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菌名原因食品及び感染したときの症状特徴 黄色ブドウ球菌 原因食品 : 弁当 おにぎりなど潜伏期間 :1~5 時間症状 : 吐き気 おう吐 下痢 腹痛などの症状が現れます ヒトや動物の化膿した傷口やおできなどに存在し 食品に付着し増殖するときに毒素を作ります 毒素は熱や乾燥に強い性質があります ウエル

年次別 主な病原体別の食中毒事件数の推移 * 腸管出血性大腸菌を含む

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2 食中毒ってなんですか? 飲食物を摂取することによって起きる 急性の胃腸障害を主症状とする健康障害のこと 大部分の食中毒事例は ある種の微生物により発生 ただし 原因 ( 病因物質 ) によっては 主症状が胃腸障害以外のものもある 昔は 食あたり とも呼ばれていた

!YAK Sample 教材! 問題 2 セレウス菌 27 セレウス菌は 短い潜伏期間で嘔吐を主徴とするタイプと より長い潜伏期間で下痢を主徴とするタイプの2 つの型があり それらの発症にはいずれも毒素が関与している (94 70) 黄色ブドウ球菌 28 Staphylococcus aureus

目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については

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HACCPの概要と一般的衛生管理

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東京都内の保健所 ( 都内自治体数 :23 区 26 市 5 町 8 村 ) 西多摩保健所 秋川地域センター 多摩立川保健所 多摩小平保健所 特別区 (23 区 ) 八王子市保健所 町田市保健所 保健所数 :23 区 2 市 6 都 (2 地区センター ) 南多摩保健所 武蔵野三鷹地域センター 多摩

設問 4 ノロウイルスに関する次の記述のうち 誤っているものを 1 つ選べ 1 ノロウイルスは 冬季を中心に年間を通して胃腸炎を起こし 特に 保育園 学校 福祉施設などでは 集団発生になりやすい傾向がある 2 ノロウイルスは ヒトの腸管内で増殖し ノロウイルスの感染者のふん便 1g 中には 100

(3) 食中毒 ( 感染症 ) の症状 セレウス菌食中毒は その臨床症状から嘔吐型と下痢型の二つに分けられます それぞれ の特徴は 表のとおりです 1), 2) 嘔吐型食中毒 下痢型食中毒 発症菌量 10 5 ~10 8 /g 10 5 ~10 8 /g 毒素産生場所 食品 小腸 潜伏期間 0.5~

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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最近の食中毒の話題

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はじめに 食中毒とは 食中毒を起こす微生物が付着して増殖した飲食物や 有毒又は有毒な化学物質 ( 自然毒 ) が含まれている飲食物を摂取することによって起こる健康障害です 東京都では 毎年 100 件程度発生する食中毒ですが 食中毒の大部分を占めるのは微生物による食中毒です このたび 食品衛生に関わ

写 29 生畜第 50 号平成 29 年 4 月 10 日 一般社団法人日本養蜂協会会長大島理森殿一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会会長早川幸男殿 農林水産省生産局畜産部畜産振興課長食肉鶏卵課長 蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症予防に係る注意喚起について 今般 東京都足立区において 乳児に対し離

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(*) ノロウイルス : 冬期に流行する人の感染性胃腸炎の原因ウィルスで 調理従事者がノロウイルスに感染していた場合に その人を介してノロウイルスに汚染された食品を食べたり または汚染されていた二枚貝を 生あるいは十分に加熱調理しないで食べることにより食中毒を起こす ( イ ) サルモネラ * 食中

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平成23年度「食肉の生食等に関する実態調査委託」報告書概要

まとめとして 図 1 のように 第 21 回の感染の過程 第 22 回で触れました感染全体に関する3つの要因をここでは 3つのポイントとして大きな円で括りまとめました このようにいつかの過程も 大きく分けると以下の 3つのポイントになります 感染のしくみにおける3つのポイント Ⅰ. 病原体 : 感染

平成 27 年 3 月 4 日農林水産省消費 安全局 平成 27 年度食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス モニタリング年次計画 1. 基本的な考え方食品安全行政にリスクアナリシスが導入され 科学に基づいた行政の推進が必要となっています このため 農林水産省は 食品の安全性

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ファクトシート 作成日 : 平成 23 年 11 月 24 日 エルシニア症 (Yersiniosis) 1 エルシニア症とは エルシニア症は Yersinia 属菌の中で一般的に食中毒菌として知られる Yersinia enterocolitica と仮性結核菌として知られる Yersinia p

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平成19年度

(案)

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食中毒の原因となる主な細菌やウイルス 食中毒とは 有害な微生物や物質に汚染された食品を食べることで起きる健康被害のことです 多くの場合 嘔吐 腹痛 下痢 発熱などの急性胃腸炎症状を起こします カンピロバクター 原因食品特徴潜伏期間 症状予防法 加熱不十分な食肉など 熱 乾燥に弱い 通常の加熱調理で死

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(2) 平成 29 年食中毒発生状況 / 速報値 ( 千葉市 船橋市 柏市含む ) 1 月別発生状況 年 月 計 件数 患者数

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2001年(平成13年)10月1日創刊  2007年(平成19年) 1月1日発行

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2. トイレの後には必ず手洗いをしましょう! 調査から 15.4% の方がトイレの後に手を洗わないことがあるという結果が得られました ( 小便後又は大便後に手を洗うのどちらかを選択しなかった方 どちらも選択しなかった方 トイレで手を洗わないを選択した方 の合計 ) Q10 特にこれからの季節に流行す

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性食中毒である きのこ類による食中毒や貝毒による食虫毒は 毒素型の自然毒食中毒である ウエルシュ菌や ベロ毒素陽性の大腸菌が原因の場合には 感染毒素中間型細菌性食中毒に分類 されるべきものである 学校医が知っておくべき食中毒に関連する法律は 主に食品衛生法と感染症法 それに学校保健安全法である 食品

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

食品には たんぱく質や脂質 炭水化物などの栄養成分が含まれています 私たちが健康な生活を送ることができるのは 食品から必要な栄養を必要な量とっているからです 食材を加熱すると 食材に天然に含まれている成分から新たな成分ができることがあります それによって 例えばパンを焼いたときの美味しそうな色 コー

表紙2

食品安全委員会の構成 食品安全委員会は 7 人の委員から構成されています 食品安全委員会委員 12 の専門調査会と 5 つの WG 企画等 : 企画 緊急時対応 リスクコミュニケ - ション 企画等 ( 企画 リスクコミュニケーション 緊急時対応 ) 化学物質系 : 農薬 添加物など 生物系 : 微

HACCP 自主点検リスト ( 一般食品 ) 別添 1-2 手順番号 1 HACCP チームの編成 項目 評価 ( ) HACCP チームは編成できましたか ( 従業員が少数の場合 チームは必ずしも複数名である必要はありません また 外部の人材を活用することもできます ) HACCP チームには製品

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生食用鮮魚介類等の加工時における殺菌料等の使用について 平成 25 年 3 月食品安全部 1. 経緯食品への添加物の使用については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和 34 年厚生省告示第 370 号 以下 規格基準 という ) の第 2 添加物の部において

Q&A(各自治体宛)

黄色ブドウ球菌 人や動物に常在し 手指等に傷があると感染して化膿巣を作るため 食品取扱者を介した食品汚染が極めて高い菌です 食品中で食中毒を発症させる毒素 ( エンテロトキシン ) を産生します 塩濃度が高い環境でも増殖し毒素が産生されるので 原因食品は多岐にわたります 潜伏期間は平均 3 時間と短

規格基準食品衛生法に基づき 食品や添加物等について一定の安全レベルを確保するために定められた規格や基準で 規格基準に合わない食品等は製造 使用 販売等が禁止されています 寄生虫他の動物に寄生し栄養分をとり生活する生物であり 食中毒の原因となるものではアニサキスやクドア セプテンプンクタータなどがあり

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

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(4) 薬剤耐性菌の特性解析に関する研究薬剤耐性菌の特性解析に関する知見を収集するため 以下の研究を実施する 1 家畜への抗菌性物質の使用と耐性菌の出現に明確な関連性がない家畜集団における薬剤耐性菌の出現又はこれが維持されるメカニズムについての研究 2 食品中における薬剤耐性菌の生残性や増殖性等の生

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

サルモネラ食中毒とは? 症状は? 食後 6~48 時間で おう吐 腹痛 下痢 発熱など 乳幼児や高齢者は 症状が重くなることもある 原因になりやすい食品は? 加熱不足の卵 肉などが原因になりやすい 生の肉に使った包丁で切った調理済みの食品も原因に 害虫やペットが 菌を食品に付けてしまうことも ( 農

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名称未設定

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参考資料 1 野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン 平成 26 年 5 月 鳥獣保護法の改正に伴い 今後 野生鳥獣の捕獲数が増加し 食用としての利活用が増加する見込みであり 食用に供される野生鳥獣肉の安全性の確保を推進していく必要がある 1 1 平成 26 年 5 月 22 日参議院環境委員会附

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はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます

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( 参考資料 Ⅰ) 1 調理室等の汚染防止について大量調理施設衛生管理マニュアル ( 以下 マニュアル という )Ⅱ 3 (3) のとおり汚染作業区域 ( 検収場 原材料の保管場 下処理場 ) と非汚染作業区域 ( さらに準清潔作業区域 ( 調理場 ) と清潔作業区域 ( 放冷 調製場 製品の保菅場

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表 1-2. コーデックスガイドライン (Codex Guidelines)2018 年 2 月現在 78 ガイドライン コーデックスガイドラインは 食品の安全性 品質 取込み可能性を確実にするために 証拠に基づいて 情報と助言を推奨手順と同時に提供するものである ガイドラインタイトル策定 部会 最

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Transcription:

食中毒ってなあに? 農林水産省消費 安全局 消費 安全政策課 1 (c) 農林水産省

要約 食中毒の主な原因は微生物で その原因菌は 食材ごとに特徴的であることが多いです 生で食される食品は 無菌なわけではありません 特に 乳幼児や高齢者等抵抗力が弱い方は できるだけ火を通したものを食べましょう 加熱は 食中毒を予防する有効な手段ですが 食品を加熱したことに油断してはいけません 微生物による食中毒を予防する 3 原則は 汚染防止 増殖防止 殺菌 です 2 (c) 農林水産省

食中毒とは 食品に起因する下痢 腹痛 発熱 嘔吐などの症状の総称 食中毒とは 食品に起因する下痢 腹痛 発熱 嘔吐などの症状の総称で 原因によって症状は様々です なお 微生物のノロウイルスや O157 などは 食中毒の原因になることがありますが それらに感染したからといって必ずしも食中毒とよばれるわけではありません なぜなら ノロウイルスは感染者の嘔吐物や便などから O 157 は感染者の便や保菌牛等から 食品を経由することなく 直接ヒトに感染することがあるからです この場合は 食品を経由しませんので 食中毒とは言いません 3 (c) 農林水産省

食中毒の届出状況 年次 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 事件数 1,928 1,850 1,585 1,666 1,545 1,491 1,289 患者数 25,862 27,629 29,355 28,175 27,019 39,026 33,477 死者数 4 18 6 5 7 6 7 厚生労働省 年次別食中毒発生状況 より 国内では 年間 1,500 件前後 人数でいえば 30,000 人前後の食中毒の発生があります しかし これらの数値は 医療機関から保健所に届けられた数であり 症状が軽く医療機関にかからない人などもいるので 実際には もっと多くの食中毒が発生していると考えられます 一説にはこの 100~150 倍とも言われています 4 (c) 農林水産省

食中毒の原因 1 微生物 細菌 : サルモネラ 病原性大腸菌等 ウイルス : ノロウイルス等 天然毒素 : ふぐ毒 きのこ毒等 化学物質 ( 天然毒素を除く ): メタノール PCB 等 食中毒の原因は 大きく分けて サルモネラや病原性大腸菌のような微生物 ふぐ毒やきのこ毒のような天然毒素 メタノールや PCB のような化学物質があります また 微生物には 細菌 ウイルスなどがあります 5 (c) 農林水産省

食中毒の原因 2 厚生労働省 年次別食中毒発生状況 より 平成 17 年には 食中毒の原因のうち約 9 割が微生物 ( 細菌約 6 割 ウイルス約 3 割 ) によるものでした その年によって割合に変化がありますが 微生物による食中毒が大多数を占めることは変わりません 6 (c) 農林水産省

( 参考 ) 細菌とウイルス 細菌 大きさは 1~10 μm(1 μm =1/1000 mm) 形は桿状 球状 らせん状 自己増殖能を持つ ウイルス 大きさは10~300 nm(1 nm=1/1000000 mm) 形は球形 正二十面体など 生きた細胞の中でしか増殖できない 細菌は 大きいものでも100 分の1ミリ 小さいものでは 1000 分の1ミリほどしかありません 形は 桿状 ( 棒のような形 ) 球状 らせん状など様々です 細菌の特徴として 栄養があれば 自分の力で増えることができます よって 食品に細菌が付着すれば そこで増える可能性があります 一方 ウイルスはもっと小さく 細菌の100 分の1くらいしかありません 形は球形 正二十面体など様々です ウイルスは 細菌と違い 生きた細胞の中でしか増えることができません そのため 食品に付着しても 生き残ることはできますが 増えることはできません 7 (c) 農林水産省

微生物による食中毒の分類 感染型摂取した原因菌が腸管内で増殖することが原因 毒素型食品内で原因菌が増殖し 産生された毒素を摂取することが原因 生体内毒素型摂取した原因菌が腸管内で増殖し 毒素を産生することが原因 微生物による食中毒は 摂取した原因菌が腸管内で増殖することが原因となる 感染型 食品内で原因菌が増殖し 産生された毒素を摂取することが原因となる 毒素型 摂取した原因菌が腸管内で増殖し 毒素を産生することが原因となる 生体内毒素型 に分けられます 8 (c) 農林水産省

感染型食中毒の原因菌と主な原因食材 サルモネラ 食肉 卵 カンピロバクター 鶏肉 腸炎ビブリオ 魚介類 感染型食中毒の主な原因菌は サルモネラ カンピロバクター 腸炎ビブリオなどです サルモネラは動物の腸管内に生息しているため 動物の解体処理の過程で糞便により食肉が汚染されたり 菌を持っている鶏から生まれた卵が汚染されることがあります カンピロバクターも同様に鶏肉を汚染することがあります 腸炎ビブリオは海水中に生息しているので そこで捕獲された魚介類を汚染することがあります 9 (c) 農林水産省

毒素型食中毒の原因菌と主な原因食材 黄色ブドウ球菌 穀類及びその加工品 ( おにぎりなど ) ボツリヌス菌 発酵食品 缶詰 瓶詰 蜂蜜 セレウス菌 ( 嘔吐型 ) 穀類及びその加工品 ( チャーハンなど ) 毒素型食中毒の主な原因菌は 黄色ブドウ球菌 ボツリヌス菌 セレウス菌などです 黄色ブドウ球菌は ヒトや動物の皮膚や粘膜に常在し 手で触ったりすることで穀類やその加工品が汚染されることがあります その典型的な例がおにぎりです ボツリヌス菌は 酸素のない環境で増殖することから 空気が遮断された いずし のような発酵食品や缶詰 瓶詰が長期間保存される間に菌が増え 産生された毒素で食中毒になることがあります また 乳児ボツリヌス症の原因食材として 蜂蜜が報告されています セレウス菌は 自然界に広く存在し 穀類などの食品素材に常在しています よって チャーハンなどを長時間室温に置いておくなど 不適切な温度管理によって菌が増え 産生された毒素で食中毒になることがあります 毒素型食中毒では 菌は死んでも 毒素が食品中に残ることにより食中毒が発生することがあります 10 (c) 農林水産省

生体内毒素型食中毒の原因菌と主な原因食材 ウエルシュ菌 加熱調理食品 ( カレー等 ) セレウス菌 ( 下痢型 ) 種々の食品 腸管出血性大腸菌 牛肉 生体内毒素型食中毒の主な原因菌は ウエルシュ菌 セレウス菌 腸管出血性大腸菌などです ウエルシュ菌は 自然界に広く存在し 食品素材に常在しています よって カレーなどの加熱調理食品を長時間室温に置いたり 中途半端に再加熱するなど 不適切な温度管理によって菌が増え 食中毒になることがあります 腸管出血性大腸菌は 動物の腸管内に生息しているため 動物の解体処理の過程で糞便により食肉が汚染されるなどして 牛肉などの畜産物を汚染することがあります 11 (c) 農林水産省

食中毒の発生時期 夏だけでなく 冬にも発生は多い 厚生労働省 年次別食中毒発生状況 より 食中毒の発生時期は 食中毒菌が増殖しやすい暑い夏場が中心です しかし 夏だけではなく 冬にも多くの食中毒 ( 主にウイルス性 ) が発生していることに注意が必要です 12 (c) 農林水産省

食品と食中毒菌 微生物は 環境中 ( 土壌 水など ) や動物の腸管内に生息しているため 食品を汚染します 生産加工流通消費 汚染汚染汚染汚染増殖増殖増殖 食中毒を起こす菌は 特別な菌ではありません 土壌や水などの環境中や ヒトも含めた動物の腸管や皮膚などにも存在しています そのため 食品が生産 加工 流通 消費される各段階で これらの食中毒菌に汚染される可能性は常にあります さらに 汚染があった後に不適切な温度管理があると 食中毒菌は増えます 家庭での消費の段階を例にすると 汚染 については 生の肉や魚の汁が生で食べるものや調理後の食品にかかったり 生の肉や魚を切った後の包丁やまな板などをきちんと洗わずに生で食べるものや調理後の食品に使ったりすることで起こります 増殖 については 生で食べるものや調理後の食品を室温で長時間放置することで起こります 13 (c) 農林水産省

生で食される食品 刺身 生卵 レバ刺し サラダ 生ガキ など 生で食べられる食品は無菌なの? NO! 生ではなくても ステーキのレアやタタキなど 十分に加熱されずに食される食品もあります 食中毒菌に汚染された食品を生で食べると 食中毒になる可能性は高くなります 生で食べられる食品は 数多くあります また 生ではなくても レアやタタキのように加熱が十分ではないものもあります しかし これらの食品は 無菌ではないのです 14 (c) 農林水産省

生で食される食品に存在している可能性のある主な食中毒菌 刺身 : 腸炎ビブリオ 生卵 : サルモネラ レバ刺し : 腸管出血性大腸菌 カンピロバクター サラダ : 腸管出血性大腸菌 サルモネラ 生ガキ : ノロウイルス とり刺し : カンピロバクター サルモネラ 食中毒菌は その菌がどこに生息しているかなどによって 汚染する可能性のある食品にある程度の特徴があります 例えば 刺身は 海水中に生息している腸炎ビブリオによって汚染されることがあります また 卵は 鶏の腸内に生息しているサルモネラによって汚染されることがあります 15 (c) 農林水産省

生の食品が原因の食中毒事例 年月場所食材原因菌患者数 2007.3 石川 牛レバ刺し腸管出血性大腸菌 2 2007.8 静岡 牛レバ刺しカンピロバクター 7 2007.8 鹿児島 とり刺し サルモネラ 11 2007.9 宮城 いかの塩辛 腸炎ビブリオ 620 2006.9 米国ホウレンソウ腸管出血性大腸菌 205 (3) 1: 国内の患者数は 厚生労働省 食中毒発生事例 より 2:( ) 内の数値は死者数 毎年 国内では 生の食品が原因の食中毒が多数発生しています ( スライドは一例 ) 米国では 2006 年に 腸管出血性大腸菌に汚染されたホウレンソウを生で食べるなどして多数の食中毒患者が発生し 死者も出ました 16 (c) 農林水産省

コラム : 生肉を食べても大丈夫? 最近は 牛肉や鶏肉だけでなく 以前は寄生虫感染のおそれがあるため生で食べなかった豚肉も生で食べる事例も出てきました しかし E 型肝炎ウイルスのような新たな食中毒菌も報告されていますし 生の牛肉 鶏肉やレバーによる食中毒も毎年のように報告されています 豚肉に限らず 新鮮な牛肉や鶏肉であっても食中毒菌に汚染されていることがあるため 食肉は 十分加熱することをお勧めします ( 参考 ) 時々 SPF 豚 のことを 無菌豚 と記載して販売されていることがありますが SPF 豚 は 豚の健康に悪影響を与える 特定の病原体がいない 豚のことであり 決して 無菌 なわけではありません ですから SPF 豚 であれば生で食べても食中毒にならないというわけではありませんので 注意が必要です 17 (c) 農林水産省

どのように食中毒を防ぐか 汚染防止 増殖防止 殺菌 食中毒予防の 3 原則 食中毒菌による汚染防止 生産加工流通消費 加熱 食中毒菌の増殖防止 加熱 食中毒を予防するためには 食品中の食中毒菌をできるだけ少なくするために 汚染防止 ( 食中毒菌を食品に付けない ) 増殖防止 ( 食中毒菌を増やさない ) 殺菌 ( 食中毒菌を殺す ) が重要です しかし 生の食品には このうち 殺菌 の手段として有効な 加熱 がされていません 汚染防止 や 増殖防止 が確実に守られるなら 生の食品による食中毒が起こる可能性は低くなりますが 食中毒菌が 環境中や動物の腸管などに一般に存在していることから考えると 食品に食中毒菌を付けないということは簡単ではありません また 食品についている菌がどれくらい増えているのか確認をすることもできないことから考えると やはり殺菌 ( 家庭における加熱 ) という過程は重要になります 18 (c) 農林水産省

生の食品を食べる際の注意 生で食される食品は 無菌なわけではありません 要冷蔵のものは冷蔵庫の中で保存し 消費期限を参考にして早めに食べ切るようにしましょう 特に 乳幼児や高齢者等抵抗力が弱い方は できるだけ火を通したものを食べましょう 食中毒菌がいても 食品の見た目 味 においではわかりません これまで見てきたように 生で食される食品といっても無菌なわけではありません そのため 汚染防止 増殖防止 及び 殺菌 の食中毒予防の 3 原則を意識しながら 要冷蔵のものは冷蔵庫の中で保存し 消費期限を参考にして早めに食べ切るなどの注意が必要です 特に 抵抗力の弱い方は 食中毒の症状が重くなる可能性がありますので 乳幼児や高齢者等は できるだけ加熱したものを食べることをお勧めします なお 生の食品に限らず 食品が食中毒菌に汚染されていても 見た目 味 においではわからないので注意が必要です 19 (c) 農林水産省

加熱による殺菌 加熱を十分に行うことで もし 食品中に食中毒菌がいたとしても殺すことができます 目安は 中心部の温度が 75 で 1 分間以上加熱することです ただし 加熱温度と加熱時間によって 死滅または生残する微生物は異なります 加熱さえすれば食中毒は防げるか? NO! 加熱 は 有効な殺菌の手段であり 一般に 加熱を十分に行うことで もし 食品中に食中毒菌がいたとしてもほとんどの菌は殺すことができます しかし 加熱さえすれば 必ずしも食中毒を防げるわけではありません ( 参考 ) 殺菌 とは 食品の安全性や品質を損なう菌を殺すことであり それ以外の菌は生存している可能性がありますので 必ずしも 無菌 の状態になるわけではありません 一方 滅菌 ( めっきん ) は 全ての微生物を死滅させる方法であり これにより 無菌 の状態になります 20 (c) 農林水産省

加熱食品と食中毒菌 1 二次汚染の可能性 加熱後の食品が食中毒菌に汚染 生産加工流通消費 汚染加熱汚染 一次汚染 二次汚染 加熱をしても必ずしも食中毒を防げない理由のひとつとして 二次汚染が挙げられます 食品の原材料が汚染されることを一次汚染といいます 一次汚染されていても 加熱等により殺菌することで食中毒菌は死にますが その後 再度食中毒菌が付着することを二次汚染といいます 二次汚染によって 一度加熱した食品でも食中毒の原因になることがあります 焼肉を例にすると 生肉が食中毒菌に汚染されている ( 一次汚染 ) 場合 生肉をつかんだ箸にも食中毒菌がついてしまうので その箸で焼いた肉をつかむと 加熱後の肉も食中毒菌に汚染されてしまいます ( 二次汚染 ) 21 (c) 農林水産省

加熱食品と食中毒菌 2 加熱では不活化されないものがある 芽胞 耐熱性毒素 芽胞ってなに? 耐熱性毒素ってなに? もうひとつの理由として 芽胞 を形成する菌や 耐熱性毒素 を産生する菌の存在があります 芽胞 や 耐熱性毒素 は 熱に強く 通常の加熱では毒性を失いません 22 (c) 農林水産省

芽胞 納豆菌やボツリヌス菌などは 生活環境が 悪くなると 加熱 乾燥 薬剤等に対して強い抵抗性を持つ芽胞を細胞内に形成する ボツリヌス菌芽胞の殺菌には 120 4 分が必要 芽胞産生菌と主な食中毒原因食材 セレウス菌 穀類及びその加工品ボツリヌス菌 缶詰 瓶詰 蜂蜜ウエルシュ菌 加熱調理食品 納豆菌やボツリヌス菌などは 生活環境が悪くなると 加熱 乾燥 薬剤等に対して強い抵抗性を持つ 芽胞 を細胞内に形成します ボツリヌス菌の芽胞の殺菌には 120 4 分が必要です よって 通常の加熱では芽胞は殺菌されないため それがボツリヌス菌のような食中毒菌の芽胞であった時には 食中毒の原因になることがあります このような芽胞を形成する食中毒菌には セレウス菌 ボツリヌス菌 ウエルシュ菌などがあります 23 (c) 農林水産省

耐熱性毒素 黄色ブドウ球菌は 食品中で毒素を産生するが これは 通常の加熱調理によって毒性を失うことはない 黄色ブドウ球菌による食中毒食中毒の主な原因食材 穀類及びその加工品 平成 12 年には 加工乳を原因とする大型集団食中毒 ( 患者数約 15,000 人 ) が発生 耐熱性毒素を産生する代表的な食中毒菌は 黄色ブドウ球菌です この毒素は 通常の加熱調理によって毒性を失うことはありません 黄色ブドウ球菌については 平成 12 年に 加工乳を原因とする集団食中毒が発生しています この食中毒事件では 加工乳の原料のひとつである脱脂粉乳の製造過程において停電が発生し 黄色ブドウ球菌が増殖しやすい温度条件になったことから 毒素が産生されたと報告されています しかし その後の加熱処理によっても毒素は毒性を失わなかったことから その脱脂粉乳を使用した加工乳などにより食中毒が発生しました 原因となった加工乳などからは 黄色ブドウ球菌は検出されず 毒素のみが検出されました 24 (c) 農林水産省

加熱 したと油断しないで! 加熱後にも 手指 調理器具 他の食材等から二次汚染する可能性があります 加熱により 全ての病因物質の毒性がなくなるわけではありません 調理後の食品であっても 室温に長く放置してはいけません これまで見てきたように 加熱は有効な殺菌の手段ではありますが 加熱さえすれば必ずしも食中毒を防げるわけではありません 加熱後に 手指 調理器具 他の食材等から食中毒菌が二次汚染する可能性がありますし 加熱によって全ての病因物質の毒性を失わせることができるわけではないからです よって 加熱したことに油断せず 調理後の食品であっても 室温に長く放置しないなどの注意が必要です 25 (c) 農林水産省

ご参考 農林水産省ホームページ 食中毒から身を守るには http://www.maff.go.jp/syohi_anzen/foodpoisoni ng/index.html 26 (c) 農林水産省