経済分析第172号

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1 内閣府経済社会総合研究所 経済分析 172 号 2004 年 累進所得税と厚生変化 公的資金の社会的限界費用の試算 林正義 * 別所俊一郎 < 要約 > 本稿では 異なった所得獲得能力をもつ消費者から構成される異質経済を対象として 累進所得税を明示的に考慮した公的資金の社会的限界費用 (SMCF) を試算し 次の 3 つの分析を行った 第 1 に 分配ウエイトを用いた費用便益分析への応用を視野に入れ 累進度を維持するような 3 種類の税率変更による SMCF を試算した この試算から (1) 高い不平等回避度を用いない限り 3 種類の SMCF には大きな差はない (2) ベンサム型の社会厚生関数を用いる場合の SMCF の値は 別所ほか (2003) が同質的経済を前提に算定した MCPF の値とほぼ同じ大きさとなる (3) 不平等回避度が高くなるに従い SMCF も高い値を示すため 配分ウエイトを用いる費用便益分析で SMCF を看過すると誤った結果をもたらしやすいという結果を得た 第 2 に ブラケット別に税率を操作することから生じる SMCF を算定することにより税収一定のもとでの漸進的な変化として望ましい累進度変化に関する分析を行った この分析から主に (1) いずれの社会厚生関数によっても 1,000 万円前後の年間収入に対する税率引き下げ (2) ベンサム型の価値判断を採用する場合は 上位の限界税率引き下げと下位の限界税率引き上げ そして (3) 不平等回避度が比較的高いケースにおいては最高税率よりも最低税率引き下げが示唆された 第 3 に 現行の所得税率の組合せを最適な税率とする分配ウエイトを 逆算 し 現行の政府の社会的選好をさぐるとともに パレート改善的な税制改革の可能性を探った 6 つのケースを想定して分配ウエイトを逆算したところ いずれのケースでも一部のブラケットに負の値が算定され パレート改善的な税制改革が示唆される このことはまた 現在の累進税率の組合せは何らかの基準に基づいた一貫性のある選択の結果とは判断しにくいことを示している JEL Classification: D31 D61 D63 H21 H31 J22 Key words: 公的資金の社会的限界費用 漸進的税制改革 分配ウエイト 本稿は ESRI Discussion Paper Series No42 累進所得税と厚生変化 - 公的資金の社会的限界費用の試算 - を修正したものである 本稿の作成において 赤井伸郎 ( 神戸商科大学 ) 井堀利宏 ( 東京大学 ) 上村敏之 ( 東洋大学 ) Robin Boadway(Queen's University) の諸先生方から貴重なご意見を頂いた 本誌の 2 人の匿名の査読者より有益なコメントを頂いた * 連絡 : 東京都港区白金台 明治学院大学 ; hayashim@eco.meijigakuin.ac.jp -1-

2 経済分析 第 172 号 Social Marginal Cost of Public Funds: The Case of Progressive Personal Income Taes in Japan By MASAYOSHI HAYASHI AND SHUNICHIRO BESSHO Abstract This paper, taking an eplicit account of the progressive ta system, calculates the social marginal cost of public funds (SMCF) for the Japanese economy under alternative labour response assumptions. First, we calculate the SMCF for the three types of progressivity preserving ta increases. Our estimates indicates (a) there are no substantive differences among the three types of SMCF unless high degree of inequality aversion is assumed; (b) the estimates for the SMCF under the Benthamite social welfare function are very similar to those calculated for a homogeneous economy by Bessho et al. (2003); and (c) the SMCF increases as the degree of inequality aversion increases. The last finding (c) suggests that a distributional cost-benefit analysis requires a careful application of the SMCF: otherwise, the costs would be under-estimated. Second, we also calculate the SMCF for a single bracket ta rate change and compare the estimates among the brackets. The result shows that welfare is increased with ta rate reductions (a) in the 9th bracket (approimately 9-12 million yen) for any types of the social welfare function, (b) in higher brackets for the Benthamite social welfare function, and (c) in the lower brackets for the social welfare function with higher inequality aversion, along with a ta increase in another bracket. Third, we apply the inverse optimum problem by Ahmad and Stern (1984) to the progressive ta system in Japan. The inverse optimum problem calculates distributional weights on households, assuming that the current ta system maimizes the social welfare function of the current policy maker. We find that weights for some brackets are negative, which implies that the current progressive ta system is suboptimal under any types of social welfare function. JEL Classification: D31 D61 D63 H21 H31 J22 Key words: social marginal cost of public funds, piece-meal ta reform, distributional weights -2-

3 累進所得税と厚生変化 1. はじめに価格弾力的な課税標準に対する課税は 経済主体の行動に 歪み をもたらし 超過負担 (ecess burden) もしくは 死荷重(dead weight loss) と呼ばれる 厚生損失(welfare loss) を発生させる そのような歪みをもたらす税によって政府支出が調達されている限り 担税者は その支出に充てられる名目的な税額に加えて厚生損失に相当する費用を負担することになる 公的資金の限界費用 (marginal cost of public funds; 以下 MCPF と略 ) とは 1 このような税収が 1 単位増加することによる実効費用の追加的な変化をさす 課税の実効費用が納税額と厚生損失から構成されることから理解できるように その限界的な数値である MCPF は 名目的な税収増 1 単位と それに伴う限界的な厚生損失 2から構成される MCPF は 現行の租税体系が生み出す厚生損失の総量よりも有益な情報を提供する場合がある 例えば費用便益分析をあげることができる 公共プロジェクトに必要とされる資金が歪みをもつ税によって調達されるならば 当該プロジェクトの実行は追加的な厚生損失をひきおこすため この追加的な厚生損失を考慮した費用便益分析が行わなければならない ここで利用されるのが MCPF である 通常 特定のプロジェクトに必要とされる資金は税収総額と比べ微小である したがって プロジェクトの資金調達は総税収の微小な増加とみなされるため 厚生損失を考慮した実効費用はプロジェクトの名目費用に MCPF を乗じることによって近似できる (e.g., Dahlby 1998, Sandmo 1998) さらに MCPF は 税制改革の指針としても有用な情報を提供する (e.g., Ahmad and Stern 1984, Madden 1995) 複数の課税標準に対する税率が最適に決定されているのならば 各課税標準に関する MCPF の値は全て等しくなるはずである (e.g., Sandmo 1998, Madden 1995) したがって ある課税標準の MCPF が他の課税標準の MCPF よりも高ければ 税収を一定に保ち 前者の税率を下げ 後者の税率を上げるという望ましい税率変更を示すことができる つまり 複数の課税標準の MCPF を比較することによって 漸進的な税制改革の方向を示すことができる 我が国において MCPF という概念は Atkinson and Stern(1974) にはじまる最適課税論における重要な分析概念として また 応用厚生経済学としての費用便益分析におけるシャドー プライスの一例 (e.g., Boadway and Bruce 1984) として認識されてきた しかしながら MCPF の推計が盛んに行われてきた欧米の研究とは対照的に 本格的な MCPF の推計は十分に行われていない.. 税制改革に関する厚生分析においては 現行の租税制度が生み出す厚生損失の総量の推 1 この限界的な実効費用の呼称として marginal cost of public funds(e.g., Browning 1976, Hansson and Stuart 1985, Sandmo 1998, Triest 1990, Usher 1984) および marginal cost of funds(e.g., Mayshar 1991, Slemrod and Yitzhaki 2001) などが用いられている 本稿では marginal cost of public funds およびその略称として MCPF という呼称をもちい その訳として 常木 (2000) 林 (2000) および 別所ほか (2003) に従い 公的資金の限界費用 という邦語をあてる 2 限界厚生損失 (MCPF-1) は 限界超過負担 marginal ecess burden (e.g., Stuart 1984, Triest 1990) や 限界厚生費用 marginal welfare cost (e.g., Snow and Warren 1996) とも呼ばれる -3-

4 経済分析 第 172 号.. 計 (e.g., 金子 田近 1989) や応用一般均衡モデルによる厚生損失の変化の計測 (e.g., 本間 1991 橋本 1998 上村 2001) は行われているが MCPF 自体が漸進的な税制改革の指針 として推計されたことはないようだ 3 例外として 消費項目別の税率の引き上げによる厚 生損失の増分を算定した小西 (1997) をあげることができるが 彼が算定した値は税率上昇による総税収 1% 増額当たりの厚生損失の変化であるため 漸進的税制改革の議論においては有用であっても 必ずしも本来の意味での MCPF が推計されている訳ではない 費用便益分析への応用を視野に入れた MCPF の推計は 我々の知る限り 別所 赤井 林 (2003) 以外では行われていない 同研究では 欧米における多くの先行研究にならい 余暇と集合財 ( 基準財 ) という 2 財の静学モデルに依拠して労働所得課税に伴う MCPF を試算している しかし 同質経済を前提としている彼らの推計は 標準的な費用便益分析における MCPF としては意義があると考えられるにしても 異なった個人を前提とする現実の政策問題には対応していない 異質な消費者を前提とする政策を分析する場合は 社会厚生関数 (social welfare function) を用いた評価を行う必要がある 異質経済において 標準的 な費用便益分析が正当化されるためには いわゆる 補償原理 を無批判に受け入れるか 自己の価値判断をベンサム型として認め 個人の厚生が所得のみに依存し かつ 所得の限界効用が一定であるという前提を受容する必要がある このような厳しい条件を必要とする標準的な費用便益分析の限界を克服するために 社会厚生関数から導出される分配ウエイト (distributional weight) を用いた費用便益分析が研究されてきた 4 もちろん MCPF は費用便益分析において実効費用を測定する重要な要素であるから 異質経済を前提にするならば特定の社会厚生関数に依存した分配ウエイトを考慮して算定される必要がある そのような分配ウエイトを考慮した MCPF は 公的資金の社会的限界費用 (social marginal cost of public funds; 以下 SMCF と略 ) とよばれ 同質経済における MCPF と明示的に区別されている (Dahlby 1998) 5 本稿の目的は 同質経済を対象とした別所 赤井 林 (2003) を拡張し 異なった所得獲得能力をもつ消費者を想定することにより 累進所得税を明示的に考慮した厚生評価を行うことである 本稿の作業は次の 3 つである 第 1 に 分配ウエイトを用いた費用便益分析への応用を視野に入れ 所得課税における累進制度を明示的に考慮した我が国における SMCF の試算値を提供する 3 我が国における税制改革による厚生変化のシミュレーションに関しては赤井 (1999a) が簡潔に要約している 最近の分析として 内閣府政策統括官 (2001) がある 4 分配ウエイトを用いる費用便益分析は 1960 年代に遡る (e.g., Eckstein 1961, Maass 1966, Freeman 1967, Marglin 1967, McGuire and Garn 1969) 1970 年代では 補償原理の理論的な限界が明らかになるにつれ社会厚生関数を利用した分配ウエイトの研究が進んだ (e.g., Boadway 1974, 1976, Harberger 1964) Bergson(1980) は既存研究を包括する理論分析であり Brent(1984) はサーベイである その後の応用分析として Azar(1999) Brent(1979) Galves and Jara-Diaz(1998) Hau(1986) などがある 我が国には便益測定に分配ウエイトを用いようとする動きはあるが (e.g., 上田ほか 1999) 費用測定において分配ウエイトが議論されることはないようである 5 SMCF は Usher(1984) Wildasin(1984) Mayshar(1991) Dahlby(1994) によって議論されていたが Dahlby(1998) および Allgood and Snow(1998) が包括的な分析を行っている -4-

5 累進所得税と厚生変化 第 2 に 社会厚生関数を所与とした最適な累進度や望ましい税率変化の方向に関する分析を行う 累進制度のもとではブラケット毎に税率を操作することが可能であるため ブラケット毎に SMCF を算定することができる ブラケット間の SMCF を比較することによって 特定の社会厚生関数を基準とした累進度の最適性や税制改革の方向を示すことができる 例えば 全てのブラケット間で SMCF が等しければ税率は最適であると判断できる さらに あるブラケットの SMCF が他のブラケットの SMCF よりも大き ( 小さ ) ければ 前者の税率を相対的に下げ ( 上げ ) ることにより社会厚生が増加することになる 第 3 に 現行の所得税率の組合せを最適な税率とする分配ウエイトを 逆算 する この作業は次の 2 つの有益な情報をもたらす 第 1 に 分配ウエイトを推計することによって 現行の政府の社会的選好を知ることができる 第 2 に いかなる Bergson-Samuleson 型 ( 以下 B-S 型 と略 ) の社会厚生関数のもとでも 現行の税率が正当化できないケースを識別することができる Ahmad and Stern(1984) が示したように 分配ウエイトが負の値を取る場合にはパレート改善となる税率変更が存在するため いかなるB-S 型の社会厚生関数を用いても厚生は増加するからである 本稿の構成は以下のとおりである つづく第 2 節においては 本稿で使用する SMCF の算定フォーミュラを導出する 第 3 節では 累進所得税下での SMCF の値を算定する 同節では 算定に必要となる モデルの特定化 データ ならびに パラメータ値について議論し 税率変更のパターンが特定化される ここでは分配ウエイトを用いる費用便益分析での使用を視野に入れた SMCF 値が算定されるとともに 年間収入階級別の SMCF が算定され それを用いることによって望ましい税率変更の方向が議論される 第 4 節では 現行の累進税率の組合せを最適な税率とするような分配ウエイトを算定し パレート改善が可能な税率変更の存在が確認される そして 第 5 節をもって本稿の結語とする 2.SMCF の導出 2.1. モデル本節では累進所得税を明示した SMCF の算出フォーミュラを導出する 以下では Dahlby (1998) を援用し分析を進めるが 分配ウエイトに関しては費用便益分析を明示的に扱った Bergson (1980) にあわせて定式化する ブラケット j に属する消費者 i は 基準財 および余暇 を消費することによって 効用水準 = (, ) を得るとしよう 6 税引前賃金率を とし ブラケット j における所得控除と限界税率をそれぞれ とすると 税引後賃金率は =(1- ) となる さらに 時間賦存量をT 資本所得を とすると 実効所得は = + + となる ここから彼 6 ここでは公共財水準を固定して分析をすすめるため 公共財の水準は明示的には示していないが それは我々の分析において問題とはならない MSCF の算定に関しては Sandmo(1998) や Dahlby(1998) が指摘するように MCPF の算定は公共支出プロジェクト効果から独立して行われるべきものと考えられている また 漸進的な税率変更の厚生効果を考察する場合は 税収一定という前提のもとで分析が進められるため 公共財の水準は固定されることとなる -5-

6 経済分析 第 172 号 の間接効用関数は (, )=ma { (, ) + = and T } (2.1), となる ここではブラケット毎に異なった限界税率が課されており 税率は超過累進 (0 < <...< <1) であるとしよう 複数タイプの消費者を前提とするならば 各消費者の効用を集計する評価関数が用いられる必要がある 本稿では B-S 型の社会厚生関数 S=S (,,...,,,,...,,...,,,,..., ) (2.2) を用いる なお は ブラケット j に属する消費者の数である 以下の分析では Dahlby (1998) にしたがって 異なった所得ブラケットに属する消費者は異質であるが 同一のブラケットに属する消費者は同質であると仮定し 分析を簡略化する つまり ブラケットの総数をJ 個とすると 選好 ( 効用関数 ) と能力 ( 税引前の賃金率 ) が異なったJ 種類の消費者が想定されることになる 7 したがって 任意のブラケット j 内の任意の消費者偽 i s に関して = =, = =, = =, = = が成立する つまり ブラケット内の複数の消費者に関して 効用水準 実効所得 所得の限界効用 および 限界社会評価が等しくなる 異質な消費者から構成される経済における SMCF は 税収変化 1 単位あたりの社会的に集計された厚生の減少と定義される したがって SMCF は 税収をR と表記し (2.1-2) を用いると 以下のように定義できる SMCF - ds/(/ ) dr (2.3) なお (2.3) の分子となる社会厚生の変化は 基準となるブラケットk に属する消費者の所得に関する限界社会厚生 によって基準化され 貨幣単位で表現されている 2.2. 税収の変化まずは税収 R の変化を特徴づける ブラケットj に属する個人からの税収は = - (2.4) となる ( 消費者に関する添字は省略 ) と をそれぞれ第 s 番目のブラケットの上限と 7 第 3 節でモデルの操作化が行われる場合は 所得獲得能力のみが異なると想定される -6-

7 累進所得税と厚生変化 下限 ( ただし =0 および = ) とすると (2.4) は = ( - )+ Σ ( - ) (2.5) とも表現できる したがって この消費者からの税収の変化は d = d +( - )d + Σ ( - )d となる なお上記では Dahlby(1998) にならい 税引前賃金率 と非労働所得 は税 率変化の影響から独立であると仮定している 8 労働供給の変化は d =- d + d( ) と表記され (2.4) と (2.5) より 税額控除は = - Σ ( - ) (2.6) と表現できるから 上記の税収変化は d = - + d d + Σ - d 1- となる ここで ( / u ) ( / ) を補償労働供給の賃金弾力性 ( 以下 補償弾力性 と略 ) φ / を所得効果と定義し 留保需要が存在する場合のスルツキー方程式を利 用し 非補償弾力性 (/)( /) は = +φ (2.7) と分解される また ( - )/ ( - )/ と定義すると 平均税率 / は = + した平均税率の限界的変化は j - 1 と表記できるから 税引前所得 を一定と d = d + Σ d (2.8) s=1 j - 1 s=1 j - 1 s=1 となる したがって (2.7-8) により ブラケット j の個人からの税収の変化は j - 1 s=1 j - 1 s=1 8 したがって完全に賃金弾力的な労働需要が仮定されるが Dahlby(1994) が示すように そうでない場合と比べても MCPF の値が大きく変わることはないようである -7-

8 経済分析 第 172 号 d = d 1- +φ d (2.9) 1- d となる したがって 総税収 R の変化 dr= d は J d = Σ 1- j=1 d +φ d (2.10) 1- d と表現される 2.3. 社会厚生の変化社会厚生の変化 ds は以下のように与えられる J n j J d = ΣΣ d = Σ j=1 i=1 j=1 d とされる ここで d =-( / ) d +( / )(d +d ) であるから これをロアの恒等式 および (2.6-8) を用いて整理すると d =- d (2.11) を得る したがって ブラケットk に属する消費者の所得の限界社会厚生によって基準化された社会厚生の変化は J d =- Σ d (2.12) / j=1 と表現できる ここで / / (2.13) / / は ブラケットj の消費者に付される分配ウエイトである 基準ブラケットk の消費者の厚生変化は- d となり貨幣単位で表現されている 一方 他のブラケットj k の消費者に関しては 分配ウエイト 分だけ 貨幣単位で表現された厚生変化 - d が伸縮して評価される 2.4. 税率変更のパターンと SMCF の特定化 SMCF(2.3) は = /( と (2.10) と (2.12) により以下のように表現できる ) をブラケットj の税引前総所得シェアとする -8-

9 累進所得税と厚生変化 J Σ d j=1 SMCF = (2.14) J Σ d 1- +φ d 1- d j=1 ただし (2.14) は 全ブラケットの限界税率を任意に変化させた場合の SMCF である 9 したがって 実際の計測においては 名目的な税収増 1 単位 を賄うための税率変化のパターンを特定化する必要がある 10 本稿では (1) 累進構造を維持する全ブラケットの税率変化 および (2) 単一ブラケットの税率のみの変化を考える いずれの SMCF も分配ウエイトを用いた費用便益分析における実効費用の計測に資するものであるが さらに 後者の SMCF は最適な累進構造への漸進的な指針も提供するものである 累進体系を維持する諸税率の変化累進度は次の 3 つの指標を用いて定義することができる (Musgrave and Thin 1948) 第 1 は 平均税率累進 ARP: average rate progression であり 限界税率と平均税率の差と税引前所得の比率 = - が1より大きければ累進的とされる この ARP を維持するような税率の変化は d =d となるから 全ブラケットの限界税率の変化が等しければ (d =d, ) ARP は維持される したがって ARP 維持的な SMCF は J Σ j=1 SMCF = J Σ 1- ( +φ ) 1- j=1 (2.15a) となる なおここでは 代替効果 と所得効果 φ に同じウエイトが置かれている 第 2 は 負担累進 LP: liability progression であり 限界税率と平均税率の比率 = が 1 より大きければ累進的となる LP を維持するような税率の変化は 9 税収の増加は 税率の変化に加え 所得控除額 ( あるいは税額控除額 ) の変化によっても可能である しかし 我々のモデルにおいて所得控除の変化は所得効果のみしか発生させないため 課税による歪みという観点からは 所得控除のみの操作は興味あるケースとはならない 10 ここの 税率変更のパターン は 過去に実際に行われた税制変更の評価を行うものではないことに注意されたい また ここで考察の対象としているのは 限界的 な税率の変化であり 税率変更への 漸進 -9-

10 経済分析 第 172 号 d = d となるから 全ブラケットの限界税率の変化率が等しければ (d / =d /, ) LP が維持される ここから LP 維持的な SMCF は以下のように表現できる J Σ j=1 MCPF = J Σ 1- +φ 1- j=1 (2.15b) ここで / はブラケット j の税収シェアである なお / >1 であるから 所得効果 φ よりも代替効果 に大きなウエイトが置かれている 第 3 は 残余所得累進 RIP: residual income progression であり 1 から限界税率を引 いた残余と同じく 1 から平均税率を引いた残余との比率 = 1-1- が 1 より小さければ累進的となる d /(1- )=d /(1- ), ならば d = d 1-1- となるため LP が維持される したがって RIP 維持的な MCPF は J Σ j=1 SMCF = J Σ φ 1-1- j=1 (2.15c) となる ここで (1- ) /(Y-R) はブラケット j の税引後所得 ( 残余所得 ) のシェアであ る なお RIP 維持的な税率変化のもとでは (1- )/(1- )<1 により 代替効果 よりも所 得効果 φ に大きなウエイトが置かれている 単一ブラケットの税率の変化ブラケットs の限界税率 が増加 ( 減少 ) する場合 (2.6) より s より上層のブラケットに属する消費者の税額控除が減少 ( 増加 ) することが理解できる 換言すれば この税率増による厚生コストは第 j <s 番目のブラケットの消費者は負担せず 第 j s 番目のブラケットの消費者が負担する (2.8) を用いると この効果は以下のように表記できる 的 な政策的評価を行っていることに注意すべきである -10-

11 累進所得税と厚生変化 0 < d = d = d > ここから ブラケット の限界税率のみを変化させた場合の MCPF は SMCF = + Σ 1- -φ + Σ J J j=s+1 j=s+1 φ (2.16) となる (2.16) の分子の第 1 項は 税率が増加するブラケット からの社会厚生の減少である 他の項は 当該税率の上昇によるより上位のブラケットに属する消費者からの社会厚生コストの減少である 本節のモデルでは税率増加による社会厚生の変化は負の値をとるため (2.16) の分子は常に正の値をとる 次に (2.16) の分母の第 1 項はブラケット からの税収変化 他の総和はブラケット> からの税収変化の和に対応している 前者のブラケット からの税収 ( 第 1 項 ) は φ および の値の組合せによっては必ずしも増加とならない つまり ( / -φ )> (1- )/ ならば ブラケット の税率上昇によって当該ブラケットからの税収は減少するからである これは 現行の税率 がブラケット を課税標準としたラッファー曲線の 右 側 にあることを意味するが そのような状況は =1- / の値が小さくなるほど / の値は大きくなるため 税引前所得と当該ブラケットの下限との差が小さくなるほど 発生しやすい この直感的理由は (2.9) を利用して 税収の変化に関する表現が d = (1-φ )- d 1- となることから容易に理解できる つまり 税引前所得と当該ブラケットの下限との差が 小さくなるほど 税引前所得を固定した平均税率の上昇による税収増 ( d ) と所得効果 による税収増 (- φ d ) が小さくなり 代替効果の負の影響 (- d /(1- )) が相対的に 大きくなるからである 上記以外の項は ブラケット の限界税率変化が上位ブラケットに与える影響である この上位ブラケットの消費者に与える影響は 実効的な所得控除額の変化だけであるから 所得効果のみを通じて発現する なお 税率変更により控除が実質的に減額されるから 余暇が正常財 (φ <0) であるかぎり 上位ブラケットからの税収は必ず増加する ブラケット からの税収変化が負である場合でも 上位ブラケットからの税収が十分大きい場合は 経済全体でみると税率上昇は税収増加となり 標準的に税収 1 単位あたりの社会的厚生コストの変化を測ることができる しかし 上位ブラケットからの税収増が大きくない場合は 全体としての税収は負となる可能性がある その場合は SMCF は負となり -11-

12 経済分析 第 172 号 厚生水準と税収水準が同方向に動くこと つまり 税収増と厚生水準増が同時に達成されることが含意される 3.SMCF の計測本節では 消費者の効用関数 (2.1) と社会厚生関数 (2.2) を特定化し 各関数におけるパラメータや変数に尤もらしい値を与えることで 前節で定式化した複数の累進所得税下の SMCF を計測する 3.1. 特定化 データ および パラメータ 消費選択の特定化と補償弾力性 所得効果効用関数を特定化し 選好を特徴付けるパラメータ (, ) と賃金率 限界税率 税額控除 および 非労働所得 の変数が与えられると 消費者の最適化問題 (2.1) から補償弾力性 と所得効果 φ が導出される 本稿では これらのプロセスについて説明を加えよう 消費者の選好には 我が国の税制改革シミュレーション ( 本間ほか 1987, 本間 跡田 1989, 山田 1991, 本間 1991, 橋本 1998) で頻繁に使用される CES 型関数が用いられる つまり 消費者の最適化問題 (2.1) は ma [ (1-)( ) / + (T- ) / ] /, s.t. =(1- ) + + (3.1) となる ここで は代替弾力性 は余暇ウエイトである 先行研究では ブラケット毎に異なる代替弾力性が用いられているが ( 本間ほか 1987, 本間 跡田 1989, 本間 1991, 橋本 1998) 本稿ではブラケットが異なっても代替弾力性と余暇ウエイトは不変であると想定する つまり 全ての消費者は等しい効用関数の形状を有しており 消費者間の相違の要因となるのは予算制約における税引前賃金と非労働所得の相違だけであると仮定している 労働供給関数は (3.1) より以下のように与えられる =(, :, )= T-[(1-)/] ( ) 1+[(1-)/] ( ) ただし =(1- ) および = + である ここから 労働の非補償弾力性と所得効果 φ は以下のように導出される = [(1-)/] ( ) = - (1-)[(1-)/] ( ) T-[(1-)/] ( ) 1+[(1-)/] ( ) φ = [(1-)/] ( ) =- 1+[(1-)/] ( ) (3.2) (3.3) -12-

13 累進所得税と厚生変化 そして これら 2 つの指標から補償弾力性は (2.7) を利用して算定される 社会厚生関数と分配ウエイト社会厚生関数には 分配ウエイトをもちいた費用便益分析において標準的に用いられ (e.g., Bergson 1980, Boadway and Bruce 1984, Galves and Jara-Diaz 1998, Hau 1986) また 我が国の税制改革シミュレーションにおいても頻繁に利用される ( 本間ほか 1987, 本間 1991, 橋本 1998, 上村 1999) 以下の特定化を用いる = ΣΣ ( ) = Σ ( ) (3.4) 1-1- ここで パラメータ 0 は不平等回避度として解釈できる (Atkinson 1970) 特に =0 な らば ベンサム型 (S= J n j j=1 i=1 ば ロールズ型 (S=min { }) となる J j=1 ) =1ならば ナッシュ型 (S= ) そして なら 分配ウエイト (2.12) は (3.1) から導出される 間接効用関数 : = (1-) / ( ) / 所得の限界効用 : =(1-) / ( ) / ならびに (3.4) から導出される限界社会厚生 : =( ) により 以下のように特定化される = 1+[(1-)/] ( ) / 1+[(1-)/] ( ) (3.5) ここから 分配ウエイトは所得比率 ( / ) と所得の限界効用の比率 ({ } 内の表現 ) との幾何平均となる 特に 社会厚生関数がベンサム型 (=0) ならば = 1+[(1-)/] ( ) (3.6) 1+[(1-)/] ( ) となり 分配ウエイトは所得の限界効用の比率となる また 社会厚生関数がナッシュ型 (=1) であるときは -13-

14 経済分析 第 172 号 = となり 分配ウエイトは実効所得比率と等しくなる つまり ナッシュ型の分配ウエイトは所得の限界効用からは影響をうけない (3.7) データおよびパラメータ上記の所得効果 φ 補償弾力性 および 分配ウエイト を算出するためには ブラケットの上限 と下限 税引前賃金 限界税率 所得控除額 非労働所得 時間賦存量 T 余暇ウエイト ならびに 代替弾力性 の値が必要となる また SMCF の算定のためには 各ブラケットの税引前賃金総額シェア 税収シェア および 税引後所得シェア も必要とされる 本稿では 家計調査 における 標準世帯 およびそれに対応する 社会生活基本調査 におけるデータを用いて ( 共に 2001 年データ ) 上記の数値を算定する 標準世帯 は 夫婦と子供 2 人から構成され かつ有業者が 1 人の世帯であるから 必ずしも全体を代表するデータではない しかし 税率や控除を算定する場合の仮定をそれほど多く必要としないため 所得税に関するシミュレーションを行う多くの先行研究で用いられてきたのも事実である 本稿も この分析の容易さと先行研究との比較という観点から 標準世帯 を対象としている ブラケット本来ならば限界税率と控除額の組み合わせに従ってブラケットを設定するべきであるが 現行の財政制度の下では様々な税率 社会保険料率 所得 税額控除が複合しているため 財政制度に従ってブラケットを適切に設定することは困難である したがって以下では 既存研究 (e.g., 本間 1991 橋本 1998 上村 2001) でも採用されている 家計調査 第 12 表 :( 標準世帯 ) 年間収入階級 年間収入五分位階級別 1 世帯当たり年平均 1 か月間の収入と支出 ( 勤労者世帯 ) をベースにした年間収入階級を用いてブラケットを設定した 同表には 17 の年間収入階級が存在するが 2001 年データでは 勤め先収入 に関し 一部の階級間で 上位の階級における収入が少なくなっている したがって 同表掲載の 世帯数分布 ( 抽出率調整 ) を適切に使用しながら 収入階級を 10 に統合して分析を進める 今回使用した 家計調査 データでは 1 カ月平均値である 実収入 の年間相当値が 年間収入 と異なるだけでなく いくつかのブラケットで 年間収入 にもとづき設定されている年間収入階級から外れてしまう 11 したがって 実収入 を中心として分析を進める本稿では これらの収入階級の境界を用いることができない ブラケットの境界の設定 によって および の値が変化する したがって ブラケットの設定には慎重を期すこと 11 これは 年間収入 は年間収入調査票によって調査された世帯全体の過去 1 年間の収入であるのに対し 他のデータは世帯が 6 カ月間 1 カ月単位で記した収入 支出によるためであろう -14-

15 累進所得税と厚生変化 が必要であるが ここでは 潜在的な問題が存在することを認識しつつ 恣意的な境界設定を排除するため 所得の中間点をもって境界とした つまり 勤め先収入 と 内職事業収入 の和 をもってブラケットj の所得とし 上位ブラケットの所得 との中間点 ( + )/2 を上限 そして 下位ブラケットの所得 との中間点 ( + )/2 を下限 とした 12 限界税率 所得控除額限界税率 ( ) および所得控除額 ( ) に関しては ブラケット別の所得に 2001 年の所得税に関する税率表を適用して算定した 具体的には 家計調査 における 標準世帯 ( 有業者 1 人 配偶者 子供 2 人 ) を対象として 家計調査 からブラケット別に得た勤め先収入と事業 内職収入の合計を所得税の対象とみなし その金額から標準的に利用されていると考えられる控除を行って課税所得を算出した 13 この課税所得を 2001 年の税率表に照らし合わせ 所得税および住民税の税率を決定した 社会保険料に関しては 政府管掌健康保険および厚生年金に加入していると想定し 14 勤め先収入と事業 内職収入から家賃収入を除いた勤労所得 を参照して算定を行った こうして求めた勤労所得税率 ( = 所得税率 + 均等割を除く住民税率 ) と社会保険料率 を用いて 限界税率を = + - して算定する 15 なお 控除額 に関しては 家計調査 掲載の勤労所得税 個人住民税 ( 均等割除く ) および 社会保険料の合計を税額 として = - / と算定した なお税率推計のパフォーマンスを判断するために 表 3.1 に税率を用いて推計された税額と 家計調査 から得られる税額を比較した 税額の推計では全ての控除を考慮しきれていないため 推計税額が観測された税額よりも全ブラケットで大きい場合が多い しかしその乖離率は 第 10 ブラケットを除き おおむね 10% 以下であり 本推計値は近似として十分な妥当性を有しているものと考えられる 12 このような想定のもとでは 各世帯はブラケットの中間に位置することとなり ブラケットの境界に位置する家計は存在しない また 第 2 節でも議論したように 限界的な税率変更による世帯のブラケット間の移動は想定していない 13 標準世帯 ( 夫婦と子供 2 人 有業者 1 人 ) については 子供 1 人を 16~23 歳とし 標準税率が適用される人口 5~50 万人の市に居住しているものとした 所得税 ( 国税 ) については 基礎控除 (38 万円 ) 配偶者控除 (38 万円 ) 配偶者特別控除 (38 万円 ) 扶養控除 (38 万円 ) 特別扶養親族控除 (63 万円 ) 給与控除 生命保険料控除 (10 万円 ) 損害保険料控除 (5 万円 ) 社会保険料控除 ( 全額 ) を考慮して課税所得と税額を求めた 住宅ローン控除等の他の税額控除は考慮していない 住民税 ( 地方税 ) については 基礎控除 (33 万円 ) 配偶者控除 (33 万円 ) 配偶者特別控除 (33 万円 ) 扶養控除 (33 万円 ) 特別扶養親族控除 (45 万円 ) 給与控除 生命保険料控除 (7 万円 ) 損害保険料控除 (1 万円 ) 社会保険料控除 ( 全額 ) を考慮し 道府県 市町村の所得割 均等割を求めた 地方税の免除は考慮していない 14 政府管掌健康保険料は給与の 4.25% と賞与の 0.5% の 60% 厚生年金保険料は給与の 8.675% と賞与の 0.5% 雇用保険料は 0.6% とした また 政府管掌健康保険と厚生年金については, 標準報酬月額の上限 ( 月額 98 万円 ) を考慮した 雇用主負担分はここでは考慮していない 15 社会保険料は全額控除とみなし さらに給与所得控除と恒久的な減税の影響を考慮している -15-

16 経済分析 第 172 号 表 3-1 税額推計 ( 千円 / 月 ) ブラケット 税額 推計税額 乖離率 (%) 税引き前賃金率 非労働所得 時間賦存量税引前賃金率 は ブラケット毎に 勤労所得 ( = 勤め先収入 + 事業 内職収入 - 家賃収入 ) を労働時間 で割ることによって求めた 労働時間に関しては 社会生活基本調査 ( 第 12 表 ) から 家計調査 の年間収入階級に対応した 仕事 および 通勤時間 を得ることができる ( 有業者 夫婦と子供の世帯 夫の平均時間 ) ここでは 税引前賃金を通勤時間を含む労働時間当たりの税引き前勤労所得として考え この 仕事時間 と 通勤時間 の合計値を労働時間として利用した なお これらの時間は 10 月上旬に調査された土日を含む 1 日平均値であるため 正月と盆の長期休暇を考慮して年間 350 日換算で調整している 税引後賃金率 は 上記の限界税率 を用いて =(1- ) と算定した 非労働所得 は課税後の値であり 家計調査 掲載の 家賃収入 財産収入 仕送り金 特別収入 の合計値から 勤労所得税 と 個人住民税 以外の直接税を表す 他の税 と別途計算した個人住民税の 均等割 を引いた値としてもとめている 時間賦存量 T には複数の数値が考えられるが 本稿では 1 日当たり 16 時間のケースを考える ここでは 睡眠時間を 消費者が自由に選択できる余暇の一部と考えるのではなく 平均して一定時間 ( 平均 8 時間と想定 ) 消費しなければならない subsistence level とみなしている 余暇ウエイト 代替弾力性本稿では家計調査における 標準世帯 データを利用しているため 主として男性の労働供給を想定している 補償弾力性と所得効果については実証分析の結果に依拠するべきであるが 本節の設定に添う形でこれらのパラメータを推定している研究は我が国では存在しない 16 一方 欧米では労働供給に関する多くの実証分析が行われ Pencavel(1986) および Blundell and MaCurdy(1999) では 47 の男性の労働供給を推定した研究がサーベイされている これらの研究の推定値を単純に平均すると 補償弾力性に関しては0.15 所得効果に関しては となる 16 我が国では 例えば 島田 酒井 (1980) Okamoto(1984) 岡本 (1987) Asano(1997) 阿部 大竹 (1995) が労働供給関数を推定しているが いずれの研究も消費者の予算制約に影響を与える累進所得税制度を明示的に考慮することなく推定が行われているし 同質的個人を前提とした文脈においてでさえも本稿の目的に添う形では推定値は提供されていない -16-

17 累進所得税と厚生変化 本稿ではこれらの値を基点にし 以下のようにパラメータ値を設定した まず (3.2) お よび (3.3) から 余暇ウエイト および 代替弾力性 は = [-φ /(1+φ )( ) ] /, =- [(1+φ ) +( + )φ ] 1+[-φ /(1+φ )( ) ] / φ [(1+φ ) +2( + )] と与えられる 右辺の各変数は添字 j が記すとおりブラケット間で異なった値をとるが 左 辺の余暇ウエイト と代替弾力性 は共通の値と仮定されている 17 本稿では これら と の値は ブラケット間で異なる変数 ( φ ) の代わりに それらの平均値 を用いることによって近似できると考える ここで ( ) については既述のデー タからブラケット単位の加重平均値を算定し ( φ ) については上記の実証分析から算 定された値 ( =0.15, φ =-0.17) を基点として複数の値を設定した 補償弾力性に関して は ( 0.10, 0.15, 0.20) を 所得効果に関しては (-0.07, -0.17) とした ここから 6 セッ トの補償弾力性と所得効果が算定され 18 それらを用いて 分配ウエイトと SMCF に関す る感度分析が行われることになる 税引前勤労所得シェア 税収シェア 税引後所得シェア ブラケット別の税引前勤労所得シェア = /( 労所得の平均値 = ) については 税引前勤 /を利用して =( / )( / ) と算定した 世帯比 率 ( /) 勤労所得 ( ) および 平均勤労所得 ( / ) には 家計調査 掲載の 世帯数分布 ( 抽出率調整 ) 勤め先収入 + 事業内職収入 - 家賃 および 勤め先 収入 + 事業内職収入 - 家賃 を用いた 税収シェアは = /( ェアは = ( - )/[ 推計税収を利用している ) 税引後所得シ ( - )] と算定した ただし 税収 には上記の データおよびパラメータ ( 算定結果 ) 上記の手続きによって算定された変数およびパラメータ値は表 3-2~3-3 に示されている 表 3-2 には ブラケット下限 年間実所得 年間勤労所得 年間非労働所得 ( 税引後 ) 勤労所得控除額 税額 ( 推計値 ) 時間当たり税引前賃金率 1 日当たり労働時間 限界税率 平均税率 所得控除額 税引前勤労所得シェア 税収シェア および 税引後所得シェアが記してある 表 3-3 には 余暇ウエイト 代替弾力性 補償弾力性 および 所得効果 φ ととも 17 本間ほか (1987) は 余暇ウエイト は一定であるが代替弾力性 はブラケット間で異なると仮定し (2.1) の 1 階の条件から導出された代替弾力性 =[ln -ln(t-h )]/[ln(1-)-ln+ln(1-m )+ ] を利用して 島田 酒井 (1980) による推定値に が等しくなるように の値を決定している この算定値 = は他の研究でも用いられている (e.g., 橋本 1998) が 本稿の仮定のもとではこの方法は援用できないし そもそも 双方とも選好パラメータであるにもかかわらず 一方がブラケット間で共通で 他方が異なっているという想定も恣意的であると考えられる 18 その加重平均値は先行研究の平均値にほぼ等しくなっている -17-

18 経済分析 第 172 号 表 3-2 データ 所得階級 ブラケット下限 ( 万円 / 年 ) 実所得 ( 万円 / 年 ) 勤労所得 ( 万円 / 年 ) 非労働所得 税引前 ( 万円 / 年 ) 非労働所得 税引後 ( 万円 / 年 ) 実質所得控除額 ( 万円 / 年 ) 推計勤労所得税収 ( 万円 / 年 ) 第 第 第 第 第 第 第 第 第 第 10 1,184 1, , 所得階級 賃金率 ( 円 / 時間 ) 労働時間 ( 時間 / 日 ) 限界税率 平均税率 税引前所得シェア 税額シェア 税引後所得シェア 第 1 1, 第 2 1, 第 3 1, 第 4 1, 第 5 2, 第 6 2, 第 7 2, 第 8 3, 第 9 3, 第 10 5, に それらの算定の基点となった 平均 的な補償弾力性 と所得効果 φが示してある ケース A1 と A2 では全ブラケットにおいて補償弾力性と所得効果の和は負で 後方屈折 が認められるが 他のケースでは全て正値をとっている A1 A2 および A3 では高位ブラケットほど補償弾力性が大きくなる一方で B1 B2 および B3 では低位ブラケットほど補償弾力性が大きくなっている 表 3-4-A1~B3 には 最高位の所得階級 ( 第 10 階級 ) を基準とし ベンサム型 (=0) -18-

19 累進所得税と厚生変化 表 3-3 補償弾力性と所得効果 ケース A1 A2 A φ 余暇ウエイト 代替弾力性 φ φ φ 第 第 第 第 第 第 第 第 第 第 ケース B1 B2 B3 φ 余暇ウエイト 代替弾力性 φ φ φ 第 第 第 第 第 第 第 第 第 第

20 経済分析 第 172 号 表 3-4-A1 分配ウエイト ( ケース A1: =0.10, φ=-1.7) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-4-A2 分配ウエイト ( ケース A2: =0.15, φ=-1.7) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-4-A3 分配ウエイト ( ケース A3: =0.20, φ=-1.7) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第

21 累進所得税と厚生変化 表 3-4-B1 分配ウエイト ( ケース B1: =0.10, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-4-B2 分配ウエイト ( ケース B2: =0.15, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-4-B3 分配ウエイト ( ケース B3: =0.20, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第

22 経済分析 第 172 号 とナッシュ型 (=1) を含む 5 つのパターン (=0.0, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0) における分配ウエイトが記されている 同一の 平均 的所得効果を共有するケースの間 つまり (A1, A2, A3) もしくは (B1, B2, B3) においては 分配ウエイトの値は小数第 1 位までほぼ同値を示しており 平均 的な補償弾力性の違いは分配ウエイトに大きな影響を与えていない 不平等回避度 が高くなるほど下位ブラケットのウエイトは高くなるが ベンサム型 (3.6) であっても最低ブラケット ( 第 1) には最高ブラケット ( 第 10) の約 1.25 倍 (A1, A2, A3) もしくは約 1.1 倍 (B1, B2, B3) の分配ウエイトが付されている 一方 ナッシュ型の分配ウエイト (3.7) は実効所得比率と同値であるから 各ケースとも同じ値をとり 最低ブラケットには約 4 倍のウエイトが付されている 3.2. 推計結果 累進維持的な SMCF 表 3-5 には 全ての税率を累進維持的に変化させる 3 つの SMCF(2.15a)~(2.15b) が算定されている これらの結果は以下のように概括することができるであろう 第 1 に A1~B3 の各ケース内では 3 つの SMCF とも殆ど同じ値を示しているように 高い不平等回避度を採用しない限り 3 種類の SMCF には大きな差はない しかし 不平等回避度の大きさに従い各ケースの SMCF 値の幅が大きくなる傾向がある 不平等回避度を所与として 3 種類の SMCF を全 6 ケースについて比較すると SMCF の幅は =0.0 で 程度 =0.5 で 程度 =1.0 で 程度 =1.5 で 程度 そして =2.0 で 程度となる 第 2 に ベンサム型の分配ウエイトを用いる SMCF の値 (1.1~1.2) は 別所ほか (2003) が同質的経済を前提に算定した MCPF の値とほぼ同じ大きさを示している したがって 公共プロジェクトの実効費用を測定する場合にベンサム型の価値判断を行うのであれば 同質的個人の前提から算定される MCPF を用いても大差はないのかもしれない 第 3 に 不平等回避度が大きくなるに従い SMCF も高い値を示す これは SMCF の値が最高位ブラケットを基準にしており 不平等回避度が高くなると 比較的数が多い下方ブラケットの厚生費用が相対的に大きく評価されることによると考えられる このことは分配ウエイトを用いて費用便益分析を行う場合の SMCF の重要性を示唆するものである 例えば 不利条件地域において公共プロジェクトが分配ウエイトを用いて評価される場合を考えよう この地域に低所得者が多く存在しているのならば 分配ウエイトによる当該プロジェクトの便益は 標準的 な手法による場合よりも高く評価されるであろう ただし 分配ウエイトを用いれば SMCF も大きく評価されると考えられるから 当該プロジェクトの実効費用も高く計測されることになる したがって 配分ウエイトはプロジェクトの地域間配分には影響を与えるにしても その使用が 即 高い便益費用比率につながるとは考えにくい -22-

23 累進所得税と厚生変化 表 3-5 SMCF, SMCF, SMCF ARP LP RIP ケース A1 A2 A3 B1 B2 B3 余暇ウエイト 代替弾力性 = 平均税率累進 SMCFARP (2.15a) = = = = = 負担累進 SMCFLP (2.15b) = = = = = 残余所得累進 SMCFRIP (2.15c) = = = = ブラケット別 SMCF 表 3-6 にはブラケット別の SMCF(2.16) が算定されている ここでは第 2 節で議論したように次の 2 点に留意する必要がある 第 1 は 下位ブラケットの限界税率の変更はそれよりも上位のブラケットにおける厚生と納税額にも影響することである 第 2 は 以下の税率変化による厚生変化の分析は 税収を固定した場合の漸進的な変化に関する分析であることである 同表からの特徴は以下のように概括することができる まず A と B の其々 3 つのケースでは 負の SMCF となる A3 の第 9 ブラケットを別にして 所与の不平等回避度から与えられる SMCF はおおよそ同じ値となっている ただし 不平等回避度が大きくなるほど また 上位ブラケットに移動するほど 値の異なりの度合いは大きくなるようである また 多くの場合 第 9 ブラケットの限界税率を引き上げることによる税収確保が最も社会厚生を悪化させることが示されている A2 と B3 では全ての不平等回避度 θに関して -23-

24 経済分析 第 172 号 表 3-6-A1 ブラケット別 SMCF( ケース A1: =0.10, φ=-0.17) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-6-A2 ブラケット別 SMCF( ケース A2: =0.15, φ=-0.17) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-6-A3 ブラケット別 SMCF( ケース A3: =0.20, φ=-0.17) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第

25 累進所得税と厚生変化 表 3-6-B1 ブラケット別 SMCF( ケース B1: =0.10, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-6-B2 ブラケット別 SMCF( ケース B2: =0.15, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第 表 3-6-B3 ブラケット別 SMCF( ケース B3: =0.20, φ=-0.07) 所得階級第 1 第 2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 第 8 第 9 第

26 経済分析 第 172 号 また A1 と B2 では 1.5 B1 では 1.0 となるケースで 第 9 ブラケットの SMCF は最も高い値を示している 他のケースでも 同ブラケットの SMCF は相対的に高い値となっている したがって いずれの社会厚生関数のもとでも 同ブラケットの税率の引き上げは優先されるべきではないことが示唆される この政策的含意は同 SMCF が負の値を示している A3 の場合ではより明確となる 負の SMCF は税率上昇による税収減を示唆するため 税率を下げることによって社会厚生を高めながらの税収増大が期待できるからである ベンサム型 (=0) の場合は いずれのケースも上位ブラケットになるほど SMCF が高くなる ( 第 9 ブラケットを除く ) したがって ベンサム型の価値判断を採用する場合は 第 9 ブラケットを別にして 上位の限界税率を下げ 下位の限界税率を上げることが示唆される ただし 第 8 ブラケットまでの増加の程度はそれ程大きくなく また A2 と A3 以外では 第 10 ブラケットの SMCF も相対的に大きくない 他の不平等回避度の場合は 既述の第 9 ブラケットを別にして明確なパターンは存在しない =0.5 の場合は A1 および B1 で第 8 ブラケット以下で下位ブラケットほど値が大きくなるが 他のケースでは明らかなパターンを見ることができない ナッシュ型 (=1) の場合は A1 A2 B1 および B2 において 第 8 ブラケット以下では下位ブラケットほど値が大きくなる しかし 他の A3 と B3 では 同様の傾向はあるものの必ずしもそのようなパターンは認識できない 一方 不平等回避度が 1.5 以上の場合は 第 8 ブラケット以下では 全てのケースにおいて 下位ブラケットほど SMCF の値が大きくなっている 最後に 最高税率よりも最低税率を下げることが望ましいケースも存在する 最高ブラケット ( 第 10 ブラケット ) の SMCF が最低ブラケット ( 第 1 ブラケット ) の SMCF より小さくなる場合は A1 A2 A3 では それぞれ となる場合 また B1 B2 B3 では全て 1.0 となる場合である つまり 不平等回避度が比較的高い場合は最高税率よりも最低税率を下げることが望まれる 4. 逆最適化問題前節では 社会厚生関数 (3.1) のパラメータ値 から導出される分配ウエイトの値を所与として 最適な累進税率の組合せの方向を探った 本節では発想を逆転させ 現行の累進税率の組合せを最適な税率とするような分配ウエイトを逆算しよう この作業は次の 2 つの有益な情報をもたらす 第 1 に 分配ウエイトの算定によって 現行の政府の社会的選好もしくは不平等回避度を知ることができる 第 2 に いかなる B-S 型の社会厚生関数のもとでも 現行の税率が正当化できないケースを識別することができる Ahmad and Stern(1984) が示したように 逆算された分配ウエイトが負の値を取る場合にはパレート改善となる税率変更が存在することになる 19 したがって 負の分配ウエイトの存在は B-S 19 これは Minkowski-Farkas の補題が応用されている もちろん 社会厚生関数を特定することなくしては 税率変更の度合いを決定したり 複数存在するパレート改善から特定の方向を選んだりはできない -26-

27 累進所得税と厚生変化 型であればどのような社会厚生関数を仮定しても社会厚生を増加させる税率変更が存在することが示唆される 前節の分析では 使用された複数の分配ウエイトのもとではブラケット別の SMCF の値が異なることが示された 各ブラケットの税率が最適に決定されているのならば SMCF の値は全て等しくなるから この結果は現在の所得税制が必ずしも最適でないことを示唆しているように見える しかし 前節の結果は (3.4) と特定化された社会厚生関数を前提としているため 異なる特定化を用いた最適化問題が先験的に排除されていることになる 一方 本節の分析では 社会厚生関数を直接扱うことなく分配ウエイトが算定されるため このような社会厚生関数の特定化に伴う潜在的な問題を避けることができると考えられる 分配ウエイトは以下のようにして算定される まず 税収規模 ( ならびに その使途 ) を所与として 社会厚生 (2.2) を最大化するように各ブラケットの限界税率 (,,..., ) が選択されるとしよう ここで ラグランジュ乗数をとおくと 1 階の必要条件より 全ての=1,...,J について J Σ d d + d d j=1 =0 が成り立つ さらに (2.9) (2.11) および (2.13) を用いると J Σ - d + 1- d d +φ =0 (4.1) d 1- d d j=1 を得る ただし 分配ウエイトは最高ブラケットを基準 ( =1) としている この (4.1) を (2.8) に注意して最高ブラケットから逐次的に解いていくことにより 各ブラケットの分配ウエイトの値を得ることができる まず = J について (4.1) を整理すると =1 より 次式を得る 1 = 1-1- ( φ + ) (4.2) 次に これを (4.1) の=J-1 に関する条件式に代入し整理すると J-1 の分配ウエイトを得る Ahmad and Stern(1984) は 税制改革の方向性に一定の制約をつけたうえで 考えられうるパレート改善的な税率変更の方向を検討している -27-

28 経済分析 第 172 号 = ( ), 1- φ φ 同様の作業を下位ブラケットに逐次的に繰り返すことによって 分配ウエイトは =( ) Σ, 1- J j k+1 φ - 1- (4.3) + 1- φ と一般的に求めることができる これらの値は 前節で用いたパラメータ値とデータによって算定することができる 表 4-1 には推計結果が示されている なお 上記の最適化問題から明らかなように ラグランジュ乗数 は 税収を 1 単位増加させたときの ( 最高ブラケットを基準とした ) 社会厚生の変化 つまり MCPF として解釈できる ここでは 税率が最適に選択されていることを前提としているので 前節と異なり 単一の SMCF しか算定されないことに留意したい 表 4-1 逆最適化問題 ケース A1 A2 A3 B1 B2 B3 余暇ウエイト 代替弾力性 =SMCF 第 第 第 第 第 第 第 第 第 第

29 累進所得税と厚生変化 一方 分配ウエイトは いずれのケースにおいても 幾つかのブラケットにおいてマイナスの値として算定されている したがって ここでは税制変更によってパレート改善が可能であるため B-S 型の社会厚生関数のもとでは現行の税率は正当化できないことが示唆される この結果は B-S 型の社会的選好を前提にしているのであって マイナスの分配ウエイト自体はより一般的な社会厚生関数が存在しないことを意味しない 実際 これらのウエイトは現行の政府の社会的選好を反映しているのかもしれない しかしながら 負の分配ウエイトのパターンに 何らかの尤もらしい理由付けをするのは困難であろう したがって 本稿で用いられたモデルおよびパラメータ値 データが適切であることに依存しているものの この結果からは現在の累進税率の組合せは何らかの基準に基づいた一貫性をもった選択の結果であるとは考えにくいと判断されよう 5. 結語本稿では 異なった所得獲得能力をもつ消費者から成る異質経済を対象として 累進所得税を明示的に考慮した課税の限界費用 (SMCF) を試算した まず 分配ウエイトを用いた費用便益分析への応用を視野に入れ 累進度を維持するような3 種類の税率変更による SMCF を試算した この試算から次の結果を得た (1) 高い不平等回避度を用いない限り 3 種類の SMCF には大きな差はない (2) ベンサム型の社会厚生関数を用いる場合の SMCFの値は 別所ほか (2003) が同質的経済を前提に算定した MCPF の値とほぼ同じ大きさとなる そして (3) 不平等回避度が高くなるに従い SMCF も高い値を示すため 配分ウエイトを用いる費用便益分析で SMCF を看過すると誤った結果をもたらしやすい 次に ブラケット別に税率を操作することから生じる SMCF を算定することにより 税収一定のもとでの漸進的な税率変化としての望ましい累進度変化に関する分析を行った この分析からの主要な結果は以下の通りである (1) 全ケースにおいて 考察対象としたいずれの社会厚生関数を用いても 第 9 ブラケット ( 年収約 911-1,184 万円 ) の税率の引き下げが示唆された (2) ベンサム型の価値判断を採用する場合は 上位の限界税率を下げ 下位の限界税率を上げるという選択が示唆される (3) 不平等回避度が比較的高いケースにおいては最高税率よりも最低税率の引き下げが含意された さらに 現行の所得税率の組合せを最適な税率とする分配ウエイトを 逆算 し 現行の政府の社会的選好をさぐるとともに パレート改善的な税制改革の可能性を探った 6 つのケースを想定して分配ウエイトを逆算したところ いずれのケースでも一部のブラケットに負の値が算定され パレート改善的な税制改革の存在が示唆された また 現在の累進税率の組合せは何らかの基準に基づいた一貫性的な選択の結果であるとは考えにくいと議論した 以上が本稿の分析結果であるが それらは未だ試論の領域にあり 今後の研究によって改善されるべき点を多く残している 第 1 に 上記の結果は 家計調査 の標準世帯デー -29-

30 経済分析 第 172 号 タにもとづいた値である したがって 他の形態の家計は分析の対象としていないし データ自体も所得階位別に集計されたデータが用いられている 本来ならば より多くの家計形態を明示的に考え かつ 信頼性のある個票データを用いた分析が必要となるであろう 第 2 に 上記の分析は 尤もらしい手続きには従っているものの ある意味でアドホックに算定された消費者選好パラメータに依存している したがって 複数の仮定に依存する感度分析を行うことによって結論を導いてはいるが 実際の費用便益分析に耐えうる推計値としては 本稿のような感度分析ではなく 信頼性の高い実証分析にもとづいた推計値が必要となるであろう しかし 信頼性の高いパラメータ値を容易に入手できなかったことを考慮すると 本稿の論点を明示的に考慮した方法で我が国の労働供給関数自体を本格的に推定することから始める必要があると考えられる 参考文献 Ahmad, E., Stern, N., The theory of reform and Indian indirect taes. Journal of Public Economics 25, Allgood, S., Snow, A., The marginal cost of raising ta revenue and redistributing income. Journal of Political Economy 106, Atkinson, A.B., Stern, N.H., Pigou, taation and public goods. Review of Economic Studies 41, Atkinson, A.B., On the measurement of inequality. Journal of Economic Theory 2(3), Asano, S Joint allocation of leisure and consumption commodities: A Japanese etended consumer demand system Japanese Economic Review 48, Azar, C., Weight factors in cost-benefit analysis of climate change. Environmental and Resource Economics 13, Ballard, C.L., Fullerton, D Distortionary taes and the provision of public goods. Journal of Economic Perspectives 6, Bergson, A A reformulation of certain aspects of welfare economics. Quarterly Journal of Economics 52, Bergson, A., Consumer's surplus and income redistribution. Journal of Public Economics 14, Blundell, R., MaCurdy, T., Labor supply: A review of alternative approaches. Ashenfelter,O., Card, D., (Eds.) Handbook of Labor Economics 3A, Boadway, R. W., The welfare foundation of cost-benefit analysis. Economic Journal 84,

31 累進所得税と厚生変化 Boadway, R.W., Integrating equity and efficiency in applied welfare economics. Quarterly Journal of Economics 90, Boadway, R., Bruce, N., Welfare Economics (Basil Blackwell, Oford). Brent, R.J., Imputing weights behind past railway closure decisions within a cost-benefit framework. Applied Economics 11, Brent, R.J., Use of distributional weights in cost-benefit analysis: A survey of schools. Public Finance Quarterly 12(2), Browning, E.K., The marginal cost of public funds. Journal of Political Economy 84, Campbell, H.F., Bond, K.A., The cost of public funds in Australia. Economic Record 73(220), Dahlby, B., The distortionary effect of rising taes. In: Robson, R., Scarth, W. (Eds.), Deficit Reduction: What Pain; What Gain? (C.D. Howe Institute, Toronto), Dahlby, B., Progressive taation and the social marginal cost of public funds. Journal of Public Economics 67, Feldstein, M., Ta avoidance and the deadweight loss of the income ta. Review of Economics and Statistics 81, Frankhauser, S.R., Tol, S.J., Pearce, D.W., The aggregation of climate change damages: A welfare theoretic approach. Environmental and Resource Economics 10, Freebairn, J., Reconsidering the marginal welfare cost of taation. Economic Record 71(213), Freeman III, A.M., Income distribution and public investment. American Economic Review 57, Galvez. T.E., Jara-Diaz, S.R., On the social valuation of travel time savings. International Journal of Transport Economics 25(2), Hansson, I., Stuart, C., Ta revenue and the marginal cost of public funds. Journal of Public Economics 27, Harberger, A., Taation, resource allocation, and welfare. In: The Role of Direct and Indirect Taes in the Federal Revenue System (Princeton University Press, Princeton, NJ). Hau, T.D., Distributional cost-benefit analysis in discrete choice. Journal of Transport Economics and Policy 20 (3), King, M. A., Welfare analysis of ta reforms using household data. Journal of Public Economics 21,

32 経済分析 第 172 号 Madden, D., Labour supply, commodity demand and marginal ta reform. Economic Journal 105(429), Maass, A., Cost-benefit analysis: Its relevance to public investment decisions. Quarterly Journal of Economics 80(2), Marglin, S Public Investment Criteria: Benefit-Cost Analysis for Planned Economic Growth (MIT Press, Cambridge, MA). Mayshar, J., On measure of ecess burden and their application. Journal of Public Economics 43, Mayshar, J., On measuring the marginal cost of funds analytically. American Economic Review 81, McGuire, M.C., Garn, H.A., The integration of equity and efficiency criteria in public project selection. Economic Journal 79(316) Mohring, H., Transportation Economics (Ballinger, Cambridge, MA). Musgrave, R. A., Thin, T., Income Ta Progression, Journal of Political Economy 56(6), Nwaneri, V.C., Equity in cost-benefit analysis: A case study of the Third London Airport. Journal of Transportation Economics and Policy 4(3), Okamoto, M., Estimating the Japanese household labor supply response. 青山国際政経論集 (1), Pencavel, J., Labor supply of men: A survey. In: Achenfeller, O., Layard, R. (Eds.), Handbook of Labor Economics 1 (North-Holland, New York). Sandmo, A., Redistribution and the marginal cost of public funds. Journal of Public Economics 70, Slemrod, J., Yitzhaki, S., Integrating ependiture and ta decisions: The marginal cost of funds and the marginal benefit of projects. National Ta Journal 54, Snow, A., Warren Jr, R.S., The marginal welfare cost of public funds: Theory and estimates. Journal of Public Economics 61, Stiglitz, J.E., Dasguputa, P., Differential taation, public goods and economic efficiency. Review of Economic Studies 38, Stuart, C., Welfare costs per dollar of additional ta revenue in the United States. American Economics Review 71, Triest, R., The relationship between the marginal cost of public funds and marginal ecess burden. American Economic Review 80, Usher, D., An instructive derivation of the epression for the marginal cost of -32-

33 累進所得税と厚生変化 public funds. Public Finance 39, Wildasin, D. E., On public good provision with distortionary taation. Economic Inquiry 32, 赤井伸郎. 1999a. 費用便益分析における税金の扱い: 補論公的資金のシャドー プライスの計測 社会資本整備の費用効果分析に係る経済学的問題研究会 ( 編 ) 費用便益分析に係る経済学的基本問題 赤井伸郎. 1999b. 最適課税理論展望: 現実との接点をもとめて 最適財政システムの経済分析 経済研究所研究双書. 跡田直澄, 橋本恭之, 前川聡子, 吉田有里 日本の所得課税を振り返る フィナンシャル レビュー (50), 阿部由紀子, 大竹文雄 税制 社会保障制度とパートタイム労働者の労働供給行動 季刊社会保障研究 31(2), 上田孝行, 長谷川専, 森杉壽芳, 吉田哲生,1999. 地域修正係数を導入した費用便益分析 土木計画学研究 論文集 (16), 上村敏之 財政負担の経済分析: 税制改革と年金政策の評価 関西学院大学出版会. 岡本稔,1998. 日本の主婦の労働供給に関する計量分析 青山国際政経論集 (10), 金子能宏, 田近栄治 勤労所得税と間接税の厚生コストの計測: 勤労者標準世帯の場合 フィナンシャル レビュー (15), 小西砂千夫 日本の税制改革: 最適課税論によるアプローチ 有斐閣. 島田晴雄, 酒井幸雄,1980. 労働力構造と就業行動の分析: 個票による家計の就業行動の横断面分析 経済分析 (79), 田近栄治, 古谷泉生 日本の所得税: 現状と理論 フィナンシャル レビュー (53), 内閣府経済社会総合研究所 (2003) 平成 13 年度国民経済計算 (93SNA) (URL: 常木淳 費用便益分析における税金の扱い 社会資本整備の費用効果分析に係る経済学的問題研究会 ( 編 ) 費用便益分析に係る経済学的基本問題, 21-26, 常木淳 費用便益分析の基礎 東京大学出版会. 内閣府政策統括官 年代における所得税制改正の効果について 政策効果分析レポート No.9. 橋本恭之 税制改革の応用一般均衡分析 関西学院大学出版会. 林正義 公的資金の限界費用: 概念と算定式 経済研究 ( 明治学院大学 ) (117), 別所俊一郎, 赤井伸郎, 林正義 公的資金の限界費用 日本経済研究 47, 本間正明 日本財政の経済分析 創文社. 本間正明, 跡田直澄, 岩本康志, 大竹文雄,1985. 直間比率の経済分析 経済研究 36(2), -33-

34 経済分析 第 172 号 本間正明, 跡田直澄, 井堀利宏, 中正則,1987. 最適税制 経済分析 (109), 本間正明, 跡田直澄 ( 編 )1989. 税制改革の実証分析 (109), 山田雅俊 現代の租税理論 創文社. -34-

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