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家 畜 感 染 症 学 会 誌 2 巻 1 号 2013 図 1 抗 生 物 質 の 作 用 部 位 ました 1) 細 胞 壁 合 成 阻 害 細 胞 壁 の 合 成 を 阻 害 する 抗 生 物 質 には β- ラクタム 系 ホスホマイシン ビコザマイシン バンコマイシン バシトラシンなどが 含

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図 1 薬剤耐性菌とは? 抗菌剤 ( 抗生物質や合成抗菌剤 ) が効かない細菌のことです 抗菌剤 抗菌剤があっても生存 増殖 ( 薬剤耐性菌 ) 抗菌剤により死滅 ( 感受性菌 ) (2) 薬剤耐性問題と畜産との関わり 物を安定生産するために必要不可欠な資材で す しかし 抗菌剤の使用により 薬剤耐

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2


2.7.3(5 群 ) 呼吸器感染症臨床的有効性グレースビット 錠 細粒 表 (5 群 )-3 疾患別陰性化率 疾患名 陰性化被験者数 / 陰性化率 (%) (95%CI)(%) a) 肺炎 全体 91/ (89.0, 98.6) 細菌性肺炎 73/ (86

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現在 乳房炎治療においては 図 3に示す多くの系統の抗菌剤が使用されている 治療では最も適正と思われる薬剤を選択して処方しても 菌種によっては耐性を示したり 一度治癒してもすぐに再発することがある 特に環境性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌の場合はその傾向があり 完治しない場合は盲乳処置や牛を廃用にせざるを

表 症例 の投薬歴 牛 8/4 9 月上旬 9/4 9/5 9/6 9/7 9/8 9/9 3 Flu Mel TMS Flu Mel Flu Mel Flu 体温 :39.0 体温 :38.8 : エンロフロキサシン Flu: フルニキシンメグルミン Mel: メロキシカム : ビタミン剤 TMS

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中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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背景 ~ 抗菌薬使用の現状 ~ 近年 抗微生物薬の薬剤耐性菌に伴う感染症の増加が国際的にも大きな課題の一つに挙げられている 欧州及び日本における抗菌薬使用量の国際比較 我が国においては 他国と比較し 広範囲の細菌に効く経口のセファロスポリン系薬 キノロン系薬 マクロライド系薬が第一選択薬として広く使

932 Vol. 127 (2007) ためには,Cmax/AUC と治療効果と相関のあるアミノ配糖体薬,AUC/MIC と相関のあるキノロン薬 (Cmax/MIC とも相関性が認められるが AUC/ MIC の方がよりよい相関性が認められている ) では 1 回投与量を増大することが考えられる.

(4) 薬剤耐性菌の特性解析に関する研究薬剤耐性菌の特性解析に関する知見を収集するため 以下の研究を実施する 1 家畜への抗菌性物質の使用と耐性菌の出現に明確な関連性がない家畜集団における薬剤耐性菌の出現又はこれが維持されるメカニズムについての研究 2 食品中における薬剤耐性菌の生残性や増殖性等の生

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 65 6 Dec LVFX 100 mg 3 / mg 2 / LVFX PK PD mg mg 1 1 AUC/MIC

グリコペプチド系 >50( 常用量 ) 10~50 <10 血液透析 (HD) 塩酸バンコマイシン散 0.5g バンコマイシン 1 日 0.5~2g MEEK 1 日 4 回 オキサゾリジノン系 ザイボックス錠 600mg リネゾリド 1 日 1200mg テトラサイクリン系 血小板減少の場合は投与

別添 抗菌薬の PK/PD ガイドライン はじめに PK とは薬物動態を意味する Pharmacokinetics の略であり 薬物の用法 用量と生 体内での薬物濃度推移 ( 吸収 分布 代謝 排泄 ) の関係を表す また PD とは 薬力学を意味する Pharmacodynamics の略であり

抗菌薬のPK/PD ガイドライン

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Mannheimia haemolytica の薬剤感受性について には抗菌性物質が使用される 抗菌性物質の使用は 薬剤耐性菌の選択 増加を引き起こす要因であることは周知のことである 薬剤耐性は抗菌性物質の有効性に影響を及ぼし 臨床現場での治療効果を低下させる また 家畜で出現した薬剤耐性菌が食品を

PK/PDガイドライン

日本化学療法学会雑誌第57巻第4号

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)


要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

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853 Kekkaku Vol. 85, No. 12 : 853_859, 2010 第 85 回総会教育講演 Ⅴ. PK/PD 理論に基づく抗酸菌症の治療 花田 和彦 要旨 薬物による効果 副作用は 体内動態 Pharmacokinetics : PK 上の過程と薬力学 Pharmacodyna

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品


CRRT と薬物 CRRT の導 入症例例では重症患者が多く 通常は 薬物治療療が 行行われている CRRT 導 入症例例では薬物の除去能が 一定ではなく 血中濃度度の管理理に難渋することが多々ある 特に抗菌薬は CRRT の影響を受けやすい腎排泄型薬物が多く 血中濃度度上昇による副作 用のリスク

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

1.8.2 Page MIC () MIC 50 / MIC 90 µg/ml Candida albicans (54) / Candida glabrata (25) 0.25 / 0.5 Candida guilliermondii a) (2)

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57巻S‐A(総会号)/NKRP‐02(会長あいさつ)

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第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

を評価し 治療効果を指標に用いる課題を明らかにした 次に第二部では 第一部で明らかにした知見を踏まえ 新規に開発した抗 HIV 治療薬の PK/PD を考慮し 臨床効果の同等性を評価するバイオマーカーとして血中濃度を選択し 臨床試験のデザイン及び適切な統計手法に基づく評価法を構築した 更に第三部では

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項目 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランについて 耐性菌の基礎知識 薬剤耐性モニタリング (JVARM) の成績 コリスチン耐性について 薬剤耐性菌のリスク分析 動物用医薬品の慎重使用について 78

家畜における薬剤耐性菌の制御 薬剤耐性菌の実態把握 対象菌種 食中毒菌 耐性菌の特徴 出現の予防 79

薬剤耐性菌の広まり 選 択 圧 抗 菌 剤 使 用 によ る 薬剤耐性菌 ( 遺伝子 ) の選択 薬剤耐性菌 ( 遺伝子 ) の伝播 耐性遺伝子の伝達 耐性菌の伝達 ( クローンの拡散 ) 薬剤耐性菌 ( 遺伝子 ) の定着 耐性菌の適応性 (fitness)

抗菌剤の使用による耐性の選択 直接選択使用した抗菌剤によるその抗菌剤の耐性の選択 ( 例 : テトラサイクリン使用によるテトラサイクリン耐性の選択 ) 交差選択 ( 交差耐性による選択 ) 使用した抗菌剤によるそれと同系統の耐性の選択 ( 例 : フロルフェニコール使用によるクロラムフェニコール耐性の選択 ) 共選択 ( 共耐性による選択 ) 使用した抗菌剤によるそれと他系統の耐性の選択 ( 例 : マクロライドの使用によるフルオロキノロン耐性の選択 )

豚由来 Campylobacter coli における抗菌剤使用と耐性の解析 マクロライド系の使用 フェニコール系の使用 テトラサイクリン系の使用 OR:11.83(1.41-99.44) P=0.023 OR:2.37(1.08-5.19) P=0.031 エリスロマイシン耐性 OR:9.36(2.96-29.62) P<0.001 エンロフロキサシン耐性 OR:2.94(0.997-8.68) P=0.051 クロラムフェニコール耐性 : 直接選択又は交差選択 : 共選択 OR: オッズ比 Ozawa et. al. (2012) Prev. Vet. Med. 106 :295 300

豚由来大腸菌における抗菌剤使用と耐性の解析 ( 共選択 ) β- ラクタム系の使用 コリスチンの使用 マクロライド系の使用 テトラサイクリン系の使用 P=0.02 P<0.01 P<0.01 P=0.01 P=0.03 ジヒドロストレプトマイシン耐性 カナマイシン耐性 アンピシリン耐性 オキシテトラサイクリン耐性 クロラムフェニコール耐性 合剤の使用による交絡? 機構不明 mcr-1 のような耐性因子の関与? 同時使用による交絡又はプラスミドによる選択? 同時使用による交絡又はプラスミドによる選択? Makita et. al. (2016) Microb. Drug Resist. 22:28 39.

MPC(Mutant Prevention Concentration) MPC とは MIC 以上の菌が全く発育しない濃度 MIC 以上の濃度で発育できる変異株も MPC 以上の濃度では発育できない Drlica, 2003. J. Antimicrobial Chemotherapy 52: 11-17 MPC: Mutant Prevention Concentration ( 変異阻止濃度 ) MIC: Minimum Inhibition Concentration ( 最小発育阻止濃度 ) MIC と MPC の間の濃度域で耐性菌が選択される (Mutant selection window; MSW) MSW の幅が広い (MPC/MIC が大きい ) と耐性菌が選択される可能性が高くなると推論されている

MSW の大きさと耐性発現の関係 牛におけるエンロフロキサシンの血漿中薬物濃度動態 2.0 1.6 1.2 0.8 0.4 0 C max (µg/ml) t max (h) 0 4 8 12 16 20 24 28 Time (hrs) 2.5 mg/kg 0.47 ± 0.08 7.3 ± 3.4 5 mg/kg 0.9 ± 0.12 6.6 ± 1.4 M. haemolytica/h. somni MSW 32 36 40 44 48 7.5 mg/kg 1.71 ± 0.93 6 出典 :17) より MPC: 0.5 MIC: 0.25 * エンロフロキサシンは 2.5 5.0 7.5 mg/kg にて皮下投与した M. haemolytica および H. somni に対する MPC および MIC を図中に示した ( 出典 :17 より ) 牛におけるエンロフロキサシンの血漿中薬物濃度動態 2.0 1.6 1.2 0.8 0.4 0 C max (µg/ml) t max (h) 0 4 8 12 16 20 24 28 Time (hrs) 2.5 mg/kg 0.47 ± 0.08 7.3 ± 3.4 5 mg/kg 0.9 ± 0.12 6.6 ± 1.4 32 36 40 44 48 7.5 mg/kg 1.71 ± 0.93 6 出典 :17) より P. multocida MPC: 0.125 MIC: 0.016 * エンロフロキサシンは 2.5 5.0 7.5 mg/kg にて皮下投与した P. multocida に対する MPC および MIC を図中に示した ( 出典 :17 より ) MSWの大きさ M. haemolytica > P. multocida フルオロキノロンの耐性率 8% > 0% 牛呼吸器病 (BRDC) における抗菌剤治療ガイドブック

PK/PD とは? 薬物の作用を薬物動態学 (Pharmacokinetics; PK) と薬力学 (Pharmacodynamics; PD) の組み合わせにより解析することである 臨床効果の予測や投薬設計に用いられる PK パラメータ : 最高血中濃度 (C max ) 血中濃度曲線下面積 (Area Under the Curve;AUC) PD パラメータ : 最小発育阻止濃度 (MIC) PK/PD パラメータ : C max /MIC, AUC/MIC 血中濃度が MIC を超えている時間 (Time above MIC;T>MIC)

Craig 理論による抗菌薬の PK/PD パラメータを用いた臨床効果予測と投薬設計 臨床獣医 2008 年 10 月号特集より引用 一部改変 Conc. ( 血漿中薬物濃度 ) Cmax (a) 濃度依存性殺菌的抗菌薬の指標 : Cmax/MIC MIC Conc. ( 血漿中薬物濃度 ) AUC/MIC (c) 時間依存性静菌的抗菌薬の指標 : AUC/MIC MIC 0 min アミノグリコシドキノロン time ( 投与後時間 ) 0 min テトラサイクリン time ( 投与後時間 ) Conc. ( 血漿中薬物濃度 ) Time above MIC (b) 時間依存性殺菌的抗菌薬の指標 : Time above MIC MIC Conc. ( 血漿中薬物濃度 ) (d) 反復投与の場合 Cmax( ピーク値 ) とトラフ値がある Cmax トラフ値 0 min β ーラクタムマクロライド time ( 投与後時間 ) 0 min 1 日目 2 日目 3 日目 time ( 投与後時間 )

抗菌剤の作用のタイプと指標となる PK-PD パラメータ 作用のタイプ PAE * 指標となる PK-PD パラメータ 代表的な抗菌剤 推奨される投与法 濃度依存型 長い Cmax/MIC AUC/MIC キノロン系アミノグリコシド系 1 回の投与量を増やし 血中濃度を高くする 時間依存型短い %T>MIC 時間依存型長い AUC/MIC ペニシリン系セファロスポリン系 マクロライド系テトラサイクリン系 投与回数を増やし MIC 以上の血中濃度を保つ 1 日の投与量を増やす * Post-antibiotic effect: 抗菌剤の血中濃度が MIC 以下になっても認められる細菌の増殖抑制作用

指標となる PK-PD パラメータの目標値 抗菌剤指標となる PK-PD パラメータ目標値文献 ペニシリン系 %T>MIC 30~50% [1] セファロスポリン系 %T>MIC 40~70% [1] アミノグリコシド系 キノロン系 Cmax/MIC 8~10 [2] AUC/MIC 100 [2] Cmax/MIC 8~10 [2] AUC/MIC 100~105 [2] マクロライド系 AUC/MIC 25 [3] 1 Craig. (2002) Adv Stud Med, 2: 126-134. 2 Drusano. (2003) Clin Infect Dis, 36: S42-50. 3 Zhanel et. al. (2005) Antimicrob Agents Chemother, 49: 1943-1948.

実際の現場では PK データや PD データは手に入らないことが多い 添付文書に示されている用法 用量以外の使用方法は 残留 ( 休薬期間 ) を考慮する必要がある 時間依存性の抗菌剤(PK/PDパラメータがT>MIC) 添付文書に示されている1 日量の最高量を分割して複数回投与する 濃度依存性の抗菌剤 ( PK/PDパラメータがC max /MIC AUC/MIC) 添付文書に示されている最高用量を1 日 1 回投与する 家畜共済における抗菌性物質の使用指針

抗菌剤の使用と薬剤耐性菌の選択について 耐性菌の選択には 直接選択 交差選択の他に 他 系統の抗菌性物質による共選択があり その場合は共 選択も考慮した抗菌剤の投与が必要となる MSW や PK/PD パラメータを考慮した抗菌剤の投与は 有効性を高め 耐性菌の選択を抑えることができる

畜産物生産における抗菌剤の慎重使用に関する基本的な考え方 慎重使用とは 動物用抗菌剤を使用すべきかどうかを十分検討した上で 適正使用 ( ) により最大の治療効果を上げ 薬剤耐性菌の選択を最小限に抑えるように使用 適正使用 ( ) よりも 更に注意して抗菌剤を使用 適正使用 : 獣医師の指示に基づく販売 獣医師自らの診察による指示書の発行等を定めた法令及び用法 用量を遵守し 使用上の注意にしたがって使用すること 実践する上で獣医師と生産者の果たす役割は重要 92

抗菌剤の慎重使用に関する獣医師向けパンフレット ( 抜粋 )

抗菌剤の慎重使用に関する獣医師向けパンフレット ( 抜粋 )

抗菌剤の慎重使用に関する獣医師向けパンフレット ( 抜粋 )

抗菌剤の慎重使用に関する生産者向けパンフレット

牛呼吸器病における抗菌剤治療ガイドブック ( 抜粋 )

畜産物生産における抗菌剤の慎重使用に関する基本的な考え方 慎重使用の効果 家畜での薬剤耐性菌の選択と伝播を極力抑制 家畜から人への薬剤耐性菌 薬剤耐性決定因子の伝播を抑え 人の医療に使用する抗菌性物質製剤の有効性を維持 家畜での抗菌剤の有効性を維持 98

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100

101

薬剤耐性菌 ( 遺伝子 ) の伝播経路 ヒト 選択圧 ヒト 食品 伴侶動物 ワンヘルス 環境 選択圧 動物 動物 輸入動物 養殖動物 102

103

104

JVARM 報告書 ( 和文 英文 ) http://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p3.html