標準偏差 ( ) 1.66± ±0.60 n.s. 254 楠幹江 NEC; 三栄株式会社製 ) で撮影した カメラの設置は人体から150cmの位置とした また, 解析部位は下肢 ( 膝頭から足先まで ) の領域とし, 最高温度, 最低温度, 平均温度を求めた 4) 統計処理冷え性の

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安田女子大学紀要 40,253 257 2012. 女子学生における冷え性の自覚と下肢皮膚温について 楠幹江 Relationship between Self-Recognition of Hie-sho and Surface Skin Temperature of Female Students Mikie KUSUNOKI 1. 緒言冷え症は, 身体の末梢部が異常に冷たく感じる症状であるが, 病気ではないため治療の対象にはなっていない このため, 抜本的な対策がないまま苦しんでいる女性は多く, 健康や生活の質に悪影響を及ぼしている 冷え性は, 本人の自覚が重要であるが, 評価の持続性や再現性に関しては明確でない部分もある また, 冷え症の定義や客観的な指標, 冷え症者の特徴や健康への影響については明らかではない 冷え性に関する先行研究においても, さまざまな報告がなされている たとえば, 年齢との関係において, 後山 1) は年齢が高くなるほど頻度は高くなると報告しているが, 今井 2) は若年者に有意に多いと報告している 前者は産婦人科受診患者の報告であり, 後者は病院職員を対象とした報告である このため, 単純には比較できないため, 今後, より詳細な調査が求められる 一方, 女子学生を対象にした研究 3) では, 冷え性自覚者は 50% 以上の高率であることが報告されている 本研究は, 冷え性の客観的把握として注目されているサーモグラフィーを使用して, 下肢皮膚温を測定し, 冷え性の自覚の妥当性を検討したものであり, 興味ある知見が得られたので, ここに報告をする 2. 方法 1) 被験者ランダムに選んだ 20 歳 ~ 21 歳の健康な女子大生 21 名であった いずれも本研究の目的と実験方法を理解した上で, 実験への参加の同意を得た女子学生であった 2) 測定条件実験は,2010 年 7 月から 8 月の 13 時から 14 時 30 分の間に実施した 人工気候室の環境条件は,25.45±1.80 (Mean±S.D.), 湿度 56.25±6.25% R.H.(Mean±S.D.) であった 被験者は, まず人工気候室前室において安静状態を保ち,30 分後に人工気候室に移動して, 皮膚表面温度を測定した 尚, 測定は素足で実施した 3) 皮膚表面温度の測定被験者は, 椅座位姿勢で下肢の表面温度をサーモグラフィー (THERMO TRACER 6T62

標準偏差 ( ) 1.66±0.69 1.34±0.60 n.s. 254 楠幹江 NEC; 三栄株式会社製 ) で撮影した カメラの設置は人体から150cmの位置とした また, 解析部位は下肢 ( 膝頭から足先まで ) の領域とし, 最高温度, 最低温度, 平均温度を求めた 4) 統計処理冷え性の自覚に関連する要因を分析するため, エクセル統計 2008を用いて, 判別分析を行った 3. 結果および考察 1) 被験者の身体的特徴結果を表 1 に示す ランダムに選んだ被験者のうち, 冷え性の自覚を示した学生 ( 以後, 冷え性群と記す ) は 13 名, 示さなかった学生 ( 以後, 冷え性群と記す ) は 8 名であった それぞれの割合は, 冷え性群が 61.9%, 非冷え性群が 38.1% となり, 冷え性群の割合が高い値を示した また, 身体的特徴を表 1 に示したが, 身長, 体重,BMI に関して両群の間に有意差は示されなかった BMI に関しては, 冷え症者の身体的指標に関して BMI が変わらない とする指摘がある一方, やせ形が多い とするものもあり一致していないが, 本研究においては, 両群間に有意差は認められなかった 表 1. 被験者の身体的特徴 身長 (cm) 体重 (kg) BMI 冷え性群 (N=13) 159.46±4.98 52.54±8.73 20.14±2.45 非冷え性群 (N=8) 161.25±3.85 57.38±8.94 21.99±2.76 2) 皮膚表面温度結果を表 2 に示す 表 2. 皮膚表面温度 冷え性群 (N=13) 非冷え性群 (N=8) 有意差 平均温度 ( ) 32.57±1.56 32.64±1.70 n.s. 最大温度 ( ) 35.19±1.24 35.16±1.47 n.s. 最小低温度 ( ) 26.34±2.10 26.78±2.19 n.s. 平均温度 ( ) 32.52±1.60 32.52±1.60 n.s. 最大温度 ( ) 35.09±1.22 35.14±1.15 n.s. 最小低温度 ( ) 26.30±2.02 26.72±2.13 n.s. 標準偏差 ( ) 1.60±0.72 1.37±0.63 n.s. まず右足における結果をみると, 最大温度は, 冷え性群が 35.19 ± 1.24, 非冷え性群が 35.16 ± 1.47 となり, 冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった 次に,

女子学生における冷え性の自覚と下肢皮膚温について 255 最小温度は, 冷え性群が 26.34 ± 2.10, 非冷え性群が 26.78 ± 2.19 となり, 非冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった 平均温度は, 冷え性群が 32.57±1.56, 非冷え性群 32.64 ± 1.70 となり, 非冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった 標準偏差は, 冷え性群が 1.66 ± 0.69, 非冷え性群が 1.34 ± 0.60 となり, 冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった これらの結果より, 右足における皮膚表面温度は, 冷え性群と非冷え性群との間に明らかな相違はなかったという結論が得られた 次に左足における結果をみると, 最大温度は, 冷え性群が 35.09 ± 1.22, 非冷え性群が 35.14 ± 1.15 となり, 非冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった 次に, 最小温度は, 冷え性群が 26.30 ± 2.02, 非冷え性群が 26.72 ± 2.13 となり, 非冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった 平均温度は, 冷え性群, 非冷え性群共に 32.52 ± 1.60 となった 標準偏差は, 冷え性群が 1.60 ± 0.72, 非冷え性群が 1.37 ± 0.63 となり, 冷え性群の方が高い結果となったが, 有意差の範囲ではなかった これらの結果より, 左足における皮膚表面温度は, 右足と同様に, 冷え性群と非冷え性群との間に明らかな相違はなかったという結論が得られた サーモグラフィーを用いた冷え性の自覚に関する研究では, 冷え症自覚者は, 冷えを感じやすい部位と, 体温が低い部位とが一致している 1)4) 体幹部と冷えを感じる末梢部では, 非冷え性自覚者に比べて有意に大きい差がある 5) などの報告がある しかし, 一方で, 末梢部の表面温と深部温は, 両者が変わらない しかし, 瘀血の状態では高い場合もある 6) との報告もあり一致した結果は得られていない 末梢血流動態の測定の結果では, 血流量 血液速度 収縮期血圧において, 両群間で有意差が認められ, 冷え症群が有意に低い 血液量は, 冷え症群が有意に高かった という報告もみられる 7) また, 冷水負荷実験における皮膚表面温度の変化に関する実験 8) においては, 負荷後の表面温度はすべて冷え症者で低く, 回復率でも有意な差が認められた 冷え症者は冷水負荷では回復率が低い 冷え症者は, 足浴後は, より速やかに皮膚温, 深部温が低下する ことが報告されている このように, 冷え性に関してはさまざまな結果が報告され, 一致した見解は得られていないのが現状である 本研究において, 非冷え性群における皮膚表面温度は高い傾向がみられたが, 有意差の範囲ではなく, 両群の間に明らかな差は存在しない結果となった このため, 冷え性者は, 末梢血流動態が非冷え性者に比べて低いという仮説は立証できなかった 3) 判別分析の結果について冷え性の自覚の有無と皮膚表面温度との間に有意差が示されなかったため, 冷え性群と非冷え性群のデータを一括して, 判別分析を行った ここでは, 冷え性の自覚の有無を目的変数, 左右それぞれの下肢皮膚表面温度 ( 最大温度, 最小温度, 平均温度 )6 要因を説明変数として解析を行った 結果を表 3 に示す

256 楠幹江 表 3. 判別関数式 変数 判別係数 F 値 P 値 判定 右足最大温度 - 0.2287 0.0225 0.8816 右足最小温度 2.7845 6.3089 0.0168 p< 0.05 右足平均温度 - 7.4207 4.6430 0.0381 p< 0.05 左足最大温度 - 1.8041 1.0180 0.3199 左足最小温度 - 3.9862 13.0908 0.0009 p< 0.01 左足平均温度 9.6343 5.6630 0.0229 p< 0.05 定 数 項 32.4911 判別関数を用いた結果, 相関比は 0.3415 となった また, 判別的中率は 76.19% を示した この判別的中率は決して高い値ではないが, 使用した 6 要因が無関係という値ではない 表 3 における F 値を基に目的変数との関係をみると, 左右共最小温度と平均温度に有意差が示された このため, 冷え性の自覚の有無に関しては, 最大温度よりも最小温度と平均温度が関係しているのではないかと判断した 表 4. 正判別率 判別された群真の群冷え性群 (N=13 2) 非冷え性群 (N=8 2) 冷え性群 19 (73.08%) 3 (18.75%) 非冷え性群 7 (26.92%) 13 (81.25%) 冷え性の自覚に関する正判別率の結果を表 4 に示す 表 4 において, 冷え性群の正判別率は 73.08%, 非冷え性群の正判別率は 81.25% となり, 非冷え性群の判別率の方が高い値を示した また, 判別得点を基に 21 人の被験者を個別に検討すると, 冷え性群で 6 名, 非冷え性群で 3 名の誤判別者が認められた 誤判別者に対しては, 今後, 更に検討が必要であるが, 冷え性の自覚に対する下肢皮膚表面温度からのアプローチは, 客観的指標の一つになるのではないか, と示唆される結果が得られた 4. まとめ本研究は, 女子学生を対象に, 冷え性の客観的把握として注目されているサーモグラフィーを使用して, 下肢皮膚温を測定し, 冷え性の自覚の妥当性を検討したものであり, 以下の結論が得られた 1) 非冷え性群における皮膚表面温度は, 冷え性群に比べて高い傾向がみられたが, 有意差の範囲ではなかった 2) 冷え性の自覚を目的変数, 左右それぞれの下肢皮膚表面温度 ( 最大温度, 最小温度, 平均温度 )6 変数を説明変数として判別分析を行った結果, 相関比は 0.3415, 判別的中率は 76.19%

女子学生における冷え性の自覚と下肢皮膚温について 257 となった また, 冷え性の自覚の有無に関しては, 最大温度よりも最小温度と平均温度が関係しているのではないかと判断される結果が得られた 引用文献 1) 後山尚久 : 冷え症の病態の臨床的解析と対応, 医学の歩み,2005,925 929 2) 今井美和他 : 成人女性の冷えの自覚とその要因についての検討, 石川看護雑誌,2007,55 64 3) 楠幹江 : 女子学生における冷え性関連要因の検討, 安田女子大学紀要,2010,193 200 4) 三浦友美他 : 青年期女性の 冷え の自覚とその要因に関する研究, 母性衛生,2001,784 789 5) たとえば定方美惠子他 : 中性温度環境下における冷え症女性の皮膚温特性と判断指標となる測定部位の検討,Biomedical Thermology,2007,1 7 6) 石田和之他 : 非接触型赤外線温度計による体表温度の検討, 日本東洋医学雑誌,2007,1107 1112 7) 山田典子他 : 判別分析による若年女性の冷え症を識別する指標の選択, 日本神経精神薬理学雑誌,2007, 191 199 8) 田中宏美他 : 青年期女子の冷え症自覚群における冷水 温水刺激による体温変化, 日赤医学,2005, 507 511 Summary The objective of this study was to investigate the relation between self-recognition of hie-sho and surface skin temperature of female students, in order to obtain basic data for the validity of selfrecognition of hie-sho. Twelve-one healthy female students participated in experiment in order to obtain the substantial data of skin temperature. The domain from a knee to toe was measured in thermograph as a surface skin temperature of foot. The samples were divided into 2 groups according to the selfrecognition of hie-sho. There was not a significant difference between physical charactristics of the subjects. Discovers made as a result of the study was as follows: 1)There were 13 female subjects with hie-sho, and 8 subjects without one. 2)There was no difference between two groups on the surface temperature of foot. 3) The results of the discriminant analysis indicated that the value of correlation ratio was 0.3415 and the hitting ratio was 76.19%. My suggestion was that the Min. and the Mean. temperatures might be effective as an indicator on the self-recognition of hie-sho. [2011.9.29 受理 ]