平成 28 年度法人税関係税制改正のポイント 法人税は何にかかるか? 青色申告法人の特典 特別償却制度を利用しよう 消費税等の計算はどうする? etc.
会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら危険!? 27 6 機械や車の購入費は一度に損金として落とせない!! 28 コラム 2 定額法と定率法どちらが有利? 30 7 青色申告法人の特典 特別償却制度を利用しよう 37 8 建物権利金などは繰延資産となって支出の効果の及ぶ期間で償却 41 9 役員給与の損金算入には厳しい制約がある 44 10 法人税や法人住民税は利益のなかから納めることになる 48 11 寄附金は一定の枠内で損金となる 50 12 交際費は原則損金不算入!! 53 コラム 3 少額飲食費と書類の保存 ( 領収書での保存 ) 56 13 使途秘匿金には 40% の法人税が追加課税される!! 57 14 貸倒れの処理はどうするか? 58 15 貸倒引当金ってどれくらい引き当てられる? 60 16 圧縮記帳 ってどんな制度? 65 17 欠損金が出たときはどうする? 69 18 適格合併等の移転資産等は簿価で引き継がれる 72 コラム 4 ヤフー事件 IBM 事件 74 19 税額の計算はこうする 75 20 同族会社には特別の法人税がかかる場合がある 77 21 法人税から差し引けるものがないか要注意!! 80 22 法人税の申告と納付は期限までに!! 85 23 グループ法人税制ではこんなことに注意が必要!! 87 24 会社に関係する地方税とは? 90 25 消費税等の計算はどうする? 98 付録 会社が行う源泉徴収に係る税率及び控除額等の一覧表 巻末 会社税務のてびき ( 本書の内容は平成 28 年 5 月 1 日現在の法令によっています )
平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 改正事項改正の内容 1 法人税率の引下げ 76ページ 2 減価償却制度の見直し 29ページ 3 欠損金の繰越控除制度の見直し 70ページ 4 欠損金の繰越期間の延長 69ページ 5 企業版ふるさと納税の創設 83ページ 6 少額減価償却資産に関する特例の見直し 36ページ 7 環境関連投資促進税制の見直し 82ページ 8 雇用促進税制の見直し 83ページ 9 法人事業税における外形 法人税率が23.4% に引き下げられました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度について適用されます 建物附属設備及び構築物 鉱業用減価償却資産のうち建物 建物附属設備及び構築物の償却の方法について 定率法が廃止されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得する建物附属設備等について適用されます 大法人の欠損金の繰越控除限度割合が 65%~50% へ段階的に引き下げられることになりました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 欠損金の繰越控除の繰越期間が10 年に延長されることになりました 適用時期 平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されます 地域再生法の認定地域再生計画に記載された一定の事業に関連する寄附金を支出した場合には 現行の損金算入措置に加え 税額控除を受けることができる制度が創設されました 適用時期 改正地域再生法の施行日 ( 平成 28 年 4 月 20 日 ) から平成 32 年 3 月 31 日までの間に支出された寄附金について適用されます 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について 対象となる法人から 常時使用する従業員の数が1,000 人を超える法人が除外され 常時使用する従業員の数が1,00 人以下の法人に限定されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得する少額減価償却資産について適用されます 対象となる資産の範囲に見直しが行われました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 控除額の計算の基礎となる増加雇用者数の内容に見直しが行われ 適用期限が2 年延長されました 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 法人事業税の外形標準課税について 付加価値割と資本割の税率を引き上げ 所得割の税率を引き下げる等の見直しが行われました -1-
標準課税の見直し 95ページ 適用時期 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます 注上記の改正のうち 4は 平成 28 年には直接関係はありませんが 平成 28 年度の税制改正事項で かつ 近い将来適用される内容ですので掲載しています -2-
1 法人税は何にかかるか? 会社の利益と課税所得 法人税の課税所得は 会社決算上の利益に税法上の加算 減算の調整を加えて計算します この税法特有の調整を 申告調整 といいます 法人税は 法人の所得に対して課税されますが この課税所得金額と決算書上の当期利益金額とは 必ずしも一致しません それは 企業会計は 会社の財政状態や経営成績あるいは配当可能利益を明らかにするのが目的であるのに対して 法人税法の目的は租税負担公平の維持や国の政策上の要請などであるためです 1 会社の利益と法人税の課税所得法人税の課税対象となる所得金額は 益金の額 から 損金の額 を差し引いた金額です 会社決算上の利益金額も 収益の額から原価 諸経費及び損失の額を差し引いて算出しますから 両者は本質的には同じ計算方法によって算出されることになります 税務会計 所得 = 益金 - 損金 企業会計 利益 = 収益 - 費用 そこで課税所得金額は 公正妥当な会計処理の基準に従って算出された確定決算における当期利益又は欠損の金額を基礎として これに税法の規定に従った加算及び減算の修正計算をして算出することとなります この修正作業を 申告調整 といい -3-
次のような言葉で表されています 1 益金不算入 会社の利益計算では収益であるが 税法上は益金の額に算入しない 2 益金算入 会社の利益計算では収益でないが 税法上益金の額に算入する 3 損金不算入 会社の利益計算では費用 損失であるが 税法上は損金の額に算入しない 4 損金算入 会社の利益計算では 費用 損失でないが 税法上は損金の額に算入する 税務上の加算税務上の減算会社の利益 +( 益金算入 + 損金不算入 )-( 益金不算入 + 損金算入 )= 課税所得金額 ( マイナスの場合は欠損金額 ) 収 益 費 用 当期利益 1 益金不算入 4 損金算入 2 益金算入課税所得金額 3 損金不算入 2 決算調整と申告調整課税所得の計算に当たっての加算 減算の調整計算は 申告書という税務上の所得計算書の上で行います しかし 税法には 課税所得金額の算出の基となる決算書上の当期利益 ( 又は欠損 ) 金額の算出に当たって 会社が一定の経理をしていた場合に限りその計算を認めることとされている事項があります 例えば 減価償却費は 会社が確定した決算において減価償却費として経理した場合に限り損金として認められます このようなものを 決算調整事項 といい 経理処理の有無にかかわらず申告書の上だけでも調整を認める 申告調整事項 と区別しています 決算調整事項決算調整事項は 確定した決算において所定の経理をすることが要求される事項であって 会社が確定した決算で経理しなかった場合には 所得金額の計算に影響させることができません 次のようなものが 決算調整事項とされています -4-
減価償却資産の償却費の損金算入 損金経理をしなければならないもの 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入 ( 中小企業者等の特例を含みます ) 一括償却資産の損金算入 繰延資産の償却費の損金算入 少額の繰延資産の支出金額の損金算入 特定の事実が生じた場合の資産の評価損 ( 民事再生等評価換えによるものを除きます ) の損金算入 役員に対する利益連動給与の損金算入 実質的に回収不能となった金銭債権の貸倒損失の損金算入 取引停止後 1 年以上経過した場合の売掛債権の貸倒損失の損金算入 売掛債権の総額が取立て費用に満たない場合の売掛債権の貸倒損失の損金算入 貸倒引当金及び返品調整引当金の損金算入 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入 損の金処経分理にによよっるてほもかよ剰い余も金の 一こ認定とめのでら経所れ理得るを計もす算のるが 寄附金の損金算入 海外投資等損失準備金など租税特別措置法上の各種準備金の損金算入 特別償却準備金の損金算入 固定資産の圧縮記帳 ( 上欄の換地処分等 交換ないしは交換分合の場合の圧縮記帳などを除きます ) の損金算入 圧縮記帳に係る特別勘定の損金算入注これらの事項について 損金経理に代えて積立金として積み立てる経理をした場合には 申告書上で申告調整を行うことになります 長期割賦販売等に係る延払基準の適用 長期大規模工事以外の工事に係る工事進行基準の適用 注損金経理とは 確定した決算において費用又は損失として経理 ( 損益計算書に計上 ) することをいいます -5-
申告調整事項 決算調整事項 に対して 会社の経理処理に関係なく所得計算に反映させる事項 を 申告調整事項 といい 次のように区分されています 調整が会社の意思に次のようなものは 申告書上でその調整をするかしないかを任されているもの会社の意思に任されており 申告調整をした場合に限ってその調整が認められるもので 会社が積極的に申告調整をしないときには 原則として税務当局も更正しない事項です 区分項目調整益金 不算入受取配当等の益金不算入額減 損 金 算 入 収用換地等の場合その他の所得の特別控除 (5,000 万円 2,000 万円 1,500 万円 1,000 万円 800 万円控除 ) 額 剰余金の処分による圧縮積立金の積立額 剰余金の処分による海外投資等損失準備金等の各種準備金の積立額 資産の取得価額に算入した交際費等の損金不算入額に対応する取得価額 所得税額の控除 外国税額の控除 算 税額控除 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の法人税額の特別控除 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 税額控除 -6-
調整を行わなけれ次のようなものは 会社の意思のいかんにかかわらず 法人税ばならないものの申告に際して必ず申告書上で調整をしなければならないもので もし会社がその申告調整を行わなかったときには 税務当局によって更正される事項です 区分項目調整 益金算入 益金不算入 損 金 不 算 入 圧縮記帳に係る特別勘定の要取崩額又は圧縮損の要取戻額 貸倒引当金及び返品調整引当金等の要取崩額 海外投資等損失準備金等の各種準備金の要取崩額 法人税等の中間納付額の還付金等 被合併法人の利益積立金からなる合併差益 役員給与の損金不算入額 過大な特殊関係使用人に対する給与 寄附金の損金不算入額 法人税額及び法人住民税額 損金算入した納税充当金 法人税額から控除する所得税額又は外国法人税額 資本的支出の金額 交際費等の損金算入限度超過額 償却費の償却限度超過額 圧縮記帳限度額を超える圧縮額 貸倒引当金及び返品調整引当金の繰入限度超過額 海外投資等損失準備金等の各種準備金の積立限度超過額 加算減算加算 損金算入 青色申告事業年度の繰越欠損金 災害による繰越損失金 納税充当金から支出した事業税及び申告により確定している未払事業税 減 算 -7-
収益はどの時点で計上するか? 2 収益の計上時期 売上は商品の引渡しのあった日に計上するのが原則です ただし 長期割賦販売などの場合には 一定の基準により収益を分割計上していきます 会社の決算に当たって 収益 ( 益金 ) と費用 ( 損金 ) がどの時点で確定するかによ って 当期の課税所得もずいぶんちがったものになってきます そこで 税法では収益の計上時期等についてその取扱いを次のように定めています 1 収益等の計上時期 棚卸資産の販売による収益商品などのいわゆる棚卸資産の販売による収益は 代金を受け取ったかどうかということに関係なく その商品などを相手に引き渡したときに売上収益があったものとして計上します これを引渡基準といいます それでは 引渡し がいつの時点かということですが これについては次のいずれかの基準によって引渡しがあったものとみなし その基準を継続して適用すればよいことになっています 出荷基準製品や商品が 工場や倉庫から得意先に向けて実際に出荷された日を売上計上の日とする方法納品基準先方の店や工場へ届けた時に売上に計上する方法で 受領書 納品書等の日付によります 検収基準数量 品質等を先方が検査して合格した時に売上に計上する方法 -8-
使用収益可能日基準先方がその製品等を使用収益できることとなった日を引渡しの日とする方法検針日基準電気 ガス 水道などのメーター検針等をした日注すでに商品などを相手に引き渡していても その販売価額が確定していないときは その見積額を収益に計上しておき 後日 販売価額が確定した時点で見積額との差額を収益又は費用に計上します 請負による収益請負による収益の計上時期は その契約が物の引渡しを要するものか否かによって次のようになります 物の引渡しを要するもの 原則特例 完成引渡基準部分完成基準注 1 目的物の全部を引き渡した日完成部分を引き渡した日 物の引渡しを要しないもの 原則特例 役務完了基準部分完了基準注 2 役務の全部を完了した日部分的に報酬の額が確定した日 注 1 請け負った建設工事等が 11 件の契約で同種の建設工事等を多量に請け負った場合にその引渡量により工事代金を受け取る旨の特約等がある場合 又は21 件の建設工事等であってもその一部が完成しその完成した部分を引き渡す都度割合に応じて工事代金を受け取る旨の特約等がある場合のいずれかに該当する場合には 部分完成基準によります 工事進行基準を適用している場合は 部分完成基準の適用はありません 注 2 技術役務の提供を内容とするものについて 1 報酬額が現地に派遣する技術者の数や滞在日数などで算定され一定期間ごとに報酬額を確定させ支払を受ける場合及び2 報酬額が作業の段階ごとに区分され各段階の作業が完了する都度報酬額を確定させ支払を受ける場合の事実がある場合には 部分完了基準によります なお 請負契約が建設工事等である場合には 継続して適用することを条件にその工事内容に応じて作業結了日 搬入日 検収日 相手方において使用収益できることとなった日を売上計上の日とすることができます また 不動産売買の仲介あっせん手数料は 原則として売買契約の成立時に収益に計上しますが 継続してその取引完了日 ( 完了日前に実際に収受した金額についてはその収受した日 ) に収益計上することも認められています 委託販売による収益棚卸資産の委託販売による収益の計上時期は その取引の形態を考慮して次のいずれかの方法によりますが 特例の方法による場合は継続適用が条件です -9-