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3 ステップ アビジン - ビオチンシステム (SAB 法 ) とポリマー法 慶應義塾大学医学部病理学教室阿部仁 はじめに 免疫組織化学は Coons らが蛍光色素を抗体に標識した蛍光抗体法の技術を確立してから Singers のフェリチン抗体法を経て 1967 年に Nakane と Pierce により標識物質に西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase:hrp) 酵素を用いた酵素抗体法が開発された 酵素抗体法は標識抗体の酵素を組織化学的に発色し 可視化して観察できることから他の免疫組織化学に比較して 方法が簡単でパラフィン切片も使用できるなどの多くの利点から病理診断を始めとして様々な研究分野にも広く用いられている 今までに酵素抗体法は多くの方法が開発されてきたが ( 図 1) 現在ではストレプトアビジン - ビオチンシステム (SAB 法 ) とポリマー法が主流となっている 本稿では 酵素抗体法の種類を紹介し ABC 法や SAB 法の注意点について記載した また ポリマー法と SAB 法 間接法の染色例を比較した 1. 直接法 間接法一次あるいは二次抗体に酵素を標識して抗原の局在を直接あるいは間接的に検出する 2. PAP(peroxidase-antiperoxidase) 法酵素を抗体に直接標識しないですべての反応が抗原抗体反応で行われる 3. Avidin-biotin system ABC(avidin-biotinylated peroxidase complex) 法 SAB(streptavidin-biotin) 法など 4. ポリマー法 5. CSA(catalyzed signal amplification) 法タイラミンのペルオキシダーゼによる酸化反応を利用した方法 図 1 酵素抗体法の種類 -1-

3 ステップ アビジン - ビオチンシステム (SAB 法 ) ABC 法は 塩基性蛋白のアビジンと水溶性ビタミンであるビオチンとの強固で特異的な結合性を利用した方法である 多数のビオチン化 HRP 分子とアビジンの結合した複合体がビオチン化二次抗体と結合し これを発色させて可視化する この方法の利点は感度に優れたところにあるが 塩基性蛋白であるアビジンは非特異的結合が生じやすく また ABC 複合体による立体障害が生じ結合性が低くなる場合がある このような理由などから SAB 法が開発された SAB 法は Streptomyces avidinii が産生する中性のストレプトアビジンが用いられ ストレプトアビジンに HRP を直接標識し アビジン - ビオチン反応によりビオチン化二次抗体を検出する技法である SAB 法は 中性のストレプトアビジンを使用しているため非特異的結合が少なく背景の共染がみられない また 酵素を直接ストレプトアビジンに結合させているため試薬の安定性が高く 分子量が小さいため組織内への浸透性がよく 高感度の染色性が期待できるなどの多くの利点を有している ( 図 2) ブロッキング試薬 ビオチン標識第二抗体 酵素標識ストレプトアビジンの試薬で構成されたキットがニチレイバイオサイエンスより市販されている このキットで使用するビオチン標識二次抗体は抗マウス IgG+IgA+IgM 抗体で 一次抗体のサブクラスが IgG 以外の IgM,A 抗体でも検出可能である さらに一次抗体がマウス ラビットの両方を検出できるマルチキットやペルオキシダーゼ以外に アルカリホスファターゼを標識したキットも市販されている a b 図 2 SAB 法を使用した免疫染色 a: 抗 cytokeratin 抗体 (clone:ae1/ae3) を DAB にて発色 (SAB-PO(MULTI) キット : ニチレイバイオサイエンス ) PO はペルオキシダーゼの略 b: 抗 Ki-67 抗体 (clone:mib-1) をファーストレッド II 基質キット ( ニチレイバイオサイエンス ) にて発色 (SAB-AP(M) キット : ニチレイバイオサイエンス ) AP はアルカリホスファターゼの略 -2-

ABC 法や SAB 法の注意点 腎尿細管上皮や肝細胞などの組織中に存在する内因性ビオチンはアルデヒドにより容易に失活するために子宮内膜細胞や子宮内膜癌など一部の場合を除いてホルマリン固定パラフィン切片で問題となることはほとんどない しかし 抗原性の賦活化を目的とした加熱処理で内因性ビオチンの復活が問題となることがあるので注意が必要である 各種の加熱処理液における内因性ビオチンの復活を比較すると ( 図 3) 非加熱処理に比較して 0.01M クエン酸緩衝液 (ph6.0)<0.1m トリス塩酸緩衝液 (ph9.5)<1mm EDTA 溶液 (ph8.0) 特に EDTA 溶液 (ph8.0) で顕著に内因性ビオチンの影響による発色が腎尿細管上皮に認められる この場合は凍結切片処理と同様に 内因性ビオチンの除去操作を行う必要がある 内因性アビジン活性の阻止には ビオチン溶液後にアビジン溶液で切片を処理する ニチレイより内因性アビジン ビオチンブロッキングキットが市販されているので使用すると便利である control Citrate, ph6.0 Tris, ph9.5 EDTA, ph8.0 図 3 各種の加熱処理液における内因性ビオチンの復活各処理液による加熱処理後 (control は非加熱 ) にペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンとのみ反応し DAB で発色した -3-

ポリマー法 アビジン - ビオチンシステムと異なり酵素抗体法間接法と同様の 2 ステップである 一次抗体の反応後に二次抗体として HRP 標識ポリマー試薬と反応させるが HRP 標識ポリマー試薬は デキストリンポリマーやアミノ酸ポリマーに発色酵素と二次抗体を多数結合させた試薬である 2 ステップではあるが間接法や 3 ステップアビジン - ビオチンシステムに比較してより著しく高感度の染色性を得ることができる これにより ペルオキシダーゼ発色反応の感度を上げるイミダゾールなどの試薬を使用しなくとも強い染色性を得ることが可能である ( 図 4 5-1 5-2) また 一次抗体の希釈倍率を通常の検出系よりもさらに希釈することが可能となり 貴重な抗体や一次抗体の節約ができ経済的である また その高い検出力によって一次抗体の反応時間を短縮することができるので 術中迅速診断にも使用されている なお ポリマー法は凍結切片や抗原性の賦活化を行った際にもアビジン - ビオチンシステムと異なり 内因性のビオチンによる染色への影響は受けない ニチレイバイオサイエンスからアミノ酸ポリマーにペルオキシダーゼと Fab にした第二抗体を結合させた標識ポリマー試薬が市販されている ( シンプルステイン MAX-PO) さらに 一次抗体がマウス ラビットの両方を検出できるマルチキットやペルオキシダーゼ以外に アルカリホスファターゼを標識したポリマーも市販されている ( 図 4b) ポリマー法は当初高分子ポリマーを使用し核内抗原の染色性が低下することがあったが 現在では低分子のポリマーが使用されて組織内浸透がよくなり 核内抗原検出においても良好な結果が得られている ( 図 6) a b 図 4 ポリマー法を使用した免疫染色 a: 抗 CD79α 抗体 (clone:jcb117) を DAB にて発色 ( シンプルステイン MAX-PO(MULTI): ニチレイバイオサイエンス ) PO はペルオキシダーゼの略 b: 抗悪性黒色腫抗体 (clone:hmb45) をファーストレッド II 基質キット ( ニチレイバイオサイエンス ) にて発色 ( シンプルステイン AP(MULTI): ニチレイバイオサイエンス ) AP はアルカリホスファターゼの略 発色産物はメラニン色素 ( ) との鑑別が明瞭である -4-

ポリマー法 SAB 法間接法 BCL2 Oncoprotein clone:124 希釈倍率 :100 倍 CD5 clone:4c7 ready to use CD79α clone:jcb117 希釈倍率 :100 倍 図 5-1 ポリマー法 SAB 法 間接法の検出感度を肉眼で比較ポリマー法は高感度の染色性を得ることができる ポリマー法 SAB 法間接法 BCL2 CD5 CD79α 図 5-2 図 5-1 の顕微鏡像ポリマー法では強い発色が認められる 発色液に DAB 発色反応の感度をあげるイミダゾールなどの試薬は未使用である -5-

図 6 抗 Ki-67 抗原抗体 (clone:mib-1) ポリマー法で核内抗原を染色しても良好な染色結果が得られる ( シンプルステイン MAX-PO(MULTI): ニチレイバイオサイエンス ) おわりに 3ステップ アビジン-ビオチンシステム (SAB 法 ) とポリマー法は背景の共染がみられない特異性の高い染色結果を提供してくれる 特にポリマー法は 反応のステップ回数も少なく 反応時間も短縮することができる上 良好な感度が得られる染色方法であり このため病理診断の際にポリマー法を用いた免疫組織化学染色を行うことで多くの情報が提供され また 各分野での研究面においても有用な方法になると思われる -6-