02 76-物流.indd

Size: px

Start display at page:

Download "02 76-物流.indd"

さやいせき
6 years ago
Views:

1 < 国際物流事情 > 完成自動車の輸送と港湾大西裕之 1. はじめに自動車産業は改めて記述するまでもなくわが国の経済を強力に牽引する産業の一つであるグローバル化の進展により海外に生産拠点が展開され 25 年わが国の自動車メーカーの海外での生産台数は 1 万台を超えたしかしながら国内で生産される完成自動車 ( 四輪車 ) の約半数が輸出されており自動車産業にとって港湾を経由する海上輸送はこれまで同様不可欠なものである本稿では自動車産業の現状を改めて確認した後海外との貿易でわが国を出入りする完成自動車 ( 四輪車 ) の現状と動向について述べるさらにその輸送を支える自動車専用船の現状と動向および自動車専用船を受け入れる自動車ターミナルの施設整備について欧州最大級の自動車輸出入港であるブレーマーハーフェン港 ( ドイツ ) の事例を述べる 2. わが国の経済活動を牽引する自動車産業自動車は一般に四輪車と二輪車に大別され乗用車トラックバス二輪車別に様々なデータが整理されているわが国の乗用車トラックバス及び二輪車の主なメーカーの業績 ( 各社決算報告書 (27 年 3 月期 ( 一部 27 年 12 月期 ) 連結決算 ) より作成 ) と就業人口製造品出荷額設備投資額貿易額における自動車産業の貢献度をまとめわが国の経済活動における活躍ぶりを整理した乗用車メーカーわが国の乗用車の生産台数はここ数年右肩上がりに伸びている 26 年は 976 万台と好調でなかでもトヨタ自動車は売上高 23.9 兆円純利益 1.6 兆円を記録しているトラックバスメーカーわが国のトラックバスの生産台数はここ数年ほぼ横這いである 26 年は 164 万台でいすゞ自動車日野自動車の売上高はそれぞれ 1 兆円を超えている二輪車メーカーわが国の二輪車の輸出額はここ数年右肩上がりの伸びを記録し 26 年 8,573 億円 ( 前年比 1.15) で売上高はヤマハ発動機が 1.7 兆円川崎重工業が 1.4 兆円と好調である 1) 就業人口わが国の全就業人口は 6,356 万人自動車産業に関連する就業人口は 495 万人で全就業人口の 7.8% を占める 2) 製造品出荷額全製造業の製造品出荷額は 296 兆円自動車製造業の製造品出荷額は 49 兆円で製造業全体の 16.5% を占める 14

2 OCDI QUARTERLY 76 3) 設備投資額全製造業の設備投資額 ( 計画額 ) は 6.7 兆円自動車製造業の設備投資額 ( 計画額 ) は 1.5 兆円で製造業全体の 22.8% を占める製造品出荷額に比べ全体に対する比率が大きく好調さを示すものと考える 4) 貿易額わが国の輸出総額は 75 兆円自動車製造業の輸出額は 16 兆円で全体の 21.5 % を占める製造品出荷額に比べ全体に対する比率が大きい一方輸入額は 1.4 兆円で輸入総額の 2.1 % と極めて小さい 5) わが国を出入りする完成自動車 ( 四輪車 ) 26 年の四輪車輸出台数は 597 万台前年の 18.1% 増で 5 年連続で増加している車種別では乗用車が万台 ( 全体の 88.7%) で 21.4% 増トラックが 57.8 万台 ( 全体の 9.7%) で 5.6% 減バスが 9.3 万台 ( 全体の 1.6%) で 19.6% 増である輸出金額について車両分が 12.3 兆円部品分が 3 兆円で総額 15.3 兆円となり前年の 12.7 兆円に対して 2.4% 増となっている生産に占める輸出の割合は生産 1,148 万台に対して輸出が 597 万台となっており 52.% ( 前年 46.8%) である 26 年の四輪車の輸出先は多い順に北米 (249 万台 41.7%) 欧州(131 万台 21.9%) 中近東 (59 万台 9.9%) となっている万台 54.6% 18.2% 16.7% 1.5% 輸送用機器 ( うち自動車 16.5%) 電気機器一般機器その他 47% 9% 24% 2% 輸送用機器 ( うち自動車 21.5%) 一般機器化学製品その他 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年アジア中近東欧州北米中南米アフリカ太平洋その他合計一方完成自動車 ( 四輪車 ) の輸入は 26 年 26.2 万台で輸出台数の 4.4% に止まりここ数年減少傾向である輸入車の構成は 26 年の全輸入台数 26.2 万台に対し外国メーカー車 24.7 万台 (94.%) わが国メーカー車 1.6 万台 (6.%) 外国メーカー車 24.7 万台のうち 24.4 万台 (98.9%) が乗用車でわが国メーカーの車は全て乗用車である 3 万台年 23 年 24 年 25 年 26 年外国メーカー車乗用車外国メーカー車商用車日本メーカーの海外生産車乗用車日本メーカーの海外生産車商用車合計わが国の自動車メーカーの海外生産台数は 26 年に 1,97 万台を記録したがそのうち 15

3 わが国が輸入した台数は 1.6 万台 ( 海外生産台数の.1%) と極めて少ないわが国自動車メーカーは世界戦略として現地生産を進めつつも対応できない需要や特定車種などを国内で生産し輸出しておりこの状況は急激に変化するとは考えにくい一方トヨタの世界戦略の一つである IMV 車の生産方式 (1 つのプラットフォームから 3 ~ 5 車種が生産可能 ) などの生産技術の革新は海外需要への木目細かな対応を可能にし海外生産を飛躍的に拡大する可能性がありわが国からの完成車輸出に少なからず変化が現れるものと考える用船データ ( サンプル数 425 隻 )( 以下データ 1 とする ) と 28 年から 211 年に建造予定の自動車専用船データ ( サンプル数 114 隻 ) ( 以下データ 2 とする ) 及び邦船社の船舶データを使い船長喫水船腹及び積載台数と総トン数の関係に焦点をあて自動車専用船の現状と動向について考察した 1) 自動車専用船の船長船長には特徴が見られるわが国では 2 m 以上の船舶は巨大船扱いとなり海上交通安全法により航行上の制限を受けるしたがってこの規制を回避するため 2m 未満の船長に集中している 7.% 24.5% 11.7% 12.6% 17.1% 12.4% 14.8% 日本郵船商船三井川崎汽船 WWL EUKOR HOEGH その他図 6 はデータ 1 の総トン数と船長との関係を示したものである 425 隻中の 146 隻 ( 全体の 34.4%) が 199 mの船長に集中し 179 m(36 隻 8.5%) が続く船長が 2 mを越える大型船は 33 隻 ( 全体の 7.8%) ある 8 7 完成自動車の海上輸送は殆どが自動車専用船で行われる現在全世界で 754 隻の自動車専用船が運航している運航者は運航隻数の多い順に日本郵船 (15 隻 ) 商船三井(92 隻 ) 川崎汽船 (88 隻 ) EUKOR(72 隻 ) と邦船 3 社が上位を占めている一方輸送能力を運航船舶の合計総トン数で見ると多い順に日本郵船 (489 万 GT 17.1%) 商船三井 (423 万 GT 14.8%) WWL(359 万 GT,12.6%) 川崎汽船(354 万 GT 12.4%) となりノルウェーの運航者が 3 位に登場するが邦船 3 社合計で全体の 35% を占め一大勢力となっている 1998 年から 27 年までに就航した自動車専船長 (m) また図 7 はデータ 2 の総トン数と船長とを整理したものである近年の船舶大型化を反映してサンプル数 114 隻のうち船長 2m 以上の大型船が 1 隻 ( 全体の 8.8%) 199m が 55 隻 ( 全体の 48.2%) と全体の過半を占めている今後もこの傾向は続き船長 199 mが主体となるものと考えられる 2) 自動車専用船の喫水図 8 はデータ 1 の総トン数と喫水との関 16

4 OCDI QUARTERLY 76 係を示したものである喫水 1.5m 以下のものはサンプル 425 隻中の 47 隻と全体の 95.8% を占めている最大喫水は 12.3m でこの船は総トン数 72,78GT 船長 264.6m の巨大船であるまた船長 199m 以上 2m 未満の船舶は 14 隻で全体の 24.5% を占めほとんどの喫水は 1.5 m 前後 ( 最大は 11.6m 1. ~ 1.5m は全体の 13.9%) に集中している図 9 はデータ 2 の総トン数と喫水との関係を整理したものである喫水 1.5m 以下のものはサンプル 114 隻中の 12 隻と全体の 89.5% を占め近年の船舶の大型化を反映している船長 199m 以上 2m 未満の船舶は 46 隻で全体の 4.4% を占めデータ1 に比べ割合が大きくなっているほとんどの喫水が 1.5m 前後 ( 最大は 1.7m 1. ~ 1.5m は全体の 13.2%) となっている今後も船舶の喫水は 1. ~ 1.5m 程度のものが増加していくものと考える自動車専用船の船幅図 1 はデータ 2 の総トン数と船幅との関係を整理したものであるパナマックス型の船幅 32m の船舶がサンプル数 114 隻のうち 67 隻と全体の 58.8% を占め最多であるまたパナマックス型の 32m を超える自動車専用船は出現していない今後も船幅 32 mの船舶が太宗を占めると考える自動車専用船の完成自動車積載能力現在就航している自動車専用船の積載台数は 6,7 台 ~6,8 台がほぼ上限である図 11 は邦船社の船舶データ ( サンプル数 27 隻 ) により自動車専用船の総トン数と積載台数との関係を示している 4,GT ~ 5,GT の船舶は約 4, 台から 5, 台積み 5,GT ~ 6,GT の船舶は約 5, 台から 6, 台積みであることが分かる現在就航している自動車専用船は様々な制約条件下において船長と船幅がほぼ限界に達しているため現状のまま推移すれば積載台数は今後も最大で 6,8 台程度であると考える喫水 (m) 船長 (m) 喫水 (m) 17

5 自動車専用船を受け入れる自動車ターミナルブレーマーハーフェン港は欧州で最大級の自動車輸出入港で 26 年に約 19 万台 27 年には約 21 万台の完成自動車を取扱っている , 5, 4, 3, 2, 1, 船幅 (m) 2, 4, 6, 8, 自動車積載台数自動車ターミナルの管理運営者 ( オペレーター ) は BLG Automobile Logistics GmbH & Co. KG である管理運営区域は約 185 ha その中に 62, m2の立体駐車場を有している輸出自動車メーカーは主にベンツ BMW フォルクスワーゲンであり輸入自動車メーカーはトヨタ日産 KIA ヒュンダイ三菱であり輸出入台数はほぼ同数となっているブレーマーハーフェン港の自動車岸壁は小型の自動車専用船 ( 積載台数約 1, 台級 ) から最大級の自動車専用船 ( 積載台数約 6, 台級 ) まで対応している現在の岸壁の水深 (1.5m) で特に問題は生じていないまた輸出車両と輸入車両とでターミナル ( 岸壁を含む ) を分けており輸入岸壁で自動車を下ろした自動車専用船は輸出岸壁に移動して輸出自動車を積み込むため船舶積載ロスが極めて少ないブレーメルハーフェン港ブレーメン港 18

6 OCDI QUARTERLY 76 ヤード内に設置された立体駐車場ヤード間を接続する自動車専用橋港からの二次輸送の機関分担は車両輸送トする車両だけでなく一般車両も通行しておりレーラー鉄道フィーダー船で概ね 1/3 ずつさらには鉄道と交差する箇所もあり完成自動となっているヤード内には鉄道引込み線が敷車の移動にリスクと時間がかかっていたその設されている他ランプウェイが 1 箇所設置さリスクの解消と効率よい移動を確保するためにれているさらに港内には新たな自動車専用ヤード間を結ぶ自動車専用橋が設置され効果をの蔵置用地が 4 箇所確保されており今後事業上げている拡張が計画されている以下に自動車ターミナルの施設整備に関し興味深い事例を紹介するこの自動車専用橋についても自動車ターミナルのオペレーター会社である BLG 1) 立体駐車場自動車ターミナルをもつ港湾ではヤードの不 A u t o m o b i l e L o g i s t i c s G m b H & C o. K G が設置し管理している足をよく耳にするブレーマーハーフェン港でもヤード不足が顕在化しており特に荷役岸壁おわりにに至近な箇所はヤード不足の状況にあったさらに自動車メカーからは特に高級車の保管わが国経済を強力に牽引する自動車産業はについて砂や雨等による細かな傷や汚れを防戦略的に現地調達化や生産場所の見直しによるげるような質の高い保管が要望されていたこ物流そのものの削減リードタイムの短縮によれらの課題を解決したのが一部屋根付きの立体る低コスト物流を追求しており活発な海外現駐車である地生産はその流れの一つであるしかしながらわが国で生産される完成四輪自動車の約半数はこの立体駐車場は自動車ターミナルのオ輸出されている実態があり同産業が引き続きペレーター会社である BLG Automobile わが国経済を強力に牽引し続けることができる Logistics GmbH & Co. KG が設置し管理しておりベンツ BMW 等の高級車が屋根付きよう港湾整備の面で支援することは意義深いこの部分に保管されているに配慮した効果的な施設整備や海外の好事例をとである検討にあっては自動車専用船の動向参考にした施設整備が期待される 2) ヤード間を接続する自動車専用橋ブレーマーハーフェン港は荷役岸壁至近の用おおにしひろゆき上席研究員地だけでは自動車ヤードが不足しているため港湾道路を隔てた港内の数箇所に自動車ヤードが点在しているまた港湾道路は港内を移動 19

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度わが国はエネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し衣食住の面で欠くことのできない多くの資源を輸入に頼っているわが国海運はこうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている石炭 100% 原油 99.6% 天然ガ

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度わが国はエネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し衣食住の面で欠くことのできない多くの資源を輸入に頼っているわが国海運はこうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている石炭 100% 原油 99.6% 天然ガ 1. 主要資源の対外依存度わが国はエネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し衣食住の面で欠くことのできない多くの資源を輸入に頼っているわが国海運はこうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている石炭 100% 原油 99.6% 天然ガス 97.2% 鉄鉱石 100.0% 羊毛 100.0% 綿花 100.0% 大 92% 豆小 88% 麦木材 72% 注 ) 食料需給表