50 はじめに Schnz 骨切り術後の変形性股関節症に対する人工股関節置換術 ( 以下,THA) においては, 高度に弯曲した近位大腿骨形状と狭小髄腔を有する症例が散見され, 術式選択や使用予定インプラントの形状, サイズ選択に難渋することが多い今回我々は実物大フルカラー 3D 塩模型を用いて術

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ゆきうとだ
5 years ago
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1 日関病誌,36(1):49~53, 症例報告 Schnz 骨切り術後の高度大腿骨近位部変形を有する末期変形性股関節症に対し, 実物大フルカラー 3D 塩模型を用いて術前シミュレーション評価を行い THA を実施した 1 例藤田保健衛生大学整形外科木村稚佳子, 森田充浩, 加藤誠, 田中徹, 林卓馬, 山田治基 Preopertive Demonstrtion with Full-Colour Scle 3D-Computed Tomogrphy Slt Modelling in Totl Hip Arthroplsty for Osteorthritis with Post-Schnz Osteotomy: A Cse Report Chikko KIMURA, et l. Deprtment of Orthopedic Surgery, Fujit Helth University Astrct We creted full-scle nd full-colour 3-dimensionl slt model with computed tomogrphy sed dt for 69-yer-old womn, who underwent Schnz osteotomy of her proximl femurs in her youth. We composed preopertive simultion for evlution nd s result, we chose the nterolterl supine pproch. We trnsplnted the ulk femorl one utogrft to the cetulum. We used the smllest size of Wgner type stem, Stellris (Mthys), ut the neck offset ws still too long. We lso performed dvncement of the greter trochnter consistent with the Pvilinen method. Full-scle nd full-colour 3-dimensionl slt modelling ws useful in the preopertive simultion nd imge trining for the surgeon, ut it ws difficult to predict the soft tissue lnces nd to evlute the intropertive one qulities. Keywords: Schnz osteotomy, full-colour 3-dimensionl slt model, Pvilinen method, distl dvncement of the greter trochnter ( 受付 : 受理 : )

50 はじめに Schnz 骨切り術後の変形性股関節症に対する人工股関節置換術 ( 以下,THA) においては, 高度に弯曲した近位大腿骨形状と狭小髄腔を有する症例が散見され, 術式選択や使用予定インプラントの形状, サイズ選択に難渋することが多い今回我々は実物大フルカラー 3D

0 cm であった股関節 JOA スコアは 28 点で股関節の可動域は右が屈曲 20 度, 外転 10 度, 左はほぼ強直股であった初診時 X 線像では両側股関節は高位脱臼しており, 大腿骨近位部の前弯と頚部の前捻が非常に強かった ( 図 1) 単純 CT

EMS 社症例症例 :69 歳, 女性主訴 : 右股関節痛既往歴 : 糖尿病, 肥満現病歴 : 出生時の先天性股関節脱臼の保存治療歴があり,19 歳時に他県で両側脱臼性股関節症に対する Schnz 骨切り術が施行されている X-1 年 8

2 50 はじめに Schnz 骨切り術後の変形性股関節症に対する人工股関節置換術 ( 以下,THA) においては, 高度に弯曲した近位大腿骨形状と狭小髄腔を有する症例が散見され, 術式選択や使用予定インプラントの形状, サイズ選択に難渋することが多い今回我々は実物大フルカラー 3D 塩模型を用いて術前プランニングを行い, インプラント設置位置の確認や骨切り予定, 骨盤や髄腔形状のイメージ確認を行ったうえで THA を施行した 1 例を経験し, 得られた知見と留意点について報告する脚長は右 69.0 cm, 左 72.0 cm であった股関節 JOA スコアは 28 点で股関節の可動域は右が屈曲 20 度, 外転 10 度, 左はほぼ強直股であった初診時 X 線像では両側股関節は高位脱臼しており, 大腿骨近位部の前弯と頚部の前捻が非常に強かった ( 図 1) 単純 CT では大腿骨と骨盤の荷重接触部に広く骨硬化像を認め,MRI では T2 強調画像で仮性関節部の間隙に高輝度変化を認め, 比較的新しい血腫の存在が示唆され, これが疼痛の原因と考えられた術前計画 : 高度の変形に対して 3D-CT をもとに実物大フルカラー 3D 塩模型 (Sony EMS 社症例症例 :69 歳, 女性主訴 : 右股関節痛既往歴 : 糖尿病, 肥満現病歴 : 出生時の先天性股関節脱臼の保存治療歴があり,19 歳時に他県で両側脱臼性股関節症に対する Schnz 骨切り術が施行されている X-1 年 8 月に右股関節痛が増悪し歩行障害が出現したため当院紹介受診両側変形性股関節症の診断で加療のため X 年 6 月に入院となる入院時所見 :153 cm,75 kg,bmi 32.0 kg/m 2, 図 1 術前両股関節単純 X 線正面像図 2 骨盤と大腿骨の位置関係 ( 実物大 3D 塩モデル ).Antero-Posterior view.lterl view(right to left)

51 図 3 1 c 骨盤側術前シミュレーション腸骨側側面像 X エントリーポイント

長を確認しかつ可動域制限を最小限にしうるステム設置位置に見合ったステム挿入のための

3 51 図 3 1 c 骨盤側術前シミュレーション腸骨側側面像 X エントリーポイント寛骨臼リーミング後 42 mm 径で実施多少の上方設置を許容すれば安全なカップ設置が可能なことがわかる c トライアルカップ設置後 42 mm 径不足する上後方に骨移植を追加することを確認図 3 2 c 大腿骨側術前シミュレーション骨切り想定ライン黒線骨切りラインの設定黒点線大腿骨軸骨切り処理後 c トライアルステム設置後処理中に大腿骨前壁に骨離解を生じた製を作成し図 2 これを用いて術前に可及的原臼位に近くかつ寛骨臼の厚みを考慮したカップ設置位置や大腿骨軸およびオフセット長を確認しかつ可動域制限を最小限にしうるステム設置位置に見合ったステム挿入のためのエントリーポイントを予測設定し確認した図この際 ①反対側は強直股で手術予定がない ②患側がすでに 3 cm も短いこと ③過去の骨切りの影響で極度に髄腔狭小化と皮質骨の菲薄化を認めており大腿骨縦骨折を避けたいといった観点から追加短縮骨切りは行わない方針とした術中所見および術後経過自家骨頭は殿筋内脱臼状態で骨萎縮が進行しており横径も小さ

52 図 4 初回術後両股関節単純 X 線正面像図 5 再手術後両股関節単純 X 線正面像かったが, 外観は比較的しっかりしている印象であったステムファーストテクニークで Stellris ステム 13 mm( 当時最少サイズ ) を大腿骨軸に沿って挿入し固定, 次に自家骨頭骨移植してほぼ原臼位にセメントレスカップ設置を行った当初は大転子下降を予定していなかったが,

線像で移植骨ともにセメントレスカップの脱転を認めたため, 術後 10 日でカップ側再置換術を施行した男性から採取した骨質の良い同種骨頭を用い, チタン製中空スクリュー 3 本で固定, さらに強度補填を期待しセメントカップを使用して再建した ( 図 5) 再置換後, 術後 4 日目より CPM を開始,25 日目には歩行器使用しての部分荷重歩行訓練開始,60 日目に T 字杖歩行に移行し,75

4 52 図 4 初回術後両股関節単純 X 線正面像図 5 再手術後両股関節単純 X 線正面像かったが, 外観は比較的しっかりしている印象であったステムファーストテクニークで Stellris ステム 13 mm( 当時最少サイズ ) を大腿骨軸に沿って挿入し固定, 次に自家骨頭骨移植してほぼ原臼位にセメントレスカップ設置を行った当初は大転子下降を予定していなかったが, 大転子部温存状態では頚部前捻が強く, 整復困難であったため, この段階で骨切りによる大転子下降術を追加した ( 図 4) 手術時間 5 時間 6 分, 術中出血量は 1,091 ml であった術後 2 日目よりベッド上端座位, 持続的関節受動運動訓練器 (CPM) を開始したが, 術後 5 日目に車いすからトイレ移乗の際に転倒し右股関節痛が出現, 単純 X 線像で移植骨ともにセメントレスカップの脱転を認めたため, 術後 10 日でカップ側再置換術を施行した男性から採取した骨質の良い同種骨頭を用い, チタン製中空スクリュー 3 本で固定, さらに強度補填を期待しセメントカップを使用して再建した ( 図 5) 再置換後, 術後 4 日目より CPM を開始,25 日目には歩行器使用しての部分荷重歩行訓練開始,60 日目に T 字杖歩行に移行し,75 日目に退院となった術後 1 年 3 カ月の現在, 片杖使用により独歩可能で, 左強直股に対しては疼痛障害がないため保存的に経過観察中である考察 Schnz 骨切り術は 1922 年に Schnz が提唱した大腿骨転子下外反骨切り術である過去に年長児の先天性股関節脱臼に対ししばしば行われていたが, 可動域制限が生じやすいこと, 高齢になるにつれ股関節を含めた多関節痛を訴えるようになり予後不良のため, 現在はほとんど用いられていない術式である続発性股関節症が進行した場合には骨切りを併用した THA が施行されることが多い Schnz 骨切り術後症例では長期の高位脱臼股関節症に伴い, 軟部組織の拘縮により大腿骨の引き下げが困難であることや, 大腿骨の形態異常と髄腔の狭小化, 過前捻があるため一般的な形状のステムの挿入が困難である併せて寛骨臼形状も大きく変化しており, 寛骨臼底も非荷重による菲薄化が進行していてカップを設置する母床に乏しいまた, 脚長を過度に延長補正することにより神経麻痺が生じる危険もある本症例でも股関節部の著明な形態不全と可動域制限, 髄腔狭小化, そして骨質不良が存在したまた高度肥満と糖尿病合併があり, 手術が難渋することが予想されたこのような問題点をふまえ, ステムは前捻補正が可能である Wgner タイプのものを使用し, アプローチは股関節と大腿骨転子部の展開が比較的容易な仰臥位前方アプローチを選択した Schnz 後の THA は形態の問題点からさまざまな手術方法が考案されているが,Pvilinen らは臼蓋, 大腿骨それぞれに対して様々な手技

5 53 に分類して手術成績を検討した 1) 本邦では内藤ら, 徳永らの転子下骨切り併用の THA で良好な成績を得たとの報告がある 2,3) また, 転子下骨切り後の固定に locking plte を使用した報告もある 4) 井上らは 3D-CT ナビゲーションをカップ設置に使用した症例を報告している 5) 今回われわれは骨皮質を黄色, 骨髄を白色, 金属等を青色といった, 内部まで着色して立体的に視覚認識できるフルカラー 3 次元塩模型を用いたが 6), 利点としては着色部位の強度を溶解剤の浸透程度によって実物に近い硬度に調整できる技術を用いており, 試験的な骨切りや髄腔リーミング操作において実物に近い質感を感じることができることから, 術前トライアルとしては樹脂モデルや石膏モデルを用いるよりも有利であり, 材質も塩を用いていることによって廉価であることが挙げられ, 今後の普及が期待される自験例は術前に実物大モデルを実際に掘削しインプラントの適合性, 臼蓋の設置位置を詳細に検討できたことで, 術者は十分なイメージトレーニングを行うことが可能であったため, 術中操作が比較的順調に行えた利点があった一方で造形モデルの欠点として筋や靭帯といった軟部組織のバランスはこの手法では確認できず, また骨質や骨強度に関しても予測評価が不十分なことである自家骨移植にこだわったことから, 強度不足による移植骨自壊によってカップ脱転に至ったことが反省点として挙げられ, 今後同モデルの質的改良のための課題と考えられた結語 Schnz 骨切り後の形成不全股に対して大転子骨切り併用による THA を施行した実物大フルカラー 3D 塩モデルは術前シミュレーション実施や術者のイメージトレーニングに有用であったが, 軟部バランスや骨強度の評価が困難な点が今後の課題である利益相反 : なし文献 1 )Pvilinen T, Hoikk V, Solonen KA: Cementless totl replcement for severely dysplstic or dislocted hips. J Bone Joint Surg Br. 1990; 72: ) 内藤充啓, 澤口毅, 西村立也 : 両側 Schnz 骨切り術後変形を伴う変形性股関節症に対する人工股関節全置換術の 1 例. 整形外科.2006; 57: ) 徳永裕彦, 松矢浩暉, 上田祐輔 : 高位脱臼股に対する転子下短縮骨切り術併用人工股関節置換術の術後成績. 中部整災誌.2009; 52: ) 鉄永智紀, 三谷茂, 遠藤裕介, 他 : 両側 Schnz 骨切り術後の変形性股関節症に対して locking compression plte 併用セメント人工関節全置換術を行った 1 例. 臨整外.2008; 43: ) 井上円加, 遠藤裕介, 三谷茂, 他 : 大腿骨短縮骨切り術を併用し THA を施行した Schnz 骨切り術後の 1 例. 中部整災誌.2011; 54: ) 藤田温志, 松田光平, 格口渉 : フルカラー 3 次元塩模型による術前シミュレーションを行い下顎埋伏歯抜去を行った 1 例. 日本口腔外科学会雑誌 2014; 60:

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique 2 CPP(Conjoint tendon Preserving Posterior)approach 1 3 2 3 2-1. 3 2-2. 3 2-3. 3 3 4 3-1. 4 3-2. 4 3-3. 4 3-4. 4 3-5. 5 3-6. 5 3-7.