能登における脳卒中地域連携

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また リハビリテーションの種類別では 理学療法はいずれの医療圏でも 60% 以上が実施したが 作業療法 言語療法は実施状況に医療圏による差があった 病型別では 脳梗塞の合計(59.9%) 脳内出血 (51.7%) が3 日以内にリハビリテーションを開始した (6) 発症時の合併症や生活習慣 高血圧を

3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞の診断が最も多く 2,524 件 (65.3%) 次いで脳内出血 868 件 (22.5%) くも膜下出血 275 件 (7.1%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 2,476 件 (64.0%) 再発が 854 件 (22

1) 疾患別死亡数 死亡率 ( 七尾市 ) 死亡数 ( 総数 ) 資料 : 衛生統計報 死亡率 ( 総数 ) 人口 10 万対

3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞合計が最も多く 3,200 件 ( 66.7%) 次いで脳内出血 1,035 件 (21.6%) くも膜下出血 317 件 ( 6.6%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 3,360 件 (70.1%) 再発が 1,100

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

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脳血管疾患による長期入院者の受診状況~レセプトデータによる入院前から退院後5年間の受診の分析

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脳卒中の医療連携体制を担う医療機関等における実績調査 調査内容 平成 28 年度の実績 ( 調査内容は別紙様式のとおり ) 別紙 1: 急性期の医療機能を有する医療機関用別紙 2: 急性期及び回復期の医療機能を有する医療機関用別紙 3: 回復期の医療機能を有する医療機関用別紙 4: 維持期の医療機能

平成 21 年循環器疾患登録の年集計について 喫煙習慣の割合は 男性で約 4 割 女性で約 1 割である 週 1~2 回以上の運動習慣のある割合は1 割程度と 男女共に運動習慣のある者の割合が低い 平成 21 年における循環器疾患登録者数 ( 循環器疾患にかかった人のうち届出のあった人 ) について

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対象疾患名及び ICD-10 コード等 対象疾患名 ( 診療行為 ) ICD-10 等 1 糖尿病 2 脳血管障害 3 虚血性心疾患 4 動脈閉塞 5 高血圧症 6 高尿酸血症 7 高脂血症 8 肝機能障害 9 高血圧性腎臓障害 10 人工透析 E11~E14 I61 I639 I64 I209 I

3 成人保健

調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

1 保健事業実施計画策定の背景 北海道の後期高齢者医療は 被保険者数が増加し 医療費についても増大している 全国的にも少子高齢化の進展 社会保障費の増大が見込まれる このような現状から 一層 被保険者の健康増進に資する保健事業の実施が重要となっており 国においても 保健事業実施計画 ( データヘルス

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

第1章評価にあたって

課題名

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パスを活用した臨床指標による慢性心不全診療イノベーション よしだ ひろゆき 福井赤十字病院クリニカルパス部会長循環器科吉田博之 緒言本邦における心不全患者数の正確なデータは存在しないが 100 万人以上と推定されている 心不全はあらゆる心疾患の終末像であり 治療の進步に伴い患者は高齢化し 高齢化社会

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

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結果の概要

表紙@C

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日経メディカルの和訳の図を見ても 以下の表を見ても CHA2DS2-VASc スコアが 2 点以上で 抗凝固療法が推奨され 1 点以上で抗凝固療法を考慮することになっている ( 参考文献 1 より引用 ) まあ 素直に CHA2DS2-VASc スコアに従ってもいいのだが 最も大事なのは脳梗塞リスク

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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肥満症の認知状況関する アンケート調査 ~速報~

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脳血管疾患予防のための保健事業実施計画 データヘルス計画の目的は 脳血管疾患 虚血性心疾患等 糖尿病性腎症による新規透析患者を減らし 健康格差を縮小することにあります このうち 本市では脳血管疾患患者の入院医療費が 1 億 5,600 万円であり 生活習慣病全体の入院医療費の 33.1% と多くを占

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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1/5 Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science (2016) Original Article 回復期高齢脳卒中患者における栄養関連指標 GNRI の改善と運動 FIM 改善との関係 徳永誠, 1 別府あゆみ, 2 田村保喜,

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クリニカルインディケーター 2017 の刊行にあたって 当院は開院以来 重症者にも対応できる医療 リハケア体制の整備 スタッフの量的および質的充実に向けた教育 研修体制の構築 チームアプローチの徹底や情報共有の強化 急性期病院および地域医療 介護との連携推進 生活 期リハの充実等 様々な取り組みを組

第2次JMARI報告書

死亡率 我が国における疾病構造 生活習慣病は死亡割合の約 6 割を占めている 我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化 死因別死亡割合 ( 平成 24 年 ) 生活習

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています

平成 27(2015) 年エイズ発生動向 概要 厚生労働省エイズ動向委員会エイズ動向委員会は 3 ヶ月ごとに委員会を開催し 都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表している 本稿では 平成 27(2015) 年 1 年間の発生動向の概要を報告する 2015 年に報告された HI

脳卒中にならない方法

(別紙様式1)


入院 2人に1人以上が日帰り入院を含む10日以内の入院 です 病気やケガによる 平均入院日数 2か月以上 不詳 31日 61日以内 日帰り入院 9.2% 5日以内 注 がんの再発率 34.1% Ⅱ期の胃がん 術後3年以内の再発率 57.0% Ⅱ期の子宮体がん 術後3年以内の再発率 11 Ⅱ期の大腸が

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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現状分析による課題抽出のためのワークシート ( 高血圧 糖尿病 脂質異常症 ) 高血圧糖尿病脂質異常症 要介護認定を受けた被保険者の医療費の状況 ( 資料 :KDB システム 12 月末抽出分 ) 有病状況では糖尿病等の基礎疾患が約 6 割となっている 中分類別医療費 1 人当たり医療費が県と比較し


2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

目次 I. 調査概要 II. 調査票 調査目的調査期間調査対象調査方法サンプル数 III. 属性調査結果 性別年齢入院病棟入院日数当院を選んだ理由 IV. 満足度調査結果 1. 満足度ポイント一覧 2. 満足度構成比率総合満足度医療サービス施設 設備 情報提供師の接遇の接遇の接遇 V. ポートフォリ

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■● 糖尿病

平成 25 年 3 月 27 日 国立社会保障 人口問題研究所 ( 厚生労働省所管 ) から 日本の地域別将来推計 人口 ( 平成 25 年 3 月推計 ) が公表されました これに基づく石川県関係分の概要は次のとおりです 目次 1 石川県の将来推計人口 1 2 県内市町 地域の将来推計人口 5 3

日本医薬品安全性学会 COI 開示 筆頭発表者 : 加藤祐太 演題発表に関連し 開示すべき COI 関連の企業などはありません

糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

(1)〜(4)/松尾

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

ラクナ梗塞穿通枝の細動脈硬化アテローム血栓性脳梗塞大動脈弓 頚部動脈または頭蓋内主幹動脈の狭窄または閉塞心原性脳塞栓症心房細動 急性心筋梗塞 左室血栓 人工弁置換を伴った脳梗塞その他の脳梗塞血液凝固異常血管攣縮血管壁異常 21 Vol や薬物中毒のような血管が収縮しやすくなる疾患などで

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

年齢調整死亡率 (-19 歳 ) の年次推移 ( :1999-1) 1 男性 女性 年齢調整死亡率 -19 年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 -19 年齢調整死亡率

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平成26年患者調査 新旧対照表(案)

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

宗像市国保医療課 御中

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DOTS 実施率に関する補足資料 平成 26 年 12 月 25 日 結核研究所対策支援部作成 平成 23 年 5 月に改正された 結核に関する特定感染症予防指針 に DOTS の実施状況は自治体による違いが大きく実施体制の強化が必要であること 院内 DOTS 及び地域 DOTS の実施において医療

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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SoftBank 301SI 取扱説明書


糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

1 保険給付費の推移保険給付費の伸びが 市町村合併後初めてマイナスに転じた 費用 ( 億円 ) 対前年伸び率 (%) 対前年差額 ( 億円 ) 21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度

図 3. 新規 HIV 感染者報告数の国籍別 性別年次推移 図 4. 新規 AIDS 患者報告数の国籍別 性別年次推移 (2) 感染経路 1 HIV 感染者 2016 年の HIV 感染者報告例の感染経路で 異性間の性的接触による感染が 170 件 (16.8%) 同性間の性的接触による感染が 73

目次 1. 趣旨 2. 計画の期間 3. 兵庫県の特徴 (1) 人口 後期高齢者数について (2) 平均寿命について (3) 医療 健診 介護 ( 有病状況 ) について 4. 目標 5. 実施事業 < 参考 > 別添資料 KDB の分析帳票等について

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摂食嚥下訓練 排泄訓練等を開始します SCU で行うリハビリテーションの様子 ROM 訓練 ( 左 ) と端坐位訓練 ( 右 ) 急性期リハビリテーションプログラムの実際病棟訓練では 病棟において坐位 起立訓練を行い 坐位耐久性が30 分以上となればリハ訓練室へ移行します 訓練室訓練では訓練室におい

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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Transcription:

データベース解析 Ver. 5.1 (2008 年 ~2015 年 ) 2018 年 1 月 能登脳卒中地域連携協議会パス管理病院管理局 ( 恵寿総合病院 ) Email:nntk@keiju.co.jp 1

はじめに 日頃から 能登脳卒中地域連携協議会の活動にご理解ご協力を賜り 誠に有難うございます 本協議会では発足当初から 脳卒中地域連携パスの全症例登録を目標とし パスから抽出したデータをデータベース化する事業を行なってきました このたび 2014 2015 年のデータを追加して 2008~2015 の 8 年間のデータ解析がまとまり Ver. 5.1 として開示いたします 今後も順次解析結果を追加していく予定です この解析結果により 能登地域の脳卒中疾病構造の理解が深まり 多方面で基礎データとして活用され 患者さんへの貢献に繋がることを期待しております また ご意見ご要望等がありましたら是非お寄せいただきますようお願い申し上げます 2018 年 1 月 2

目次 表紙 1 はじめに 2 目次 3 データベースの解析 1. 対象 方法 解析項目 4 2. 登録率 6 11. 退院時加療中疾患 53 12. 治療 56 13. 栄養状態 64 14. 転帰 (FIMの変化) 76 15. まとめ 88 3. 発症率と発症件数 9 4. 発症の季節性 14 5. 年齢 18 6. 性差 26 7. 病型 31 8. 初診時重症度 (NIHSS) 38 9. 危険因子 ( 入院時評価 ) 43 10. 入院中合併症 48 3

1. 対象 方法 2008.7.1~2016.6.30 の 8 年間 能登で脳卒中を発症して入院した6,455 症例 そのうちパス登録した 5,353 症例 発症率 登録率 疾病構造等を解析し 経年変化や全国データとの比較について検討した 4

患者背景 病型 全体男性女性 件数平均年齢件数平均年齢件数平均年齢 脳梗塞 3,718 77.2 2,053 74.0 1,665 81.1 脳内出血 1,080 73.3 586 70.2 494 77.0 クモ膜下出血 358 68.8 99 63.7 259 70.7 その他 197 72.6 128 70.9 69 75.7 計 5,353 75.7 2,866 72.8 2,487 79.1 5

2. 登録率 6

登録率の推移 6 年間の登録率の推移 ほぼ 80% 代で推移している

施設別の登録率 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 A 病院 94.9 87.5 97.3 100.0 97.7 93.9 85.9 86.9 B 病院 97.2 95.6 97.4 100.0 99.6 99.6 98.4 80.8 C 病院 98.9 100.0 96.7 99.3 99.1 88.3 99.2 82.3 D 病院 80.0 100.0 97.6 89.2 91.8 100.0 98.4 87.3 E 病院 5.7 0.0 11.0 76.6 91.5 69.3 80.5 75.8 F 病院 90.9 93.8 100.0 63.6 60.0 66.7 100.0 90.0 G 病院 4.0 35.7 36.0 31.6 35.3 18.2 21.1 4.2 H 病院 66.7 12.8 3.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 I 病院 35.7 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 J 病院 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 計 81.0 77.1 80.5 88.6 87.1 80.5 85.1 81.5 8

3. 発症数と発症率 9

脳卒中発症数 ( 2015 年新規入院数 )(/ 年 ) 市立輪島病院 :63 珠洲市総合病院 :113 公立宇出津総合病院 :24 公立穴水総合病院 :7 町立富来病院 :10 能登総合病院 :261 七尾病院 :0 恵寿総合病院 :236 公立羽咋病院 :91 宝達志水病院 :10 10

発症 ( 登録 ) 件数の推移 年間で約 600~700 件が発症している 男性が女性より多い 11

能登の実測発症率の推移 ( 人口 10 万人当たり ) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 脳梗塞 193 212 219 239 242 232 223 脳内出血 56 63 62 64 60 70 69 クモ膜下出血 22 21 23 18 24 22 20 脳卒中 284 304 325 333 335 334 321 * 厳密な意味では病型別の発症率に若干の推定が入っている 能登の推定発症率は 320~330 台で推移している

能登と他地域との発症率の比較 年地域人口発症数発症率 2015 能登 202,762 815 402 2015 全国 126,597,000 329,055 * 260 2015 石川県 1,157,685 2,959 * 254 2015 金沢市 453,417 1,196 * 265 * 以下の参考資料を基に推定 : http://www.stroke-project. com/ 脳卒中データバンク 2015 http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sichousien/tihou_jukijinkou.html 能登地域は実測発症数 その他の地域は推定発症数 能登の発症率は 全国と金沢市の約 1.5 倍

4. 発症の季節性 14

月別 1 日当たり発症数 ( 脳卒中全体 ) n=5295 脳卒中全体では 4 月に発症が多く 8 月に少ない傾向がある

月別 1 日当たり発症数 ( 病型別 ) 脳梗塞 脳内出血は 7 8 月に発症が少ない くも膜下出血は 3 月に多く 6 月に少ない

月別 1 日当たり発症数 ( 脳梗塞サブタイプ別 ) ラクナは 11 12 月に少ない アテロームは 1 月に多く 12 月に少ない 心原性は 2 月に多く 7 月に少ない傾向がある

5. 年齢 18

性別平均年齢の推移 平均 75 歳で発症する 男性より女性が高齢 19

病型別平均年齢 平均 75 歳で発症する 男性より女性が高齢 20

脳内出血部位別平均年齢 皮質下 小脳 視床 脳幹 被殻の順に平均年齢が高い 21

病型別年齢分布 脳梗塞 (n=3718) 脳内出血 (n=1080) クモ膜下出血 (n=358) その他 (n=197) 脳梗塞 脳内出血では 80 歳台に発症のピークを認める クモ膜下出血の発症ピークは 60 歳代と 80 歳代の 2 回ある 22

脳梗塞サブタイプ別年齢分布 ラクナ梗塞 (n=1163) アテローム (n=1263) 心原性 (n=961) 病型不明 (n=331) 脳梗塞の全サブタイプで 80 歳台に発症のピークを認める 23

脳内出血の部位別年齢分布 被殻 (n=357) 視床 (n=315) 皮質下 (n=162) 小脳 (n=81) 脳幹 (n=64) 被殻 視床は 2 回発症年齢のピークがある 被殻は他と比較して 発症年齢のピークが低い 24

脳内出血の部位別年齢分布 n=736 能登 40 50 60 70 80 90 年齢 ( 歳 ) 全国 ( 脳卒中データバンク 2005 より ) 年齢階級別分布を全国と比較すると 能登では発症年齢のピークが遅い

6. 性差 26

脳卒中全体 27

病型別性差 脳梗塞 脳内出血は男性が多い くも膜下出血では 4 人のうち約 3 人が女性 28

脳梗塞サブタイプ別性差 すべてのサブタイプで男性が多い 29

脳内出血部位別性差 被殻 視床 皮質下は男性に多く 小脳 脳幹は女性が多い 30

7. 病型 31

脳卒中の病型別頻度 能登は全国と比較して出血性疾患が多い傾向にある * 全国データは 脳卒中データバンク 2015 p19 を参考にした 32

病型別頻度 ( 年次推移 ) ほぼ 脳梗塞 7 割 脳内出血 2 割 クモ膜下出血 1 割で推移している 33

脳梗塞サブタイプ別頻度 能登は全国と比較してアテロームが多い * 全国データは 脳卒中データバンク 2015 p19 を参考にした 34

脳梗塞サブタイプ頻度 ( 年次推移 ) ほぼ ラクナ 3 割 アテローム 3 割 心原性 2 割強 分類不能 1 割で推移している 35

脳内出血の部位別頻度 能登は全国と比較して皮質下 小脳 脳幹が少ない * 全国データは 脳卒中データバンク 2015 p133 を参考にした 36

脳内出血の部位別頻度 ( 年次推移 ) ほぼ 被殻 3 割 視床 2~3 割 皮質下 1 割で推移している 37

8. 初診時重症度 (NIHSS) 38

病型別入院時 NIHSS 脳内出血 クモ膜下出血 脳梗塞の順に NIHSS が高い 39

病型別入院時 NIHSS 心原性 アテローム ラクナの順に NIHSS が高い 40

脳内出血の部位別入院時 NIHSS 脳幹 視床 被殻 皮質下 小脳 脳室内の順に NIHSS が高い 41

転帰別入院時 NIHSS 自宅退院は入院時 NIHSS が低い 42

9. 危険因子 ( 入院時調査 ) 43

脳卒中の危険因子内訳 ( 入院時 ) n=2796 高血圧 糖尿病 脂質異常症の順に割合が多い 44

危険因子数 ( 入院時 ) n=2796 危険因子を持たない患者は 16.2% に過ぎなかった 脳卒中発症者の多くは 1 個以上の危険因子を有していた 45

病型別の危険因子割合 全ての病型で高血圧を有する割合が高い 46

脳梗塞サブタイプ別の危険因子割合 高血圧 糖尿病 脂質異常症の割合が高い 47

10. 入院中合併症 48

合併症の発症率 n=2796 肺炎 尿路感染の発症割合が高い 49

合併症発症数 n=2741 合併症を発症しない割合は 85.2% であった 50

病型別の合併症発症割合 全ての病型で 肺炎と尿路感染症の発症割合が高い 51

サブタイプ別の合併症発症割合 心原性脳塞栓症で 肺炎と尿路感染の発症割合が高い 52

11. 退院時加療中疾患 53

退院時に加療が必要だった併発症 n=2459 併発症のない患者は約 3 割 高血圧は 5 割 糖尿病 脂質異常症は 2 割弱 に加療が認められた 54

病型別退院時に加療が必要だった併発症 高血圧の加療割合が最も高い 55

12. 治療 56

t-pa 治療の件数 2012~2015 年度ラクナアテローム心原性分類不能 合計 t-pa 実施件数 年間脳梗塞件数 脳梗塞に対する実施割合 (%) 2009 0 1 7 7 15 437 3.4 2010 0 3 8 1 12 437 2.7 2011 0 3 5 3 11 470 2.3 2012 1 2 6 6 15 526 2.8 2013 0 3 6 3 12 527 2.3 2014 1 3 9 1 14 480 2.9 2015 1 10 17 2 30 470 6.4 脳梗塞に対する t-pa 実施割合は 2~3% であった 2015 年のみ 6.4% と高率であった 57

脳梗塞の治療 ( 点滴 )2012~2015 n=1947 58

脳梗塞サブタイプの治療 ( 点滴 )2012~2015 59

脳梗塞の治療 ( 内服薬 )2012~2015 n=1947 抗血小板薬では アスピリンとクロピドグレルが多く使用されていた 抗凝固薬では ワーファリンが多く使用されていた 60

脳梗塞サブタイプ別の治療 ( 内服薬 )2012~2015 アスピリンは分類不能群で シロスタゾールはアテロームとラクナで クロピドグレルは アテローム ラクナ 分類不能群で ワーファリン ダビガトランは心原性で多く使用されていた 61

高血圧性脳内出血の治療 2012~2015 保存的加療 : 94.7%(268/523) 血腫除去術 : 5.3%(28/523) 62

クモ膜下出血の治療 2012~2015 クリッピング術 : 42.4%(141/332) コイリング術 : 8.7%(29/332) 63

13. 栄養状態 64

入院時の体型 n=3031 分類 判定 BMI (kg/ m2 ) 肥満 25.0 以上 普通体重 18.5 24.9 低体重 18.4 以下 入院時 普通体重が 6 割 肥満は 2 割弱 65

体型分類別の BMI の変化 * 平均入院日数 62.1 ± 72.8 日 * * 入院後 すべての分類で BMI( 体重 ) は減少する *p<0.001 66

病型別の BMI の変化 * * 平均入院日数 62.3 ± 72.2 日 * 入院後 すべての病型で BMI( 体重 ) は減少する *p<0.001 特に 脳出血と クモ膜下出血の減少が大きい 67

病型別の Alb 値の変化 平均入院日数 75.4 ± 75.5 日 * * * 入院後 すべての病型で Alb 値は減少する *p<0.001 特に 脳出血と クモ膜下出血の減少が大きい 68

病型別低栄養患者の割合の変化 Geriatric Nutritional Risk Index;GNRI 高齢者の栄養リスクを判定する指標 14.89 血清アルブミン値 (g/dl)+ 41.7 ( 現体重 kg / 理想体重 kg ) 92 未満を低栄養とした 平均入院日数 76.7 ± 73.5 日 * * * 高齢者 (65 歳以上 ) は入院後 すべての病型で低栄養患者が増加する p<0.001 69

入院後の栄養状態変化と合併症の発症率 ここでいう合併症とは 肺炎 尿路感染 褥瘡 平均入院日数 77.4 ± 75.2 日 高齢者は入院中に栄養状態が低下すると 入院中の合併症の発症率は約 2 倍 70

退院時の栄養状態と入院中合併症の関連 ここでいう合併症とは 肺炎 尿路感染 褥瘡 退院時の栄養状態が悪い患者は入院中の合併症の割合が高くなる傾向にあった 71

疾患別の絶食期間 ここでいう絶食期間とは 入院翌日から経口摂取 経腸栄養前日までの日数 と定義した 平均 (n=508) ラクナ (n=138) アテローム (n=124) 心原性 (n=98) 脳出血 (n=108) クモ膜下出血 (n=40) 絶食期間は ラクナ > アテローム > 心原性 > 脳内出血 >SAH の順に長い 72

病型別の経口摂取割合の変化 退院時には 脳梗塞 脳出血 クモ膜下出血で 経口摂取 可 の割合が増加する 73

退院後の経口摂取割合の変化 脳出血とクモ膜下出血では 退院後 経口摂取 可 の割合が増加する 74

病型別の退院時投与エネルギー量 1468 kcal 28.6 kcal/ kg / 日 1422 kcal 27.6 kcal/ kg / 日 1500 kcal 27.0kcal/ kg / 日 退院時の投与エネルギー量は 1400~1500kcal/ 日である ( 体重当たり換算 27.0~28.6kcal/ 日 ) 75

14. 転帰 (FIM の変化 ) 76

病型別 FIM の変化 ( 開始時 退院時 ) リハビリテーション開始時の FIM は 脳梗塞 脳内出血 クモ膜下出血の順に高い 平均の FIM 利得は クモ膜下出血 脳内出血 脳梗塞の順に高い 77

脳梗塞サブタイプ別 FIM の変化 ( 開始時 退院時 ) リハビリテーション開始時の FIM は ラクナ アテローム 心原性の順に高い 平均の FIM 利得は サブタイプ別でほぼ同程度 78

脳内出血の部位別 FIM の変化 ( 開始時 退院時 ) リハビリテーション開始時の FIM は 視床出血が最も低い 平均の FIM 利得は 被殻出血が最も高い 79

退院先 n=5,284 自宅 62% 80

病型別転帰先 自宅退院の割合は 脳梗塞 脳内出血 クモ膜下出血の順で高い 死亡の割合は クモ膜下出血 脳内出血 脳梗塞の順で高い 81

脳梗塞サブタイプ別転帰先 自宅退院の割合は ラクナ アテローム 心原性の順で高い 死亡の割合は 心原性 アテローム ラクナの順で高い 82

脳内出血部位別転帰先 自宅退院の割合は 皮質下 被殻 小脳 視床 脳幹の順で高い 死亡の割合は 脳幹 小脳 被殻 皮質下 視床の順で高い 83

病型別入院日数 入院日数は 脳内出血 クモ膜下出血 脳梗塞の順に長い 84

サブタイプ別入院日数 入院日数は 心原性 アテローム ラクナ梗塞の順に長い 85

脳内出血部位別入院日数 入院日数は 心原性 アテローム ラクナ梗塞の順に長い 86

生活期 ( 維持期 ) での障害老人日常生活自立度の変化 - 退院後 3 ヶ月時点での変化 ( 退院時との比較 )- 年度不変悪化改善症例数 2008 108 36 38 182 2009 99 25 38 162 2010 112 24 29 165 2011 89 34 25 148 2012 83 16 30 129 2013 81 28 15 124 2014 70 31 20 121 2015 69 22 19 110 2016 711(62.3%) 216(18.9%) 214(18.8%) 1,141(100%) 3 人に 1 人は退院 3 ヵ月後でも ADL に変化 ( 悪化 改善 ) がみられる 87

15. まとめ 88

まとめ 1 パスの登録率は ほぼ 80% 台で推移している 能登の脳卒中発症率は 高齢化率を反映して都市部の 1.5 倍である 脳卒中の発症には季節性がある (4 月は 8 月より 0.5 件 / 日多い ) 能登は全国と比較して 脳出血とクモ膜下出血が多い 病型 脳梗塞サブタイプによって 年齢 神経学的重症度 栄養状態 ADL(FIM) 最終転帰 などに特徴が認められる 89

まとめ 2 地域連携パスをデータベース化することで 地域の脳卒中の疾病構造把握 全国との比較 経年的変化の把握 分析が可能であった 多方面での基礎データとしてその意義は大きいと思われる 90