2016/7/30 平成 28 年度赤十字血液シンポジウム 臨床現場における抗 HCV 療法の変遷 ~DAA 治療によりどのようにかわったか ~ 広島大学病院総合医療研究推進センター川上由育
C 型肝炎ウイルス 1989 年に初めて発見された. 多くの原因不明の肝炎は C 型慢性肝炎であることがわかった. 以前は nona, nonb 肝炎として扱われていた. 治療はインターフェロンの単独療法 1990 年 2
都道府県別の HCV 感染者率 ( 節目検診 ) 平成 14 年度節目検診で 現在 C 型肝炎に感染している可能性が極めて高い と判定された者の割合 0.9% 未満 0.9 以上 1.1% 未満 1.1 以上 1.2% 未満 1.2 以上 1.4% 未満 1.4% 以上 西日本で HCV 感染者が多い 田中隆ほか : 日本臨牀 2004;62( 増刊号 7):611 より作成
都道府県別の肝臓癌による死亡率 (2012 年 ) 男性 1 位 男性 佐賀県 女性 佐賀県 2 位 愛媛県 福岡県 3 位 福岡県 和歌山県 4 位 広島県 広島県 西日本で肝癌の死亡率が高い 5 位 鳥取県 熊本県 6 位 和歌山県 愛媛県 女性 7 位 8 位 山梨県大分県 徳島県大阪府 9 位 徳島県 大分県 10 位 青森県 鳥取県 国立がん研究センターがん対策情報センター
C 型肝炎に対する IFN 効果別の肝発癌率 (%) 50 40 IFN でウイルスを排除できれば肝発がんのリスクを減らせる 肝発がん率 30 20 IFN にて非 SVR p<0.0001 IFN なし 10 IFN にて SVR 0 5 10 15 20( 年 ) Ikeda, et al. Hepatology 1999 より引用改変 5
肝病変の進行度と発癌率 *ALT 基準値 個々の ALT 正常値 ALT 値により肝線維化の進行速度が違う 肝硬変 ウイルス駆除 高度 ALT 高値持続 ALT* 基準値内 軽度 F1 中等度 F2 F4 F3 血小板数 20 万 15 万 12 万 8 万未満 年率発癌率 0.5% 1.5% 5.0% 8.0% 肝線維化の程度により発がん率が違う ウイルス駆除 ( 肝炎沈静 ) できれば肝線維化の程度は改善される ( 約 5 年で1 段階改善 ) 6
本日のお話の内容 インターフェロン (IFN) ベース時代 ウイルス複製抑制剤 (DAA)) 時代 (IFN フリー時代 ) DAA 治療の問題点 今後の抗 HCV 治療
本日のお話の内容 インターフェロン (IFN) ベース時代 ウイルス複製抑制剤 (DAA)) 時代 (IFN フリー時代 ) DAA 治療の問題点 今後の抗 HCV 治療
インターフェロンの役割 問題点 人間がもともと持ち合わせている力を利用した治療法 よく効く人と効かない人がいる ( 個人差 ) インターフェロン 人間がもつサイトカイン ( 蛋白質 ) を誘導してウイスルをやっつける 抗ウイルス蛋白誘導 免疫賦活 人間がもともと持ち合わせている免疫力を増強させることにより感染した肝細胞をやっつける
インターフェロンの副 作用 初期 ( 治療開始 ~2 週間以内 ) 風邪の様な症状 ( しだいに軽快 ): 発熱 全身倦怠感 頭痛 筋肉痛 関節痛など 発疹中期 ( 治療 2 週 ~3 か月以内 ) 食欲不振 不眠 うつ状態 視力障害後期 ( 治療 3 か月以降 ) 脱毛 ( 治療終了後に回復 ) 間質性肺炎 : から咳 運動時の息切れ 甲状腺機能異常 糖尿病の悪化 問題点副作用が多い
Genotype2 に対する治療 (%) 2a 型 2b 型 10% その他 100 80 74% 84% 20% 60 40 70% 20 0 1b 型 24 週 IFN/RBV 24 週 PegIFN/RBV IFN 治療ベースの治療でも高い治療効果がある
genotype1b 型高ウイルスに対する IFN 単独治療成績 (%) 100 80 60 40 IFN 単独治療は効果が非常に悪かった 20 10.3% (36/349) 0 ( 治療法 ) IFN- 単独 IFN- 単独 ( 治療期間 ) 24 週 12
genotype1b 型高ウイルスに対する IFN + リバビリン治療 インターフェロン 抗ウイルス蛋白誘導 リバビリン 免疫調整作用 免疫賦活
genotype1b 型高ウイルスに対する IFN + リバビリン治療成績 (%) 100 80 60 47.6% 40 10.3% 16% (18/115) (121/) 50% まで治療成績が上昇 2010 年までの標準治療法となる 20 (36/349) 0 ( 治療法 ) IFN- 単独 IFN- 単独 IFN- /RBV PegIFN- /RBV ( 治療期間 ) 24 週 24 週 48 週 14
genotype1b 型高ウイルスに対する IFN + リバビリン +DAA 治療 インターフェロン 抗ウイルス蛋白誘導 免疫賦活 リバビリン 免疫調整作用 DAA(direct acting antiviral) DAA インターフェロン ウイルス複製抑制 ウイルスが増えていくために必要な蛋白質を直接阻害する 個人差はないがウイルスにより効果に違いがある
genotype1b 型高ウイルスに対する IFN + リバビリン +DAA 治療成績 (%) 100 80 79.4% (212/267) 80% まで治療成績が上昇 75.9% 60/79 79.3% 131/165 60 47.6% (121/) 40 20 10.3% (36/349) 16% (18/115) 0 ( 治療法 ) IFN- 単独 IFN- 単独 IFN- /RBV PegIFN- /RBV テラプレビル / PegIFN- /RBV シメプレビル / PegIFN/RBV バニプレビル / PegIFN/RBV ( 治療期間 ) 24 週 24 週 48 週 24 週 24 週 24 週 16
安全性 ( 有害事象 ) 共通 薬剤特有 テラプレビル 2011 インターフェロン リバビリン 皮膚症状 貧血 腎機能障害 シメプレビル 2013 インターフェロン リバビリン 肝障害 (ALT/AST 上昇 ビリルビン上昇 ) バニプレビル 2014 インターフェロン リバビリン 肝障害 (ALT/AST 上昇 ビリルビン上昇 ) 後から承認された薬剤は安全性に優れている 17
(%) 100 80 60 40 プロテアーゼ阻害剤 +PEG-IFN/RBV の SVR 率 ( 国内第 3 相試験 ) 73% (92/126) 91.7% (22/24) 83.7% (82/98) 96.6% 88.1% 92% (28/29) (96/109) (23/25) テラプレビル シメプレビル バニプレビル IFN 効果が悪い場合は有効率が低い 38.5% 34.4% (10/26) (11/32) #PI:24 週 #61.9% (26/42) 20 0 前治療歴なし 前治療再燃 (IFN の効果が期待できる group) 前治療無効 18 (IFNの効果が期待できないgroup)
プロテアーゼ阻害剤 +PEG-IFN/RBV で治療ができない 有効性が期待できない集団 副作用などで IFN が使用できない 透析や腎障害などでリバビリンが使用できない 肝硬変のため有効性が期待できない 前治療無効あるいは IL28B 遺伝子マイナーのため IFN の効果が期待できない 19
IFN ベース時代の抗 HCV 療法 患者側 : 副作用が強く治療期間も長い * 費用が高いのに治らない 通院が大変 ( 仕事の休職や退職など ) 医師側 : 副作用が心配 効果が期待できない 自覚症状がない 肝機能が正常などから IFN の必要性がないと判断 ( 特に非専門医 ) 上記理由により抗ウイルス療法があまり積極的にされなかった * 肝炎治療助成制度 (2008 年より施行 ) 世帯の市民税 23 万 5 千円以上 : 自己負担額 2 万円 23 万 5 千円未満 : 自己負担額 1 万円 20
本日のお話の内容 インターフェロン (IFN) ベース時代 ウイルス複製抑制剤 (DAA)) 時代 (IFN フリー時代 ) DAA 治療の問題点 今後の抗 HCV 治療
インターフェロンを用いない 新しい DAA 併用療法
C 型肝炎ウイルスの構造と複製 P NS Core E1 E2 NS2 NS3 4A NS4B NS5A NS5B 5 7 3 セリンプロテアーゼ 翻訳およびプロセッシング RNA ポリメラーゼ C E1 E2 P7 NS2 NS3 NS 4A NS4B NS5A NS5B 宿主因子 酵素 酵素 NS3/4A プロテアーゼ NS5A NS5B ポリメラーゼ 働き HCV 非構造蛋白 (NS4A NS4B NS5A および NS5B) の境界を切断する NS5A を中心として複製複合体を形成する RNA 依存性 RNAポリメラーゼ (RdRp) を有しておりHCVを増殖させる 23
C 型肝炎ウイルスの構造 Liver International February 2013 Tarik Asselah and Patrick Marcellin
C 型肝炎ウイルスの構造と複製 NS3/4 蛋白の役割 : HCV 非構造蛋白 (NS4A NS4B NS5A および NS5B) の境界を切断する NS3/4 阻害剤 : 活性部位において基質の結合部を競合的に阻害する 25
C 型肝炎ウイルスの構造と複製 NS5A 蛋白の役割 :NS5A を中心として複製複合体を形成する Nature Reviews Microbiology 11, 482 496 (2013) doi:10.1038/nrmicro3046 NS5A 阻害剤 :NS5A の 2 量体に結合して阻害する
C 型肝炎ウイルスの構造と複製 NS5B 蛋白の役割 : RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ (RdRp) を有しており HCV を増殖させる NS5B 阻害剤 :NS5B に取り込まれて阻害する 27
インターフェロンフリーの経口剤 (2016 年 7 月時点 ) G1 に対する治療法 NS3/4A プロテアーゼ阻害剤 NS5A 阻害剤 NS5B ポリメラーゼ阻害剤治療間 2014/9 2015/9 2015/12 ハーボニー ヴィキラックス アスナプレビルダクラタスビル 24 週 レディパスヴィルソフォスブビル ( 核酸型 ) 12 週 パリタプレビル / リトナビルオムビタスビル 12 週 NS5A 阻害剤が Key drug 28
プロテアーゼ阻害剤 +PEG-IFN/RBV で治療ができない 有効性が期待できない集団に対する DAA 治療 副作用などで IFN が使用できない 透析や腎障害などでリバビリンが使用できない 肝硬変のため有効性が期待できない 前治療無効あるいは IL28B 遺伝子マイナーのため IFN の効果が期待できない 29
プロテアーゼ阻害剤 +PEG-IFN/RBV で治療ができない 有効性が期待できない集団に対する DAA 治療の効果 IFN ベース治療が期待できない集団に対しても高い効果が得られる IFN 不適格 不耐容 肝硬変 IFN 効果不良 (IL28B マイナー /IFN 前治療無効 ) アスナプレビル + ダクラタスビル 87.4%(118/135) 90.9%(20/22) 84.3% 80.5%(70/87) レディパスヴィル + ソフォスブビル ( ハーボニー ) 100%(19/19) 100%(40/40) ND 100%(25/25) パリタプレビル / リトナビル + オムビタスビル ( ヴィキラックス ) 93.4%(57/61) 90.5%(38/42) ND 93.6%(44/47) 30
プロテアーゼ阻害剤 +PEG-IFN/RBV で治療ができない 有効性が期待できない集団に対する DAA 治療 副作用などで IFN が使用できない 透析や腎障害などでリバビリンが使用できない 肝硬変のため有効性が期待できない 前治療無効あるいは IL28B 遺伝子マイナーのため IFN の効果が期待できない 31
肝外病変 (HCV 関連腎症 ) はウイルス排除により改善する 160 140 120 100 80 60 40 20 0 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ALB ALT DCV/ASV e-gfr Cr 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 2.5 2 1.5 1 0.5 0 DCV/ASV 治療により HCV が排除されると浮腫および低 Alb 血症が 改善し 腎機能も正常値まで回復した Tsuge M, Chayama K, et al. Hepatol Res.2016; in press.
HCV 感染による肝外病変 クリオグロブリン血症 シェーグレン症候群 乾燥性角結膜炎 唾液腺炎 糸球体腎炎 扁平苔癬 リンパ腫 筋炎 関節炎 肺線維症 多発性結節性動脈炎 自己免疫性肝炎 遅発性皮膚ポルフィリン症 免疫異常と関連して発症し 肝炎の活動性とは無関係 HCV を駆除することにより軽快する 33
HCV 抗体別透析患者の死亡率 HCV 抗体陽性率 276/1470(18.8%) 76.8 67 HCV 抗体陽性透析患者の死亡率 33.0% で 陰性患者の死亡率 23.2% と比較して有意に高率であった 肝硬変による死亡率 HCV 抗体陽性 8.8% 陰性 0.4% 肝細胞癌による死亡率 HCV 抗体陽性 5.5% 陰性 0% 23.2 33 HCV 感染が透析患者の重要な生命予後決定因子である EIJUN NAKAYAMA et al. JASN 2000;11:1896-1902
透析患者の死亡原因 (HCV 感染 vs 非肝炎 ) 死亡率 26.4% 死亡率 25.2% 死亡率 36.1% 40% 6.2% 2006 年 2012 年 HCV 抗体陽性率 (11.4%) 循環器疾患 脳血管疾患 感染症 悪性腫瘍 肝硬変 肝癌 その他 HCV 感染透析患者の肝硬変 肝癌による死亡率は非常に高率である 臨床透析 vol.30.no7.2014
HCV 感染透析患者の死亡リスク ( 海外データ含む ) HCV 非感染透析患者と比べ HCV 感染透析患者は死亡リスクが高いことが多くの臨床試験から報告されている 研究死亡率の HR 95% CI 国 DOPPS * Pereira Stehman-Breen Nakayama Espinosa Johnson Johnson 1.22 1.41 1.97 1.57 1.62 1.37 1.29 1.11-1.33 1.01-1.97 1.16-3.33 1.23-2.00 1.05-2.49 1.15-1.62 1.05-1.58 国際米国米国日本スペイン日本オーストラリア / ニュージーランド HR は HCV 感染患者と HCV 非感染患者を比較している *DOPPS のフェーズ 1~3(1996~2008 年 ) Goodkin DA et al. Am J Nephrol 2013; 38: 405-412
HCV 感染透析患者における抗ウイルス療法の有無別生存率 ( 海外データ ) HCV 感染透析患者は 抗ウイルス療法を施行することで生存率が高くなる 累積生存率 (%) 100 80 60 40 20 抗ウイルス療法施行 抗ウイルス療法未施行 ( 未調整 ) 抗ウイルス療法施行 (n=42) 抗ウイルス療法未施行 (n=3,037) HR(95%CI)=0.47(0.17-1.26) 抗ウイルス療法未施行 ( 調整 ) 0 0 2 4 6 8 10 12 14 ( 年 ) DOPPS 組入れ後の期間 Goodkin DA et al. Am J Nephrol 2013; 38: 405-412
透析患者に対する DCV+ASV の安全性と有用性を Pharmacokinetics より検討し治療が可能であることを明らかにした 目的 : ダクラダスビル + アスナプレビル治療の透析患者に対する安全性と有効性を PK にて確認する デザイン : 多施設共同 オープン 単群日赤 : 肝臓 ( 辻 森 高木 本田 相坂 ) 腎臓 ( 心石 横山 ) 対象 : 最低 5 年の生存が見込める透析患者 Genotype1b 型 20 歳以上 肝癌なし 肝硬変の場合 ChildA NS5A 耐性なし 目標症例数 :20 例 評価項目 :PK(7 日目 ) SVR12 安全性 DCV 60mg 1 日 1 回 ASV 200mg 1 日 2 回 0 1 PK study 安全性 Follow up 24 +12 weeks 治療開始 1 週目投与前 1 2 3 4 5or6 時間 (6 ポイント ) ノンコンパートメントモデル解析にダグラタスビル及びアスナプレビルの薬物パラメータ (AUC Ctrough) を算出する 有効性 ( 対照として非透析患者のPK studyの研究も並行して実施 ) Kawakami Y, Chayama K, et al. J Viral Hepat.2016; in press
HCV RNA (log/ml) PK アスナプレビル血中濃度動態 ダクラダスビル血中濃度動態 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 0 1 2 3 4 6 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 0 1 2 3 4 6 control より HD は Tmax が延長 Cmax が低い DCV の Troug は HD の方が高い AUC は両剤ともに HD が低い HD control HD control 有効性 0-0.5-1 -1.5-2 -2.5-3 -3.5-4 -4.5-5 HCV の早期動態 0 2day 4day 7day 透析 コントロール HD の方がウイルス低下量が大きい SVR12 はともに 100% 安全性 有害事象 症状 HD n=18 コントロール n=54 肝機能障害 3(16.6%) 17(31%) 倦怠感 1(5.6%) 5(9.2%) 発熱 1(5.6%) 4(7.4%) 鼻炎 0 6(11.1%) 頭痛 0 6(11.1%) 下痢 2(11.1%) 0 転倒 ( 頸椎炎 ) 1(5.6%) 0 特に ASV の副作用である肝障害が HD では少ない 透析患者に対しても安全に高い効果が得られる Kawakami Y, Chayama K, et al. J Viral Hepat.2016; in press
安全性 ( 有害事象 ) 共通薬剤特有鼻咽頭炎頭痛 アスナプレビル / ダクラタスビル 2014/9 30% 16% 肝障害 (ALT/AST 上昇 ) レディパスヴィル / ソフォスブビル ハーボニー 2015/9 28% 6% アミオダロンの併用により 徐脈等の不整脈があらわれるおそれがあり 海外の市販後において死亡例も報告されている アミオダロンの適応疾患 : 心室細動 心室性頻拍心不全 ( 低心機能 ) 又は肥大型心筋症に伴う心房細動 高度腎障害 (egfr<30ml/ 分 /1.73m 2 ) 透析に対しては使用できない パリタプレビル / リトナビルオムビタスビル 17% 8% ヴィキラックス 2015/12 肝障害 (ALT/AST 上昇 ) Ca 拮抗剤 ( 高血圧の薬 ) を一緒に飲むと薬が効きすぎて血圧が下がる ( リトナビルが原因 ) 40
本日のお話の内容 インターフェロン (IFN) ベース時代 ウイルス複製抑制剤 (DAA)) 時代 (IFN フリー時代 ) DAA 治療の問題点 今後の抗 HCV 治療
問題点 1 ダクルインザとスンべプラジェノタイプ 1b 症例における主な耐性部位 C E1 E2 p7 NS2 NS3 NS4A NS4B NS5A NS5B アスナプレビル ダクラタスビル アミノ酸置換 EC 50 (nm) WT に対する倍率 WT( 野生型 ) 0.86±0.3 1 D168A 109±19 127 D168C 56±4 65 D168E 67±11 78 D168G 13±4 16 D168H 85±24 98 D168V 241±17 280 D168Y 205±29 238 McPhee F, et al. ANTIMICROB AGENTS CHEMOTHER. 2012;56(7):3670 アミノ酸置換 EC 50 (pm) WT に対する倍率 WT( 野生型 ) 2.6±0.3 1 L31F 12.6±1.2 5 L31M 8.4±1.9 3 L31V 61±15 23 Y93H 49.2±12.8 19 Y93N 73.5±5.5 28 L31F+Y93H 14,874.3±1,762.9 5,721 L31M+Y93H 10,989.4±122.9 4,227 L31V+Y93H 21,674.5±9,461.3 8,336 Fridell R, et al. ANTIMICROB AGENTS CHEMOTHER. 2010;54(9):3641 薬剤耐性をウイルスが持っている場合は効果が悪くなる
DAA 未治療者における薬剤耐性の割合 NS3 耐性 NS5A 耐性 NS5B 耐性 Y93 10 % 14 % D168 1% L31 6.6% 4% S282T なし Virology Journal 2013,10:355 Virology Journal 2013,10:355 日本の治験 日本の治験 NS5A 製剤に対する薬剤耐性は DAA 未治療者の 16-18% に存在する一方 NS3 製剤や NS5B 製剤は非常に少ない 43
インターフェロンフリーの経口剤 (2016 年 7 月時点 ) G1 に対する治療法 NS3/4A プロテアーゼ阻害剤 NS5A 阻害剤 NS5B ポリメラーゼ阻害剤治療間 アスナプレビルダクラタスビル 24 週 ハーボニー ヴィキラックス レディパスヴィルソフォスブビル ( 核酸型 ) 12 週 パリタプレビル / リトナビルオムビタスビル 12 週 NS5A 阻害剤が Key drug NS5A 薬剤耐性をウイルスが持っている場合は効果が悪くなる 44
C 型慢性肝炎 (1b 型高ウイルス ) に対する IFN free の治験での NS5A 薬剤耐性別治療成績 (%) 100 80 60 91.1% (174/191) 100% 41/41) 100% (116/116) 83% (39/47) 99% (301/304) 40 45% (14/31) 20 0 ( 治療法 ) ( 治療期間 ) Y93H Y93 変異なしアスナプレビル / ダクラタスビル 24 週 Y93H Y93 変異なしレディパスヴィル / ソフォスブビル 12 週 Y93H Y93 変異なしパリタプレビル / オムビタスビル ハーボニー ヴィキラックス 12 週 45
問題点 2 共通 HD 対照 併用薬剤一覧 (Pkstudy) 循環器系代謝系腎泌尿器系消化器系神経系 D 速効尿 HMG 高 Ca A 掻 C α 中枢 P 型イイ酸 - K 受ビ非ベベン C α β 多価痒高リ抗 a A β 性交 P ンスン生 CoA 血容タンゾゾジ E 遮遮 S α 不飽症ン血血拮 R 遮感神 4 リンス成還元症体ミ PPI ジアアゼ阻断断 U GI 和脂治症治栓抗 B 断経抑阻分泌リ抑酵素治作ンゼピピン害薬薬肪酸療療薬薬薬薬制薬害促進ン制阻害療動 D ン系系薬薬薬薬薬剤薬薬 HD1 HD2 HD3 HD4 HD5 HD6 HD7 HD8 HD9 HD10 HD11 HD12 HD13 HD14 HD15 HD16 HD17 HD18 対照 1 対照 2 対照 3 46
併用禁忌 併用注意 DAA における併用禁忌 注意薬剤 消化器系薬 制酸剤 DCV/ASV と OBV/PTV/r はともに NS5A 阻害 +NS3 阻害剤である H2 ブロッカー PPI 代謝系薬 スタチン 感染症薬抗結核剤 SOF/LDV は NS5B 阻害 +NS5A 阻害剤である SOF が腎排泄のため透析患者へは使用できない OATP を介したスタチンの肝臓への取り込みを阻害 スタチンの血中濃度が上昇する 抗 HIV 薬 日本肝臓学会 C 型肝炎治療ガイドライン ( 第 4.1 版 ) 2015 年 12 47 月
併用禁忌 併用注意 DAA における併用禁忌 注意薬剤 ホルモン薬 抗アレルギー薬 その他 日本肝臓学会 C 型肝炎治療ガイドライン ( 第 4.1 版 ) 2015 年 12 48 月
併用禁忌 併用注意 DAA における併用禁忌 注意薬剤 感染症薬 抗 HIV 薬 抗菌薬 抗真菌薬 抗ウイルス薬 CYP3A4 を阻害 DCV/ASV の代謝が阻害され血中濃度が上昇する 日本肝臓学会 C 型肝炎治療ガイドライン ( 第 4.1 版 ) 2015 年 12 49 月
併用禁忌 併用注意 DAA における併用禁忌 注意薬剤 循環器系薬 Ca 拮抗薬 リトナビルの CYP3A4 を阻害 Ca 拮抗剤の血中濃度が上昇する 抗不整脈薬 その他 日本肝臓学会 C 型肝炎治療ガイドライン ( 第 4.1 版 ) 2015 年 5012 月
併用禁忌 併用注意 DAA における併用禁忌 注意薬剤 中枢神経系薬 抗てんかん薬睡眠薬抗不眠薬その他 CYP3A4 を誘導薬 DCV/ASV の代謝が促進され血中濃度が低下する 免疫抑制薬 呼吸器系薬 シクロスポリが OATP1B1 を阻害 ASV の肝臓への取り込みを減少させ血中濃度が低下する ホルモン薬 日本肝臓学会 C 型肝炎治療ガイドライン ( 第 4.1 版 ) 2015 年 12 51 月
問題点 3 HCV RNA (log IU/ml) 8 7 6 5 4 3 DCV + ASV DAA 治療に失敗した場合 (1) 2 <1.2 0 4 8 12 16 PT4 PT8 PT12 PT16 PT20 PT24 PT28 PT32 PT52 PT108 ( 週 ) NS3 aa168 WT 100% D168V/A 98.9% D168V/A 98.6% WT 91.9% WT 100% WT 100% WT 100% NS5A aa31 WT 99.8% L31S 0.2% L31M/I 99.8% L31M/V 99.7% L31M/V 100% L31M 100% L31M 100% L31M 99.9% aa93 WT 0.6% Y93H 99.4% Y93H 99.8% Y93H 99.8% Y93H 100% Y93H 100% Y93H 100% Y93H 100% 52
HCV RNA (log IU/ml) 8 7 DCV + ASV DAA 治療に失敗した場合 (2) 6 5 4 3 2 <1.2 0 8 16 24 PT8 PT16 PT24 PT32 PT40 PT48 PT56 PT64 PT72 PT96 PT104 ( 週 ) NS3 aa168 WT 100% D168V/A 91.5% WT 99.8% WT 100% WT 100% NS5A aa31 WT 99.2% L31M 0.8% L31M/I 100% L31M/I 100% L31M/I 100% L31M/I 99.0% aa93 WT 67.8% Y93H 32.1% Y93H 99.5% Y93H 99.8% Y93H 99.9% Y93H 82.9% 53
治療を失敗 ( ブレークスルーや再燃 ) した場合 NS5Aの2 重耐性 (Y93とL31) となる NS5A に非常に強い耐性をもつウイルスとなる アミノ酸置換 EC 50 (pm) WT に対する倍率 WT( 野生型 ) 2.6±0.3 1 L31F 12.6±1.2 5 L31M 8.4±1.9 3 L31V 61±15 23 Y93H 49.2±12.8 19 Y93N 73.5±5.5 28 L31F+Y93H 14,874.3±1,762.9 5,721 L31M+Y93H 10,989.4±122.9 4,227 L31V+Y93H 21,674.5±9,461.3 8,336 Fridell R, et al. ANTIMICROB AGENTS CHEMOTHER. 2010;54(9):3641
問題点 4 DAA 治療中に HBV が上昇する場合がある Hepatitis B Virus ReactivationDuring Successful Treatment of Hepatitis C Virus With Sofosbuvir and Simeprevir Jeffrey M. Collins Clinical Infectious Diseases 2015;61(8):1304 6 55
本日のお話の内容 インターフェロン (IFN) ベース時代 ウイルス複製抑制剤 (DAA)) 時代 (IFN フリー時代 ) DAA 治療の問題点 今後の抗 HCV 治療
G1 に対する治療法 今後のインターフェロンフリーの経口剤 NS3/4A プロテアーゼ阻害剤 NS5A 阻害剤 NS5B ポリメラーゼ阻害剤治療間 アスナプレビルダクラタスビル 24 週 レディパスヴィルソフォスブビル ( 核酸型 ) 12 週 パリタプレビル / リトナビルオムビタスビル 12 週 12 週 12 週 承認待ち 治験中 8 週 G2 に対する治療法 NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤 NS5A 阻害剤 NS5Bポリメラーゼ阻害剤 DAA 以外 治療期間 ソフォスブビル ( 核酸型 ) リバビリン 12 週 8 週 DAA 治療不成功例に対する治療法 ( 現行はなし ) NS3/4A プロテアーゼ阻害剤 NS5A 阻害剤 NS5B ポリメラーゼ阻害剤 DAA 以外治療期間 12 週 57 リバビリン 12-24 週
IFN フリー時代の抗 HCV 療法 副作用が少ない 高い有効率 治療が簡単になったため医師 患者ともに安易に治療しがちだが 患者の選定 治療薬の選定 患者教育 ( 服薬指導 再感染など ) を行わなければ上記の有効性 安全性は得られない
最後に ウイルスを排除できる時代が到来しました しかし これは最終目標ではありません 肝疾患に対する最終の目的は肝硬変 肝がんなどにならないようにすることですので治療後の経過観察は必ず実施しましょう 59
ご清聴ありがとうございました