会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

平成23年度税制改正の主要項目

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

労働基準法が改正されます

損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しと

法人税 faq

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平成20年2月

「図解 外形標準課税」(仮称)基本構想

収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

日本基準基礎講座 収益

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

法人税 faq

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

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日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

 

営業報告書

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

スライド 1

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

二法人税法施行規則第六十一条の三第一号ロ及びハ並びに第二号ロ及びハ並びに第六十一条の五第一号ハ及びヘ並びに第二号ハ及びヘに掲げる勘定科目内訳明細書ホ別表に掲げる明細書 ( 当該明細書に記載されている事項又は記載すべき事項の内訳に係る部分に限る ) 四省令第五条第二項の規定により同項に規定する添付書面


適用時期 法人の平成 26 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます 改正措法附則案 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例 ( 法人が支出した使途秘匿金の額に 40% の割合を乗じて計算した金額をその納付すべき法人

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

128 Z E I K E I T S U S H I N 10. 3

日本基準基礎講座 有形固定資産

【表紙】

第 76 期 計算書類 自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 大泉物流株式会社

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

営 業 報 告 書

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実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

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粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

第4期電子公告(東京)

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第28期貸借対照表


第4期 決算報告書

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財剎諸表 (1).xlsx

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損金算入できる税金 1. 概要消費税の計算を税抜経理処理して決算時点で課税売上割合が 95% 未満になった場合 控除対象外消費税が出てきます この仮受消費税と仮払消費税の差額と 確定納付額のずれは 損金算入できます 課税売上割合が 80% 以上 95% 未満の場合は 全額を租税公課として損金計上でき

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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申告所得税関係 手続名 帳票名平成年分セルフメディケーション税制の明細書 ( 次葉 ) 特定証券投資信託に係る配当控除額の計算書 平成 年分給与所得の源泉徴収票 ( 平成 28 年以降用 ) 平成 年分特定口座年間取引報告書 ( 平成 28 年以降用 ) 平成 年分公的年金等の源泉徴収票 ( 平成

株 主 各 位                          平成19年6月1日

自己株式とみなし配当 1. 自己株式取得の法務自己株式は 会計上は資本取引として認識し 純資産の部から取得価額を控除する形式で表示します ( 自己株式会計基準 7) 一方税務上では 発行法人の貸借対照表と自社株式の取引価額次第で みなし配当課税と所得税の源泉徴収が必要な場合があります 自己株式の取得

Microsoft Word - メルマガQ&A(23.8.1問2)利益剰余金の資本組入(父確認中)

d. 少額上場株式等の非課税口座制度 ( 通称 NISA) 少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した非課税口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 26 年から平成 35 年までの 10 年間 新規投資額で毎年 100 万円を上限

(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

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平成30年3月決算における税務上の留意事項

対応別表一覧表

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(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

利益積立金額第 10 章税法上の資本の部 第 2 節利益積立金額 利益積立金額とは 法人の所得の金額のうち留保されているものをいう ( 法 21 十八 ) この利益積立金額は 法人の所得として課税済みの金額であり それが株主等に配当等された場合には二重課税の調整を要し また 特定同族会社の留保金課税

貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

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企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

第10期

税額控除限度額の計算この制度による税額控除限度額は 次の算式により計算します ( 措法 42 の 112) 税額控除限度額 = 特定機械装置等の取得価額 税額控除割合 ( 当期の法人税額の 20% 相当額を限度 ) 上記算式の税額控除割合は 次に掲げる区分に応じ それぞれ次の割合となります 特定機械

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金


精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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前期に販売した商品を当期に修理する場合 前期末に設定した商品保証引当金を取り崩 す つまり借方に商品保証引当金を 50,000 計上する 差額の 30,000 は商品保証費とする (3) 資本金 資本準備金の問題当座預金に払い込まれた金額は次のように計算される 2,000 株 4,000 = 8,0

II. 課税標準の確定申告と納付 ( 地 税法第 103 条の23) 1. 申告期限 各事業年度の終了 が属する の末 から4ヶ 以内 ( 連結法 は5ヶ 以内 ) に納税地管轄の地 治 団体の に申告 納付しなければなりません 法 地 所得税の申告納付期限は下記のとおり 部変更されました 区分 従

Z-64-A 簿記論〔第一問〕-解 答-

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平成 28 年度法人税関係税制改正のポイント 法人税は何にかかるか? 青色申告法人の特典 特別償却制度を利用しよう 消費税等の計算はどうする? etc.

会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら危険!? 27 6 機械や車の購入費は一度に損金として落とせない!! 28 コラム 2 定額法と定率法どちらが有利? 30 7 青色申告法人の特典 特別償却制度を利用しよう 37 8 建物権利金などは繰延資産となって支出の効果の及ぶ期間で償却 41 9 役員給与の損金算入には厳しい制約がある 44 10 法人税や法人住民税は利益のなかから納めることになる 48 11 寄附金は一定の枠内で損金となる 50 12 交際費は原則損金不算入!! 53 コラム 3 少額飲食費と書類の保存 ( 領収書での保存 ) 56 13 使途秘匿金には 40% の法人税が追加課税される!! 57 14 貸倒れの処理はどうするか? 58 15 貸倒引当金ってどれくらい引き当てられる? 60 16 圧縮記帳 ってどんな制度? 65 17 欠損金が出たときはどうする? 69 18 適格合併等の移転資産等は簿価で引き継がれる 72 コラム 4 ヤフー事件 IBM 事件 74 19 税額の計算はこうする 75 20 同族会社には特別の法人税がかかる場合がある 77 21 法人税から差し引けるものがないか要注意!! 80 22 法人税の申告と納付は期限までに!! 85 23 グループ法人税制ではこんなことに注意が必要!! 87 24 会社に関係する地方税とは? 90 25 消費税等の計算はどうする? 98 付録 会社が行う源泉徴収に係る税率及び控除額等の一覧表 巻末 会社税務のてびき ( 本書の内容は平成 28 年 5 月 1 日現在の法令によっています )

平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 改正事項改正の内容 1 法人税率の引下げ 76ページ 2 減価償却制度の見直し 29ページ 3 欠損金の繰越控除制度の見直し 70ページ 4 欠損金の繰越期間の延長 69ページ 5 企業版ふるさと納税の創設 83ページ 6 少額減価償却資産に関する特例の見直し 36ページ 7 環境関連投資促進税制の見直し 82ページ 8 雇用促進税制の見直し 83ページ 9 法人事業税における外形 法人税率が23.4% に引き下げられました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度について適用されます 建物附属設備及び構築物 鉱業用減価償却資産のうち建物 建物附属設備及び構築物の償却の方法について 定率法が廃止されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得する建物附属設備等について適用されます 大法人の欠損金の繰越控除限度割合が 65%~50% へ段階的に引き下げられることになりました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 欠損金の繰越控除の繰越期間が10 年に延長されることになりました 適用時期 平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されます 地域再生法の認定地域再生計画に記載された一定の事業に関連する寄附金を支出した場合には 現行の損金算入措置に加え 税額控除を受けることができる制度が創設されました 適用時期 改正地域再生法の施行日 ( 平成 28 年 4 月 20 日 ) から平成 32 年 3 月 31 日までの間に支出された寄附金について適用されます 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について 対象となる法人から 常時使用する従業員の数が1,000 人を超える法人が除外され 常時使用する従業員の数が1,00 人以下の法人に限定されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得する少額減価償却資産について適用されます 対象となる資産の範囲に見直しが行われました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 控除額の計算の基礎となる増加雇用者数の内容に見直しが行われ 適用期限が2 年延長されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 法人事業税の外形標準課税について 付加価値割と資本割の税率を引き上げ 所得割の税率を引き下げる等の見直しが行われました -1-

標準課税の見直し 95ページ 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 注上記の改正のうち 4は 平成 28 年には直接関係はありませんが 平成 28 年度の税制改正事項で かつ 近い将来適用される内容ですので掲載しています -2-

1 法人税は何にかかるか? 会社の利益と課税所得 法人税の課税所得は 会社決算上の利益に税法上の加算 減算の調整を加えて計算します この税法特有の調整を 申告調整 といいます 法人税は 法人の所得に対して課税されますが この課税所得金額と決算書上の当期利益金額とは 必ずしも一致しません それは 企業会計は 会社の財政状態や経営成績あるいは配当可能利益を明らかにするのが目的であるのに対して 法人税法の目的は租税負担公平の維持や国の政策上の要請などであるためです 1 会社の利益と法人税の課税所得法人税の課税対象となる所得金額は 益金の額 から 損金の額 を差し引いた金額です 会社決算上の利益金額も 収益の額から原価 諸経費及び損失の額を差し引いて算出しますから 両者は本質的には同じ計算方法によって算出されることになります 税務会計 所得 = 益金 - 損金 企業会計 利益 = 収益 - 費用 そこで課税所得金額は 公正妥当な会計処理の基準に従って算出された確定決算における当期利益又は欠損の金額を基礎として これに税法の規定に従った加算及び減算の修正計算をして算出することとなります この修正作業を 申告調整 といい -3-

次のような言葉で表されています 1 益金不算入 会社の利益計算では収益であるが 税法上は益金の額に算入しない 2 益金算入 会社の利益計算では収益でないが 税法上益金の額に算入する 3 損金不算入 会社の利益計算では費用 損失であるが 税法上は損金の額に算入しない 4 損金算入 会社の利益計算では 費用 損失でないが 税法上は損金の額に算入する 税務上の加算税務上の減算会社の利益 +( 益金算入 + 損金不算入 )-( 益金不算入 + 損金算入 )= 課税所得金額 ( マイナスの場合は欠損金額 ) 収 益 費 用 当期利益 1 益金不算入 4 損金算入 2 益金算入課税所得金額 3 損金不算入 2 決算調整と申告調整課税所得の計算に当たっての加算 減算の調整計算は 申告書という税務上の所得計算書の上で行います しかし 税法には 課税所得金額の算出の基となる決算書上の当期利益 ( 又は欠損 ) 金額の算出に当たって 会社が一定の経理をしていた場合に限りその計算を認めることとされている事項があります 例えば 減価償却費は 会社が確定した決算において減価償却費として経理した場合に限り損金として認められます このようなものを 決算調整事項 といい 経理処理の有無にかかわらず申告書の上だけでも調整を認める 申告調整事項 と区別しています 決算調整事項決算調整事項は 確定した決算において所定の経理をすることが要求される事項であって 会社が確定した決算で経理しなかった場合には 所得金額の計算に影響させることができません 次のようなものが 決算調整事項とされています -4-

減価償却資産の償却費の損金算入 損金経理をしなければならないもの 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入 ( 中小企業者等の特例を含みます ) 一括償却資産の損金算入 繰延資産の償却費の損金算入 少額の繰延資産の支出金額の損金算入 特定の事実が生じた場合の資産の評価損 ( 民事再生等評価換えによるものを除きます ) の損金算入 役員に対する利益連動給与の損金算入 実質的に回収不能となった金銭債権の貸倒損失の損金算入 取引停止後 1 年以上経過した場合の売掛債権の貸倒損失の損金算入 売掛債権の総額が取立て費用に満たない場合の売掛債権の貸倒損失の損金算入 貸倒引当金及び返品調整引当金の損金算入 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入 損の金処経分理にによよっるてほもかよ剰い余も金の 一こ認定とめのでら経所れ理得るを計もす算のるが 寄附金の損金算入 海外投資等損失準備金など租税特別措置法上の各種準備金の損金算入 特別償却準備金の損金算入 固定資産の圧縮記帳 ( 上欄の換地処分等 交換ないしは交換分合の場合の圧縮記帳などを除きます ) の損金算入 圧縮記帳に係る特別勘定の損金算入注これらの事項について 損金経理に代えて積立金として積み立てる経理をした場合には 申告書上で申告調整を行うことになります 長期割賦販売等に係る延払基準の適用 長期大規模工事以外の工事に係る工事進行基準の適用 注損金経理とは 確定した決算において費用又は損失として経理 ( 損益計算書に計上 ) することをいいます -5-

申告調整事項 決算調整事項 に対して 会社の経理処理に関係なく所得計算に反映させる事項 を 申告調整事項 といい 次のように区分されています 調整が会社の意思に次のようなものは 申告書上でその調整をするかしないかを任されているもの会社の意思に任されており 申告調整をした場合に限ってその調整が認められるもので 会社が積極的に申告調整をしないときには 原則として税務当局も更正しない事項です 区分項目調整益金 不算入受取配当等の益金不算入額減 損 金 算 入 収用換地等の場合その他の所得の特別控除 (5,000 万円 2,000 万円 1,500 万円 1,000 万円 800 万円控除 ) 額 剰余金の処分による圧縮積立金の積立額 剰余金の処分による海外投資等損失準備金等の各種準備金の積立額 資産の取得価額に算入した交際費等の損金不算入額に対応する取得価額 所得税額の控除 外国税額の控除 算 税額控除 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の法人税額の特別控除 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 税額控除 -6-

調整を行わなけれ次のようなものは 会社の意思のいかんにかかわらず 法人税ばならないものの申告に際して必ず申告書上で調整をしなければならないもので もし会社がその申告調整を行わなかったときには 税務当局によって更正される事項です 区分項目調整 益金算入 益金不算入 損 金 不 算 入 圧縮記帳に係る特別勘定の要取崩額又は圧縮損の要取戻額 貸倒引当金及び返品調整引当金等の要取崩額 海外投資等損失準備金等の各種準備金の要取崩額 法人税等の中間納付額の還付金等 被合併法人の利益積立金からなる合併差益 役員給与の損金不算入額 過大な特殊関係使用人に対する給与 寄附金の損金不算入額 法人税額及び法人住民税額 損金算入した納税充当金 法人税額から控除する所得税額又は外国法人税額 資本的支出の金額 交際費等の損金算入限度超過額 償却費の償却限度超過額 圧縮記帳限度額を超える圧縮額 貸倒引当金及び返品調整引当金の繰入限度超過額 海外投資等損失準備金等の各種準備金の積立限度超過額 加算減算加算 損金算入 青色申告事業年度の繰越欠損金 災害による繰越損失金 納税充当金から支出した事業税及び申告により確定している未払事業税 減 算 -7-

収益はどの時点で計上するか? 2 収益の計上時期 売上は商品の引渡しのあった日に計上するのが原則です ただし 長期割賦販売などの場合には 一定の基準により収益を分割計上していきます 会社の決算に当たって 収益 ( 益金 ) と費用 ( 損金 ) がどの時点で確定するかによ って 当期の課税所得もずいぶんちがったものになってきます そこで 税法では収益の計上時期等についてその取扱いを次のように定めています 1 収益等の計上時期 棚卸資産の販売による収益商品などのいわゆる棚卸資産の販売による収益は 代金を受け取ったかどうかということに関係なく その商品などを相手に引き渡したときに売上収益があったものとして計上します これを引渡基準といいます それでは 引渡し がいつの時点かということですが これについては次のいずれかの基準によって引渡しがあったものとみなし その基準を継続して適用すればよいことになっています 出荷基準製品や商品が 工場や倉庫から得意先に向けて実際に出荷された日を売上計上の日とする方法納品基準先方の店や工場へ届けた時に売上に計上する方法で 受領書 納品書等の日付によります 検収基準数量 品質等を先方が検査して合格した時に売上に計上する方法 -8-

使用収益可能日基準先方がその製品等を使用収益できることとなった日を引渡しの日とする方法検針日基準電気 ガス 水道などのメーター検針等をした日注すでに商品などを相手に引き渡していても その販売価額が確定していないときは その見積額を収益に計上しておき 後日 販売価額が確定した時点で見積額との差額を収益又は費用に計上します 請負による収益請負による収益の計上時期は その契約が物の引渡しを要するものか否かによって次のようになります 物の引渡しを要するもの 原則特例 完成引渡基準部分完成基準注 1 目的物の全部を引き渡した日完成部分を引き渡した日 物の引渡しを要しないもの 原則特例 役務完了基準部分完了基準注 2 役務の全部を完了した日部分的に報酬の額が確定した日 注 1 請け負った建設工事等が 11 件の契約で同種の建設工事等を多量に請け負った場合にその引渡量により工事代金を受け取る旨の特約等がある場合 又は21 件の建設工事等であってもその一部が完成しその完成した部分を引き渡す都度割合に応じて工事代金を受け取る旨の特約等がある場合のいずれかに該当する場合には 部分完成基準によります 工事進行基準を適用している場合は 部分完成基準の適用はありません 注 2 技術役務の提供を内容とするものについて 1 報酬額が現地に派遣する技術者の数や滞在日数などで算定され一定期間ごとに報酬額を確定させ支払を受ける場合及び2 報酬額が作業の段階ごとに区分され各段階の作業が完了する都度報酬額を確定させ支払を受ける場合の事実がある場合には 部分完了基準によります なお 請負契約が建設工事等である場合には 継続して適用することを条件にその工事内容に応じて作業結了日 搬入日 検収日 相手方において使用収益できることとなった日を売上計上の日とすることができます また 不動産売買の仲介あっせん手数料は 原則として売買契約の成立時に収益に計上しますが 継続してその取引完了日 ( 完了日前に実際に収受した金額についてはその収受した日 ) に収益計上することも認められています 委託販売による収益棚卸資産の委託販売による収益の計上時期は その取引の形態を考慮して次のいずれかの方法によりますが 特例の方法による場合は継続適用が条件です -9-