目次 1. 調査研究の背景と目的 2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 3. 欧州各都市の事例紹介 ~ 評価システムの構成要素別 ~ (1) 評価項目 指標の設定 (2) 指標の測定 (3) 評価の活用 4. 日本での実態 5. 日本での更なる活用に向けて 2

Similar documents
国土交通政策研究第 129 号 地域公共交通サービスの評価に関する調査研究 ( 中間報告書 ) 2015 年 8 月国土交通省国土交通政策研究所前総括主任研究官川島雄一郎主任研究官坂井志保研究官山下芙由子研究官仲田知弘

1

1, H H17 4.2H17

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

untitled

公共建築改善プロジェクト(仮)

< F2D81798E518D6C8E9197BF817A E A F>



untitled

NITAS の基本機能 1. 経路探索条件の設定 (1) 交通モードの設定 交通モードの設定 とは どのような交通手段のネットワークを用いて経路探索を行うかを設定するものです NITASの交通モードは 大きく 人流 ( 旅客移動 ) 物流( 貨物移動 ) に分かれ それぞれのネットワークを用いた経路

スライド 1

スライド 1

今後のスケジュールについて 17 年 8 月 ~ 17 年 11 月 ~ 17 年 12 月 ~ NPO 等によるボランティア福祉有償運送を含む STSの普及促進 NPO 等の運行主体に対する実態調査 関係者等からのヒアリング 交通バリアフリー法の見直しの検討 ( 実態調査 ヒアリングを踏まえた )

untitled

1 はじめに

内部統制ガイドラインについて 資料

資料 - 3 流山市浄水場運転及び維持管理等業務委託 落札者決定基準 平成 30 年 10 月 流山市上下水道局

国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

1 日本再興戦略 2016 改革 2020 隊列走行の実現 隊列走行活用事業モデルの明確化ニーズの明確化 ( 実施場所 事業性等 ) 技術開発 実証 制度 事業環境検討プロジェクト工程表技高齢者等の移動手段の確保 ( ラストワンマイル自動走行 ) 事業モデルの明確化 ( 実施主体 場所 事業性等 )

評価(案)「財務省行政情報化LANシステムの運用管理業務」

PFI YOKOTA, Shigeru KAJITANI, Toshio 1 CO 2 PFI Private Finance Initiative PPP Public Private Partnership PFI Veolia Transport Kor

中央建設業審議会による提言について ( 平成 24 年 3 月 14 日 ) 建設産業における社会保険の徹底について ( 提言 ) 建設産業においては 下請企業を中心に 雇用 医療 年金保険について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など

コンパクト プラス ネットワークの形成 1

提案評価基準

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

<90528DB88EBF96E2955B2E786C73>

第三者による品質証明制度について 参考資料 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

Microsoft PowerPoint - 【資料6】業務取り組み

う ) において定めた民間事業者が確保すべきサービスの質の達成状況に対する当機構 の評価は 以下のとおり 評価事項 測定指標 評価 業務の内容 対象公共サービスの内容に示す運用業務を適切に実施すること 月次報告による業務内容を確認したところ 運用業務は適切に実施されており サービスの質は確保されてい

目次 4. 組織 4.1 組織及びその状況の理解 利害関係者のニーズ 適用範囲 環境活動の仕組み 3 5. リーダーシップ 5.1 経営者の責務 環境方針 役割 責任及び権限 5 6. 計画 6.1 リスクへの取り組み 環境目標

ISO 9001:2015 改定セミナー (JIS Q 9001:2015 準拠 ) 第 4.2 版 株式会社 TBC ソリューションズ プログラム 年版改定の概要 年版の6 大重点ポイントと対策 年版と2008 年版の相違 年版への移行の実務


参考資料 5 用語集 SPC( 特別目的会社 ) SPC(Special Purpose Company) は特別目的会社ともいわれ プロジェクトファイナンスにおいては 特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを親会社の信用とは切り離す事がポイントであるが その独立性を法人格的に担保すべく

221yusou

千葉中央バス株式会社 消費税率引上げに伴う運賃改定の認可についてのお問い合わせ (FAQ) Q 年 10 月 1 日の消費税率引き上げによって バス運賃の値上げを行いますか? A 年 10 月 1 日より 消費税率引き上げ分についてのみ転嫁致します 一般路線バスにつ いて

働き方改革実現に向けた週休二日の取得に関する取組について 直轄工事における週休二日取得の取り組み 施工時期の平準化適正な工期設定 週休二日算定が可能な 工期設定支援システム の導入 工事着手準備期間 後片付け期間の見直し 余裕期間制度の活用週休二日を考慮した間接費の補正 < 週休二日対象工事 > 対

<4D F736F F D CFC8BCDED2DDC4DACBDEADB08EC08E7B977697CC D53816A>

JCM1211特集01.indd

速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

1. 実現を目指すサービスのイメージ 高齢者や障害者 ベビーカー利用者など 誰もがストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築のため あらゆる人々が自由にかつ自立的に移動できる環境の整備が必要 ICT を活用した歩行者移動支援サービスでは 個人の身体状況やニーズに応じて移動を支援する様々な情報

社会通信教育に関する実態調査 報告書

<4D F736F F D F815B A BD90AC E93788E968BC695F18D E352E3135>


<4D F736F F F696E74202D208F E7382C982A882AF82E98CF68BA48CF092CA90AD8DF482CC8EE C982C282A282C42E B8CDD8AB7838

独立行政法人の組織の見直しについて

の経営改善に向けた取組が必要である 当該指標が 100% 以上の場合であっても 現金等の流動資産が減少傾向にある場合や一時借入 金等の流動負債が増加傾向にある場合には 将来の見込みも踏まえた分析が必要である 4 累積欠損金比率 (%) 当年度未処理欠損金 営業収益 事業の規模に対する累積欠損金 (

1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

<4D F736F F D20345F8E9197BF345F A835E838A F92B28DB88C8B89CA E646F63>

プレゼンテーションタイトル

スライド 1

<4D F736F F D A8D CA48F43834B C E FCD817A E

Microsoft Word - guideline02

Microsoft Word - QA.doc

資料 5 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 論点 3 CM 賠償責任保険制度のあり方 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 建築事業をベースに CMR の各段階に応じた業務内容 目的ならびに善管注意義務のポイントを整理 CM 契約における債務不履行責任において 善管注

資料編

(Taro-\207B\216d\227l\217\221.jtd)

公共交通機関申請画面について公共交通機関申請画面は 以下の構成となっています 1 通所施設情報部 2 申請者情報入力部 1 通所施設情報部通所施設の情報が表示されます 通所者が利用するサービス ( 通所種別 ) を入力します 2 申請者情報入力部通所者の情報 ( 氏名 生年月日 住所 ( 居住地 )

<4D F736F F D F5934B90AB814588C AB8E CF6955C B8FC894C58A A2E646F6378>

untitled

防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン

【資料8】車両安全対策の事後効果評価rev4

Microsoft Word - H180119コンパクトシティ説明用_仙台市_.doc

IP 電話の品質に関するアンケート及び MOS 評価実験について 総務省総合通信基盤局 電気通信技術システム課

LCC 参入による地域への 経済波及効果に関する調査研究 国土交通省国土交通政策研究所 前研究官渡辺伸之介 平成 27 年 5 月 20 日 1 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

目 次 1. トップランナー制度について 1トップランナー制度の概要について 3 2トップランナー基準に関する基本的な考え方について 5 3トップランナー基準に関する主な規定について 8 4トップランナー基準策定及び運用の流れについて 9 2. ラベリング制度について 1ラベリング制度の概要について

01_表紙

スライド 1

高根沢町デマンドバス業務委託事業仕様書 1. 委託業務の名称 高根沢町デマンドバス業務委託事業 2. 目的 デマンドバスの運行を行うための受託者を選定する公募型プロポーザルを実施するに あたり 運営 運行業務内容の詳細について この仕様書に定めるものとする 3. 全体的事項 (1) 委託契約期間契約

資料安作 13-3 品質の低下についての考え方 総務省総合通信基盤局 電気通信技術システム課 平成 21 年 5 月 13 日

Microsoft PowerPoint - 【資料3】運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果

ÿþ

Microsoft PowerPoint - 03 道路運送法の基礎知識

様式第 4-( 日本工業規格 A 列 4 番 ) 第 号 平成年月日 殿 国土交通大臣 印 平成年度地域公共交通確保維持改善事業費補助金 ( 地域公共交通バリア解消促進等事業 ) 交付決定通知書 平成年月日付け第号で申請のあった 平成年度地域公共交通確保維持改善事業費補助金 ( 地域公共交通バリア解

Microsoft PowerPoint  群馬大 欧州の自動運の状況 自分用最終版 復元

日本機械学会 生産システム部門研究発表講演会 2015 資料

公益財団法人和歌山市文化スポーツ振興財団 ( 財団法人和歌山市都市整備公社から名称変更 ) 経営健全化 ( 自立化推進 ) 計画 ( 平成 22 年度 ~ 平成 25 年度 ) 取組結果報告 取組結果報告における各取組の最終進捗結果の説明区分基準 A ほぼ予定どおり 若しくは予定以上に進んだ B 取

スライド 1

センタリング

資料 1 第 1 号議事 六会地区における予約型乗合タクシーの導入について 1. 実証運行までの経緯と結果 1-1. これまでの経緯六会地区の公共交通利用不便地区の解消に向けた取組については 平成 21 年度に交通不便地区解消検討事業が地域まちづくり事業として決定し 地域が主体となり 市と新たな交通

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

軽井沢スキーバス事故対策検討委員会について


1. 本障害の概要 2011 年 3 月 11 日 ( 金 ) に発生した東日本大震災発生に伴い 14 日 ( 月 ) における A 社の義援金口座 a 及び 15 日 ( 火 ) における B 社の義援金口座 b という特定の口座にそれぞれ大量の振込が集中したことにより 夜間バッチが異常終了したこ

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

<4D F736F F D208D8291AC93B BF8BE08E7B8DF482CC89658BBF92B28DB E92B A2E646F63>

平成 31 年度自動車取得税の軽減措置について 平成 31 年度の自動車取得税の軽減措置について 次のとおり変更がありました 平成 31 年 4 月岐阜県 エコカー減税 について 環境インセンティブ機能を強化する観点から 軽減割合等の見直しを行いました なお 平成 31 年 4 月 1 日から平成

指定管理者制度導入施設に係るモニタリングマニュアル 平成 22 年 4 月 総務部

(情)07年度事業運営方針

ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

<4D F736F F F696E74202D2089F090E08F D8291AC8FE68D87836F A92758AEE8F80817A >

これらのご要望などを踏まえ 本技術を開発しました 本技術により渋滞予知の精度は大幅に向上し 渋滞があると予測した時間帯において 所要時間の誤差が30 分以上となる時間帯の割合が 従来の渋滞予報カレンダー 7 の8.2% に対して0.8% 20 分以上となる割合が26% に対して6.7% となり また

平成 30 年度 自動車局税制改正要望の概要 平成 29 年 8 月 国土交通省自動車局

平成 29 年度自動車取得税の軽減措置について 平成 29 年度の自動車取得税の軽減措置について 次のとおり変更がありました 平成 29 年 4 月岐阜県 エコカー減税 及び 中古車の取得に係る課税標準の特例措置 の対象範囲を平成 32 年度燃費基準の下で見直し 政策インセンティブ機能を強化した上で

スライド 1

目次

平成18年度標準調査票

Transcription:

地域公共交通サービスの評価に関する調査研究 ~ ヨーロッパの事例報告 ~ 2 0 1 5 年 5 月 2 0 日 国土交通政策研究所研究官山下芙由子 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 1

目次 1. 調査研究の背景と目的 2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 3. 欧州各都市の事例紹介 ~ 評価システムの構成要素別 ~ (1) 評価項目 指標の設定 (2) 指標の測定 (3) 評価の活用 4. 日本での実態 5. 日本での更なる活用に向けて 2

1. 調査研究の背景と目的 背景 人口減少に伴い旅客需要が減少傾向にある中で 利用者増加を図るためには快適性や情報提供の適切さなど 旅客交通サービスの間接的 ソフトな面も含めた多面的なサービスレベル向上により 顧客満足度を高めることが必要 また 赤字運営に対する補助金交付や 増加する公設民営型サービスの管理の面からもサービスレベルの見える化を通じて 適切な運営へ導くことが必要 より質の高い交通サービスを確保するための仕組み作りが求められている 目的 本調査研究では公共交通サービス水準の 見える化 を実現すべく サービス水準の評価項目 評価指標ならびに評価手法を検討する 調査内容 ヨーロッパでは 地方自治体をはじめとする公的団体と委託契約を結んだ事業者が公共交通サービスを提供するケースが多くみられ 契約内容に沿って委託者が受託者のサービス水準を測定し 評価する仕組みが活用されていることから 仏 独 英の事例調査を中心に実施した 3

2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 1 公共交通サービスの概要 都市圏の基礎データ 域内公共交通の種類 イル ド フランス は パリを含む8 県から構成される地域圏面積 :1.2 万キロm2 人口 :1,180 万人地下鉄 :16 路線 鉄道 :RER 線 5 路線 + 従来型の郊外路線トラム :6 路線 バス :1,510 路線 BRT:1 路線 組織と運営体制 4

2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 2 指標の設定 大項目 ( モード : 共通 ) 定時性 情報提供 利用環境 アクセス性 販売 遅延率 適正な運行間隔運行率 装置の適切さや稼働割合平時 混乱時の案内の適切さ 車両や駅の清潔さ窓口対応の適切さ 駅のバリアフリー設備の稼働状況故障からの復旧状況 改札機 券売機の稼働状況 情報提供に関する指標 ( モード : 地下鉄 ) 平常時における駅での情報平常時における駅でのリアルタイム情報駅での予期されるダイヤ乱れの情報駅での予期されないダイヤ乱れの情報車内での情報車内での予期されないダイヤ乱れの情報 顧客満足度 上記 5 項目に関する乗客の満足度 車内での予期されないダイヤ乱れについての情報 の算出方法 以下の 2 項目を 提供率 : 適合率 =4:6 で計算する 適切な情報提供率 7 分以内の音声放送数 /7 分以上の運行中断件数 17 分以内の視覚表示数 /17 分以上の運行中断件数 音声 : 視覚 =6:4 で計算する 内容の適合率 遅延理由 (30%) 復旧目処 (20%) 事後情報 (20%) 継続的な情報 (15%) 振替案内 (15%) 5

2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 3 STIF-RATP( 地下鉄 ) の契約内容 6

2. パリ ( イル ド フランス圏 ) の事例紹介 4 測定方法とサイクル 事業者実施 機器自動測定 例 ) 監視カメラの稼働率 運行等の記録 例 ) 定時性 情報提供率 職員による測定 例 ) バリアフリー設備の稼働率 覆面調査 例 ) 窓口対応 清潔さ アンケート調査 ( 面談方式 ) 例 ) 混乱時の情報提供の内容 委託者実施 乗客へのアンケート調査 事業者は 自己測定の結果を四半期に一度委託者へ報告する 委託者は 受領した評価結果を覆面調査の実施等を通じて監査しとりまとめ 乗客アンケート評価を加味した年間結果を作成 結果の活用 ( ボーナス ペナルティ ) サービス評価結果に連動させて 事業者に支払う契約金額を増減させる仕組み 指標ごとに達成目標値と最低基準値を設定し 過達 未達の場合に支払い金額の増減が発生する 増減額は 総額及び項目ごとの割当比率が決められている 総額は 契約金の約 0.6% である 指標の表にはないが 走行距離 ( 運行率 ) についてはペナルティがある 7

3-1. 評価項目 指標の設定 1 欧州統一規格 EN13816 の概要 公共交通サービスに関する目標設定や評価を行う際の基本的なフレームワークを示したもの 事業者が提供しているつもりになっているサービスレベルと 利用者が受け止めているサービスレベルが大きく異なるケースがあり 事業者側の視点と利用者側の視点の両方を取り入れることの重要性が指摘されている 右図 1~4 の循環 (Quality Loop) の中で 双方の視点に配慮した評価の仕組みを構築することが求められている EN13816 における評価項目の分類 利用可能性 ネットワーク 営業時間 運行頻度 乗客への対応 乗務員の態度 運転スキル 苦情処理の対応 アクセス 券売機や改札の利便性 乗り換え利便 快適性 混雑度 座席のキャパシティ 車内の雰囲気 情報提供 駅やバス停 車内での情報提供の充実度 安全性 犯罪率 事故率 緊急時の対応 時間 運行スピード 定時性 環境への対応 騒音 廃棄物 エネルギー効率性 8

3-1. 評価項目 指標の設定 2 欧州各都市における評価項目 運行率と定時性 情報提供 乗務員の対応 快適性の各項目は ほぼ全てのケースで含まれている 都市の規模や モード間でも明確な差はなく 定められた計画や目標に従って設定されている 9

3-2. 指標の測定 主な測定手法 運行実績に基づく評価覆面調査顧客満足度調査モニター調査 事業者の記録やシステムから得られる車両走行状況等のデータを用い 測定する 第三者の専門調査員による測定 検証 提出されたデータのチェックとして実施される場合もある 訓練されたスタッフが必要であり コストが高い 利用者が期待するサービスが提供されているか アンケートやヒアリングを通じて測定する 結果の精度は 他の方法と比べると低い 一部の利用者がボランティア的にサービスレベルをチェックし報告する 組合せの方法 項目ごとに使い分け 例 ) 定時性 運行実績に基づく評価従業員の対応 覆面調査 快適性 顧客満足度調査 多面的評価 監査 運行実績に基づく評価や覆面調査を客観的 顧客満足度調査を主観的として一つの項目を両面から調査する 事業者が提出したデータを 委託者または第三者機関が検査する 10

3-3. 評価の活用 ボーナス ペナルティシステム 右表の通り ボーナス ペナルティ のシステムが各地で採用されている 達成目標値と最低基準値を設定する 何段階かに分ける場合もある 契約期間延長の判断材料や 次回以降の入札の際の考慮事項とする 対象とする評価項目は 全て とする場合と重要項目のみに絞る場合がある 項目間の加重割合 ( 英 ノッティンガムのトラム ) 複数項目間で傾斜をつけ 重要度とインセティブの大きさを比例させる方法もある 1% 1% 55% 30% 7% 3%3% 2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 運行率定時性清潔さ 修繕安全性 快適性情報提供その他顧客満足度 入札制度への反映 契約期間延長や 次回以降の入札の際の判断基準として活用する 11

4. 日本で実施されている評価 1 快適性 安全性評価指標 ( 国土交通省 ) 首都圏及び近畿圏の鉄道 バス事業者が対象 (2012 年度 : 鉄道事業社 19 社 66 路線 バス事業社 19 社 ) 下表の鉄道 8 項目 バス 1 項目の計 9 項目について調査を実施し 実績の推移を示す 12

4. 日本で実施されている評価 2 コミュニティバス運営におけるサービス評価の実態 全国のコミュニティバス等導入自治体 ( 乗合タクシーやデマンド型交通も含む ) にアンケート調査を実施 サービスモニタリングを実施している自治体数 26% 89 自治体 モニタリング手法 利用者アンケートが最多で 72 自治体 次いで事業者提出データが 24 自治体 その他 25 自治体は 居住者アンケートや乗込調査 事業者および運転手との打合せ等 モニタリング項目 運転手の対応が最多で 49 自治体 その他 は乗車中の安全性や利便性等 モニタリング結果の活用 事業者に対する指導 改善要請が最多で 71 自治体 その他 は今後の路線検討や時刻表改定時の参考資料にする等 13

5. 日本での更なる活用に向けて 主な論点 評価項目 指標の設定評価指標の測定評価結果の活用評価のマネジメントサイクル 交通モードによる差異の扱い 都市の規模による差異の扱い 適当な項目 指標の数 事業者がコントロールできないサービスの質の扱い 路線 駅の設定 運行頻度等の基幹的項目の扱い 必要なデータの取得方法 費用とのバランス 運営形態に即した活用法の選定 金銭的インセンティブを設定する場合の金額設定 評価の頻度 評価項目 指標の見直し 今年度の調査 1 日本版 評価指標を仮設定 2 複数の運行事業者におけるケーススタディの実施 3 公共交通サービスの評価に関するガイドラインの検討 14