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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

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グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある インスリンが血糖値を下げる唯一のホルモンです 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

53巻6号/TNB06‐10(委員会報告)

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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MSD 2011年2月号 (立ち読み)

37 4

糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

漢方薬

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

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血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

, 2008 * Measurements of Sleep-Related Hormones * 1. * 1 2.

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

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市民公開講座(2011/04/16)

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

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糖尿病の薬について 糖尿病とうまく付き合うために薬を知ろう

特定の原因によるその他の糖尿病遺伝子の異常によるもの ほかの病気や薬剤に伴って起こるものがあります 妊娠糖尿病妊娠中に初めて発見した又は発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常のことを言います 妊娠中はわずかな高血糖でも胎児に影響を与えるため 糖尿病ではなくとも 妊娠糖尿病 と呼びます 妊娠中に胎盤が

経口血糖降下薬について

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

2型糖尿病の成因と病態

問 21 細胞膜について正しい記述はどれか 問 31 発汗について誤っている記述はどれか A 糖脂質分 が規則正しく配列している A 体温の上昇を防ぐ B イオンに対して選択的な透過性をもつ B 汗腺には交感神経が分布する C タンパク質分 の 重層膜からなる C 温熱性発汗には 脳 質が関与する

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

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< 研究の背景 > 運動に疲労はつきもので その原因や予防策は多くの研究者や競技者 そしてスポーツ愛好者の興味を引く古くて新しいテーマです 運動時の疲労は 必要な力を発揮できなくなった状態 と定義され 疲労の原因が起こる身体部位によって末梢性疲労と中枢性疲労に分けることができます 末梢性疲労の原因の

神緑会学術誌 平成24年度 第29巻 2013年 神緑会研究事業年間報告書 糖尿病発症におけるインクレチン効果の疫学的研究 第2報 ー妊娠糖尿病のスクリーニングからのアプローチー 研究代表者 社会医療法人愛仁会 研究協力者 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 産婦人科 概 要

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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Transcription:

各論 (6) 物質代謝 異化と同化 物質代謝 異化と同化膵島ホルモン ( インスリン グルカゴン ) 糖尿病メタボリックシンドローム Presented by 岡本 飛永 松本

物質代謝とは エネルギーを消費して物質を合成 エネルギーを産生 同化を促進するホルモン : インスリン IGF-1 GH アンドロゲン 異化を促進するホルモン : グルカゴン 甲状腺ホルモン アドレナリン

膵島ホルモン 膵島とは 別名ランゲルハンス島 膵臓の外分泌腺の中に島状に散在する細胞集団 ヒトで直径 100μm 100~200 万個 ( 膵臓全体の約 2%) 4 種類の分泌細胞がそれぞれ異なるペプチドホルモンを分泌

4 種類のペプチドホルモン 細胞名割合分泌するホルモン A 細胞 (α 細胞 ) 20% グルカゴン B 細胞 (β 細胞 ) 60~75% インスリン D 細胞 (δ 細胞 ) 5% 弱ソマトスタチン PP 細胞 (F 細胞 ) 1% 程度膵ポリペプチド PP:pancreatic polypeptide( 膵ポリペプチド ) の略

インスリン (insulin) インスリンの構造 上はプロインスリンの構造式 赤字の部分がインスリン 分子量は約 5800 A 鎖 (21 個のアミノ酸 )+B 鎖 (30 個のアミノ酸 ) 二箇所がジスルフィド結合で架橋

B 細胞での生合成 シグナルペプチドの切断ジスルフィド結合で架橋 タンパク分解酵素によって分解

インスリンの分泌と調節 静脈血中のインスリン濃度は食物摂取によって 5~10 倍になる 血糖を保つための調節機構 1 血中グルコース濃度 2 消化管ホルモン 3 自律神経

1 血中グルコース濃度 血中グルコース濃度の上昇は インスリン分泌を起こす最も重要な生理作用 空腹時血糖の 90mg/dl までは一定量のインスリン分泌が起こっている = 基礎分泌 90mg/dl を超えると濃度に依存して上昇 400~600mg/dl で飽和する

グルコースの分泌促進作用経口糖尿病治療薬 ( インスリン分泌促進 ) スルフォニル尿素薬 脱分極

インスリンの放出は二相性 生体外に取り出した膵臓を高濃度のグルコースで持続的に刺激すると 1, はじめの数分間で急激な分泌 すでに合成貯蔵してあったインスリンが放出 2, 続いて緩やかな長い分泌 新たに合成されたインスリンの放出 グルコースはインスリンの合成も促進する

2 消化管ホルモン グルコースを血中に投与するよりも経口投与したほうがインスリン分泌ははるかに多い 胃腸管に由来する何らかの因子 ( インクレチン ) がインスリン分泌を増強 インクレチン (incretin) 消化管ホルモンである GLP-1 (glucagon-like peptide-1) と GIP (gastric inhibitory polypeptide)

3 自律神経 交感神経刺激 ノルアドレナリン α2 アドレナリン受容体 迷走神経刺激 ムスカリン受容体 camp 濃度 インスリン分泌 インスリン分泌 迷走神経の効果は血中グルコース濃度と無関係

食後のインスリン分泌 ( まとめ ) 自律神経 インクレチン 血中グルコース濃度

1 グルコース輸送 インスリンの作用 筋や脂肪細胞でのグルコースの取り込み促進 2 糖代謝 グリコーゲン合成 解糖促進 糖新生抑制 3 脂質代謝 脂肪合成促進 分解抑制 4 成長促進 蛋白質合成促進 分解抑制 総じて インスリンは同化ホルモンである

インスリンの作用 短期 ( 秒 ~ 分単位 ) インスリン感受性細胞 ( 筋肉 脂肪 ) 内へのブドウ糖 アミノ酸 K + 輸送の促進 中期 ( 時間単位 ) 蛋白質合成の促進グリコーゲン合成と解糖酵素の促進同化作用脂肪酸合成 長期 ( 日 週 月単位 ) 成長促進 永山追加スライド

1 グルコース輸送 グルコースの細胞内取り込みにはトランスポーターが必要 哺乳動物では 11 種類 (GLUT は 1~9 まで )

インスリンの作用機構と GLUT4 IRS-3 : インスリン受容体基質 PI3-K : ホスファチジルイノシトール 3- キナーゼ

2 糖代謝 インスリンは酵素活性や合成量を変化させる グルコキナーゼ ホスホフルクトキナーゼ ピルビン酸キナーゼの合成量や活性を増加 解糖系促進 グリコーゲン合成酵素を活性化 グリコーゲン合成促進 ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの合成量を抑制 糖新生抑制 すべて血糖を下げるようにはたらいている

3 脂質代謝 解糖系が進むことによってアセチル CoA と NADPH が増加 これを消費するために脂肪の合成促進が起こる

4 成長促進 インスリンは蛋白質の合成を促進し 分解を抑制する 肝臓でのアミノ酸からの糖新生を抑制するため 骨格筋で蛋白質が作られるので 結果として成長の促進につながる

作用のまとめ GLUT4

グルカゴン (glucagon) グルカゴンの構造と生合成 シグナルペプチド 主要プログルカゴン断片 グリセンチン関連ペプチド インクレチン 分子量 :3485

分泌調節 分泌が増加する要因 インスリンとは逆に低血糖で増加 蛋白質やアミノ酸 特にアラニンやセリンなどの糖原性アミノ酸 肝臓での糖新生がグルカゴンによって促進 交感神経 副交感神経 ( 迷走神経 ) 刺激 交感神経は β アドレナリン受容体を介する ストレスによる分泌亢進などに関与

グルカゴンの作用 グリコーゲンの分解を促進 グリコーゲンの合成を抑制 アミノ酸などからの糖新生を促進 次のスライドで説明 糖新生の律速酵素を活性化 肝臓での蛋白質分解を促進 遊離したアミノ酸は糖新生の材料に 脂肪細胞での脂肪分解作用 肝臓でのケトン体生成作用

グリコーゲンの分進解促グリコーゲンの合成抑制

インスリンとグルカゴンの比 グルカゴン : エネルギー放出 インスリン : エネルギー貯蓄 I/G 比 ( インスリン / グルカゴン モル比 ) エネルギー代謝状態を把握する指標 絶食中 : エネルギーが必要 G 値 I/G 比 食後 : エネルギーが充足 I 値 I/G 比 1 型糖尿病 : インスリン低下 I/G 比 エネルギー放出

血糖の調節

まとめ 逆の作用を示す

その他の膵島ホルモン ソマトスタチン (somatostatin) 膵島 D 細胞で合成分泌される インスリン グルカゴン ガストリンなどの分泌抑制 標的細胞は近傍の細胞 ホルモン分泌の抑制効果は高濃度でないと発揮されないが ソマトスタチンは分解が早いので循環血中濃度は極めて低い 傍分泌作用 膵ポリペプチド (PP) F 細胞で合成分泌される 分泌は低血糖により増加 高血糖により減少 膵液の分泌を抑制する作用がある

糖尿病 (Diabetes Mellitus) 糖尿病とは インスリンの絶対的あるいは相対的な不足によって引き起こされる異常を糖尿病という 慢性的な高血糖状態 口渇 多飲 多尿 しばしば多食であるにも関わらず ケトアシドーシス 体重減少などの症状を伴う 1 型 2 型 妊娠糖尿病などの種類がある

糖尿病の判定基準 他に診断基準として ヘモグロビン A1c 値が推奨されている 長期的に見た血糖状態が把握できるのでより適切な判断が可能 6.5% 未満で正常

糖尿病の種類 1 型糖尿病 ( インスリン依存性糖尿病 ) 2 型糖尿病 ( インスリン非依存性糖尿病 ) 原因 膵 B 細胞の破壊 ( 自己免疫性 ウイルス 遺伝など ) インスリン感受性の低下 ( インスリン抵抗性の増大 ) 血中インスリン量 少ない 多い ( 膵 B 細胞が疲労すると少なくなる ) 発症 10 代で突然発症することが多い ( 若年性糖尿病 ) 40 代で発症し 徐々に進行する 肥満に多い 治療法インスリン投与運動 食事療法

2 型糖尿病のタイプ renal threshold インスリン抵抗性 永山追加スライド

メタボリックシンドローム (metabolic syndrome)

メタボリックシンドロームとは 内臓脂肪型肥満 高血糖 高血圧 高脂血症 のうち 2 つ以上を合併している状態 動脈硬化のリスクの指標となる

危険因子数と冠動脈疾患 BMI 25 高脂血症 糖尿病 高血圧 危険因子が重複すると冠動脈疾患を発症する割合が急激に上昇する

日本での診断基準

内臓脂肪と皮下脂肪

脂肪細胞とアディポサイトカイン 脂肪細胞は最大の内分泌臓器

悪玉 TNF-α 内臓脂肪から多く産生する インスリン抵抗性を促進 脂肪細胞自身や筋細胞に作用

レプチン (Leptin) 脂肪細胞が産生する液性因子 1994 年発見 食欲の抑制とエネルキ ー消費を亢進する作用あり 受容体 : 視床下部 性腺 骨髄 血管内皮 骨に発現 発見 遺伝性肥満マウス ob/ob マウス レフ チン欠損家系の発見 肥満者 レフ チン高値 ( レフ チン抵抗性による ) 永山追加スライド

アディポネクチン (Adiponectin) Body mapping: 臓器特異的な遺伝子を map していくプロジェクト 脂肪細胞は エネルギー貯蔵の場と考えられていたので 代謝酵素遺伝子が多く見つかると予想していた しかし以外にも分泌蛋白が多いことが明らかとなり 脂肪組織は 生体最大の内分泌臓器となった このような脂肪細胞由来の内分泌因子を総称して アディポサイトカインと名づけられた 脂肪細胞でのみ産生される インスリン感受性を亢進させる 肥満 糖尿病で血中レベル低下する 肥満者でのアディポネクチン低下はインスリン抵抗性の原因となる 日本人の 40% がアディポネクチン低値の素因を持つ 永山追加スライド

脂肪細胞のインスリン感受性 脂肪萎縮型インスリン抵抗性糖尿病 永山追加スライド