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Hi-level 生物 II( 国公立二次私大対応 ) DNA 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造 ア.DNA の二重らせんモデル ( ワトソンとクリック,1953 年 ) 塩基 A: アデニン T: チミン G: グアニン C: シトシン U

2016入試問題 indd

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

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平成14年度研究報告

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手順 ) 1) プライマーの設計 発注変異導入部位がプライマーのほぼ中央になるようにする 可能であれば 制限酵素サイトができるようにすると確認が容易になる プライマーは 25-45mer で TM 値が 78 以上になるようにする Tm= (%GC)-675/N-%mismatch

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染色体の構造の異常 Chromosomal structural changes

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

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るため RNA ウイルス遺伝子や mrna などの RNA を検出する場合には予め逆転写酵素 (RNA 依存性 DNA ポリメラーゼ ) により DNA に置換する逆転写反応を行う必要がある これを Reverse Transcription-PCR(RT-PCR) という PCR 法によれば 検査

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研究の背景 B 型肝炎ウイルスの持続感染者は日本国内で 万人と推定されています また, B 型肝炎ウイルスの持続感染は, 肝硬変, 肝がんへと進行していくことが懸念されます このウイルスは細胞へ感染後,cccDNA と呼ばれる環状二本鎖 DNA( 5) を作ります 感染細胞ではこの

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

図 1 ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる因子ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる DNA RNA タンパク質 翻訳後修飾などを示した ヘテロクロマチンとして分裂酵母セントロメアヘテロクロマチンと哺乳類不活性 X 染色体を 遺伝子発現不活性化として E2F-Rb で制御

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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子はいくつかのタンハ ク質の情報を持っている. Ⅰ. DNA から RNA 前駆体までフ ロモーター, ターミネーター DNA には RNA ホ リメラーセ が反応を始める, 終える場所を指示するシク ナルがある.RNA ホ リメラーセ が反応を始める, 終える場所を知る方法は細菌と真核生物では少し

Ⅰ. ヒトの遺伝情報に関する次の記述を読み, ~ に答えなさい 個体の形成や生命活動を営むのに必要な ( a ) は, 真核生物の細胞では主に核 の中で染色体を形成している 通常, ₁ 個の体細胞には同じ大きさと形の染色体が 一対ずつあり, この対になっている染色体を ( b ) といい, 片方の染

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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イネは日の長さを測るための正確な体内時計を持っていた! - イネの精密な開花制御につながる成果 -

1. 腸管出血性大腸菌 (EHEC) の系統解析 上村健人 1. はじめに近年 腸管出血性大腸菌 (EHEC) による食中毒事件が度々発生しており EHEC による食中毒はその症状の重篤さから大きな社会問題となっている EHEC による食中毒の主要な汚染源の一つとして指摘されているのが牛の糞便である

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

井上先生 報告書 清水

DNA/RNA調製法 実験ガイド

織又は器官から直接得られる初代培養細胞を用いて製造されているものがある 初代培養細胞はバンク化された細胞ではないため 本文書の対象外である しかし 初代培養細胞に適用可能と思われる留意事項については 本文書の付録 1に記載されている 2 留意事項 2.1 細胞基材の起源 履歴及びその調製 2.1.1

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

< 用語解説 > 注 1 ゲノムの安定性ゲノムの持つ情報に変化が起こらない安定な状態 つまり ゲノムを担う DNA が切れて一部が失われたり 組み換わり場所が変化たり コピー数が変動したり 変異が入ったりしない状態 注 2 リボソーム RNA 遺伝子 タンパク質の製造工場であるリボソームの構成成分の

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

植物の機能と制御 平成 12 年度採択研究代表者 村田稔 ( 岡山大学資源生物科学研究所教授 ) 植物における染色体機能要素の分子的解析と人工染色体の構築 1. 研究実施の概要植物の染色体は 3つの機能要素 ( セントロメア テロメア 複製起点 ) によって維持されている 本研究では 最も重要な機能

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

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平間崇 PCR,RT-PCR,real-time PCR 1047 講 座 研究手法入門 : 生化学的 免疫学的実験法 PCR,RT-PCR,real-time PCR 平間 崇 要 旨 PCR は, 基礎研究や臨床検査などの幅広い分野において欠かせない手法として確立している PCR,RT-PCR,

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

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日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

< 研究の背景 > 細菌検査や医療診断などで 遺伝子解析技術の利用が進んでいます リアルタイム PC R 法は DNA を温度サイクル装置 (PCR 装置 ) で増幅し 蛍光プローブを用いて高感度に検出する技術です 細胞から mrna を抽出し 逆転写して得られた DNA をリアルタイム PCR で

1. 背景ヒトの染色体は 父親と母親由来の染色体が対になっており 通常 両方の染色体の遺伝子が発現して機能しています しかし ある特定の遺伝子では 父親由来あるいは母親由来の遺伝子だけが機能し もう片方が不活化した 遺伝子刷り込み (genomic imprinting) 6 が起きています 例えば

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報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

細胞の構造

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

情報解禁日時の設定はありません 情報はすぐにご利用いただけます 基礎生物学研究所配信先 : 岡崎市政記者会東京工業大学配信先 : 文部科学記者会 科学記者会 報道機関各位 2017 年 7 月 25 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所国立大学法人東京工業大学 遺伝子撹拌装置をタイミング良く染色体か

教育・研究・資金の三位一体による

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No. 1 Ⅰ. 緒言現在我国は超高齢社会を迎え それに伴い 高齢者の健康増進に関しては歯科医療も今後より重要な役割を担うことになる その中でも 部分欠損歯列の修復に伴う口腔内のメンテナンスがより一層必要となってきている しかし 高齢期は身体機能全般の変調を伴うことが多いため 口腔内環境の悪化を招く

Transcription:

細胞の増殖と DNA 複製

細胞周期とその調節 M 期 G2 期 G1 期 G0 期 S 期 増殖

間期分裂準備 2h G2 期 細胞分裂 2h M 期 G1 期 ガン遺伝子による加速 S 期 Jun Fos Ras Myc G0 期静止期 WT1 p53 RB ガン抑制遺伝子産物によるブレーキング

11 3' 3' 複製のラギング鎖 複製のリーディング鎖 3' 3' 複製のリーディング鎖複製のラギング鎖 DNA ポリメラーゼは 3' 方向に複製していく. 複製のとっかかり ( プライマー ) が必要 =RNA リーディング鎖のコピーは一気に. ラギング鎖のコピーは小さい岡崎フラグメントをつなぎ合わせるやりかたで. このRNAプライマーは消失後すぐにDN Aリガーゼで修復される 3' 3' 末端 RNA は分解され消失する 3' 3'

複製基点の認識ヘリカーゼ二本鎖 DNAの水素結合切断 (ATPの消費) DNAジャイレース ( トポイソメラーゼ ):DNA 二本鎖切断 鎖を回転 切れ目を閉じる 1 本鎖 DNA 結合タンパク質 (SSB) 再会合 ( アニーリング ) の防止 RNAポリメラーゼ ( プライマーゼ ) 複製基点にRNAプライマー (4-15bp) を作る DNAポリメラーゼ RNAプライマーの後ろ (3 末端から ) に5 3 方向に合成 ( リーディング鎖 )

DNAポリメラーゼ RNAプライマーの後ろ (3 末端から ) に5 3 方向に合成 ( リーディング鎖 ) DNAポリメラーゼ : 二量体 ( リーディング鎖用とラギング鎖用 ) ラギング鎖の合成 DNAポリメーラーゼが鋳型配列を読み取る方向と合成方向が逆向きラギング鎖の鋳型鎖をねじってポリメラーゼの中を通す

細胞分裂と寿命の問題を考える 寿命はなぜ決まっているのか 老化 加齢の問題とは何か DNA 複製における末端の問題

加齢による機能の衰え = 老化老化 : 多細胞生物に固有の現象 単細胞生物 細胞分裂をしながら現在まで何億年も生存してきた. 多細胞生物 種に固有の平均寿命を持っている. 40 30 20 10 20 才 老化の現象 40 cm2の傷の治癒日数 30 才 40 才 0 0 14 28 42 56 70 この遅延化は, 1 細胞自身の持つ増殖能力にあるのか 細胞自身に原因を求める 2 細胞が増殖するために必要な細胞外環境にあるのか コラーゲンの劣化, ホルモンや免疫系の衰え血管系の障害の進行

細胞の分裂寿命 (Proliferative lifespan) 組織 トリプシンでほぐす シャーレにまく 1 PDL 2 代培養細胞

集団倍加レベル (Population doubling level=pdl) 仮に, 継代のたびに4 倍希釈でまき直せば1 継代毎に2PDLずつ増加 8 倍希釈してまき直せば3PDLずつ増加 * 初代培養でシャーレ一杯になるまでの分裂回数がわからないのでこれは無視する

ヒト胎児器官から分離した細胞の分裂寿命 起源組織 平均 PDL 心臓 9.85 肝臓 19.75 肺臓 46.24 いくらでも増殖を続ける細胞はない.100 回を越える分裂寿命を持つものはない 50 回の分裂の最期に近づくと増殖が次第に遅くなって細胞はG0 期にはいって戻らなくなる 分裂寿命は, 由来臓器によって異なる 分裂寿命は細胞固有の性質である

繊維芽細胞供与者の年齢と分裂寿命の関係 PDL 75 Martin ら 1970 50 25 0 0-10 10-20 20-30 30-40 40-50 50-60 60-70 70-80 80-90 ( 才 )

老化を支配する遺伝子? 早く老化してしまう病気 ( 遺伝病 ) 遺伝的早老症 (Progeria) ワーナー症候群 (Warner Syndrome) PDL 75 繊維芽細胞分裂寿命と早老症 (Goldstein,1978) 50 対照群平均 25 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80

細胞の分裂寿命は遺伝子に支配されている 1. ヒト遺伝子の構造 ヒト染色体細胞分裂中期の様相テロメア (telomere) セントロメア 細胞分裂に先立って複製された染色体がセントロメア ( 動原体 ) によって束ねられている

原核生物 ( 細菌 ) の遺伝子構造 真核生物 ( 菌類 高等植物 動物 ) の遺伝子構造 直鎖の 2 本鎖構造 端がある テロメア領域 テロメア領域 - TTAGGG TTAGGG TTAGGG -----3' 6 塩基を単位とする反復配列 (repeated sequence)(ttaggg)n. ヒトでは2,000 以上反復 (12Kb)

染色体の DNA 分子 遺伝子遺伝子遺伝子 5 3 テロメア サブテロメア テロメア サブテロメア

9 DNA 複製のたびにテロメアは短くなる 線状 2 本鎖 DNA の複製問題

11 3' 3' 複製のラギング鎖 複製のリーディング鎖 3' 3' 複製のリーディング鎖複製のラギング鎖 DNA ポリメラーゼは 3' 方向に複製していく. 複製のとっかかり ( プライマー ) が必要 =RNA リーディング鎖のコピーは一気に. ラギング鎖のコピーは小さい岡崎フラグメントをつなぎ合わせるやりかたで. このRNAプライマーは消失後すぐにDN Aリガーゼで修復される 3' 3' 末端 RNA は分解され消失する 3' 3'

1930 年代 B. McClintock H.J. M u ller 末端を欠いた染色体が融合しやすいことを発見 Muller : テロメア (telomere) という用語の提唱 1972 年 E.H. Blackburn ゾウリムシ ( Tetrahymena) でテロメアDNAの繰り返し配列を発見 1972 年 J.D. Watson 1973 年 A.M. Olovnikov 5 末端の末端複製問題の提起 5 末端の末端複製問題と分裂時計 細胞老化機構の関連について提案 1984 年 C.W. Greider テトラヒメナにおいてテロメラーゼ活性の検出

早老症患者の細胞のテロメアも短い kbp 10 5 0 早老症患者 対照群 (Allsopp ら 1992)

種々の年齢のヒトから採取された繊維芽細胞の分裂可能回数とテロメアサイズの相関 PDL 60 26-51 歳 0-25 歳 40 20 51-76 歳 5 7 9 11 平均テロメアサイズ (kb)

1988 年 C.W. Greider ヒト細胞の継代培養に伴うテロメア長の短縮の発見 1990 年 N.D. Hastie ヒト組織で年齢とともにテロメア長が短縮癌組織でテロメアが短い 1992 年 C.M. Counter テロメア短縮によって細胞の寿命がつきることを証明

短縮したテロメアの修復酵素 = テロメラーゼ (telomerase) (Blackburn 1991) TAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGG-3' ATCC- 不完全な新生鎖 テロメラーゼによる伸長 TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA ATCC- AATCCCAAT TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA ATCC- GGGTTA AATCCCAAT TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA GGGTTAGGGTTAGGGTT ATCC CCCAATCCCAATCCCAATCCCAAT- DNAポリメラーゼによる伸長

多細胞生物におけるテロメラーゼの発見 テロメラーゼ触媒ユニット遺伝子のクローニング Nakamura ら (1997) Meyerson ら (1997) Kilian ら (1997) 触媒サブユニットの遺伝子導入と発現 Weinrich ら (1997) 中山ら (1998)

Bordnar ら (1998) の実験 テロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子をヒト網膜上皮細胞および線維芽細胞に導入し発現させた 培養細胞のテロメア長が長くなった培養細胞の分裂回数が 20 回以上増加した 網膜上皮細胞 54 回から74 回へ線維芽細胞 64 回から100 回 テロメアとテロメラーゼの機能についての最終証明

クローン羊ドリーのテロメア長は? 大人の羊の体細胞からクローニングしたので普通の子羊よりテロメアが短いはず? Shiels ら (1999) Nature May 27 日号 399 巻 :(316-317) Analysis of telomere lengths in cloned sheep ドリーのテロメア長が短いことを報告

有限寿命細胞 : テロメラーゼの発現がない 細胞の不死化 : テロメラーゼの発現が必申 _ 発生初期の細胞や生殖細胞 : テロメラーゼの発現の可能ォあり生殖細胞のテロメアは体細胞に比べ非常に長い 体細胞へ分化 : テロメラーゼ発現予制 ガン細胞とテロメア テロメラーゼ

PCR 法 PCR 法 (Polymerase Chain Reaction) Kary Mullis(1986) DNA のクローニングを必要とせず ごく微量の DNA があれば 標的遺伝子を簡便に解析できる 分子生物学 基礎医学 遺伝学 育種 薬学 臨床診断 犯罪捜査 考古学などなどの幅広い分野で利用され これらの分野の研究手法に一大革命をもたらした 1993 年 その功績を讃え Mullis にノーベル医学生理学賞が与えられた 5 - atttactcca gccatgctaa gaaagctacc-3 3 - taaatgaggt cggtacgatt ctttcgatgg-5

5 - atttactcca gccatgctaa gaaagctacc-3 3 - taaatgaggt cggtacgatt ctttcgatgg-5 加熱して 一本鎖に解離させる 確実に解離させるため 94 や 95 にする A-T と G-C では 水素結合の数が違うので結合力が異なり A-T の方が低い温度で解離する

A T 水素結合 2 3 G C

5 - atttactcca gccatgctaa gaaagctacc-3 5 atttactcca ctttcgatgg 5 3 - taaatgaggt cggtacgatt ctttcgatgg-5 配列がぴったりするように人工的に合成した短い DNA 分子 ( プライマー ) をくっつける このとき 温度を下げる プライマー配列の AT-GC の割合でくっつく温度が異なる たいていは 55 前後 温度を下げすぎると でたらめにくっつく

Taq ポリメラーゼによる DNA 鎖合成 A G C T PPP PPP PPP PPP 合成する材料として dntp を加えてやる この反応は 72 でおこなう

72 でだいたい 10 分くらい反応させると 反応が完成する DNA のコピーは 2 倍になっている ふたたび加熱して 一本鎖に解離させる

Taq ポリメラーゼによる DNA 鎖合成 2 コピーが 4 コピー この調子で 25 サイクルくりかえすと 2 25 倍 =33,554,432 倍つまり 3000 万倍に増幅される プライマーの設計さえ間違えなければ 目的の遺伝子を大量に手に入れることができる