出キットVer.2(製品コード CY214) 補足

PCR4_1113

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g

Western BLoT Rapid Detect

Microsoft Word - ケミストリープロトコル_v5_2012_Final.doc

untitled

cDNA cloning by PCR

Transcription:

リアルタイム PCR 実践編 - SYBR Green I によるリアルタイム RT-PCR - 1. プライマー設計 (1)Perfect Real Time サポートシステムを利用し 設計済みのものを購入する ヒト マウス ラットの RefSeq 配列の大部分については Perfect Real Time サポートシステムが利用できます 目的の遺伝子を検索して購入してください (2) カスタム設計サービスを利用する Perfect Real Time サポートシステムでプライマーが用意されていない遺伝子や ヒト マウス ラット以外の生物種については カスタム設計サービスを利用できます 詳しくは 弊社販売課にお問合せください (3) 自分で設計する プライマー設計ガイドライン を参照して設計してください 2.SYBR Green I によるリアルタイム RT-PCR (1) 用意するもの ( 主なもの ) SYBR PrimeScript RT-PCR Kit II (Perfect Real Time) ( 製品コード RR083A) リアルタイム PCR 用プライマー 鋳型(total RNA) リアルタイム PCR 装置と専用チューブ タカラバイオリアルタイム PCR 実験ガイド Page 1 of 5 0805V1.0

(2) プロトコール逆転写反応 1. 下記に示す逆転写反応液を氷上で調製する RNA サンプル以外のコンポーネントを必要本数 +α 調製し マイクロチューブに分注後 RNA サンプルを添加すると良い <1 反応あたり> 試薬 使用量 最終濃度 ( または添加量 ) 5 PrimeScript Buffer (for Real Time) 2μl 1 PrimeScript RT Enzyme Mix I 0.5μl 0.5 mm Oligo dt Primer(50μM) *1 0.5μl 25 pmol Random 6 mers (100μM) *1 0.5μl 50 pmol total RNA RNase Free dh2o Total 10μl *2 *1 Random 6 mers と Oligo dt Primer の両方を用いると mrna 全長にわたり効率よ く cdna が合成されます なお 各プライマーを単独で用いる場合および Gene Specific Primer の場合の使用量は以下の通りです 使用量 添加量 Oligo dt Primer (50μM) 0.5μl 25 pmol Random 6 mers(100μm) 0.5μl 50 pmol Gene Specific Primer (2μM) 0.5μl 1 pmol *2 逆転写反応は 必要に応じてスケールアップすることも可能です 10 μl の反 応液で逆転写できるのは およそ 500 ng までの total RNA です 2. 逆転写反応を行う *3 37 15 分 ( 逆転写反応 ) 85 5 秒 ( 逆転写酵素を熱失活させる ) 4 *3 Gene Specific Primer を用いる場合には 逆転写反応を 42 15 分で行う PCR で非特異的な増幅が生じた場合には 逆転写温度を 50 に変更すると改善される場合がある タカラバイオリアルタイム PCR 実験ガイド Page 2 of 5 0805V1.0

リアルタイム PCR 反応 (Thermal Cycler Dice Real Time System を用いる場合 ) 1. 下記に示す PCR 反応液を氷上で調製する <1 反応あたり> 試薬 使用量 最終濃度 ( または添加量 ) SYBR Premix Ex Taq II(2 ) 12.5μl 1 PCR Forward Primer(10 μm) 1μl 0.4μM *1 PCR Reverse Primer(10 μm) 1μl 0.4μM *1 Template(<100 ng) 2μl *2 dh2o( 滅菌蒸留水 ) 8.5μl Total 25μl *3 *1 最終 primer 濃度は 0.4μM で良い結果が得られる場合が多いが 反応性に問題があるときは 0.2~1.0μM の範囲で最適な濃度を検討すると良い *2 template 溶液中に存在するターゲットのコピー数により異なる 段階希釈して適当な添加量を検討する DNA template 100 ng 以下を用いることが望ましい また RT-PCR で cdna (RT 反応液 ) を template として添加する場合は PCR 反応液容量の 10% 以下になるようにする *3 反応液量は 25μl を推奨 2. 反応を開始する 反応チューブを軽く遠心後 リアルタイム PCR 装置にセットし 反応を開始す る ( サイクル条件は以下を参照 ) (3) リアルタイム PCR 反応条件 シャトル PCR 標準プロトコール PCR 反応は 下記のシャトル PCR 標準プロトコールで行うことをお勧めします アニーリング / 伸長時間は 20~30 秒に設定できますが より安定した結果が得られる 30 秒で まずお試しください Tm 値が低めのプライマーなど シャトル PCR での反応が難しい場合には 3 ステップ PCR を行います ( 初期変性 ) 95 10 秒 (PCR 反応 :30~45 サイクル ) 95 5 秒 60 20 秒 * タカラバイオリアルタイム PCR 実験ガイド Page 3 of 5 0805V1.0

( 融解曲線分析 ) * 使用するリアルタイム PCR 装置によっては 30 秒 (31 秒 34 秒 ) 以上の設定が必要 初期変性 RT-PCR を行う際には初期変性は 10 秒に設定します 通常 鋳型がゲノム DNA の場合は 30 秒程度の初期変性を行いますが 500 bp 以下の鋳型では初期変性は不要な場合もあります PCR 反応 PCR 反応は シャトル PCR で行います プライマーと鋳型 DNA のアニーリングが高温で行われるので 3 ステップ PCR に比べてより特異性の高い PCR 反応を行うことができます また 反応所要時間も短く 上記条件で Smart Cycler によるリアルタイム PCR 反応を行うと 融解曲線分析まで含め 40 分以内に終了します PCR 反応条件の至適化 ほとんどの場合 PCR 反応条件の至適化は必要ありませんが 反応性に問題がある ときは 下記の手順で至適化を行います 反応条件の至適化( より効率の良い PCR 条件を探す ) プライマーの配列によっては アニーリング / 伸長反応ステップの温度を 60 よりも高めに設定すると PCR 効率が良くなることがあります アニーリング / 伸長反応ステップの温度を上げると プライマーと鋳型 DNA のアニーリングは起こりにくくなりますが DNA ポリメラーゼの活性は上昇します よって 高温でも十分にアニールできるプライマーでは 62~66 で良い結果が得られます また 短い DNA を鋳型とする場合には 変性のステップを短縮し PCR 反応時間を短くすることができます 反応性が悪い場合やプライマーの Tm 値が適正範囲より低い場合 Tm 値が適正な範囲よりも低いプライマーを使用する場合には 上記の標準プロトコールでは PCR できないことがあります そのような場合には アニーリング / 伸長反応ステップの時間を延ばすか 3 ステップの PCR を行います 反応性が悪い場合の対処方法も同じです 非特異的増幅が起こりやすい場合やプライマーの Tm 値が適正範囲より高い場合 プライマーの 3' 末端配列に相補性があるとプライマーダイマーが生じやすく 3' 末 端が GC リッチなものや Tm 値が適正な範囲を超えているようなものは 非特異的 タカラバイオリアルタイム PCR 実験ガイド Page 4 of 5 0805V1.0

増幅が起こりやすくなります このようなプライマーでは アニーリング / 伸長反応ステップの温度を上げるかプライマー濃度を下げることにより改善する場合があります しかし 非特異的増幅の抑制は PCR 反応条件の変更だけでは対処できないケースが多いので プライマーを設計する際に できるだけ特異性が高く反応性の良いプライマーを選択することが重要です (4) 留意点 RT-PCR を行う場合 mrna だけではなく混入したゲノム DNA も鋳型となり得ます ゲノム DNA 由来の検出を避けるためには PCR 用プライマーがエキソンジャンクションを挟むように設計します プライマーに挟まれたイントロンのサイズが十分に大きければ ゲノム由来の増幅は起こりませんが シングルエキソンの遺伝子など ゲノム由来の増幅を避けるプライマー設計が難しい場合には 逆転写酵素を添加しないコントロール反応を行います このコントロール反応によって ゲノム DNA の混入をチェックすることができます タカラバイオリアルタイム PCR 実験ガイド Page 5 of 5 0805V1.0