一般検査作業マニュアル (SOP) ver1.1 2002.10.01 初版 ver2.1 2005.10.11 改定 ver3.1 2006.03.20 改定 ( 青字 ) 一般検査のマニュアルについては各項目ごとにそれぞれにファイル化されているが 本マニュ アルにおいては当院での作業の流れ 試薬の置き場所 マニュアルファイルの種別などについて規定するものである
一般検査室レイアウト 顕微鏡 US3100R Quick_Run 迅速検査室温 品 洗面台 : 用手法 事務作業エリア 検査台 :HCG 冷蔵庫 : 迅速 検査冷蔵品 女子トイレ 身障者トイレ 男子トイレ 出血時間 尿一般検査 1. 検体の受付 1.1 外来検体の場合 1. 尿カップと尿スピッツが同時に受付で発行される 2. トイレ窓口に提出された尿カップと尿スピッツのラベル内容を確認する 3. 尿スピッツに 10mlを分注する 4. 尿沈渣があるとき 尿量が 5ml 以下の場合にはLACSの結果入力画面でその他の欄に 018(5ml 以下 ) を入力する 1.2 病棟検体の場合 1. ラベルの貼られた尿スピッツが提出されるのでそのまま検査に使用する
2. 尿定性検査 (US3100R の使用方法 ) 2.1 立ち上げと始業点検 精度管理 1. 装置右横のスイッチを入れる 2. 始業点検 う 点検簿 ( 装置右側の壁にかけてある ) に従い点検を行 3. 正面パネルの BOTTOLE を押し試験紙を充填する このとき項目を間違わないように! 4. 試薬のボトルは 4 項目から入れる 8 項目のボトルをいれる時には F1 の架設位置を押し て 8 項目を選択し補充する 5. 精度管理冷蔵庫にあるコントロール尿 ( 青 赤 25 滴 ) をスピッツに入れ測定する 6. F1 検体種別を 2 回押して測定モードを C ( コントロール ) に変更しSTARTを押す このとき選択されている試験紙が 4 であるかF3 試験紙で確認する 7. F3 試験紙を押して試験紙を 8 に変更してコントロールを測定する 8. 始業点検簿に4 項目のノーマル 8 項目のアブノーマルの値を書き込む 2.2 試験紙の補充 1. 試験紙が無くなるとエラー表示されるので ENTER で確認する 2.BOTTLE を押して補充する試験紙を仮設位置で選択して補充する 2.3 測定 1. 尿スピッツのバーコード面をリーダー側に向けラックにて測定する 2. 結果確認は LACS の結果確認画面で R0801 日付検体番号を用い行う
2.4 異常値が出たとき 1. ビリルビンの結果で # がついたものは肉眼で判定しマイナスを入力する 2. 他の項目で # がついたものは再検査する 3. 比重でエラーのときは にごり 強度血尿のときが多いので検体を遠心して再測定する このときにごりに前回測定値を入力する 3. 尿沈渣検査 3.1 尿沈渣 1. 尿定性検査が終了した尿スピッツを KUBOTA2010 にて 500G(1800rpm5 分間 ) 遠心する このときバランスを確認すること 2. 顕微鏡で 100 倍 (LPF: 円柱の数 ) 及び 400 倍 (HPF:RBC WBC 上皮の数) にて鏡検する 3. 分類 判定は 尿検査法 2000( 日臨技 ) に従う 3.2 パニック値の対応 1. 異型細胞が認められたときは主治医に報告する 遠心器 (KUBOTA2010) の使用方法 尿量 10ml 遠心器スウィング型条件バランスをとることスピッツは自然に完全にとまってから取出す 遠心力 500G G=11.18 (rpm/1000)2 R rpm=1000 500/11.18 R 4.1 終了時操作 1. 洗浄液をスピッツに5ml 入れラックに立てる 2. F5 メニュー 1 メンテナンス ENTER 6 廃液流路洗浄で洗浄させる 3. F5 メニュー 1 メンテナンス ENTER 1 試験紙ホルダの送り動作で F3 変更 0 秒 ENTER ENTERでホルダーが送られるのでアルコール綿で表面を洗浄する 4. 点検簿 ( 装置右側の壁にかけてある ) に従い終了点検を行う 5. ごみ 廃液の廃棄を行う 6. 試験紙を取り出し ふたをする
7. 電源を切る
尿路上皮癌マーカー (NMP22) NMP22は Nucear Matrix Protein を免疫原として作製された 2 種類のモノクローナル抗体 302-22 と 302-18 によって認識される核蛋白で 分子量は約 300kD であるとされている これは細胞核内に存在する NuMA(nuclear mitotic apparatus) が細胞死により可溶化型となり 体液中に出現した蛋白質である NuMA は尿路上皮癌細胞において正常細胞の 25 倍存在するとの報告があり NMP22が尿路上皮癌のマーカーとして認識されるようになった 測定原理今回測定に用いた Bladderチェック NMP22 は 2 種のモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法を原理とした尿中核マトリックプロテイン (NMP 22) を検出する試薬である 尿をプラステックデバイスで保持された支持体に滴下し移動する際に 金コロイドを標識した抗 NMP22モノクローナル抗体と尿中の NMP22が反応し 免疫複合体を形成する この免疫複合体は抗 NMP22モノクローナル抗体が固相化されている支持体に移動して結合し ラインを形成する このラインの有無を肉眼的に確認することにより 尿中 NMP22を検出する 操作方法 1. 随時尿を採取する 2.Bladderチェックカードを室温に戻す 3. 滴下用スポイドに尿検体を満たし サンプルウエルに4 滴滴下する 4. 室内で30 分間静置反応させる 5.30 分から後 50 分後に判定する 6. コントロールラインのみが確認されたときは陰性 テストゾーンのラインとコントロールラインが確認された場合を陽性とする 操作方法 < 添付書類より > その他の作業 1.NMP22(8250) と同時に尿 4 項目 (102) と尿沈渣 (111) を LACS へ入力してラベルを発行する 2.NMP22 と尿 4 項目と尿沈渣の検査を行い LACS へ入力する
検査説明 1. 蛋白尿 1) 蛋白尿とは腎臓には血液をろ過し 体に必要なものを再吸収することで 血液中の不要なものだけを尿として捨てる働きがあります この働きが障害されることで 尿中に 1 日あたり総蛋白が 150mg 以上排泄される場合を 蛋白尿 といいます 正常人でも 80mg 以下の蛋白が排泄されます 腎臓病 ( 急性 慢性腎炎など ) 膠原病 糖尿病などで認められますが 起立性の蛋白尿や激しい運動 発熱など一過性に認められる場合もあります 2) 一過性の蛋白尿機能性 体位性蛋白尿のほか 過労 ( スポーツ ) 精神的ストレス 蛋白尿過剰摂取や妊娠など 3) 生理的蛋白尿 ( 腎臓病の可能性は低い ) 1 機能性蛋白尿激しい運動後 発熱 寒冷曝露 2 体位性蛋白尿起立性 前彎性 ( 前屈み ) 4) 病的な蛋白尿 1 急性 慢性腎炎 ネフローゼ症候群 慢性腎盂腎炎 腎硬化症などの腎臓病 2 膠原病 3 糖尿病 5) 腎炎症状 1 むくみ ( 浮腫 ) 尿異常( 血尿 蛋白尿 ) 高血圧 2 乏尿 無尿 3 高脂血症 ( ネフローゼ症候群 ) 6) 腎機能低下が認められる場合 ( 慢性腎炎 ) 1 塩分 蛋白の摂取制限 2 過労をさける 3 激しい運動はさける 4 カゼをひかないように気をつける 7) 尿定性検査尿定性検査で尿潜血が陽性の場合は IgA 腎症などの慢性糸球体腎炎 尿蛋白が (2+) 以上の状態が続く場合はネフローゼ症候群が疑われる
2. 血尿 8) 血尿とは尿をつくる腎臓 腎臓から尿管 膀胱 尿道 ( 尿路 ) のいずれかで出血が認められる状態をいいます 腎臓 尿路以外から尿に混入した場合 ( 性器出血 生理 痔など ) は血尿とはいいません 激しい運動後など一過性に認められる場合もあります 尿が赤くみえる肉眼的血尿と 検査をして初めて出血が分かる顕微鏡的血尿があります 急性 慢性腎炎 尿路の感染症 ( 腎盂腎炎 膀胱炎 前立腺炎など ) 尿路の癌( 腎臓癌 膀胱癌 前立腺癌など ) 尿路結石などが考えられます 9) 血尿の種類 1 肉眼的血尿膀胱炎 尿路結石 尿路系腫瘍 急性腎炎 外傷 2 顕微鏡的血尿すべての尿路系疾患の鑑別が必要 3 無症候性血尿尿路系腫瘍 各種腎炎 4 症候性血尿痛みや排尿障害 発熱 ( 結石や感染症 ) 無症候性血尿において原因が不明な場合も多い ( 特に女性 ) 精密検査で明らかな疾患が認められなかった場合でも 必ず定期的な検査が必要 10) 血尿をきたす疾患 1 糸球体疾患糸球体腎炎 Alport 症候群 菲薄基底膜病 2 間質性腎炎 3 血液凝固異常 DIC 血友病 抗凝固療法 4 尿路感染症腎盂腎炎 膀胱炎 前立腺炎 尿道炎 5 尿路結石症腎結石 尿管結石 膀胱結石 6 尿路性器腫瘍腎細胞癌 腎盂腫瘍 尿管腫瘍 膀胱腫瘍 前立腺癌 7 尿路外傷腎外傷 膀胱外傷 8 腎血管性病変腎動静脈血栓 腎梗塞 腎動脈瘻 ナットクラッカー現象 9 憩室症腎杯憩室 膀胱憩室 10 そのた紫斑病 多発性腎嚢胞 前立腺肥大症など 11) 尿定性検査 1 ヘモグロビン尿溶血のため顕微鏡検査で赤血球が陰性溶血性貧血 発作性夜間血色素尿症 強度の感染症 放置尿 2 ミオグロビン尿筋挫滅症候群 横紋筋融解症 3 尿潜血検査 12) 顕微鏡的検査 1 赤血球の確認 2 赤血球形態情報 13) 赤血球形態情報
1 均一赤血球 :Isomorphic RBC 非糸球体性血尿で認められる形態 2 変形赤血球 :Dysmorphic RBC 糸球体性血尿で認められる形態
採 尿 尿沈渣 1. 標本の作成 尿の撹拌 * 早朝尿 来院時尿 蓄尿 * カテーテル尿 尿ハ ック * 負荷前 後 点滴中 後 * 尿スヒ ッツに 10ml 遠心管に入れる * スィンク 型遠心器 500G 5 分 遠心する 上清の排出 * アスヒ レーション テ カント * 沈渣量約 0.2ml 尿半量の時は 0.1ml * 無染色 S SM 染色 * 染色液 1drop 約 50μl 添加 沈渣の混和 * 沈渣量約 15μl スライト カ ラスに積載 沈渣の積載 * 真上からカハ ー 均等分布 * 気泡混入不可 カバーリング *100 倍弱拡大全視野 *400 倍鏡拡大約 20 視野 2. 沈渣成分の病的パターン 鏡 検
1 腎病変 ( 内科的 ) RBC( 変形 ) 円柱 尿細管上皮 脂肪球 タンハ ク陽性 尿少量 等張 ~ 低比重尿 2 尿路系炎症 感染症 WBC RBC 細菌 真菌 移行上皮( 封入体 ) 3 尿路系血尿 RBC( 鮮血 ) 異型上皮細胞 腫瘍細胞 結晶 3. 赤血球 1 糸球体性血尿 ( 内科的 ) 糸球体基底膜の破綻による 糸球体腎炎 膜性増殖性腎炎 IgA 腎症 2 尿細管 間質性血尿 ( 内科的 ) 主として尿細管基底膜の破綻による 間質性腎炎 腎盂腎炎 3 尿路系血尿泌尿器科的血尿 尿路の腫瘍 結石 炎症 外傷 赤血球形態 1 正常な形態淡黄色 無核 6~8μm の中央が凹んだ円盤状 低比重尿やアルカリ尿では膨化 高比重尿では金平糖状 2 変形赤血球 ( 図 1) 大小不同を伴う多彩な形態 コフ 状 ト ーナツ状 標的 ねじれ 3 変形赤血球の成因 損傷基底膜を通過する際の機械的ストレス ネフロン通過の際の浸透圧など急激な環境変化 4 糸球体性 非糸球体性変形赤血球の有無から大きく血尿を糸球体性 非糸球体性に分類できる 糸球体性の血尿時には背景に赤血球円柱が観察されることがあるので注意 5 赤血球と紛らわしい成分酵母様真菌 シュウ酸 Ca 結晶 尿酸塩 脂肪球 レシチン顆粒 精子図 1 金平糖状赤血球と変形赤血球 (400 倍 )
4. 白血球 1 炎症性病変尿中白血球の存在は腎 尿路系に感染症などの炎症性病変があることを示す 2 分類 好中球- 尿中白血球の 90% 以上 リンハ 球 単球- 慢性の炎症 好酸球- 間質性腎炎 アレルキ ー性病変 3 沈渣の背景感染症の病因である細菌 酵母様真菌 膣トリコモナスなどの微生物 ウイルス感染を示唆する異型細胞 封入体細胞の存在に留意 その他の所見は非糸球体性赤血球 多数の移行上皮 尿タンハ ク弱陽性 白血球形態 1 正常な形態直径 10~15μl の球形 多核細胞がほとんど 生細胞は アメーハ 様運動で様々な形態をみる 死細胞は濃染 裸核 2 ク リッターセル ( 輝細胞 ) 低比重尿で膨化して細胞内部にフ ラウン運動する顆粒を有する好中球 腎盂腎炎で高率に出現 3 白血球と紛らわしい成分小型の上皮細胞 ( 特に精線由来の細胞 ) 膣トリコモナス 封入体細胞 図 2 多核白血球 (400 倍 )
5. 円柱 1 円柱の成因円柱の主成分である Tamm-Horsfall Mucoprotein はヘンレ係蹄上行脚の尿細管上皮で生成分泌される そしてアルフ ミン濃度上昇 浸透圧上昇 ph 低下など条件がそろえば重合ゲル化し カ ラス基質となる よって 糸球体濾過量が落ちたり 激しい運動や 絶食 飲酒など脱水状態で尿量が減少するとみられることがある 2 円柱の臨床的意義 尿の濃縮と酸化 カ ラス円柱の生成 尿流量の再開 尿中に出現円柱は ネフロンで生成される 従って円柱内に封入されたものは ネフロンに存在していたもの すなわちネフロンにその封入物が出現する病変があることを証明している 円柱分類と臨床 1 ガラス円柱カ ラス基質のみで形成 上皮や血球など同じ種類の封入物が2 個以下 顆粒成分が1/ 3 以下のものをいう 意義は低い 2 上皮円柱尿細管上皮が変性 脱落 壊死して封入されている 赤血球円柱ネフロンの出血を証明している 沈渣背景に変形赤血球を認める 3 白血球円柱ネフロン内に感染や炎症があることを示す 4 顆粒円柱尿細管上皮や赤血球など他の封入物由来の顆粒と考えられる 封入成分の変性 崩壊が成因とされているため 腎機能低下が続く病態を反映していると考えられる
5 ロウ様円柱 顆粒円柱よりも更に変性の進んだ円柱との見解もある 重度の腎機能障害を示唆する 6 脂肪円柱ネフローセ で 尿細管上皮から遊離した脂肪球や卵円形脂肪体が封入されたもの タンハ ク尿で出現 沈渣背景の卵円形脂肪体の存在に留意 7 その他ヘモシ テ リン ヘモク ロヒ ン ミオク ロヒ ン円柱 空砲変性円柱 ヒ リルヒ ン円柱 形態異常円柱など 6. 上皮細胞 1 尿細管上皮尿細管障害 O-157 溶血性尿毒症症候群 (HUS) での早期出現が話題となった 2 移行上皮尿路系炎症性病変 結石症 カテーテル挿入後 3 扁平上皮大半が外陰部からの混入 意義は低い 4 卵円形脂肪体尿細管上皮が脂肪変性 ネフローセ 5 多核巨細胞大型 4 核以上 結石症 ヘルヘ ス感染時 6 封入体細胞 核内- サイトメカ ロ ハ ホ ハ ウイルス感染 細胞質内- 麻疹 風疹 水痘 ムンフ ス感染その他カテーテル 結石症など機械的刺激 放射線照射 薬物で出現
7 異型細胞 癌細胞 大半が移行上皮由来 7. 結晶 酸性側- シュウ酸 Ca 尿酸結晶 尿酸塩 アルカリ側- リン酸 Ca リン酸アンモニウム Mg 尿酸アンモニウム リン酸塩 異常結晶- シスチン チロシ ン ロイシン ヒ リルヒ ン コレステロール 2,8DHAなど薬物結晶 異常結晶以外は意義は低い 8. その他 精子 性腺分泌物 ( 類テ ンフ ン小体 脂肪顆粒細胞 ) 細菌 真菌 トリコモナス タ ニ 花粉 糞便 混入物 繊維など