7.4%) と ネット動画やソーシャルメディアの利用率が高い傾向にあった インターネット依存傾向の高い回答者の比率は小学 4~ 6 年生 2.3% 中学生 7.6% 高校生 9.2% 大学生 6.1% 社会人 6.2% であった ( インターネット依存傾向の定義は後述する ) またスマートフォンとガ

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1 調査実施概要 調査の目的 近年 中学生にもスマートフォンが急速に普及しつつあり ネットワークを介して動画やゲーム ソーシャルメディアといった各種サービスへのアクセスが容易になっており ネット利用の長時間化 ネット依存傾向の低年齢化が懸念されている このため 総務省情報通信政策研究所では 東京大学

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平成 28 年調査報告書の主なポイント 2 1 日当たりのテレビ ( リアルタイム ) 視聴時間は平日 168. ( 概ね減少傾向 ) 休日 分 ( 前年より減少 ) インターネット利用時間は平日 99.8 分 休日 分 ( ともに増加傾向 ) 過去 5 年間のテレビ ( リ

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6. 調査結果及び考察 (1) 児童生徒のスマホ等の所持実態 1 スマホ等の所持実態 54.3% 49.8% 41.9% 32.9% % 78.7% 73.4% 71.1% 76.9% 68.3% 61.4% 26.7% 29.9% 22.1% % 中 3 中 2 中 1

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❷ 学校の宿題をする時間 宿題に取り組む時間は すべての学年で増加した 第 1 回調査と比較すると すべての学年で宿題をする時間は増えている 宿題に取り組むはおよ そ 40~50 分で学年による変化は小さいが 宿題を しない 割合はになると増加し 学年が上がるに つれて宿題を長時間する生徒としない生

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調査実施概要 本調査の目的 近年 スマートフォンが急速に普及し ネットワークを介した動画やゲーム ソーシャルメディアといった多様なサービスへのアクセスが飛躍的に容易になっている この結果 特に 高校生においては メッセージ アプリを含むソーシャルメディアの利用が急速に進むなど 従来のメールや通話とは

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青少年のモバイル利用とネット依存 東京大学橋元研究室 総務省情報通信政策研究所共同研究から 大野志郎 Shiroh Ohno ( 学習院大学 ) 天野美穂子 Mihoko Amano ( 東京大学大学院 ) 堀川裕介 Yusuke Horikawa ( 東京大学大学院 ) 橋元良明 Yoshiaki Hashimoto ( 東京大学 ) 要旨 モバイルによるインターネット利用が一般的となった現在 青少年のインターネット依存の実態と要因を把握する必要がある 総務省情報通信政策研究所と東京大学橋元研究室の共同研究としてオンラインアンケート調査を実施した (n=2605) 調査対象のスマートフォン所有率は中学生 21.3% 高校生 51.1% 大学生 68.5% インターネット依存傾向の高い利用者率は中学生 7.6% 高校生 9.2% 大学生 6.1% だった またスマートフォン利用者とガラケー利用者を比較した結果 総ネット利用時間についてスマートフォン利用者が優意に長く インターネット依存得点については両者に差は見られなかった 本研究では中学生 高校生 大学生を分析対象とし インターネット依存傾向を目的変数 モバイルによるウェブサービス利用 ソーシャルメディア利用 視聴しているネット動画の種類をそれぞれ説明変数とする重回帰分析を行った その結果 モバイルによるウェブサービスでは ネット小説 ウェブコミック 匿名掲示板 写真や画像の投稿 共有 出会い系サイト が モバイルによるソーシャルメディア機能では 日記 が ネット動画の種類では ボーカロイド スポーツ が それぞれインターネット依存と関連することが示唆された キーワード : インターネット依存携帯電話スマートフォンソーシャルメディア internet addiction 日本では他国に比べ携帯ネットの利用時間が長く 今後 携帯ネットを中心とした長時間利用者の増加 それによる家庭生活や学業への悪影響がさらに大きな問題となることが懸念される 特にモバイルによるインターネット利用が一般的となった現在 青少年のインターネット依存の実態と要因を把握する必要がある ネット依存傾向にある若年層はどのようなネットの使い方をしているのか どのような心理傾向をもっているのか 日常生活や学業 仕事にどのような影響が出ているのかなど その実態を明らかにすることを目的とし 総務省情報通信政策研究所と東京大学橋元研究室の共同研究としてオンラインアンケート調査を実施した 対象は小学 4~ 6 年生 中学生 高校生 大学生 社会人 (n=2605) であり 調査日は 2013 年 2 月 8 日 ( 金 )~ 2 月 12 日 ( 火 ) であった 1 調査対象のスマートフォン所持率は小学 4~ 6 年生 16.0% 中学生 21.3% 高校生 51.1% 大学生 68.5% 社会人 70.0% であった ウェブサービス利用についてはスマートフォン所有者は非所有者に比べ ネット動画を見る ( 所有者 21.7% 非所有者 5.6%) ソーシャルメディアを見る ( 所有者 68.0% 非所有者 23.5%) ソーシャルメディアに書き込む ( 所有者 44.3% 非所有者 13.9%) ソーシャルゲームをする ( 所有者 17.8% 非所有者 1 株式会社マクロミルの全国の調査協力パネル ( 約 110 万人 ) のうち 104299 サンプルに事前アンケートを配信し 小 中 高校生および大学生 社会人を抽出した 小学生 ~ 中学 2 年生には保護者に事前アンケートを配信し 調査協力の許諾が得られた者のみ本調査の対象者とした また小学生は保護者と一緒に回答するよう注記した 1

7.4%) と ネット動画やソーシャルメディアの利用率が高い傾向にあった インターネット依存傾向の高い回答者の比率は小学 4~ 6 年生 2.3% 中学生 7.6% 高校生 9.2% 大学生 6.1% 社会人 6.2% であった ( インターネット依存傾向の定義は後述する ) またスマートフォンとガラケーのいずれかを利用している中学生 高校生 大学生のうち スマートフォンを所有している利用者 ( 850 人 ) とガラケーのみの利用者 ( 582 人 ) を比較すると ネット利用時間についてはスマートフォン所有者が 190.25 分 / 日 ガラケーのみ所有者が 157.82 分 / 日であり スマートフォン所有者が優意に長かった ( t = 3.73 df=1413.19 p<.00) インターネット依存得点についてはスマートフォン所有者が 44.10 ポイント ガラケーのみ所有者が 43.56 ポイントであり 両者に有意な差は見られなかった ( t=.60 df=1430 p<.55) 本研究では中学生 高校生 大学生のモバイル ( スマートフォンあるいはガラケー ) 所有者を分析対象とし インターネット依存得点を目的変数 モバイルによるウェブサービス利用状況 モバイルによるソーシャルメディア利用状況 モバイルによる視聴動画ジャンルを説明変数とする重回帰分析を実施した 目的と方法本研究の目的は 青少年のモバイルによるウェブサービス利用状況 モバイルによるソーシャルメディア利用状況 モバイルによる視聴動画ジャンルに関して それぞれどのような要素がインターネット依存と関連しているかを明らかにすることである インターネット依存の測定には Young(1998) による 20 項目のインターネット依存尺度を用いた ネット依存尺度 (Young,1998) 1. 気がつくと 思っていたより長い時間ネットをしていることがありますか 2. ネットを長く利用していたために 家庭での役割や家事が疎かになることがありますか 3. 配偶者や友だちと過ごすよりも ネットを利用したいと思うことがありますか 4. ネットで新しく知り合いを作ることがありますか 5. 周りの人から ネットを利用する時間や頻度について文句を言われたことはありますか 6. ネットをしている時間が長くて 学校の成績や学業に支障をきたすことがありますか 7. ネットが原因で 仕事の能率や成果に悪影響が出ることがありますか 8. 他にやらなければならないことがあっても まず先に電子メールや SNS などをチェックすることがありますか 9. 人にネットで何をしているのか聞かれたとき いいわけをしたり 隠そうとしたりすることがありますか 10. 日々の生活の問題から気をそらすために ネットで時間を過ごすことがありますか 11. 気がつけば また次のネット利用を楽しみにしていることがありますか 12. ネットのない生活は 退屈で むなしく わびしいだろうと不安に思うことがありますか 13. ネットをしている最中に誰かに邪魔されると いらいらしたり 怒ったり 言い返したりすることがありますか 14. 夜遅くまでネットをすることが原因で 睡眠時間が短くなっていますか 15. ネットをしていない時でも ネットのことを考えてぼんやりしたり ネットをしているところを空想したりすることがありますか 16. ネットをしている時 あと数分だけ と自分で言い訳していることがありますか 17. ネットをする時間や頻度を減らそうとしても できないことがありますか 18. ネットをしている時間や頻度を 人に隠そうとすることがありますか 19. 誰かと外出するより ネットを利用することを選ぶことがありますか 20. ネットをしていないと憂うつになったり イライラしたりしても 再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか 上記 1~ 20 の設問に対し いつもある を 5 点 よくある を 4 点 ときどきある を 3 点 まれにある を 2 点 全くない を 1 点として加算した変数をインターネット依存得点として分析に使用した 2 心理尺度についてはそれぞれ次の尺度を参 2 Young は 70 点以上 40~ 69 点 20~ 39 点の 3 群に分類しているが 本研究では分類を行わず 量的変数として数値処理している また前述の インターネット依存傾向の高い回答者 の定義としては 70 点以上を基準とした 2

考に 2~ 4 項目を設定し あてはまる を 4 点 ややあてはまる を 3 点 あまりあてはまらない を 2 点 あてはまらない を 1 点として加算した変数を分析に用いた なお 重回帰分析の際には各説明変数に加え 性別 ( 男性 :1 女性 :0) 年齢を統制変数として投入した 結果 1. モバイルによるウェブサービス利用とネット依存ウェブサービスの利用頻度 ( 月間利用日数 ) を説明変数 インターネット依存得点を目的変数とする重回帰分析を実施した結果 表 1 の結果が得られた 5% 水準で有意な関連が見られたものは標準化回帰係数の絶対値の大きい順に ネット小説 ウェブコミックを読む (0.10) 匿名掲示板を利用する (0.10) 友だちとメールする (- 0.08) 自分で撮った写真や作った画像をサイトに投稿したり 友だち 恋人などと共有したりする (0.09) メル友募集 出会い系のサイトを利用する (0.06) だった 表 1. モバイルによるウェブサービス利用頻度とインターネット依存 モバイルによるウェブサービス利用頻度 ( 日数換算 / 月 ) 友だちとメールする -0.08 ** ネット動画を見る (Youtube, ニコニコ動画など ) 0.06 ソーシャルメディア (mixi,facebook ) に書き込む 0.04 ソーシャルゲーム ( ソーシャルメディア上で提供されるゲーム ) をする 0.02 ソーシャル以外のオンラインゲームをする -0.01 無料通話アプリやボイスチャットを利用する (Skype や LINE など ) -0.05 文字チャット メッセンジャーを利用する 0.03 匿名掲示板を利用する (2 ちゃんねるなど ) 0.10 *** 学校サイトを利用する ( クラスや学年の SNS 掲示板 交流サイト ) -0.02 メル友募集 出会い系のサイトを利用する 0.06 * 音楽をダウンロードする ( 着うた 着メロも含む ) 0.03 写真や画像をダウンロードする ( 待ち受け画像なども含む ) 0.01 自分で撮った写真や作った画像をサイトに投稿したり 友だち 恋人などと共有したりする ショッピングやオークションをする 0.00 インターネット依存得点 0.09 ** ネット小説 ウェブコミックを読む 0.10 *** ホームページやブログを見る 0.00 性別 -0.02 年齢 -0.05 n 1423 F value 6.7 *** Adj R-Sq 0.07 ***: p<.001, **: p <.01, *: p <.05, : p<.10 数値は標準偏回帰係数 インターネット依存度との単相関分析において有意差の得られなかった 2 項目 家族とメールする ニュースを見る は分析から除外した また ソーシャルメディアを見る については ソーシャルメディアに書き込む ソーシャルゲームをする との関連性を考慮し分析から除外した 表内の項目のみを強制投入して分析を行った 3

2. モバイルによるソーシャルメディアの機能とネット依存スマートフォン / ガラケーによる SNS 機能の利用有無を説明変数 インターネット依存得点を目的変数とする重回帰分析を実施した結果 表 2 の結果が得られた 5% 水準で有意な関連が見られたものは 日記 (0.09) のみだった 表 2. スマートフォン / ガラケーでの SNS 利用とインターネット依存 ソーシャルメディアでよく利用する機能 ( 該当 :1 非該当 :0) 日記 0.08 * ミニメール などの会員間メッセージ -0.01 訪問者アクセス履歴 0.03 友だち検索 0.02 写真の投稿 シェア 0.04 アバターの作成 購入 0.06 ソーシャルメディア内の有名人 企業などのページの閲覧 0.03 性別 -0.02 年齢 -0.09 ** n 1009 F value 4.05 *** Adj R-Sq 0.03 インターネット依存得点 ***: p <.001, ** : p<.01, *: p<.05, : p<.10 数値は標準偏回帰係数 インターネット依存度との単相関分析において有意差の得られなかった項目 通話 スタンプ つぶやき機能 コミュニティ グループなどのサービス チャットやインスタントメッセンジャー ゲーム ゲーム以外のアプリ ニュース は分析から除外し 表内の項目のみを強制投入した 4

3. モバイルによるネット動画視聴とネット依存スマートフォン / ガラケーによるネット動画コンテンツ視聴の利用有無を説明変数 インターネット依存得点を目的変数とする重回帰分析を実施した結果 表 2 の結果が得られた 5 % 水準で有意な関連が見られたものは ボーカロイド ( 初音ミク など )(0.10) スポーツの試合や選手の動画 (0.08) だった 表 3. スマートフォン / ガラケーでのネット動画視聴とインターネット依存 ソーシャルメディアでよく利用する機能 ( 該当 :1 非該当 :0) スポーツの試合や選手の動画 0.08 * 自演動画 ( 歌ってみた 弾いてみた 踊ってみた など ) -0.02 インターネット依存得点 ボーカロイド ( 初音ミク など ) 0.10 ** おもしろビデオ ネタ動画 MAD 0.06 生放送 ( ニコニコ生放送 など ) 0.04 性別 -0.03 年齢 0.00 n 953 F value 3.67 *** Adj R-Sq 0.02 ***: p <.001, ** : p<.01, *: p<.05, : p<.10 数値は標準偏回帰係数 インターネット依存度との単相関分析において有意差の得られなかった項目 ドラマ 映画 バラエティ番組 芸能人 アイドルの動画 音楽 アニメ ゲームの PV や攻略映像 アダルト動画 その他のジャンル は分析から除外し 表内の項目のみを強制投入した 考察モバイル ( スマートフォンおよびガラケー ) によるウェブサービスとして ネット小説 ウェブコミックのモバイル利用がネット依存と比較的強く関連するという結果が得られた 検索性が高いこと いつ どこでも閲覧できるというモバイルのメリットとコンテンツとの親和性が高いことなどがネット依存との関連を強める可能性が考えらえる このタイプのネット依存についてはたとえば大野ら (2011) によって コンテンツ型ネット依存 として報告されている 匿名掲示板 出会い系サイトについては多くの場合 非対面の ( ネット上のみの ) 不特定な相手とのコミュニケーションを伴うものであり 匿名的コミュニケーションとネット依存との関連性について より詳細に検討する必要があるだろう インターネット依存研究において依存度が高いコンテンツとして挙げられてきたチャット オンラインゲームに関しては単相関は見られたものの 他のサービスと比較しても強い関連があるとは言えない結果となった これまでの研究においても類似した調査結果を得ていることもあり ( 例えば橋本ら,2012) 今回のサンプル固有の事象ではないものと考えらえる チャットやオンラインゲームといった同期的コミュニケーションコンテンツの利用がなぜインターネット依存得点と関連しないと分析されるのか より詳細に研究する必要がある モバイルでのソーシャルメディアの機能のうち 日記機能の利用がネット依存と比較的強く関連していることが示唆された ソーシャルメディアにおける日記機能は自身の考えや行動を不特定多数の閲覧者に伝える役割が強く また他の利用者からのコメントの投稿や評価といったコミュニケーションも行われる コメントや評価といった報酬を得るために 日常においてもネットでの評価を気にしたり ネット上で話題にできるネタを探すといった行動が増え ネット依存度を高めていくという可能性も考えられる ただし ネット依存度の高い人ほど日記を利用する傾向にあるのか 日記を書くうちにネット依存度を高めていくのか 関連の方向性について明らかではないことには注意しなければならない モバイルでの視聴ネット動画ジャンルのうち もっとも関連していたのは ボーカロイド ( 初音ミ 5

ク など ) だった ボーカロイドとは ヤマハ株式会社が開発した歌声合成技術およびソフトウェアであり 音符と歌詞の情報を歌声に変換して出力するというものである ( ヤマハ,2013) ボーカロイド関連ソフトウェアのうち クリプトン フューチャー メディア株式会社による製品およびキャラクターである 初音ミク が国内のみならず世界的に広く認知されており 初音ミク などボーカロイド関連の自主制作動画の視聴が国内動画投稿サービス ニコニコ動画 を中心に流行している ボーカロイド関連の動画視聴とネット依存との関連が強いことに関しては 当該動画を視聴している層の特殊性も考慮しなければならない つまり ソフトウェア技術への関心 音楽への関心 アニメーションへの関心 美少女キャラクターなどいわゆるおたく系文化への関心の高さなどである ( 本調査では 音楽ジャンルの動画 アニメジャンルの動画とネット依存の単相関は無相関となっている ) 単にネット依存度の高い人ほどたどり着きやすい動画ジャンルなのか ボーカロイド関連動画が特に 中毒的 な要素を持っているのか 明確にするためにはより詳細な分析が必要である 今回の調査はオンラインアンケート調査であることによるサンプリングの問題などを含んでいるが 得られた分析結果はこれまでの調査 ( 堀川ら,2012; 橋元ら,2011) と高い整合性を持っている また ソーシャルメディア機能 ネット動画のジャンルについて詳細にネット依存との関連を分析することができた スマートフォンやタブレットの普及によりモバイル端末の所有率の増加や所有の低年齢化が進むことが予想される このような状況下において 青少年期におけるネット依存リスクの増加に関してより一層注意を払う必要があるだろう 参考文献ヤマハ株式会社 (2013) VOCALOID とは?~ ヤマハの想い, ヤマハ株式会社,http://www.vocaloid.com/ about/(2013.6.5) Young KS:Internet Addiction:The Emergence of a new Clinical Disorder. CyberPsychology & Behavior 1(3): 237-244, 1998 橋元良明 小室広佐子 小笠原盛浩 大野志郎 天野美穂子 河井大介 堀川祐介 (2012) インターネット利用と依存に関する研究, 安心ネットづくり促進協議会報告書,http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20121026100601.pdf (2013.4.30). 堀川裕介 橋元良明 小室広佐子 小笠原盛浩 大野志郎 天野美穂子 河井大介 (2012) 中学生パネル調査に基づくネット依存の因果的分析, 東京大学大学院情報学環情報学研究. 調査研究 28, 161-201. 大野志郎 小室広佐子 橋元良明 小笠原盛浩 堀川祐介 (2011) ネット依存の若者たち 21 人インタビュー調査 情報学研究調査研究編 東京大学大学院情報学環,No.27,pp101-139 6