第1子出産後の就業継続率について

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第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

今後の雇用均等行政について

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます


Microsoft Word - H29 結果概要

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( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

育児のための両立支援制度 制度の概要 ( イメージ ) 出生 1 歳 1 歳 6か月 3 歳就学 パパ ママ育休プラス 1 歳 6 か月延長 ( 子の年齢 ) ⑴ 育児休業 Ⅰ Ⅱ 努力義務 ⑵ 短時間勤務制度 ⑶ 所定外労働の免除 努力義務 努力義務 ⑷ 子の看護休暇 ⑸ 法定時間外労働の制限 ⑹

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 平成年月日 会社名 あなたから平成年月日に 育児 介護 休業の 申出 期間変更の申出 申出の撤回 がありました 育児 介護休業等に関する規則 ( 第 3 条 第 4 条 第 5 条 第 7 条 第 8 条及び第 9 条 ) に基づき その取扱いを下のとおり通

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

育児休業申出書式例

例 3 男性医師 1 歳 配偶者産前休暇産後休暇復帰 復帰 今までは 配偶者がを取得している場合 を取得できませんでしたが 取得できるようになりました 職員は 当該子が 3 歳に達する日まで 病院助手等は 当該子が 1 歳 6か月に達する日までを取得することができます 職場復帰後の特に大変な時期に協

 第1節 国における子育て環境の現状と今後の課題         

深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等 役員 管理職等への女性の登用促進 М 字カーブ問題の解消には企業の取組が不可欠 このため 企業の自主的な取組について 経済的に支援する 経営上のメリットにつなぐ 外部から見えるようにし当該取組の市場評価を高めるよう政

申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

目 次 第 1 条 目的及び内容 1 第 2 条 育児休業 2 第 3 条 パパ ママ育休プラス 2 第 4 条 1 歳 6 か月までの育児休業 2 第 5 条 育児休業の申出の手続等 3 第 6 条 パパ休暇の特例 3 第 7 条 介護休業 3 第 8 条 介護休業の申出の手続等 4 第 9 条

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5

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23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

第 1 章育児休業 第 1 条 ( 対象者 ) 生後 1 年未満 ( 第 5 条による育児休業の場合は 1 歳 6 ヶ月 ) の子と同居し養育する従業員であって 休業後も引き続き勤務する意思のある者は 育児のための休業をすることができる ただし 日々雇用者 期間雇用者 ( 申出時点において雇用期間が

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

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ただし 日雇従業員 期間契約従業員 ( 法に定める一定の範囲の期間契約従業員を除く ) 労使協定で除外された次のいずれかに該当する従業員についてはこの限りではない (2) 週の所定労働日数が2 日以下の従業員 (3) 申出の日から93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員 2 要介護状態に

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就業規則への記載はもうお済みですか

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社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 あなたが平成年月日にされた 育児 介護 休業の申出について 育児 介護休業等に関する規則 第 3 条 第 7 条 に基づき その取扱いを下のとおり通知します ( ただし 期間の変更の申出があった場合には下の事項の若干の変更があり得ます ) 1 休業の期間等

( 2 ) % % % % % % % % 100% 20 90% 80% 70% 60%

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育児 介護休業規程 第 1 章 目的 第 1 条 ( 目的 ) 本規程は社員の育児 介護休業 育児 介護のための時間外労働および深夜業の制限並びに育児 介護短 時間勤務等に関する取り扱いについて定めるものである 第 2 章 育児休業制度 第 2 条 ( 育児休業の対象者 ) 1. 育児のために休業す

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

ただし 平成 22 年 6 月 30 日時点で 常時 100 人以下の労働者を雇用する事業主については 公布日から3 年後に当たる平成 24 年 6 月 30 日 ( 予定 ) までの間 < 短時間勤務制度の義務化 >< 所定外労働の免除の義務化 >< 介護休暇 >について 改正規定の適用が猶予され

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

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2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

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3 育児 介護 112

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

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2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

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Transcription:

2016 年 11 月 30 日 第 1 子出産後の就業 継続率について ~ 上昇の糸口としてのくるみん ~ 経済学部秋朝ゼミナール 3 年市川綾香加納翔原田真菜美

内容 はじめに...2 1. 現状...3 2. 女性の就業継続率を上昇させるであろう要因...6 3. 就業継続率の上昇要因としてのくるみん... 12 3-1. くるみんとは... 12 3-2. くるみん認定の意義... 13 考察... 15 おわりに... 15 参考文献... 16

はじめに近年 少子高齢化社会への対応として 女性の労働力に注目が集まっている 厚生労働省の 平成 23 年度版働く女の実情 には 日本の将来推計人口は これからおよそ 60 年後の平成 72 (2060) 年には 現在の 4 分の 3 程度に減少し 人口に占める生産年齢人口の割合も 2 分の 1 程度に低下する 急速な少子高齢化社会を迎えることが見込まれている 将来にわたり安心して暮らせる活力ある社会を実現するためには 持続可能な全員参加型社会を構築していくことが必要であり 女性の潜在力を引き出し 活躍を推進することは 企業や社会の活力に繋がる鍵である しかしながら 女性の年齢階級別労働力率については いまだ M 字型カーブを描いており その解消が重要な課題となっている とあり 日本の急速かつ深刻な少子高齢化の問題の解決策として 女性の労働力が必要であることが分かる そして 女性が活躍するため 結婚や出産といった 誰もが起こり得るライフステージにおける大きなイベントと上手く付き合いながら 仕事をすることが求められている M 字カーブに描かれるように 大学卒業後などに労働市場に参入した女性が 結婚や出産によって仕事を辞めて労働市場から退出し 子育てがひと段落したあとにパート アルバイトとして再び労働市場に参入する女性は数多くいる そこで M 字カーブの解消とは 就業継続を促進し 結婚 出産によって労働市場から退出しないようにすることを意味する 就業継続率の上昇は 働く女性 働き続ける女性を増やし 女性の活躍を望む政府の思いと 近年増えてきたずっと働き続けたいという女性自身の思いを実現できる そこで国立社会保障 人口問題研究所による人口動向基本調査の 就業継続率に関する調査に注目する 就業継続について 女性の労働力率に M 字カーブがみられるが この主な原因は 結婚と出産の 2 つが想定される 人口動態基本調査によると 結婚については 結婚年別にみた 結婚前後の妻の就業変化 から 結婚後も働き続ける女性は 1985~99 年は 56.6% であったのに対し 2010~14 年は 72.7% に上昇し 結婚を理由に退職する女性の数は減少していて かつ就業継続の水準が高い そのため 出産前後で就業継続をできるかが大きなポイントである さらに 出産前後の就業継続率は 自分にとって何人目の子供かによって大きく異なり 第 2 子 第 3 子以降の就業継続率は 80% 近くあり 非常に高い これは 第 1 子の出産前後で就業継続ができるならば その後 子供が生まれても継続して働き続ける可能性が高いことを示す よって 第 1 子出産後の就業継続率に注目し この数値をどのようにしたら上昇させられるか その要因を見つけることは 女性の就業継続 さらには女性の活躍や女性労働力の確保につながると言える 同調査の第 1 子出産後の就業継続率に関する 第 1 子出生年別にみた 第 1 子出産前後の妻の就業変化 では図 1 から 28% から 29% 前後と 3 割弱のまま推移しておりほぼ変化が見られない しかし 2010~14 年の調査では第 1 子出産後の就業継続は 38.3% と 20 年間にわたってあまり変わらなかった数値に 急な上昇がみられた これは 良い傾向であると考えられるが 一体なぜ 2010~14 年に急に就業継続率が上昇したのであろうか 上昇した要因を見つけることは この先 就業継続を高めようとしたときに 何をすべきであるのかをはっきりさせてく

夫婦の割合 (%) れるだろう 以下では 第 1 章で 2010~14 年の第 1 子出産後の就業継続率の急上昇に関して 改正育児 介護休業法との関係を 第 2 章では 改正育児 介護休業法以外の要因との関係をみる これらの結果をふまえ 第 3 章ではくるみんに注目して 就業継続率の上昇とくるみん認定企業の増加の関係を示す 図 1 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 第 1 子出生年別にみた 第 1 子出産前後の妻の就業継続 3.8 3.8 4.1 4.2 32.8 28.4 24 23.6 33.9 42.8 40.4 39.3 10 9.6 12.1 13 11.2 15.3 19.5 28.3 1995~99 年 2000~04 年 2005~09 年 2010~14 年 第一子出生年 就業継続 ( 育児休業利用 ) 就業継続 ( 育児休業利用なし ) 出産退職 妊娠前から無職 不詳 調査対象 : 第 1 子 ~ 第 3 子それぞれが 1 歳以上の夫婦就業継続 ( 育休利用 ) : 妊娠判明時就業 ~ 育児休業取得 ~ 子ども 1 歳時就業就業継続 ( 育休なし ) : 妊娠判明時就業 ~ 育児休業取得なし ~ 子ども 1 歳時就業出産退職 : 妊娠判明時就業 ~ 子ども 1 歳時無職妊娠前から無職 : 妊娠判明時無職 ~ 1. 現状まず 2010 年の改正で以前のものとどうかわったのか 変更点は 5 つある 13 歳までの子を養育する労働者に対し 短時間勤務 (1 日原則 6 時間 ) を設けることを事業主に義務付け 23 歳までの子を養育する労働者は 請求すれば所定外労働 ( 残業 ) の免除 3 看護休暇の取得可能日数が小学校就学前の子が 1 人で年 5 日 2 人以上で年 10 日 4パパ ママ育休プラス ( 休業可能期間が 1 年 2 か月に延長 ) 5⑴ 苦情処理 紛争解決の援助及び調定の仕組み創設 ⑵ 勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告をしない または虚偽の報告をしたものに対する過料する制度の創設といったものである では それぞれを詳しく見ていく 改正前はどうだ

ったのかをそれぞれ見ていく 1と2は どちらか一方を事業主に努力義務としていた 3は 子供の人数に関わらず 労働者 1 人あたり年 5 日取得可能 というものだった 4は 休業可能期間が通常で 1 年であった 改正されて 配偶者の出産後 8 週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合には 特別な事情 ( 配偶者の死亡等 ) がなくても 再度取得可能になったのだが 改正前では 特別な事情がない限り再度取得が不可能であった 5は以前までは明記されていなかった この 5 つの変更点を踏まえて どの項目が今回のような急上昇をもたらしたのかを調べていく 1の短時間勤務が設けられている事業所は厚生労働省平成 21 24 27 年度 雇用均等調査 より 制度のある事業所が増加していることが分かる しかし 先行研究から 短時間オプションの義務化 (3 歳未満児のいる雇用者に 1 日原則 6 時間勤務の選択肢を提供すること ) は 第 1 子出産後の就業継続確率の有意な効果はみられない と分かった ( 永瀬 2014) よって 短時間勤務制度を持つ企業の割合が上昇していても 第 1 子出産後の就業継続率を上昇させたとは考えられない 図 2 企業の短時間勤務制度の有無 31.4 38.9 47.6 54.3 58.5 58.4 57.7 57.9 2005 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年短時間勤務の有無 厚生労働省平成 21 24 27 年雇用均等基本調査 2 所定外労働の免除とは 3 歳に満たさない子を養育する場合に従業員が当該子を養育するために所定外労働の免除を申請した場合に事業主は 所定労働時間を超えて労働させてはならないことである 所定外労働の義務化により 平成 21 24 27 年度 雇用均等調査 より 免除を行っている事業所は 2009 年には 40.8% に対して 2010 年には 49.8% と僅かながら上昇がみられる しかしこれは事業所の制度の有無であり実際に事業所でこの制度を利用したかどうかはわからない

図 3 企業の所定外労働の有無 49.9 55.6 54.9 55.2 54.6 40.8 23.2 26.8 2005 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 所定外労働の免除 厚生労働省平成 21 24 27 年雇用均等基本調査 3 子の看護休暇とは 小学校就業前の子を養育する労働者は 申し出ることにより 1 年に 5 日まで 病気 けがをした子供の看護のために 休暇を取得することが義務づけられた 図 4 より 義務付けにより 制度自体の有無の数値は上昇していることがわかる しかし 制度の利用状況は 2008 年は 12.7% 改正後の 2002 年には 21.6% に上昇しているが 2014 年には 20.4% と利用者数は減少した よって 制度自体の有無は上昇したが 利用者数が大幅に伸びたとは言い難い 図 4 子の看護休暇の有無 77.5 81.2 67.2 52.7 46.2 53.5 56.4 34.4 26.5 33.8 10.3 9.8 2002 2004 2003 2008 2012 2014 5 人以上の事業所 30 人以上事業所 厚生労働省平成 26 年雇用均等基本調査 4 パパ ママ育休プラスとはどういうものなのか それは 両親がともに育児休業を取得する場

合に従来よりも 2 か月長い 1 年 2 か月もの育児休暇が取れるというものである 片側の上限は 1 年なので 母親と父親が協力しないと 1 年 2 か月の休暇はとることができない 下の表 1からも分かるように パパ ママ育休プラスの利用率は育児休業後復職者に対して 2% しかいない だから 就業継続率はこれが原因で上昇したとは考えにくい 表 1 パパ ママ育休プラスの利用者割合 男女計 女性 男性 育児休業育児休業後育児休業後後復職者利用者利用者復職者計復職者計計 利用者 平成 27 年度 100 2 100 1.9 100 3 出典厚生労働省 以上の点から 制度改正自体に上昇をもたらす原因を見つけることができなかった しかし ほかの要因があると考えられる 2 章ではそれについて述べていく 2. 女性の就業継続率を上昇させるであろう要因第 1 章から 第 1 子出産後の就業継続率の上昇に 改正育児 介護休業法は 影響を及ぼしていないと考えられる よって 育児 介護休業法以外の要因として 働くことに関する 9 つの項目を検討する この 9 つの項目は 私たちが考えた女性が働きやすくなるための項目である 9 つの項目は (1) 第一子出産年齢 (2) 女性の労働力人口 (3) 男女の賃金差 (4) 出産費用 (5) くるみんの取得 (6) 雇用形態 (7) 保育所数 (8) 両親の手助け (9) 給付金 である (1) 第 1 子出産年齢第 1 子出産の出産年齢は 人口動向基本調査の年代と合わせて 1985 年からみると 1985 年に 26.4 歳 であるのに対し 2013 年には 30.4 歳 へ 4 歳の上昇がみられる しかし 就業継続率が急上昇した 2010 年前後で見ると わずかな上昇傾向がみられるだけで大きな変化はない よって 第 1 子出産年齢が就業継続率の急上昇の要因とは考えにくい

図 5 平均初婚年齢と母親の平均出生時年齢の年次推移 (2) 女性の労働力人口総務省 労働力調査 によると 女性労働力人口は 2005~14 年まで順に 2750 万人 2759 万人 2763 万人 2762 万人 2771 万人 2768 万人 2768 万人 2766 万人 2804 万人 2824 万人 である 特に大きな変化はみられない よって 女性の労働力人口が就業継続率の急上昇の要因とは考えにくい (3) 男女の賃金差男女の賃金を比べると 男性の方が女性よりも高い 男女間に差があることを前提にして 男性の賃金の平均値を 100 として女性との差を考える これに用いる数値は 厚生労働省 平成 26 年賃金構造基本統計調査 にある年代の数値と人口動向基本調査の年代を合わせて 用いるとする 下の表 2 から まず 女性の賃金は 2010~14 年の期間でそれ以前の期間よりも上昇がみられる 一方で 男女間の賃金差は 数値の低下もあったものの 2006 年以降上昇傾向にある 2010~14 年の女性の賃金の上昇はそれ以前と比べて目立つが 男女の賃金差は特に目立った改善はみられない よって 男女の賃金差が第 1 子出産後の就業継続率の上昇と関係があるとは言い切れない

表 2 賃金について 男女間の賃金差 女性の賃金 年 男女間の賃金差 年 女性の賃金 ( 千円 ) 2000 年 65.5 2000 年 220.6 2001 年 65.3 2001 年 222.4 2002 年 66.5 2002 年 223.6 2003 年 66.8 2003 年 224.2 2004 年 67.6 2004 年 225.6 2005 年 65.9 2005 年 222.5 2006 年 65.9 2006 年 222.6 2007 年 66.9 2007 年 225.2 2008 年 67.8 2008 年 226.1 2009 年 69.8 2009 年 228.0 2010 年 69.3 2010 年 227.6 2011 年 70.6 2011 年 231.9 2012 年 70.9 2012 年 233.1 2013 年 71.3 2013 年 232.6 2014 年 72.2 2014 年 238.0 (4) 出産費用出産費用は自然分娩 帝王切開や個人病院 総合病院 自宅出産等で費用が変わってくる 出産費用の平均として約 50~100 万とされている 出産費用は高額であるため 公的補助制度として 出産育児一時金 があげられる この制度は妊娠 出産に必要な費用としてサポートするために 1 児につき 42 万円が健康保険から支給される この制度のスタートは昭和 36 年にスタートし 平成 21 年 (2009 年 ) に現在の金額である 42 万円に制度改正がなされた しかし 2010 年以降に制度の改正はなく 出産にかかる費用は平成 21 年以降と変化が見られない よって この出産費用が就業継続率の急上昇をもたらしたとは考えにくい (5) くるみんの取得くるみんとは何か これについては この次の章で説明していきたい 図 6 より くるみんの取得企業数は大幅に上昇していることがわかる よって くるみんが 就業継続率の急上昇をもたらした可能性がある

図 6 くるみんの取得企業数 1818 2011 1471 428 652 845 1015 1219 くるみん取得企業数 (6) 女性の雇用形態女性の就業者に占める 非正規の職員 従業員の割合は 2002~2011 年から順に 49.3% 50.6% 51.7% 52.5% 52.8% 53.5% 53.6% 53.3% 53.8% 54.7% と割合は上昇も 減少もしていない よって 女性の雇用形態の変化はみられない (7) 保育所数の増減保育所の数は 下の図 7 より 2010 年から 2014 年までで約 1000 か所増えている これに対し 図 8 から 待機児童数は 5000 人減っていて 1 2 歳児の利用率も 2010(H22) 年と比べると 4.6 ポイント増加している なぜ 1 2 歳児を取り上げたのかというと 育児休暇は最大でも 1 年 6 か月までしか取れないからである この年齢の児童の利用率が増えたならば就業継続をする女性が増える要因とも考えられる しかし 2010(H22) 年以前も保育所数と 1 2 歳児の利用率は増加傾向 待機児童は減少傾向にあるものの 急増 急減は見られない よって これも女性の就業継続率の急増の理由と考えるのは難しい

図 7 保育所数 保育所数 26000 25000 24000 23000 22000 21000 20000 19000 18000 17000 16000 15000 25384 26275 25556 24825 22741 21371 19950 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 出典厚生労働省 図 8 待機児童数及び保育所利用率の推移 待機児童数及び保育所利用率の推移 30000 38.0% 25000 20000 33.00% 33.90% 35.10% 34.0% 15000 10000 5000 0 31% 29.50% 28.50% 27.60% 19950 25384 26275 25556 24825 22741 21371 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 待機児童数 利用率 (1 2 歳児 ) 30.0% 26.0% 出典厚生労働省 (8) 夫妻の親からの手助けの有無 第 15 回出生動向基本調査 によると 図 9 より 第 1 子が 3 歳になるまでに夫妻の母親 ( 子の祖母 ) から子育ての手助けを受けた ( 日常的に ひんぱんに 子育ての手助けを受けた ) 割合は 第 1 子出生年が 1980~90 年代にかけては上昇傾向にあったが 2000 年以降は 5 割程度で

推移し 2010 年以降では 52.9% となっている また この水準は 図 10 より 第 1 子 1 歳時に妻が就業している場合にはやや高い傾向にある しかし 2000 年以降は減少傾向にあり 2010 年以降では 58.2% となっている よって 夫妻の親からの手助けの有無が就業継続率の急上昇をもたらしたとも考えにくい 図 9 夫妻の母親からの手助けの総数 80.00% 70.00% 60.00% 50.00% 40.00% 30.00% 20.00% 10.00% 0.00% 51.60% 50.90% 53.40% 52.90% 46.00% 42.20% 25.70% 31.60% 39.40% 41.30% 44.80% 44.20% 22.80% 21.90% 22.40% 21.50% 22.50% 22.90% 1985~89 年 1990~94 年 1995~99 年 2000~04 年 2005~09 年 2010~14 年 夫妻どちらかの母親からの手助けあり 夫方の母親からの手助けあり 妻方の母親からの手助けあり 出典第 15 回出生動向基本調査 図 10 第 1 子が 1 歳時に妻が就業 80 70 60 50 40 30 20 10 0 63 64 65.1 62.9 61.1 58.2 46.5 37.9 37.6 50.4 49.9 50 35.2 37.8 33.7 28.7 27.1 23.1 1985~89 年 1990~94 年 1995~99 年 2000~04 年 2005~09 年 2010~14 年 夫妻どちらかの母親からの手助けあり 夫方の母親からの手助けあり 妻方の母親からの手助けあり 出典第 15 回出生動向基本調査

(9) 給付金今回調べる給付金は 出産や育児に関する給付金である これには大きく 4 つの給付金がある まず 出産育児一時金がある これは 子供が生まれたときに健康保険から支給されるものである 給付額は (4) 出産費用でも述べたように 1 児につき 42 万円が支給される 次に 出産手当金がある これは 産後休暇中の生活保障として健康保険から支給されるものである 給付額は 休業 1 日につき 標準報酬日額の 3 分の 2 相当額が支給される 3 つ目に 育児休業給付金がある これは 育児休業中の生活保障として雇用保険から支給される給付金である 給付額は 休業開始日の前日 ( 産休前日 ) から 6 か月目までの月給の平均額の 67% 6 か月目以降は 50% が支給される 2014 年 4 月までは 一律 50% の支給額であった 最後に 児童手当 ( 子ども手当 ) がある これは 市区町村から支給されるものである 給付額は 0~3 歳の子供 1 人につき毎月 1 万 5000 円 年収 960 万円以上では毎月 5000 円が支給される 以上が 主な給付金である 育児休業給付金が 2014 年に変更があったものの 他の給付金で変更は見られなかった また 今回調査するきっかけになった女性の就業継続率の急増 ( 第 15 回出産動向基本調査 ) は 2010 年から 2014 年が調査対象である だから 育児給付金の変更が今回の急増をもたらしたとも考えにくい よって これらの給付金が女性の就業継続率の急増をもたらしたとは考えにくい 以上の 9 つの項目から 就業継続率の急上昇をもたらしたと考えられるものは (5) くるみんただ 1 つであった 次の章では くるみんとはどのようなものなのか どのように作用したのかを述べていく 3. 就業継続率の上昇要因としてのくるみん 2 章から 2010~14 年の第 1 子出産後の就業継続率の急上昇の要因の 1 つとして くるみんが挙げられることが分かった まず くるみんとは何かを確認し くるみんが持つ 女性の就業継続率を上昇させる可能性について考える 3-1. くるみんとはくるみんとは 次世代育成支援対策推進法に基づき 事業主は 従業員の子育て支援のための行動計画を策定 実施をするが その結果が一定の要件を満たす場合に 厚生労働大臣から受けることができる認定のことである 必要書類を添えて申請を行うことで 子育てサポート企業 として厚生労働大臣の認定 つまり くるみんマークの認定を受けることができる 一定の要件とは 9 つある認定基準である 雇用環境の整備について 行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定したこと 行動計画の計画期間が 2 年以上 5 年以下であること 策定した行動計画を実施し 計画に定めた目標を達成したこと 平成 21 年 4 月 1 日以降に

策定 変更した行動計画について 公表および従業員への周知を適切に行っていること 計画期間において 男性従業員のうち育児休業等を取得した者が 1 人以上いること 計画期間において 女性従業員の育児休業等取得率が 70% 以上であること 3 歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員について 育児休業に関する制度 所定外労働の制限に関する制度 所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度 を講じていること 次の 1~3 のいずれかを実施していること 1 所定外労働の削減のための措置 2 年次有給休暇の取得の促進のための措置 3その他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置 法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと の以上 9 つである 2007 年 4 月から認定制度が始まり くるみん という愛称は 2007 年 2 月 16 日に一般募集によって決められた 愛称には 赤ちゃんが大事に包まれる おくるみ と 職場ぐるみ 会社ぐるみ で子供の育成に取り組もう という意味 や マークのイメージとして 子どもが優しく くるまれている というあたたかい印象が強いこと 企業 ( 会社 ) ぐるみ で 仕事と子育ての両立支援に取り組むこと といった思いが込められている 3-2. くるみん認定の意義くるみんの認定は くるみんの制度を創設した厚生労働省はもちろんのこと 全国中小企業団体中央会などで取得が呼びかけられている 取得に関しての方法や要件を解説するサイトも多い くるみん認定への関心が高いと言えるが くるみん認定の意味は何であろうか さらに くるみんの認定を受ける事業所の増加と就業継続率の上昇の関係をみるうえで 事業所が くるみんの認定をどのように考え どのような意味を持たせているのか また どのようなメリットを予測して認定を受けたのだろうか 事業所にとってのくるみん認定の意義について 3 つの観点があると考えられる ( ア ) 税制優遇制度 ( イ ) 学生 求職者の企業研究の指標 ( ウ ) 人材これら 3 つに関して 以下で 1 つずつ述べていく ( ア ) 税制優遇制度くるみんの認定をうけた企業は 認定を受けた企業は 認定を受ける対象となった行動計画の計画期間開始の日から認定を受けた日を含む事業年度終了の日までの期間内に取得 新築 増改築をした建物およびその附属設備 ( 以下 建物等 ) について 認定を受けた日を含む事業年度において 普通償却限度額の 32% の割増償却ができる といった税制優遇を受けることができる 申請をする必要はあるが 新たに事業所を増やしたり 拡張したりすることを予定している企業にとって くるみんの認定は費用を抑える効果がある また くるみんの認定が 新築 増築のきっかけとなりうることもあるだろう ( イ ) 学生 求職者の企業研究の指標

くるみんの認定をうけた企業はくるみんマークをホームページなどに掲載している くるみんマークは 従業員の子育て支援に力を入れていることを マークを見た人に印象付けることができる 仕事と子育ての両立に不安を持っている女性をはじめ 多くの女性が出産 子育てを経験すると予想されるため 女性全般から支持が得られると考えられる マークの有無は 働く場を選ぶ人と選ばれる企業 双方にとって差別化をはかるものとなる 厚生労働大臣の認定を受けていることは国から保証されているととらえられ マークの信頼性は高い くるみんマークがあることで 企業は子育て支援を積極的に行っている会社というイメージを持たせ イメージアップにつながる 特に 女子学生の就職活動ではくるみんマークの効果が強く発揮される 学生の就職活動を支援するサイトでは 女子学生向けに くるみんと くるみんの認定を受けた企業が取り上げられている くるみんマークは就職において 社員を大切にする企業 や 働きやすい環境が整っている企業 の目安とされる マークの存在により 企業は自社をアピールすることができる マークの認定を受けた企業は くるみんマークを取得した企業として 特集で取り上げられることもある よって 取得していない企業に比べると 学生に自社の情報を知ってもらう機会が増える点で有利である 認定を受ける企業が多くなると 認定をうけていない企業が劣っているとみられたり 学生にとってくるみんの認定が就職先の前提条件となったりすることも考えられる くるみんの認定は 一定の要件があり これを満たした企業だけが認定される仕組みであるが これによって くるみんの認定の取得企業の増加は 女性が働き続けるための支援がなされている企業の増加を意味する くるみん取得企業は 改正された育児 介護休業法に規定されている育児休業などの項目も積極的に実施していなければならないため 育児 介護休業法の規定を順守することにもつながる 働く先を求めている者 働く人を求めている企業 女性の活躍を目指す社会といった あらゆる面でくるみんの有無はプラスの影響を与えると考えられる また くるみん認定企業に優秀な人材が集まることが予測される 優秀な人材が集まれば その後の採用で より優秀な人材を確保できる 働いたときには企業の戦力になりえる可能性が高くなるといったメリットもある ( ウ ) 人材くるみんマークは 企業ですでに働いている人にもメリットがあると考えられる まず 就業継続に関係して 従業員の定着である 子育て支援によって 仕事と育児の両立を理由とする女性の退職を防ぐことができれば 企業は 女性が辞めたときに出る欠員を補うために新たに人を雇う必要がない これによって その女性への初期の教育投資の費用を無駄にすることなく かつ新たに費用をかけることもない 女性の人的資本に関して 女性は出産などで退職することが想定され 入社したときに 同期の男性に比べて教育コストが低く抑えられていて 十分な教育が受けられていないという問題がある 継続して働くことが想定されていれば このような差別は解消でき 男女がともにより力を発揮できるようになるはずである 就業継続 それにともな

う勤続年数の長期化は 働く本人には賃金の上昇 会社には技術やノウハウの蓄積による企業業績への貢献といったプラスの面もある さらには 女性が働き続けられる職場は 女性のモチベーションの向上にとどまらず 男性の働きぶりにも良い影響を与えるだろう 職場の活性化 企業の業績向上を期待できる 以上 3 点から くるみんには 税制優遇制度 企業の積極的な子育て支援 企業のイメージアップ 人材の有効な活用の大きく 4 つのメリットがあり このメリットが有効であと考える企業が増え 認定を受ける企業が増加していると考えられる 企業がくるみん認定の要件をもとに子育て支援を実施していることが 第 1 子出産後の就業継続率の上昇に影響を与えているといえるのではないだろうか 考察第 1 章より 2009 年改正の育児 介護休業法が第 1 子出産後の就業継続率の急上昇の要因ではないことが分かった この結果を受けて 第 2 章 第 3 章より 2010~14 年とそれ以前を比べた 第 1 子出産後の就業継続率の急上昇には くるみんの認定企業の増加が影響していると考えられる 企業にとってくるみんの認定を受けることがメリットであるとの認識が広まったと考えられる 企業がメリットを目的にくるみんを取得し 取得企業が増加することは 同時に 子育て支援に積極的 子育て支援としてより整備された企業が増加したことを意味する くるみんの広まりとともに 次世代育成支援対策推進法や 2010 年の改正育児 介護休業法に基づく子育て支援が行われてきているといえる 就業継続率の上昇は 働き続けたい女性にとって 女性の活躍を推進する日本にとって 重要な課題であろう おわりに今回の研究から 第 1 子出産後の就業継続率の急上昇の要因は くるみんの取得企業の増加であると分かった しかし この研究の過程から 就業継続率の上昇の要因を検証することについては 2 つの限界がある まず 制度の利用者数に関するデータがないことである 短時間勤務制度と所定外労働の免除について 今回利用したデータは 制度の有無に関するものであるが 制度のあるなしだけでは 実際に制度を利用した人がいるかはわからない 仮に利用者数が増加しているというデータがあれば これらが第 1 子出産後の就業継続率を上昇された要因である可能性はある 次に 今回は要因として 9 つ取り上げたが 第 1 子出産後の就業継続率の上昇をもたらす要因はほかにも考えられる また 就業継続率の上昇にはあらゆる要因が複雑に関係していると推測される 以上をふまえ 今後の研究を進めていきたい

参考文献永瀬伸子 (2014) 育児短時間の義務化が第 1 子出産と就業継続 出産意欲に与える影響 : 法改正を自然実験とした実証分析 日本人口学会 人口学研究 ( 第 50 号 ) pp.29-53. 朝井友紀子 (2014) 2007 年の育児休業職場復帰給付金増額が出産後の就業確率に及ぼす効果に関する実証研究 疑似実験の政策評価手法を用いた試論 労働政策研究 研修機構 日本労働研究雑誌 ( 第 56 号 ) pp.76-91 朝井友紀子 神林龍 山口慎太郎 (2016) 育児休業給付金と女性の就業 一橋大学系経済研究所 Discussion Paper Series No 639, 厚生労働省 愛称 くるみん に決定!! <http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/02/h0216-3.html>2016 年 11 月 20 日アクセス内閣府 平成 27 年度版少子化社会対策白書 < http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w- 2015/27pdfhonpen/27honpen.html>2016 年 11 月 20 日アクセス総務省統計局 労働力調査 <http://www.stat.go.jp/data/roudou/>2016 年 11 月 20 日アクセス国立社会保障 人口問題研究所 第 14 回出生動向基本調査 <http://www.ipss.go.jp/psdoukou/j/doukou14_s/doukou14_s.asp>2016 年 11 月 21 日アクセス国立社会保障 人口問題研究所 第 15 回出生動向基本調査 <http://www.ipss.go.jp/psdoukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp>2016 年 11 月 21 日アクセス厚生労働省 平成 26 年度賃金構造基本統計調査 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2014/>2016 年 11 月 21 日アクセス厚生労働省 平成 21 年度雇用均等基本調査 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-21.html> 2016 年 11 月 26 日アクセス厚生労働省 平成 24 年度雇用均等基本調査 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-24.html> 2016 年 11 月 26 日アクセス厚生労働省 平成 26 年度雇用均等基本調査 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-26r-03.pdf>2016 年 11 月 28 日アクセス厚生労働省 平成 27 年度雇用均等基本調査 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-27.html>2016 年 11 月 26 日アクセス全国健康保険協会 出産育児一時金について <https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r310#q2>2016 年 11 月 28 日アクセス厚生労働省 平成 23 年度版働く女の実情 <http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/joseijitsujo/11.html>2016 年 11 月 21 日アクセス