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1 腹筋と背筋 筋緊張検査から考える 腹筋と背筋 鈴木俊明 関西医療大学大学院 研究副科長 教授 理学療法士 医学博士 いとか言っていました それは触診で 鈴木 触診は代表的な方法と言えます 緊張 は tonustonus とは張りのよ 理学療法の分野で 臨床 教育 研究と幅広 うなもの く活動されている鈴木先生本誌でも何度も 鈴木 そうですどうやって検査をするか 登場していただいているが 今回は 先生の というと触れて 軽く押し込むわけです 研究のなかから 筋緊張検査 の革命的視点 すると緊張の張りがあるところは 押し込 から始まり 腹筋と背筋 のみかたについ んだ手の感覚として下からボーンと上がっ て 研究データを踏まえて 臨床やひいては てきます逆に緊張が低いときは 触って トレーニング現場における問題について語っ いくとずっと下がっていってしまいます ていただいた そのように診ていきます言ってみれば 高すぎるのも 低すぎるのもよくない 主観的な評価になり 熟練が非常に必要に 鈴木 よくありませんですから その緊 筋緊張検査は筋の緊張だけを 評価しているのではない なりますパフォーマンスをよくしていこ 張状態を正常な状態にコントロールしてい うとしたときには 筋の緊張は非常に大事 くことが必要になります 筋緊張について研究されているとかそ な要素になってきます それは何が硬くしたり 緊張をなくした れはどういうもの 緊張しすぎの状態だと張りすぎになって りしている 鈴木 筋肉の状態を知ろうとしたときに しまう 鈴木 それは疾患によって違ってきます そのひとつの方法として筋緊張検査という 鈴木 正常のレベルがあって ただしそ 明らかに脳に障害がある人では大脳からの 筋の緊張をみる検査があります私は専門 れを検査でみるにはトレーニングが必要で 指令が下りてこなくて働かないとか 逆に が脳血管障害やパーキンソン病のような神 すたとえば健康な人の普通の筋肉で 筋 大脳からの指令が起こりすぎて働きすぎて 経疾患ですが そういう方たちは動きが不 の緊張はこのくらいが正常であるというこ しまうこともあります運動器疾患であれ 自由ですから 正しく徒手筋力テストを用 とを いわゆる健常者でトレーニングをす ば たとえば手を挙げる動作を 普通は棘 いて筋力検査ができませんそこで筋緊張 るわけですそれと比較をして患者さんや 上筋がはたらいて上腕骨頭を押し下げて 検査を行うのですが スポーツ領域でも 障がい者は高いあるいは低すぎるというよ その後に三角筋で持ち上げるのですが 棘 たとえば筋力は正常ですが 動作が正常で うにみていきます 上筋がうまくはたらけないと三角筋ばかり ないことは珍しくありませんそういうと 高すぎる というのはどういうときに が頑張ってしまいます本来はいくつかの きには 筋力は発揮できるけれども 動作 起こる 疲労 筋が協同して活動するのが理想的なのです のなかで正常な筋緊張が発揮できないこと 鈴木 疲労でも起こります頑張りすぎた が ある筋がうまくはたらかないと ある もありますまた 大腿四頭筋のように全 り あるいは短縮してしまって動かなかっ 一定の筋肉だけが頑張ってしまうことがあ 体的に筋力は正常でも内側広筋だけが筋機 たら 筋は短くなって 硬くなってしまうた りますいわゆる使い方の問題ですここ 能が低下している場合もありますこのよ めに起こります筋を使わないと 張りがな で大事なことは それを私たちがどう診る うなときには 内側広筋だけの筋力検査は く柔らかくなる人もいますが 筋肉が短く かです概念がわかっていても それを実 検査できませんので 筋緊張検査を使いま なって硬まってしまうわけですから 触っ 際に診ることができなければ正しい評価が す筋緊張検査の代表的な方法として 筋 たときにはすごく硬い感じになりますそ できませんそれがわかるにはどうすれば 腹を検査することで筋の緊張が高いとか低 ういうことが状況として起きてきます いいのかというと それは疾患に関係なく 2 すずき としあき先生

筋緊張検査から考える 腹筋と背筋 一次的障害に対する検査 一次的障害 痙縮 筋強剛 弛緩 動作時筋緊張検査 深部腱反射検査 二次的障害 筋短縮 皮膚短縮 二次的障害に対する検査 静止時筋緊張検査 他動運動による 臨床では一次的障害と二次的障害が 混合していることが多い 微かな圧で皮膚緊張 圧の量を徐々に強める ことで筋緊張を測定 将来的には皮膚緊張の概念が必要 図 1 筋緊張検査は筋の緊張だけを評価し ているのではない 図2 動作をちゃんとみることができなければい る 感じるかというところで それはとても大 けないのです 鈴木 だいたいわかります皮膚の硬さ 事なところです 今の例では 棘上筋は筋緊張が低下して つまり 皮膚緊張 というのは新しい概念 いて 三角筋の筋緊張が上がっている で 私は 皮膚緊張 と 筋緊張 を分 鈴木 そうですですから棘上筋の筋緊張 けて検査すべきだと言っています 図 3 筋緊張検査は筋群ではなく 各筋で評価 を上げるようなアプローチをして 三角筋 たとえば 体幹が屈曲してしまって円背様 鈴木 筋腹中央部という筋肉がもっとも発 はどちらかというとリラックスさせるよう の方がいらっしゃいますが その場合 腹 達しているところで筋肉の検査をします な ストレッチのようなことをしてあげる 筋のなかの腹斜筋の状態でみると 2 つのタ それがすべてを反映するのではないという その見極めは動作をみながら行いますが イプがあって 1 つは頑張ってしまうから 事例をあとで紹介しますが その前に 筋 そこがわれわれセラピスト側の能力に大き 屈曲してしまうタイプもう 1 つは座って 緊張検査は筋群ではなく 各筋で評価しな く左右されるところです いるときに重力に対抗できなくて屈曲して いと意味がない ということについて述べ 筋緊張の検査は決して筋の緊張だけでは しまうタイプです頑張れないから屈曲し ますこれは 非常におもしろくて 今ま ない てしまう人たちは 筋肉自体は柔らかいの で 腰背筋群 脊柱起立筋群 腹筋群 鈴木 そうです筋の緊張を触るときには ですが 患者さんはずっと屈曲姿勢を保っ というように 筋群 と言っていま 決して筋肉の緊張だけを評価しているわけ ているので 皮膚自体は伸びないので硬く したが 実は 1 つ 1 つの筋の作用が異な ではありません 図 1 2 皮膚の硬さな なってしまうのです皮膚が硬くて筋は柔 ることがわかって 体幹の謎を探る 第 どもみていますたとえば肘を骨折してギ らかいという場合も実は案外多くて 私た 4 版 関西理学療法学会編集 株式会社 プス固定をして ギプスをカットしたあと ちはよく間違って筋緊張が高いと言ってし アイペック という書籍を出版したのです 動きが悪いというときに セラピストは まうのですが 表層の皮膚は硬くても も が そこでは腹筋について非常に詳細に書 肘関節の関節可動域練習を行いますが そ うちょっと押し込んでいくと柔らかいとこ いてありますしかし 背筋の詳細な機能 うではなくて ギプスで固定された肘の内 ろがあるそのミスマッチを見分けられな については 私もわからない部分があった 側の部分を診てみると 長い間同じような いといけないので 皮膚緊張という概念を のですそれが最近さまざまなことがわ 姿勢でいるので皮膚が短縮しているわけで 出していきたいのです かってきたので 講演会活動では現在 そ す触れると固く感じるのですが 決して まだ皮膚緊張という言い方は一般的では れをメインに述べています その硬さというのは 筋肉だけの硬さでは ない なくて 皮膚の硬さ あるいは脂肪が硬い 鈴木 まだ言われていないですし われ す腹直筋は第 5 7 肋軟骨 剣状突起 場合もあります筋肉と腱がつながってい われ仲間で同じ患者さんを診て 私が皮膚 前面から恥骨に付いている筋ですが 腹直 るところ 筋腱移行部の腱が硬いとき 触 の緊張が高いと思っていても ある程度熟 筋の作用は体幹を前屈させる動きです学 ると非常に硬いと感じてしまう場合もあり 練した者同士でも意見がまちまちになりま 校でも腹直筋はひとつの筋としか教えない ます筋ではなく腱が硬いそのときには す非常に難しいところがあります皮膚 のですが 私は最近は 腹直筋は上部 中部 注意が必要になります 緊張は皮膚に触れて そこで押したらどう 下部の3つに分けて考えろ と言っていま 熟練している方は何が硬いのかがわか 感じるか われわれの指のセンサーがどう すなおかつ左右で分けるつまり上の右 筋緊張検査 図3 静止時筋緊張検査 これはパーキンソン病の患者さんの例で 3

筋緊張検査から考える 腹筋と背筋 図 14 座位側方移動 30cm 非移動側 立位 一側下肢を体重計へ 反対側下肢 を体重計と同じ高さの台 同じ体 重計 上にて直立位を保持させ 足幅は肩幅と同様とした 片脚立位 一側下肢の踵を離床させ 足尖部 が軽く体重計に触れている状態の 片脚立位 図 15 図 16 支持側腹斜筋群の筋活動の変化 いうのは 各々の筋 作をみないと変わらないのです左をマッ の検査をして それ サージしてもらって そのときには楽に に対するアプローチ なって帰ることになるでしょうが 根本的 をちゃんとしていか な治療にはならないということをわかって ないと変わらないと ほしいと思います 治療において ストレッ 思います チも大事ですが 筋だけのことを考えると 運動は 単独の やはり正しくはたらかせることが第一にな 筋肉で行っているこ ります とはまずなく 同じ すしかし ここは外腹斜筋が通っておら ような視点でみていかないといけない ず 通っているのは内腹斜筋と腹横筋しか 鈴木 この筋が使えないのでこういう動 ないので 内腹斜筋の活動は大きな要素と 作ができないとか この筋が使えないので 捉えていいだろうということです ここが頑張っているんだとか そう思って 一般には 腹筋強化 背筋強化と言うが いる読者の方たちもたくさんいるでしょう 鈴木 それでは ダメだということになり し 硬い筋は悪い筋と思っている人が多い ます と思います痛みがある 筋疲労している スポーツの世界でも割りにラフに腹筋強 とか 過剰に頑張っているとか だから先 化とか背筋強化とか言っていますが ほど上げた図 11 の右に偏位している方で 鈴木 それは通用しない時代になってくる も 先生 いつも左が痛いのです と言っ わけです ていました私のところを受診されるま アスリートでもレベルが高くなると 腹 で この患者さんは 左をマッサージして 筋 背筋ももっと細かく考えてトレーニング もらっていました と言うのですが それ していると思います だけではよくはならないのですなぜかと 鈴木 それはそうだと思いますよこれま 言えば 右が弱いからです右が高まって でのように漠然とやっているようでは 実 くれば 左は何もしなくても痛みが落ちて 戦では使えないということですある程度 くる可能性は十分あります までよくはなっても トップアスリートを その分 左は楽になる 治す人とか よりスキルを高く必要な人と 鈴木 そういう観念で患者さんの姿勢 動 メモ 関西医療大学 590-0482 大阪府泉南郡熊取町若葉 2-11-1 TEL.072-453-8374 http://www.kansai.ac.jp/index.html 関西医療大学大学院 鈴木研究室の紹介 鈴木研究室では 今回の特集でお話しし た体幹筋の新しい作用の解明に関する筋 電図を用いた研究だけでなく 運動イメー ジ練習の効果的な方法の解明 鍼の理論 をとりいれた新しい理学療法である経穴 刺激理学療法の開発に関する研究を行っ ています他の研究室にはない 治せる セラピスト を育てるために必要な科学 的な臨床研究を行い新しい知見を学会 論文により発信していきたいと思います 興味のある方は 是非一度見学においで ください 鈴木研究室のホームページ http://www.suzuki.grade-a1.com/ 9

2 腹筋と背筋 腹筋群 とくに外腹斜筋と 内腹斜筋のはたらきについて 渡邊裕文 六地蔵総合病院リハビリテーション科 理学療法士 す重層部位であるのに外腹斜筋単独部位 あるいは内腹斜筋単独部位のはたらきを反 映していないというような結果が 課題に より得られました 最初は腹筋群としてみていた 腹筋を構成するとくに外腹斜筋 内腹斜筋 渡邊 そうですしかし上記のような結 その重層部の 3 つについて 表面筋電図でみ 果を受け より詳細な検討が必要ではない てきた渡邊先生に 研究の概要と臨床での応 かということで 鈴木俊明先生からは 結 用について聞いた 果はさておき 体幹前面部に表面筋電図の 電極をいくつか貼ってみてみよう という 外腹斜筋 内腹斜筋 重層部で異なる動き ことになりましたもっとも深部にある腹 先生の腹筋の筋電図研究というのは では 外腹斜筋と内腹斜筋の合同あるいは 渡邊 腰背筋群 についてもみましたが 単独で活動しているということを念頭にお 当初は 腹筋群 として捉え 表面筋電図 き 腹直筋にかぶらない部分で上記の 3 つ いう結果だったのですが 電極を 15 チャ をとっていました 当初の表面筋電図にお 部位を含めて 計 15 チャンネルを体幹の ンネル貼ってみていくと 20 30cm 移 ける電極位置を図 1 に示す 三層になっ 前面部から側面部に貼りました 図 3 動していくと 移動側では上のほうで遠心 横筋をみることは難しいので 表面筋電図 わたなべ ひろふみ先生 ている腹筋群のうち表層の外腹斜筋 中間 そのうえで同様の課題により表面筋電図 的にとめるようなはたらきをしているのが 層の内腹斜筋について単独に表面筋電図が をとってきました重要だと思っているの わかりました 図 4 非移動側は 骨盤 とれる部位という文献が出てからは それ は ちょうど骨盤内の電極位置で いろい を挙上して体幹を側屈位に保つはたらきが にしたがって 外腹斜筋 内腹斜筋 その ろな動きに先行したり 主動作的にはたら 全体にみられました 図 5 重層部位という主に 3 カ所に電極をつけ表 いたり いろいろな意味で 頑張る 部位 これまでは移動して止まり その姿勢を 面筋電図をとっていました 座位で上体 体 でありますもっと上方 肋骨 胸郭に近 維持するという静的な場面をつくり 表面 重 の側方移動 前方移動 あるいは後外 い部位 では 胸郭がねじれたり 胸郭が 筋電図を測定してきました筋の長さがあ 側 斜め後方 への移動で表面筋電図の変 動いたりしないとはたらきにくいという印 まり変化すると表面筋電図の活動量を客観 化をみてきました 腹筋群 としてひと 象ですとくに 座位での上体 体重 の 的に捉えられないので 静的な場面を 5 秒 くくりにしていた筋活動が 外腹斜筋単独 側方移動と斜め後ろへの移動をみてきまし 間維持したときの表面筋電図の変化を比較 部位と 重層部位および内腹斜筋単独部位 たが 骨盤が上がる側は腹筋全体で活動す しました今年の日本理学療法士学会で発 とでは筋活動パターンが異なるなどという るのですが 移動側は胸郭と骨盤が離れて 表するものは 動的場面での 腹筋群 の ことがわかってきました いき 移動距離が伸びていくとより肋骨に 活動パターンをみたものですが 非移動側 近い部位が少しはたらいてきます 図 4 は全体的にはたらくと言いましたが 全体 7 P.12 参照 的にはたらくのですが おそらく内腹斜 第8肋骨の下縁が外腹斜筋単独部位 骨 盤の鼠径部 上前腸骨棘の 2 cm 下方の鼠 径部 の 2 cm 内側が内腹斜筋単独部位 最初 腹筋群 としてみていたときは 筋 骨盤内の がより持続的にはたらき その間が重層部位と捉えていただくとよい 移動側は座位と同じレベルで維持され伸び 側方に移動して座位に戻ってくる前までは のですが 電極位置を図 2 に示す それ ていきますが 非移動側は骨盤を上げてい たらくという結果です他の部分は骨盤を ぞれが異なるパターンを示すということで かなければならないので 強くはたらくと 挙上しているときにはたらいているのです 10

腹筋群 とくに外腹斜筋と内腹斜筋のはたらきについて が 戻るときは抜けるというパターンでし た骨盤内では 座位に戻ってくる最後の 局面くらいまではたらいていました移動 側は移動する前に逆応答現象 一度重心を 逆方向に移すのに骨盤内の筋 内腹斜筋 がはたらいているようなパターンを示しま した移動するときに 上部がはたらくと いう人もいたのですが 共通してみられる のは 今述べた逆応答現象と非移動側が全 体的にはたらいていく戻って行くときま で骨盤内の内腹斜筋だと思いますが その 腹斜筋群 肋骨下縁とそこから恥骨へ向かう線上の近位部 図1 腰背筋群 第 4 腰椎棘突起側方 3cm 腹筋群および腰背筋群の表面電極位置 部位が持続的にはたらくというパターンで す ダイナミックに動かしていくときには 上部の外腹斜筋が重要だと思いますが 骨 盤内の内腹斜筋の横方向の線維が重要なは たらきをしているという印象を得ていま す 臨床への応用 それは最終的には何をみようとしてい る 渡邊 今 腹横筋などの深層筋によるコ アスタビリティが注目されていますもち ろんそれが大切で そのはたらきという前 提があってのことだと思うのですが 実際 に表面筋電図を用いて客観的にとってみた 体幹前面筋 ① 外腹斜筋単独部位 ② 内 外腹斜筋重層部位 ③ 内腹斜筋単独部位 図2 体幹後面筋 ④ 多裂筋 ⑤ 最長筋 ⑥ 腸肋筋 筋電図電極位置 データによって 患者さんに触って体表か ら骨盤を動かしたり 体幹を操作したりす るときに 触診できる外腹斜筋や内腹斜筋 のはたらきを明確にしていきたいというこ とがあります現在は健常者でデータを とっているのですが そのデータをもとに 内腹斜筋の骨盤内のはたらきが少し悪いと ① 外腹斜筋単独部位 ② 内外腹斜筋重層部位 ⑥ 内腹斜筋単独部位 以上 Ng らの 報告 ③ ⑤ 内外腹斜筋重層部位より骨盤 にかけて ⑦ ⑫ 内腹斜筋単独部位より直上の 肋骨にかけて ⑬ ⑮ 大転子直上の腸骨稜上部の側 腹部 か 肋骨付近の筋の活動が乏しいとか 逆 にもう少し抑えなければいけないとか こ のように臨床 評価および治療 に用いる ことができればと考えていますこの患者 さんが示す状態から 内腹斜筋の活動が足 りないとか 逆にはたらきすぎているとい うように 臨床場面で筋電図はとれません 図3 体幹前面への複数電極位置 から 蓄積したデータから評価や治療につ なげていければと考えています 矢状面の問題というより前額面の問題 11

3 腹筋と背筋 腹筋群と腰背筋群の 筋電図学的考察 三浦雄一郎 第一岡本病院 理学療法士 だろうと考えたのでしょう実際に体幹筋 解剖の研究をして 外腹斜筋 内腹斜筋 腹直筋がどこで表層に出てくるか その場 腹筋群 腰背筋群について 筋電図学的考察 所は体表上から確認できる骨を指標にして を続けてきた三浦先生に 研究の経緯から わかりやすく提示する内容でした 図 1 歩行時の腹筋の活動パターンが多様性である 参考文献1 つまり腹筋の電極装着部位 こと またいったんは腰背筋群として全体で がバラバラであったことに関して警鐘を鳴 捉えてよいと結論したものの 最近は別のみ らしましたNg は 外腹斜筋の単独部位 かたに変わってきた話も含め 両筋群につい 内腹斜筋の単独部位 さらに外腹斜筋にお て詳しく語っていただいた いても深層に内腹斜筋があるところ 腹直 筋も上部と下部など 筋電図は筋線維に平 腹筋群の解明 行にとることが基本ですので その線維の 先生の筋電図学的研究というのは 角度まで丁寧に提唱しましたこの論文を 三浦 腰痛症患者に対する体幹運動機能の 読んでこれはすごいと思いましたちょう 評価として始めました私たちセラピスト ど私も 8 チャンネルの動作筋電図 動作中 のかブラックボックス的な部分ではあるの は臨床において手で感じたことを信じて評 に同時に 8 つの筋電図が測定可能 をこ ですが その内外腹斜筋重層部位を含めて 価 治療を行いますが それはあくまでも の年にリハビリテーション科で使用できる みな異なるものでした最初はたまたまそ 主観的なことであり 自分の感じたことを ようになったので Ng の言うとおりの場 ういう結果であったのであろうと考えてい どうしたら患者 医師 同僚に上手く伝え 所で一度測定してみようと思い 同じ部位 ましたが その後の被験者においてもやは られるか 悩んでいました筋電図は筋肉 に電極を装着させて歩行させたのですそ り異なる活動パターンでしたしかし よ を活動させる際に発生する電気活動を体表 れまでは腹筋群ということでしか考えてお くよく観察していくと内腹斜筋はこういう 上から測定しますすなわち ある運動をし らず 臨床にいても同様に考えていたので パターン 外腹斜筋はこういうパターンと たときに特定の筋がはたらいている場合に 腹筋はどの筋も同じであり活動のパターン いうのがみえてきたのですそれが腹筋は は筋活動が大きくなり 使っていない場合 も変わりっこないと想定していましたし もっと詳細にみていかないと患者はよくな には筋活動も少なくなりますそれによっ かし 結果をみて驚愕しましたさまざま らないと考えるきっかけになりましたそ て患者の異常動作 代償動作 疼痛に対す なパターンが表れたのです 参考文献2 れと同時に Ng の体幹筋の研究成果を世 る影響などを理解しますよって 筋電図 それは腹直筋と外腹斜筋 内腹斜筋 界中が注目し 飛躍的に腹筋に関する筋電 は私にとって評価内容や治療成果を代弁し 三浦 腹直筋 外腹斜筋 内腹斜筋それと 図研究がすすみ 個々の腹筋の機能が明 てくれるものです腰痛に関する体幹筋に 内外腹斜筋重層部ですが すべてが異なる 確にされてきたように感じますSnijders 関して当時 約 20 年程度前 は世界的に 活動パターンでした 図 2 という研究者が内腹斜筋にどのような役 も腹筋については腹筋群という捉え方をし 腹横筋は深すぎて表面筋電図ではとれな 割があるのか注目しました 参考文献3 ており 腹筋の筋電図に関する論文におい い Ng の言う内腹斜筋の単独部位は 骨盤の ても研究者によって 測定している位置が 三浦 腹横筋はとれませんただし Ng は なかで線維が真横なのです上に行けば行 バラバラでした結果もまちまちでした 内外腹斜筋重層部位といって 外腹斜筋の くほど角度が上方になるのですが Ng の そのような状況で体幹筋の筋電図研究を 下に内腹斜筋 腹横筋がある場所を 1 つ 言うところでは真横なのですわれわれは 行っていた Ng は このままではいけない 提唱していますそこは何を反映している 臨床で骨盤が不安定で仙腸関節がずれるこ 14 みうら ゆういちろう先生

第 8 肋骨 外腹斜筋単独部位 腹直筋上部線維 腹直筋下部線維 外腹斜筋 内腹斜筋重層 部位 内腹斜筋単独部位 図1 Ng による腹筋の特定部位 とで腰痛が生じる場合 仙腸関節を安定さ せる効果があるペルビックベルト 骨盤 周囲に巻くベルト を用いますSnijders は内腹斜筋にはそれと同じような効果があ るのだろうと推測したのです内腹斜筋に は骨盤を安定させる効果があるのではない 図 2 歩行時の体幹筋 の筋活動パターン 健常者における歩行中の筋 活動パターンを示している 一歩行周期の筋積分値の平 均を 100% として正規化し ている実線は平均 幅は 標準偏差である 健常者 5 名 男性 3 名 女性 2 名 平均年齢 26 ± 3.1 歳 かという推察を基にして 運動課題として 立位の 休めの姿勢 を選択しました立 迎えますすなわちダブルサポートのとこ 位にて片方の脚に体重をかける姿勢です ろです荷重がもっともかかる立脚中期で それと片側の下肢に体重をかけることで仙 筋活動が高まったのは Snijders の言う内 腸関節に剪断力をかけたい そのときにお 腹斜筋だけだったので おそらく仙腸関節 そらく仙腸関節を締める効果が出てくるの の安定化のための筋肉の 1 つなのだろう ではないかと考えたのですまた リュッ と 私自身も理解し Snijders の考えを クサックのようなものを背負わせて 重み 支持しました をかけることで同様に仙腸関節へ剪断力を それから ニュージーランドの研究者 かけたときに 内腹斜筋の筋活動がどう変 も同様に歩行で Ng と同じ部位で筋電図を 化するのかをみましたその他に仙腸関節 とって 同じようなパターンを報告し 仙 を安定化させる効果のあるペルビックベル 腸関節を安定させるための内腹斜筋の筋活 トを締めて 骨盤を安定させた場合に内腹 動だとしていますそれ以降にそういった 斜筋の作用はなくてもよいのではないかと 個々の腹筋の運動機能に関する論文が発表 発症後 4 年経過した脳卒中患者の内腹斜 考えましたそういったいくつかの仙腸関 されてきましたそれまでは 腹筋群 と 筋の促通にて歩行が改善した症例を紹介し 節への剪断力の増減に関わる運動課題のな いう捉え方だったのを 現在ではより詳細 ます4 年前に脳卒中にて救急病院で治療 かで すべて内腹斜筋はおそらく締める に評価していく必要があるだろうという流 を受け 麻痺の影響は少なく 歩行も自立 つまり安定させる作用があるだろうという れになっています されておりましたが その後徐々に麻痺側 初回評価時 図3 運動療法開始 2 カ月後 麻痺側下肢片脚立位アラインメント 結果を導きました私の歩行時の筋電図研 内腹斜筋の役割についてはこのような経 である右下肢が出にくくなり バランスが 究でも 立脚中期で内腹斜筋だけが筋活 緯によって理解でき 臨床の場面でも積極 悪くなったこと 躓き転倒が時折起こるよ 動のピークを迎えました内腹斜筋はそこ 的に評価 治療の場面で用いるようになり うになったことで 4 年ぶりにリハビリを から遊脚期にかけて筋活動が減少するわけ ました立位での体重のかけ方に配慮し 希望されました初回評価時に麻痺側 右 ですが 一方で内外腹斜筋重層部位は逆に 内腹斜筋の筋活動を促通させる技術開発を 側 へ体重移動させると麻痺側内腹斜筋の 遊脚期でグッと筋活動が増加してきました 行い 腰痛症患者の治療や脳卒中片麻痺患 筋活動が低下しており 体幹が麻痺側に側 図2 腹直筋と外腹斜筋は体幹の回旋が 者の歩行改善に効果があることを実感しま 屈していました 図 3 歩行においても した 右立脚期に体幹が右に側屈し その影響は もっとも起こるところで筋活動のピークを 15

4 腹筋と背筋 トップアスリートに対する 腹筋と背筋 の捉え方 栗田 聡 ヤクルトスワローズ フィジカルディレクター 理学療法士 させると見事なパフォーマンスを発揮する 選手がいます野球というスポーツにおい て体幹を力の伝導路として捉えていくと 特化してアプローチしなくてよい場合も多 86 年 ドラフト1位で広島カープに入団す いんですまたその逆に 個別には能力が るものの度重なる故障で引退そんな自らの 高いのに 動作になると使えないそうい 経験を生かし 引退後にはプロ野球選手で初 う選手もいます となる理学療法士免許を取得数多くの選手 アプローチへの判断はどのように から熱い信頼を寄せられながらスポーツ医療 栗田 体幹筋に限らずですが パフォー の最前線で活躍する栗田氏に 腹筋と背筋の マンスを最大限発揮するために必要なのか 捉え方 また評価からアプローチの仕方まで どうか をしっかりと評価し 動作やパ 幅広くうかがった フォーマンスにとって体幹の機能がどうい う役割として必要なのか 選手ごとに考え それはパフォーマンスに必要か ていく必要があります くりた さとし先生 左右は川島慶三選手 腹筋と背筋 というテーマですが ま 弱いのか 強いのか必要なのは 止め ずはそれらをどう捉え どのようにアプロー る能力なのか ダイナミックな出力なのか チしているのか 概要としての考え方を教え 場面場面でのはたらきなのかもしくは て下さい それほど必要ないのかそれらを総合的に 栗田 腹筋 と 背筋 と分けています 判断 アプローチして 腹筋背筋をパフォー トップアスリートの腹筋背筋は MMT5 が 実際動作を行うときにはどちらだけが マンス向上につなげていかなければなりま 栗田 私はプロ野球選手を対象に治療し はたらくことはありません当然割合は違 せん ていますが 野球選手に限らずトップアス いますが 必ずどちらもはたらきますで たしかに体幹は重要だと言われています すから 私は腹筋と背筋というよりも 体 が ただ鍛えたらよいというわけでは当然 幹筋 として捉えており そして 頭頚部 なく アプローチする必要がない場合も多 の位置を司る役割を担う重要なパーツであ くあります る そのように考えています ですから評価や目的を細かく行い また すからね リートの腹筋背筋は 当然はたらいている んです MMT 徒手筋力テスト で 2 や 3 と いうことはあり得ない絶対 5 なんです だから難しいんです たとえば立ち上がり困難 歩行困難 立 最近はスポーツにおける体幹筋の重要性 さらに細かなアプローチをしていく必要が がたびたび述べられているが あると思っています 位保持困難という状態で体幹筋がはたらい 栗田 当たり前のことですが 腹筋背筋の 細かなアプローチ たとえば ていませんね 筋出力が弱いですね とい 重要度は人によってまったく異なります 栗田 たとえば 腹筋を鍛えよう と一 う状態であれば 腹筋 10 回 3 セットとい また 腹筋背筋という体幹筋群の活動性 口に言っても 求める能力が 動的なもの うメニューなどで 解決する場合があるか が高い人間が そのまま高いパフォーマン なのか静的なものなのか 回旋能力なのか もしれません スになるかというと そうとは言い切れな しなやかな収縮タイミングなのかによっ トップアスリートの場合は いことも多いのではと考えています て 体幹に対する下肢の角度 股関節の屈 栗田 年齢や条件にもよりますが AD 曲角度や内外転の角度も変わってきます L 日常生活動作 というのはある程度戻 それによって 体幹の活動性が違ってきま りやすかったりしますそれに比べると たとえば 細かな評価ではどの場面でも 体幹のはたらきが悪いのに 実際に動作を 21

トップアスリートに対する 腹筋と背筋 の捉え方 のですが 右の肩甲骨が下制しており 頚 していっただけで 2 カ月ほどで改善して ラルな状態にあるべきなのに 古野の場合 部から脊柱にかけてのアライメントも崩れ もとのパフォーマンスを取り戻しました は その3つに対してすべてが反対となっ ていました 評価 治療していくうえでまず行うべきは ていました そして とくに右の腹斜筋が働きづらく 故障箇所に対するクリニカルな評価 機能 そこで どう治すか考えたとき 頭頚 評価ですしかし肩の場合は 故障する原 部をいかに正中位で保持したままパフォー 投球時 コッキングからリリースの間で 因はほとんどが肩自体ではありませんど マンスできるか ということをポイントと 右の体幹がしっかり保持できないので右体 こか別の部位に起因する肩関節障害である して 体幹への刺激の入れ方に注意しなが 幹が崩れ 肩甲帯の下制が生じ 肘が肩の ことがほとんどですですから当然肩は診 らアプローチしていきました ラインまで上がってこないこの時点で肩 ますが 全身のフィジカルチェックをしっ 甲骨から上腕骨の位置関係が崩れてしま かり行い見極めていく必要があります 体幹リコンディショニング メニューの一例 具体的症例② 古野正人選手の場合 栗田 体幹が弱かったり 上手に使えな なっていることがわかりました いますでも本人は上から投げているイ メージをもっているから 押し出すような フォームになる すると 詳しいメカニズムの説明は省き 下部体幹から頚部を 体幹 と捉える かったりすると 頚部をその代償として 使ってしまう場合が多くありますそうす ますが 肩関節の回旋が使えなくなり 肩 栗田 春の 1 軍キャンプで肩を壊した古 ると 頭頚部のポジショニングが悪くなり 甲骨と上腕骨のアライメントの崩れもあ 野なんですが ランニングでもキャッチ パフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまい り それにより彼の場合は腱板損傷を発症 ボールでも 頚部は左側屈と 頭部が前方 ます してしまった ということです に偏位した状態での伸展 肩甲骨は内転の そのような状態を改善するためには 体 そういう評価のなかから徹底的に右の体 可動性に乏しく 骨盤は後傾位という明ら 幹の活動性を上げた状態で頭頚部の位置を 幹の活動性を上げるリハビリを行いまし かに体幹の効いていないフォームをしてい 正中位に保持できるようコントロールでき た肩に対するアプローチは週1回 肩関 ました る能力が必要ですそれを獲得することに 節のアライメントを整えるための神経系ア ピッチャーは足を上げて コッキングか より 肩甲帯 上肢のコントロールが可能 プローチをするくらいで 体幹と体幹に連 らアクセレレショーンにいく際 骨盤は前 になる そう考えました 以下カコミ参照 動して動きの悪かった股関節の柔軟性を出 傾位 肩甲骨は内転して 頚部はニュート エクササイズ名は栗田氏命名 クランチツイスト 頭頚部安定 体幹固定能力 写真① ③ 何気なくみると よくあるクランチでの ツイストにみえるが当然 目的がある古 野選手の場合 回旋した方向と反対側に頚 部の側屈が出てしまう そうならず 頚部を正中位で保持できる よう 頭頚部のコントロールをするための トレーニング 股関節の角度も重要で 90 だと腸腰筋 などが重力に抗していないため 少し角度 を緩めて重力に抗した状態で下肢をコント ロールする体幹をはたらかせながら頭頚 部をコントロールさせる ④ 体幹を中継点として上肢と下肢の連動性 を出すための一つのエクササイズ 頚部が側屈 回旋してしまったら目的に 対してまったく意味をもたなくなる 23

P.24 からの続き Vシットツイスト 安定性 コントロール 写真⑧ ⑨ ボールが常に正中位にあるように注意しながら 下肢 を左右に振る手は動かさず 足だけを左右に振ってい く 目標物であるボールを正中位において それをみなが ら行うことで 頭部正中位の意識をしやすくする⑩⑪ は別角度からみたもの ⑫よい例 ⑬悪い例体幹が使えていないため ボールが正中位 からやや左にぶれている ケーブルツイスト 下肢をより投球フォームに近づけた状態での体幹と頭頚部の協調 写真⑭ 腹斜筋と下肢筋群を連動させた回旋のトレーニング コックアップ時に 頚部が左側屈するなどの癖をもっていた古野選手 以前は 体幹左回旋時に右腹斜筋がはたらかず右肩甲帯が下制していたが 現在では改善されてきた このトレーニングのレベルを上げていくと 基底面を狭くして不安定にした状態で より体幹の活動をメインとした上肢の動きを誘発していく 左も同様に行う ⑮ 30