03飢餓と飽食15

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解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

第4回 炭水化物の消化吸収と代謝(1)

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

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細胞骨格を形成するタンパク質

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1. 電子伝達系では膜の内外の何の濃度差を利用してATPを合成するか?

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脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

257 肝型糖原病

第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

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主要症状には繰り返す低血糖 人形様顔貌 低身長 発育障害 発達障 害 肝腫大 ( 腹部膨満 ) がある 1 I 型繰り返す低血糖 ( アシドーシスあり ) 人形様顔貌 発育障害 発達障害 肝腫大 筋萎縮 出血傾向( 鼻出血 ) Ib 型では易感染性を認めることがある 2III 型 IIIa 型低血糖

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

生物時計の安定性の秘密を解明

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2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

(2) 二 糖 類 二 糖 類 は, 単 糖 が2つグリコシド 結 合 したものである たとえば,マルトース( 麦 芽 糖 )は,グル コース+グルコース,スクロース(ショ 糖 )は,グルコース+フルクトース,ラクトース( 乳 糖 )は, グルコース+ガラクトースのグリコシド 結 合 によるものであ

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

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第 Ⅳ 部細胞の内部構造 14 エネルキ ー変換 -ミトコント リアと葉緑体 ( 後半 )p 葉緑体 chloroplast と光合成 photosynthesis 4. ミトコント リアと色素体の遺伝子系 5. 電子伝達系 electron-transport chain の進

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

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1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

平成14年度研究報告

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Ⅰ. ヒトの遺伝情報に関する次の記述を読み, ~ に答えなさい 個体の形成や生命活動を営むのに必要な ( a ) は, 真核生物の細胞では主に核 の中で染色体を形成している 通常, ₁ 個の体細胞には同じ大きさと形の染色体が 一対ずつあり, この対になっている染色体を ( b ) といい, 片方の染

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

37 4

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木村の有機化学小ネタ 糖の構造 単糖類の鎖状構造と環状構造 1.D と L について D-グルコースとか L-アラニンの D,L の意味について説明する 1953 年右旋性 ( 偏光面を右に曲げる ) をもつグリセルアルデヒドの立体配置が

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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250 グルタル酸血症2型

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

Transcription:

生物化学3 10月9日 インスリン受容体とグルカゴン受容体 飢餓と飽食 血糖維持の仕組み インスリン受容体 (αβ)2の構造をもつヘテロ四量体 βサブユニット細胞内にチロシンキナーゼド メインをもつ 飢餓と飽食 生体内でエネルギーは連続的に消費されている 大脳 赤血球はエネルギー供給を IRS インスリン受容体基質 のリン酸化か らPI3キナーゼによるPDK-1の活性化を経由 血糖に依存するため 低血糖は致死的となる 摂食行動は断続的であり 摂取した したBキナーゼ Akt の活性化 または 余剰エネルギーを蓄え 必要に応じて小出しにて生理的血糖値 90mg/dl Grb2/SosからRasを介したMAPキナーゼカ 5mM 前後に維持する仕組みを理解する 末梢 骨格筋 脂肪組織 脳組織な スケードの活性化によりシグナルを伝える ど と肝臓の役割を分けて考えることが必要である 飢餓状態 グルカゴンが働く 解糖系を抑制し脂質をエネルギー源とし て活用する グリコーゲンを分解し糖新 生を促進することで血糖値を維持する 飽食状態 インスリンが働く 余剰のグルコースを細胞内に取り入れ グルカゴン受容体 体重70kgの成人男子の貯蔵燃料 代謝燃料 脂肪組織のTG 組 骨格筋のタンパク質 質量 Cal 15 kg 141,000 6 kg 24,000 織 グリコーゲン 筋肉 150 g 600 75 g 300 循 体液中のグルコース 20 g 80 脂肪酸合成に利用する 環 血漿遊離脂肪酸 0.3 g 3 糖尿病 インスリンの働きが弱くなる 系 血漿TG 3g 30 解糖系を活性化し グリコーゲンおよび 栄養を摂取しているものの 代謝的には いつも飢餓状態になる インスリンとグルカゴン インスリン グリコーゲン 肝臓 合計 7回膜貫通型の三量体Gタンパク質共役型受容体 Gsを介してアデニル酸シクラーゼ を活性化し campをセカンドメッセンジャーにaキナーゼ経路を活性化する 166,000 1 Cal = 4.184 kj 脳が消費するグルコース量 5 g/h グルカゴン A鎖とB鎖が二カ所のジスルフィド結合によりつながる 29アミノ酸よりなる単一のペプ 構造 51アミノ酸のペプチドホルモン チド 分泌 膵島B細胞 膵島A細胞 標的 肝臓 骨格筋 脂肪組織など 肝臓 臓器 肝で糖新生亢進 グリコーゲン 肝臓 骨格筋 脂肪組織の受容体に結合 グルコース 分解促進 合成抑制 アミノ酸 作用 輸送体 GLUT4 を含む小胞が細胞膜へ移行し 組 の取り込みと糖新生促進 脂肪 織がグルコースを活発に取り入れる 組織でTGの加水分解促進 血糖値上昇により 膵島B細胞のGLUT2がグルコース 血糖値低下 交感神経刺激 ア を取り込み グルコキナーゼにより解糖系でATP産 ミノ酸 コレシストキニンなど 分泌 生 ATP感受性K+チャンネルが閉じて脱分極 Ca2+チ 消化管ホルモンにより分泌刺激 刺激 ャンネルが開き 細胞内Ca2+濃度が上がってエキソサ インスリン ソマトスタチン イト シスにより分泌 食後直ぐに上昇し1時間以 により抑制 内に最高値となる 24

グルコース輸送体 GLUT) 脂質二重膜を挟んだグルコースの移動に グルコース輸送体 Glucose transporter; GLUT が関与する促進拡散系である 結合定数 組織の局在が異なるサブタイプが存 1. グリコーゲンの代謝 グリコーゲンの構造 在する いずれも12回膜貫通型タンパク質である GLUT1 おもに赤血球に存在する 糖との結合親和性が高い GLUT2 肝臓 膵臓B細胞 腎臓 小腸で双方向性にグルコースの取り込みと放出を行う グ ルコースに対する親和性は低いが 最大活性が大きい GLUT3 脳 神経組織 腎臓に存在する GLUT4 骨格筋 脂肪組織 心筋でインスリン依存性にグルコースを取り込む インスリン受容体のシグナルにより GLUT4が細胞内小胞のプールから細胞膜に移 動して血液中からグルコースを取り込み血糖を下げる GLUT4は細胞膜と細胞内小胞 の間でリサイクルされる グリコーゲンは動物が合成する貯蔵型のグルコースホモ多糖である α1-4結合を基調 とした重合体で 平均10-12残基ごとにα1-6結合の枝分かれをもつ球状の巨大分子で ある 分子内に還元末端は一カ所のみ 枝分かれの数だけ非還元末端をもち グリコーゲン の合成 分解速度を増加させている グリコーゲン合成経路 解糖系のグルコース6-リン酸を材料として 高エネルギーのグルコース担体UDP-グルコ ースを合成し 非還元末端にグルコースを転移する 枝別れは別の酵素が関与する グルコース6-ホスファターゼ グルコース グルコース6-リン酸 グルコキナーゼ 肝臓 ヘキソキナーゼ 骨格筋 1 グリコーゲン合成経路 ホスホグルコムターゼ UTP グルコース1-リン酸 2 GLUT5 H2O フルクトース輸送体であり グルコース輸送体から除外されることが多い ATPを消費しNa+濃度勾配に依存したアンチポー 管からのグルコース吸収を阻害することで 食後 血糖の急激な上昇を抑える グリコーゲン (n) UDPグルコース 能動輸送をおこなう 糖尿病の食後血糖上昇に対して用いられる 腸 3 2Pi ト系で 小腸粘膜および腎尿細管でグルコースの SGLT阻害剤 PPi 無機ピロ ホスファターゼ Na+-グルコース共輸送体 SGLT UTP-グルコース1-リン酸 ウリジルトランスフェラーゼ ADP 4 ヌクレオシド二リン酸 キナーゼ グリコーゲン シンターゼ 5 ATP グリコーゲン (n+1) UDP 25

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2. グリコーゲン代謝の調節 ホスホリラーゼとグリコーゲンシンターゼが それぞれ共 アロステリック調節 酵 素 活 性 グリコーゲンシンターゼ テリック制御を受ける 有結合性修飾とアロステリック機構で逆向きの調節を受け て 合成と分解が同時に活性化されないようになっている 共有結合修飾による制御 ホスホリラーゼ シンターゼともに ATP AMP G6-Pをエフェクターとするアロス ホスホリラーゼ 0 リン酸化と脱リン酸化 2 4 6 8 10 時 間 分 グルコース負荷 プロテインキナーゼによる 酵素タンパク質のセリン トレオニン残基のリン酸化とホス ホプロテインホスファターゼによる脱リン酸化は 互いに拮抗的に作用する 修飾により活性が変化する場合 活性型をa型 不活性型をb型と呼ぶ グルカゴン刺激 細胞内cAMP濃度が上昇しcAMP依存性プロテインキナーゼ プロテインキナーゼA PKA の活性化により細胞内リン酸化レベルが上昇する リン酸化されたグリコーゲンシンターゼは不活性型のb型に ホスホリラーゼはホス ホリラーゼキナーゼの活性化によりリン酸化され活性型のa型になる その結果 グリコーゲン分解が促進され 合成が抑制される ホスホプロテインホスファターゼは PKAによりリン酸化されて活性型となる阻害タ ンパク質によりネガティブな調節を受ける ホスホリラーゼ 筋肉 はAMPで活性化されATPとG6-Pで抑制される グリコーゲンシンターゼはG6-Pで活性化される 脱リン酸化状態は常に活性型であ り G6-Pによる活性化は不要となる カルシウム濃度とグリコーゲン代謝 ホスホリラーゼキナーゼはサブユニットのひ とつにカルモジュリン CaM カルシウムセ ンサータンパク質 をもつカルモジュリン依 存性プロテインキナーゼのひとつ ホスホリラーゼキナーゼの活性化はカルシ ウム依存性であり PKAでリン酸化を受 けて最大活性を発揮する 骨格筋は収縮に伴い小胞体からカルシウム イオンを細胞内に放出する 骨格筋の活動 がカルシウムイオンを介してグリコーゲン の分解によるエネルギー供給をもたらす インスリン刺激 ホスホプロテインホスファターゼの活性化による グリコーゲンシンターゼ ホスホリラーゼ ホスホリラーゼキナーゼはいずれも脱リ ン酸化され グリコーゲンシンターゼは活性型 ホスホリラーゼ ホスホリラーゼキ ナーゼは不活性型となり グリコーゲン合成が促進され 分解は抑制される 3. グリコーゲン代謝のエネルギー収支 グルコースを嫌気的解糖で乳酸2分子に変換する際に得られるATP数は グリコーゲン 合成を経ると1つ減って1分子のみとなる ホスホリラーゼでグリコーゲンより遊離するグルコース残基にはすでにリン酸基が結 合しており 解糖系では3分子のATPが得られる グルコース1分子をグリコーゲンに結合させるためにATPは2分子必要である ヘキ ソキナーゼのリン酸化反応 UTP-グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラー ゼで消費された高エネルギー結合を回復させるヌクレオシド二リン酸キナーゼの反 応 グルコースを一旦グリコーゲンに変換することは エネルギー収支から見ると損だ が 必要に応じて解糖系の基質を多量に供給しATPを合成出来るという生理的効用は 損失を補って余りある 28

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糖原性化合物 脂肪分解が促進され 肝臓に蓄積し脂肪肝を呈する 高乳酸血症により腎臓より尿酸排 糖新生の原料となり得る分子を糖原性化合物という オキサロ酢酸に変換できる分子 泄抑制 G6-P過剰によってペントースリン酸経路が亢進し プリン産生過剰となるため クエン酸回路中間体 及び解糖系中間体 はすべて糖原性をもつ 高尿酸血症となる ほかに低血糖 肝腫大 低身長 人形様顔貌 治療は 低血糖に対 ピルビン酸デヒドロゲナーゼが不可逆であるため糖原性を持たない脂肪酸 ケトン体 アセト酢酸 3-ヒドロキシ酪酸 アセチルCoAはケト原性化合物と呼ばれる する対処 高炭水化物食など対症的に行う Pompe病 II型 グリコーゲン 肝臓 リソゾーム酵素のα-グルコシダーゼ 酸性マルターゼ 欠損による オートファジーに 肝臓に貯蔵されているグリコーゲンは グルカゴン アドレナリンの刺激によりホスホ よりリソソームに取り込まれたグリコーゲンが分解されずに蓄積する リソソーム病に リラーゼにより分解され 空腹時 食後20時間まで の血糖源となる 分類され エネルギー代謝には影響がない 乳酸 嫌気性解糖 全身の臓器が徐々に冒され 無治療の場合小児期に心不全や骨格筋の異常 筋ジストロ 骨格筋の解糖系で生じ 血流を介して肝臓に運ばれ糖新生の材料となり グルコースと フィー を来し死亡する 酵素補充療法が有効 して骨格筋に戻され 回路が出来る コリ回路 運動中 運動後の重要な糖原性化合 Cori病 Forbes病 III型 物である グリコーゲン脱分枝酵素欠損 枝分かれ部分が分解できず 肝臓 骨格筋に限界デキス 糖原性アミノ酸 トリンが蓄積する von Gierke病に似るが 低血糖は軽度で肝症状は成長とともに改善 飢餓時に骨格筋のタンパク質が分解 し 骨格筋症状は進行する 生命予後は悪くない されて生じるアミノ酸は 20時間 Anderson病 糖原病IV型 を越える飢餓時の糖新生に用いられ 分枝酵素の異常により直鎖状グリコーゲン 難溶性 が全身 肝臓 骨格筋 心筋 腎 る ピルビン酸 またはクエン酸回 臓 に蓄積する 肝硬変 肝不全により幼児期に死亡する 肝移植が試みられる 路中間体を経由して糖新生の経路に McArdle病 糖原病V型 入る LysとLeuは完全なケト原性 骨格筋ホスホリラーゼ欠損 骨格筋の疲労 脱力と硬直 小児期は無症状 成人になっ アミノ酸で糖新生に用いることが出 てから運動による骨格筋の硬直とミオグロビン尿がみられる 来ない Tyr, Phe, Ile, Trpは糖原性 とケト原性をあわせもつ Fanconi-Bickel症候群 グルコース輸送体2型 GLUT2 の障害による 食後高血糖 空腹時低血糖 腎尿細 その他 管でアミノ酸 カ 上記に加えて 脂質の分解の際にトリグリセリドの異化により生じるグリセロールは ルシウム リンの グリセロール三リン酸からジヒドロキシアセトンリン酸に転換し糖新生経路に入る 再吸収が阻害され 奇数の炭素数をもつ脂肪酸の酸化により生じるプロピオニルCoAは カルボキシラーゼ 代謝性アシドーシ によりメチルマロニルCoAを生じ スクシニルCoAに変換され糖原性をもつ ス 骨代謝障害 5. 糖代謝と病気 糖原病 グリコーゲン代謝の異常に基づく病気を糖原病 グリコーゲン蓄積病 という 肝臓や骨格筋などにグリコーゲンの病的な蓄積がみられ 多彩な症状 臓器障害や低 血糖症状 を起こす I型 XV型まで分類されている 発生頻度は数万人に一人程 度 I型が最多 ほとんどが常染色体劣性遺伝である von Gierke病 I型 G6-Pase欠損 またはG6-Pトランスロカーゼ欠損のため 糖新生不可となり低血糖を 来す 肝臓に解糖系代謝産物が過剰となる グルカゴン優位の状況が続いて脂肪組織で 31

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