新しい関節リウマチの診断基準 2010 年 ACR/EULAR 分類基準 これまで 1987 年に作成された米国リウマチ協会の分類基準が広く用いられてきましたが こ の基準では関節リウマチの早期診断には不向きであることがかねてより指摘されてきました この度 2010 年にアメリカリウマチ協会 (AC

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

リウマチ膠原病通信 第6回前編

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リウマチ対策(H17~)の評価 と現在の問題点

関節リウマチ ( RA) 治療薬の効果評価法と応答性の個人差に関する 遺伝要因の検討 Studies on Scoring Methods of Drug E fficac y and G enetic Factors Associat ed with Inter-p atient Variab i

N-ニトロソ-フェンフルラミン

知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

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日本内科学会雑誌第104巻第3号

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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ACR RA 治療ガイドラインの主な追加 変更点 1) 予後不良因子の有無が除外された 2) 疾患活動性が 3 分割から 2 分割へ変更された 3) 初期治療が DMARD 単独療法に統一された 4) 生物学的製剤として TNF Non-TNF が併記された 5) TOF が追加され

情報提供の例

日本内科学会雑誌第98巻第12号

スライド 0

医療法人 ( 社団 ) ヤマナ会 東広島記念病院広報誌 Vo l.4 No.1 発行日 2011 年 創刊日 2008 年 3 月 1 日 4 月 21 日 理念 1. 私共は医道を尊び 規律を守り社会的責務にこたえます 2. 私共は常に研鑽し信頼される病院を創ります 3. 私共は安全な医療を提供出

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生物学的製剤 6 剤の実際の寛解中止率と骨軟骨破壊抑制効果 相生会杉岡記念病院長嶺隆二 2013 年第 14 回博多リウマチセミナー 2013 年 1 月現在 RA に対して生物学的製剤は 6 剤が使用可能である それぞれの薬剤の臨床成績や関節破壊抑制効果は報告されているものの これらの 6 剤を比

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

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スライド 1

市民公開講座知って安心リウマチ治療の今 リウマチ患者様を安心 安全に寛解へと導くクリニックの工夫 スライド中のイラストは イラスト AC より利用規約に則り使用しています あずまリウマチ 内科クリニック院長東孝典

日本内科学会雑誌第104巻第9号

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

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(別添様式1)

汎発性膿庖性乾癬の解明

研究成果報告書


資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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2. 方法生物学的製剤投与を受ける RA 患者 3 名に下肢のリウマチ体操を実施前評価時に指導した. また次回来院する 4 週間後まで 1 日 1 回疼痛の生じない範囲で行うよう注意を行った. リウマチ体操実施前と実施 1 か月後の両時点において圧痛関節数, 腫脹関節数,CRP, 疼痛 Visual

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

クローン病 クローン病の患者さんサポート情報のご案内 ステラーラ を使用される患者さんへ クローン病に関する情報サイト IBD LIFE による クローン病治療について ステラーラ R を使用されているクローン病患者さん向けウェブサイトステラーラ.j

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

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1 リウマチ対策の現状と問題点 (1) 我が国におけるリウマチ対策の現状アリウマチ患者の動向我が国におけるリウマチの患者数は 一般的に約 70~80 万人といわれているが リウマチの年間発症数や罹患している患者数等に関する情報は 十分には把握されていない なお 本報告書において リウマチとは関節リウ

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検査項目情報 抗 SS-A 抗体 [CLEIA] anti Sjogren syndrome-a antibody 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5G076 分析物 抗 SS-A 抗体 Departme

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己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

関節リウマチ

RA 生物学的製剤の長期における上手な使い方 社会医療法人天神会古賀病院 21 リウマチセンター福田孝昭 (2017 年第 18 回博多リウマチセミナー ) 1. はじめに 2013 年 2 月 ペグ化抗 TNF 抗体セルトリズマブペゴルが上市され 我々はいわゆる生物学的製剤 (BIO)7 剤を使用

感じる 手指の好発部位は 近位指節間 (PIP:proximal interphalangeal) 関節 中手指節 (MCP : metacarpophalangeal ) 関節 足趾の好発部位は 中足趾節 (MTP : metatarsophalangeal) 関節であり 腫脹 圧痛をしばしばきた

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関節リウマチ(RA)に対するIL-6阻害療法施行ガイドライン

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

の主要な治療薬として日本ならびに世界で広く使用されている MTX の使用により 関節リウマチの臨床症状の改善 関節破壊進行抑制 QOL 改善のみならず 生命予後の改善や心血管合併症リスクが軽減されることが示されており 現在の関節リウマチ治療においては必要不可欠な薬剤である 1990 年前後から MT

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094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

ダラツムマブってどんな薬? 初発の患者さん ( 初めて治療を受ける患者さん ) の治験募集についてー 米国で承認された ダラツムマブ という新薬について Q&A 形式でご紹介します Q&A の監修は 名古屋市立大学病院血液 腫瘍内科診療部長飯田真介先生です Q1 ダラツムマブという薬が米国で承認され

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表 1 RA(-) 患者の背景表 2 RA(+) 患者の背景 2. 方法 RA(+) 患者 5 名,RA(-) 患者 5 名, 健常者の学生 14 名にインフォームド コンセントを行う. 承諾を得た 24 名を対象とし, 年齢 性別 利き手など基本データを収集したうえで, 関節超音波検査を行い, 得

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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BV+mFOLFOX6 療法について 2 回目以降 ( アバスチン +5-FU+ レボホリナート + エルプラット ) 薬の名前アロキシ注吐き気止めです デキサート注 アバスチン注 エルプラット注 レボホリナート注 作用めやすの時間 5-FU の効果を強める薬です 90 分 2 回目から点滴時間が短

膿疱性乾癬の効能追加 ( 承認事項の 部変更承認 ) に伴う改訂 改訂内容 ( 該当部のみ抜粋 ) 警告 1.~3. 4. 関節リウマチ患者では, 本剤の治療を行う前に, 少なくとも 1 剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること. また, 本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使

301128_課_薬生薬審発1128第1号_ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドラインの一部改正について

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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平成14年度研究報告

目次 C O N T E N T S 1 下痢等の胃腸障害 下痢について 3 下痢の副作用発現状況 3 最高用量別の下痢の副作用発現状況 3 下痢の程度 4 下痢の発現時期 4 下痢の回復時期 5 下痢による投与中止時期 下痢以外の胃腸障害について 6 下痢以外の胃腸障害の副

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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関節リウマチとは 関節リウマチは (RA) は 私たちの最も身近にある膠原病で 日本人における有病率は約 0.6% で 60~70 万人の患者さんがいるといわれ 男女比は 1:3-4 との報告が多くみられます か つては有病率のピークは 40~60 歳代にあると報告されていましたが 近年の疫学調査では ピ ークが 50~70 歳代にシフトしています これは本邦における人口構成の高齢化が RA 患者に も反映されていると考えられています RA は進行性の機能障害 関節以外の前身の合併症 寿命の短縮そして失業などに伴う社会経済 的損失などを伴う疾患で 自己免疫性疾患の中では 前述の通り 身近な疾患の一つであります RA は関節滑膜の原因不明の慢性炎症によって産生される炎症性サイトカインと MMPs といっ た組織破壊酵素によって関節軟骨と骨破壊をきたす疾患として特徴づけられます 関節局所で は マクロファージ T 細胞 プラズマ細胞 滑膜線維芽細胞 好中球 肥満細胞 破骨細胞 軟骨細胞を巻きこんで パンヌスと呼ばれる肉芽組織を形成し 関節破壊が進行して参ります RA の原因は 依然として不明ですが RA の病態の理解が進歩により 素晴らしい効果を発揮 する新しい治療が生まれてきています 近年の新しい治療戦略は 診断後速やかに積極的な治療 を開始し リウマチ疾患活動性を制御 評価し 臨床的寛解を維持するものであります 当然の ことながら こうした治療により RA 患者の予後にも良い影響をもたらして来ています

新しい関節リウマチの診断基準 2010 年 ACR/EULAR 分類基準 これまで 1987 年に作成された米国リウマチ協会の分類基準が広く用いられてきましたが こ の基準では関節リウマチの早期診断には不向きであることがかねてより指摘されてきました この度 2010 年にアメリカリウマチ協会 (ACR) とヨーロッパリウマチ協会 (EULAR) が合同で新 しい関節リウマチの分類基準が発表となりました 小関節重視 リウマチ因子 (RF) と抗 CCP 抗体に比重を重くし これまでになかった炎症反応にも配点を与えています 合計で 6 点を超 えると RA と分類します 一方で 左右対称性 6 週間以上の病歴 リウマチ皮下結節 レント ゲン所見といった項目が基準からなくなり 将来 持続的関節炎 関節破壊をきたす可能性の高 い方を選択するのに優れた方法と言えます

早期の関節リウマチではレントゲン変化を捉えることはしばしば困難です 2012 年 ヨーロッ パリウマチ協会では clinical practice task force を組織し 画像診断の recommendation を発 表しています 関節炎診断の精度を上げる 予後予測の観点から関節 MRI と関節エコー検査は 高く評価されています 当院では こうした画像診断を活用して 病状のより適正な評価に努め ております 関節エコーと MRI の画像を示す

関節 MRI 矢印は骨びらん 関節エコー 矢印は滑膜炎 関節リウマチの新しい治療ゴール 寛解基準 と T2T 高血圧や糖尿病では明確な治療目標が設定されています 例えば 糖尿病ですとヘモグロビン a1c が 6.5%未満とされています これまで RA の良い治療薬がなかったこともあり 治療目標 もあいまいな時代が長く続きました しかし 近年のめざましいリウマチ医療の進歩により 早

期リウマチを診断できる新しい基準と有効性の高い薬物療法が登場して参りました RA 治療に おいても適切な治療目標を設定し それに向けての具体的なコンセンサスが世界的に形成され つつあります T2T は treat to target の略で 目標達成に向けた治療 と訳されています 臨床的寛解 場 合によっては低疾患活動性を治療の目標として 患者さんの病態にあわせた薬を選択し 目標に 向けて進んで参ります 重要なことは 目標達成後もその状態を維持することです 最新の寛解 基準 T2T に向けた推薦事項 診断から治療の流れを示します CDAI, SDAI というリウマチ疾患活動性指標を使い病状を評価します CDAI= 腫れのある関節数 (TJC)+ 痛みのある関節数 (SJC)+ 患者の全般評 価 ( 患者 VAS)+ 医師の全般評価 SDAI= 腫れのある関節数 (TJC)+ 痛みのある関節数 (SJC)+ 患者の全般評 価 ( 患者 VAS)+ 医師の全般評価 +CRP(mg/dl)

疾患活動性 CDAI SDAI 寛解 CDAI 2.8 SDAI 3.3 低 2.8<CDAI 10 3.3<SDAI 11 中等度 10<CDAI 22 11<SDAI 26 高 22<CDAI 26<SDAI

関節リウマチの治療 1. 薬物療法 2. 手術療法 3. リハビリテーション 4. 教育 啓蒙 関節リウマチは 手のこわばりや多発性関節炎を来す代表的疾患です 関節炎をきたす病気は沢 山ありますが その中で原因不明の慢性関節炎を来すのが 関節リウマチや膠原病に伴う関節炎 です この 10 年 関節リウマチの治療は飛躍的に進歩し これまでは不治の病といわれてきたものが 今では病気をコントロールすることができ 中には治ったようになる方もいます こうした変化 は 早期の診断技術と新しい薬によってもたらされました 当院では 関節エコーや MRI によ り早期の関節リウマチを診断するとともに 新たに開発された抗リウマチ薬を上手に使うこと によって強い関節炎をコントロールし患者の皆様のニーズに応えております また 既存の薬で

不十分な場合には治験による治療も募集しております 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs) RA の治療戦略は この 10 数年で大きく変貌しました 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs) は抗リウマチ薬 (DMARDs) の効果が出るまでの間の橋渡し的使用という位置づけとなってい ます ( 表 1) 表 1 NSAIDs の分類 分類一般名商品名 サリチル酸系 各種アスピリン インドメタシン インテバン アリール酢酸系 ジクロフェナク ボルタレン スリンダク クリノリル プロピオン酸系 イブプロフェン ロキソプロフェン ブルフェン ロキソニン フェナム酸系メフェナム酸ポンタール オキシカム系 ピロキシカム メロキシカム フェルデン バキソ モービック

ロルノキシカム ロルカム コキシブ系セレコキシブセレコックス NSAIDs の副作用 消化器障害 肝機能障害 腎機能障害 過敏症 喘息 血液障害 トップへ戻る ステロイド剤 2016 年の欧州リウマチ学会の勧告では 少量から中等量のステロイド剤を DMARDs に追加 併用することは 短期間であれば有用であることが明示されました ただし 可能か限り早い段 階で減量していくべきです 次のような時に 関節リウマチの関節炎の治療にステロイド剤を使 用します (a) 活動性関節炎があること (b)nsaids が効果不十分であること (c)dmards との併用で 期間限定で DMARDs の効果が出るまでの橋渡し的な使用

抗リウマチ薬 抗リウマチ薬は 疾患修飾性抗リウマチ薬 (disease modifying anti-rheumatic drugs: DMARDs) ともよばれ 炎症自体を抑える作用は持たないが RA の免疫異常を修飾することのよ って RA の活動性をコントロールする薬剤です 抗リウマチ薬は その作用機序から免疫調節 剤と免疫抑制剤に分類されます 日本では現在 表 2 のような合成 DMARDs が承認されていま す 特に メトトレキサート (MTX) は 2016 年の欧州リウマチ学会の勧告で 使用にあた り禁忌事項のない場合には 最初に用いられる薬剤です 日本においても 2011 年の公知申請に よって MTX は 初回の RA 治療薬として承認され 週 16mg まで使用することが可能となって います 表 2 経口 DMARDs 一覧 一般名商品名注意すべき副作用 金チオリンゴ酸 ナトリウム シオゾール 皮膚炎 口内炎 肝障害 腎障害 血液 障害 間質性肺炎 オーラノフィン リドーラ 下痢 軟便 発疹 口内炎 味覚異常 肝障害 腎障害 血液障害 間質性肺炎 D- ペニシラミンメタルカプターゼ 皮膚炎 肝障害 腎障害 血液障害 味 覚異常 自己免疫性疾患の合併

ロベンザリットカルフェニール腎障害 発疹 肝障害 消化器障害 ブシラミン リマチル 皮膚炎 腎障害 肝障害 間質性肺炎 血液障害 味覚異常 サラジスルファピ アザルフィジン 発疹 肝障害 血液障害 間質性肺炎 リジン EN 皮膚粘膜症候群 アクタリット オークル / モーバ ー 腎障害 肝障害 発疹 血液障害 間質 性肺炎 ミゾリビン ブレデイニン 発疹 高血糖 血液障害 感染症 間質 性肺炎 メトトレキサートリウマトレックス 消化器症状 血液障害 肝障害 間質性 肺炎 タクロリムス プログラフ 腎障害 肝障害 高血糖 血圧上昇 血 液障害 レフルミノドアラバ血液障害 間質性肺炎 肝障害 発疹 イグラチモドケアラム肝障害 胃腸障害 血液障害 生物学的製剤 トップへ戻る 関節リウマチの関節炎の病態に関わる炎症性サイトカインや免疫担当細胞の細胞表面分子を標

的としたモノクロナール抗体や これら標的分子の受容体と IgG との融合蛋白製剤が開発され てきました こうした薬剤のことを生物学的製剤と呼びます 関節リウマチの関節炎を著明に改 善するだけでなく 骨破壊の進行も抑制する画期的な薬剤です 現在 7 つの製剤がわが国では承 認されています ( 表 3) 腫瘍壊死因子 (tumor necrosis factor: TNF) を標的とした TNF 阻 害薬として infliximab, etanercept, adalimumab, golimumab, certolizumab pegol の 5 種 類があり インターロイキン 6 受容体に対するモノクロナール抗体として tocilizumab, CD28 と B7 分子の結合を阻害する abatacept があります 近年ではヤヌス キナーゼ (JAK) 阻害剤で あるトファシチニブとバリシチニブが保険適用となり 関節リウマチの関節炎にたいする治療 の選択肢が広がっています 特に MTX が無効となった場合には 2016 年のヨーロッパリウマチ協会 (EULAR) 勧告では 予後不良因子 ( リウマトイド因子や抗 CCP 抗体が高値 リウマチの疾患活動性が高い 又は骨 破壊が進行している ) を有する場合には こうした生物学的製剤や JAK 阻害剤の使用が勧めら れています 表 3 RA に使用される生物学的製剤 炎症性サイトカインを標的とした治療 1.TNF を標的とした治療 ( 抗 TNF 療法 )

インフリキシマブ キメラ型 抗 TNFα モノクローナル抗体 エタネルセプト リコンビナント可溶性 TNF レセプターとヒト igg-fc の融合蛋白 アダリムマブ 完全ヒト 抗 TNFα モノクローナル抗体 ゴリムマブ 完全ヒト 抗 TNFα モノクローナル抗体 セルトリズマブ ペゴ ール ヒト化 抗 TNFα モノクローナル抗体の PEG 化製剤 2.IL-6 を標的とした治療 トシリズマブ ヒト化 抗 IL-6 レセプターモノクローナル抗体 3.CD28-B7 副刺激経路を標的とした治療 アバタセプト リコンビナント CTLA4 とヒト IgG-Fc の融合蛋白