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あやかつねざき
4 years ago
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1 上原記念生命科学財団研究報告集, 26 (2012) 34. バングラデシュ農村部の女性における心血管系疾患リスクの研究 - 閉経前後の比較 - 荒井サブリナ Key words: 心血管系疾患リスク因子, メタボリック症候群, 閉経前, 閉経後, 農村女性国立国際医療研究センター研究所遺伝子治療開発研究室緒言バングラデシュにおける心血管系疾患の有病者は増加しており 1), この傾向は, 農村部の貧困家庭の女性においても認められる.WHO の報告 (2011 年 ) では,55 歳以上の女性において, 心血管系疾患の有病率とそのリスク因子の陽性率が高い事が示唆されている 2) が, 学術調査研究は乏しい. 今回, 我々は, 農村部の女性を対象として, 主要なリスク因子の陽性率について, 特に閉経との関係に注目した疫学的調査を施行した. 方法 1. 研究方法と対象者本研究は農村地域を対象とする横断的研究で, 多層的ランダムサンプリングにより抽出された 15 歳以上の女性を対象とし, 被験者は 1,802 名. 倫理要件は HDRCRP (the Health and Disease Research Center of Rural Peoples, Dhaka, Bangladesh) の倫理委員会審査にて承認され, 被験者全員から書面による同意を得た. 除外要件は, 慢性疾患患者 ( 甲状腺機能低下症, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高血圧 ), 妊婦, ホルモン補充療法患者とした. 健康状態, 月経等の情報を文書 ( 現地言語 ) にて収集した. 生化学的検査目的の採血 ( 早朝空腹時 ) を実施した. 2. リスク因子の定義メタボリック症候群の定義は,NCEP-ATPIII (National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III) に準拠した. 即ち, 高血圧 (>130/>85 mmhg), 高血糖 (FBG >110 mg/dl or >5.55 mmol/l), 高中性脂肪 (>150 mg/ dl or >1.65 mmol/l), 低 HDL-コレステロール血症 (<50 mg/dl or <1.30 mmol/l), 腹部肥満 ( ウエスト径 (WC) 88 cm) であった. 3. 統計学的分析閉経前後の2 群における調査項目毎の比較はt 検定を, メタボリック症候群 MetS とそのリスク因子についてはカイ2 乗検定を施行した. 統計ソフトには STATA version 12.0 (Lakeway Drive, College Station, Texas, USA) を用いた. 結果参加者の年齢分布を Fig. 1 に示す. 参加者の内, 最も多くの年齢層は 35~44 歳 (23.26%) であった. 1

2 Fig. 1. Age distribution of respondents. 複数の検査項目の測定結果において, 閉経前後での有意差を認めた (Table 1).BMI, ウエスト径, および LDL コレステロールには, 閉経の前後での有意差を認めなかった. 2

3 Table 1.Clinical characteristics of subjects according to pre- and post-menopausal women Values are mean ± S.D., BMI=body mass index, WC=waist circumference, SBP=systolic blood pressure, DBP=diastolic blood pressure, FBG=fasting blood glucose, TC=total cholesterol, HDL-C=high density lipoprotein cholesterol, LDL-C=low density lipoprotein cholesterol, VEGF=vascular endothelial growth factor, svegfr-1=soluble VEGF receptor-1, svegfr-2=soluble VEGF receptor-2. 心血管系リスク因子の陽性率の閉経前後での比較を Table 2 に示す. 閉経前に比較して, 閉経後女性においてはメタボリック症候群が有意に高率であった. 高血糖, 高中性脂肪, 収縮期血圧および拡張期血圧の高値は, 何れも, 閉経後の女性群では統計的有意差を持って高率であった. しかし, 肥満 (BMI 30 kg/m 2,WC 88 cm) の有病率には, 閉経前後にて差を認めなかった. 3

4 Table 2.Prevalence of cardiovascular disease risk factors among pre- and post-menopausal women Obesity (body mass index >30 kg/m 2 or waist circumference 88 cm), high fasting blood glucose (FBG 110 mg/dl), high triglycerides ( 150 mg/dl), high systolic blood pressure (SBP 130 mm Hg), high diastolic blood pressure (DBP 85 mm Hg). Metabolic syndrome (Presence of at least three of the above criteria). 考察この研究は, バングラデシュ農村部の女性を対象として, 心血管系疾患とそのリスク因子の有病率を, 特に閉経の前後を区分して調査した初めての研究である. メタボリック症候群の有病率に関しては, 閉経後の女性群 (39.9%) は閉経前の女性群 (16.8%) に比較して高率であった. この結果は, インド 3,4), イラン 5) や中国 6) における調査結果とほぼ同様であった. 今回の研究では, 高血圧, 高血糖, 高脂血症, 低 HDL 血症などの CVD リスク因子は, 閉経前群に比較し, 閉経後の女性群において, 有意に高率であった. 閉経後の女性群においては, 高血圧 7,8), 高脂血症 9), 早朝空腹時高血糖 7,8), 低 HDL 血症 7.8) が高率であるとの既報に一致している. これらの心血管系リスク因子の集積は, 閉経後の卵巣機能不全によるエストロゲンの枯渇による 10) と考えられる. この, エストロゲン産生の減少が, 閉経後における心血管系疾患に関連する代謝異常の増加の原因であると考えられる. しかし,BMI やウエスト径に示される肥満の程度は, 閉経前後で変わらなかった. 閉経後の女性における心血管系リスク因子の集積は, 肥満以外の原因によるものと考えられる. 結論として, 閉経後の女性は, 閉経前の女性よりも心血管系疾患の発症リスクが高い事が示唆された. 閉経後の女性は, 将来の心血管系疾患のハイリスク群として, 健康保健政策の対象とされるべき, 科学的根拠が得られた. 文献 1) Bleich, S. N., Koehlmoos, T. L., Rashid, M., Peters, D. H. & Anderson, G. : Noncommunicable chronic disease in Bangladesh: overview of existing programs and priorities going forward. Health Policy, 100 : , ) World Health Organization (WHO). Noncommunicable diseases country profiles. Geneva : WHO, ) Pandey, S., Srinivas, M., Agashe, S., Joshi, J., Galvankar, P., Prakasam, C. P. & Vaidya, R. : Menopause and metabolic syndrome: a study of 498 urban women from western India. J. Midlife Health, 1 : 63-69, ) Shah, D. : The Annual conference of the British Menopause Society. J. Midlife Health, 1 : 48-50, ) Eshtiaghi, R., Esteghamati, A. & Nakhjavani, M. : Menopause is an independent predictor of metabolic syndrome in Iranian women. Maturitas, 65 : ,

5 6) Ruan, X., Jin, J., Hua, L., Liu, Y., Wang, J. & Liu, S. : The prevalence of metabolic syndrome in Chinese postmenopausal women and the optimum body composition indices to predict it. Menopause, 17 : , ) Lin, W. Y., Yang, W. S., Lee, L. T., Chen, C. Y., Liu, C. S., Lin, C. C. & Huang, K. C. : Insulin resistance, obesity, and metabolic syndrome among non-diabetic pre- and postmenopausal women in North Taiwan. Int. J. Obes., 30 : , ) Ebrahimpour, P., Fakhrzadeh, H., Heshmat, R., Ghodsi, M., Bandarian, F. & Larijani, B. : Metabolic syndrome and menopause: a population-based study. Diab. Metab. Syndr. : Clin. Res. Rev., 4 : 5-9, ) Mesch, V. R., Boero, L. E., Siseles, N. O., Royer, M., Prada, M., Sayegh, F., Schreier, L., Benencia, H. J. & Berg, G. A. : Metabolic syndrome throughout the menopausal transition: influence of age and menopausal status. Climacteric, 9 : 40-48, ) Carr, M. C. : The emergence of the metabolic syndrome with menopause. J. Clin. Endocrinol. Metab., 88 : ,

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd 慢性腎臓病 (CKD) における危険因子としての食後高血糖の検討独立行政法人国立病院機構千葉東病院臨床研究部糖尿病研究室長関直人はじめに 1. 研究の背景慢性腎臓病 (CKD) は動脈硬化腎機能低下末期腎不全心血管イベントなどの危険因子であることが報告されている (1) 一方で食後高血糖もまた動脈硬化心血管イベントの危険因子であることが報告されている (2) 食後高血糖の検出には持続血糖モニタリング