目次 目次...2 略号一覧 毒性試験の概要文 まとめ 単回投与毒性試験 マウス単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ラット単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 )..

Similar documents
一般薬理試験及び毒性試験 2. 毒性試験 (1) 単回投与毒性試験 ( マウス イヌ サル ) 33) 動物種 投与経路 投与量 (mg/kg) 概略の致死量 (mg/kg) マウス 経口 2000 雌雄 :>2000 腹腔内 300 雌雄 :300 経口 750 雌雄 :>750 腹腔内 500

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

PEGIFNα2b 目次 (1 of 2) 略語一覧表 毒性試験の概要文

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

アスナプレビル 毒性試験の概要文 Page 2 用語及び略語一覧 8-MOP 8-methoxypsoralen 8- メトキシソラレン ALP alkaline phosphatase アルカリホスファターゼ ALT alanine aminotransferase アラニンアミノトラ

ラコサミド 毒性試験の概要文 Page 毒性試験の概要文 まとめ非臨床毒性試験として 単回投与毒性試験ではマウス ラット及びイヌで 反復投与毒性試験ではマウスで 13 週間まで ラットで 26 週間まで及びイヌで 52 週間まで ラコサミド ( 開発コード

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

テイカ製薬株式会社 社内資料

トピロリック錠 インタビューフォーム

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

資料4-4 木酢液の検討状況について

CTD 第 2 部 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 毒性試験の概要文 MSD 株式会社

生殖発生毒性試験の実施時期について

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

トリアムシノロンアセトニド マキュエイド硝子体内注用 40mg 医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請書 添付資料 CTD 第 2 部 ( 資料概要 ) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 薬物動態試験の概要文 わかもと製薬株式会社 1

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

減量・コース投与期間短縮の基準

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

目次頁略号一覧表 まとめ 反復投与毒性試験 ラット ラット 7 日間経口投与試験及び 4 週間回復性試験 ( 試験番号 TX CTD ) 考察及び結論

<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63>

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

PowerPoint プレゼンテーション


糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

2.6.6 毒性試験の概要文 目次 略語 略号一覧 毒性試験の概要文 まとめ 単回投与毒性試験 マウスを用いた単回経口投与及び単回腹腔内投与毒性試験 ラットを用い

資料3  農薬の気中濃度評価値の設定について(案)

新規 P2X4 受容体アンタゴニスト NCP-916 の鎮痛作用と薬物動態に関する検討 ( 分野名 : ライフイノベーション分野 ) ( 学籍番号 )3PS1333S ( 氏名 ) 小川亨 序論 神経障害性疼痛とは, 体性感覚神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みと定義され, 自発痛やアロディ

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (


使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

Microsoft Word - sa_niflec_ doc

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL・2g/10mL・4g/20mL

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

資料 6 rash2 マウス ( 短期発がんモデル ) の特性と品質管理 財団法人実験動物中央研究所 浦野浩司 2018/3/7 1

ルリコナゾールルコナック爪外用液 5% CTD 第 2 部 ( モジュール2): CTDの概要 ( サマリー ) 2.4 非臨床試験の概括評価 佐藤製薬株式会社

2.6.6 毒性試験の概要文 目次 毒性試験の概要文 まとめ 試験概要 単回投与毒性試験 反復投与毒性試験 遺伝毒性試験 生殖発生毒性試験 その他の毒性試験...

Transcription:

オングリザ錠 2.5 mg オングリザ錠 5 mg 医薬品製造販売承認申請書添付資料第 2 部 ( モジュール 2):CTD の概要 ( サマリー ) 2.6.6 毒性試験の概要文 大塚製薬株式会社 1

目次 目次...2 略号一覧...4 2.6.6 毒性試験の概要文...7 2.6.6.1 まとめ...7 2.6.6.2 単回投与毒性試験...16 2.6.6.2.1 マウス単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 )...16 2.6.6.2.2 ラット単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 )...16 2.6.6.2.3 サル単回投与用量設定毒性試験 (GLP 非適用 )...16 2.6.6.2.4 サル単回投与毒性試験 (GLP 適用 )...16 2.6.6.3 反復投与毒性試験...18 2.6.6.3.1 ラット反復経口投与毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...18 2.6.6.3.2 イヌ反復経口投与毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...21 2.6.6.3.3 カニクイザル反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 )...25 2.6.6.4 遺伝毒性試験...28 2.6.6.4.1 In vitro 試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...28 2.6.6.4.2 In vivo 試験 (GLP 適用 )...29 2.6.6.5 がん原性試験...32 2.6.6.5.1 マウス 3 ヵ月経口投与用量設定試験 (GLP 適用 )...32 2.6.6.5.2 マウス 104 週間反復強制経口投与がん原性試験 (GLP 適用 )...33 2.6.6.5.3 ラット 3 ヵ月経口投与用量設定試験 (GLP 適用 )...34 2.6.6.5.4 ラット 104 週間反復強制経口投与がん原性試験 (GLP 適用 )...34 2.6.6.6 生殖発生毒性試験...36 2.6.6.6.1 ラット受胎能及び初期胚発生に関する試験 (GLP 適用 )...36 2.6.6.6.2 胚及び胎児発生に関する試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...37 2.6.6.6.3 ラット出生前及び出生後発生に関する試験 (GLP 適用 )...39 2.6.6.7 局所刺激性試験...42 2.6.6.7.1 ウシ角膜の混濁及び透過性試験 (GLP 適用 )...42 2.6.6.7.2 ウサギ皮膚刺激性試験 (GLP 適用 )...43 2.6.6.8 その他の毒性試験...44 2.6.6.8.1 抗原性試験 (GLP 適用 )...44 2.6.6.8.2 免疫毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...44 2.6.6.8.3 探索的中枢神経毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...47 2.6.6 毒性試験の概要文 2

2.6.6.8.4 カニクイザル探索毒性試験 (GLP 非適用 )...58 2.6.6.8.5 BMS-510849 分析ブリッジング試験 (GLP 適用 )...65 2.6.6.8.6 不純物 / 分解物に関する試験 (GLP 適用 )...67 2.6.6.8.7 その他の試験 (GLP 適用, 一部非適用 )...70 2.6.6.9 考察及び結論...79 2.6.6.10 図表...90 2.6.6 毒性試験の概要文 3

略号一覧 略号 省略していない表現 APD50 action potential duration at 50% depolarization (50% 再分極時活動電位持続時間 ) APD90 action potential duration at 90% repolarization (90% 再分極時活動電位持続時間 ) AUC area under the concentration versus time curve ( 濃度時間曲線下面積 ) AUEC area under the effect-time curve ( 効果 - 時間曲線下面積 ) BMS Bristol-Myers Squibb CD Caesarean derived ( 帝王切開由来の ) Crl:CD-1 Charles River: CD-1 マウス Crl:SD Charles River: Sprague Dawley ラット C max maximum concentration ( 最高濃度 ) CNS central nervous system ( 中枢神経系 ) CN cyanide ( シアン化物 ) DMSO dimethyl sulfoxide DNA deoxyribonucleic acid ( デオキシリボ核酸 ) DPP dipeptidyl peptidase ECG electrocardiogram ( 心電図 ) E. coli Escherichia coli ( 大腸菌 ) E max maximum effect ( 最大効果 ) E min minimum effect ( 最小効果 ) F female ( 雌 ) F0 maternal generation ( 母世代 ) F1 first generation ( 第一世代 ) F2 second generation ( 第二世代 ) F344 Fischer 344 ラット F344 WT Fischer 344 野生型ラット (DPP-4 酵素活性を持つラット, 雌での活性は 約 13.3~20.6 U/L) F344 DPP-4-def Fischer 344 DPP-4- 欠損型ラット (DPP-4 酵素活性が低下ないし欠損した ラット, 雌での活性は約 2.5~7.6 U/L) FDA Food and Drug Administration ( 米国食品医薬品局 ) GI gastrointestinal ( 胃腸の ) GD gestational day ( 妊娠日数 ) g Gram ( グラム ) GLP Good Laboratory Practice ( 医薬品安全性試験実施基準 ) GLP-1 glucagon-like peptide-1 ( グルカゴン様ペプチド-1) GIP glucose-dependent insulinotropic polypeptide ( グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド ) herg human ether-a-go-go related gene h hour ( 時間 ) ICH International Conference on Harmonization ( 日米 EU 医薬品規制整合化国際会議 ) IC50 concentration that causes 50% inhibition (50% の抑制をもたらす濃度 ) IgG immunoglobulin G ( 免疫グロブリン G) 2.6.6 毒性試験の概要文 4

IgM immunoglobulin M ( 免疫グロブリン M) KLH keyhole limpet hemocyanin ( スカシガイヘモシアニン ) LD lactation day ( 授乳日数 ) LFB Luxol fast blue ( ルクソール ファスト青染色 ) LLOQ lower limits of quantitation ( 定量下限値 ) LOAEL low-observed-adverse-effect level ( 毒性発現最低量 ) MRI magnetic resonance imaging ( 磁気共鳴映像法 ) M male ( 雄 ) μm micromolar ( マイクロモル ) MN-PCE micronucleated polychromatic erythrocytes ( 小核含有多染性赤血球 ) N/A not applicable ( 該当なし ) ng nanogram ( ナノグラム ) No. number ( 番号 ) NOAEL no-observed-adverse-effect level ( 無毒性量 ) NPY neuropeptide Y ( 神経ペプチド Y) NZW New Zealand White PAS periodic acid Schiff ( 過ヨウ素酸シッフ反応染色 ) PCEs polychromatic erythrocytes ( 多染性赤血球 ) PR PR 時間 ( 心電図の P 波の始まりから Q 波の始まりまでの時間 ) QRS QRS 幅 ( 心電図の Q 波の始まりから S 波の終わりまでの時間 ) QT QT 時間 ( 心電図の QRS 群の始まりから T 波の終わりまでの時間 ) RHD recommended human dose ( 推奨臨床用量 ) Sitagliptin シタグリプチン (Januvia, BMS-730173) S9 9000g 上清分画 ( チトクローム P-450 代謝酵素を高濃度含有する肝臓分画 ) SCN thiocyanate ( チオシアネート ) S. typhimurium Salmonella typhimurium ( ネズミチフス菌 ) SD Sprague Dawley ラット UDS unscheduled DNA synthesis ( 不定期 DNA 合成 ) Vildagliptin ビルダグリプチン (Galvus, BMS-471211) WT wild-type ( 野生型 ) 2.6.6 毒性試験の概要文 5

名称 ( 由来 ) 構造式 サキサグリプチン (BMS-477118) HO H 2 N N O CN OH BMS-510849 [ 代謝物 ] HO H 2 N O N CN 類縁物質 A* [ 不純物及び分解物 ] 類縁物質 E* [ 不純物 ] 類縁物質 C* [ 不純物 ] 類縁物質 D* [ 不純物 ] 2.6.6 毒性試験の概要文 6 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2.6.6 毒性試験の概要文 2.6.6.1 まとめサキサグリプチン (BMS-477118) の非臨床安全性を, マウス, ラット, イヌ, カニクイザルを用いた単回及び反復経口投与毒性試験, 一連の in vitro 及び in vivo 遺伝毒性試験, マウス及びラットを用いたがん原性試験, ラット及びウサギを用いた生殖及び発生毒性試験,in vitro 及び in vivo ( マウス及びウサギ ) での局所刺激性試験, ラットを用いた免疫毒性試験, によって評価した 更に, 雄ラットにみられた神経変性脳病変の発生機序の検討, サルにみられた皮膚及びその他の組織における変化 ( 例えば, 単核細胞浸潤 ) の更なる特徴付けのために, 探索的試験も実施した 主要な反復投与毒性, 遺伝毒性試験, 生殖毒性及びがん原性試験の用量選択を目的とした用量設定試験を適切な動物種を用いて実施した 更に, サキサグリプチンの主要活性代謝物 BMS-510849 の毒性を明らかにするための試験, サキサグリプチン原薬 / 製剤中の不純物 / 分解物の濃度を規定するための試験も実施した BMS-510849 の初期の定量は血漿中濃度を過大評価していた ( 詳細は第 2.6.6.8.5 項 ) ため,BMS-510849 の暴露評価に与える影響を確認するブリッジングトキシコキネティクス試験を実施した 2 種の測定方法間でその値に違い (43% 以下 ) がみられたが, 重要な試験における無毒性量において BMS-510849 の安全域は適切に担保され, ヒトにおける安全性評価に影響は与えなかった BMS-510849 の安全域は初期データを用いて示した 暴露の開き ( 倍率 ) はサキサグリプチンの臨床推奨用量 5 mg での定常 AUC 値, サキサグリプチンは 78 ng h/ml, BMS-510849 は 214 ng h/ml を基に計算した 非臨床段階での開発中,3 種のサキサグリプチン ( トリフルオロ酢酸塩, 安息香酸塩, フリー体 ) を使用したため, 概要文及び概要表にはそれを特定できる記載を行った すべての主要な非臨床毒性試験は GLP を遵守し,ICH ガイドラインに従って実施した 血漿中 DPP-4 阻害活性 ( 薬力学的エンドポイント ) をいくつかの毒性試験の一部として評価した ラット及びイヌにおいて, 最大血漿中 DPP-4 阻害活性は約 95% であったため, ラット及びイヌの記載時には薬力学的エンドポイントを DPP-4 阻害とした しかしながら, サルにおいては最大血漿中 DPP-4 阻害活性は 70%~80% でプラトーに達した ラット及びイヌとは異なり, サルの血漿中には ex vivo の酵素アッセイに使用した基質を切断する非 DPP-4 酵素を含むことが推定された したがって, サルにおいては薬力学的エンドポイントを DPP 阻害とした 単回経口投与毒性試験において, マウス及びラットでは 2000 mg/kg まで, カニクイザルでは 25 mg/kg まで, サキサグリプチンは臨床的に著明な毒性をもたらさなかった げっ歯類においては, 4000 mg/kg で体重増加量及び活動性の一過性低下及び / 又は死亡がみられた サルでは 50 mg/kg で明らかな毒性と死亡がみられた サキサグリプチンのラットにおける反復経口投与毒性は以下の 3 本の主要な試験において評価した :2,20,200 mg/kg/ 日の用量での 2 週間試験,300,600,1200 mg/kg/ 日の用量での 3 ヵ月がん原性用量設定試験,2,20,100 mg/kg/ 日の用量での 6 ヵ月試験 (3 ヵ月での中間評価, 投与後 1 ヵ月の回復期間を含む ) 更に, ラットにおける 104 週間がん原性試験 (25,75,150,300 mg/kg/ 日 ) で得られた薬物関連の非腫瘍性所見も, サキサグリプチンの慢性毒性評価の一部として含めた 3 ヵ月試験では 300 mg/kg/ 日まで,6 ヵ月試験では 100 mg/kg/ 日まで, サキサグリプチンは臨 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 7

床的に著明な毒性をもたらさなかった 予期したとおり, サキサグリプチンの薬理学的標的である血漿中 DPP-4 阻害が,2 週目及び 6 ヵ月目の測定の 2 mg/kg/ 日以上の用量でみられた 試験全般において, サキサグリプチン及び BMS-510849 の暴露は用量の増加に比例して増加し, 反復投与による増加はみられず, 雌の暴露は雄よりも高く,BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンよりも低い又は同等 (0.1~1 倍 ) であった ラットにおいて 20 mg/kg/ 日以上の用量で薬物に関連した一連の臨床病理学的変化がみられた みられた所見はごく軽度から軽度な血液学的変化であり, それは 200 mg/kg/ 日以上での血小板数減少,300 mg/kg/ 日以上でのヘモグロビン, 平均ヘモグロビン量, 平均赤血球容積の低下,600 mg/kg/ 日以上での網赤血球比の増加, 雄のみでの白血球数 ( 好中球及びリンパ球 ) 増加であった ごく軽度から軽度な血清生化学的変化もみられ, それは 20 mg/kg/ 日以上でのコレステロール及びカリウムの減少,200 mg/kg/ 日以上でのアルカリフォスファターゼの増加,600 mg/kg/ 日以上での血清アルブミン低下 ( 雌のみ ),1200 mg/kg/ 日での総蛋白質の低下 ( 雄のみ ) 及びトリグリセライドの増加であった 2 週後, 免疫系への影響として,200 mg/kg/ 日で血清 IgM 及び / 又は IgG の増加 ( 雌では 20 mg/kg/ 日でも ), 脾臓の CD3+ T リンパ球及び CD45RA+ B リンパ球の増加がみられた ごく軽度から軽度な病理学的所見も 20 mg/kg/ 日以上でみられ, それは, リンパ性過形成を伴う脾臓重量の増加, 肺の組織球症, 雌における眼付属腺への単核細胞浸潤 (300 mg/kg/ 日以上 ), ストレスに関連した二次的変化としての胸腺リンパ性枯渇 (300 mg/kg/ 日以上 ) 及び胃粘膜糜爛 (1200 mg/kg/ 日のみ ) であった 慢性試験 (3~24 ヵ月 ) において,150 mg/kg/ 日以上の用量を投与された雄ラットには明らかな毒性, シアンの毒性に感受性のある中枢神経系領域である尾状被殻及び脳梁における変性 / 壊死性脳病変がみられたが, 雌ラットにはみられなかった 6 ヵ月試験の 1 ヵ月の回復期間後 (100 mg/kg/ 日以下 ) には, 臨床的及び病理学的変化はみられなかった 6 ヵ月投与後の無毒性量は 20 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチンの AUC は 2796 ng h/ml 以上 ) であった 20 mg/kg/ 日におけるサキサグリプチン及び代謝物の全身暴露 AUC は, 臨床推奨用量での AUC と比べてそれぞれ 36 倍及び 6 倍であった サキサグリプチンのイヌにおける反復経口投与毒性は以下の 3 本の主要な試験において評価した :1,5,25 mg/kg/ 日の用量での 2 週間試験,0.2,1,5 mg/kg/ 日の用量での 3 ヵ月試験 ( 投与後 1 ヵ月の回復期間を含む ),1,5,10 mg/kg/ 日の用量での 12 ヵ月試験 (6 ヵ月での中間評価を含む ) 薬理学的作用である血漿中 DPP-4 阻害 (E max において 88% 以上 ) が 0.2 mg/kg/ 日以上の用量でみられた 試験全般において, サキサグリプチン及び代謝物の全身暴露は用量の増加と共に増加し, 明らかな性差も無く, サキサグリプチンと代謝物の暴露は全般的にほぼ同様であった 12 ヵ月試験の経過中にサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は 40%~70% 低下した 1 mg/kg/ 日 (286 ng h/ml 以上 ) ではサキサグリプチンは著明な毒性をもたらさなかったが, 高い用量においては胃腸毒性を主とする影響がみられた 25 mg/kg/ 日 (50803 ng h/ml) の用量では明らかな毒性が発現し, 腸管の機能不全 ( 下痢, 嘔吐 ) に関連した二次的なごく軽度から軽度な血清蛋白及び電解質の低下を伴う腸疾患により,9 回投与後には衰弱した雄 1 例を安楽殺した 5 mg/kg/ 日以上では, 臨床症状として赤色軟便及び / 又は形を成さない / 粘液性便, 体重増加量 (25 mg/kg/ 日では体重の減少あり ) 及び摂餌量の用量依存的低下がみられた 全体的にごく軽度から軽度な臨床病理所見が, イヌのすべての試験の 5 mg/kg/ 日以上の用量でみられた その所見は,5 mg/kg/ 日以上における軽度から中等度の好酸球数増加,10 mg/kg/ 日以上における白血球数減少, 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 8

25 mg/kg/ 日における連銭形成 ( 積重なった赤血球と定義される ; 通常, ガンマグロブリン過剰血症と関連した血清学的状況において見られる, 雄ではグロブリンの増加が見られていた [ 下記参照 ]), であった ほとんどがごく軽度から軽度な血清生化学的及び尿検査所見も以下のようにみられた :5 mg/kg/ 日以上の雄において血清アルブミン及びリンの低下,10 mg/kg/ 日以上で血清コレステロール及びトリグリセライドの増加並びに血清総蛋白及びカリウムの低下,25 mg/kg/ 日では尿蛋白の増加, 免疫学的エンドポイントとして,25 mg/kg/ 日の雄にグロブリン及び免疫グロブリンの増加がみられた 5 及び 10 mg/kg/ 日においてみられた薬物関連の形態学的変化は, 肝臓の中心静脈周囲のごく軽度な細胞浸潤 / 炎症で, 更に 12 ヵ月投与後にはごく軽度から軽度な肉球表皮の表層性糜爛 ( 肉球の亀裂に相当 ) であった 25 mg/kg/ 日では, ごく軽度から中等度の腸疾患, ストレスに関連した二次的な変化である軽度から中等度のリンパ性壊死及び / 又は多リンパ系組織の枯渇がみられた 2 週間及び 12 ヵ月試験においては回復性の検討を行っていないが,3 ヵ月試験の 5 mg/kg/ 日でみられたすべての変化には回復性があることが確認された 12 ヵ月投与後の無毒性量は 1 mg/kg/ 日であり, サキサグリプチン及び代謝物の AUC は臨床推奨用量での AUC のそれぞれ 4 倍及び 2 倍であった サキサグリプチンのカニクイザルにおける反復経口投与毒性は,0.03,0.3,3 mg/kg/ 日の用量での 3 ヵ月試験において特徴づけを行った 0.03 及び 0.3 mg/kg/ 日では薬物に関連した毒性変化はみられなかった 3 mg/kg/ 日において,14 匹中 4 匹の足及び / 又は尾に多病巣性皮膚病変 / 痂皮がみられた すべての用量で用量依存的血漿中 DPP 活性阻害がみられた (E max は 49~70%; カニクイザルにおいては 70~80% が最大 ) サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量に関連し, 全般的に雌雄でほぼ同様であり,0.3 mg/kg/ 日以上では反復投与によるサキサグリプチン暴露の多少の増加 (2.8 倍まで ) がみられた ラット及びイヌとは対照的に,BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの AUC よりも 6.9 倍まで高かった 3 mg/kg/ 日でみられた薬物関連影響は, 皮膚病変, ごく軽度の多組織における単核細胞浸潤 ( 通常みられる背景的変化の悪化と考えられた ), ごく軽度な脾臓, 胸腺及び / 又は骨髄のリンパ性過形成であった 皮膚病変は投与期間中に回復がみられ, すべての所見は 3 ヵ月の回復期間で回復した 無毒性量の 0.3 mg/kg/ 日におけるサキサグリプチン及び代謝物の全身暴露 (AUC) は, 臨床推奨用量での AUC のそれぞれ 1~3 倍及び 2 倍であった サキサグリプチンの遺伝毒性は一連の in vitro 及び in vivo のアッセイで評価した In vitro アッセイでは S9 代謝活性化あり及びなしで細胞毒性用量又は 5000 μg/plate までの用量で実施した サキサグリプチンも BMS-510849 も細菌復帰突然変異試験 ( ネズミチフス菌及び大腸菌 ) において 5000 μg/plate の濃度まで遺伝毒性を示さなかった サキサグリプチンはヒトリンパ球を用いた in vitro 染色体異常試験の S9 なし条件において, 最高濃度の 1000 μg/ml において染色体異常を示した 対照的に,DNA 修復試験で 1500 mg/kg/ 日まで投与されたラット, 小核試験で 3 日間 1500 mg/kg/ 日投与されたラット, 又は in vivo/in vitro 染色体異常試験で 1 ヵ月間 500 mg/kg/ 日投与されたラットにおいて, 染色体異常も DNA 傷害性はみられなかった 1 ヵ月試験において,500 mg/kg/ 日での血漿 AUC 暴露量は臨床推奨用量での AUC との比較で未変化体は 1260 倍以上,BMS-510849 は 130 倍以上であった したがって, マウス及びラットの高い倍率での暴露においてもがん原性は認められなかったという結果も含めた, 科学的根拠の重要度 (weight of evidence) を考慮すれば, 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 9

サキサグリプチンに遺伝毒性は無いと考えられた サキサグリプチンのがん原性をマウス及びラットを用いた 104 週間経口投与がん原性試験で評価した マウスには 50,250,600 mg/kg/ 日の用量でサキサグリプチンを投与した サキサグリプチンはいずれの用量においてもマウスにがん原性を示さず, 非腫瘍性組織学的所見も見られなかった 生存率は雄の 250 mg/kg/ 日以上で低下し, 早期の終了となった (600 mg/kg/ 日群の雄は 90 週,250 mg/kg/ 日群の雄は 100 週 ) 雄マウスにおける早期死亡の原因は特定できなかったが, これらの群における生存期間と投与期間はがん原性を評価するのに適切と考えられた 最高用量におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC は臨床推奨用量での AUC のそれぞれ 1210 倍及び 690 倍であった ラットの経口投与がん原性試験においては,25,75,150,300 mg/kg/ 日の用量でサキサグリプチンを投与した サキサグリプチンはいずれの用量においてもラットにがん原性を示さなかった 300 mg/kg/ 日群の雄において生存率が低下し, 投与第 68 週に投与を中止せざるを得なくなり, がん原性の評価から除外した 雄の対照群の生存率低下により, 雄のすべての投与群について第 99 週に終了した これらの群における生存期間及び投与期間はがん原性評価に適切であると考えられた 最高用量におけるサキサグリプチン及び主要代謝物の AUC は臨床推奨用量での AUC との比較で, 雄ではそれぞれ 370 倍及び 40 倍, 雌ではそれぞれ 2300 倍及び 130 倍であった 主な薬物関連の非腫瘍性所見は前述したとおり, 雄ラット特異的なシアン関連の神経変性脳病変であり, これが雄の 300 mg/kg/ 日群での死亡増加の原因と思われた 更に, 以前に実施した試験と一致して, 全般にごく軽度な単核細胞浸潤の発現頻度の増加が 75 mg/kg/ 日以上の投与群の肺 ( 肺組織球症 ), 膀胱, 眼付属腺 ( 雌 ), 肝臓 ( 雄 ), 精巣上体にみられた 重要なこととして, これらの所見のいずれもリンパ性増殖疾患, 腫瘍, 自己免疫に進行しなかった サキサグリプチンの生殖及び発生毒性について, ラットでは 900 mg/kg/ 日まで, ウサギでは 200 mg/kg/ 日までの用量で評価した ラットにおける受胎能及び初期胚発生試験 ( 雄は 100,200,400 mg/kg/ 日 ; 雌は 125,300,750 mg/kg/ 日 ) において, 雄では 100 mg/kg/ 日以上, 雌では 125 mg/kg/ 日以上の用量で臨床症状, 体重増加量の減少及び / 又は体重の減少がみられたが, 生殖機能への影響は雄では 400 mg/kg/ 日でのみ ( 受胎率低下 ), 雌では 300 及び 750 mg/kg/ 日でのみみられた ( 胚致死の増加, 更に 750 mg/kg/ 日では性周期の変化, 受胎率 黄体数 着床の低下 ) したがって, サキサグリプチンは明らかな毒性をもたらした用量でのみ生殖機能に影響を及ぼした ラットの生殖に対する無作用量 ( 雄は 200 mg/kg/ 日, 雌は 125 mg/kg/ 日 ) におけるサキサグリプチンの全身暴露 AUC は, 臨床推奨用量での AUC のそれぞれ 630 倍及び 800 倍 (BMS-510849 はそれぞれ 66 倍及び 47 倍 ) であった ラット (64,240,900 mg/kg/ 日 ) 及びウサギ (8,40,200 mg/kg/ 日 ) における胚 胎児発生試験において, いずれの投与量においても催奇形性は認められず, 更に, サキサグリプチン及び BMS-510849 の母動物の暴露 (AUC) が臨床推奨用量での AUC と比べてラットでは 300 倍及び 30 倍, ウサギでは 160 倍及び 224 倍であった投与量において, 胚 胎児の発生に有害な影響は見られなかった 奇形ではない発達の遅延として, ラットでは 240 及び 900 mg/kg/ 日 ( 臨床での AUC の 1560 倍以上 ) において胎児骨盤の骨化の軽度な減少,900 mg/kg/ 日では胎児体重の減少及び母動物の薬物関連毒性がみられた ウサギでは 200 mg/kg/ 日という母動物毒性のみられた用量 ( 臨床 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 10

での AUC の 1420 倍 ) においてのみ, 胚 胎児発生にサキサグリプチンの影響がみられ, それは舌骨 ( 翼の屈曲 ) 及び肋骨 ( 骨化部位数の増加 ) の軽度な変異のわずかな増加だけであった サキサグリプチンは 100 mg/kg/ 日以下の用量ではラットにおける出生前後発生に影響を及ぼさなかった 250 及び 500 mg/kg/ 日 ( 臨床用量での AUC の 1690 倍以上 ) の用量において, 母動物毒性 ( 体重増加量及び摂餌量の減少 ) 及び離乳前期間中の出生児体重の減少 ( 出生後 21 日目近くにピークを示した ) がみられた 離乳の 1~2 週後には, 出生児の体重増加量はすべての群で同様であった 出生児の無作用量 (100 mg/kg/ 日 ) における授乳中ラットのサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 AUC は, 臨床用量での AUC のそれぞれ 490 倍及び 45 倍であった サキサグリプチンは正常ウサギ皮膚に対して刺激性を示さなかったが, 摘出したウシ角膜には軽度な刺激性を示し (20% w/v),25% までの濃度で実施したマウスの local lymph node assay において皮膚感作性の可能性が示された 免疫毒性をラットを用いて評価した サキサグリプチンの目的とする薬理作用は DPP-4/CD26 蛋白分解酵素活性の阻害を介したインクレチン ( 特に, グルカゴン様蛋白 [GLP-1] 及びグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド [GIP]) 濃度の増加である しかしながら, DPP-4/CD26 は種々の機能を持ち, 受容体,T リンパ球共刺激蛋白でもある 種々の結合特性 特徴を持つ DPP-4 阻害剤の使用において, その作用の中にはリンパ球増殖の抑制という望ましくない活性を示すものもあることより,DPP-4/CD26 蛋白分解酵素活性の共刺激性 T リンパ球伝達系における in vivo での役割の検討が現在も行われている サキサグリプチンの反復投与試験において, 必ずしも一貫したものではなく, また, すべての動物種においてではないが, 免疫学的評価を組み込み, 免疫系に対する作用を観察した サキサグリプチン投与が T リンパ球の共刺激活性を抑制するか否かを評価するために, 抗原誘発及び分裂促進剤誘発のリンパ球増殖反応を以下の 2 試験で評価した 最初のラットを用いた 1 ヵ月試験では,keyhole limpet hemocyanin(klh) を抗原物質として, 10,50,200 mg/kg/ 日の用量のサキサグリプチンが T リンパ球依存性免疫反応を変化させるか否か評価した いずれの用量においても,KLH に対する T リンパ球依存性液性免疫反応に影響は無く, 更に脾臓の汎 T 細胞, ヘルパー T 細胞, 細胞毒性 T 細胞,B リンパ球の数にも影響はみられなかった したがって, サキサグリプチンは 200 mg/kg/ 日までの用量においてラットの T リンパ球依存性免疫反応に有害な作用を持たず, この用量におけるサキサグリプチンの全身暴露 AUC は臨床推奨用量での AUC の 335 倍に相当していた ( 同じ用量を用いて実施した 2 週間反復投与毒性試験から得られたデータの外挿 ) 1 第二の試験として, 野生型及び DPP-4 欠損の雌 F344 ラットを用い, いくつかの免疫学的評価項目に加えて, 分裂促進剤によるリンパ球の増殖反応を評価した この試験の当初の目的は, サキサグリプチンの目的とした薬理作用 (DPP-4/CD26 酵素活性の特異的阻害 ) と DPP-4/CD26 の非酵素的 / 受容体機能又は目的としない非 DPP-4/CD26 関連活性の潜在的な免疫系調節作用との関連性を更に評価することであった 試験は, 正常な血漿 DPP-4 酵素活性を示すラット (WT) と血漿 DPP-4 酵素活性が低下又は欠損したラット (DPP-4-def) にサキサグリプチンを投与し, 分裂促進剤刺激を受けたリンパ球の増殖反応を比較するように計画された しかしながら, 雌の F344 DPP-4-def ラットではすでに報告されていた血漿 DPP-4 活性値と一致した低値 ( 約 2.5~7.6 U/L) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 11

であったが,WT では報告されていた値 ( 約 13.3~20.6 U/L) と一致せず, 両系統は同様の値を示したため, この試験の目的は達成できなかった この所見は, 雌の F344 WT 及び DPP-4-def ラットが正常な Charles River Sprague Dawley (Crl:SD) ラットと機能的に同様であったことを示していた T リンパ球分裂促進剤 ( コンカナバリン A) 又は T 及び B リンパ球分裂促進剤 (pokeweed) で刺激後の脾臓細胞反応又はサイトカインの放出に, 両系統の F344 ラット間に差はみられなかった 更に,Harlan Sprague Dawley 系ラットにおける他の反復投与試験と同様に,200 mg/kg/ 日以上の用量で脾臓重量の増加 (400 mg/kg/ 日でのみ ), リンパ節におけるリンパ性過形成を含む, 用量依存的なリンパ系の形態変化が, 評価に使用した F344 ラットの系統に関わらずみられた 更に, ごく軽度な脾臓における髄外造血 (DPP-4-def F344 ラットのみ ) 及びごく軽度から中等度な胸腺皮質性リンパ球枯渇に関連したストレス性胸腺重量低下も 400 mg/kg/ 日でみられたが, これらは非常に高い用量 ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC は臨床推奨用量での AUC のそれぞれ 2750 倍及び 360 倍 ) に限定された所見であり, 臨床との関連性はないものと考えられた 雄ラットでのみにみられた神経変性脳病変の可能性のある発生機序を解明するために探索試験を実施した 脳病変の特徴及び分布はシアン (CN) 中毒によるものと一致していたため, 急性ラットモデルの開発を含めた in vitro 及び in vivo 試験を実施し, 雄ラットの脳病変発生におけるシアンの役割を評価した 最初の試験では, サキサグリプチン及び BMS-510849 の脳内濃度は雌雄とも血漿中濃度に比べて低く, 性差もみられなかった 平行して実施したサキサグリプチンの生体内変換試験において, 雄ラット特異的な肝臓代謝酵素 (CYP2C11) が in vitro でサキサグリプチンからシアン (CN) を放出し, 同様にサキサグリプチンの経口投与後に血中にシアンが検出された 雄ラットにおけるシアン毒性の発生に関する CYP2C11 の in vivo での役割は, その後に実施した去勢 (CYP2C11 はアンドロゲンによって調整される ) 又は CYP2C11 抑制剤 ( シメチジン ) を用いた試験において確認された その結果は,CYP2C11 活性の低下をもたらしたいずれの条件においても, シアン関連性の急性毒性及び血中シアン濃度を十分に防止又は減少したことを示した In vivo でのシアンの放出が雄ラットに限定されていることを確認するために高用量 (2000 mg/kg/ 日以上 ) のサキサグリプチンを雌雄のマウスに投与したところ, いずれの性においても急性毒性はみられず, 血中にシアンは検出されなかった また, シアノ基を持つ代謝物 BMS-510849 を用いたラット試験において, サキサグリプチン投与後の脳病変が発生した時の暴露と同等の BMS-510849 暴露においても急性毒性を示す臨床症状も脳病変も発生しないことが示された 最後に, 脳病変の発生における薬理学的機序の潜在的関与又は補助的な役割 { これには DPP-4 基質神経ペプチド Y(NPY) の潜在的役割を含む } を検討するために追加試験を実施した この神経ペプチドは中枢神経系において最も豊富に提示されており, その血管収縮機能によって脳病変の発生に寄与していたかも知れないので, 特別な懸念があった その結果はすべて陰性であり, サキサグリプチンによる DPP-4 阻害と雄ラット特異的脳病変の発生に関連は無いことが確認された 結論として, 雄ラット特異的神経変性脳病変は, 雄ラットにおける CYP2C11 によるサキサグリプチンの肝臓での生体内変換におけるシアンの放出によるものであった サキサグリプチンを投与したカニクイザルにおける皮膚病変及び単核細胞浸潤 / 炎症のさらなる特徴付けとその機序を探索するため, また, カニクイザルにおけるサキサグリプチンの毒性を他の 2 種類の DPP-4 阻害剤 ( ビルダグリプチン [Galvus ], シタグリプチン [Januvia ]) と比 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 12

較するため, 探索試験を実施した 最初の試験は,1~3 ヵ月経口投与試験として,2 mg/kg/ 日を 13 週間投与,10 又は 30/20 mg/kg/ 日 (30 mg/kg/ 日を 1 又は 2 回投与後に死亡がみられたため, この時点で投与量を 20 mg/kg/ 日に減少した ) を 4~6 週間投与した 30/20 mg/kg/ 日の雄 1 例に著明な血小板減少症 ( 前値の 6%) がみられたため, 第 29 日以後の投与は中止し, その 20 日後から 20 mg/kg/ 日で投与再開したが再発せず, 免疫系を介した機序によるものではないことが示された すべての用量において (AUC 暴露は 580 ng h/ml 以上 ), 潰瘍性皮膚病変, ごく軽度から中等度の多組織血管周囲性単核細胞浸潤 / 炎症, ごく軽度から軽度の脾臓及び骨髄のリンパ性過形成がみられた 微小血管の血管炎が皮膚, 尿生殖路, 胃腸管, 甲状腺, 骨格筋, 及び肺にみられた 免疫系を介しない多病巣性糸球体症 ( 腎臓の糸球体における非炎症性病変 ) が 10 及び 30/20 mg/kg/ 日群の各 1 例でみられた 免疫機能を評価するために計画された以下の項目の結果から, 免疫を介した機序によってこの変化が発生したという証拠はなかった : 末梢血球フェノタイピング, 血清免疫グロブリン, 抗核抗体, 抗赤血球抗体, 抗血小板抗体, 剖検, 組織病理, 免疫組織学, 電子顕微鏡 この試験において無作用量は推定できなかった 毒性発現最低用量の 2 mg/kg/ 日におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC は臨床推奨用量での AUC の 7 倍 ~18 倍の範囲であった サキサグリプチンの毒性をビルダグリプチン及びシタグリプチンの毒性と比較する目的でサルを用いた 3 本の経口投与試験を追加実施した 薬物動態と薬力学特性 ( 血漿 DPP 阻害 ) を比較するために, サキサグリプチンは 0.1~10 mg/kg, ビルダグリプチンは 0.1~30 mg/kg, シタグリプチンは 0.3~40 mg/kg, の用量で単回経口投与試験を実施した すべての DPP-4 阻害剤において, その全身暴露に用量依存的な増加及び DPP 阻害がみられた 24 時間にわたる持続的最大血漿 DPP 阻害 (E max が E min に類似 ) は, サキサグリプチンでは 3 mg/kg/ 日 (785 ng h/ml) 以上で, ビルダグリプチンでは 30 mg/kg/ 日 (14895 ng h/ml) で, シタグリプチンでは 40 mg/kg/ 日 (30658 ng h/ml) で発現し, サキサグリプチンはサルにおいて DPP 阻害作用が強いことが示唆された 反復用量漸増試験において, サキサグリプチン, ビルダグリプチン及びシタグリプチンをサルに 3,10,30 mg/kg/ 日と漸増投与したところ, いずれにおいてもサルは著明な毒性反応を示さなかった ほとんどの臨床所見は 60 mg/kg/ 日以上の投与で発現し, それは流涎及び活動性低下 ( サキサグリプチン ), 嘔吐及び後肢跛行 ( ビルダグリプチン, シタグリプチン ), 皮膚病変 ( サキサグリプチン, ビルダグリプチン ) であった ごく軽度から軽度な臨床病理変化は,30 mg/kg/ 日以上での血清アルブミン低下 ( サキサグリプチン, ビルダグリプチン ) 及び尿中ケトン体の増加 ( ビルダグリプチン, シタグリプチン ) であった 病理組織学的に, 糜爛から潰瘍性の皮膚病変 ( サキサグリプチン [ ごく軽度から中等度 ], ビルダグリプチン [ ごく軽度から軽度 ]), ごく軽度から軽度なリンパ性過形成 ( サキサグリプチン, シタグリプチン ) がみられた その後に実施した 6 週間の経口投与比較毒性試験では, ヒト組み換え DPP-4 に対する in vitro 活性及び in vivo での暴露量 / 耐性を基本に,10 mg/kg/ 日のサキサグリプチンと同等であろうと見積もられた用量でビルダグリプチン (40/20 mg/kg/ 日 :40 mg/kg/ 日から開始したが著明な浮腫が発現したため, 途中から 20 mg/kg に減量 ) 及びシタグリプチン (40 mg/kg/ 日 ) を投与した この試験において, ビルダグリプチンでは重度な用量制限急性毒性 ( 浮腫 ) がその原因の一部であったが, すべての薬剤において目標とした血漿暴露は達成できなかった しかし, ある種の毒性は 3 化合物に共通して 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 13

いた ( 例えば, 脾臓及び骨髄におけるリンパ性過形成 ) しかしながら, その毒性に明確な違いもみられた シタグリプチンはヒトにおける暴露の 10 倍の暴露 ( 臨床用量 100 mg での AUC 比較 ) では著明な毒性をもたらさなかったが, サキサグリプチンはヒトにおける暴露の 60 倍の暴露 ( 臨床推奨用量 5 mg での AUC 比較 ) において皮膚病変を生じた ビルダグリプチンはヒトにおける暴露の 8 倍の暴露 ( 臨床推奨用量 100 mg での AUC 比較 ) において, 重度な用量制限急性浮腫, 特に手及び脚の持続的な浮腫, 及び治癒しなかった潰瘍性 / 糜爛性皮膚病変を生じた サキサグリプチンの 2 種類の不純物 / 分解物 ( 類縁物質 A* 不純物及び分解物 ] 及び類縁物質 E* [ 不純物 ]) は, 原薬中に規格設定された量 ( いずれの化合物も 0.15% 以下 ) よりも高い濃度で実施した細菌の復帰変異試験において変異原性は無いことが確認された 更に, 類縁物質 A* は定型的な遺伝毒性試験で使用したサキサグリプチンのバッチには高い濃度で存在しており,1.36% の類縁物質 A* を加えたサキサグリプチンの 3 日経口投与小核試験でも染色体損傷誘発性はみられなかった 更に, サキサグリプチン単独, 類縁物質 A* を 1.36% 添加したサキサグリプチン, 類縁物質 E* を 0.62% 添加したサキサグリプチン, の 3 ヵ月のラット安全性確認試験においてその毒性に違いは無いことが確認された サキサグリプチン及びメトホルミンのイヌ 3 ヵ月反復経口投与併用毒性試験では, 併用投与による毒性増強はみられなかった サキサグリプチン / メトホルミン併用経口投与によるラット胚 胎児発生試験において,25/200 mg/kg/ 日の胎児に異常は認められなかったが,25/600 mg/kg/ 日の胎児において波状肋骨の増加がみられた この骨格変異はメトホルミンに起因していると推察された サキサグリプチン / メトホルミン併用経口投与によるウサギ胚 胎児発生試験において,40/50 mg/kg/ 日の母動物において死亡及び流産がみられ, 生存母動物の胎児において低胎児体重及び骨化の遅延が認められた この用量における母動物のサキサグリプチン及びメトホルミンの全身暴露 AUC は, 臨床用量でのヒト AUC の約 260 倍及び 1 倍であった サキサグリプチンは 290~700nm の範囲の紫外線及び可視光を吸収しないことより, 光毒性試験は実施していないが, その光化学的性質及び国内外で実施された臨床試験結果より, サキサグリプチンは光毒性のリスクを高める可能性はないと考えられる 結論として, ラットでは 6 ヵ月間 100 mg/kg/ 日まで, イヌでは 12 ヵ月間 10 mg/kg/ 日まで, サルでは 3 ヵ月間 3 mg/kg/ 日まで, サキサグリプチンの投与に十分耐えた ラットにおける主な標的臓器変化として, 全般的にごく軽度な脾臓のリンパ性過形成, 肺組織球症, 眼付属腺及び肝臓における単核細胞浸潤,104 週間投与後には膀胱及び精巣上体にも単核細胞浸潤がみられた これらの所見は, 回復性があり, ごく軽度から軽度な変化であり, 進行性ではないこと, 臨床推奨用量での AUC よりサキサグリプチンは 36 倍以上, 代謝物は 6 倍以上での変化であることから, 毒性学的意義はほとんど無いと考えられた イヌにおける主な所見としては, 血様便 / 粘液性便で特徴付けられる腸管毒性 ( 臨床推奨用量での AUC よりサキサグリプチンは 19 倍,BMS-510849 は 9 倍 ) 及び死亡にも関連した全身高暴露時 ( 臨床推奨用量での AUC よりサキサグリプチンは 580 倍以上,BMS-510849 は 140 倍以上 ) における腸疾患がみられた サルにおける主な標的臓器変化としては, 皮膚病変 ( 痂皮, 糜爛, 潰瘍 ), リンパ性過形成 ( 主に脾臓及び骨髄 ), 多組織性単核細胞浸潤であったが, これらはすべて回復性があった これらの変化の無作用量でのサキサ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 14 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

グリプチン及び代謝物の AUC は, 臨床推奨用量での AUC の 1~3 倍であった イヌにおける消化管毒性及びサルにおける皮膚変化の発生機序はわかっていない イヌでみられた血様 / 粘液性便と関連する変化はヒト臨床試験では見られていない 同様に, サルでみられた皮膚病変と関連する変化もヒト臨床試験では見られていない 注目すべきは, すべての動物種において毒性は血漿 DPP-4/DPP 阻害とは関連せず, 全般的に最大の DPP-4/DPP 阻害は非毒性量でみられた サキサグリプチンは一連の遺伝毒性試験の根拠の重要度評価からヒトに対して遺伝毒性リスクは持たず, げっ歯類においてがん原性も示さなかった 生殖試験において, サキサグリプチンは明らかな毒性用量である臨床的には関係の無い暴露においてのみ, ラットの受胎能に影響を及ぼしたが, ラット及びウサギに催奇形性を示さず,F1 世代の生存率, 発達, 生殖行動に有害な作用を及ぼさなかった 2 種類の不純物 / 分解物は, 原薬に規格設定された量よりも高い濃度で試験を行い, 安全であることが確認された 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.1 まとめ 15

2.6.6.2 単回投与毒性試験 2.6.6.2.1 マウス単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.5.2, 報告書番号 019432) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,4000 mg/kg を最高に, 以下,2000,1000,500 mg/kg の投与量で各群雌雄各 5 匹の CD-1 系マウスに経口投与した 対照群には媒体の 1.25%Avicel を 40 ml/kg 投与した すべてのマウスを 2 週間観察した 2 週後, 対照群と 4000 mg/kg 群の剖検を行ったところ,4000 mg/kg に軽度な腹腔内出血がみられた ( 雄 2 例 ) ため,2000 mg/kg 群の雄も剖検した 2000 mg/kg では薬物に関連した臨床症状も剖検所見もみられなかったが,4000 mg/kg 投与において, 活動性の低下 (Day 1 に 3 例 ), 死亡 (Day 2 に 4 例 ) がみられた 2.6.6.2.2 ラット単回経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.5.2, 報告書番号 019433) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,4000 mg/kg を最高に, 以下,2000,1000,500 mg/kg の投与量で Harlan Sprague Dawley 系雄ラット 5 匹 / 群に経口投与した 媒体 1.25%Avicel を 40 ml/kg 投与した群を対照群とした 2 週後, 対照群と 4000 mg/kg 群の剖検を実施した 2000 mg/kg 以下では薬物に関連した変化はみられなかった 4000 mg/kg 投与において, 死亡 (Day 1 に 1 例 ), 全例が身づくろいされていない外観を呈し (Day 2~6), 一過性の体重増加抑制がみられたが, 剖検で異常はみられなかった 2.6.6.2.3 サル単回投与用量設定毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.5.1, 報告書番号 019434) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,5,25,50 mg/kg の投与量で雌 1 匹 / 群のサルに投与した 投与後, 数日間各動物の状態及び行動を観察した 5,25 mg/kg では薬物に関連した変化はみられなかった 50 mg/kg 投与例では, 投与 6.5 時間後に活動性低下 / 嗜眠状態, 発声がみられ, その後 ( 投与 22 時間後 ) に死亡が発見された 剖検は実施していない 結論として,50 mg/kg の単回投与は明らかな毒性量であり死亡をもたらした 2.6.6.2.4 サル単回投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.5.2, 報告書番号 019435) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,5,25 mg/kg の投与量で雄のカニクイザル各 3 匹に投与した 媒体 1.25%Avicel を 1 ml/kg 投与した群を対照群とした 臨床症状, 血圧, 心拍数, 心電図について評価した サキサグリプチン及び主要活性代謝物 BMS-510849 の血漿中濃度も投与日に測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量の増加に伴って増加し,25 mg/kg での AUC はそれぞれ 13770 ng h/ml 及び 88383 ng h/ml であった BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの約 5~6 倍を示した いずれの投与群にもサキサグリプチン投与に関連した臨床的及び心 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.2 単回投与毒性試験 16

循環系変化はみられなかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.2 単回投与毒性試験 17

2.6.6.3 反復投与毒性試験 2.6.6.3.1 ラット反復経口投与毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) サキサグリプチンのラットにおける毒性を 2 週間,3 ヵ月及び 6 ヵ月の GLP 適用 3 試験で評価した 主要な試験の用量設定は 2 週間の探索用量設定試験を基にした 試験すべてで, サキサグリプチン及び BMS-510849 の暴露は用量に比例して増加し, 概して反復投与による増加は認められず, 雌は雄よりも高かった ;BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンよりも低かった ヒトとラットにおける AUC の比較と安全域を以下の表 2.6.6-1 に示した 動物種 表 2.6.6-1 試験 用量 (mg/ ラットにおける主要な反復投与試験における定常 AUC 暴露と安全域 AUC (ng h/ml) a ヒト暴露量との比較 ( 倍 ) b サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 kg) 雄雌雄雌雄雌雄雌 ラット 2 週 経口 3 ヵ月 経口 2 262 549 60 227 3 7 0.3 1 20 c 1600 4353 506 1227 21 56 2 6 200 26106 103861 7774 15487 335 1332 36 72 300 106066 253300 52281 122008 1360 3247 244 570 600 238214 517454 93214 227254 3054 6634 436 1062 1200 1309910 712535 745661 570211 16794 9135 3484 2665 2 217 668 54 333 3 9 0.3 2 6 ヵ月経口 20 c 2796 6111 1345 4259 36 78 6 20 100 21869 48261 9464 25992 280 619 44 121 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 4~24 時間 b ヒト 5 mg 投与時の AUC は, サキサグリプチンは 78 ng h/ml,bms-510849 は 214 ng h/ml (CV181037) BMS-510849 の最初の分析法とより特異的な分析法との違いを評価したブリッジングトキシコキネティクス試 験 ( 詳細は第 2.6.6.8.5 項 ) に基づくと, 最初の分析法ではラットの AUC を 4.4%~42.7% まで過大評価してい たことが判明した この暴露の違いはヒトの安全性評価に衝撃を与えるものではなかったので, 最初のデータと暴露倍率を示した c 無毒性量 < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 2.6.6.3.1.1 ラット 2 週間経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.6, 報告書番号 019428) サキサグリプチントリフルオロ酢酸塩を水に溶解し,1,10,100 mg/kg/ 日の用量で雌雄各 6 匹 / 群の Harlan Sprague Dawley 系ラットに経口投与した 対照群として, 雌雄各 6 匹に水を他の群と同量 (10 ml/kg) 投与した 一般状態観察, 体重, 血液学, 血清生化学, 器官重量, 剖検及び対照群と最高用量群の組織学的検査によって評価を行った サキサグリプチンの血漿中濃度を投与 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 18

1 日及び 14 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチンの全身暴露は 1 mg/kg/ 日と 10 mg/kg/ 日の間では用量の比率よりも高い割合で増加し,10 mg/kg/ 日と 100 mg/kg/ 日の間では用量の比率よりも高い割合で増加した 反復投与による暴露の増加は認められず, サキサグリプチンの暴露は雌が雄よりも約 3 倍高かった すべての用量において, 軽度から中等度の有害とは考えられない臨床病理学的変化として血清トリグリセライドの低下がみられた 100 mg/kg/ 日の雄において, 血清コレステロール及びグロブリンのごく軽度から軽度の低下がみられた 器官重量, 剖検及び組織学的検査において薬物に関連した変化はみられなかった 無毒性量は 100 mg/kg/ 日と考えられた (AUC は雄 9.0 μg h/ml, 雌 30.2 μg h/ml) 2.6.6.3.1.2 ラット 2 週間経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.2, 報告書番号 019431) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,2,20,200 mg/kg/ 日の投与量で雌雄各 10 匹 / 群の Harlan Sprague Dawley 系ラットに経口投与した 対照群として, 雌雄各 10 匹に媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (10 ml/kg) 投与した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 摂水量 眼科学的検査, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 血漿 DPP 活性, 血清 IgG 及び IgM 濃度, 脾臓リンパ球フェノタイピング, 器官重量, 剖検及び対照群と最高用量群の組織学的検査 ( 肝臓, 肺は全群 ) によって評価を行った サキサグリプチン及び薬理学的に活性のある代謝物 BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日及び 14 日に測定し, 全身暴露を評価した すべての投与量において血漿中サキサグリプチン及び BMS-510849 濃度は用量に比例して増加し, 反復投与による増加はみられなかった ( 表 2.6.6-1) 雌の未変化体及び代謝物の暴露は雄の 2-4 倍であり, 代謝物の暴露は未変化体の 0.1-0.5 倍であった すべての用量の投与第 1 及び 14 日において, 血漿 DPP 活性の著明な低下 (78% 以上の抑制 ) がみられた 2 mg/kg/ 日においては, サキサグリプチン投与に関連したその他の変化はみられなかった 20 及び 200 mg/kg/ 日では, 有害ではないごく軽度から軽度な薬物に関連した臨床病理パラメーターの変化として, カリウム低下, 血清 IgM 及び IgG の増加 (20 mg/kg/ 日は雌のみ ), 雄で血清コレステロール及びグロブリンの低下がみられた 更に,200 mg/kg/ 日では, ごく軽度な臨床病理変化として血小板数の低下, 血清アルカリフォスファターゼの増加, 雄では脾臓 CD3+ T 細胞及び CD45RA+ B 細胞の増加, 雌では尿量の増加がみられた また,200 mg/kg/ 日では, 脾臓及び肝臓重量の軽度な増加, 肺にごく軽度な組織球症, 肝臓にごく軽度から軽度な単核細胞浸潤が組織学的検査でみられた 結論として,2 及び 20 mg/kg/ 日のサキサグリプチンは著明な毒性をもたらさなかった 20 mg/kg/ 日でみられた薬物関連所見はいくつかの臨床病理パラメーターにおけるごく軽度から軽度な変化に限定されており, 有害な変化とは考えられなかった 予期した通り, すべての用量で血漿 DPP 活性の著明な低下がみられた 200 mg/kg/ 日においてみられた臨床病理所見及び組織所見から, 無毒性量は 20 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC はそれぞれ, 雄では 1600 及び 506 ng h/ml, 雌では 4353 及び 1227 ng h/ml) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 19

2.6.6.3.1.3 ラット 3 ヵ月経口投与用量設定毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.3, 報告書番号 019440) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,300,600,1200 mg/kg の投与量で 1 日 1 回 3 ヵ月間, 雌雄各 10 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに経口投与した 対照群 ( 雌雄各 10 匹 ) には同量 (10 ml/kg) の媒体 1.25%Avicel を投与した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 眼科学的検査, 血液学, 血清生化学, 器官重量, 剖検及び組織学的検査によって評価を行った サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日及び 91 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量に比例して増加した ( 表 2.6.6-1) サキサグリプチンの雌の全身暴露は雄よりも高かった (AUC で 2 倍程度,1200 mg/kg/ 日の Day 91 を除く ) 代謝物の全身暴露は投与 1 日目では雌雄で同様であったが, 投与 91 日目では雌が雄よりも高かった (AUC で 2 倍程度,1200 mg/kg/ 日群を除く ) サキサグリプチンの全身暴露は雌雄とも投与期間の延長につれてごく軽度増加したが, 代謝物の全身暴露は投与期間の延長につれて雌では増加, 雄では全般的に減少した すべての用量において,BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの暴露の約 0.4 倍 ~1 倍であった 600 mg/kg/ 日までの用量において, 薬物に関連した臨床症状はみられなかった 投与 70 日に死亡しているのが発見された 600 mg/kg/ 日群の雄 1 例 ( それ以前に臨床症状もなく, 死因は不明であった ) を除き, この用量以下でみられたすべての死亡 (300 mg/kg/ 日群の雌 1 例,600 mg/kg/ 日群の雌雄各 2 例 ) は偶発的なものと考えられた 600 及び 1200 mg/kg/ 日において, 体重及び摂餌量の低下が雄においてみられた 1200 mg/kg/ 日において, 薬物に関連した死亡 (8 例 ) がみられ, 活動性低下, 労作呼吸及び振戦を含む臨床症状 ( 頻度は雌よりも雄で高かった ) がみられた すべての投与群において, 薬物に関連したごく軽度から軽度な臨床病理パラメーターの変化として, 雌でのヘモグロビン, 平均赤血球ヘモグロビン量, 平均赤血球容積, 血小板数の低下, 血清コレステロールの低下, 雄でのカリウムの低下がみられた すべての投与群において, 薬物に関連した病理組織学的変化として, 肝臓及び脾臓重量の増加, ごく軽度の脾臓リンパ性過形成, ごく軽度から著明なリンパ性枯渇 / 壊死を伴う胸腺重量の低下, 下垂体重量の低下 ( 雌で程度が強い ), ごく軽度から軽度な肺組織球症, 雌における眼付属腺へのごく軽度から軽度な単核細胞浸潤がみられた 更に,600 及び 1200 mg/kg/ 日においてごく軽度から軽度な臨床病理所見として網赤血球比の増加, 雄における白血球, リンパ球, 好中球数, 血清アルカリフォスファターゼの増加, 雌におけるごく軽度な血清アルブミンの低下がみられた 病理組織学的に, 慢性シアン中毒と一致する変性脳病変が 600 及び 1200 mg/kg/ 日群の雄にみられた 2, 3 1200 mg/kg/ 日群では, 中等度なトリグリセライドの上昇, 雄において総蛋白及び血清アルブミンのごく軽度な減少並びにストレスによる二次的な変化と考えられた胃の赤色化と糜爛, 雌においてごく軽度なカリウムの低下がみられた 要約すると, すべての投与群においてごく軽度から中等度な臨床病理学的変化及びリンパ系臓器における形態学的変化がみられた 更に,600 mg/kg/ 日以上の用量 ( サキサグリプチンの AUC は 238214 ng h/ml 以上 ) では雄特異的な神経変性脳病変も認められた したがって, 本試験において無毒性量は推定できなかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 20

2.6.6.3.1.4 ラット 6 ヵ月経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.4, 報告書番号 019437) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,2,20,100 mg/kg の投与量で 1 日 1 回 Harlan Sprague Dawley 系ラットに 3 ヵ月間 ( 各群雌雄 10 匹 ) 及び 6 ヵ月間 ( 各群雌雄 20 匹 ) 投与し, 更に投与後 1 ヵ月間の回復性検討 ( 各群雌雄 5 匹 ) も行った 雌雄各 35 匹からなる対照群には, 媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (5 ml/kg) 投与した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 眼科学的検査, 収縮期血圧及び心拍数, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 血漿 glucagon-like peptide-1(glp-1) 濃度, 血漿 DPP 活性, 器官重量, 剖検及び組織学的検査によって評価を行った サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日,92 日及び 181 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は,2 mg/kg/ 日と 100 mg/kg/ 日の間では投与量の比率よりも全般に大きい増加を示し, 雌は雄よりも高かった ( 表 2.6.6-1) 更に, すべての用量で投与 1 日の暴露に比べて, 投与期間の延長によりサキサグリプチンは雌雄で 1.2 倍 ~2.1 倍の増加を,BMS-510849 は雌では 1.3 倍 ~1.6 倍の増加を, 雄では 0.4 倍 ~0.7 倍に低下していた すべての用量で BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの 0.2~0.9 倍であった 血漿中 DPP-4 活性の阻害がすべてのサキサグリプチン投与群で認められた 血漿中 DPP-4 活性阻害の最大 %(E max,70%~91%), 及び効果曲線下面積 (area under the effect curve: AUEC, 経時的血漿 DPP-4 阻害 % 曲線 ) はすべての投与群で全般的に同様であり, 雌雄間も同様であった 1 ヵ月の休薬後の DPP-4 活性値は対照群と同様であった GLP-1 濃度に薬物に関連した変化はみられなかった いずれの用量においても薬物に関連した死亡はみられず,2 mg/kg/ 日では薬物に関連した毒性変化はみられなかった 20 及び 100 mg/kg/ 日の投与 1 週及び 100 mg/kg/ 日の投与 13 週の投与後に, 雄においてのみ平均収縮期血圧が 17%~19% 低下した ( 投与 25 週にはいずれの用量でも認められなかった ) 20 及び 100 mg/kg/ 日群において, ごく軽度な体重増加抑制 ( 試験期間中を通じて ), ごく軽度な血清アルカリフォスファターゼの増加, ごく軽度から軽度な脾臓リンパ性過形成がみられた 100 mg/kg/ 日においては, 更にごく軽度な血清コレステロールの低下, 脾臓重量の増加, 組織学的変化を伴わない肝臓重量の増加 ( 雄 ) 及び甲状腺重量の低下 ( 雌 ) もみられた 1 ヵ月の休薬により, それまでにみられていた変化は全て回復した 20 mg/kg/ 日ではごく軽度の影響がみられただけであったので無毒性量は 20 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの全身暴露 AUC は, 雄では 2796 及び 1345 ng h/ml, 雌では 6111 及び 4259 ng h/ml) 2.6.6.3.2 イヌ反復経口投与毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) サキサグリプチンのイヌにおける毒性を 2 週間,3 ヵ月及び 12 ヵ月の GLP 適用 3 試験で評価した 試験の用量設定は 10 日間の探索用量設定試験を基にした 試験すべてで, サキサグリプチン及び BMS-510849 の暴露は用量の増加に伴って増加し, 明らかな性差は認められなかった 低用量 (10 mg/kg/ 日以下 ) では, 代謝物の暴露が未変化体より全般に高かったが, 高用量では代謝物の暴露は未変化体より全般に低かった 12 ヵ月試験において, サキサグリプチン及び BMS-510849 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 21

の全身暴露は試験期間の延長により, 初期の値から 40~60%( サキサグリプチン ) 及び 30~50% (BMS-510849) 低下した この低下の機序は明確にされていないが, 全身からのクリアランスの変化というよりも胃腸毒性による二次的な吸収の低下がその一因かもしれなかった ヒトとイヌにおける AUC の比較を以下の表 2.6.6-2 に示した 表 2.6.6-2 動物種 試験 イヌにおける主要な反復投与試験における定常 AUC 暴露と安全域用量 AUC (ng h/ml) a ヒト暴露量との比較 ( 倍 ) b (mg/ サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 kg) 雄雌雄雌雄雌雄雌 イヌ 2 週 経口 3 ヵ月 経口 1 c 1499 961 1461 1735 19 12 7 8 5 8600 6647 14596 6699 110 85 68 31 25 50803 45506 29673 36820 651 583 139 172 0.2 165 138 251 258 2 2 1 1 1 c 787 1004 1484 2124 10 13 7 10 5 5921 4442 13388 12974 76 57 63 61 1 c 286 415 359 454 4 5 2 2 12 ヵ月 5 経口 1470 1544 1872 1964 19 20 9 9 10 4278 2782 4767 5088 55 36 22 24 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 4~24 時間 b ヒト 5 mg 投与時の AUC は, サキサグリプチンは 78 ng h/ml,bms-510849 は 214 ng h/ml (CV181037) BMS-510849 の最初の分析法とより特異的な分析法との違いを評価したブリッジングトキシコキネティクス試 験 ( 詳細は第 2.6.6.8.5 項 ) に基づくと, 最初の分析法ではイヌの AUC を 4.7%~36.2% まで過大評価していた ことが判明した この暴露の違いはヒトの安全性評価に衝撃を与えるものではなかったので, 最初のデータと 暴露倍率を示した c 無毒性量 < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 2.6.6.3.2.1 イヌ 10 日間反復経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.6, 報告書番号 019429) サキサグリプチントリフルオロ酢酸塩を水に溶解し, ゼラチンカプセルに充填して 0.5,5,50 mg/kg/ 日の用量でビーグル犬 ( 各群雌雄 1 例 ) に経口投与した 対照群にはゼラチンカプセルに水を充填して投与した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 神経及び呼吸機能, 間接的血圧測定, 心電図, 眼科学的検査, 動脈酸素飽和度, 血液学, 血清生化学, 剖検及び病理組織学的検査によって評価した サキサグリプチンの血漿中濃度を投与 1 日及び 9 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチンの暴露 (C max 及び AUC) は, 用量依存的に増加し,50 mg/kg/ 日で最大 109 μg h/ml の暴露が認められた いずれの用量においても反復投与による暴露の増加は認められなかった 本試験において代謝物 BMS-510849 の測定は実施していない 0.5 及び 5 mg/kg/ 日の用量では, 薬物に関連した変化はみられなかった 50 mg/kg/ 日の用量では雄が 6 日間投与後に死亡した 50 mg/kg/ 日の 1 例又は 2 例において, 嗜眠, 嘔吐, 赤色粘液下痢, 体重及び摂餌量の低下 ( 雄 ) が 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 22

みられた 死亡した 50 mg/kg/ 日の雄には, 軽度のうっ血, 中等度な絨毛萎縮, 粘膜の壊死, 亜急性炎症, 粘液細胞枯渇を特徴とした中等度な腸疾患 ( 小腸及び大腸 ) がみられた 最高用量の雄のリンパ節及び胸腺には, ストレスに関連した軽度なリンパ性壊死及び枯渇もみられた 最高用量の雌には, 著明な血小板数の減少 ( 投与前値の 25%), ごく軽度な腸疾患 ( 小腸及び大腸 ), 血清尿素窒素及びトリグリセライドの増加並びに血清ナトリウム及び塩素の低下のような腸の機能障害に関連する二次的なごく軽度から軽度な臨床病理変化がみられた 結論として,0.5 及び 5 mg/kg/ 日のサキサグリプチンはイヌに著明な毒性をもたらさなかった 50 mg/kg/ 日の用量では中等度の腸疾患による死亡 (2 例中 1 例 ) 及びこれに関連した嘔吐, 下痢, 電解質アンバランス, 脱水をもたらした 無毒性量は 5 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチンの AUC は 5 μg h/ml) であった 2.6.6.3.2.2 イヌ 2 週間反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.5, 報告書番号 019430) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し, それをゼラチンカプセルに充填し,1,5,25 mg/kg の投与量で 1 日 1 回, ビーグル犬 ( 各群雌雄 3 例 ) に経口投与した 不純物 / 分解物である類縁物質 A* について, その安全性の確認を目的に投与懸濁液に添加した (1.4%) 対照群にはゼラチンカプセルに媒体 1.25%Avicel を充填して他と同量 (1 ml/kg) 投与した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 神経及び呼吸機能, 間接的血圧測定, 心電図, 眼科学的検査, 動脈酸素飽和度, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 血漿 DPP-4 活性, 剖検及び病理組織学的検査について評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日及び 13 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 用量依存的に増加し, いずれの用量においても性差も反復投与による増加も認められなかった ( 表 2.6.6-2) すべての用量において BMS-510849 の暴露は未変化体の 0.17 倍 ~1.86 倍であり,1.86 倍の差は低用量群でみられた すべての投与群で血漿 DPP-4 活性の著明な低下 (E max において 94% 以上の阻害 ) がみられた 1 mg/kg/ 日では薬物に関連した毒性変化はみられず, いずれの用量においても神経及び呼吸機能の変化はみられなかった 25 mg/kg/ 日の雄 1 例が, 投与 9 日に状態悪化のため剖検された 5 及び 25 mg/kg/ 日では, 嘔吐, 赤色便及び / 又は軟便, 好酸球数増加, 肝臓中心静脈周囲のごく軽度な亜急性炎症がみられた 25 mg/kg/ 日では更に, 臨床所見として, 体重の減少 ( 投与前値の 6%~20%), 軽度な摂餌量減少 ( 雄 ), 摂水量の増加がみられた 25 mg/kg/ 日ではごく軽度から軽度な臨床病理変化として, 連銭状赤血球 ( 積重なった赤血球 ), 好酸球数及び尿蛋白の増加, 雄における血清グロブリン及び免疫グロブリン (IgG,IgA) の増加がみられた 25 mg/kg/ 日では血清アルブミン, 血清電解質にも減少がみられたが, 胃腸への作用 ( 下痢及び嘔吐 ) に対する二次的な変化と考えられた 病理組織学検査において, 上皮細胞の壊死, 亜急性炎症, 出血, うっ血, 粘液細胞枯渇, 及び / 又は小腸ないし大腸の絨毛萎縮を特徴としたごく軽度から中等度な腸疾患 ( 剖検では小腸粘膜の暗色 / 赤色化としてみられた ), リンパ性組織の多くにストレスに関連した軽度から中等度なリンパ性壊死及び / 又は枯渇が 25 mg/kg/ 日でみられた 無毒性量は 1 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの全身暴露 AUC は, 雄では 1499 及び 1461 ng h/ml, 雌では 961 及び 1735 ng h/ml) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 23 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2.6.6.3.2.3 イヌ 6 週間反復経口投与毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.6, 報告書番号 019445) 以前に実施したイヌの試験 ( 報告書番号 019430) でみられた胃腸毒性がサキサグリプチンの用量漸増によって軽減されるのか否かを確認するために本試験を実施した サキサグリプチンフリー体を塩酸溶液に溶解し, 雌雄各 3 匹のビーグル犬に 1 ml/kg の液量で最初の 2 週間は 10 mg/kg/ 日, 次の 2 週間は 20 mg/kg/ 日, 最後の 2 週間は 30 mg/kg/ 日と計 6 週間経口投与した 各 2 週間の投与最終時のトキシコキネティクス, 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 剖検及び小腸 大腸の病理組織学的検査について評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量依存的に増加し,BMS-510849 の全身暴露が 20 及び 30 mg/kg/ 日で雌雄差がなかった以外, 全般的に雌より雄で軽度高かった BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの 1.7 倍までの値を示した すべての投与量において, その投与量及び投与期間依存的な胃腸毒性 ( 赤色, 粘液性, 形をなさない, ないし液状便 ), 雌雄各 1 例で体重減少 (6 週間の投与期間中に 0.8 kg), 投与 3 週 ~6 週中に雌 1 例で摂餌量の低下 (43%~68%), 雄 1 例の大腸にごく軽度な多発性急性腸疾患がみられた この毒性の全体的な程度は 2 週間 25 mg/kg/ 日投与されたイヌにおけるよりも軽度であり, 段階的なサキサグリプチンの用量増加はイヌにおける胃腸毒性に対して耐性を高めることが示唆された 2.6.6.3.2.4 イヌ 3 ヵ月間反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.6, 報告書番号 019438) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し, それをゼラチンカプセルに充填し,0.2,1,5 mg/kg の投与量で 1 日 1 回, ビーグル犬 ( 各群雌雄 5 匹 ) に経口投与した 対照群にはゼラチンカプセルに媒体 1.25%Avicel を充填して他と同量 (0.5 ml/kg) 投与した 各群雌雄 3 匹については投与 3 ヵ月後に剖検し, 残りの各群雌雄 2 匹は 1 ヵ月の休薬後に剖検した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 摂水量, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 間接的血圧測定, 心拍数, 心電図, 眼科学的検査, 動脈酸素飽和度, 剖検及び病理組織学的検査によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日及び 90 日に測定した サキサグリプチン投与犬の血漿 DPP-4 活性を投与 1 日及び 90 日, 休薬期間の終了時に測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量と比例して増加し, 明らかな性差はみられなかった ( 表 2.6.6-2) いずれの用量においても反復投与によるサキサグリプチン暴露の増加はみられなかったが,5 mg/kg/ 日の BMS-510849 暴露は投与期間の延長によって約 1.5 倍になった すべての用量において,BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの AUC の 1.4 倍 ~2.3 倍であった 血漿 DPP-4 活性阻害 (E max において 88% 以上 ) がすべての投与群に認められ, 明らかな性差はみられなかった 0.2 mg/kg/ 日では, 薬物に関連した毒性変化はみられなかった 1 及び 5 mg/kg/ 日の雄において, 有害ではないごく軽度から軽度の血清リンの低下がみられた 5 mg/kg/ 日では更に, 全例に赤色軟便 ( 鉄反応陽性 ), 軽度な好酸球数増加, 雄においてごく軽度な血清アルブミ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 24

ンの低下及び肝臓中心静脈周囲のごく軽度な亜急性炎症がみられた 1 ヵ月の休薬後, すべての薬物関連所見は回復性を示した 無毒性量は 1 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの全身暴露 AUC は, 雄では 787 及び 1484 ng h/ml, 雌では 1004 及び 2124 ng h/ml) 2.6.6.3.2.5 イヌ 12 ヵ月間反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.7, 報告書番号 019439) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25% Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,1,5,10 mg/kg/ 日の投与量で 1 日 1 回, ビーグル犬 ( 各群雌雄 7 匹 ) に 6 ヵ月又は 12 ヵ月間経口投与した 対照群には媒体 1.25%Avicel を他と同量 (0.5 ml/kg) 投与した 各群雌雄 3 匹は投与 6 ヵ月後に, 残りの各群雌雄 4 匹は投与 12 ヵ月後に屠殺剖検した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 摂水量, 眼科学的検査, 間接的血圧測定, 心拍数, 心電図, 血液酸素飽和度, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 血漿 DPP-4 活性, 器官重量, 剖検及び病理組織検査によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日,6 ヵ月目及び 12 ヵ月目に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量の増加に伴って増加し, 明らかな性差はみられなかった ( 表 2.6.6-2) BMS-510849 の全身暴露 AUC は未変化体より全般に高かった (0.8 倍 ~1.7 倍 ) サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露の投与期間の延長に伴った低下 ( すべての用量で同様 ) が, 投与 1 日目と 6 ヵ月目の間 (0%~76%), 投与 1 日目と 12 ヵ月目の間 (45% ~67%) にみられ, 最大の低下は全般的には, 投与 6 ヵ月目と 12 ヵ月目の間で生じていた 92% 以上の最大血漿 DPP-4 活性阻害がすべての用量で認められたが, 明らかな性差はみられなかった 1 mg/kg/ 日では, 薬物に関連した毒性変化はみられなかった 雄において 12 ヵ月後に用量依存性のない体重の減少 ( 対照群と比較して 1,5,10 mg/kg/ 日のそれぞれで 16,11,20%) がみられたが, 最高用量では主として 2 例が減少を示していた 5 及び 10 mg/kg/ 日では便の異常 ( 形をなさない / 粘液様及び色調異常 ) 及び足の腹側面にある肉球の裂傷 ( 投与約 7 ヵ月目に初めて観察され, 用量依存的に増加した ) がみられ, この肉球の裂傷は限局性上皮変性 ( 基底部上皮又は基底膜の露出を伴わない表層上皮細胞の空胞化及び剥離 ), 軽度な限局性真皮出血及び単核細胞浸潤によって特徴付けられる糜爛であった 更に 10 mg/kg/ 日では, ごく軽度から軽度な, 体重増加量の減少 ( 雄 ), 好酸球の増加 ( 雌 ), 白血球数 ( 好中球, リンパ球 ) の減少 ( 雄 ), 血清コレステロール及びトリグリセライドの増加 ( 雌 ), リンの低下 ( 雄 ), 血清総蛋白, アルブミン及びカリウムの低下 ( 雄 ) がみられた 要約すると,12 ヵ月間 10 mg/kg/ 日までの投与において腸疾患は組織学的に確認されなかった 5 mg/kg/ 日以上において, 便の変化, 肉球の裂傷, いくつかのごく軽度な臨床病理学的変化がみられた 無毒性量は 1 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの全身暴露 AUC は, 雄では 286 及び 359 ng h/ml, 雌では 415 及び 454 ng h/ml) 2.6.6.3.3 カニクイザル反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) 4 DPP-4 阻害剤を開発しているすべての企業に対して FDA が出した要求に応えて, サキサグリプチンのカニクイザルにおける毒性を GLP 適用 1 試験で評価した 用量はそれ以前に実施したいくつかの探索試験 ( 第 2.6.6.8.4 項参照 ) の結果を基に設定した ヒトとサルにおける AUC の比較 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 25

を以下の表 2.6.6-3 に示した 動物種 表 2.6.6-3 試験 サルにおける主要な反復投与試験における定常 AUC 暴露と安全域用量 AUC (ng h/ml) a ヒト暴露量との比較 ( 倍 ) b (mg/ サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 kg) 雄雌雄雌雄雌雄雌 サル 0.03 9 9 54 62 0.1 0.1 0.3 0.3 3 ヵ月 0.3 c 200 79 480 504 3 1 2 2 経口 3 1592 2196 4647 4825 20 28 22 23 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 8~24 時間 b ヒト 5 mg 投与時の AUC は, サキサグリプチンは 78 ng h/ml,bms-510849 は 214 ng h/ml (CV181037) c 無毒性量 < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 2.6.6.3.3.1 サル 3 ヵ月間反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 26 ( 概要表 2.6.7.7.8, 報告書番号 021432) サキサグリプチンフリー体を酸性水 ( 媒体 ) に溶解し,0.03,0.3,3 mg/kg/ 日の用量で 1 日 1 回, カニクイザル ( 各群雌雄 7 匹 ) に経口投与した 対照群には媒体の酸性水を他と同量 (1 ml/kg) 投与した 各群雌雄 4 匹については投与 3 ヵ月後に剖検し, 残りの各群雌雄 3 匹は 3 ヵ月の休薬 後に剖検した 一般状態観察, 体重, 摂餌量, 眼科学的検査, 心電図 ( 心拍数 ), 動脈酸素飽和度, 血漿 DPP 活性, 血液学, 血清生化学, 尿検査, 剖検及び病理組織検査によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 1 日,36 日及び 85 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は全般的に用量と比例して増加し, 雌雄で同様であった ( 表 2.6.6-3) 0.3( 雄 ) 及び 3 mg/kg/ 日において, 投与 1 日目と比べて投与 85 日目にはサキサグリプチン暴露の増加 (2.4 倍 ~2.8 倍 ) がみられた いずれの用量においても反復投与による BMS-510849 暴露の増加はみられなかった すべての用量において, 投与 85 日目の BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの AUC より高かった (2.2 倍 ~6.9 倍 ) サキサグリプチンはすべての用量で血漿 DPP 活性を抑制 ( 最大 69.8% まで ) し, 明らかな性差はみられなかった 0.03,0.3 mg/kg/ 日では, 薬物に関連した毒性変化はみられなかった 3 mg/kg/ 日において, 投与 50 日 ~53 日に発生し投与期間終了まで継続 ( 雌 1 例では投与 88 日に回復 ) した多発性痂皮形成が,14 例中 4 例の足及び / 又は尾にみられた 影響を受けた 4 例中 2 例のサルは回復性検討に割り当てられ, 休薬 68 日までにすべてのサキサグリプチン関連の皮膚病変は完全に治癒した 以前に実施したいくつかの探索試験でみられたように ( 第 2.6.6.8.4 項参照 ), 低頻度の一過性 (1 日 ~3 日の期間 ) 後肢跛行が 3 mg/kg/ 日の雌 2 例にみられた 剖検時, 粗糙な領域 ( 尾 ), 潰瘍 ( 尾先端 ), 及び痂皮 ( 後肢 ) が 3 mg/kg/ 日の 2 例にみられた これらの変化は, 病理組織学的にごく軽度から軽度な皮膚の修復性上皮過形成 ( 尾及び足 ) に相当し, 更に微小血管及び小動脈内皮細胞及び平滑筋の肥大, 血管周囲及び / 又は血管壁内の単核細胞浸潤 / 炎症も伴っていた 更に 3 mg/kg/ 日における薬物関連病理組織学的変化として, 骨格筋におけるごく軽度な非壊死性

血管炎症, ごく軽度な慢性膵臓炎症 [ 膵臓機能の障害 ( 体重減少, 下痢, 油性便等の臨床症状 ) を伴わず, 臨床的状況において重篤で明らかな疾患として一般的に理解されている 膵炎 とみなされるものではなかった ], 軽度な乳腺単核細胞浸潤, ごく軽度な脾臓, 胸腺及び / 又は骨髄のリンパ性過形成がみられた これらすべての変化は 3 ヵ月の回復期間後には完全に回復した 要約すると, サキサグリプチン 3 mg/kg/ 日のカニクイザルへの 3 ヵ月までの投与により, 皮膚病変, 膵臓でのごく軽度及び乳腺での軽度な単核細胞浸潤 / 炎症, ごく軽度なリンパ性過形成が生じたが, これらのすべては休薬により完全に回復した 更に, 皮膚病変の治癒は投与継続でもみられた 単核細胞浸潤 / 炎症は, サルに通常みられる自然発生性変化の悪化と考えられた 5, 6 無毒性量は 0.3 mg/kg/ 日と考えられた ( サキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの全身暴露 AUC は, 雄では 200 及び 480 ng h/ml, 雌では 79 及び 504 ng h/ml) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.3 反復投与毒性試験 27

2.6.6.4 遺伝毒性試験サキサグリプチン及び代謝物の BMS-510849 の遺伝毒性について, ネズミチフス菌及び / 又は大腸菌を用いた探索的及び典型的 Ames 復帰変異試験, ラットを用いた経口投与 DNA 修復及び小核試験を含む, 一連の in vitro 及び in vivo 試験によって評価した 陽性対照及び陰性対照については概要表に記載した 2.6.6.4.1 In vitro 試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) 2.6.6.4.1.1 サキサグリプチンの in vitro 試験 (1) ネズミチフス菌における探索的 Ames 復帰変異試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.8.1, 報告書番号 019461) DMSO に溶解したサキサグリプチンを, ラット肝臓 S9 代謝活性化あり及びなしの条件で Salmonella typhimurium の TA98 及び TA100 株を用いて 5~5000 μg/plate の用量で評価した 適切な陽性及び陰性対照を実験の中で評価した サキサグリプチンは TA100 株の 5000 μg/plate の用量においてのみ細胞毒性 ( 細菌叢の密度減少 ) を示した サキサグリプチン処置でみられた復帰突然変異コロニー数は陰性対照群と同様であった したがって,ICH ガイドラインで要求されている最高用量まで評価したが, サキサグリプチンに変異原性は認められなかった (2) ネズミチフス菌及び大腸菌における Ames 復帰変異試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.8.2, 報告書番号 019462) サキサグリプチン安息香酸塩について,Salmonella typhimurium の TA98,TA100,TA1535 及び TA1537 株,Escherichia coli の WP2uvrA 株におけるフレームシフト又は塩基対置換変異誘発性を評価した 不純物 / 分解物である類縁物質 A* の安全性確認の目的で,0.98%(w/w) の濃度で類縁物質 A* を処置溶液に添加した 適切な陽性及び陰性対照を実験の中で評価した 評価は, 最高 5000 μg/plate までの用量で,Aroclor 誘発ラット肝臓 S9 による代謝活性化あり及びなしの条件でプレート法にて実施した 主試験において,TA98 株でごく軽度な細胞毒性が最高用量 5000 μg/plate でみられた 他の細菌株では用量設定試験及び主試験のいずれにおいても細胞毒性は認められなかった サキサグリプチン処置による復帰突然変異コロニー平均数は陰性対照群と同様であった したがって,ICH ガイドラインで要求されている最高用量まで評価したが, 0.98% の類縁物質 A* を含むサキサグリプチンに変異原性は認められなかった 類縁物質 E* (3) ヒト初代培養リンパ球を用いた染色体異常試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.8.4, 報告書番号 019463) 不純物 / 分解物であるを 1.6% 含むサキサグリプチン安息香酸塩について,S9 を用いた代謝活性化有又は無の両条件下で, ヒト初代培養リンパ球を用いて染色体異常誘発能を評価した サキサグリプチンの DMSO への溶解性及び用量設定試験で得られた細胞毒性結果を基に, 125~1000 μg/ml の濃度で, 代謝活性化なしで 24 時間処置,Aroclor 誘発ラット肝臓 S9 による代 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.4 遺伝毒性試験 28 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

謝活性化ありで 5 時間処置その後 19 時間回復, という条件で評価した 適切な陽性及び陰性対照を実験の中で評価した 代謝活性化なしの 24 時間処置において, 染色体構造異常を持つ細胞の出現頻度に統計学的に有意な増加はみられなかった しかしながら, 最高濃度 (1000 μg/ml) でごく軽度な染色体異常頻度の増加 ( 統計学的に有意ではない : 対照群の 1% に対して 6%) がみられた 試験を繰り返したところ, 再度, 最高濃度 (1000 μg/ml) で統計学的に有意な染色体構造異常細胞の出現頻度の増加 ( 対照群の 3.5% に対して 9.5%) がみられた 両試験において, 細胞分裂指数が濃度依存的に減少し,1000 μg/ml では約 40%(1 回目の試験 ) 及び 53%(2 回目試験 ) の最大減少がみられた S9 代謝活性化ありの 5 時間処置では, いずれの濃度においても染色体構造異常細胞の出現頻度に統計学的に有意な増加はみられなかった サキサグリプチン処置群では対照群に比べて約 3~ 9% の細胞分裂指数のごく軽度な低下がみられた 結論として, 不純物 / 分解物である類縁物質 A* を 1.6% 含むサキサグリプチンは, ヒトリンパ球に対して細胞毒性を引き起こす 1000 μg/ml の濃度で染色体異常誘発作用を示した 低濃度において染色体異常誘発作用はみられなかった 2.6.6.4.1.2 主要代謝物 BMS-510849 の In vitro 試験 (1) ネズミチフス菌及び大腸菌における復帰変異試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.8.3, 報告書番号 019475) サキサグリプチンの主要活性代謝物である BMS-510849 の変異原性を評価した GLP 非適用の用量設定試験において,Salmonella typhimurium の TA98,TA100,TA1535 及び TA1537 株,Escherichia coli の WP2uvrA 株を用い,Aroclor 誘発ラット肝臓 S9 による代謝活性化あり及びなしの条件で, 10~5000 μg/plate までの用量でプレート法にて評価した 細胞毒性が TA1537 株においてのみ,S9 代謝活性化ありの最高用量でみられた BMS-510849 処置による復帰突然変異コロニー平均数は陰性対照群と同様であった 主試験において,Salmonella typhimurium の TA98,TA100,TA1535 及び TA1537 株,Escherichia coli の WP2uvrA 株を用い,S9 代謝活性化あり及びなしの条件で,250,500,1000,1600,3000, 5000 μg/plate の用量でプレート法にて BMS-510849 を評価した 細胞毒性が TA100 及び TA1537 株において,S9 代謝活性化あり及びなしの最高用量でみられた BMS-510849 処置による復帰突然変異コロニー平均数は陰性対照群と同様であった 結論として,ICH ガイドラインで要求されている最高用量まで評価したが,BMS-510849 に変異原性は認められなかった 2.6.6.4.2 In vivo 試験 (GLP 適用 ) 2.6.6.4.2.1 雄ラットを用いた経口投与小核試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.9.1, 報告書番号 019464) サキサグリプチンの in vivo 遺伝毒性を評価した 各群雄 5 匹の Harlan Sprague Dawley ラットに 1.25% Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁したサキサグリプチン安息香酸塩を,1500 及び 2000 mg/kg/ 日 ( 初回試験 : 不純物 / 分解物である類縁物質 A* を 0.09% 含有 ) で, 又は 500 及び 1000 mg/kg/ 日 (2 回 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.4 遺伝毒性試験 29 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

目試験 : 不純物 / 分解物である類縁物質 A* を含有しない ) で,3 日連続経口投与した 対照群には 1.25% Avicel 溶液を他と同じように投与した 陽性対照のシクロフォスファミドは 7 mg/kg/ 日を腹腔内投与した 最終投与 24 時間後に大腿骨骨髄を採取し, 多染性赤血球中の小核発現頻度を測定した 初回試験において,1500 mg/kg/ 日では 1 匹が,2000 mg/kg/ 日では 3 匹が死亡した 1500 mg/kg/ 日の用量において, 多染性赤血球 (PCE) 数の減少によって測定される骨髄毒性はみられず, 小核多染性赤血球 (MN-PCE) の発現頻度 ( 対照群と同じ 0.09%) の結果から, 遺伝毒性は認められないことが示された 2000 mg/kg/ 日では死亡例が多く, 意味のある遺伝毒性評価はできなかった 2 回目の試験において, サキサグリプチン 500 及び 1000 mg/kg/ 日では死亡はみられなかった 骨髄毒性はみられず, 平均 MN-PCE 頻度 (500 mg/kg/ 日で 0.13%,1000 mg/kg/ 日で 0.12%) は対照群 (0.13%) と同等であった 結論として, サキサグリプチン ( 類縁物質 A* を 0.09% 含む ) は 3 日間 1500 mg/kg/ 日まで経口投与されたラットの骨髄における小核試験において遺伝毒性を示さなかった 2.6.6.4.2.2 雄ラットを用いた経口投与 DNA 修復試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.9.2, 報告書番号 019465) 不純物 / 分解物である類縁物質 A* を 0.2% 含有するサキサグリプチン安息香酸塩を 1.25% Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁して, 雄の Harlan Sprague Dawley ラットに経口投与し, その肝細胞における不定期 DNA 合成 (UDS) の誘導能を評価した 陰性対照群には 1.25% Avicel 溶液を, 陽性対照群にはジメチルニトロサミンを投与した UDS 評価用の肝細胞は, サキサグリプチンに 2 ~4 時間暴露 (250,500,1000,1500 mg/kg) 又は 12~16 時間暴露 (340,680,1360,1500 mg/kg) されたラットから採取した 2 つの暴露条件での用量の違いは希釈の誤りによる 2~4 時間暴露の 1500 mg/kg で 6 例中 1 例,12~16 時間暴露の 680 mg/kg で 5 例中 1 例及び 1500 mg/kg で 6 例中 2 例が死亡した 類縁物質 A* を 0.2% 含有するサキサグリプチンは,2~4 時間暴露及び 12~16 時間暴露後に分離された肝細胞において, 実質核内粒子数の平均値に有意な増加 ( 陰性対照群と比較し少なくとも 5 以上の増加として定義される ) をもたらさなかった したがって, 類縁物質 A* を 0.2% 含有するサキサグリプチンは 1500 mg/kg までの用量において DNA 傷害 ( 雄ラット肝細胞における UDS によって評価された ) を引き起こさないと結論された 2.6.6.4.2.3 ラットを用いた 1 ヵ月経口投与 in vivo/in vitro 末梢リンパ球染色体異常試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.9.3, 報告書番号 019466) サキサグリプチンを 1 ヵ月間反復経口投与されたラットの末梢リンパ球を用い, サキサグリプチンの染色体異常誘発能を評価した サキサグリプチンフリー体を水に溶解し, 各群雌雄 10 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに 75,150,300,500 mg/kg/ 日の用量で投与した 対照群 ( 雌雄 10 匹 ) には, 逆浸透水を 10 ml/kg 投与した 陽性対照群 ( 雌雄 10 匹 ) として, シクロフォスファミド 60 mg/kg を安楽殺の約 24 時間前に単回経口投与した 投与 28 日目の投与後に血漿中薬物濃度 ( サキサグリプチン及び BMS-510849) の測定のため, 更に染色体異常分析のために最終投 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.4 遺伝毒性試験 30 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

与の 24 時間以内にすべての群から末梢血を採取した 150,300,500 mg/kg/ 日の用量で適切な生存例数が確保できたので,75 mg/kg/ 日群では血漿中薬物濃度測定及び染色体異常評価を実施しなかった サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 AUC 及び C max は用量に比例し, 雌は雄よりも高かった 500 mg/kg/ 日においてサキサグリプチンの C max は 138898 ng/ml まで,AUC は 357588 ng h/ml まで達していた すべての用量において,BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 0.1 ~0.3 倍であった 500 mg/kg/ 日を投与された雄 2 匹が投与 1 及び 2 日に死亡した 2 番目の死亡例の死亡前には, 振戦, 横臥, 労作呼吸, 赤色分泌物 ( 鼻 / 口 ), 黄色被毛がみられた 同様な臨床症状が,500 mg/kg/ 日の雄 1-2 例に散発的に観察された サキサグリプチン投与ラットにおける, 染色体構造異常を持つ細胞数の頻度に統計学的に有意な増加は認められず ( 対照群 0.2% に対して 0~0.8%), その頻度はこの試験実施施設における BMS 社用試験での媒体対照背景値の範囲内 (0~2%) であった 結論として,500 mg/kg/ 日までの用量で 1 ヵ月間経口投与された雌雄のラットの末梢リンパ球において, サキサグリプチンは染色体構造異常誘発性を示さなかった ( サキサグリプチンの C max は 138898 ng/ml まで,AUC は 357588 ng h/ml まで ) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.4 遺伝毒性試験 31

2.6.6.5 がん原性試験サキサグリプチンのがん原性をマウス及びラットを用いた 104 週間経口投与によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の平均定常状態全身暴露を投与 6 ヵ月後に測定した ヒト, マウス, ラットにおける AUC の比較と安全域を以下の表 ( 表 2.6.6-4) に示した 表 2.6.6-4 マウス及びラットにおけるがん原性試験における定常 AUC 暴露と安全域用量 AUC (ng h/ml) a ヒト暴露量との比較 ( 倍 ) b 試験動物種 (mg/k サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 ( 採材時期 ) g) 雄雌雄雌雄雌雄雌 マウス ラット 104 週 (26 週 ) 104 週 (26 週 ) 50 1605 2615 6246 7643 21 34 29 36 250 34661 30483 76123 49443 444 391 356 231 600 c 70436 94393 147802 131654 903 1210 691 615 25 3492 8763 1174 2658 45 112 5 12 75 13993 30808 3843 7672 179 395 18 36 150 c 28724 81962 9204 15226 368 1051 43 71 300 c 68568 179606 28569 29730 879 2303 134 139 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 8~24 時間 初回試験のデータを示している b ヒト 5 mg 投与時の AUC は, サキサグリプチンは 78 ng h/ml,bms-510849 は 214 ng h/ml (CV181037) BMS-510849 の最初の分析法とより特異的な分析法との違いを評価したブリッジングトキシコキネティクス試験 ( 詳細は第 2.6.6.8.5 項 ) に基づくと, 最初の分析法では AUC をマウスでは 9.6~20.8%, ラットでは 4.4~ 42.7% まで過大評価していたことが判明した この暴露の違いはヒトの安全性評価に衝撃を与えるものではなかったので, 最初のデータと暴露倍率を示した c 薬物に関連する腫瘍に対する無作用量 雄ラットにおいては,300 mg/kg/ 日群は早期に終了したためがん原性評価の最高用量は 150 mg/kg/ 日 < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 2.6.6.5.1 マウス 3 ヵ月経口投与用量設定試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.1, 報告書番号 019436) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,30,100,300,600,1000, 1500 mg/kg の投与量で 1 日 1 回, 各群雌雄 10 匹の CD-1 マウスに 3 ヵ月間投与した 雌雄各 10 匹からなる対照群 2 群には, 媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (6 又は 8 ml/kg) 投与した 生存段階における各種観察, 血液学, 血清生化学, 器官重量, 剖検, 対照群と最高用量群では組織学的検査によって評価を行った サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 29 日に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量に比例して増加し, 性差は見られなかった BMS-510849 の暴露 (AUC) は未変化体の 1.5~6.8 倍を示し, 低用量ほどその開きは大きかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.5 がん原性試験 32

300 mg/kg までの用量では薬物に関連した変化はみられなかった 600 mg/kg 以上において, 薬物に関連した変化として, 血清アルブミンのごく軽度から軽度の低下, ごく軽度な肺組織球症, 組織学的変化を伴わない肝臓重量の増加 (600 mg/kg/ 日 [ 雄 ],1500 mg/kg/ 日 ), 重量低下を伴うストレス関連の胸腺萎縮 (1500 mg/kg/ 日 ) がみられた 1000 及び 1500 mg/kg/ 日において, 薬物に関連した変化として瀕死及び死亡, 活動性低下, 後肢の腫脹 (1000 mg/kg/ 日の雄 1 例 ), 雄において血清コレステロール及びトリグリセライドのごく軽度から軽度な減少がみられた 更に 1500 mg/kg/ 日では, 虚脱, 無活動, 呼吸困難, 腹部膨満, ごく軽度な血清グロブリンの増加と A/G 比低下, 雄において組織学的変化を伴わない脾臓重量のごく軽度な増加がみられた 無作用量は 300 mg/kg/ 日であった ( サキサグリプチンの全身暴露 AUC は, 雄で 29248 ng h/ml, 雌で 20942 ng h/ml) 2.6.6.5.2 マウス 104 週間反復強制経口投与がん原性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.10.1, 報告書番号 021430) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,50,250,600 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 60 匹の Crl:CD-1 マウスに 104 週間反復経口投与した 対照群として,1 群雌雄 60 匹からなる 2 つの群に酸性水を 5 ml/kg/ 日投与した 投与量はマウスにおける 3 ヵ月用量設定試験の結果に基づいて設定した ( 第 2.6.6.5.1 項 ) 死亡, 臨床観察 ( 肉眼的又は触診による腫瘤の観察を含む ), 体重, 摂餌量, 血液学検査 ( 剖検時 : 数例の死亡雄にみられた感染を特徴付けるため ), 剖検及び病理組織学的検査によって評価した 雄では,250 及び 600 mg/kg/ 日において早期に多くの死亡がみられたため, 生存例が約 25% になった段階で投与終了時剖検を実施した (600 mg/kg/ 日群の雄は投与 90 週, 残りの雄全群は投与 100 週 ) 雌は全群,104 週投与後に剖検した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 6 ヵ月目にサテライト群のマウスを用いて測定した がん原性の評価として, 生存率に対する薬物の影響及び腫瘍性病変の発生 (Peto-Pike 傾向検定 ) を含めた 50~600 mg/kg/ 日投与後のサキサグリプチン及び BMS-510849 のマウスにおける全身暴露は用量の増加に伴って増加したが, その C max 及び AUC は用量の増加よりも大きく増加していた ( 表 2.6.6-4) 暴露に一貫した性差はみられなかった BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの暴露の 1.4~3.9 倍であった 薬物に関連した臨床症状はみられず, 体重, 摂餌量, 血液学的パラメーターにも有害な影響はみられなかった 250 及び 600 mg/kg/ 日の雄では, 用量に依存した死亡率の増加がみられ,600 mg/kg/ 日群は投与 90 週に, 残りの雄全群は投与 100 週に早期終了した (250 mg/kg/ 日の雄でその生存率が約 25% に達した時点において,2 つの対照群及び 50 mg/kg/ 日群のそれぞれの生存率は 51,38,36% であった ) 雄マウスにおける早期死亡の原因は特定されていないが, その生存率及び投与期間は以下のことよりがん原性評価に十分なものと考えられた 医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について ( 薬食審査発第 1127001 号, 平成 20 年 11 月 27 日 ) によれば, マウスの投与期間は 18 ヵ月 (78 週 ) 以上 24 ヵ月以内とされており, 更に, その注釈の記載内容から試験成績の評価には生存率 25% 以上を確保することが望ましいものと考えられた したがって,600 mg/kg/ 日群では生存率が 25% まで低下した投与 90 週に投与を終了し, その後 250 mg/kg/ 日群で生 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.5 がん原性試験 33

存率が約 25% にまで低下した投与 100 週に対照群を含めたすべての雄性群で投与を終了したことは適切であったと考える なお, この早期試験終了は米国 FDA の Executive Carcinogenicity Assessment Committee (ECAC) から承認を得た上で実施した 投与 104 週後, 雌の生存率は 2 つの対照群が 22% 及び 28%,50 mg/kg/ 日群が 33%,250 mg/kg/ 日群が 27%,600 mg/kg/ 日群が 27% であった いずれの用量においても, 腫瘍発生率に対照群と統計学的に有意な差はみられなかった すべての群において, 非腫瘍性所見は同様であった 結論として, サキサグリプチンは約 104 週間 600 mg/kg/ 日までの用量を投与されたマウスに対してがん原性を示さなかった 250 及び 600 mg/kg/ 日の雄で生存率が低下したが, 雄では 90 週以上, 雌では 104 週間, 十分な生存率が維持されたので, これらの用量におけるサキサグリプチンのがん原性の評価に悪影響は与えなかった 更に, いずれの用量においても標的臓器毒性は認められなかった 600 mg/kg/ 日でのサキサグリプチンの定常時全身暴露 AUC は, 雄で 70436 ng h/ml, 雌で 94393 ng h/ml であった 2.6.6.5.3 ラット 3 ヵ月経口投与用量設定試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.7.3, 報告書番号 019440) ラットがん原性試験の用量選択に使用された 3 ヵ月経口投与用量設定試験は, 第 2.6.6.3.1.3 項に記載した 2.6.6.5.4 ラット 104 週間反復強制経口投与がん原性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.10.2, 報告書番号 021875) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,25,75,150,300 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 60 匹の Harlan Sprague Dawley ラットに最長で 104 週間まで反復経口投与した 対照群として,1 群雌雄 60 匹からなる 2 つの群に酸性水を 5 ml/kg/ 日投与した 投与量はラットにおける 3 ヵ月用量設定試験の結果に基づいて設定した ( 第 2.6.6.3.1.3 項 ) 死亡, 臨床観察 ( 肉眼的又は触診による腫瘤の観察を含む ), 体重, 摂餌量, 剖検及び病理組織学的検査によって評価した 300 mg/kg/ 日の雄において早期に多くの死亡がみられたため投与 68 週に剖検し, がん原性の評価からは除外した 雌は全群, 投与 105 週目に剖検した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 6 ヵ月目に試験動物の一部を用いて測定した がん原性の評価として, 生存率に対する薬物の影響及び腫瘍性病変の発生 (Peto-Pike 傾向検定 ) を含めた サキサグリプチン及び BMS-510849 の平均 C max 及び AUC は雌雄とも, 全般的に用量に比例して増加した ( 表 2.6.6-4) 300 mg/kg/ 日では雌雄で BMS-510849 の全身暴露が同様であった以外, サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は, 雄に比べて雌が約 1.7~2.9 倍であった BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの暴露の約 0.2~0.4 倍であった 300 mg/kg/ 日の雄は, その生存率が 25% に達した投与 68 週に終了させた 残りの雄全群はその生存率が 2 つの対照群で 22% 及び 15%,25 mg/kg/ 日群が 35%,75 mg/kg/ 日群が 27%,150 mg/kg/ 日群が 27% になった投与 99 週に剖検したが, 以下のことよりその生存率及び投与期間は発がん性 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.5 がん原性試験 34

評価に十分なものと考えられた 医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について ( 薬食審査発第 1127001 号, 平成 20 年 11 月 27 日 ) の注釈には, 最低用量群又は対照群の動物の雌雄いずれか一方において累積死亡率が 75% になった場合には, その時点でその性の生存例を屠殺し, 試験を終了する との記載がある したがって, 雄において対照群の生存率が 25% を下回った時点で雄全群の最終屠殺 ( 投与 99 週 ) が決定されたことは適切であり, その時点での評価対象最高用量 150 mg/kg/ 日群での生存率 27% は, 試験成績の評価に適切と考えられる生存率 25% 以上を確保しており, 本薬のがん原性を評価する上で問題は無いと考える なお, この早期試験終了は米国 FDA の Executive Carcinogenicity Assessment Committee (ECAC) からの推奨に従って実施した 投与 104 週後, 雌の生存率は 2 つの対照群が 43% 及び 42%,25 mg/kg/ 日群が 45%,75 mg/kg/ 日群が 50%,150 mg/kg/ 日群が 47%,300 mg/kg/ 日群が 50% であった 300 mg/kg/ 日の雄では, 死亡率の増加に加えて, 振戦, 呼吸異常 ( 聞き取れる, 不規則又は労作 ), 及び横臥 ( シアン毒性及びサキサグリプチンの同様の用量で以前にみられた変化に一致 ), 体重減少 ( 剖検前において対照群と比べて 21% 減少 ) がみられた 評価したいずれの用量においても, 腫瘍発生率に対照群と統計学的に有意な差はみられなかった 計画屠殺及び非計画的屠殺されたラットにおいて, 薬物に関連した非腫瘍性組織学的所見が脳 ( 雄 ), 肺, 眼付属腺, 精巣上体, 膀胱及び肝臓にみられた 対照群と比べて, 限局性単核細胞浸潤の数及び分布にごく軽度な増加が以下の組織に認められた : 肺 ( 肺組織球症, 雌 75 mg/kg/ 日以上 ), 膀胱 ( 雌 150 mg/kg/ 日以上, 雄 300 mg/kg/ 日 ), 眼付属腺 ( 雌 150 mg/kg/ 日以上 ), 肝臓 ( 雄 150 mg/kg/ 日 ), 精巣上体 ( 雄 300 mg/kg/ 日 ) 単核細胞浸潤は, 以前実施したラット試験の肺, 眼付属腺, 肝臓において同様の程度でみられていた 薬物に関連した脳の組織学的所見は 150 mg/kg/ 日以上の雄に限られ, 脳梁, 尾状核被殻, 頻度は低いが視床,300 mg/kg/ 日では更に梨状 / 側頭皮質にみられた その所見の主な特徴は, 神経網変性 / 粗化, 格子細胞細胞質内にミエリン分解物及び細胞破片を持つ神経膠症であった 脳病変及びそれの発生した用量は慢性探索的 CNS 試験 ( 第 2.6.6.8.3.1(1) 項参照 ) でみられたものと同じであった この慢性探索的 CNS 試験において, 雄ラット脳病変はシアン毒性によるものとされ,300 mg/kg/ 日の雄ラットにおける生存率の低下のもっともらしい原因と考えられた 更に, 慢性探索的 CNS 試験と同様に, 雌においてはその全身暴露がより高いにも関わらず, このがん原性試験のいずれの用量においても脳病変は発生しなかった 結論として, 雄では 150 mg/kg/ 日まで, 雌では 300 mg/kg/ 日までの用量で約 104 週間投与されたラットに対し, サキサグリプチンはがん原性を示さなかった 300 mg/kg/ 日の雄において生存率が低下したが, 他の雄では 99 週間, 雌では 104 週間, 十分な生存率が維持されたので, その低下はがん原性の評価に悪い影響は及ぼさなかった 短期の試験と一致して, 主な薬物関連の非腫瘍性変化は 75 mg/kg/ 日以上でのごく軽度な多組織性単核細胞浸潤, 慢性 CNS 試験と一致する雄における 150 mg/kg/ 日以上での神経変性脳病変がみられたが, 新たな所見はみられなかった がん原性に対する無作用量におけるサキサグリプチンの全身暴露 AUC は, 雄で 28274 ng h/ml, 雌で 179606 ng h/ml であった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.5 がん原性試験 35

2.6.6.6 生殖発生毒性試験サキサグリプチンについて標準的な一連の生殖毒性試験を実施した それらには, 雌雄のラットにおける受胎能及び初期胚発生経口投与試験, ラット及びウサギにおける胚 胎児発生経口投与試験, ラットにおける出生前後発生経口投与試験が含まれる 2.6.6.6.1 ラット受胎能及び初期胚発生に関する試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.12.1, 報告書番号 019467) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し, 雄は 100,200,400 mg/kg/ 日の用量で, 雌は 125, 300,750 mg/kg の用量で, 各群 25 匹ずつの Crl:SD ラットに強制経口投与した 雌雄各 25 匹からなる対照群には, 水を 5 ml/kg( 雄 ) 又は 10 ml/kg( 雌 ) 投与した 2 週間の投与後, 投与した雌は無処置の雄と交配させ, 雌の投与は妊娠 7 日 (GD 7) まで継続した 雌は GD 15 に帝王切開した 雄の投与は無処置の雌と同居させる 2 週間前から開始し, 計画屠殺の前日まで継続した (29 日 ~32 日間 ) 雌雄について, 生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 交配及び受胎能, 剖検について評価を実施した 雌については性周期,GD 15 における胚の数及び生命状態を含む母動物の子宮内内容物の評価を実施した 10 日間の投与後におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度データは別のトキシコキネティクス試験 ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) で得た サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露はすべての用量において, その用量に比例して増加した ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) AUC 値の比較において, 雌雄とも BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの暴露より低かった (0.14 倍 ~0.32 倍 ) サキサグリプチンは雌雄すべての群において用量依存的変化をもたらした 雄においては, 臨床症状として 100 mg/kg/ 日以上で口周囲及び / 又は鼻周囲の汚れ,400 mg/kg/ 日では尿による被毛の汚れ, 活動性低下, 虚脱, 死亡 ( 初回投与の 2 時間以内に 2 匹 ) がみられた 100 mg/kg/ 日以上では, 体重の減少が投与第 1 週に,200 及び 400 mg/kg/ 日では投与第 2 週に体重増加の抑制がみられた 更に雄において,200 及び 400 mg/kg/ 日では低頻度ではあったが肉眼的に脾臓の大型化が,400 mg/kg/ 日では摂餌量の減少もみられた 100 及び 200 mg/kg/ 日の雄において, 生殖器官の重量及び生殖機能 ( 交配, 受胎能, 初期胚発生 ) にサキサグリプチンの影響はみられなかった 雄でみられた生殖能への影響は, 明らかな毒性及び死亡がみられた 400 mg/kg/ 日での受胎率低下のみであった 雌においては, 臨床症状としてすべての用量群で口周囲及び / 又は鼻周囲の汚れ,125 mg/kg/ 日以上で尿による被毛の汚れ,300 及び 750 mg/kg/ 日で糞量の減少,750 mg/kg/ 日で眼周囲の汚れ, 身づくろいされない被毛, 及び死亡 (5 日 ~32 日間の投与後に 12 匹の雌が死亡 ) がみられた 母動物の体重増加量の減少が,125 及び 300 mg/kg/ 日では GD 0~GD 4 にかけて,750 mg/kg/ 日では妊娠期間すべてにおいてみられた 更に,300 及び 750 mg/kg/ 日の雌では脾臓の肉眼的大型化がみられ ( それぞれ 10 匹と 15 匹 ),750 mg/kg/ 日の少数例では斑点, 変色及び / 又は形態の変化も伴っていた 125 mg/kg/ 日の雌においてはその生殖機能にサキサグリプチンの影響はみられなかった 300 及び 750 mg/kg/ 日では, 胚死亡の増加及び胎児数の減少がみられた 750 mg/kg/ 日では, 更に性周期変化 ( 発情期平均日数の延長及び発情前期平均日数の短縮 ), 受胎率, 黄体数及び着床数の低下 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 36

がみられた 結論として, サキサグリプチンは雌雄とも用量依存的な臨床的毒性をもたらしたが, 生殖機能への影響は雄では 400 mg/kg/ 日でのみ ( 受胎率低下 ), 雌では 300 mg/kg/ 日以上でみられた ( 胚死亡の増加,750 mg/kg/ 日では性周期, 受胎率, 黄体数及び着床に影響を及ぼした ) したがって, サキサグリプチンは明らかな毒性をもたらす用量においてのみラットの生殖機能に影響を及ぼした 生殖機能に関する無作用量は, 雄では 200 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 AUC は 48899 ng h/ml 及び 14227 ng h/ml), 雌では 125 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 AUC は 62833 ng h/ml 及び 9951 ng h/ml) であった 2.6.6.6.2 胚及び胎児発生に関する試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) 2.6.6.6.2.1 ラット胚 胎児発生毒性試験 (1) 妊娠ラット 10 日間用量設定試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.11, 報告書番号 019468) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,600,900,1200 mg/kg/ 日の投与量で, 交配した雌の Crl:SD ラット ( 各群 8 匹 ) の妊娠 6 日 (GD 6)~15 日 (GD 15) に強制経口投与した 対照群として, 交配した雌 8 匹に媒体 1.25%Avicel を 20 ml/kg 投与した 母動物の生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 剖検,GD20 での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児の観察, 胎児の肉眼的外形検査によって評価を実施した すべての投与群においてサキサグリプチンは母動物に毒性をもたらしたが, 薬物に関連した胎児の変化は 1200 mg/kg/ 日でのみ発生した すべての投与群においてその投与期間中に, 母動物に尿による被毛の汚れ, 体重増加量の低下がみられた 更に,900 及び 1200 mg/kg/ 日では過剰な流涎がみられた 1200 mg/kg/ 日では吸収胚の増加及び胎児体重の減少がみられた 結論として, サキサグリプチンは 1200 mg/kg/ 日の母動物毒性用量においてのみ胎児に影響を及ぼした (2) ラット胚 胎児発生毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.13.1, 報告書番号 019469) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,64,240,900 mg/kg/ 日の投与量で, 交配した雌の Crl:SD ラット ( 各群 22 匹 ) の妊娠 6 日 (GD 6)~15 日 (GD 15) に強制経口投与した 対照群として, 交配した雌 22 匹に媒体 1.25%Avicel を 15 ml/kg 投与した 母動物の生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 剖検,GD20 での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児の観察, 胎児の肉眼的外形, 内臓, 骨格検査によって評価を実施した 10 日間 (GD 6~15) の投与後におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度データは別のトキシコキネティクス試験 ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) で得た 妊娠ラットにおける AUC を基としたサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, すべての用量においてその用量の増加よりも大きく増加した ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの暴露より低かった (0.22 倍 ~0.27 倍 ) 64 及び 240 mg/kg/ 日の母動物及び 64 mg/kg/ 日の胎児に薬物に関連した異常はみられなかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 37

900 mg/kg/ 日では,1 例 ( 不妊動物 ) が推定妊娠 11 日目にサキサグリプチンにより死亡し, 母動物体重増加の抑制が GD 6~12 に, 臨床症状 ( 尿による被毛の汚れ, 口周囲の汚れ ) がみられた 胎児において,240 及び 900 mg/kg/ 日では骨盤の骨化遅延,900 mg/kg/ 日で胎児体重の減少 ( 対照群より 7% 減少 ) がみられた 結論として, サキサグリプチンはいずれの用量においても催奇形性はなく, 胎児の発達遅延 ( ごく軽度な骨化遅延及び / 又は胎児体重の減少 ) が 240 及び 900 mg/kg/ 日 ( 母動物のサキサグリプチン全身暴露 AUC は 121774 及び 646843 ng h/ml) でみられ,900 mg/kg/ 日において母動物毒性がみられた すなわち, サキサグリプチンは母動物毒性を起こさなかった用量において胎児発達を遅延させた 胎児に対する無作用量は 64 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の母動物全身暴露 AUC は 23610 及び 6384 ng h/ml) であった 2.6.6.6.2.2 ウサギ胚 胎児発生毒性試験 (1) 妊娠ウサギ 13 日間投与用量設定試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.11, 報告書番号 019470) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,25,50,100,200 mg/kg/ 日の投与量で, 交配した雌の New Zealand White(NZW) ウサギ ( 各群 6 匹 ) の妊娠 7 日 (GD 7) ~19 日 (GD 19) に強制経口投与した 対照群として, 交配した雌 6 匹に媒体 1.25%Avicel を 5 ml/kg 投与した 母動物の生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 剖検,GD29 での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児の観察, 胎児の肉眼的外形検査によって評価を実施した 100 mg/kg/ 日以下の用量では, 薬物に関連した変化は母動物にも胎児にもみられなかった 200 mg/kg/ 日では薬物に関連した母動物毒性がみられ, それは投与期間及び投与期間後の体重増加量及び摂餌量の低下であった 200 mg/kg/ 日の胎児には, 薬物に関連した所見として胎児体重の低下, GD 28 における 1 匹の母動物における流産がみられた したがって, サキサグリプチンは 200 mg/kg/ 日において母動物及び胎児発生に毒性を示したが,100 mg/kg/ 日以下の用量では母動物にも胎児にも影響を及ぼさなかった (2) ウサギ胚 胎児発生毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.13.2, 報告書番号 019471) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,8,40,200 mg/kg/ 日の投与量で, 交配した雌の NZW ウサギ ( 各群 22 匹 ) の妊娠 7 日 (GD 7)~19 日 (GD 19) に強制経口投与した 対照群として, 交配した雌 22 匹に媒体 1.25%Avicel を 4 ml/kg 投与した 母動物の生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 剖検,GD29 での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児の観察, 胎児の肉眼的外形, 内臓, 骨格検査によって評価を実施した 13 日間 (GD 7~19) の投与後におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度データは別のトキシコキネティクス試験 ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) で得た サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 用量の増加に比例して増加した ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの暴露の 3~4 倍であった サキサグリプチンはすべての用量で母動物に影響を及ぼしたが, 胎児には 200 mg/kg/ 日の用量 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 38

でのみ変化をもたらした 母動物においては摂餌量の減少 ( 対照群と比べて 15% まで ) が, 投与期間中すべての用量で同様にみられた 200 mg/kg/ 日の胎児にみられた変化は, 舌骨 ( 屈曲 ) 及び肋骨 ( 骨化部位の増加 ) におけるごく軽度な骨格変異だけであった 結論として, サキサグリプチンは 8 mg/kg/ 日以上 ( サキサグリプチン全身暴露 AUC は 2493 ng h/ml 以上 ) の用量において母動物毒性をもたらし, 胎児の変化 ( ごく軽度で限局した骨化の変化 ) は 200 mg/kg/ 日 ( 母動物のサキサグリプチン AUC は 110627 ng h/ml) でのみ発生した すなわち, サキサグリプチンは母動物に影響 ( 摂餌量減少 ) をもたらす用量においてのみ, 胎児に影響を及ぼした 胎児に対する無作用量は 40 mg/kg/ 日 ( サキサグリプチン及び BMS-510849 の母動物全身暴露 AUC は 12332 及び 47895 ng h/ml) であった 2.6.6.6.3 ラット出生前及び出生後発生に関する試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.14.1, 報告書番号 020818) サキサグリプチンフリー体を酸性水 ( 媒体 ) に溶解し,40,100,250,500 mg/kg/ 日の投与量で, 交配した雌の Crl:SD ラット ( 各群 25 匹 ) の妊娠 6 日 (GD 6)~ 授乳 20 日 (LD 20) の期間に経口投与した 対照群として, 交配した雌 25 匹に水 (5 ml/kg) を投与した F0 世代の母動物については, 投与期間中の一般状態, 妊娠期間の長さ, 出産時の臨床症状, 授乳期間の母動物の行動, 授乳期間終了時の剖検について, 雌雄の出生児 (F1 世代 ) については, 離乳前の観察 ( 生育性, 臨床症状, 体重 ), 生存率, 一般状態, 発達性観察 ( 性成熟, 行動試験, 聴覚性驚愕馴化, 水迷路学習記憶, 生殖能 ), 剖検について評価を実施した サキサグリプチン及び BMS-510849 の母動物血漿中濃度は LD 4 に測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 用量の増加よりも全般的に大きく増加した ( 第 2.6.6.6.3.1 項 ) BMS-510849 は,C max 値は用量の増加比率よりもその上昇率は低かったが, AUC 値は全般的に用量に比例して増加した BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの暴露の 0.13~0.25 倍であった 40 及び 100 mg/kg/ 日において,F0 世代母動物及び F1 世代出生児に薬物に関連した変化はみられなかった 250 及び 500 mg/kg/ 日において,LD 1~7 における母動物の体重増加量減少 ( 対照群より 40% 少ない ) 及び摂餌量減少 ( 対照群より 13% まで少ない ) がみられた 更に,500 mg/kg/ 日の 1 母動物が LD 7~9 に著明な体重減少及び摂餌量減少, 死期症状 ( 脱水, うずくまり姿勢, 眼瞼下垂, 触手に冷感, 身づくろいされない被毛 ) を示し,LD 9 に切迫屠殺した この動物の剖検では膵臓の退色がみられたが組織学的には所見は認められなかった F1 出生児において,250 及び 500 mg/kg/ 日でみられた薬物関連変化は体重増加量の低下 ( 出生後 4 週 ~5 週目の間 ) 及び体重減少に限定されていた 体重への影響は出生 4 日後に初めて認められ, ピークは離乳に近い出生 21 又は 22 日後となり, 雌では出生 43 日後 (250 mg/kg/ 日 ) 又は出生 92 日後 (500 mg/kg/ 日 ) に, 雄では出生 120 日後 (250 及び 500 mg/kg/ 日 ) には消失した サキサグリプチンはいずれの用量においても, 出生児の生存, 発達, 生殖能に影響を及ぼさなかった 結論として, 妊娠 / 授乳ラットに対する妊娠 6 日 ~ 授乳 20 日におけるサキサグリプチンの投与は,250 及び 500 mg/kg/ 日の母動物毒性をもたらす用量において,F1 世代出生児の体重及び体重増加量の回復性のある低下をもたらした 本試験において, 母動物及び出生児に対する無作用量 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 39

はいずれも 100 mg/kg/ 日 ( 母動物のサキサグリプチン AUC 値は 38061 ng h/ml) であった 2.6.6.6.3.1 生殖発生トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.11, 報告書番号 019472,019473) 既に実施した生殖及び発生毒性試験を支持する目的で, 妊娠及び非妊娠ラット, 並びに妊娠ウサギを用いて別試験としてトキシコキネティクス試験を実施した 更に, ラットにおける出生前後発生試験 ( 報告書番号 020818) において, 授乳中の F0 世代母動物のトキシコキネティクス評価も行った 第 2.6.4.6.2 項の非臨床薬物動態概要文で記載したように, 胎児及び新生児の暴露は妊娠及び授乳ラットへのサキサグリプチン投与後の暴露並びに乳汁への分泌で示した 生殖発生毒性試験で用いた用量における, ラット及びウサギの AUC とヒトにおける AUC との比較を以下の表 ( 表 2.6.6-5) に示した 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 40

動物種 表 2.6.6-5 試験 生殖及び発生毒性試験における定常 AUC 暴露と安全域 用量 AUC (ng h/ml) a ヒト暴露量との比較 ( 倍 ) b (mg/k サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 g) 雄 雌 雄 雌 雄 雌 雄 雌 100 16071-4376 - 206-20 - 200 c 48899-14227 - 627-66 - ラット 妊娠 ラット 授乳 ラット 受胎能試験 胚胎児試験 出生前後試 験 400 90186-28684 - 1156-134 - 125 c - 62833-9951 - 806-47 300-167578 - 23378-2148 - 109 750-497194 - 72536-6374 - 339 64 d - 23610-6384 - 303-30 240 e - 121774-28918 - 1561-135 900-646843 - 143637-8293 - 671 40-14100 - 3427-181 - 16 100 d,e - 38061-9573 - 488-45 250-131985 - 23293-1692 - 109 500-301680 - 37728-3868 - 176 8 f - 2493-7407 - 32-35 妊娠ウサギ 胚胎児試験 40 d - 12332-47895 - 158-224 200-110627 - 434489-1418 - 2030 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 8~24 時間 b ヒト 5 mg 投与時の AUC は, サキサグリプチンは 78 ng h/ml,bms-510849 は 214 ng h/ml (CV181037) BMS-510849 の最初の分析法とより特異的な分析法との違いを評価したブリッジングトキシコキネティクス試 験 ( 詳細は第 2.6.6.8.5 項 ) に基づくと, 最初の分析法では AUC をラットでは 4.4~42.7%, 妊娠ラットでは 0 ~2.7%, 妊娠ウサギでは 4.9~11.1% 過大評価していたことが判明した この暴露の違いはヒトの安全性評価に 衝撃を与えるものではなかったので, 最初のデータと暴露倍率を示した 授乳ラットにおける BMS-510849 の 血漿中分析はより正確な方法で実施した c 生殖に対する無作用量 d 胎児又は出生児に対する無作用量 e 母動物に対する無作用量 f 母動物に対する無作用量は特定されていない < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.6 生殖発生毒性試験 41

2.6.6.7 局所刺激性試験摘出したウシ角膜及びウサギにサキサグリプチンを適用し, それぞれ眼刺激性及び皮膚刺激性を in vitro 及び in vivo 試験で評価した これらの試験は, 職場における労働者の潜在的な眼又は皮膚暴露に備えた安全性の確認を目的に実施した 2.6.6.7.1 ウシ角膜の混濁及び透過性試験 (GLP 適用 ) 2.6.6.7.1.1 サキサグリプチンフリー体 ( 概要表 2.6.7.16, 報告書番号 024153) ウシ角膜 (2-5/ 群 ) にサキサグリプチンフリー体 (0.9% 生理食塩水中に 20%w/v;pH 9.0), 生理食塩水 ( 被験物質媒体対照 ), イミダゾール (20% 溶液, 陽性対照 ), 脱イオン水 ( 陽性対照の補正用対照 ) を 4 時間 in vitro で上皮面に暴露し, 洗浄後に角膜の混濁度を測定した 混濁の評価後, 角膜上皮面のチャンバーに 5 mg/ml のフルオレセイン液を入れて 90 分間暴露し, その後, 角膜内皮面のチャンバー内液について 490 nm での透過度 (OD 490 ) を測定した In vitro 指数 [ 平 7 均混濁度 +( 平均補正 OD 490 値 15)] を各標本について計算し,Sina らの分類手法を用いて眼刺激性を評価した サキサグリプチンは角膜混濁をもたらさなかったが, 角膜透過性をごくわずかに増加させた (OD 490 : 生理食塩水群 0.004 に対して補正値は 0.285) サキサグリプチンの in vitro 指数は 4.7 であり, 軽度な刺激性ありに分類された (Sina らの分類手法に従えば,in vitro 指数 0~25 は軽度な刺激性あり ) 陽性対照のイミダゾールは重度な角膜刺激をもたらした(in vitro 指数 :109.1, 補正 OD 490 値 :2.727) 結論として, サキサグリプチンフリー体は摘出ウシ角膜に対して軽度な刺激性ありと判断された 2.6.6.7.1.2 サキサグリプチン ( 塩不明 ) ( 概要表 2.6.7.16, 報告書番号 025473) ウシ角膜 (2-5/ 群 ) にサキサグリプチン (0.9% 生理食塩水中に 20%w/v 懸濁 ;ph 6.0), 生理食塩水 ( 被験物質媒体対照 ), イミダゾール (20% 溶液, 陽性対照 ) を 4 時間 in vitro で上皮面に暴露し, 洗浄後に角膜の混濁度を測定した 混濁の評価後, 角膜上皮面のチャンバーに 5 mg/ml のフルオレセイン液を入れて 90 分間暴露し, その後, 角膜内皮面のチャンバー内液について 490 nm での透過度 (OD 490 ) を測定した In vitro 指数 [ 平均混濁度 +( 平均補正 OD 490 値 15)] を各標 7 本について計算し,Sina らの分類手法を用いて眼刺激性を評価した サキサグリプチンは角膜混濁をもたらさず, 角膜透過性にも影響を及ぼさなかった (OD 490 : 生理食塩水群 0.005 に対して補正値は-0.001) サキサグリプチンの in vitro 指数は -1.3 であり, 刺激性なしに分類された 陽性対照のイミダゾールは重度な角膜刺激をもたらした (in vitro 指数 : 87.8, 補正 OD 490 値 :2.033) 結論として, サキサグリプチンは摘出ウシ角膜に対して刺激性なしと判断された 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.7 局所刺激性試験 42

2.6.6.7.2 ウサギ皮膚刺激性試験 (GLP 適用 ) 2.6.6.7.2.1 サキサグリプチンフリー体 ( 概要表 2.6.7.16, 報告書番号 024152) サキサグリプチンフリー体 (500 mg) を 2.5 2.5 cm の綿ガーゼに載せ,0.5 ml の蒸留水で湿らせ,3 匹の雄 NZW ウサギの毛刈りした背部皮膚に貼付した 4 時間後ガーゼを除去し, 残存物を蒸留水に浸けた脱脂綿で優しく拭きとった ガーゼ除去の 1,24,48,72 時間後に貼付部位の皮膚反応を Draize 法に従い等級付け評価を行い, 刺激性分類を実施した 塗布部位の皮膚には何ら反応はみられず, サキサグリプチンフリー体は 刺激性なし に分類された 2.6.6.7.2.2 サキサグリプチン安息香酸塩 ( 概要表 2.6.7.16, 報告書番号 025471) サキサグリプチン安息香酸塩 (500 mg) を約 0.1 ml の水で湿らせ,3 匹の雌 NZW ウサギの毛刈りした背部皮膚 (30 20 mm 範囲 ) に均一に塗布した 塗布部は 40 40 mm のガーゼで覆った 4 時間後ガーゼを除去し, 固形残存物を軽く払いのけ, 湿らせた脱脂綿で塗布部を拭きとった ガーゼ除去の 1,24,48,72 時間後に塗布部位の皮膚反応を Draize 法に従い等級付け評価を行い, 刺激性分類を実施した 塗布部位の皮膚には何ら反応はみられず, サキサグリプチン安息香酸塩は 刺激性なし と判断された 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.7 局所刺激性試験 43

2.6.6.8 その他の毒性試験 2.6.6.8.1 抗原性試験 (GLP 適用 ) 2.6.6.8.1.1 マウス局所リンパ節試験 (Local lymph node assay) (1) サキサグリプチンフリー体 ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024151) サキサグリプチンフリー体をジメチルフォルマミド ( 媒体 ) に 0.01,0.1,1,5,10,25% の濃度に溶解した サキサグリプチン又は媒体を CBA/Ca マウス ( 各群雌 5 匹 ) の耳介外側に,1 日 1 回 (0.025 ml/ 耳介 ),3 日間 (Days 1,2,3) 塗布した Day 6 に, トリチウム標識したチミジン 20 μci を各マウスに尾静脈内投与した 5 時間後, 耳介リンパ節を各動物から採取し, 取り込まれたトリチウム標識チミジン量を測定した 1% 以上の濃度において, 対照群の取り込み量の 3 倍以上の取り込み ( 増殖指数 :3 以上 ) が認められた したがって, この local lymph node assay 評価条件下において, サキサグリプチンフリー体は皮膚感作性を示した (2) サキサグリプチン安息香酸塩 ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 025472) サキサグリプチン安息香酸塩をジメチルフォルマミド ( 媒体 ) に 0.5,1,2.5,5,10,25% の濃度に溶解した サキサグリプチン又は媒体を CBA/Ca マウス ( 各群雌 4 匹 ) の耳介外側に,1 日 1 回 (0.025 ml/ 耳介 ),3 日間 (Days 1,2,3) 塗布した Day 6 に, トリチウム標識したチミジン 20 μci を各マウスに尾静脈内投与した 5 時間後, 耳介リンパ節を各動物から採取し, 同じ群のリンパ節はひとつにまとめて, 取り込まれたトリチウム標識チミジン量を測定した 0.5% 以上の濃度において, 対照群の取り込み量の 3 倍以上の取り込み ( 増殖指数 :3 以上 ) が認められた したがって, この local lymph node assay 評価条件下において, サキサグリプチン安息香酸塩は皮膚感作性を示した 2.6.6.8.2 免疫毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) DPP-4/CD26 は, 発現される細胞の種類及びその細胞内又は細胞外の条件に依存して様々な機能を示す多機能蛋白である 8 DPP-4/CD26 は蛋白分解酵素, 受容体,T リンパ球共刺激蛋白であり, 接着及びアポトーシスに関与する 8,9,10 今日まで,DPP-4/CD26 の in vivo Tリンパ球共刺激系における酵素活性機能の役割を理解するための検討が行われてきている それは,DPP-4/CD26 にはさまざまな結合特異性及び特徴があることから,DPP-4 酵素阻害剤の使用はリンパ球増殖の抑制を含む望ましくない活性を示す可能性があり, その機能の評価は重要であると考えられているからである サキサグリプチンの反復投与試験において, 必ずしも一貫したものではなく, すべての動物種においてではないが, 免疫系評価を盛り込み, 免疫システムへの影響を観察した 更に, サキサグリプチン投与が T リンパ球共刺激活性を抑制するか否かを調べるために, 抗原及び細胞分裂促進物質によるリンパ球増殖反応を指標として, ラットを用いた以下の試験を実施した 1) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 44

Crl:SD ラットにおける KLH 抗原に対する T リンパ球依存性液性免疫反応を評価した 1 ヵ月免疫毒性試験,2) 細胞分裂促進物質による脾臓細胞の反応を含む多種免疫系項目を正常野生型 (WT) と DPP-4 欠損 (-def)f344 ラットで比較評価した 1 ヵ月経口投与探索試験 2.6.6.8.2.1 ラット 1 ヵ月経口投与 T 細胞依存性抗体反応試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019455) サキサグリプチンの keyhole limpet hemocyanin (KLH, スカシガイヘモシアニン ) に対する液性免疫反応への影響を評価した サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,10,50,200 mg/kg/ 日の投与量で 1 日 1 回, 各群雌雄 10 匹の Crl:SD ラットに経口投与した 雌雄各 10 匹からなる対照群には, 媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (10 ml/kg) 投与した 陽性対照として, デキサメサゾンを 5 mg/kg で 9 日間 (1 mg の KLH を投与する 3 日前から開始 )1 日 1 回経口投与した すべてのラットに KLH を Day 23 に投与した KLH の投与後 6 日目に, 血清中の KLH 特異的抗体を ELISA 法で定量した 更に, 臨床観察, 体重変化, 血液学, 血清生化学, フローサイトメーターを用いた脾臓リンパ球表現系分類 ( フェノタイピング ), 剖検, 組織学的検査も評価した 10 mg/kg/ 日において, サキサグリプチン投与に関連した影響はみられなかった 50 及び 200 mg/kg/ 日では, 用量に依存した脾臓のリンパ性過形成がみられた 200 mg/kg/ 日では, 更に軽度な体重低下 ( 雄 ), 軽度な血小板数減少, 脾臓重量増加, 雌の胸腺重量低下, 下顎リンパ節サイズの増大がみられた 200 mg/kg/ 日の肉眼的リンパ性変化は組織学的に, 脾臓, 下顎及び腸間膜リンパ節のリンパ性過形成, 雌において下顎リンパ節の形質細胞過形成及び低頻度な胸腺リンパ性枯渇として認められた リンパ性過形成は特定の細胞の種類や特定の領域に限定されるものではなかった 200 mg/kg/ 日の雌 1 例が, リンパ節, 脾臓及び唾液腺の亜急性炎症並びに胸腺リンパ性枯渇を伴う細菌性敗血症を示した 別の雌 1 例では, 主に好中球数及びリンパ球数の減少 ( それぞれ 16% 及び 40%) に起因する白血球数の著明な減少 (38%) 並びに赤血球数の著明な減少 (31%), 胸腺リンパ性枯渇がみられた いずれの用量においても,CD3( 汎 T 細胞 ),CD4 + CD8 - ( ヘルパー T 細胞 ),CD4 - CD8 + ( キラー T 細胞 ),CD45RA(B 細胞 ) を発現する脾臓リンパ球数, 並びに KLH 抗原に対する T 細胞依存性反応に意味のある薬物関連変化はみられなかった 結論として, サキサグリプチンは検討した用量において, KLH に対するラットの T 細胞依存性液性免疫反応に悪影響を及ぼさなかった 主としてみられた形態学的所見は 50 及び 200 mg/kg/ 日におけるリンパ性過形成であった 2.6.6.8.2.2 ラット 1 週間経口投与用量設定毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020847) 次項に記載した探索試験 ( 報告書番号 020908) の用量設定のために,Fisher 344 (F344) ラットの 2 系統を用いてサキサグリプチンの耐性及び暴露を評価した サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,40,200,600 mg/kg/ 日の投与量で, 各群 5 匹の野生型 (WT) 雌 F344 ラット (F344/Crl 系 ), 及び各群 5 匹の DPP-4 欠損 (DPP-4-def) 雌 F344 ラット (F344/DuCrj 系 ) に経口投与した 各系統の対照群には, 媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (10 ml/kg) 投与した Day 7 における全身暴露及び血漿 DPP-4 活性, 生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 剖検, 病 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 45

理組織学的検査 ( 脾臓, 胸腺, リンパ節, 肝臓 ) で評価を行い, 更に, 脾臓リンパ球フェノタイプ,ex vivo 脾臓細胞増殖及びサイトカイン産生を含む免疫学的項目の探索的評価も実施した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は,40~200 mg/kg/ 日はほぼ用量に比例して増加したが,200~600 mg/kg/ 日は用量比よりも大きく増加した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露に, すべての用量において WT と DPP-4-def ラット間で明らかな差はみられず, 両系統の F344 ラットの暴露パラメーターは Harlan Sprague Dawley 系ラットにおいて 200 mg/kg/ 日以下の用量で以前認められた値とよく一致していた サキサグリプチン投与ラットにおいて,WT と DPP-4-def ラットで同様の DPP-4 阻害が観察された いずれの系統のラットも, 臨床的にサキサグリプチンによる著明な毒性を示さなかった 脾臓の T,B,NK 細胞集団のフローサイトメトリック評価, 脾臓細胞増殖及びサイトカイン放出の分析では, 薬物に関連した変化も系統による違いも認められなかった 要約すると,WT 及び DPP-4-def の両系統ラットとも,600 mg/kg/ 日までの用量かつ同程度の暴露において, サキサグリプチンに十分耐えた 2.6.6.8.2.3 ラット 1 ヵ月経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020908) サキサグリプチンがT 細胞共刺激活性を抑制するか否かを調査した サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel 溶液 ( 媒体 ) に懸濁し,200,400 mg/kg/ 日の投与量で, 各群 8 匹の WT 雌 F344 ラット (F344/Crl 系 ), 及び各群 8 匹の DPP-4-def 雌 F344 ラット (F344/DuCrj 系 ) に経口投与した 各系統の対照群には, 媒体 1.25%Avicel を他の群と同量 (10 ml/kg) 投与した Day 1 及び 14 における全身暴露及び血漿 DPP-4 活性測定, 生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 眼科学的及び生理学的 ( 神経学的及び呼吸検査を含む ) 検査, 臨床病理, 剖検, 限定された病理組織学的検査 ( 脾臓, 胸腺, リンパ節, 肝臓 ) で評価を行い, 更に, 脾臓リンパ球フェノタイプ, 血清免疫グロブリン (Ig) 濃度,T リンパ球分裂促進物質 (Concanavalin A) 又は,T 及び B リンパ球分裂促進物質 (pokeweed) による刺激後の ex vivo 脾臓細胞増殖及びサイトカイン産生の評価を実施した サキサグリプチン及び BMS-510849 の F344 ラットにおける全身暴露 (C max 及び AUC) は, ほぼ用量に比例して増加し,WT と DPP-4-def 間で明らかな差は無く, 反復投与による増加もみられなかった 更に, 両系統の F344 ラットの暴露は SD ラットにおいて以前認められた値とよく一致していた 血漿 DPP-4 阻害 (E max 及び AUEC 値において ) の程度及び持続時間は,Day 14 の AUEC 値が DPP-4-def ラットで予期されない高値であった以外, 用量間及び系統間で同様であった 試験期間中に死亡はみられなかった 全体的に, 薬物に関連した変化は WT と DPP-4-def F344 ラット間で実質的な差は無く,SD ラットで以前に報告されたものと同様であった WT ラットの 400 mg/kg/ 日では体重及び摂餌量の低下が認められた 200 及び 400 mg/kg/ 日では, 両系統において脾臓重量の増加及びリンパ節におけるリンパ性過形成という用量依存性のリンパ性変化がみられた 更に, ごく軽度な脾臓髄外造血に関連した脾臓サイズの増大 (DPP-4-def F344 ラットのみ ), ごく軽度から中等度の胸腺皮質リンパ球枯渇に関連した胸腺重量の低下が 400 mg/kg/ 日でみられた 両系統において, 脾臓 CD3 - CD161 + NK 細胞数の用量に依存しない減少が,DPP-4-def ラットの 400 mg/kg/ 日では CD3 + T リンパ球数の増加がみられた 他のリンパ球フェノタイプ及び CD25 活 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 46

性マーカーに変化はみられなかった 予期したとおり,DPP-4 脾臓細胞 (CD26 + ;T リンパ球活性マーカー ) の数は DPP-4-def ラットでは十分に減少していた 両系統ラットとも, 対照群と比べてサキサグリプチン投与で血清 IgG(77-247%) 及び IgM(266-666%) の増加がみられた 更に, サキサグリプチン in vivo 投与後の ex vivo 細胞培養による評価において, 脾臓細胞の機能的反応の変動もみられなかった すなわち, 細胞分裂促進物質による刺激後の脾臓細胞増殖もサイトカイン放出も, サキサグリプチンによる明らかな影響を受けなかった (DPP-4-def ラットの脾臓細胞培養において IL-2 産生がごく軽度低下していた ) この試験は血漿 DPP-4 酵素活性が正常なラット (WT) とその活性が低下又は欠損したラット (DPP-4-def) にサキサグリプチンを投与し, そのリンパ球増殖反応を比較することを目的にデザインした しかしながら, 両系統の F344 ラットとも同様な低い基礎血漿 DPP-4 活性 ( 約 2.5-7.6 U/L) を示し, この試験目的は達成できなかったが, 両系統のラットでのリンパ系組織における機能性反応及び形態学的変化が同様であったことは, サキサグリプチンによる DPP-4 活性阻害作用によってこれらは変化しなかったことを支持するものであった WT F344 ラットも DPP-4-def F344 ラットも 400 mg/kg/ 日までの用量 ( サキサグリプチン AUC は 214694 ng h/ml 以下 ) において著明な毒性を示さなかった 薬物に関連したリンパ系変化は SD ラットを用いて実施した以前の試験でみられたものと同様であった 血清 IgG 及び IgM 濃度の用量依存的なごく軽度な増加並びに脾臓 NK 細胞の用量に依存しない減少は, 脾臓細胞の反応性変化を伴うものではなかった 2.6.6.8.3 探索的中枢神経毒性試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) ラットのがん原性試験として開始した試験 ( その後慢性 [82 週まで ] 探索的中枢神経毒性試験に変更 ) において初めて観察されたサキサグリプチン関連の雄特異的神経変性脳病変の原因を探るため, 一連の探索的毒性試験及び生体内変換試験を実施した 病変は, 脳梁, 尾状核被殻, 頻度は低いが視床及び梨状 / 側頭皮質における, 神経網変性 / 希薄化及び細胞質内にミエリン分解産物及び細胞破片を含む格子細胞を伴う神経膠症として特徴付けられた 最初の試験シリーズでは, アンドロゲンの制御を受けている肝臓の CYP2C11 酵素 ( 雄ラットでは高発現しているが雌ラットでは発現していない 11 ) による, サキサグリプチンの生体内変換で放出されるシアン (CN) が雄ラット特異的な脳病変を引き起こしたという仮説を検証するために計画した 第二の試験シリーズでは, サキサグリプチンによる DPP-4 を介した NPY1-36 の NPY3-36 への変換阻害が, 雄ラットに虚血性脳病変を引き起こす長時間の中枢神経系血管収縮 / 血管痙攣をもたらしたか否かを探索するために実施した 2.6.6.8.3.1 シアン (CN) 試験雄ラットにおける脳病変の組織学的特徴を明らかにした慢性探索的中枢神経毒性試験の実施後, サキサグリプチンによる神経毒性を評価するための雄ラットモデルを準備するため, 単回及び反復投与神経毒性試験を実施して, 脳病変が 1 ヵ月又はそれ以下で発生するか否かを検討した これによりシアン毒性を評価するためのより短期の投与期間での試験系をうまく導き出せた 同時に, 未変化体及び代謝物単回経口投与試験を実施し, サキサグリプチン及びシアノ基を含む代謝物 BMS-510849 の血漿中及び脳内濃度に違いがあるか否かを測定した サキサグリプチン及び 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 47

BMS-510849 の脳内濃度は血漿中濃度より低く, 性差は認められなかった In vitro 生体内変換試験においてシアンが雄ラット特異的肝臓酵素 (CYP2C11) によって放出された ( 第 2.6.4.5.4 項, 非臨床薬物動態概要文参照 ) ことを受け, 雄ラット特異的中枢神経毒性におけるサキサグリプチンから放出されるシアンの役割を評価するために in vivo 試験を実施した 単回及び 1 週間経口投与試験を行い, 雄ラットにおける急性臨床毒性発現におけるシアンの役割を評価し, その後, 単回経口投与試験において急性毒性の臨床症状を時間経過及び血中シアン濃度で特徴付けた 全般的に, これらの試験結果は血中シアン濃度が 1.5 μg/ml 以上で急性シアン毒性の臨床症状が生じることを示した 次にアンドロゲンの制御を受けている肝臓の CYP2C11 酵素の機能と雄ラットでのシアン毒性の関連を調べるために,1)CYP2C11 抑制剤であるシメチジンの投与,2) 去勢, という手法を用いて CYP2C11 機能を抑制してサキサグリプチンを投与した試験を 2 本実施した 両試験において, シアン関連急性毒性及び血中シアン濃度は確実に減少し, 雄ラット特異的シアン誘発毒性の発現における CYP2C11 機能の役割が確認された In vivo におけるシアン産生が雄ラット特異的であることを確認するために, 単回経口投与試験においてマウスに 2000 mg/kg/ 日までのサキサグリプチンを投与し, シアンは検出されなかったことを確認した 最後に,BMS-510849 の試験 ( 用量設定試験,1 ヵ月試験 ) を行い, 脳病変がシアノ基を含む代謝物によって発生しないかどうかを確認した サキサグリプチン投与後に脳病変が発現した時と同様の BMS-510849 の暴露において脳病変はみられなかった 各試験の詳細な内容を以下に記した (1) ラット慢性投与探索的中枢神経毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019443) サキサグリプチンフリー体を 25,75,150,300 mg/kg/ 日の投与量で, 各群雌雄各 60 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに経口投与した 別の 2 群に媒体である酸性水を 5 ml/kg の容量で投与し対照群とした すべてのラットが 5 ml/kg の容量で 1 日 1 回, 強制経口投与された 当初, この試験はラットにおけるサキサグリプチンのがん原性評価試験として計画されたが, 試験の最初の 1 年において雄ラットで発生した脳病変の特徴付けを行うという目的に変更された 投与第 54 週に,300 mg/kg/ 日群及び対照群の 1 群の全生存例, 並びに 25,75,150 mg/kg/ 日群の雌雄各 20 匹の動物について中間時剖検を実施した 残りの動物は投与を継続した 投与第 77 週において 150 mg/kg/ 日の生存雄が 15 匹になったため, 投与終了時での評価に適切な動物数を確保するために投与第 81/82 週にすべての動物を最終屠殺した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中及び脳内濃度, 生存, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 血液学, 血清生化学, 剖検及び選択した組織 ( 脳, 脊髄, 末梢神経, 視神経, リンパ性組織, その他 ) の病理組織検査によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (C max 及び AUC) は, 投与 26 週及び 54 週において 25~300 mg/kg/ 日の用量間, 投与 81 週の 25~150 mg/kg/ 日の用量間で, 全般的に用量に比例して増加した ( 表 2.6.6-6 参照 ) サキサグリプチンの全身暴露(AUC) は, ほぼすべての測定時点において雌は雄より全般的に高く ( 最大約 2.9 倍 ),BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は試験期間を通して雌雄間に一定の明確な差はみられなかった ( 雌は雄の約 0.5~3.3 倍 ) 150 mg/kg/ 日以下では, 投与期間の延長によりサキサグリプチン及び BMS-510849 の明らかな暴露 (AUC) 増加 ( 約 1.1~21.7 倍 ) がみられたが,300 mg/kg/ 日ではみられなかった BMS-510849 の全身暴 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 48

露 (AUC) はサキサグリプチンより全般的に低かった ( 約 0.2~1.3 倍 ) 全般的に, サキサグリプチン及び BMS-510849 の脳への浸潤は大量ではなく ( 脳 : 血漿濃度の 比率は 0.16 以下 ), 明らかな性差もなく, 各用量及び各測定時点において同様であった 表 2.6.6-6 ラットにおける慢性中枢神経系試験における全身暴露 用量 (mg/kg/ 日 ) 25 75 b 150 週 C max (ng/ml) AUC (ng h/ml) a サキサク リフ チン BMS-510849 サキサク リフ チン BMS-510849 雄雌雄雌雄雌雄雌 26 1611 2048 497 578 2951 6499 1057 2164 54 2365 1925 1028 511 4564 6400 1824 2020 81 4509 6679 1843 1413 7823 9162 6306 3634 26 3191 9383 952 1778 8778 23941 2904 9575 54 8637 7442 2595 1318 13823 17962 6672 6998 81 23410 24664 8149 3954 47924 33667 62885 10925 26 6262 18857 1906 2998 20620 58810 6525 15516 54 13108 20428 8924 2807 27255 49108 25575 13754 81 28357 50864 9993 4691 54380 74638 37893 19203 300 c 26 13585 26850 2978 10954 71892 139511 22694 35877 54 15052 58787 11678 5786 55563 131515 42040 32460 a 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 8~24 時間 b 脳病変に対する無作用量 c 300 mg/kg/ 日のすべての生存ラットは投与第 54 週に剖検されたので, 投与第 81 週のデータはない < 概要表 2.6.7.3 トキシコキネティクス項より抜粋 > 試験期間を通して,75 mg/kg/ 日以下の雄,300 mg/kg/ 日以下の雌の生存率は対照群と同様であった 投与第 54 週において,300 mg/kg/ 日の雄の生存率は 2 つの対照群の雄よりも約 20% 低かった (73% に対して 92% と 95%) 最終屠殺時( 投与第 81/82 週 ),150 mg/kg/ 日の雄の生存率は対照群の雄よりも約 20% 低かった 瀕死状態の臨床症状を除き, いずれの用量の雄にも薬物に関連した臨床症状はみられなかった 75 mg/kg/ 日以上の雌では, 黄色及び / 又は粗毛及び皮膚退色 ( 全身 ) の発現頻度が用量に関連して増加した 300 mg/kg/ 日の雌には, 眼の退色, 赤色生殖器分泌物, 糞減少, 削痩の発現頻度の増加がみられた 雌雄において, ごく軽度な平均体重の低下が投与第 54 週の 300 mg/kg/ 日でみられた 薬物に関連した組織学的所見は 150 mg/kg/ 日以上の雄の脳だけに限られていた 脳病変は 150 mg/kg/ 日の雄 60 例中 9 例,300 mg/kg/ 日の雄 60 例中 33 例に発現し, そのほとんどは脳梁, 尾状核被殻, 視床及び / 又は梨状 / 側頭皮質によくみられた 病理組織学的にこれらの病変は, 脳梁における線維の希薄化及び変性 / 消耗, 尾状核被殻における神経膠症及び血管新生増加, 尾状核被殻, 視床, 梨状 / 側頭皮質における壊死, 脳梁, 尾状核被殻, 視床及び梨状 / 側頭皮質における神経膠細胞 / 格子細胞の細胞質内破片, 脳梁, 尾状核被殻, 視床における星状膠細胞活性化 ( グリア線維酸 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 49

性蛋白の免疫反応の増加として示される ) として特徴付けられた まとめると, 雄ラットにおける脳病変の特徴と分布, 特に尾状核被殻における変性ミエリン病変及び明らかな脳梁への選択性は, シアン中毒によるものと一致していた 2, 3 脳病変は 300 mg/kg/ 日の雄ラットの約 50% にみられ, 高用量シアン暴露と脳病変の間には 1:1 の関連がないというこ 12 とを示している文献と一致していることは注目すべきことである 雌においては, サキサグリプチンの高い暴露を受けていたにもかかわらず, いずれの用量においても脳病変はみられなかった 以上の結果から, 無毒性量は雄では 75 mg/kg/ 日 ( 投与第 81 週のサキサグリプチン全身暴露 AUC は 47924 ng h/ml), 雌では 150 mg/kg/ 日 ( 投与第 81 週のサキサグリプチン全身暴露 AUC は 74638 ng h/ml) と結論された また, 認められた主な所見は, 雄ラット特異的な神経変性脳病変であり, それはシアン中毒によるものと一致していた 2 いずれの用量においても甲状腺 ( シアンの代謝物であるチオシアネートの標的組織 ) 及び脾臓 ( 以前実施したラット試験でサキサグリプチンの標的組織と同定されていた ) に, 薬物に関連した変化は認められなかった 雄ラットの脳病変に対する無毒性量及び毒性発現最低量における AUC と臨床推奨用量 5 mg での AUC の開きは, それぞれ約 610 倍及び 700 倍であった (2) 雄ラット単回及び反復経口投与探索神経毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019446) 本試験は, 高用量のサキサグリプチンを急性及び亜急性経口投与した雄ラットにおいて脳病変が発現するか否かを検証する目的で実施した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し, Harlan Sprague Dawley 系雄ラット 20 例に単回投与 (1000 mg/kg), 別の 20 例に用量漸増で 4 週間 :1000 mg/kg/ 日 (Days 1-5),1200 mg/kg/ 日 (Days 6-7),1500 mg/kg/ 日 (Days 8-13),1800 mg/kg/ 日 (Days 14-27), 投与した 対照群には水を同容量 (10-15 ml/kg) 投与した 臨床観察, 体重, 脳の剖検及び組織学的検査で評価した 単回投与例は Day 3 に全例を, 用量漸増投与例は Day 8,14 に各 5 例,Day 28 に残りの全例を剖検した 1000 mg/kg/ 日単回投与群では投与 1~4 時間後に活動性低下が 20 例中 5 例にみられ (Day 2 に回復 ), 投与日 (Day 1) に 2 例が死亡した 用量漸増投与群でも 1000 mg/kg/ 日の 1 回又は 2 回投与後に死亡がみられ (2 例 ), 投与期間中には活動性低下, 労作呼吸, 振戦, うずくまり姿勢, 粗毛, 体重増加量の 16% 減少がみられた Day 3,8,14 に剖検したラットに薬物に関連した肉眼的及び組織学的脳病変はみられなかった 1 例 (1000 mg/kg/ 日投与 ;Day 2 に死亡発見 ) の尾状核被殻には片側性梗塞がみられた Day 28 の剖検例では, 薬物に関連した組織学的病変として, 小脳扁桃に急性神経細胞壊死 (3/8 例 ), 尾状核被殻の白質路の空胞化 (4/8 例 ), 脳梁に変性 / 脱髄 (1/8 例 ) がみられた 要約すると,1 ヵ月に亘って漸増された明らかな毒性用量において脳病変が発現したことより, 雄ラットにおけるサキサグリプチンによる中枢神経系毒性を評価するための亜急性投与モデルが用意された 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 50

(3) ラット 5 日間用量漸増経口投与探索トキシコキネティクス試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019448) 亜急性投与モデルにおいて脳病変を引き起こしたサキサグリプチン 1800 mg/kg におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露を評価した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し, 雌雄各 15 匹の Harlan Sprague Dawley ラットに 1200 mg/kg/ 日 (Day 1 及び 2),1500 mg/kg/ 日 (Day 3 及び 4),1800 mg/kg/ 日 (Day 5) を投与した Day 5 のトキシコキネティクス, 臨床観察及び体重を評価した サキサグリプチンの全身暴露は雌が雄より 4.6 倍高かったが, 活性代謝物である BMS-510849 の暴露は雌雄で同様であった BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 0.14 倍 ~0.54 倍であった 1800 mg/kg 投与後のサキサグリプチン及び BMS-510849 それぞれの AUC は, 雄で 288 及び 155 ng h/ml, 雌で 1327 及び 181 ng h/ml であった Day 4 及び / 又は Day 5 の投与 1~2 時間後に, 2 匹の雄に一過性の活動性低下及び / 又は振戦がみられた 体重に影響はみられなかった (4) ラット単回経口投与探索試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019447) 投与後 0.5 時間 ~24 時間におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中及び脳内濃度を測定した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,25,75,150,300 mg/kg の用量で各群雌雄 10 匹の Harlan Sprague Dawley ラットに単回投与した 300 mg/kg までのサキサグリプチン単回投与によって薬物に関連した臨床症状はみられなかった サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量に伴って増加し,300 mg/kg での AUC はそれぞれ雄では 22836 及び 22421 ng h/ml, 雌では 127928 及び 24525 ng h/ml であった 雌におけるサキサグリプチンの AUC が用量増加比率よりも大きく増加した以外, サキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC は用量の増加比率とほぼ同様に増加した 雌におけるサキサグリプチンの全身暴露は雄の 2.5~5.6 倍であったが, BMS-510849 の暴露は雌雄で同様であった BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 0.2 倍 ~ 1.2 倍であった いくつかの個体において, サキサグリプチン及び BMS-510849 の脳内濃度は検出限界よりも低かった ( 特に BMS-510849) 300 mg/kg において, サキサグリプチンの最大脳内濃度は雄で 213 ng/ml, 雌で 498 ng/ml であり,BMS-510849 の濃度は雌雄とも検出限界よりも低かった ( 但し,150 mg/kg において脳内に BMS-510849 が 113 ng/ml 検出された ) 最低用量での 1 時点を除いて, サキサグリプチンの脳内濃度は血漿中濃度よりも低かった ( 脳 : 血漿の割合は 0.04 ~0.98) BMS-510849 の脳内濃度 : 血漿中濃度の割合は 0.09 以下であった 全般的にみて, サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度 / 脳内濃度比は雌雄で同様であった (5) ラット単回及び 1 週間経口投与探索試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019617) サキサグリプチンを 300 mg/kg/ 日以上投与した雄ラットの急性臨床毒性におけるシアンの役割を検討した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,1200 mg/kg の投与量で Harlan Sprague Dawley 系ラット雌雄各 10 匹からなる 2 群に, それぞれ単回又は 7 日間経口投与した それぞれに対応する対照群には水を 10 ml/kg 投与した 臨床観察, 臨床病理, 血中シアン及びチオシアネ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 51

ート濃度測定により評価した 血液は単回投与群では明らかな臨床毒性症状がみられた時点又は投与 4 時間後に,7 日投与群では最終投与の 4 時間後に採取した 1200 mg/kg/ 日のサキサグリプチン単回投与雄ラットでは,20 分以内に活動性低下, 運動失調, 労作呼吸がみられた 雄において, 投与 4 時間後の平均血中シアン及びチオシアネート濃度 ( それぞれ 1.5 及び 1.2 μg/ml) は対照群の値 ( それぞれ 0.05 及び 0.40 μg/ml) と比べて増加していた 更に, 急性毒性症状を示した雄ではより高いシアン濃度 (3 μg/ml) が検出された 急性的に影響を受けた雄の臨床病理学的変化として, 血清重炭酸塩の減少 ( 代謝性アシドーシスに一致 ) 及び血清血糖の増加がみられた 雌ラットにおいては, 臨床症状も血中シアン及びチオシアネート濃度の増加もみられなかった 7 日投与群の雄において, 薬物関連所見として瀕死 (Day 2,1 例 ), 活動性低下, 運動失調, 労作呼吸, 触手冷感, うずくまり姿勢, 振戦が Day 3 までにみられた 平均血中シアン及びチオシアネート濃度 ( それぞれ 1.6 及び 3.6 μg/ml) は対照群の値 ( それぞれ 0.04 及び 0.3 μg/ml) と比べてサキサグリプチンの投与後に増加していた 薬物に関連した臨床病理学的変化として, トリグリセライドの増加, 血清コレステロールの低下, 雄において網赤血球比及び血糖の増加, フィブリノーゲン, 総蛋白, グロブリン, 重炭酸塩の減少がみられた 雌ラットにおいても血中シアン及びチオシアネート濃度は増加したが, その程度は雄 ( 対照群と比較してシアンは 37 倍, チオシアネ-トは 12 倍 ) に比べると明らかに低く ( 対照群と比較してシアンは 1.7 倍, チオシアネ -トは 3.1 倍 ), 臨床症状はみられなかった 要約すると,1200 mg/kg/ 日のサキサグリプチンを 1 日又は 7 日投与された雄ラットにみられた, 臨床症状及び血中シアン濃度の変化はシアン毒性と一致するものであった 3, 13 (6) ラット単回経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019452) 血中シアン濃度変動と臨床毒性症状の発現の関連性を検討した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,75,150,300,600,1000,1200 mg/kg の投与量で各群 5~8 匹の Harlan Sprague Dawley 系雄ラットに単回経口投与した 臨床症状観察及び血中シアン濃度測定用の採血を投与 30 分後及び / 又は 2 時間後に実施した 2 例が投与 30 分後採血の前に死亡した (1000 及び 1200 mg/kg の各 1 例 ) 全般的に,150 mg/kg 以上の用量で血中にシアンが検出された 1.5 μg/ml 以上の循環血中シアン濃度が,600 mg/kg/ 日以上でみられた活動性低下, 運動失調, 虚脱, 全身の振戦という臨床症状をもたらし,1000 mg/kg/ 日以上では呼吸数増加,1200 mg/kg ではあえぎ,splayed 姿勢 ( うずくまって前肢を前に伸ばし, 後肢を広げる ) をもたらしていた 臨床症状の発現は用量に依存し, 投与 8~63 分後に発現した (7) サキサグリプチン及びシメチジンのラット単回経口投与探索試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019451) CYP2C11 活性が雄ラット特異的なサキサグリプチンのシアン誘発急性毒性に関与していることを確認するために本試験を実施した シメチジンを CYP2C11 機能活性抑制剤として使用した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,1 群 12 匹の Harlan Sprague Dawley 系雄ラットに, 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 52

サキサグリプチンのみを 1200 mg/kg 経口投与又はシメチジン 300 mg/kg 前処置後 ( サキサグリプチン投与の 2 時間前 ) にサキサグリプチンを 1200 mg/kg 経口投与した 対照群にはシメチジンを単回投与後, 酸性水を投与した (10 ml/kg) 臨床症状観察, 血中シアン濃度 ( 各群 6 例 ) 及びチオシアネート濃度 ( 各群 6 例 ) 測定をシメチジン投与の 2.5 時間後及び 4 時間後 ( サキサグリプチンの投与 30 分後及び 2 時間後 ) に実施した シメチジン投与雄ラット ( サキサグリプチン投与あり及びなし ) において, 臨床症状はみられず, 血中シアン濃度は検出限界よりも低かった シメチジン及びサキサグリプチン投与雄ラットにおいては, シアン濃度の増加はみられなかったがチオシアネート濃度の増加がみられた サキサグリプチン単独投与雄ラットにおいては, 投与後 20 分以内に死亡, 活動性低下, 運動失調, 労作呼吸, 不動, 振戦, ケージ噛みがみられた 全血中シアン物濃度及び血清中チオシアネート濃度はシメチジン及びサキサグリプチン投与群と比べて, 投与 30 分後及び 2 時間後に増加していた ( 表 2.6.6-7) 表 2.6.6-7 シメチジン前処置あり及びなしでのサキサグリプチン投与ラットにおける平均シアン及びチオシアネート濃度比較 サキサグリプチン (mg/kg) シメチジン (mg/kg) 採血時間 ( 投与後 ) シアン濃度 (μg/ml) 0.5 BLLOQ a 0 300 2 BLLOQ 0.5 2.2 1200 0 2 1.5 0.5 BLLOQ 1200 300 2 BLLOQ a : 検出限界 (0.05 μg/ml) よりも低い (below the lower limits of quantitation) チオシアネート濃度 (μg/ml) 1.7 1.2 4.3 9.1 2.9 6.5 < 報告書番号 019451 より抜粋 作成 > 要約すると,CYP2C11 抑制剤のシメチジンの前処置は臨床的毒性を消去し, シアン濃度を検出限界濃度を下回るまで減少した シメチジン及びサキサグリプチンを投与されたラットのチオシアネート濃度は, サキサグリプチン単独投与ラットで検出された濃度よりも低かったことは, シメチジンが CYP2C11 によるシアン産生を部分的にのみ抑制したことを示唆した これらの結果は, CYP2C11 がサキサグリプチンからのシアン放出及びそれによる急性毒性に役割を果たしていることを支持するものであった (8) サキサグリプチン及び BMS-471211 のラット単回経口投与探索試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020062) 以下のことを確認する目的で本試験を実施した :1) アンドロゲンの調節を受けている CYP2C11 による肝臓でのシアン遊離が去勢により防止されるか否か,2) in vivo でビルダグリプチン (BMS-471211: シアンを含む DPP-4 阻害剤 ) からシアンが遊離されるか否か サキサグリプ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 53

チンフリー体を酸性水に溶解し,15 匹の無処置及び 10 匹の去勢 (4 週齢時実施 ) された 10 週齢の Harlan Sprague Dawley(HSD) 系雄ラットに,1200 mg/kg の用量で経口投与した ビルダグリプチンは水に溶解し,10 週齢の HSD 系無処置雄ラット 5 匹に 1200 mg/kg の用量で投与した 同週齢の HSD 系無処置雄 10 匹に酸性水を投与 (10 ml/kg) して対照群とした 臨床症状観察を行い, シアン及びチオシアネート濃度測定用に投与の 30 分後及び / 又は 2 時間後に採血した 肝臓 CYP2C11 蛋白量及び mrna 量を, 対照群, サキサグリプチンを投与した正常及び去勢ラットについて測定した サキサグリプチン投与正常ラット 6 匹が, 投与 20 分以内に振戦及び / 又は虚脱を示し, 安楽殺した この群では更に, 労作呼吸, 運動失調, 活動性低下, 呼吸数増加もみられた 平均 ( 投与 30 分後及び 2 時間後 ) 血中シアン濃度 (1.1 μg/ml) 及び血清チオシアネート濃度 (6.9 μg/ml) は, 対照群及び去勢ラットに比べて増加していた サキサグリプチンを投与された去勢ラットでは, シアンに関連した臨床症状の程度も発現頻度も低かった この群の 10 匹中の 1 匹が投与 45 分後 ( シアン濃度測定用採血の前 ) に振戦及び運動失調を示したため, 切迫屠殺した この群の他のラットにも活動性低下, 呼吸数増加及び運動失調がみられた (10 匹中の 3 匹は影響受けず ) 平均 ( 投与 30 分後及び 2 時間後 ) 血中シアン濃度 (0.2 μg/ml) 及び血清チオシアネート濃度 (6.8 μg/ml) は, 対照群に比べて増加していた ビルダグリプチンを投与されたラットに毒性的臨床症状はみられなかった 去勢は, サキサグリプチン投与 30 分後の平均血中シアン濃度を 83% 低下させ, 投与 2 時間後には検出できない濃度にまで低下させた 平均チオシアネート濃度は正常及び去勢ラットで同様であった この所見の可能性の一つとして, 去勢ラットではシアンの産生速度が低下し, そのためシアンの産生がその解毒能を上回らなかったことが考えられた ビルダグリプチン投与ラットにおいては, 血中シアン濃度は検出されなかったが, 平均血清チオシアネート濃度は 200% まで上昇していた ビルダグリプチン投与ラットにみられた平均血清チオシアネート濃度の増加は, 動物の生物学的な変動による, 又はチオシアネートはシアンより長い半減期をもっているので, 検出限界以下ではあったが放出されたシアンから産生されたチオシアネートを検出したのかも知れない 平均肝臓 CYP2C11 蛋白量は,5 匹の正常及び 5 匹の去勢サキサグリプチン投与ラットでは同様であったが, 臨床的に影響を受けなかった 3 匹の去勢雄ラットでの平均肝臓 CYP2C11 蛋白量 ( アクチン補正で 70%) は, 臨床的に影響を受けた 2 匹の去勢雄 ( アクチン補正で 124%) 及び 5 匹の正常雄 ( アクチン補正で 108%) の平均値よりも減少していた サキサグリプチン投与去勢ラットの肝臓 CYP2C11 の mrna 量は, サキサグリプチン投与正常ラットと比べて約 50% まで低下していた CYP2C11 は思春期に劇的に誘導される ( 雄ラット肝臓では 4~5 週齢から始まる ) 14, 15 本試験における去勢は, 肝臓でのシアン産生に対して一貫した作用を示さず,CYP2C11 発現 (mrna 及び蛋白量 ) を軽度変動させただけであったが, その原因は, ラットを去勢した週齢 (4 週齢 ) が,CYP2C11 発現誘導に個体差を生じさせたからかもしれなかった 019451 全般的に, 本試験での所見は以前実施したサキサグリプチンのラット試験報告書番号と一致し, 雄ラットにおけるシアンの産生がアンドロゲンの調節を受ける CYP2C11 を介していることを更に裏付けるものであった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 54

(9) マウス単回経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019453) サキサグリプチンを投与されたマウスにおいて, 検出される濃度のシアンが産生されるかどうかを検討した サキサグリプチンフリー体を,300,600,1000,1500,2000 mg/kg の投与量で各群雌雄各 12 匹の CD-1 マウスに経口投与した 投与 30 分後又は 2 時間後に採血し, シアン濃度を測定した 更に, 別の雄 10 匹に 2000 mg/kg を投与し, 臨床症状の発現時に採血した 薬物に関連した死亡はみられなかった 1000 mg/kg 以上の用量において, 投与後 1~16 分に活動性低下, 呼吸数の増加が発生し, その発生頻度は用量依存的であり, 性差はなかった いずれの用量においても血中にシアンは検出されなかった したがって, マウスはラットでみられたシアン関連の神経毒性に対して感受性を示さないことがわかった (10) BMS-510849: ラット 5 日間皮下投与耐性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019449) 以下の項で述べる 1 ヵ月の皮下投与探索試験の用量設定試験として, サキサグリプチンの主要代謝物でありシアノ基を有する BMS-510849 を,300,600 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 3 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに 5 日間皮下投与 ( 経口投与での生物学的利用能が低いため ) した 血漿中薬物濃度 (Day 5), 臨床観察, 体重,Day 7 の投与部位の肉眼観察により評価した いずれの用量の BMS-510849 も著明な毒性をもたらさなかった 薬物に関連した臨床症状も投与部位の肉眼的変化もみられなかった 投与 30 分後の BMS-510849 の血漿中濃度は用量に依存し, 全般的に雌雄で同様であった (11) BMS-510849: ラット 1 ヵ月皮下投与探索毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019450) サキサグリプチンの亜慢性投与により脳病変を生じる用量 ( 報告書番号 019440,600 mg/kg/ 日 ) における BMS-510849 の全身暴露と同様な暴露となるように BMS-510849 を直接投与した場合に, 中枢神経系毒性が発現するか否か評価した BMS-510849 塩酸塩を水に溶解し,10,50,200 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 10 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに 1 ヵ月間皮下投与 ( 経口投与での生物学的利用能が低いため ) した 対照群には他と同量 (4 ml/kg) の水を投与した トキシコキネティクス, 臨床観察, 体重, 摂餌量, 臨床病理, 血中シアン濃度, 血清及び尿中チオシアネート濃度, 剖検及び病理組織学的検査で評価を実施した 血漿中 BMS-510849 濃度は投与 1 及び 28 日に測定した BMS-510849 の全身暴露は全般的に用量の増加と同等又は多少高めに増加し, 明らかな性差もなく, 投与 1 日と 28 日の暴露にも明らかな差はなかった 投与 28 日の AUC は, 投与 1 日と比べて 0.5~0.7 倍 ( 雄 ),1.0~2.1 倍 ( 雌 ) であった 投与 28 日の雄及び雌の AUC は,10 mg/kg/ 日ではそれぞれ 3618 及び 4790 ng h/ml,50 mg/kg/ 日ではそれぞれ 29177 及び 50001 ng h/ml,200 mg/kg/ 日ではそれぞれ 164892 及び 170735 ng h/ml であった 最高用量において, その AUC 値はサキサグリプチン投与で神経毒性がみられた時の BMS-510849 と同等であった いずれの用量においても薬物に関連した臨床症状はみられなかった すべての用量の雄におい 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 55

て, 臨床症状の発現は無かったが血中シアン濃度の増加 (0.056~0.315 μg/ml) がみられ, サキサグリプチンの神経毒性発現用量投与時と同等な暴露において血清チオシアネート濃度 (2.3~7.1 μg/ml) 及び尿中チオシアネート濃度 (0.61~59 μg/ml) の増加が検出された 50 及び 200 mg/kg/ 日では, 雌においてごく軽度な体重増加量低下, 雄において血小板数,APTT 及び尿量のごく軽度な低下がみられた 更に 200 mg/kg/ 日では, 体重増加量 ( 雄 ), 摂餌量, 血清コレステロール ( 雄 ) のごく軽度な低下, 血中シアン濃度の増加 ( 非毒性的, 雄において 0.315 μg/ml まで ), 血清 ( 雌雄 ) 及び尿中 ( 雄 ) チオシアネート濃度の増加がみられた BMS-510849 のいずれの用量においてもラットに肉眼的及び組織学的脳病変はみられなかった 200 mg/kg/ 日では, 組織学的所見としてごく軽度から軽度な肺組織球症 ( 全例 ) 及び脾臓のリンパ性過形成 ( 雄 2 例 ) がみられ, これらはサキサグリプチンの投与試験でみられた変化と同様のものであった 結論として,BMS-510849 投与により, サキサグリプチンの神経毒性発現用量 (( 報告書番号 019440,600 mg/kg/ 日 ) を投与された雄ラットでみられた BMS-510849 の全身暴露 AUC(93 μg h/ml) 以上の AUC を受けた雄ラット (165 μg h/ml) において, 意味のある血中シアン濃度増加 ( サキサグリプチンの試験において臨床毒性症状がみられた 1.5 μg/ml 以上と比較し 0.315 μg/ml までのみ ) も脳病変も引き起こされなかった したがって,BMS-510849 投与後に血中シアンは検出されたが, その濃度は急性毒性症状を引き起こすほど十分に高くなく, サキサグリプチン投与雄ラットでみられたシアンによる神経毒性の原因とは考えられなかった 2.6.6.8.3.2 血管収縮試験シアンの探索試験と平行し, 神経ペプチド Y(NPY)1-36 の DPP-4 を介した NPY3-36 への変換がサキサグリプチンにより抑制され, 結果的に雄ラットに虚血性脳病変を引き起こす長時間の中枢神経系血管収縮 / 血管痙攣をもたらしたか否か, を探索するために第二の試験シリーズを実施した この仮説の検証のため 3 本の試験を実施した テレメトリー装着ラットを用いた動脈血圧及び心拍数へのサキサグリプチンの影響評価試験において, 血管緊張に変動がみられるか否かを観察するためにラットにサキサグリプチンを経口投与した その結果, 意味のある血行力学的変化はみられなかった 雄ラットにおける脳病変が内因性の血漿 DPP-4 酵素活性に関連しているか否かを評価するために 1 ヵ月経口投与毒性試験を実施した その結果は, サキサグリプチン投与雄ラットにおける内因性の血漿 DPP-4 酵素活性の違いは, 脳病変の発生頻度及び程度に変化をもたらさなかった 最後に, サキサグリプチンによる雄ラット脳病変が梗塞を含めた血液灌流の変動の結果か否かを評価するために,1 ヵ月経口投与神経毒性試験において磁気共鳴映像法 (MRI) による検査を実施した MRI では雄ラットにおける梗塞を含む血管障害を示す灌流不足を証明することができなかった 更に, これらの所見は血液循環障害又は脳病変発生に内因性 DPP-4 酵素活性が関連していないことを示すものであった 各試験の詳細を以下に示した (1) テレメトリーラット動脈血圧及び心拍数への影響検討試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019985) サキサグリプチン投与ラットにみられる脳病変が血管緊張の変化に関連しているか否かを検討 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 56

するために, サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解してテレメトリー装着雄ラットに経口投与した 予備検討において, サキサグリプチン 800 mg/kg 投与後, 動物は急性的に死亡し血圧を正確に評価できなかった その後, サキサグリプチンを 300 mg/kg 投与 (5 例 ) したところ, 心拍数が軽度増加 { 約 40 拍 / 分, 酸性水を投与した対照群 (4 例 ) と統計学的に有意差なし } し, 動脈血圧の低下 (10 mmhg 未満 ) がみられたが, その程度は雄ラットの脳病変発生と直接的な関連が 019437 あると考えられるものではなかった 6 ヵ月の反復投与毒性試験報告書番号の 20 及び 100 mg/kg/ 日において, 心拍数の変化を伴わない一過性の血圧低下 (29 mmhg 以下 ) がみられている (2) ラット 1 ヵ月経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019983) 雄ラットにおける脳病変の発生と内因性 DPP 酵素活性の関連を評価した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し, 各群 10~12 匹の Harlan Sprague Dawley 系雄ラットに, 以前検討した投与手順を用いて経口投与した :1000 mg/kg/ 日 (Day 1-5),1200 mg/kg/ 日 (Day 6,7),1500 mg/kg/ 日 (Day 8-13),1800 mg/kg/ 日 (Day 14-28) 対照群には他の群と同じ容量(10~15 ml/kg) で水を投与した ラットは血漿 DPP-4 活性の高い例 (13.0-16.0 U/L) 及び低い例 (4.0-7.0 U/L) に分 1 類し, 対照群 ( 低 :C-low, 高 :C-hi) 及びサキサグリプチン投与群 ( 低 :S-low, 高 :S-hi) に割り付けた 臨床症状, 行動, 体重, 血漿 DPP-4 活性, 血漿中糖及び重炭酸塩, 剖検, 組織学的検査 ( 脳, 心臓, 腎臓, 肺, 肉眼的病変 ) によって評価を実施した 脳は保存及び組織化学的染色を最適にするために 4% 冷パラフォルムアルデヒドで灌流固定した 脳標本には PAS,Luxol Fast Blue (LFB), 燐タングステン酸へマトキシリン (PTAH) 染色を行い, 貪食されたミエリン分解産物及び血栓の確認を実施した 薬物に関連した死亡が S-low(12 例中 11 例 ) 及び S-hi(12 例中 6 例 ) の両ラットにみられた 主としてみられたサキサグリプチン関連所見は, 血漿 DPP-4 活性の違いに依存しない労作呼吸及 3, 13 び振戦であった その症状はシアン毒性試験で以前に認められたシアン関連臨床症状と一致するものであり, 体重増加量も減少した 血漿 DPP-4 活性は, 対照群と比べてサキサグリプチン投与の全例で同様に低下した 対照群の血漿 DPP-4 活性は, 開始前値と同じ (C-hi 例 ) 又は C-hi 例の値と同様又はそれを越えるという変動を示した (C-low 例 ) 組織学的検査によって, 脳梁及び尾状核被殻におけるミエリンの変性 / 壊死を示した脳病変が,S-low 群及び S-hi 群でその発現頻度も程度も同様にみられた S-low ラットに特異的な病変として,12 例中 4 例に脳の皮質梗塞, 12 例中 3 例に壊死性十二指腸炎がみられた 結論として, サキサグリプチン投与雄ラットにおける血漿 DPP-4 活性の違いは, 脳病変の発現頻度にも程度にも影響を及ぼさなかった S-low ラットにおける高い死亡率は, 低い内因性 DPP-4 活性又は脳梗塞に起因していたのか明確にはできなかった したがって,2 回目の試験 ( 下記 ) において, 脳病変の発生における血漿 DPP 酵素活性と梗塞を含めた血管障害の関連性を探索した (3) ラット 1 ヵ月経口投与探索神経毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019984) サキサグリプチンによる雄ラット脳病変が梗塞を含めた血液灌流の変動の結果か否かを評価す 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 57

るために, 磁気共鳴映像法 (MRI) を用いて検討した Harlan Sprague Dawley 系雄ラットを血漿 DPP-4 活性で分類し, その活性の低いラット (7.7 U/L 未満 ) に対して上述した試験と同様にサキサグリプチンフリー体を投与した 1 ヵ月の投与期間を生き残ったすべてのラットについて MRI 評価を行った MRI 評価後, 各動物は組織の最適な保存のために灌流固定した 臨床症状, 行動, 体重,MRI 撮影, 剖検, 組織学的検査 ( 脳, 心臓, 腎臓, 肺 ) によって評価した サキサグリプチン投与に関連した臨床症状は以前の試験で見られていたものと同じであった 対照群雄 6 例, サキサグリプチン投与雄 12 例を MRI で評価したが, それには 90 分間の横断及び縦断 T 2 強調 MRI 映像の取得を含む その結果, サキサグリプチン投与雄 12 例中 8 例が血液灌流の欠損 ( 梗塞を含む ) と関係なく両側性脳病変, 組織学的に脳梁及び尾状核被殻におけるミエリンの変性 / 壊死, を示した MRI で灌流障害のみられた 1 例には, 組織学的に尾状核被殻に浮腫を伴わない細胞脱落を伴う重度な壊死がみられたが, 梗塞とは一致しない所見であった MRI で脳に変化のみられなかった 4 例のサキサグリプチン投与ラットの脳に組織学的な病変はみられず, 対照群のラットの脳にも MRI 及び組織学的検査で病変はみられなかった 要約すると, 組織学的所見は以前に実施した 1 ヵ月の用量漸増投与後の雄ラット脳にみられたものと完全に一致した MRI では, 梗塞を含む血管障害を示す灌流不足を証明することができなかった 2.6.6.8.4 カニクイザル探索毒性試験 (GLP 非適用 ) カニクイザルにおける用量設定試験を実施したところ, 皮膚病変及び多組織における単核細胞浸潤がみられた これらの作用の機序を探索するためにサルを用いた経口投与探索試験を実施した :1) サキサグリプチン, ビルダグリプチン, シタグリプチンを用いた効果及び選択性の異なる DPP-4 阻害剤の比較評価 ( 用量設定試験及び 6 週間試験 ),2) 異なる DPP-4 阻害剤間及びサキサグリプチン単独の薬物動態学的及び薬力学的関連性について 更に, 臨床における薬効 (HbA1c 低下 ) と同様な薬力学的特徴を生じるサキサグリプチンの用量を特定することも追加目的とした これらの結果はその後, 主要なサル 3 ヵ月経口投与毒性試験 ( 第 2.6.6.3.3 項 ) の用量設定に使用した 第二の試験シリーズとして, 初期の薬物動態試験及び 1-3 ヵ月試験でみられた急性毒性が, 血管緊張及び / 又は免疫学的機序に関連したものであるか否かを検討する目的で, サルを用いた静脈内投与による試験を実施した しかしながら, 急性毒性サルモデルは確立できなかった これら 019427,019457,021940 の試験報告書番号の詳細は概要表 2.6.7.17 にのみ示した 2.6.6.8.4.1 サキサグリプチン経口投与探索試験 (1) サル 1-3 ヵ月経口投与毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019619) 当初, 用量設定試験として開始したが, 生存段階での観察結果から探索毒性試験に変更した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,2 mg/kg/ 日の投与量で 13 週間雌雄各 3 匹のカニクイザルに,10 mg/kg/ 日の投与量で 4-6 週間雌雄各 3 匹のサルに,30/20 mg/kg/ 日の投与量で 4-6 週間雌雄各 5 匹のサルに投与した 対照群のサル (4 週間雌雄各 2 匹,13 週間雌雄各 3 匹 ) には酸 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 58

性水を 1 ml/kg 投与した 30 mg/kg/ 日では, 初回又は 2 回投与後に 2 匹が瀕死となったため, 雌は Day 3 から, 雄は Day 4 から投与量を 20 mg/kg に減量した 20 mg/kg/ 日の 1 例は血小板減少症を示したため,Day 29 以後休薬した この動物は 20 日間の休薬中に回復したためその後投与を再開し, 低用量のサルと同時に剖検するまで 20 mg/kg/ 日の投与を継続した 臨床観察, 体重, 通常の臨床病理検査, 血中シアン及び血清チオシアネート濃度, 末梢リンパ球表現型分類, 血清免疫グロブリン, 抗体 ( 抗核, 抗赤血球, 抗血小板 ), 剖検, 病理組織学検査, 免疫組織化学, 電子顕微鏡により評価を実施した 血漿中サキサグリプチン及び BMS-510849 濃度を, すべての群で Day 1 及び 28 に,2 mg/kg/ 日では Day 85( 雄, 一時休薬した 20 mg/kg/ 日の 1 例も ) 及び Day 84( 雌 ) にも測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 暴露は用量依存的に増加し,30/20 mg/kg/ 日の Day 28 におけるサキサグリプチン AUC は雄で 6013 ng h/ml, 雌で 4839 ng h/ml に達していた 全身暴露に明らかな性差はみられず,13 週間までの 1 日 1 回投与後サキサグリプチン及び BMS-510849 濃度は最大 2.2 倍まで増加した (2 mg/kg/ 日群及び 30/20 mg/kg/ 日の雄 1 例 ) 全用量において, BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンより 2.7~8.1 倍高かった すべての用量で, 用量及び投与期間依存的に糜爛性又は潰瘍性皮膚病変 ( 尾, 指, 鼻及び / 又は陰嚢 ) がみられ, その発現は 30/20 mg/kg/ 日群では Day 6 から,2 及び 10 mg/kg/ 日群では Day 13 からであった 30/20 mg/kg/ 日群の 2 例では, 尾の病変により部分的な尾の切断が必要となった 一過性の跛行も30/20 mg/kg/ 日でみられた 更に,10 mg/kg/ 日の雌 1 例に全身性の浮腫,30/20 mg/kg/ 日の雄 2 例に限局性陰嚢浮腫がみられた 浮腫のみられた 3 例中 2 例には非免疫性多病巣性糸球体症 ( 糸球体の非炎症性病変 ) がみられた 臨床病理学的変化は一過性であったが, すべての用量でヘマトクリット, ヘモグロビン及び赤血球数の減少, 網赤血球及び好中球数の増加, 血清アルブミン減少, 血清グロブリン増加がみられ,30/20 mg/kg/ 日の雄 1 例では重度な血小板減少 ( 前値の 6% まで低下 ) が認められたが, 休薬により回復し, 投与再開しても再発はしなかった 更に,10 及び 30/20 mg/kg/ 日ではごく軽度から中等度の臨床病理変化として, 単核球数, リンパ球数, フィブリノーゲン及び総蛋白の増加, 糸球体症を示した 2 例では総蛋白の減少もみられた すべての用量において, 病理組織学的所見としてごく軽度から中等度の多組織における血管周囲性単核細胞浸潤 / 炎症及びごく軽度から軽度な脾臓及び骨髄におけるリンパ性過形成がみられた 影響を受けた組織には, 皮膚, 尿生殖路, 分泌腺 ( 乳腺, 唾液腺, 甲状腺など ), 内臓臓器, 脈絡膜叢 ( 脳 ), 末梢神経を含む 免疫グロブリンの沈着を伴わない微小血管性血管炎が, 皮膚, 尿生殖路, 消化管, 甲状腺, 骨格筋, 肺にみられた これらの変化について, 以下の結果から免疫系を介した発現機序については立証できなかった : 血小板減少症は薬物の再投与で発生しなかった, 抗体価 ( 抗核, 抗赤血球, 抗血小板 ) は投与によって影響を受けなかった, 皮膚, 腎臓, 血管に免疫複合体沈着の形跡はなかった ラットと対照的に, サルではいずれの用量においても血中にシアンは検出されず, 毒性学的に意義はない 3 が低濃度の血清中チオシアネートが 30/20 mg/kg/ 日で検出された ( 平均値は 1.1~2.7 μg/ml, ヒト非喫煙者及び喫煙者のチオシアネートの背景濃度は 2.9~7.1 μg/ml 3 ) 要約すると, サキサグリプチンは用量及び投与期間依存的に, 皮膚病変, 多組織における血管周囲性細胞浸潤, 微小血管性血管炎, リンパ性過形成を,2 mg/kg/ 日を 13 週投与されたサル ( 全 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 59

般的にごく軽度 ),10 及び 30/20 mg/kg/ 日を 4-6 週投与されたサル ( ごく軽度から重度 ) に引き起こした これらの変化が免疫系を介して発生したという証拠はなかった 回復性のある, 再投与でも再発しない重度な血小板減少が 30/20 mg/kg/ 日の用量 (Day 28 の平均全身暴露 AUC は 6013 ng h/ml) においてのみみられた 本試験では無作用量は特定できなかった : 毒性発現最低用量 (2 mg/kg/ 日 ) におけるサキサグリプチンの定常 AUC は, 雄 578 ng h/ml, 雌 1367 ng h/ml であった (2) サル 5 日間反復経口投与探索薬力学及び薬物動態試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020775) 以前に評価した用量よりも低い用量のサキサグリプチンをカニクイザルに経口投与した際の, サキサグリプチンの薬物動態及び薬力学の特徴を明らかにするために本試験を実施した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,0.03,0.1,0.3,1 mg/kg/ 日の用量 (4 ml/kg の液量 ) で各群雄 2 例及び雌 1 例に 5 日間投与した Day 1 及び 5 に薬物動態及び薬力学的指標を評価した 更に, 生存及び臨床観察, 最終投与の 48 時間後の薬力学的指標の評価も実施した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (C max 及び AUC) は, 全体的に用量に比例して増加していた 明らかな性差も反復投与による増加もみられなかった 0.03,0.1,0.3,1 mg/kg/ 日の各用量における Day 5 の平均 AUC 値は,7.7,14.8,73.7,240.6 ng h/ml であった 血漿 DPP の最大阻害 (E max ) は全般的に用量に関連しており, 初回投与の 1~8 時間後に 48% ~79% の範囲の阻害がみられた 明らかな性差も反復投与による血漿 DPP 阻害の増強もみられなかった 投与 24 時間後, 血漿 DPP 阻害 (E min ) は 1 mg/kg/ 日では約 50~80% 維持されていたが, 0.03 mg/kg/ 日では 20% よりも低くなっていた 最終投与 48 時間後の血漿 DPP 阻害は,0.6%(0.03 mg/kg/ 日 )~34.7%(1 mg/kg/ 日 ) の範囲にあった 死亡例も臨床毒性症状もみられなかった 要約すると, 血漿 DPP 阻害は用量依存的に増強し, すべての用量において E max は 50~80% の範囲にあった 1 mg/kg/ 日の用量 ( サキサグリプチンの AUC は 187~266 ng h/ml) のみが,24 時間以上の持続的 DPP 阻害を示した 低用量では持続した阻害をもたらさなかったが, これらの用量での血漿 DPP 阻害プロファイルは, ヒトにおいて薬効 (HbA1c 低下 ) を示すプロファイルと同様であった したがって,3 ヵ月のサル毒性試験 ( 第 2.6.6.3.3 項 ) の評価には適切な用量であると考えられた (3) サル 2 週間反復経口投与探索薬力学及び薬物動態試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021941) 以前に評価した用量よりも低い用量のサキサグリプチンをカニクイザルに経口投与した際の, サキサグリプチンの薬物動態及び薬力学的特徴を明らかにするために本試験を実施した サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,0.0003,0.001,0.003,0.01,0.03 mg/kg/ 日の用量 (3 ml/kg の液量 ) で各群雌雄 2 例に 2 週間投与し,DPP 阻害作用が観察されない用量を確認した 対照群 ( 雌雄各 2 例 ) のサルには試薬級の水を 3 ml/kg 投与した 血漿 DPP 阻害を投与前,Day 1 及び 14 に, サキサグリプチン及び活性代謝物 BMS-510849 の血漿中濃度を Day 1 及び 14 に測定した これ以外には, 動物の一般状態の観察のみを実施した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (C max 及び AUC) は,0.003~0.03 mg/kg/ 日の用量においては全体的に用量に比例して増加していた これらよりも低用量では定量できる暴露 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 60

(0.1 ng/ml) に達していなかった 明らかな性差はみられず,BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの 2.3 倍 ~7.4 倍であった 血漿 DPP の最大阻害 (E max, 約投与 1 時間後 ) は全般的に用量に関連しており,0.01 mg/kg/ 日以上では 50-70% の阻害を用量依存的に示した 投与 24 時間後の血漿 DPP 阻害 (E min ) も全般的に用量に関連しており,0.01 mg/kg/ 日以上では約 20% の阻害を,0.003 mg/kg/ 日以下では 20% 未満又は対照群と同等の阻害を示した 一貫した性差はみられなかったが,Day 14 の血漿 DPP 阻害は Day 1 と比べて全体的に増強 (1.9 倍未満 ) していた 死亡例も臨床毒性症状もみられなかった 要約すると,0.01 mg/kg/ 日以上の用量 ( 全身暴露 AUC はサキサグリプチンが 2.46~9.95 ng h/ml, BMS-510849 が 8.79~43.1 ng h/ml) において, 用量依存的な血漿 DPP 阻害 (50~70%) を投与 1 時間後に示し, 投与 24 時間後にはごく軽度な阻害 ( 約 20%) のみを示した 0.003 mg/kg/ 日以下では, 血漿 DPP 阻害, サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度は, ほぼ定量下限値付近又はそれ以下であった 2.6.6.8.4.2 他の DPP-4 阻害剤の経口投与探索試験 (1) 3 種類の DPP-4 阻害剤を用いたサル用量漸増経口投与用量設定試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020759) 引き続いて実施する予定の反復投与試験の用量設定を目的に, サキサグリプチン, ビルダグリプチン, シタグリプチンのサルにおける耐性及び血漿中暴露を検討した サキサグリプチンフリー体を酸性水に, ビルダグリプチン塩酸塩及びシタグリプチン燐酸塩を酸性水に溶解し, カニクイザル ( 各群雌雄 1 匹 ) に 3,10,30,60,100 mg/kg/ 日の漸増で投与した 各用量は 3 日間投与し, その後 4 又は 5 日の休薬期間を設定した (3 mg/kg/ 日は Day 1-3,10 mg/kg/ 日は Day 8-10,30 mg/kg/ 日は Day 15-17,60 mg/kg/ 日は Day 22-24,100 mg/kg/ 日は Day 30-32) 別の 2 群 ( 各群雌雄 1 匹 ) にビルダグリプチン又はシタグリプチンを 50 mg/kg/ 日の用量で Day 30 に単回投与し, 耐性を評価した 対照群 ( 雌雄 1 匹 ) には水を投与した (4 ml/kg), 臨床観察, 体重, 臨床病理, 血漿暴露, 各用量の初回投与後の血漿 DPP 活性 ( サキサグリプチンのみ ), 剖検, 組織学的検査 ( 漸増投与サルのみ ) によって評価した 平均全身暴露 C max 及び AUC はすべての用量範囲において, 用量比例的 ( サキサグリプチン投与雌, ビルダグリプチン投与雌雄 ) 又は用量比よりも大きく ( サキサグリプチン投与雄, シタグリプチン投与雌雄 ) 増加した 30 及び 100 mg/kg/ 日でのサキサグリプチン暴露は雌よりも雄で高かったが, ビルダグリプチン及びシタグリプチンの暴露に明らかな性差はみられなかった 100 mg/kg/ 日における平均 AUC は, サキサグリプチンが 37133 ng h/ml, ビルダグリプチンが 50197 ng h/ml, シタグリプチンが 98755 ng h/ml であった サキサグリプチンのすべての用量で,E max において 77.7~87.6% の血漿 DPP 阻害がみられた 各用量の初回投与 24 時間後の血漿 DPP 阻害 (E min ) は,3 mg/kg/ 日での 46.6% から 30 mg/kg/ 日での 73.9% の範囲にあった いずれの用量においても, 血漿 DPP 阻害に性差はみられなかった サキサグリプチン, ビルダグリプチン及びシタグリプチンの 30 mg/kg/ 日 (AUC は, それぞれ 9034,13376 及び 14916 ng h/ml) までの漸増投与を受けた, 又はビルダグリプチン及びシタグリ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 61

プチンの 50 mg/kg/ 日を単回投与されたカニクイザルは臨床的に著明な毒性を示さなかった 各薬剤において, ほとんどの臨床所見は 60 mg/kg/ 日以上の用量でみられ, それは皮膚病変 ( サキサグリプチン及びビルダグリプチン ), 一過性跛行 ( ビルダグリプチン及びシタグリプチン ) 及び振戦 / 活動性低下 ( サキサグリプチン ) であった 臨床病理変化は, 血清アルブミン及び A/G 比減少 ( サキサグリプチン及びビルダグリプチン ), 尿中ケトン体増加 ( ビルダグリプチン及びシタグリプチン ) に限定されていた 病理組織学的変化は皮膚 ( サキサグリプチン及びビルダグリプチン ) 及びリンパ系臓器 ( サキサグリプチン及びシタグリプチン ) にみられた 血漿 DPP 阻害の程度及び持続時間はすべての用量で同様であったことから, サキサグリプチンのサルにおける臨床毒性の原因が血漿 DPP 阻害であるとは考えられなかった (2) サル 6 週間経口投与探索比較毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020877) サキサグリプチンのサルにおける亜慢性毒性を, 他の DPP-4 阻害剤 2 種 : ビルダグリプチン及びシタグリプチンと比較した ビルダグリプチン及びシタグリプチンの投与量は,in vivo での暴露及び忍容性,in vitro でのヒトリコンビナント DPP-4 酵素に対する活性を基に, サキサグリプチン 10 mg/kg( この用量は 6 週間の投与後に皮膚病変及び多組織単核細胞浸潤を生じることがわかっている ) と薬理学的にほぼ同等となる用量を設定した ( サキサグリプチン 10 mg/kg での暴露よりビルダグリプチンは 14 倍, シタグリプチンは 18 倍を目標とした ) ビルダグリプチン及びシタグリプチンの用量は 40 mg/kg/ 日とした しかしながら, ビルダグリプチンは 40 及びその後減量した 30 mg/kg/ 日においても著明な浮腫が発現したため, 雄は投与 13 日目, 雌は投与 12 日目から 20 mg/kg に減量して投与を継続した サキサグリプチンフリー体は酸性水に, ビルダグリプチンフリー体及びシタグリプチンリン酸塩は酸性水に溶解し, 各群雌雄 3 匹のサルに 6 週間投与した 別の雌雄 3 匹のサルに水 4 ml/kg を投与し, 対照群とした 臨床症状, 体重, 臨床病理, 剖検及び組織病理学的検査によって評価した 各化合物の血漿中濃度を投与第 1,3,6 週に測定した DPP 阻害を評価するために, 投与第 1,6 週にも血漿を採取した サキサグリプチン 10 mg/kg/ 日での全身暴露 (Day 42 の AUC) と比較し, ビルダグリプチンでは 20 mg/kg/ 日で 1.5~2.0 倍,40 mg/kg/ 日で 3.6~3.8 倍, シタグリプチンでは 6.1~10.2 倍の暴露であった サキサグリプチンの Day 42 の暴露 (AUC) は Day 15 より増加 (2.6 倍まで ) していたが, ビルダグリプチン, シタグリプチンでは明らかな増加はみられなかった トキシコキネティキスデータを以下の表 ( 表 2.6.6-8) にまとめた 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 62

表 2.6.6-8 サルにおけるサキサグリプチン, ビルダグリプチン, シタグリプチンの全身暴露 化合物名 用量 (mg/kg/ 日 ) 採血日 C max (ng/ml) AUC a (ng h/ml) 雄雌雄雌 10 1 1306 1229 2500 1948 サキサグリプチン 10 15 1173 1285 2093 1985 10 42 1391 1672 4448 5254 40 1 5876 8822 16874 18951 ビルダグリプチン 20 15 3981 4224 8959 7870 20 42 3578 4309 8837 8153 40 1 7663 9523 34278 33790 シタグリプチン 40 15 9806 8884 36614 32110 a 40 42 11426 10219 45250 41649 計算は 0 時から血漿中に検出された最終時までで実施した その範囲は 8~24 時間 < 報告書番号 020877 より抜粋 作成 > 単回投与及び 6 週間反復投与後の DPP-4 活性阻害の最大値 (E max ) 及びトラフ値に, 化合物間での明らかな差はみられなかった すべての化合物で,65~86% の阻害 (E max ) がみられた サキサグリプチンに関連した皮膚病変が,6 匹中 5 匹の鼻, 手 / 足, 生殖器領域及び / 又は尾に見られ, 雌 1 例では尾の浮腫及び壊死に進行し, 最終的には尾の部分的切断が必要になった 2 匹のサルでは限局した生殖器の浮腫 ( 皮膚の擦過傷又は潰瘍に隣接した軽度の腫脹 ) もみられた その他に, 赤色又は半透明鼻汁, 振戦, 跛行, 可聴呼吸が一過性にみられた ごく軽度から中等度の一過性臨床病理学的変化として : 網赤血球の増加を伴う, 血小板数, 赤血球数, ヘモグロビン, ヘマトクリットの減少 ; 白血球数, 単球, リンパ球の増加 ; 好中球数の増加又は減少 ; 血清総蛋白及びグロブリンの増加 ;A/G 比低下 ;2 匹のサルでは軽度な糸球体症による尿蛋白の増加及び血清アルブミンの減少, がみられた 病理組織学的変化として,1 尾, 指, 生殖器領域, 鼻及び / 又は鼻腔に, 微小血管の平滑筋及び内皮細胞の肥大並びに血管壁 / 血管周囲に単核炎症細胞浸潤を伴う, 中等度から重度な皮膚の限局性壊死及び潰瘍,2 分泌腺, 腹腔臓器, 尿生殖路, 脈絡膜叢 ( 脳 ) 及び末梢神経に, ごく軽度から軽度な単核細胞浸潤 / 炎症,3 骨格筋及び横隔膜に軽度な亜急性非壊死性血管炎症,4 脾臓及び骨髄のリンパ性過形成,5 胸腺の軽度なリンパ球枯渇, 6 軽度な糸球体症 ( 超微細形態として糸球体足細胞の突起融合及び不明瞭化, 足細胞内貪食顆粒の集積, 血管内に免疫複合体の沈着を伴わない単核白血球の集積 ) がみられた ビルダグリプチン 40 mg/kg/ 日は, 雄 1 例の陰嚢, 後肢及び前肢 ( 掌の著明な裂傷を伴う ), 雌 1 例の前肢, 後肢及び尾に, 用量制限的な重度な瀰漫性浮腫をもたらした 別の 3 例の手, 足, 陰嚢にも軽度から中等度の浮腫がみられた ビルダグリプチンの用量は忍容性を改善するために, Day 2/3 に 20 mg/kg/ 日まで減量したところ, すべてのサルで浮腫が減少した その後, ビルダグリプチンの用量を Day 7/8 に 30 mg/kg/ 日まで増量したところ, 浮腫の状態が悪化した よって, その後用量を 20 mg/kg/ 日に減量し, 試験終了まで投与した しかしながら,6 例中 4 例において, 陰嚢, 尾及び / 又は手 / 足の浮腫が間欠的にみられた 尾の遠位端を切断後, 著明な掌の亀裂を示し 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 63

た雄は状態の悪化のため Day 17 に安楽殺した ビルダグリプチンに関連した, 尾の限局性皮膚壊死病変が 2 匹のサルに発生し, その後, 部分的又は尾全体の切断を実施した 更に, 一過性の赤色から半透明の鼻汁, 振戦, 跛行及び / 又は可聴呼吸がビルダグリプチン投与サルにみられた 臨床病理学的変化は, 出血及び / 又は全身性炎症を示したサルにのみ認められた 病理組織学的変化として,1 尾, 指, 生殖器及び鼻に, 微小血管症 ( 血管壁破壊及び血管周囲の出血及び浮腫から成る ) を伴う軽度から重度な皮膚の壊死 / 潰瘍, 2 胸部及び腹部の皮下浮腫,3 脾臓及び骨髄の軽度なリンパ性過形成,4 胸腺のごく軽度なリンパ球枯渇がみられた シタグリプチンに関連した臨床症状も臨床病理学的変化もみられなかった シタグリプチンに関連してみられた病理組織学的変化は,6 例中 3 例における脾臓及び骨髄のごく軽度から軽度なリンパ性過形成だけであった 結論として, 本試験はサキサグリプチン, ビルダグリプチン及びシタグリプチンの,in vitro でのヒトリコンビナント DPP-4 酵素に対する活性,in vivo での忍容性及び暴露を元に, 等しい能力となる用量において, カニクイザルでの毒性を比較する目的で計画した ( サキサグリプチン 10 mg/kg での暴露よりビルダグリプチンは 14 倍, シタグリプチンは 18 倍を目標とした ) これらの基準に基づき, 当初, 用量としてサキサグリプチンは 10 mg/kg/ 日, ビルダグリプチン及びシタグリプチンは 40 mg/kg/ 日を選択した 等しい能力を示す血漿中暴露は結局達成できなかったが, 各化合物で共通した毒性がみられた ( 例えば, 脾臓及び骨髄におけるリンパ性過形成 ) 毒性に明らかな違いもみられた シタグリプチンはヒトの暴露 ( 臨床用量 100 mg での AUC) 16 の 10 倍暴露においてもサルは臨床的に著明な毒性を示さなかったが, サキサグリプチンはヒトの暴露 ( 臨床用量 5 mg での AUC) の 60 倍暴露で皮膚の病変を引き起こした ビルダグリプチンはヒト 17 18 の暴露 ( 臨床推奨用量 100 mg での AUC) の 8 倍 ~10 倍の暴露において, 重度な持続性浮腫 ( 特に手と足 ), サキサグリプチン投与でみられたものと同様な皮膚病変という, 用量制限となる急性毒性を引き起こした (3) サル単回経口投与探索薬力学及び薬物動態試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021431) サキサグリプチン (0.1,0.3,1.0,3.0,10 mg/kg), ビルダグリプチン (0.1,0.3,1.0,3.0, 10,30 mg/kg), シタグリプチン (0.3,1.0,3.0,10,40 mg/kg), 類縁物質 B* ( 開発中の選択性の高い DPP-4 阻害剤 ;0.1,0.3,1.0,3.0,10,30 mg/kg) のサルにおける薬物動態及び薬力学 ( 血漿 DPP 阻害 ) の特性を評価するために本試験を実施した サキサグリプチンフリー体及び類縁物質 B* は酸性水に, ビルダグリプチンフリー体及びシタグリプチン燐酸塩は酸性水に溶解し,2 ml/kg の容量で投与した 対照群のサルには酸性水を 2 ml/kg の容量で投与した DPP 阻害剤又は酸性水は 24 匹のサル ( 雌雄混在 ) に,7 週間にわたってクロスオーバー形式で投与した サルは順番に交代し, 性及び前回の投与量がすべての群に均質になるように割り付けた (6~8 匹 / 用量 / 化合物 ) いずれのサルも, 媒体又は被験物質を週一回以上投与されることはなかった 薬物動態及び薬力学の項目に加え, 生存及び臨床観察も実施した すべての化合物の単回経口投与後の全身暴露は, 全体的には用量比例的であった サキサグリプチン及びその主代謝物である BMS-510849 の C max 及び AUC は, 用量の増加とほぼ同じ様に増 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 64 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

加したが, ビルダグリプチン, シタグリプチン, 類縁物質 B* の C max 及び AUC は用量の増加よりも大きく増加した 用いた最高用量における全身暴露 (AUC) は, サキサグリプチン (10 mg/kg) では 2484, ビルダグリプチン (30 mg/kg) では 14895, シタグリプチン (40 mg/kg) では 30658, 類縁物質 B* (30 mg/kg) では 29622 ng h/ml であった サキサグリプチンではすべての用量において血漿 DPP 阻害は 62%~78% の範囲にあった それとは対照的に, ビルダグリプチンは 0.3 mg/kg 以上で, シタグリプチンは 1 mg/kg 以上で, 類縁物質 B* は 1 mg/kg 以上で, サキサグリプチンと同等の, 用量に比例した最大阻害がみられた 更に, サキサグリプチンは 3 mg/kg 以上の用量で E max に比例した持続的血漿 DPP 活性阻害を示したが, ビルダグリプチン, シタグリプチン, 類縁物質 B* ではそれぞれ 30,40,30 mg/kg の用量でのみ, 持続的阻害がみられただけであった ビルダグリプチン 30 mg/kg 投与後, 薬物に関連した変化として,3 匹のサルに軽度な手 / 足の浮腫並びに 2 匹に軽度な振戦がみられた 類縁物質 B* を 30 mg/kg 投与された 1 匹のサルに軽度な一過性の振戦 / 身震いがみられた 他の阻害剤ではいずれの用量においても臨床所見はみられなかった 要約すると, 最大血漿 DPP 阻害はサキサグリプチンではすべての用量で達したが, ビルダグリプチンは 0.3 mg/kg 以上, シタグリプチンは 1 mg/kg 以上, 類縁物質 B* は 1 mg/kg 以上, でのみ最大阻害を示した 更に,24 時間以上の持続的阻害 (E max と同等な E min ) は, サキサグリプチンでは 3 mg/kg 以上 (785 ng h/ml 以上 ) で達成していたが, ビルダグリプチンでは 30 mg/kg(14895 ng h/ml), シタグリプチンでは 40 mg/kg(30658 ng h/ml), 類縁物質 B* では 30 mg/kg(29622 ng h/ml) と, 持続的阻害を引き起こすには高い用量が必要であった 浮腫 ( ビルダグリプチンのみ ) 及び振戦 ( ビルダグリプチン及び類縁物質 B* ) が血漿 DPP 活性を最大阻害するために必要な用量よりも過量な用量でみられたが, 持続的阻害作用との一貫した関連性はなく, これらの所見と DPP 阻害作用との関連性は不明であった 2.6.6.8.5 BMS-510849 分析ブリッジング試験 (GLP 適用 ) BMS-510849( 主代謝物 ) の他の少量の代謝物とのクロマトグラム上での分離に関し, 当初の分析方法では BMS-510849 の血漿中濃度すなわち全身暴露を過大評価していた可能性があった したがって, 血漿中の BMS-510849 をより正確に定量できるように前処理, 分離条件等を変更した第二の分析法を開発した ( 詳細は, 第 2.6.4.2.2 項の非臨床薬物動態概要文を参照 ) 当初の分析方法と新しく改良した分析方法を用いて, サキサグリプチンの非臨床開発計画で使用したすべての動物種について,BMS-510849 の暴露を比較する試験を実施した 非妊娠動物 ( マウス, ラット, イヌ, サル ) には 7 日間経口投与し, 定常状態に達していることを確認するために,Day 6 は限定したタイムポイントで,Day 7 は 24 時間全体にわたり, 血漿を採取した 妊娠ラット及びウサギの血漿中 BMS-510849 は, それぞれ投与 10 日後及び 13 日後に測定した 用量及び投与剤形は, 主要な試験 ( 例えば, 慢性毒性, がん原性, 生殖及び発生毒性試験 ) の用量範囲をカバーできるように選択した 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 65 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2.6.6.8.5.1 マウス 7 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021346) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解して,50,250,600 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 36 匹の Crl:CD-1 マウスに投与した 7 日投与後に BMS-510849 の定常状態の暴露が示された 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べて, 雌雄ともすべての用量で高かった ( 雄において C max は 6.9~19.1%,AUC は 10.0~18.3% 高く, 雌において C max は 6.4~24.5%,AUC は 9.6~20.8% 高かった ) 2.6.6.8.5.2 ラット 7 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021349) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解して,2,25,75,300 mg/kg/ 日の用量 (5 ml/kg の容量 ) で, 各群雌雄 12 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに投与した 7 日投与後に BMS-510849 の血漿中濃度は定常状態になり, 以前のラットにおける試験と一致して,BMS-510849 の暴露 (C max 及び AUC) は雄より雌で高かった 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べてすべての用量で高く, 雄に比べて雌ではより大きな違いがあった ( 雄において C max は 0.8~14.4%,AUC は 4.4~6.1% 高く, 雌において C max は 17.0~25.3%,AUC は 18.8~42.7% 高かった ) 2.6.6.8.5.3 妊娠ラット 10 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021345) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel に懸濁して,0( 媒体 ),64,240,900 mg/kg/ 日の用量で, 各群 10 匹の妊娠 Crl:SD ラットに 10 日間 ( 妊娠 6 日 ~15 日 ) 投与した 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べてすべての用量でほぼ同等であった (C max は-9.7~1.6%,AUCは 0~2.7% の差であった ) 2.6.6.8.5.4 妊娠ウサギ 13 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020915) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel に懸濁して,0( 媒体 ),8,40,200 mg/kg/ 日の用量で, 各群 5 匹の妊娠 NZW ウサギに 13 日間 ( 妊娠 7 日 ~19 日 ) 投与した 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べてすべての用量で高かった (C max は 2.1~10.0%,AUC は 4.9~11.1% 高かった ) 2.6.6.8.5.5 イヌ 7 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021347) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel に懸濁して,1,5,10 mg/kg/ 日の用量で, 各群雌雄 3 匹のビーグル犬に 7 日間投与した BMS-510849 は Day 7 までに定常状態になり, 以前のイヌにおける試験での暴露と一致し, 雌雄間で同様であった 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べて雌雄とも全 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 66

般的に高かったが, 用量によっては AUC は同等であった ( 雄において C max は 1.8~30.8% 高く, AUC は 1 mg/kg/ 日では 4.7% 低く, 残りの群では 22.1% 及び 36.2% 高かった 雌において C max は 2.6~30.5% 高く,AUC は 5 mg/kg/ 日では 1.8% 低く, 残りの群では 6.9% 及び 24.8% 高かった ) 2.6.6.8.5.6 サル 7 日間反復経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020876) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解して,0.03,0.3,3,10 mg/kg/ 日の用量で, 各群雌雄 3 匹のサルに投与した BMS-510849 は Day 7 までに定常状態となり, 雌雄間で同等であり, これは以前のサルにおける試験と一致していた 当初の分析法で得られた BMS-510849 の平均トキシコキネティクスパラメーターは, 新しい分析法で得られた結果と比べて雌雄とも全般的に高かっ類縁物質 D* たが, 雌雄の 0.03 mg/kg/ 日群の AUC は同等であった ( 雄において C max は 6.0~13.8% 高く,AUC は 0.03 mg/kg/ 日では 2.1% 低く, 残りの群では 6.7~9.2% 高かった 雌において C max は 5.9~23.0% 高く,AUC は 0.03 mg/kg/ 日では 4.7% 低く, 残りの群では 9.3~15.1% 高かった ) 2.6.6.8.6 不純物 / 分解物に関する試験 (GLP 適用 ) 2.6.6.8.6.1 ネズミチフス菌及び大腸菌を用いた復帰変異確認試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019474) 類縁物質 C* 及び類縁物質 D* 現在の製造工程では検出限界以下となっている潜在的な不純物 ) をそれぞれ 0.5% 及び 0.3% 含有するサキサグリプチン安息香酸塩について, ネズミチフス菌 TA98, TA100,TA1535,TA1537 株及び大腸菌 WP2 uvra 株を用いた, 用量設定試験において評価を行った Aroclor 誘導ラット肝臓 S9 による代謝活性化あり及びなしの条件で, サキサグリプチンの用量は 50,160,500,1000,1500,3000,5000 μg/plate を設定した 最高用量の S9 あり及びなしでは,TA98,TA100,TA1537 株に細胞毒性がみられた 復帰突然変異コロニー平均数は対照群と同様であった その後に実施した本試験において, 代謝活性化あり及びなしの条件で, サキサグリプチンの用量は 150,300,600,1200,2500,5000 μg/plate を設定した 最高用量の S9 あり及びなしでは, TA100 及び TA1537 株に細胞毒性がみられた 復帰突然変異コロニー平均数は対照群と同様であった 陽性対照群 (2-aminoanthracene,2-nitrofluorene,sodium azide,9-aminoacridine,methyl methane sulfonate) では, 期待したとおりに復帰突然変異コロニー数の有意な増加がみられた 結論として,ICH ガイドラインで要求されている最高用量まで検討したが類縁物質 C* を 0.5% 及び類縁物質 D* を 0.3% 含有するサキサグリプチンに変異原性は認められなかった 2.6.6.8.6.2 ネズミチフス菌及び大腸菌を用いた Ames 復帰変異確認試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019982) 不純物 / 分解物である, 類縁物質 A* を 5.04%(w/w) 及び類縁物質 E* を 4.71%(w/w) 含有するサキサグリプチンフリー体を DMSO に溶解し, ネズミチフス菌 TA98,TA100,TA1535,TA1537 株及び大腸菌 WP2 uvra 株を用いて,Aroclor 誘導ラット肝臓 S9 による代謝活性化あり及びなしの 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 67 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

条件で, フレームシフト又は塩基対置換変異の誘発性を検討した 適切な陽性対照群 (2-aminoanthracene,2-nitrofluorene,sodium azide,9-aminoacridine,methyl methane sulfonate) 及び陰性対照群についてもこの試験内で評価した 初回試験では, サキサグリプチンの用量を 16,50,160,500,1600,3000,5000 μg/plate として評価した いずれの培養においても細胞毒性はみられず, 陰性対照群と比較して, 復帰突然変異コロニー平均数の増加も認められなかった 確認試験では, サキサグリプチンの用量を 200,400,800,1600,3000,5000 μg/plate として評価した いずれの培養においても細胞毒性はみられず, 陰性対照群と比較して, 復帰突然変異コロニー平均数の増加も認められなかった 期待したとおり, 陽性対照物質処置においては, 復帰突然変異コロニー数の有意な増加がみられた 結論として,ICH ガイドラインで推奨されている最高用量,5000 μg/plate まで検討したが, 類縁物質 A* を 5.04% 及び類縁物質 E* を 4.71% 含有するサキサグリプチンは, 使用したネズミチフス菌及び大腸菌株に対して変異原性を示さなかった 2.6.6.8.6.3 ラット 3 日間反復投与小核確認試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 020756) 不純物 / 分解物である, 類縁物質 A* を 1.36% 含有するサキサグリプチンフリー体について, その遺伝毒性をラットの骨髄赤血球小核試験によって評価した 0( 媒体 ),250,500,1000 mg/kg/ 日の用量で, 各群雄 6 匹の Crl:SD ラットに 3 日間反復経口投与した サキサグリプチンは酸性水に溶解し,2.5~10 ml/kg の容量で投与した 対照群には酸性水を 10 ml/kg の容量で投与した 陽性対照群 ( 雄 5 匹 ) には, シクロホスファミド (CP) を 7 mg/kg/ 日腹腔内投与した サキサグリプチン及び代謝物である BMS-510849 の全身暴露を評価するために,Day 1 に血液サンプルを採取した Day 3 の投与 24 時間後に, 各群最初の 5 匹から大腿骨骨髄サンプルを採取し, 多染性赤血球数 (PCE) 及び小核を持つ多染性赤血球数 (MN-PCE) を顕微鏡下で測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は用量に相関していた AUC の増加は用量の増加とほぼ比例していたが,C max の増加は,250 と 500 mg/kg/ 日の間では用量の比よりも小さく, 500 と 1000 mg/kg/ 日の間では用量の比とほぼ比例していた BMS-510849 の暴露 (AUC) はサキサグリプチンの約 0.5 倍であった この試験では死亡例はみられなかった いずれのサキサグリプチン投与群においても,PCE の減少によって判断される骨髄毒性は生じなかった サキサグリプチン投与ラットの骨髄における MN-PCE の発現頻度は, 陰性対照群の値と比較して統計学的に有意な増加を示さなかった 250, 500 及び 1000 mg/kg/ 日における, 骨髄の平均 MN-PCE 発現頻度はそれぞれ,0.43,0.26,0.25% であり, 対照群の 0.35% と同等であった CP 投与ラットの骨髄では,4.28% の MN-PCE( 対照群の 12 倍 ) という陽性 ( 統計学的に有意な ) 小核反応がみられた 結論として, 類縁物質 A* を 1.36% 含有するサキサグリプチンは,1000 mg/kg/ 日まで経口投与されたラット (C max は 7470 ng/ml,auc は 110000 ng h/ml) の骨髄赤血球小核試験において, 遺伝毒性を示さなかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 68 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2.6.6.8.6.4 ラット 3 ヵ月反復経口投与確認試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 021433) サキサグリプチンフリー体,1.36%(w/w) の類縁物質 A* ( 不純物 / 分解物 ) を添加されたサキサグリプチンフリー体,0.62%(w/w) の類縁物質 E* ( 不純物 ) を添加されたサキサグリプチンフリー体を, 酸性水に溶解し,300 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 10 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに投与した 投与容量はすべての群で 5 ml/kg とした 生存段階での観察, 眼科検査, 臨床病理, 器官重量, 剖検, 病理組織学的検査によって評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を投与 13 週に測定し, 全身暴露を評価した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (C max 及び AUC) は, すべての群において同等であった サキサグリプチン及び BMS-510849 の AUC は, 雄よりも雌で高かった ( それぞれ 3.4-3.7 倍及び 1.9-2.3 倍 ) 更に,BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 0.15-0.38 倍であった すべての投与群において,Day 26~86 の投与期間中に死亡がみられた サキサグリプチン群では雌 1 例, 類縁物質 A* 添加サキサグリプチン群では雄 1 例及び雌 2 例, 類縁物質 E* 添加サキサグリプチン群では雄 4 例が死亡した 特定の死因は明らかにされなかったが, 薬物との関連性が考えられた 臨床症状がすべての群の主に雄にみられた : 異常姿勢, 正向反射消失, 振戦及び / 又は労作呼吸 更に, 以下に示す神経病的症状のひとつ又はひとつ以上が, 不純物 / 分解物の含有に関わらずサキサグリプチンを投与された数匹の雄の投与期間終了近くに認められた : 間代性痙攣, 歩行失調, 痛みに対する反応性低下, 正向反射の低下, 活動性低下, 痙性歩行, 不全麻痺,splayed 姿勢 ( うずくまって前肢を前に伸ばし, 後肢を広げる ) これらの所見は, サキサグリプチンを 300 mg/kg/ 日以上投与された他の慢性試験の雄ラットで報告されている所見と同様のもので, シアン毒性と一致するものであった 3, 13 したがって, これらの所見は類縁物質 A* 又は類縁物質 E* の暴露とは関連していないものと考えられた 体重, 摂餌量, 臨床病理, 器官重量, 剖検所見に, 不純物 / 分解物の含有あり / なしで明らかな違いはみられなかった すべてのサキサグリプチン投与群の雄に, 組織学的脳病変が認められ, それはごく軽度から著明な尾状核 / 被殻の脱髄 / 壊死であった 脳病変を示した雄ラットの例数には軽度な違いがあった ( サキサグリプチン群では 1 例, 類縁物質 A* 含有サキサグリプチン群では 2 例, 類縁物質 E* 含有サキサグリプチン群では 4 例 ) が, すべての群の頻度及び程度は他のラット試験の同じ用量で以前にみられたものと同様で, シアン毒性と一致するものであった 3, 13 結論として, 不純物 / 分解物を添加されたサキサグリプチンを投与された雄ラットにみられた臨床的変化及び病理組織学的変化は, 以前のラット試験でみられたものと同様であり, シアンによる毒性と一致するものであった シアンに関連した脳病変はすべてのサキサグリプチン投与群の雄にみられ, その際のサキサグリプチン全身暴露 AUC は 61096~62576 ng h/ml であった 1.36% (w/w) の類縁物質 A*,0.62%(w/w) の類縁物質 E* は, サキサグリプチンの毒性特性を変化させることはなかったので, これらの不純物の生物学的安全性は確認された 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 69 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2.6.6.8.7 その他の試験 (GLP 適用, 一部非適用 ) 2.6.6.8.7.1 マウス 2 週間経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019441) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25% Avicel に懸濁して, 又はサキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解して,30,300,1000 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 21 匹の CD-1 マウスに投与した 投与製剤に関連した暴露の違いを評価するために, サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を Day 14 に測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 明らかな性差を示すことなく, 用量に比例して増加した BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 2.5~5.3 倍であった サキサグリプチンを安息香酸塩又はフリー体として投与しても, サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露に明らかな違いはみられなかった 2.6.6.8.7.2 ラット 2 週間経口投与トキシコキネティクス試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019442) サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25% Avicel に懸濁して, 又はサキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解して,300,600,1200 mg/kg/ 日の用量で各群雌雄 12 匹の Harlan Sprague Dawley 系ラットに投与した 投与製剤に関連した暴露の違いを評価するために, サキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度を Day 1 及び 14 に測定した サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 用量に比例して増加し, 雌は雄よりも高い暴露 (3~6 倍 ) を示した BMS-510849 の AUC はサキサグリプチンの 0.3~1 倍であった サキサグリプチンを安息香酸塩又はフリー体として投与しても, サキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露に明らかな違いはみられなかった 反復投与による暴露増加もみられなかった 両投与製剤において,600 mg/kg/ 日以上の用量で死亡が発生 (Day 1~8 の間 ) し, 死亡の前には活動性低下, 虚脱, 呼吸困難, 及び / 又は振戦がみられた これらの臨床症状は, 他のラット反復投与投与試験でみられた急性シアン毒性と一致するものであった 結論として, サキサグリプチンの安息香酸塩又はフリー体をラットに 2 週間経口投与した場合, トキシコキネティクス又は毒性特性に明らかな差は見られなかった 600 mg/kg/ 日以上の用量 ( サキサグリプチン AUC は 90792 ng h/ml 以上 ) では, 明らかな毒性及び死亡が認められた 2.6.6.8.7.3 ラット 3 日間経口投与探索毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019444) 被験物質のバッチの違いによる急性毒性特性の違いを探索するために本試験を実施した この試験は, バッチ 3D65912 を用いたラットの受胎能試験 ( 第 2.6.6.6.1 項 ) において,400 mg/kg/ 日の用量で予期しない死亡がみられたことから実施した サキサグリプチンフリー体の 3 種のバッチ (3D68481,3D65912,3D65913) を酸性水に溶解し, 各群 10 匹の雄 Harlan Sprague Dawley 系ラットに 300 mg/kg/ 日の用量で 3 日間又は 1200 mg/kg の用量で 1 回投与した 10 ml/kg の水を 3 日間投与した対照群を設定した 臨床観察及び剖検によって評価を実施した 300 mg/kg/ 日の用量において, バッチ 3D68481 を投与されたラットに臨床症状はみられなかっ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 70

た バッチ 3D65912 投与群では,1 例が Day 1 に活動性低下, 振戦, 労作呼吸を示し, 投与 2 時間以内に死亡した バッチ 3D65913 投与群では,2 例が Day 1 に活動性低下, 振戦を示し, そのうちの 1 例が投与 2 時間以内に死亡した 1200 mg/kg では, いずれのバッチを投与されたラットにおいても, 活動性低下, 振戦及び / 又は労作呼吸という臨床症状がみられた 各バッチにおける死亡は以下の通り : バッチ 3D68481 では 2 例 (24 時間以内 ), バッチ 3D65912 では 1 例 (2 時間後 ), バッチ 3D659132 では 3 例 (24 時間以内 ) 投与翌日までに, いずれのバッチを投与された生存例も臨床症状を示さなくなり, その後 300 mg/kg/ 日を投与しても臨床症状は発現しなかった 300 及び 1200 mg/kg ( すべてのバッチ ) で, 血清リンの減少及び血清血糖の増加がみられ, 血清重炭酸塩の減少 ( バッチ 3D65912 の 1200 mg/kg) もみられた 結論として,3 種のバッチ間の急性毒性及び暴露に大きな違いはみられなかった すべてのバッチでみられた毒性は急性シアン毒性と一致するものであった 2.6.6.8.7.4 サル間欠経口投与免疫毒性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 019454) サキサグリプチンを週 1 回投与されたサルにおいて, リンパ球の一過性減少が引き起こされるか否かを確認するために本試験を実施した サキサグリプチンの臨床製剤 (5 mg 及び 40 mg 錠 ) を水性懸濁として雌雄 3 匹のカニクイザルに経口投与した 用量は,Day 1 及び 8 には 3 mg/kg/ 日 15 及び 22 には 10 mg/kg と, 漸増した 各用量段階で約 2 週間, 動物を観察した ( 最終投与は除く ) 対照動物には, 同じ頻度で水を 1 ml/kg 投与した 臨床観察 ( 体温測定を含む ), 体重, 血液学, 末梢血リンパ球表現型分類によって評価を実施した 尾の先端及び / 又は背中に痂皮及び潰瘍が,10 mg/kg を最初に投与 (Day 15) した 5-6 日後に 2 例のサルに, 更に試験終了時 (Day 27) に 1 例のサルにみられた 試験終了後,2 例 ( 雌 ) のサルではこの病変は回復したが, 残りの 1 例 ( 雄 ) では最終的に尾の切断が必要になった 尾の病変が発現した 3 例中 2 例において, 二次的炎症反応と一致する, 白血球数, 好中球数及び血小板数の中等度な増加がみられた 10 mg/kg の初回及び 2 回目投与 (Day 15 及び 22) の後に,2 例の雌サルに, 血液濃縮と一致するヘマトクリットの中等度な増加がみられた この 2 例中 1 例の雌では, 試験終了時には赤血球数, ヘモグロビン及びヘマトクリットが減少 ( それぞれ, 開始前値の 56%,54%,57%) していた 試験期間を通じて, 主に各投与の 24 時間以内に, リンパ球数の減少 (T 細胞,T-ヘルパー細胞,T-キラー細胞及び B 細胞の, 開始前値と比べて 76% までの減少を含む ), 好酸球数の減少 ( 基準値より約 50% 低下 ), 白血球数の増加 ( 開始前値の約 3.6 倍まで, 主に好中球数の増加に起因 ) がみられた これらの白血球数変化は, 対照群のサルでみられた変化とその程度及び期間が同様であり, ストレスに起因したものと考えられた 尾に病変のみられたサルにおいて, 統計学的に有意ではなかったが, リンパ球のより程度の強い減少が発現したため, この減少とサキサグリプチンとの関連性は明確にできなかった 要約すると, リンパ球集団及びリンパ球数に薬物による明らかな影響はみられなかった サキサグリプチンを亜急性間欠投与されたサルにみられた主な所見は皮膚病変であった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 71

2.6.6.8.7.5 メトホルミン併用投与毒性試験 (1) メトホルミン併用投与イヌ毒性試験 (a) メトホルミン併用イヌ単回投与トキシコキネティクス及び耐性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024133) イヌにおける, サキサグリプチンフリー体投与時のトキシコキネティクス ( 以前の試験はすべて安息香酸塩を使用していた ), メトホルミン投与時のトキシコキネティクス, 両化合物併用投与時の耐性確認を目的に本試験を実施した サキサグリプチンフリー体を 1,5,10 mg/kg, メトホルミンを 10,20,40 mg/kg の用量でそれぞれ雌雄各 2 匹のイヌに単回経口投与した サキサグリプチン 5 mg 及びメトホルミン 20 mg/kg を雌雄各 2 匹のイヌに併用単回経口投与した サキサグリプチンは酸性水に, メトホルミンは水にそれぞれ溶解した すべての群で投与液量は 1 ml/kg とした サキサグリプチン単独投与後のサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露 (AUC) は全体的に用量依存的に増加した BMS-510849 の暴露はサキサグリプチンの 0.9 倍 ~1.6 倍であった サキサグリプチン及び BMS-510849 の暴露に性差はみられなかった メトホルミン単独投与後のメトホルミン全身暴露 (AUC) は用量依存的に増加し, 性差はみられなかった サキサグリプチン 5 mg/kg 及びメトホルミン 20 mg/kg を併用投与後のサキサグリプチン,BMS-510849, メトホルミンの血漿暴露量は, それぞれ同用量での単独投与後の暴露と同等 (0.9~1.7 倍 ) であった 死亡例はみられなかった サキサグリプチン単独 1 mg/kg 投与のイヌに薬物関連の臨床症状はみられなかった 5 mg/kg では, すべてのイヌに形をなさない便がみられた 10 mg/kg では, すべてのイヌに粘液及び微量の血液 ( 便潜血テスト Seracult にて確認 ) を含む形をなさない便がみられた メトホルミン単独投与イヌでは, すべての用量の雄,20 及び 40 mg/kg の雌において形をなさない便がみられ, 更に 10 及び 40 mg/kg の雄ではその便中に粘液もみられた サキサグリプチン 5 mg/kg 及びメトホルミン 20 mg/kg を併用投与されたイヌにおいては, 粘液を含む形をなさない便が全例にみられた 結論として,10 mg/kg までのサキサグリプチン,40 mg/kg までのメトホルミンの単回経口投与にイヌは著明な毒性を示さなかった 臨床症状として便性状の変化だけが, サキサグリプチンでは 5 mg/kg 以上, メトホルミンではすべての用量においてみられた サキサグリプチン 5 mg/kg 及びメトホルミン 20 mg/kg を併用投与されたイヌにみられた便の変化はメトホルミン単独 20 mg/kg 投与イヌにみられたものと同様であった サキサグリプチンフリー体の経口投与後のサキサグリプチン及び BMS-510849 の全身暴露は, 安息香酸塩の同用量投与で達成された暴露と同様であった (b) メトホルミン併用イヌ 2 週間反復投与トキシコキネティクス及び耐性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024134) サキサグリプチン及びメトホルミンを 1 日 1 回 2 週間, イヌに併用経口投与し, トキシコキネティクス及び耐性について検討した 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 72

各群雌雄 3 匹ずつのイヌに, サキサグリプチン ( フリー体 )5 mg/kg/ 日単独, メトホルミン 20 mg/kg/ 日単独, サキサグリプチン 1 mg/kg/ 日とメトホルミン 20 mg/kg/ 日を併用, サキサグリプチン 5 mg/kg/ 日とメトホルミン 20 mg/kg/ 日を併用, で 1 日 1 回 2 週間投与した サキサグリプチンは酸性水に, メトホルミンは水に溶解し,1 ml/kg の液量で投与した 生存, 臨床症状, 体重, 摂餌量, 血液学及び血清化学検査によって評価を行った Day 1 及び 15 にサキサグリプチン, 活性代謝物 BMS-510849 及び / 又はメトホルミンの全身暴露評価を行った Day 15 において, 併用投与時のサキサグリプチンの全身暴露 (AUC) は 1 及び 5 mg/kg/ 日の間で用量依存的であった サキサグリプチン 5 mg/kg 単独投与イヌにおけるサキサグリプチン暴露 (AUC) はサキサグリプチン / メトホルミンの 5/20 mg/kg/ 日併用投与イヌの値と同等であった BMS-510849 の全身暴露はサキサグリプチンの約 0.9 倍 ~1.3 倍であり, メトホルミンとの併用投与によって影響を受けなかった メトホルミンの全身暴露 (AUC) は, 単独投与時とサキサグリプチンとの併用投与時で同等であった サキサグリプチン,BMS-510849, メトホルミンの暴露は, すべての群において雌雄で同等であり,Day 1 と 15 の間にも差はなかった すべての群でみられた臨床症状は, 粘液又は少量の血液を時々含む, 形をなさない又は液状の便であった 便異常の発現頻度及び程度はすべての群で同様であった 結論として, サキサグリプチン 1 mg/kg/ 日又は 5 mg/kg/ 日 (Day 15 の全身暴露 AUC はそれぞれ 819,5230 ng h/ml) とメトホルミン 20 mg/kg/ 日 (Day 15 の AUC は 29600 ng h/ml) の併用投与は, それぞれの単独投与時と同様に臨床的に著明な毒性をもたらさず, 便の性状に影響をもたらしただけであった サキサグリプチン,BMS-510849, メトホルミンの全身暴露は, サキサグリプチンとメトホルミンの併用によって影響を受けなかった (c) メトホルミン併用イヌ 3 ヵ月反復経口投与毒性試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024135) サキサグリプチン及びメトホルミンを単独又は併用して 1 日 1 回各群雌雄 3 匹ずつのイヌに 3 ヵ月間経口投与した 投与量は, サキサグリプチン / メトホルミンとして,5/0,0/20,1/20,5/20 mg/kg/ 日とした サキサグリプチン ( フリー体 ) は酸性水に, メトホルミンは脱イオン水に溶解し, それぞれ 1 ml/kg の液量で投与した 生存, 臨床症状, 体重, 摂餌量, 摂水量, 身体及び眼科検査, 心電図, 動脈血酸素飽和度, 臨床病理, 剖検, 組織病理学的検査によって評価を行った Day 1, 23 及び 86 にサキサグリプチン, 代謝物 BMS-510849 及び / 又はメトホルミンの全身暴露評価を行った 併用反復投与後, サキサグリプチン及びメトホルミンの全身暴露 (AUC) はほぼ用量依存的であった サキサグリプチン / メトホルミンの 5/20 mg/kg/ 日併用投与イヌにおけるサキサグリプチン暴露 (AUC) はサキサグリプチン 5 mg/kg 単独投与イヌの値と同等 (0.74-0.92 倍 ) であった メトホルミンの全身暴露 (AUC) は, 単独投与時とサキサグリプチンとの併用投与時で同等であった 反復投与後, サキサグリプチン及びメトホルミンの暴露は, 単独投与, 併用投与のいずれにおいても Day 1 の暴露と同等であった その暴露に性差はみられなかった Day 23 及び 86 の BMS-510849 の全身暴露 AUC は, 全般的にサキサグリプチンと同等から軽度高かった サキサグリプチン / メトホルミンの 1/20 及び 5/20 mg/kg/ 日の併用投与にイヌは著明な毒性を示さなかった 併用投与されたイヌにみられた所見のすべてが, それぞれ単独投与されたイヌにみ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 73

られた所見の発現頻度及び程度と同等であった 全ての群で軟便, 液状便, ないし赤色便がみられた サキサグリプチンに起因した変化としては雌雄での粘液便 / 粘液物質排泄, 主に雌における透明な眼分泌物が認められた メトホルミンに起因した変化としては流涎, 散発的で一過性の振戦 / 身震いが認められた サキサグリプチン / メトホルミンを 5/20 mg/kg/ 日併用投与された雌,1/20 及び 5/20 mg/kg/ 日併用投与された雄において, サキサグリプチン単独投与イヌと比較し体重増加量の減少がみられた この影響はメトホルミンに起因するものと考えられた 結論として, サキサグリプチン / メトホルミンの 1/20 及び 5/20 mg/kg/ 日の 3 ヵ月併用投与にイヌは著明な毒性を示さず, 薬物相互作用もみられなかった 薬物に関連してみられた変化は, いずれかの薬剤に関連した, すべての群でその発現頻度が同等であった, 臨床的変化及び体重の減少だけであった 併用毒性に関する無毒性量は 5/20 mg/kg/ 日と判断された 5/20 mg/kg/ 日投与後 (Day 86) の血漿中サキサグリプチン,BMS-510849 及びメトホルミンの AUC は, 雄 5530,6670 及び 29600 ng h/ml, 雌 4790,7130 及び 30000 ng h/ml であった (2) メトホルミン併用投与生殖毒性試験 (a) メトホルミンの妊娠ラット 10 日間投与用量設定試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024141) メトホルミンを Crl:CD(SD) ラットの妊娠 6~15 日に経口投与し, その発生毒性評価, 母動物におけるメトホルミンの全身暴露評価, サキサグリプチン / メトホルミン併用投与胚 胎児発生試験の投与量選択, を目的に本試験を実施した メトホルミンを 0( 媒体 ),100,300,500,1000 mg/kg/ 日の用量で, 各群 8 匹のラットの妊娠 6~15 日 (GD 6-15) に経口投与した すべての用量で, メトホルミンは試薬級の水に溶解し,5 ml/kg の液量で投与した 生存, 臨床症状, 体重, 摂餌量, 母動物の剖検, 妊娠子宮重量, 胎児数, 胎児体重, 胎児性別, 胎児外形観察によって評価した メトホルミンの全身暴露を GD 15 に評価した GD 15 において, メトホルミンの平均全身暴露 (AUC) は,100 と 300 mg/kg/ 日間,300 と 500 mg/kg/ 日間では全体的に用量依存的に増加したが,500 と 1000 mg/kg/ 日間では用量比よりもその増加は低かった T max はすべての用量で投与 2 時間後であった 予定した帝王切開以前に出産したため, 合計 6 匹の母動物を安楽殺した 全体的に, これらの出生児は正常に発達し, 妊娠期間を満了していたようにみられた これらの動物のデータは以後の定量的解析からは除外した 死亡例はみられなかった いずれの用量においても, 臨床症状, 母動物の剖検所見, 胎児での評価パラメーターのいずれにも, 薬物に関連した影響はみられなかった いずれの用量においても, 母動物の体重, 摂餌量に毒性的影響はみられなかった 結論として, 本試験における無毒性量は 1000 mg/kg/ 日 (AUC は 204000 ng h/ml) と判断された (b) メトホルミン併用経口投与によるラット胚 胎児発生試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 023364) サキサグリプチン及びメトホルミンを併用経口投与した際の母動物毒性, 発生毒性, 母動物の 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 74

トキシコキネティクスを検討するために, サキサグリプチン / メトホルミンを 0/0,5/200,25/200 mg/kg/ 日の用量で Crl:CD(SD) 系ラットの妊娠 6~15 日 (GD 6-15) に 1 日 1 回反復経口投与した サキサグリプチン安息香酸塩は 1.25% Avicel 溶液に懸濁し 1 ml/kg の液量で, メトホルミンは水に溶解し 4 ml/kg の液量で, すべての群に投与した 対照群にはそれぞれの媒体を同容量投与した 各群には 34 匹の動物を割り付け, その内の 12 匹は GD 14 又は 15 に血液学, 臨床生化学, トキシコキネティクスパラメーターの評価に使用し, その後安楽殺した 残りの各群 22 匹を母動物毒性, 発生毒性の評価用とし,GD21 の帝王切開及び剖検前に, 生存, 臨床症状, 体重及び摂餌量を評価した (GD 3~21) これらのラットの胎児については, 体重 ; 性別 ; 外形, 軟組織及び / 又は骨格変化の観察を実施した サキサグリプチン / メトホルミンの 10 日間投与後, 母動物のサキサグリプチン及び代謝物 (BMS-510849) の C max 及び AUC は,5/200 及び 25/200 mg/kg/ 日の用量間でその用量に比例して増加した 母動物におけるメトホルミンの暴露は両併用投与群間で同等であり, サキサグリプチンとの併用による薬物動態学的相互作用は無いことが示された サキサグリプチンとメトホルミンの併用投与によって胚致死性も催奇形性も認められなかった なお,25/200 mg/kg/ 日において 2 例の胎児に頭蓋脊椎裂が認められたが, その発生は背景値として認められる範囲内の頻度であり, 更にその後追加実施した試験 ( 次項, 報告書番号 024148) において, メトホルミンの投与量を増加した 25/600 mg/kg/ 日の用量においても胎児に頭蓋脊椎裂は認められなかったことより, 併用投与による影響ではなく自然発生性変化であると考えられた 母動物において, 薬物投与に関連した変化として,5/200 及び 25/200 mg/kg/ 日における血小板数の減少 ( 対照群の 0.84~0.87 倍 ) 及び血清アルブミンの低下 ( 対照群の 0.94~0.96 倍 ),25/200 mg/kg/ 日における白血球数及びリンパ球数の増加 ( それぞれ対照群の 1.24 倍及び 1.31 倍 ) がみられた ただし, これらの変動はごく軽度であり, 毒性学的に意味の無い変化と考えられた 結論として, サキサグリプチン / メトホルミンの併用投与に対して妊娠ラットは著明な毒性を示さず,25/200 mg/kg/ 日までの用量において胚 胎児発生に影響を及ぼさなかった 胚 胎児発生に対する無毒性量 25/200 mg/kg/ 日におけるサキサグリプチン,BMS-510859 及びメトホルミン全身暴露 AUC はそれぞれ 8860,3510 及び 89300 ng h/ml であった ( 臨床投与量サキサグリプチン / メトホルミン :5 mg/2000 mg でのヒト AUC と比較し, それぞれ 114,16 及び 4 倍 ) (c) メトホルミン併用経口投与によるラット胚 胎児発生試験 (2) (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024148) サキサグリプチン及びメトホルミンを併用経口投与した際の母動物毒性, 発生毒性, 母動物のトキシコキネティクスを検討するために, サキサグリプチン / メトホルミンを 0/0,25/0,0/600, 25/600 mg/kg/ 日の用量で Crl:CD(SD) 系ラットの妊娠 6~15 日 (GD 6-15) に 1 日 1 回反復経口投与した サキサグリプチン安息香酸塩は 1.25% Avicel 溶液に懸濁し 1 ml/kg の液量で, メトホルミンは水に溶解し 4 ml/kg の液量で, すべての群に投与した 対照群にはそれぞれの媒体を同容量投与した 各群には 30 匹の動物を割り付け, GD 13 にはその内の 15 匹から血清化学検査のために採血 ( 投与 2 及び 24 時間後 ) を行い,GD 15 には残りの動物からトキシコキネティクス用に採血 ( 投与 0.5~24 時間後 ) した すべてのラットについて,GD21 の帝王切開及び剖検前に, 生存, 臨床症状, 体重及び摂餌量を評価した (GD 3~21) これらのラットの胎児については, 体重 ; 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 75

性別 ; 外形, 軟組織及び / 又は骨格変化の観察を実施した 母動物におけるメトホルミンの暴露はメトホルミン単独群とサキサグリプチン併用群で同等であったが, サキサグリプチン及び BMS-510849 の暴露はサキサグリプチン単独群とメトホルミン併用群間ではごく軽度な違いがみられた その違いとは, メトホルミン併用群におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の C max が単独群の 46%~70% を示したことであるが,AUC は全般的に両群で同等又は併用群で軽度高かった サキサグリプチン単独群の母動物及び胚 胎児に異常はみられなかったが, メトホルミン単独群では GD 6-7 に母動物の一過性の体重減少 (1.9 g 減少 ) と摂餌量の減少 ( 対照群より 24% 少ない ) がみられた サキサグリプチン / メトホルミン併用群では体重増加抑制と摂餌量低下が持続的にみられ,GD 13-18 期間の母動物体重は対照群より 5-6% 低値であった 更に, 併用群の母動物において, いずれも母動物の摂餌量低下に関連した二次的なものと考えられる, 軽度で有害ではない変化として, 血清トリグリセライドの増加 ( 対照群の 1.43 倍 ), 血清尿素窒素, 総蛋白及びアルブミンの低下 ( それぞれ対照群の 0.79~0.88 倍,0.95 倍,0.92~0.93 倍 ) がみられた サキサグリプチンとメトホルミンの各単独群及びサキサグリプチン / メトホルミン併用群いずれにも胚致死作用や催奇形性作用はみられなかった 薬物に関連した胎児の変化として, メトホルミン単独群及びサキサグリプチン / メトホルミン併用群において回復性のある低頻度な波状肋骨のみが認められた 結論として, サキサグリプチン又はメトホルミン単独投与では母動物に有害な作用はみられなかったが, サキサグリプチン / メトホルミン併用投与によりごく軽度な母動物毒性がみられた しかしながら, それぞれ単独又は併用投与されたいずれの群においても胚致死作用や催奇形性作用はみられなかった サキサグリプチン / メトホルミンの 25/600 mg/kg/ 日投与によるサキサグリプチン,BMS-510859 及びメトホルミン全身暴露 AUC はそれぞれ 8070,3640 及び 197000 ng h/ml であった ( 臨床投与量サキサグリプチン / メトホルミン :5 mg/2000 mg でのヒト AUC と比較し, それぞれ 103,17 及び 10 倍 ) (d) メトホルミンの妊娠ウサギにおける 13 日間投与トキシコキネティクス及び耐性試験 (GLP 非適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024149) メトホルミンをウサギの妊娠 7~19 日に経口投与し, その耐性及び毒性の評価, 母動物におけるメトホルミンの全身暴露評価, サキサグリプチン / メトホルミン併用投与胚 胎児発生試験の投与量選択, を目的に本試験を実施した 0( 媒体 ),25,50,100,150 mg/kg/ 日の用量で, メトホルミンを各群 6 匹の New Zealand White ウサギの妊娠 7~19 日 (GD 7-19) に経口投与した メトホルミンは水に溶解し, 対照群には媒体の水を 2 ml/kg の液量で投与した 母動物の一般状態, 体重, 摂餌量, トキシコキネティクス, 血清生化学, 肉眼的胎盤異常, 胎児の肉眼的外形変化によって評価した メトホルミンのトキシコキネティクスパラメーターは GD 19 の投与後 24 時間にかけて採取した血漿の分析によって測定した 100 及び 150 mg/kg/ 日では過多な死亡のため, トキシコキネティクスサンプルは評価できなかった GD 29 に帝王切開を実施した GD 19 において, メトホルミンの全身暴露 (AUC) は,25~50 mg/kg/ 日の間では用量依存的に 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 76

増加した 25 及び 50 mg/kg/ 日のメトホルミンに動物は著明な毒性を示さなかった : 胎児の肉眼的外形変化は見られず, 母動物の一般状態, 体重, 摂餌量にも毒性的影響はみられなかった 一方,100 及び 150 mg/kg/ 日のメトホルミン投与群では, 死亡又は人道的理由から安楽殺されたため,GD17 以後に生存した母動物はいなかった その内訳は,4 例が死亡 (100 mg/kg/ 日では GD 11 に 1 例, 150 mg/kg/ 日では GD 11,15,16 に各 1 例 ) し, 流産した 1 例が安楽殺 (100 mg/kg/ 日で GD 16 に流産 ) され,7 例が人道的理由から安楽殺された (100 mg/kg/ 日では GD 15 に 3 例,GD 16 に 1 例,150 mg/kg/ 日では GD 12 に 2 例,GD 16 に 1 例 ) これらの動物には, 形を成さない便又は無便, 振戦, 痙攣, 口腔又は外陰部からの分泌物, 運動失調, 正向反射消失, 異常発声, 活動性低下, 労作呼吸がみられた これらの群の母動物は投与期間中に体重が減少し, 対照群の平均値と比べて GD 15 において 100 mg/kg/ 日では 13%,150 mg/kg/ 日では 5% の減少がみられた GD 7 ~16 において,100 及び 150 mg/kg/ 日の平均摂餌量は対照群の平均値と比べてそれぞれ 31~69% 及び 40~98% にまで減少していた 要約すると, メトホルミン 50 mg/kg/ 日以下 (AUC は 23800 ng h/ml 以下 ) の用量において, 妊娠ウサギは 13 日間の投与に臨床的に著明な毒性を示さなかった (e) メトホルミン併用経口投与によるウサギ胚 胎児発生試験 (GLP 適用 ) ( 概要表 2.6.7.17, 報告書番号 024150) サキサグリプチン及びメトホルミンを併用投与した際の胚 胎児発生に及ぼす影響及び母動物のトキシコキネティクスを検討するために, サキサグリプチン / メトホルミンを 0/0,40/0,0/50 及び 40/50 mg/kg/ 日の用量で New Zealand White ウサギ ( 各群 30 匹ずつ ) の妊娠 7~19 日 (GD 7-19) に 1 日 1 回反復経口投与した サキサグリプチン ( フリー体 ) は酸性水に溶解し 4 ml/kg の液量で, メトホルミンは水に溶解し 2 ml/kg の液量で, すべての群に投与した 対照群にはそれぞれの媒体を同容量投与した すべてのウサギについて, 生存, 臨床症状, 体重及び摂餌量を評価し, GD 18( 投与 1,4 及び 24 時間後 ) には血清化学的検査を,GD 19( 投与 0.5~24 時間後 ) にはトキシコキネティクス用に採血を,GD 29 には胎児検査のために帝王切開を実施した これらのウサギの胎児については, 体重 ; 性別 ; 外形, 軟組織及び / 又は骨格変化の観察を実施した サキサグリプチン及びメトホルミンをそれぞれ単独投与した場合と併用投与した場合のサキサグリプチン,BMS-510849 及びメトホルミンの母動物における全身暴露は, 全般的に同等であった サキサグリプチン 40 mg/kg/ 日単独投与ウサギは著明な毒性を示さず, 母動物及びその胎児に薬物に関連した変化はみられなかった メトホルミン 50 mg/kg/ 日単独投与群では,GD 15 に 1 匹が死亡した (GD 9 には 0.1 kg の体重減少,GD 12 以後摂餌量が低下していたが, 症状は認められなかった ) が, その他の母動物に異常はみられず, 胎児の発生毒性もみられなかった サキサグリプチン / メトホルミン併用投与群では 12 匹が投与に耐えられず,8 匹が GD 15~23 日に死亡し,3 匹が GD22~24 日に瀕死のため切迫安楽殺し,1 匹は妊娠 25 日に流産したため安楽殺した 安楽殺又は死亡前に, これらの母動物には肛門周囲被毛の汚れ, 無便 / 少量便 / 形を成さない便, 体重減少, 食欲減退, 脱水及び瀕死状態と関連する血清化学的変化 ( 血糖, トリグリセ 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 77

ライド, 尿素窒素, クレアチニン及びリンの増加, 重炭酸塩の低下 ) がみられた 剖検所見としては摂餌量低下の二次的と思われる胆嚢の大型化だけがみられた 瀕死 / 死亡の原因は特定できなかったが, 薬物との関連性が考えられた 計画屠殺時まで生存した 17 匹 ( 妊娠していたウサギは全部で 29 匹であった ) の母動物においては, 併用投与に関連した母動物毒性は非常に弱く, 胚致死性も催奇形性も認められなかった これらの母動物にみられた変化は, 便の減少, 形をなさない便, 投与期間後のごく軽度な体重減少 (GD 21~29 において対照群より 2% 減少 ), 一過性の摂餌量減少 (GD 12~17 において対照群より 16~26% 減少 ) であった 帝王切開時の検査において薬物に関連した変化はみられなかった 薬物に関連した変化として, 胎児体重の低下 ( 対照群より 7% 低値 ) 及び低頻度 ( 胎児の 5.8%, 母動物の 29.4%) ではあったが舌骨の不完全化骨 ( 発達遅延 ) がみられた 結論として, サキサグリプチン単独投与に妊娠ウサギは著明な毒性を示さなかったが, メトホルミン単独投与では 1 匹の妊娠ウサギが死亡した しかし, いずれの単独投与においても薬物に関連した発生毒性はみられなかった サキサグリプチン / メトホルミン併用投与による母動物毒性は 30 匹中 12 匹において強く認められ, それは死亡, 瀕死, 流産をもたらした 計画屠殺時まで生存した併用投与母動物において, その母動物毒性は非常に弱く, これらの母動物の胎児にみられた毒性はごく軽度な低体重及び低頻度な発達遅延 ( 舌骨の不完全化骨 ) だけであった サキサグリプチン / メトホルミン 40/50 mg/kg/ 日併用投与におけるサキサグリプチン, BMS-510859 及びメトホルミン全身暴露 AUC はそれぞれ 20200,76500 及び 22000 ng h/ml であった ( 臨床投与量サキサグリプチン / メトホルミン :5 mg/2000 mg でのヒト AUC と比較し, それぞれ 259,357 及び 1.1 倍 ) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.8 その他の毒性試験 78

2.6.6.9 考察及び結論サキサグリプチンの動物における毒性は,ICH 及び GLP に従った以下の一連の試験によって総合的に評価した : ラット, イヌ及び / 又はサルにおける単回投与及び反復投与試験,in vitro 及び in vivo の一連の遺伝毒性試験, マウス及びラットのがん原性試験, ラット及びウサギにおける生殖発生試験,in vitro 及び in vivo( マウス及びウサギ ) の局所刺激性試験, ラットにおける免疫毒性試験, 更に, 雄ラット特異的脳病変のシアンに関連した機序の特定並びにサルにみられた潰瘍性皮膚病変及び多組織における単核細胞浸潤の特徴付けのための数多くの探索的試験 安全性薬理検討項目 ( 心循環系, 中枢神経系, 呼吸器系 ) は, 反復投与毒性試験の一部に盛り込んだ 主要な反復投与毒性試験,in vivo 遺伝毒性試験, 胚 胎児発生試験及びがん原性試験の用量設定を助けるために, げっ歯類, ウサギ, イヌ及びサルを用いた経口投与用量設定試験を適切に実施した 更に, 以下のことを評価するために試験を実施した : 雄ラット特異的神経毒性に対するサキサグリプチンの主活性代謝物である BMS-510849 の役割,BMS-510849 の定量におけるより特異的な生物分析法を用いた暴露の違い, マウス及びラットにおけるサキサグリプチンの安息香酸塩及びフリー体のトキシコキネティクス同等性, 原薬及び製剤に存在する 2 種の不純物 / 分解物 ( 類縁物質 A* 及び類縁物質 E* ) の安全性, メトホルミン併用投与による安全性 サキサグリプチンは高用量においてのみ急性毒性を示した マウス及びラットでは 2000 mg/kg まで, サルでは 25 mg/kg までの単回経口投与に著明な毒性はもたらされなかった 死亡は, げっ歯類では 4000 mg/kg で, サルでは 50 mg/kg でみられた サキサグリプチンの反復投与後,2 種又はそれ以上の動物種でみられた影響は,1) 皮膚病変, 2) 脾臓及び / 又は骨髄リンパ性過形成,3) 多組織における単核細胞浸潤,4) 肺組織球症,5) 胸腺リンパ性枯渇,6) 血小板数減少, であった 1) 皮膚病変は, イヌ及びサルにみられたが, その経過, 臨床的及び病理組織学的な像には動物種間で大きな違いがあった イヌにおいては, 用量に相関した足の肉球表面の表皮 / 角質の糜爛 ( 肉球の裂傷 ) が, 約 7 ヵ月の連続投与後にみられた これらの肉球 ( 足の腹側面, サルにはみられない解剖学的部位 ) のごく軽度から軽度で小さい限局した病巣は, 限局した上皮変性 ( 基底部表皮及び基底膜の露出を伴わない表層上皮細胞の空胞化及び剥離 ), 軽度な限局性皮膚出血及び単核細胞浸潤によって特徴付けられた これらの病変は, サルの高用量で早いものでは 2 週目からみられた変化とまったく対照的であり, サルの皮膚病変は, 手及び足の腹側よりもむしろ背側に限局し, ごく軽度から重度な炎症反応を伴う限局的ないし限局性に拡大した潰瘍性病変であった ヒトにおける臨床推奨用量 5 mg 投与時の全身暴露 AUC と比べて, 皮膚変化に対する無毒性量は, イヌでは 4~5 倍, サルでは 1~3 倍の AUC を示す用量であった 重要なことは, イヌやサルにみられた皮膚病変に相当する変化は, サキサグリプチンのヒトにおける治験においてみられていないことであり, 更に, サルにおける皮膚変化はサキサグリプチン唯一のものではないことである ビルダグリプチン (Galvus ) もサキサグリプチンと同様に皮膚病変を生じ, 更に重度な手 / 足の浮腫及び皮膚 ( 尾及び指 ) の水疱というサキサグリプチンでは見られない著明な臨床的影響が, 臨床用量 100 mg の 10 倍量の投与でみられた サキサグリプチンでは, 臨床推奨用量 5 mg の 120 倍までの投与においても皮膚の浮腫及び水疱はみられていない 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 79 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

2) 脾臓及び / 又は骨髄リンパ性過形成は, ラット及びサルに通常見られる形態学的所見である ごく軽度から軽度な脾臓リンパ性過形成が,6 ヵ月間 20 mg/kg/ 日以上投与されたラットにみられたが, 広い用量範囲 (25~300 mg/kg/ 日 ) で 82 週まで, 又は 150 mg/kg/ 日を 104 週まで投与されたラットにはみられなかった ラットにおける脾臓リンパ球フェノタイピング及び血清免疫学的分析によって,CD3+ T リンパ球及び CD45RA+ B リンパ球, 血清 IgG 及び IgM が, 脾臓の重量増加 ( 長期投与では過形成あり ) と共に増加していたことより, リンパ性過形成は非特異的なものと考えられた ただし, これらの所見は, サキサグリプチンによる DPP-4- 蛋白分解性開裂の抑制が, 免疫調整に関与する他の酵素前駆体にまで影響を及ぼしたかもしれないので, 過剰な薬理学的作用を反映しているのかもしれない DPP-4- 蛋白分解性酵素活性は, リンパ球機能発現経路に関与する多種の分泌サイトカイン / ケモカインの調節に不可欠なものである 8, 9, 10 免疫調節性酵素前駆体に対する DPP-4- 蛋白分解は, 増殖又は免疫グロブリン合成というようなリンパ球機能を亢進的又は抑制的に調節する, 刺激性又は抑制性分泌蛋白活性をもたらすかもしれない したがって, 免疫毒性試験 ( 第 2.6.6.8.1 項 ) において, サキサグリプチンは目標としない非酵素的 DPP-4/CD26 活性阻害を介した, 抗原又は細胞分裂促進物質による T 及び B リンパ球機能に悪影響をもたらさなかったが, 目標とするサキサグリプチンの DPP-4/CD26 酵素活性阻害が, 分泌蛋白の直接的又は間接的な変化を介して非特異的なリンパ性過形成をもたらしたかもしれない 非常に重要なことは, リンパ性過形成はごく軽度から軽度で, 非進行性で, ラットでみられたように時間経過と共に回復することである 特に,300 mg/kg/ 日までの用量のサキサグリプチンを 82 週 ~104 週間投与されたラットにおいて, リンパ腫を含むリンパ性増殖疾患も自己免疫も見られず, この軽度な免疫系活性は長期投与後に明らかな組織形態学的続発症をもたらさなかったことに注目すべきである 同様に, 脾臓のリンパ性過形成 ( ごく軽度で回復性あり ) がラット以外の動物種としてサルにみられたが,3 mg/kg/ 日を 3 ヵ月投与されてもリンパ性増殖疾患も自己免疫も認められなかった 更に, マウスでは 600 mg/kg/ 日までを 104 週間, イヌでは 10 mg/kg/ 日までを 12 ヵ月投与されても, 脾臓を含むいずれのリンパ性臓器にもリンパ性過形成は発現せず, リンパ性過形成はラット及びサルにおける種特異的なものであると考えられた 脾臓及び / 又は骨髄のリンパ性過形成は, ビルダグリプチン及びシタグリプチン (Januvia ) を亜急性から亜慢性投与されたサルにも見られていることは注目に値する これらの所見は更に, リンパ性過形成がサルにおける薬理学的作用を介したクラスエフェクトであるかもしれないことを支持した サキサグリプチンのリンパ性過形成に対する無作用量における全身暴露は, 臨床推奨用量 5 mg における全身暴露に対して, ラットでは 3~9 倍 (6 ヵ月試験 ), サルでは 1~3 倍 (3 ヵ月試験 ) であった 両動物種において, リンパ性過形成は休薬により回復した 3) 種々の臓器及び組織における単核細胞浸潤は,3 種の動物にみられ, ラット及びイヌでの発現頻度は限定的なものであり, サルでの頻度は他より高かった 3 動物種すべてにおいて, 単核細胞浸潤は時々ごく軽度な実質の傷害をもたらしたが, 実質に明確な再構築修復反応を引き起こすほどの強い傷害ではなく, 回復性があり, リンパ性増殖性疾患 / 腫瘍 / 自己免疫反応にまで進行するものではなかった 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 80

3-1) 単核細胞浸潤の概括的情報単核細胞浸潤は主にリンパ球から構成され, 時には大食細胞も伴う限局性の白血球集積である リンパ球及び大食細胞は炎症性細胞であるが, 組織内での免疫監視, 抗原処理の役目も果たし, 対照群の動物に通常みられる所見である 単核細胞は, 組織内にしばしば不規則に位置するが, 他の炎症の特徴であるうっ血, 浮腫, 肉芽腫形成, 顆粒球, 及び / 又は実質組織の傷害, というものを伴わない場合の浸潤は炎症過程を示すものではない それゆえ, このような状況においては浸潤の存在それ自身が追加的リスクとなるものではない 唯一の例外は過敏状態であり, その場合は炎症自体が第一次変化として組織傷害をもたらす サキサグリプチンの場合, サルの高用量における速やかな変化の発現, 及び過敏性の可能性を特別に検討した結果から, 観察された炎症又は単核細胞浸潤のいずれも過敏性が原因ではないことが示された 更に重要なことは,1 年間投与イヌ試験及び 2 年間投与げっ歯類がん原性試験において, サキサグリプチン関連の単核細胞浸潤は変性性組織変化を引き起こさず, 投与期間の長期な延長によってもその程度は増強されなかった, という結果が得られていることである 3-2) サルにおける自然発生所見としての単核細胞浸潤 021432 及び 019619 2 本のサル反復経口投与毒性試験報告書番号の結果は, 対照群のサルの多数の組織に単核細胞浸潤が広く存在することを示している 用量設定 / 探索試験 (GLP 非適用 ) において, 3 ヵ月 2 mg/kg/ 日の投与により, サキサグリプチンに関連した影響として, 種々の臓器に単核細胞浸潤の程度又は分布の増加をもたらしていた しかしながら, 背景値の頻度 / 程度からの増加はごくわずかであり, 主たる反復投与毒性試験 (GLP 適用 ) で同じ期間,3 mg/kg/ 日を投与されたサル ( 血漿中サキサグリプチン暴露量は用量依存的に高かった ) においてこの影響は再現されなかった これは, 用量設定 / 探索試験における投与動物と対照動物間の生物学的ばらつきに起因していた可能性も考えられた 実際, 単核細胞浸潤のみられた臓器は, 最近公表された正常対照群サルにおいて白血球浸潤がある程度の頻度で自然発生的にみられる臓器のリスト 6 中に含まれている サキサグリプチン投与試験の対照群のサルを考慮した場合, 標準的に採材する 45 の組織の内 31 の組織に単核細胞浸潤及び / 又は炎症の所見がみられた 影響を受けていない組織の多くは, 骨髄, 胸腺又はリンパ節であったが, これらの組織ではこの診断が容易ではないからであろう 両試験の対照群のサルにおいて, 少ない例でも 3 種の組織にこのような細胞浸潤又は炎症がみられ, 同群の動物においてこれらの影響を受けていた組織の 1 例あたりの平均数は 7であった BMS 社の New Brunswick 施設 ( 報告書番号 021432 試験が 20 年に実施された施設 ) において 20 年 ~20 年にかけて実施されたサル試験を調査したところ, 最低一つの組織について病理組織学的検査を行っていた試験が 19 試験あった これらの試験において,138 匹の対照群サルが評価され, この内の 61 匹 ( 約 50%) が少なくとも一つの組織に単核細胞浸潤の診断 ( 又は同義の診断 ) がされていた これらの細胞浸潤 / 炎症はサルにおいて通常みられる所見であるということは, 公表されている文献によっても支持されている 最近の包括的概説文献は基本的にすべての臓器にこのようなタイプの変化が存在することを示している この文献において, 炎症性細胞浸潤はこの動物種を用いる毒性試験において最もありふれた偶発的所見であった 6 これらの所見が毒性の臨床的症状や他の有害作用とは関連していないという事実は, これらは 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 81

病気の原因ではなく, ごく軽度で孤立して見られる場合には影響を受けた臓器における病態の一過程を示すものではないという考えを支持するものである これらの細胞浸潤の原因として過敏性が除外されるような場合, この考えは特に当てはまる 3-3) ラットのサキサグリプチン投与試験における単核細胞浸潤いくつかのラットを用いたサキサグリプチン毒性試験において, 対照群のレベルをごく軽度上回るこれらの細胞浸潤の増加がサキサグリプチン投与動物にみられたが, 細胞浸潤のみられた対照群の動物と同様に, その他の組織変化は伴っておらず, 炎症とはまったく考えられなかった 6 ヵ月反復投与毒性試験において,100 mg/kg/ 日又はそれ以下の用量においてこれらの変化はみられず, ヒトの暴露量の 280 倍 ( 雄 )~619 倍 ( 雌 ) の開きがあり, 十分な安全域が存在した これらの変化が良性であることは,2 年間試験において非常に高い用量を投与されても, 変性性組織変化もリンパ増殖性疾患も認められなかったというデータによって示されている 免疫毒性試験においても, サキサグリプチンはげっ歯類の免疫機能に影響を及ぼさなかったことが示されている したがって, 単核細胞浸潤の軽度な増加の発現機序は不明であるが, 十分な安全域があり, 組織の形態学的変化を伴わないこと, 及び免疫機能に影響を及ぼしていないことは, この変化がヒトにおける投与に対して懸念すべきものではないことを示している 今日までヒトにサキサグリプチンを投与した際に感染症又は過敏症といった免疫系が関連する有害事象の発現率が大きく上昇するようなことはなく, この結論に一致している 3-4) イヌのサキサグリプチン投与試験における単核細胞浸潤イヌ試験において, サキサグリプチンに関連した唯一の単核細胞浸潤は肉球の皮膚に発現し, その肉球には裂傷及びその他の上皮変化も伴っていた 炎症性細胞浸潤は, 微生物及び他の異物に対する上皮のバリアが破られたところに発生が予測される事象であるので, この場合の浸潤は, 独立した事象又はこの変化過程の第一次原因というよりはむしろ, この部位の皮膚変化に対して予測される反応と考えられる いずれにしても, イヌにおける単核細胞浸潤は臨床的に明らかな皮膚変化と完全に関連して発生しているので, もしこれらの所見がヒトにおいて発生したなら臨床的に容易に検出できるが, 今までそのような例は認められていない 3-5) 一例のサルにみられた膵臓における慢性炎症と膵炎との関連性膵臓において, ごく軽度な単核細胞浸潤が用量設定 / 探索試験のサキサグリプチン投与群のサルにみられたが, 当該試験及び 3 ヵ月の主試験の対照群にもみられていたことより, これらは偶発的なものと考えられた 3 ヵ月の主たる反復投与毒性試験 (GLP 適用 ) において,3 mg/kg/ 日群の雄 1 例の膵臓にごく軽度な限局性慢性炎症がみられた この変化は膵臓機能の障害 ( 体重減少, 下痢, 油性便等の臨床症状 ) を伴わず, 臨床的状況において重篤で明らかな疾患として一般的に理解されている 膵炎 とみなされるものではなかった 同様の変化は対照群のサル 6 及び膵炎に罹っていないヒトの検 19 死標本の両者において偶発的な所見として認められ, 更にこれらの場合においても臨床的所見 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 82

は無く, これらの変化は 膵炎 と解釈されることはなかった 用量設定 / 探索試験の 10 mg/kg/ 日群の 2 匹のサルの膵臓に亜急性炎症がみられたが, 同様の炎症は他の多数の臓器 ( 例えば, 前立腺, 精巣上体, 盲腸, 食道, 肺, 神経など ) にも認められているという非特異的な状態でみられたものである これらの例においても, この炎症は膵炎というような臓器特異的疾患の症候を示していなかった 要約すると, ごく軽度な単核細胞浸潤 / 炎症はこの動物種において自然発生的に生じる所見であり, 膵炎と解釈することはできない 膵炎が患者に対する可能性のあるリスクであるということを示唆するような, サキサグリプチンの非臨床データは無い 膵炎は容易にモニターできる臨床的に明らかな疾患であることから, サキサグリプチンを服薬するヒトにおける膵炎のリスクは, 臨床データを用いて評価することが最適である それゆえ, GLP アナログ及び他の DPP-4 阻害剤に関した懸念を考慮して, サキサグリプチンによる膵炎の発生を臨床試験時及び販売時に適切にモニターし, その結果を申請資料に添付した PSUR 中にまとめた 簡単に言うと, 臨床試験において, サキサグリプチン投与患者とプラセボ / 比較薬投与患者における膵炎の発生頻度は同様であった 3-6) サルの乳腺における単核細胞浸潤 3 ヵ月の主たる反復投与毒性試験 (GLP 適用 ) において, 単核細胞浸潤の程度がサキサグリプチンに関連して増加していた唯一の組織が乳腺であった この変化は, 変性又は増殖性変化, 進行中の炎症過程を示す像のいずれも伴っていなかった 先行して実施した用量設定 / 探索試験において, この所見はサキサグリプチン投与群及び対照群の両群のサルにおいて同程度で認められており, 何ら悪影響を受けていない対照群の動物に自然発生性所見としてみられることを示している 3 ヵ月試験では先行実施した試験よりも低用量において乳腺に単核細胞浸潤の程度が増加していたことの説明として, 何らかの原因による非特異的全身性炎症反応を単に示しているもの, 又は生物学的ばらつきに関連したものである, と言えるかも知れないが明確ではない いずれにしても, この細胞浸潤自身は, 有害なもの, 又は何らかの有害変化の原因, のいずれとも考えられなかった 同様の単核細胞浸潤は正常ヒト乳腺組織にも通常みられる所見でもあり, 偶発的なものと考えられている 20 3-7) サル皮膚病変の病因としての単核細胞浸潤の役割複数の DPP-4 阻害剤で知られている皮膚病変の病因は現時点で十分に解明されておらず, 同様の病変はヒトにおいてはみられていないことより, ヒトにおけるリスク評価への外挿性は不明のままである 単核細胞浸潤が皮膚病変の第一次的原因として作用しているという報告は無い サルの用量設定 / 探索試験 ( 最も重篤な皮膚病変がみられた ) において実施した免疫組織学的検討では, 皮膚の血管系又は上皮細胞系変化に対する自己免疫 ( 過敏性 ) 機序と一致する, 抗体又は免疫複合体の沈着は示されなかった 更に, 投与 6 日後からの尾における壊死性皮膚変化の発生は, サキサグリプチン又はサキサグリプチン投与によって誘導された何らかの自己免疫に対する免疫反応として発生するには短すぎる時間である これらの病変の程度には明らかな用量反応性があり, 過敏性機序とは一致しない 対照的に, 広範な潰瘍性皮膚病変は, 外部の微生物に対する皮膚バリアの障害に関連した重篤な限局性及び ( その程度の強さに依存して ) 全身性炎症の 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 83

原因となることが予測される したがって, 皮膚における単核細胞浸潤又は炎症は皮膚病変の原因ではなく, おそらく皮膚病変に起因した変化と考えられた よって, これらの細胞浸潤の存在が更なるリスクの可能性を示しているとは考えられない 3-8) 単核細胞浸潤とサキサグリプチンの関連性に関する結論ラットにおいて, 単核細胞浸潤は短期及び長期投与試験では, 眼球付属腺 ( ハーダー腺 ) 及び肝臓を主としたいくつかの組織に, 更に 104 週間高用量 (150 mg/kg/ 日以上 ) 投与後には肺及び尿生殖路 ( 膀胱及び精巣上体 ) にもみられた ラットにおける限定された臓器の全般的にごく軽度な単核細胞浸潤は, 高投与量及び高暴露においてのみ発現したものであるので, ヒトに対してはほとんど意味が無いものと考えられた イヌにおいては, サキサグリプチンに関連した唯一の単核細胞浸潤は肉球の皮膚に発現し, その肉球には裂傷及びその他の上皮変化も伴っていたことより, この部位の皮膚変化に対した反応と考えられた サルにおける 1-3 ヵ月用量設定 / 探索試験において, 臨床推奨用量での暴露の 7 倍以上の暴露で, 皮膚, 腺性臓器 ( 唾液腺, 乳腺, 甲状腺, 膵臓など ), 生殖臓器, 脳, 腎臓, 膀胱を含む多数の組織に単核細胞浸潤がみられた 主要な 3 ヵ月サル試験において, 無毒性量での暴露はヒト 5 mg 投与時暴露と同等であったが, 皮膚及び乳腺への単核細胞浸潤は臨床推奨用量の 20~28 倍の暴露を受けたサルでみられた この単核細胞浸潤は, サキサグリプチンに関連した皮膚及び / 又は血管系変化の原因というよりもむしろ結果として考えられ, 病変の発現時期, 用量反応性, 免疫グロブリン染色陰性は, 自己免疫又は他の過敏性反応を示唆していなかった このような状況においては浸潤の存在それ自体が追加的リスクを示すものではなく, 過剰な薬理学的作用 ( リンパ性 5, 6 過形成に対して記述したように ) 及びサルに通常見られる背景的変化の悪化の結果と推測された 要約すると, 細胞浸潤の特異的な発現機序は解明されなかったが, 各動物種において無毒性量は特定され, 更に,1 年間投与イヌ試験及び 2 年間投与げっ歯類がん原性試験において, サキサグリプチン関連の単核細胞浸潤は変性性組織変化を引き起こさず, 投与期間の長期な延長によってもその程度は増強されなかった, という結果が得られていることである 4) 軽度な肺組織球症が, 広い用量範囲 (75 mg/kg/ 日以上 ) 及び種々の試験期間 (104 週まで ) で実施したすべてのラット反復投与毒性試験において一貫してみられた この所見は, ビルダグ リプチンで示唆されたような過剰な薬理作用の結果 17 かも知れないが, マウスでも高用量 (600 mg/kg/ 日以上, 臨床推奨用量での AUC の 550 倍以上 ) で 3 ヵ月投与後, 肺組織球症を発生したので, この所見はげっ歯類に特異的なものかも知れなかった サキサグリプチン投与試験において肺組織球症の発現頻度及び / 又は程度は増加していたが, 質的に同様の所見は対照群のラットに頻繁にみられるため, 通常みられる背景所見の悪化と考えている 104 週間ラットがん原性試験において, 肺組織球症 ( Infiltrate, Macrophages, Alveolus とコードされている ) は雄の対照群で 120 例中 47 例, 雌の対照群で 120 例中 44 例と, 対照群動物の約 4 割にみられた この所見は臨床的に有害な作用と関連しておらず, これ以外にサキサグリプチン 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 84

に関連する肺の病理変化はみられないことより, サキサグリプチン投与により増加はしていたが, この肺組織球症は動物に対して有害ではなく, 正常な機能状態を示しており, それゆえ毒性学的意義は乏しいと推定することができる 更に, ラットがん原性試験における肺組織球症に対する無作用量 (25 mg/kg/ 日 ) での暴露は, ヒト暴露量と比べて 112 倍という, 非常に広い安全域があった 機序は不明であるが, 肺内の大食細胞は肺サーファクタント内に存在し,Ⅱ 型肺胞上皮細胞に 21 おける GLP-1 活性に関連したサーファクタント産生の軽度な増加が大食細胞の増加の理由かも知れなかった 10 mg/kg/ 日までの用量を 12 ヵ月間投与されたイヌ,3 mg/kg/ 日までの用量を 3 ヵ月間投与されたサルにおいて, 肺組織球症はみられなかった 5) 胸腺のリンパ性枯渇がラット及びイヌの全身高暴露 ( それぞれ, 臨床推奨用量での暴露の 3050 倍及び 650 倍以上 ) においてみられた イヌにおいてはこの暴露で切迫屠殺例がみられ, ラットではより高い暴露で死亡がみられた この胸腺のリンパ性枯渇は, 毒性に付随して通常みられるストレス関連の二次的反応と考えられ, サキサグリプチンの高暴露とのみ関連性があった 6) 血小板数減少がラット, イヌ, サルに認められた ラットにおけるごく軽度から軽度な血小板数減少は, 高暴露動物 ( 臨床推奨用量での AUC の 335 倍以上 ) に限定され,104 週間までの長期投与試験を含めたいずれの試験においても, 骨髄での血小板成熟の変化を示す形態学的変化との関連性はなかった イヌにおける血小板数の減少は, 臨床推奨用量の 580 倍以上でみられた, 出血を含む重度で時々致死的であった消化管毒性の二次的変化としてみられたため, 消費性変化と考えられた サルにおいて, 臨床推奨用量での暴露の 77 倍の暴露を受けた 1 例で血小板減少症 ( 投与前値の 6% にまで低下 ) がみられた このサルの血小板数は休薬により正常値に回復し, 同じ用量での投与再開でも再発せず, 免疫を介した変化とは考えられなかった したがって, 血小板数減少は 3 動物種で共通していたが, 臨床での暴露に相当する暴露を受けたいずれの動物種においても血小板の変化は無く, 高用量のみでの影響と思われた 前述した動物種間で共通した変化と対照的に, サキサグリプチンは特定の動物種に限定された毒性を生じた それは,(1) 雄ラットにおけるシアン関連神経毒性,(2) イヌにおける消化管毒性,(3) サルにおける糸球体症であった (1) 反復経口投与毒性試験において,3 ヵ月間 300 mg/kg/ 日 ( 臨床推奨用量の 3247 倍 ) まで, 6 ヵ月間 100 mg/kg/ 日 ( 臨床推奨用量の 619 倍 ) まで, の用量のサキサグリプチンに対してラットは臨床的に著明な毒性を示さなかった 雄ラットにおいて,3 ヵ月間 600 mg/kg/ 日以上, 長期慢性試験では 150 mg/kg/ 日以上の用量で, 尾状核被殻及び脳梁に神経変性 / 壊死性脳病変が発生した 雄ラット特異性の原因を探索した一連の試験を通じ, 神経変性脳病変は雄ラット特異的肝臓 CYP2C11 代謝酵素による 11, サキサグリプチンの生体内変換によるシアンの放出に起因していたことが示された 雌ラットにおいては,2 本の長期 (82 週,104 週 ) 慢性試験を含むいずれの試験においても, 同週齢の雄ラットと比べてより高い全身暴露が認められたが, 脳病変は検出され 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 85

なかった 更に, マウス, イヌ, サルにおいては, 実施したいずれの毒性試験においてもその用量や投与期間に関わらず脳病変は発生しなかった 重要なこととして,in vitro でヒトミクロゾームによってシアンは生成されず, ヒトに 40 mg/ 日のサキサグリプチンを 2 週間投与した試験では血中シアン濃度は検出されず, 血清及び / 又は尿中チオシアネート濃度は対照群と同等であったことより,in vivo でもシアンは生成されないことが示された したがって, シアンに関連した脳病変はサキサグリプチンの高用量暴露を受けた雄ラット特異的 ( 無作用量での暴露は臨床推奨用量での暴露の 619 倍 ) であり, ヒトに対する毒性学的意味は無いものと考えられた (2) イヌにおけるサキサグリプチン関連の主な毒性は, 用量に依存した, 便異常 ( 血様便 / 軟便及び形を成さない / 粘液様便 ) から死亡に関与する重度な ( 小腸及び大腸の ) 腸疾患という, 消化管毒性であった 臨床的及び臨床病理的な一連の異常として, 嗜眠, 体重及び摂餌量減少, 血液学的及び血清生化学変化 ( 血小板及び電解質減少を含む ) がみられ, これらは消化管毒性及び / 又はストレスに関連した二次的な変化と考えられた 病理組織学的変化は他の DPP-4 阻害剤で報 22 告されている腸管所見と一致し, これは文献的に, 関連する DPP 酵素である DPP8 又は DPP9 の阻害によるものであることが示唆されている 例えば, ビルダグリプチンの投与によりイヌの消化管毒性は発生するが, シタグリプチンの投与では発生しない 17, 23 しかしながら,DPP8 及び DPP9 はイヌの消化管毒性の発現に関与していないという事実が最近わかってきた 24, 25 ので, この病変に対する目的とする及び / 又は目的としない薬理学的作用との関連性については未だ論争中である マウス, ラット及びサルにおいては, 評価したいずれの用量においても腸疾患はみられなかった サキサグリプチン及びビルダグリプチン 17 の臨床試験において, イヌでみられた血様便 / 粘液様便に関連した臨床的変化は見られていない イヌにおける無毒性量は 1 mg/kg/ 日であり, この用量は 12 ヵ月投与後において臨床推奨用量の 4 倍の全身暴露 AUC を示し, 毒性発現最低用量 ( ごく軽度な便の変化 ) は臨床推奨用量の 19 倍の AUC を示した (3) 糸球体症はサルに特異的であり, 高暴露 ( 臨床推奨用量での AUC の 22~77 倍 ) において限定的な発現頻度 (1-3 ヵ月あるいは 6 週間投与した 2 本の試験全体において 66 例中 4 例 ) でみられた 発現機序は特定されなかったが, 循環する血清学的自己抗体も腎臓に免疫複合体沈着も認められなかったことより, 免疫系を介した機序は排除された 他のいずれの動物種及び臨床試験においても, 腎臓に毒性的作用は認められず, 糸球体症はサルに特異的であり, 高用量 ( 臨床推奨用量での全身暴露 AUC の 22 倍以上 ) での現象であると考えられた サキサグリプチンの心循環系に対する潜在的影響は, ラット, イヌ及びサルにおける反復投与毒性試験の中で評価した 2 週間 25 mg/kg/ 日まで,12 ヵ月間 10 mg/kg/ 日までの用量 ( 暴露 C max は臨床推奨用量での値の約 750 倍まで ) を投与されたイヌにおいて, 心電図 (QT 間隔評価を含む ), 血圧, 心拍数に薬物に関連した影響はみられなかった 同様に, 単回 25 mg/kg/ 日まで,4 週間 30/20 mg/kg/ 日まで,3 ヵ月間 3 mg/kg/ 日までの用量 ( 暴露 C max は臨床推奨用量での値の約 120 倍まで ) を投与されたサルにおいて, 心電図, 血圧及び / 又は心拍数に薬物に関連した影響はみられなかった 6 ヵ月のラット試験の開始時に, 一過性, 中等度 (17-19%) の平均収縮期血圧の低下 ( 心拍数の変化はなし ) がみられたが, 投与期間終了時には認められなかった ( 暴露 C max は臨床推奨用量での値の 780 倍まで ) この変化は, 一過性であり, 本質的に変動しやすい尾の加圧帯により 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 86

得られた値であること, 雌ではより高い暴露を受けたにもかかわらず血圧への影響はみられなかったことより, 不確定なものと考えられた これらのことをまとめると, 非臨床毒性試験における心循環系に対する評価は, ヒトにおける潜在的懸念を示唆するものではなく, 更に,14 日間のサキサグリプチン 400 mg 投与 ( 臨床推奨用量の 80 倍の用量 ) を含む臨床開発段階及び 4 日間 40 mg をヒトに投与した QT 評価試験において, 心循環系への作用は認められなかったことは, この評価を更に支持するものであった 同様に, 非臨床試験において中枢神経系及び呼吸器系に対する安全性薬理学的評価において薬物に関連した変化は認められなかった サキサグリプチンの遺伝毒性は in vitro 及び in vivo の一連の総合的試験系で評価した サキサグリプチン及びその主たる活性代謝物の BMS-510849 は, 細菌を用いた復帰突然変異試験において遺伝毒性を示さなかった サキサグリプチンは, ラットにおけるDNA 修復, 経口投与小核,in vivo/in vitro 染色体異常試験においても遺伝毒性を示さなかった in vitro 染色体異常試験において,S9 活性化なし条件 ( 評価濃度は臨床推奨用量での C max の約 41600 倍 ) で染色体構造異常が認められた この試験において, サキサグリプチンには原薬 / 製剤の不純物及び分解物である類縁物質 A* が 1.6%(w/w) 添加されていた しかしながら, 類縁物質 A* の細菌復帰変異試験 ( サキサグリプチンに 5.04% の類縁物質 A* を添加 ) 及び 3 日間の in vivo 小核試験 ( サキサグリプチンに 1.36% の類縁物質 A* を添加 ) において, 陰性の結果が得られた したがって, 遺伝毒性試験結果の科学的重み付け評価並びにマウス及びラットにおいてがん原性が認められなかったことより, サキサグリプチンは遺伝毒性物質ではないと考えられた サキサグリプチンのがん原性をマウス及びラットを用いて, 毒性的観点から最大耐性量まで ( 雌 ) 又はそれ以上の用量で 104 週間投与試験で評価した 雄マウスでは 250 mg/kg/ 日以上で生存率が低下し, 早期の終了となった (600 mg/kg/ 日では第 90 週,250 mg/kg/ 日では第 100 週 ) 雄マウスにおける早期死亡の原因は特定できなかった サキサグリプチンはいずれの用量においてもマウスにがん原性を示さず, 対照群と比べて, 非腫瘍性組織学的所見の増加もみられなかった 最高用量におけるサキサグリプチンの全身暴露 AUC は臨床推奨用量での AUC の 1210 倍であった マウスでの結果と同様に, サキサグリプチンはいずれの用量 ( サキサグリプチンの全身暴露 AUC は臨床推奨用量での AUC との比較で, 雄では 370 倍, 雌では 2300 倍であった ) においてもラットにがん原性を示さなかった 300 mg/kg/ 日の雄において生存率が低下し, 投与第 68 週に投与を中止せざるを得なくなり, がん原性の評価から除外した 雄の対照群の生存率低下により, 雄のすべての投与群について第 99 週に終了した これらの群における生存期間及び投与期間はがん原性評価に適切であると考えられた 非腫瘍性所見として, シアン関連脳病変 (150 mg/kg/ 日以上の雄のみ ), 肺組織球症 (75 mg/kg/ 日以上の雌のみ ), 全般的にごく軽度な単核細胞浸潤の発現頻度の増加が 150 mg/kg/ 日以上 ( 全身暴露 AUC は臨床推奨用量での AUC の 368 倍以上 ) の肺, 膀胱, 眼付属腺 ( 雌 ), 肝臓 ( 雄 ) 及び精巣上体でみられた サキサグリプチンは雌雄のラットにおける受胎能に対して, 臨床推奨用量での全身暴露 (AUC) 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 87 *: 新薬承認情報提供時に置き換えた

との比較で, 雄では 630 倍, 雌では 800 倍の暴露においても影響を及ぼさなかった 薬物に関連した生殖能に対する作用 ( 受胎率の低下, 胚致死率の増加, 性周期の変化, 黄体数及び着床数の減少 ) が, 母動物に明らかな毒性症状を生じる用量かつ臨床では意味のない高暴露 ( 臨床推奨用量での AUC の 1156 倍以上 ) においてのみみられた 胚 胎児発生試験において, サキサグリプチンは母動物における全身暴露 AUC が臨床推奨用量での AUC との比較で 160 倍 ( ウサギ ), 及び 300 倍 ( ラット ) までの用量において, 催奇形性も胎児発生に対する毒性的影響も何ら示さなかった ラットでは,900 mg/kg/ 日においてのみ薬物に関連した母動物の毒性がみられたが,240 及び 900 mg/kg/ 日 ( 臨床推奨用量での AUC との比較でそれぞれ 1560 倍及び 8290 倍 ) において胎児骨盤の骨化の軽度な遅延 ( 発達の遅延 ),900 mg/kg/ 日では胎児体重の低下がみられた ウサギでは, 母動物毒性用量 ( 臨床推奨用量での AUC との比較で 1420 倍 ) において, 舌骨 ( 屈曲 ) 及び肋骨 ( 骨化部位の増加 ) にごく軽度な骨格変異の増加がみられただけであった ラットにおける出生前後発生試験において, 母動物における全身暴露 AUC が臨床推奨用量での AUC の 1690 倍で母動物に毒性, 出生児に体重減少をもたらした 出生児の体重に対する影響は, 離乳前及び離乳後のほとんどの期間を通してみられたが, 離乳後の最初の 1~2 週間後にはその体重増加量は対照群の値と同様であった 出生児に対する無作用量 (100 mg/kg/ 日 ) における授乳ラットの全身暴露は臨床推奨用量での AUC の 490 倍であった サキサグリプチンは, 母動物毒性を示さなかった用量である 240 mg/kg/ 日において, ラット胎児の骨盤のごく軽度な骨化遅延をもたらしたが, 骨化の遅延は回復性のある発達の遅れを示すものであり 26, 臨床的には意味の無い高暴露 ( 臨床推奨用量での AUC の 1560 倍 ) を受けた母動物で発生したことより, この変化はヒトにおける安全性において無視できるものと考えられた 新鮮なヒト T リンパ球を用いた薬理学的試験において, サキサグリプチンの T リンパ球活性に対する作用は, 目的とする薬理学的酵素阻害とは少なくとも 1000 倍の開きがあった ( 詳細は第 2.6.2.2.3 項非臨床薬理概要文を参照 ) この所見は, 抗原及び細胞分裂促進剤による T リンパ球刺激活性に対するサキサグリプチンの免疫毒性学的作用を評価した,in vivo のラットを用いた 2 試験によって更に探索された Crl:SD ラットを用いた最初の試験では,KLH 抗原に対する T リンパ球依存性抗体反応に, サキサグリプチンは有害な作用を及ぼさなかった 2 つ目の試験では,T リンパ球分裂促進 (Concanavalin A) 又は T 及び B リンパ球分裂促進 (pokeweed) 処置後の, 脾臓細胞増殖反応又はインターロイキン (IL)-1,IL-4 及びインターフェロンγの放出に, 野生型及び DPP-4 欠損 F344 ラットの間に違いがないことが示された 免疫毒性試験において全身暴露評価は実施されなかったが, 同様の用量を用いた他の反復投与試験での暴露から, これらの試験における無毒性量での暴露は臨床推奨用量 5 mg での AUC の約 335 倍であり, 高暴露においてもサキサグリプチンは T リンパ球の共刺激活性に影響は及ぼさないことを実証していた 更に, サルの試験では T リンパ球への外的な抗原性薬剤は使用しなかったが, 評価したいずれの用量においても, ヘルパー T 又はキラー T リンパ球分布, 免疫グロブリン濃度 (IgG 及び IgM) に薬物に関連した変動はみられなかった 用量設定 / 探索試験でみられた毒性の探索, 異なる活性及び選択性を持つ DPP-4 阻害剤による毒 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 88

性の比較評価, 及び DPP-4 阻害剤間の薬物動態及び薬力学的関連性の比較評価を目的に, サルを用いた探索試験を実施した 皮膚病変及び単核細胞浸潤という標的臓器毒性の特定の発現機序はまだ解明されていないが, これらの試験結果は主となる 3 ヵ月サル試験の用量設定の助けとなり, 皮膚病変及び細胞浸潤に対する無作用量を特定することができた サルにおける皮膚病変は, サキサグリプチンの投与継続でも回復がみられ,3 ヵ月の回復期間後にはいずれの用量のサルにおいても皮膚病変も単核細胞浸潤もみられなかった 別の試験として, 静脈内投与による急性死亡と血管緊張の変化との関連性を評価したところ, サルでは急性毒性と特定の血行力学的又は免疫学的変化との間に関連性はみられなかった 開発の過程において, サキサグリプチンの主たる活性代謝物である BMS-510849 の血漿中の定量方法が, 当初目標とした特異的なものではなく,BMS-510849 と同じマススペクトル特性を示す他の代謝物がクロマトグラフ上で分離されていなかったことが判明した 結果として, 以前の試験においては BMS-510849 の暴露が過大評価されていたようで, 血漿中 BMS-510849 を正確に定量する方法を開発した 特異性の低い方法の影響を評価するために, 非臨床試験に使用した動物種を用い, 両測定方法による一連のブリッジング試験を実施した 予測したとおり, 当初の分析方法では血漿中の BMS-510849 量は全般的に過大評価されていた AUC を基にすると,2 つの方法間でのBMS-510849 暴露の違いは, すべての動物種にわたって -4.7%~42.7% の範囲にあった したがって, 暴露にはこれだけの低下があったが, 慢性の主たる試験, がん原性試験, 生殖発生試験を含む重要な試験の無毒性量 ( 当初の値と 2 倍未満の違い ) において,BMS-510849 の適切な安全域は確保されていた BMS-510849 暴露量の減少はヒトの安全性評価に影響をもたらさないと考えられたサキサグリプチン / メトホルミンのイヌ 3 ヵ月反復経口投与併用毒性試験では, 併用投与による毒性増強はみられなかった サキサグリプチン / メトホルミン併用経口投与によるラット胚 胎児発生試験において,25/200 mg/kg/ 日の胎児に異常は認められなかったが,25/600 mg/kg/ 日の胎児において波状肋骨の増加がみられた この骨格変異はメトホルミンに起因していると推察された サキサグリプチン / メトホルミン併用経口投与によるウサギ胚 胎児発生試験において 40/50 mg/kg/ 日の母動物において死亡及び流産がみられ, 胎児において低胎児体重及び骨化の遅延が認められた 併用経口投与 40/50 mg/kg/ 日におけるサキサグリプチン及びメトホルミン全身暴露 AUC は, 臨床用量でのヒト AUC の約 260 倍及び 1 倍であった サキサグリプチンは 290~700nm の範囲の紫外線及び可視光を吸収しないことより, 光毒性試験は実施していないが, その光化学的性質からヒトにおいて光毒性のリスクを高める可能性は低いと考えられる それを裏付けるものとして, 国内で実施された臨床試験 ( 全 1236 症例 ) においては, 光線過敏性反応, 光線性皮膚症といった光毒性と関連する有害事象を発現した症例は, プラセボ群で光線過敏症反応 1 例, 光線性皮膚症 1 例, サキサグリプチン 2.5mg 群で光線過敏症反応が 1 例の計 3 例で認められたが, いずれの有害事象とも治験薬との関連性は否定された 海外で実施された第 Ⅲ 相プラセボ対照試験 5 試験 ( 全 2842 症例 ) においても, 光線過敏性反応は, 単独療法試験で 2 例,SU 薬との併用療法試験で 1 例の計 3 例認められたものの, いずれの有害事 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 89

象とも治験薬との関連性は否定された また, 光線性皮膚症はいずれの試験でも認められなかった 更に, 市販後臨床試験においても, サキサグリプチン投与に関連した光毒性関連の副作用報告は認められていない 結論として, ラットでは 6 ヵ月間 100 mg/kg/ 日まで, イヌでは 12 ヵ月間 10 mg/kg/ 日まで, サルでは 3 ヵ月間 3 mg/kg/ 日まで投与されたサキサグリプチンに対して, 臨床的に十分耐えた ラットにおける主な標的臓器変化は, 全般的にごく軽度な脾臓リンパ性過形成, 肺組織球症, 並びに, 短期及び長期試験では眼付属腺及び肝臓への単核細胞浸潤,104 週間投与後には膀胱, 精巣上体への単核細胞浸潤であった これらの変化は, 進行性ではなく, 臨床的に意味の無い高暴露 ( 臨床推奨用量での AUC の 200 倍以上 ) においてのみ発現したことより, 毒性学的にほとんど意味の無いものであった イヌにみられた主な所見は, 全身高暴露における血様便 / 粘液便 ( 臨床推奨用量での AUC の 19 倍 ) 及び腸疾患 ( 臨床推奨用量での AUC の 580 倍, 死亡にも関与 ) を特徴とする消化管毒性であった イヌでみられた血様便 / 粘液便に関連した変化はヒトにおける治験ではみられなかった サルにみられた主な標的臓器変化は, 皮膚の痂皮形成を伴う回復性及び治癒性のある糜爛及び潰瘍, 回復性のある多組織における単核細胞浸潤であった これらの変化に対する無作用量における全身暴露 AUC は臨床推奨用量での AUC の 1~3 倍であった これらの変化の機序は現在のところ不明であるが, サキサグリプチン 2.5 mg,5 mg,10 mg を最長 206 週まで投与されたヒトにおいて, サルで認められた皮膚所見と関連するような皮膚障害の有害事象は認められなかった 更に, サルにみられたものと同様の皮膚病変はマウス, ラット, イヌにおいて, それぞれ臨床推奨用量の AUC の 1210 倍,2300 倍,55 倍までの暴露においても見られていない 注目すべきこととして, すべての動物種においてその毒性は血漿 DPP-4/DPP 阻害と関連性はなかった サキサグリプチンは, 一連の遺伝毒性試験から得られた結果の重み付け評価において, ヒトに対する遺伝毒性リスクは持たず, 臨床推奨用量での暴露と比べて大きな倍率での暴露を受けたげっ歯類 ( マウスで 1210 倍, 雄ラットで 368 倍, 雌ラットで 2303 倍まで ) においてがん原性を示さなかった 生殖発生試験において, サキサグリプチンは明らかな毒性用量であり, ヒトにおける暴露とはかけ離れた暴露においてのみ, ラットの受胎能に影響を及ぼしたが, ラット及びウサギに対して催奇形性を示さず,F1 世代の生存, 発達, 生殖能に悪影響を及ぼすことはなかった 以上のことより, ヒトにおけるサキサグリプチンの安全な使用を妨げる非臨床毒性所見は認められなかったと結論できる 2.6.6.10 図表 本文中に記載した 2.6.6 毒性試験の概要文 :2.6.6.9 考察及び結論 90

引用文献 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Karl T, Chwalisz WT, Wedekind D, Hedrich HJ, Hoffmann T, Jacobs R, et al. Localization, transmission, spontaneous mutations, and variation of function of the DPP-4 (dipeptidyl-peptidase IV; CD26) gene in rats. Regulatory Peptides, 2003; 115: 81-90. ( 資料番号 4.3-15) Brierley JB. Cyanide intoxication in the rat: physiological and neuropathological aspects. Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry. 1976; 39: 129-40. ( 資料番号 4.3-43) Toxicological profile for cyanide, U.S. Department of Health and Human Services: Agency for Toxic Substances and Disease Registry; 2006. ( 資料番号 4.3-44) www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp8.html. Letter correspondence from Food and Drug Administration to Dr. Pamela J. Smith regarding IND 63,634. 8 November 2005. ( 資料番号 4.3-08) Ito T, Chatani F, Sasaki S, Ando T, Miyajima H. Spontaneous lesions in cynomolgus monkeys used in toxicity studies. Exp Anim. 1992; 41(4): 455-69. ( 資料番号 4.3-10) Chamanza R, Marxfield HA, Blanco AI, Naylor SW, Bradley AE. Incidences and range of spontaneous findings in control cynomolgus monkeys (Macaca fascicularis) used in toxicity studies. Tox Pathol. 2010; 38: 642-57. ( 資料番号 4.3-45) Sina JF, Galer DM, Sussman RG, Gautheron PD, Sargent EV, Leong B, et al. A collarborative evaluation of seven alternatives to the Draize eye irritation test using pharmaceutical intermediates. Fundamental and Applied Toxicology. 1995; 26: 20-31. ( 資料番号 4.3-46) Boonacker E, Van Noorden CJF. The multifuctional or moonlighting protein CD26/DPP IV. European J Cell Biol, 2003; 82: 53-73. ( 資料番号 4.3-01) Gorrell MD, Gysbers V, McCaughan GW. CD26: A multifunctional integral membrane and secreted protein of activated lymphocytes. Scand J Immunol. 2001; 54: 249-64. ( 資料番号 4.3-02) Ohnuma K, Takahashi N, Yamochi T, Hosono O, Dang NH, Morimoto C. Role of CD26/dipeptidyl peptidase IV in human T cell activation and function. Frontiers in Bioscience. 2008; 13: 2299-310. ( 資料番号 4.3-03) Mugford CA, Kedderis GL. Sex-dependent metabolism of xenobiotics. Drug Metab Rev. 1998; 30(3): 441-98. ( 資料番号 4.3-42) Levine S, Stypulkowski W. Experimental cyanide encephalopathy. Arch Pathol. 1959; 67: 306-23. ( 資料番号 4.3-47) Yen D, Tsai J, Wang LM, Kao WF, Hu SC, Lee CH, et al. The Clinical experience of acute cyanide poisoning. Am J Emerg Med. 1995; 13(5): 524-8. ( 資料番号 4.3-48) Waxman DJ, Chang TKH. Hormonal regulation of liver cytochrome P450 enzymes. In: Paul R. Ortiz de Montellano, editor. Cytochrome P450: structure, mechanism, and biochemistry. 3rd edition. Kluwer Academic/Plenum Publications, New York. 2005; p 348. ( 資料番号 4.3-49) Waxman DJ, Dannan GA, Guengerich FP. Regulation of rat hepatic cytochrome P450: age-dependent expression, hormonal imprinting, and xenobiotic inducibiliy of sex specific isoenzymes enzymes. Biochemistry. 1985; 24: 4409-17. ( 資料番号 4.3-50) FDA Clinical Pharmacology and BioPharmaceutics Review of Januvia, NDA Number 21-995. 2005; Table 5, p 9. ( 資料番号 4.3-51) 2.6.6 毒性試験の概要文 : 引用文献 91

17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 European Public Assessment Report (EPAR) for Galvus, Scientific Discussion, EMEA/H/C/771; 2007. ( 資料番号 4.3-05) He YL, Sabo R, Picard F, Wang Y, Campestrini J, Herron J, et al. Lack of pharmacokinetic interaction between vildagliptin and metformin in patients with type 2 diabetes. Clin Pharm Ther. February 2006; 62. ( 資料番号 4.3-52) Klimstra DS, Hruban RH, Pitman MB. Pancreas. In: Mills SE, editor. Histology for pathologists, 3rd edition. Lippincott Williams & Wilkins, New York. 2006; p 752 ( 資料番号 4.3-53) Concha A, Ruiz-Cabello F, Cabrera T, Nogales F, Callado A, Garrido F. Different patterns of HLA-DR antigen expression in normal epithelium, hyperplastic and neoplastic malignant lesions of the breast. Eur J Immunogenetics. 1995; 22: 299-310. ( 資料番号 4.3-54) Vera E, Arias-Diaz J, Balibrea JL, Blazquez E. Glucagon-like peptide-1 (7-36) amide stimulates surfactant secretion in human type II pneumocytes. Am J Respir Crit Care Med. 2001; 163: 840-46. ( 資料番号 4.3-55) Lankas GR, Leiting B, Roy RS, Eiermann GJ, Baconi MG, Biftu T, et al. Dipeptidyl peptidase IV inhibition for the treatment of type 2 diabetes: potential importance of selectivity over dipeptidyl peptidases 8 and 9. Diabetes. 2005; 54: 2988-94. ( 資料番号 4.3-06) FDA Pharmacology/Toxicology Review for Januvia, NDA Number 21-995. 2006; p 44-5. ( 資料番号 4.3-09) Rosenblum JS, Minimo L, Liu Y, Wu J, Kozarich J. The case against GI toxicity from DPP8/9 inhibition. Diabetes. June 2007; 56(Supp 1): A138. ( 資料番号 4.3-07) Burkey BF, Hoffmann PK, Hassiepen U, Trappe J, Juedes M, Foley JE. Adverse effects of dipeptidyl peptidases 8 and 9 inhibition in rodents revisited. Diab Obes Metabol. 2008; 10: 1057-61. ( 資料番号 4.3-31) Fritz H, Hess R. Ossification of the rat and mouse skeleton in the perinatal period. Teratology. 1970; 3: 331-8. ( 資料番号 4.3-56) 2.6.6 毒性試験の概要文 : 引用文献 92