長く働き続けるための「学び直し」の実態と意識

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調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

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調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

平成 29 年度下期新潟市景況調査 ( 本報告 ) Ⅳ テーマ別調査結果 93

調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

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目次. 独立行政法人労働政策研究 研修機構による調査 速報値 ページ : 企業調査 ページ : 労働者調査 ページ. 総務省行政評価局による調査 ページ

調査要領 1. 調査の目的 : 人口減少による労働力不足が懸念されるなかで 昨年 4 月には女性活躍推進法 ( 正式名称 : 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 ) が施行されるなど 女性の社会進出がさらに進むことが期待されている そこで 女性の活躍に向けた取り組み状況について調査を実施す

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派遣社員の評価に関する 派遣先担当者調査結果

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PowerPoint プレゼンテーション

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1


1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

2018年度の雇用動向に関する道内企業の意識調査

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図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

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調査実施の背景 2015 年 4 月から子ども 子育て支援新制度 以下 新制度 が施行され 保育事業の拡大が図られます そのため保育人材の確保が重要な課題となっており 保育士確保のための取組が強化されています しかし保育士のみでは必要量を満たせないことから 子育て分野で働くことに関心のある地域住民に

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滋賀県内企業動向調査 2018 年 月期特別項目結果 2019 年 1 月 滋賀銀行のシンクタンクである しがぎん経済文化センター ( 大津市 取締役社長中川浩 ) は 滋賀県内企業動向調査 (2018 年 月期 ) のなかで 特別項目 : 働き方改革 ~ 年次有給休暇の取得

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調査結果 転職決定者に聞く入社の決め手 ( 男 別 ) 入社の決め手 を男 別でみた際 性は男性に比べると 勤務時間 休日休暇 育児環境 服装 オフィス環境 職場の上司 同僚 の項目で 10 ポイント以上 かった ( 図 1) 特に 勤務時間 休日休暇 の項目は 20 ポイント以上 かった ( 図

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

農業法人等における雇用に関する調査結果

調査結果の概要 1. 3 つの原則 関連 何を学ぶか 働き手の 理想のキャリアパス と 学び直す内容 ( スペシャリスト志向にも関わらず 趣味 生活に関する学び を志向 ) や 企業と働き手 ( 生涯を通して新しいスキルと専門技能を獲得しつづけること に対する認識 ) の間にギャップがあ

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調査結果 1. 働き方改革 と聞いてイメージすること 男女とも 有休取得 残業減 が 2 トップに 次いで 育児と仕事の両立 女性活躍 生産性向上 が上位に 働き方改革 と聞いてイメージすることを聞いたところ 全体では 有給休暇が取りやすくなる (37.6%) が最も多く 次いで 残業が減る (36

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1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

< 調査概要 ( 経営者版 )> 調査期間 : 平成 29 年 8 月 2 日 ( 水 )~10 月 20 日 ( 金 ) 調査地域 : 全国 調査方法 : 当社営業職員によるアンケート回収 回答数 :13,854 部無作為に 5,000 サンプル ( 男性 :4,025 名 :975 名 ) を抽

働き方の現状と今後の課題

夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

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スライド 1

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電通総研、「女性×働く」調査を実施

平成25年度東京都男女雇用平等参画状況調査結果報告書(調査の概要とポイント)「女性の活躍促進への取組等 企業における男女雇用管理に関する調査」

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第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若

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第5回 「離婚したくなる亭主の仕事」調査

「新入社員意識調査」に関するアンケート調査結果

ボジティブ

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―


結果概要 Ⅰ 人手不足への対応について 1. 人員の過不足状況について 社 % 不足している 1, 過不足はない 1, 過剰である 合計 2, 全体では 半数以上の企業が 不足している と回答 n =2,

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男女共同参画に関する意識調査

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第 3 章 雇用管理の動向と勤労者生活 ては 50 歳台まで上昇する賃金カーブを描いており 他の国々に比して その上昇テンポも大きい また 第 3 (3) 2 図により勤続年数階級別に賃金カーブをみても 男女ともに 上昇カーブを描いており 男性において特に その傾きは大きくなっている なお 女性につ

男女共同参画に関する意識調査

佐藤委員提出資料

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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

調査結果 外国人労働者の受入れについて 自分の職場に外国人労働者が いる 28% 情報通信業では 48% が いる と回答 全国の 20 歳 ~69 歳の働く男女 1,000 名 ( 全回答者 ) に 職場における外国人労働者の受入れ状況や外国人労働者の受入れに対する意識を聞きました まず 全回答者

調査の背景 わが国は今 女性の活躍推進を掲げ 結婚や出産をしても働き続けることを後押しする社会を目指しています しかしながら 出産後も働き続ける女性は未だ半数にとどまっているばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も多くありません こうした中 北海道においても地域や職場 家庭などのさまざまな

第1回「若手社員の仕事・会社に対する満足度」調査   

関東地方の者が約半数を占める (45.3%) 続いて近畿地方 (17.4%) 中部地方 (15.0%) となっている 図表 2-5 地域構成 北海道 東北関東中部近畿中国四国九州 沖縄総数 (%) 100.0% 8.9% 45.3%

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

調査の背景 埼玉県では平成 29 年度から不妊に関する総合的な支援施策として ウェルカムベイビープロジェクト を開始しました 当プロジェクトの一環として 若い世代からの妊娠 出産 不妊に関する正しい知識の普及啓発のため 願うときに こうのとり は来ますか? を作成し 県内高校 2 年生 3 年生全員

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採用者数の記載にあたっては 機械的に採用日の属する年度とするのではなく 一括 採用を行っている場合等において 次年度新規採用者を一定期間前倒しして雇い入れた 場合は 次年度の採用者数に含めることとしてください 5 新卒者等以外 (35 歳未満 ) の採用実績及び定着状況採用者数は認定申請日の直近の3

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リスモン調べ 第4回 離婚したくなる亭主の仕事

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

従業員満足度調査の活用

三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

< 前提 > ここでいう キャリア形成とは 1 派遣労働者の職業能力の向上に伴って職務が高度化し 2 処遇が向上することとするまた キャリア管理とは 派遣会社が派遣労働者のキャリア形成を支援する取組みや制度のことを指す 2

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人生100年時代の生活に関する意識と実態

Transcription:

長く働き続けるための 学び直し の実態と意識 人生 100 年時代の働き方に関するアンケート調査 ~ 学び直しをしていない正社員に注目して 目次 主席研究員的場康子 1. 職業能力開発の重要性 2 2. 学び直しの実施状況と意識 3 3. 多くの人が学び直しができる社会へ 8 要旨 1 人生 100 年時代に向け 長く働くことで生計を維持するため AI( 人工知能 ) など技術 の進展に対応し 新しい技術や知識と共存することを模索しなければならない人が多くな るとされている そこで本稿では 2018 年 3 月に実施した 人生 100 年時代の働き方に関 するアンケート調査 より 正社員男女の学び直し ( 職業に関する能力を自発的に向上さ せるための学習 ) の実施状況を踏まえ 学び直しを実施していない人に焦点を当て 長期 的に働くにあたり学び直しの重要性を社会的に浸透させるための課題について考える 2 本調査では 現在あるいは過去に学び直しを経験している人は約 4 人に1 人であり 将来的におこなおうと思っている人が3 割弱 学び直しをおこなうつもりはないと回答した人が約半数を占めた 3 学び直しの実施状況と就業意識との関連をみると 学び直しをおこなうつもりはないという人も 学び直し経験者と同様 自分の仕事にやりがいを感じており 現在の職場で出来る限り働き続けたいと思っている人が少なくない 学び直し経験者と異なるのは 学び直しをおこなうつもりはない人は 長く働き続けるためには学び直しが必要である との認識が低い人が多いということである 学び直しをしても処遇に反映されるわけではないし 学び直しをしなくても働き続けることができると思っているため 学び直しに関心がなく自分事として捉えていない人が多いことが推察される 4これからは 長く働き続ける ないし生産性を高めるためには学び直しが必要である という認識を働き手と企業の双方が持つことが求められる その際 まずは企業から働き手に対して学び直しの必要性を伝えることが重要である その上で 学ぶ意欲がある人々には情報提供や相談 教育費用などのサポートを強化することが必要であるが 他方 学び直しに消極的な人々については 学んだ成果を昇進や昇給など処遇に反映させることが一つのインセンティブになるということも示された キーワード : リカレント教育 職業能力開発 学び直し 第一生命経済研究所 Life Design Report Summer2018.7 1

1. 職業能力開発の重要性 わが国では 労働力人口の減少や技術革新の進展などの社会環境の変化により 雇用や人材教育などの社会政策の変革のみでなく個人の就労意識の変革も求められている すでに企業の多くは今後も続くであろう人手不足の状況に対応するため 中途採用や新卒採用の強化などを図っているが 中には社内人材の再教育や多能工化 ( 教育訓練 能力開発 ) に注目している企業もある ( 図表 1) テクノロジーの進化に対応できるよう 社員の職業能力を高めることに取り組んでいる企業も少なくない 政府においても 2017 年 9 月に 人生 100 年時代構想会議 を立ち上げ わが国経済の活力を維持するためには人材の質向上が重要であるという観点から 何歳になっても学び直しができるリカレント教育 についての検討を進めている 図表 1 人手不足を緩和するために取り組んでいる対策 < 複数回答 > 0 10 20 30 40 50 60 70 中途採用を強化する (*1) 採用対象の拡大を図る新卒採用を強化する (*2) 業務の効率化を進める (*3) 募集賃金を引き上げる定年の延長や再雇用等による雇用延長を進める非正社員から正社員への登用を進める非正社員の活用を進める ( 量的な拡大や業務の高度化 ) 募集時の 賃金以外の処遇 労働条件を改善する社内人材を ( 職種変更を伴わない ) 配置転換する社内人材を ( 職種変更を伴う ) 再教育 再配置する社内人材の多能工化 ( 教育訓練 能力開発 ) を進める周辺業務の外部委託 ( アウトソーシング ) を進める省力化投資 ( 機械化 自動化 IT 化 ) をおこなう既存人材の時間外労働 ( 残業や休日出勤 ) を増加させる出向 転籍者を受け入れる出産 育児等による離職者の呼び戻し 優先採用をおこなう事業の縮小 見直しをおこなう (*4) 50.1 43.9 37.9 34.0 27.7 25.6 24.1 20.5 16.9 16.6 14.8 14.0 12.9 8.4 6.3 5.3 57.5 61.9 注 : 調査は 30 人以上規模の企業を対象とし 2,406 社より有効票を回収 このうち取組を実施している企業 776 社が回答 *1 採用チャネルの多様化 応募要件の緩和等を含む *2 通年採用化 新卒定義の拡大 インターンシップの受入れ強化等を含む *3 無駄な業務の削減 仕事の分担 進め方の見直し等 *4 営業時間の短縮 製品 サービスの絞込み等 資料 : 独立行政法人労働政策研究 研修機構 人材 ( 人手 ) 不足の現状等に関する調査 ( 企業調査 ) 結果 2016 年 12 月 2 Life Design Report Summer2018.7 第一生命経済研究所

このように人生 100 年時代を迎え 国や企業レベルで様々な対策が議論されている中 実際に働く人々は 自らの職業生活において 職業能力開発 ( 学び直し ) をどのように考えているだろうか 人生における労働期間の長期化に備え 技術革新など社会の変化に合わせ 職業能力開発を重視して働くことが必要とされているが そのように考えている人はどのくらいいるであろうか 当研究所では 2018 年 3 月に実施した 人生 100 年時代の働き方に関するアンケート調査 *1 結果をもとに 民間企業で正社員として働く男女の職業能力開発 ( 学び直し ) の実施状況について分析をおこなった この中から本稿では 特に学び直しを実施していない人に焦点を当てて どのような人が実施していないのか なぜ実施しないのか さらに多くの人が実施するために何が必要なのかを探る このことを通して 労働環境が変わる中 自己のパフォーマンスを維持しつつ長期的に働くにあたり学び直しの重要性を社会的に浸透させるための課題について考える 2. 学び直しの実施状況と意識 (1) 学び直しの実施状況まず 職業能力開発の実施状況をみる アンケート調査では 職業能力開発 を 職業に関する能力を自発的に向上させるための学習 とみなし これを 学び直し と表現して 現在の実施状況をたずねた 具体的には 大学等の教育機関や e ラーニング等による通信教育の受講 書籍等による自学 自習により 仕事を続ける上で必要な技術や知識 教養を習得することを示している こうした 学び直し の実施状況をみると 現在 おこなっている と回答した割合は11.3% 現在はおこなっていないが 過去におこなっていた ( 以下 過去におこなっていた ) は14.6% であり これらを合わせた 学び直し経験者 は約 4 人に1 人であった ( 図表 2) これまでおこなったことがないが 将来的におこなおうと思っている ( 以下 将来おこないたい ) という実施希望者が27.7% おこなうつもりはない (46.6%) と回答した人が約半数にのぼる 性別では大差がないが 性 年代別では特に20 代と50 代に注目したい 男女ともに20 代は相対的に 現在 おこなっている との回答割合が高い 若者の中には 時代の変化を敏感に感じ 入職時にすでに職業能力開発の重要性を認識しながら働いている人もいる 50 代は 就業年数が長いため 過去におこなっていた 割合が他の年代よりも高いことは当然である ここで注目すべきは 将来おこないたい との回答である 男女とも約 2 割であるが 多くの会社が定年としている60 歳を前にして これから学び直しをしたいという人も少なからずいるということだ また 女性は年代が低いほど おこなうつもりはない の割合が低く 将来おこないたい の割合が高い 若い女性ほど学び直しを重視している傾向が見られる 他方 男性は 20 代でも約半数が おこなうつもりはない と回答しており この項目の年代による差はあまり見られない 若い世代の学び直しに対する意欲が女性の方が高いのは 女 第一生命経済研究所 Life Design Report Summer2018.7 3

性の場合 出産や育児によって仕事から離れる可能性があるため それを見越して学び直しによってキャリアの中断を埋めようと思っている人が多いのかもしれない 図表 2 学び直しの実施状況 ( 全体 性別 性 年代別 ) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 (n=2,000) 11.3 14.6 27.7 46.6 男性 (n=1,000) 11.7 13.4 27.0 47.9 女性 (n=1,000) 10.8 15.7 28.3 45.2 男性 /20-29 歳 (n=250) 14.8 10.4 27.2 47.6 30-39 歳 (n=250) 14.4 11.2 32.0 42.4 40-49 歳 (n=250) 10.0 9.2 28.0 52.8 50-59 歳 (n=250) 7.6 22.8 20.8 48.8 女性 /20-29 歳 (n=250) 16.0 14.4 34.0 35.6 30-39 歳 (n=250) 8.8 16.4 31.6 43.2 40-49 歳 (n=250) 9.2 12.8 29.6 48.4 50-59 歳 (n=250) 9.2 19.2 18.0 53.6 現在 おこなっている 現在はおこなっていないが 過去におこなっていた これまでおこなったことがないが 将来的におこなおうと思っている おこなうつもりはない (2) 学び直しの実施状況別にみた就業意識次に こうした実施状況の背景にあると思われる就業意識との関連をみる 学び直しの実施状況別に 様々な就業意識をみたものが図表 3である これをみると 出来る限りこの会社で働き続けたい への回答割合は 実施状況による差があまりないことがわかる また 自分はどのような仕事をしたいかわかっている 人の割合は 学び直し経験者には及ばないが 学び直しをおこなうつもりはない人 でも男女とも半数以上おり 仕事を通して自分を高めたい と思っている人も同様に男性は約 5 割 女性は5 割弱いる 自分の仕事にやりがいを感じている 人の割合も 学び直し経験者や将来おこないたいといった学び直しに前向きな人ほどではないが おこなうつもりはない人でも4 割以上であり 大差はない ただ 学び直し経験者や将来おこないたいと思っている人と おこなうつもりはない人との間で大きく差がみられたのは 長く働き続けるためには 学び直しが必要である と 長く働き続けるために学び直しをしたい である 学び直しをおこなうつもりがない人でも 出来る限り現在の会社で働き続けたいと思い 現在の仕事に前向きに取り組んでいる人は少なくないが 長く働き続けること と 学び直しをすること が意識として結びついておらず 長く働き続けるにあたり学び直しの必要性を感じていない人が多いようだ 4 Life Design Report Summer2018.7 第一生命経済研究所

図表 3 学び直しの実施状況別にみた就業意識 ( 性別 ) 男性 女性 100 80 60 40 20 0 0 20 40 60 80 100 81.3 63.7 54.9 自分はどのような仕事をしたいかわかっている 73.2 60.1 60.2 78.5 73.0 50.3 仕事を通して自分を高めたい 46.5 80.4 75.6 61.4 52.6 43.8 自分の仕事にやりがいを感じている 55.8 47.7 41.4 73.7 70.7 30.9 長く働き続けるためには 学び直しが必要である 29.6 76.2 67.5 74.1 69.6 57.4 57.4 54.3 28.6 長く働き続けるために 学び直しをしたい 出来る限りこの会社で働き続けたい 25.7 76.2 73.5 60.4 53.0 54.6 学び直し経験者 将来おこないたい おこなうつもりはない 注 : 学び直し経験者 とは図表 2 における 現在 おこなっている と 現在はおこなっていないが 過去におこなっていた 人の合計であり 男性 251 人 女性 265 人 将来おこないたい は これまでおこなったことがないが 将来的におこなおうと思っている の略であり 男性 270 人 女性 283 人 おこなうつもりはない は男性 479 人 女性 452 人である (3) 学び直しをしていない理由次に なぜ必要と感じないのか 学び直しをしていない理由についてたずねた結果をみる 前述の通り 現在学び直しをしていない人の中には 将来おこないたい 人と おこなうつもりはない 人がいるが 将来おこないたい 人の就業意識は おこなうつもりはない 人よりも 学び直し経験者 に近いことが示された 背景となる意識が異なるため 学び直しをしていない理由についても両者は分けて考える必要がある まず 将来おこないたい という人の学び直しをしていない理由をみる 学ぶための時間がない が 47.9% 学ぶための費用がない が 40.3% であり 時間や費用といった物理的な理由から実施していないという人が多くを占めている ( 図表 4) 次いで どこで教育を受けたらいいのかわからない が 32.2% どのような知識 技能が必要かわからない ( 何を学べばいいのかわからない ) が 28.4% など 学び方がわからない人が約 3 割である こうした理由への回答割合は特に高い年代で比較的多く どこで教育を受けたらいいのかわからない に50 代男性の36.5% 50 代女性も35.6% が回答している また50 代女性の35.6% が どのような知識 技能が必要かわからない ( 何を学べばいいのかわからない ) と回答している 将来的に学び直しをしたいという人が実際に行動に移せるようにするには 時間 や 費用 面の対策のみでなく 学び直しの方法をわかるようにすることが重要である 第一生命経済研究所 Life Design Report Summer2018.7 5

他方 学び直しをおこなうつもりがない人の学び直しをしていない理由の1 位は 自分には関係ない (33.3%) である ( 図表 5) これに 学ぶための時間がない (28.5%) や 学ぶための費用がない (24.5%) が続いているが 学ぶことに関心がわかない (15.3%) が4 位である 時間 や 費用 面を理由に挙げる人もいるが そもそも学び直しを自分事としてとらえておらず 学ぶ必要性も関心もないことを理由としている人も少なくないことが全体の傾向としてみてとれる 図表 4 将来的に学び直しをしようと思っている人の学び直しをしていない理由 ( 上位 7 項目 ) ( 全体 性別 性 年代別 )< 複数回答 > ( 単位 :%) 人数 ( 人 ) 学ぶための時間がない 学ぶための費用がない どこで教育を受けたらいいのかわからない どのような知健康 体力に識 技能が必自信がない要かわからない ( 何を学べばいいのかわからない ) 仕事上必要な知識 技能を既にもっているので必要がない 将来的にも 今もっている知識 技能が活かせる仕事を選ぶので必要がない 性別 性 年代別 全体 553 47.9 40.3 32.2 28.4 11.9 8.7 7.8 男性 270 45.2 37.8 31.1 26.7 11.1 9.6 7.8 女性 283 50.5 42.8 33.2 30.0 12.7 7.8 7.8 男性 /20-29 歳 68 44.1 32.4 20.6 22.1 13.2 7.4 7.4 30-39 歳 80 47.5 37.5 33.8 32.5 10.0 16.3 11.3 40-49 歳 70 51.4 48.6 34.3 27.1 12.9 5.7 5.7 50-59 歳 52 34.6 30.8 36.5 23.1 7.7 7.7 5.8 女性 /20-29 歳 85 51.8 47.1 35.3 30.6 10.6 9.4 8.2 30-39 歳 79 53.2 36.7 36.7 24.1 13.9 15.2 8.9 40-49 歳 74 45.9 44.6 25.7 32.4 8.1 2.7 6.8 50-59 歳 45 51.1 42.2 35.6 35.6 22.2 0.0 6.7 注 : 学び直しを これまでおこなったことがないが 将来的におこなおうと思っている と回答した人対象 図表 5 学び直しをおこなうつもりがない人の学び直しをしていない理由 ( 上位 7 項目 ) ( 全体 性別 性 年代別 )< 複数回答 > ( 単位 :%) 人数 ( 人 ) 自分には関係ない 学ぶための時間がない 学ぶための費用がない 学ぶことに関 仕事上必要 どのような知 健康 体力に 心がわかないな知識 技能を既にもって 識 技能が必要かわからな 自信がない いるので必要い ( 何を学べ がない ばいいのかわ からない ) 性別 性 年代別 全体 931 33.3 28.5 24.5 15.3 14.5 10.5 8.7 男性 479 37.4 30.1 23.8 16.3 14.0 7.7 7.5 女性 452 29.0 26.8 25.2 14.2 15.0 13.5 10.0 男性 /20-29 歳 119 40.3 33.6 24.4 18.5 6.7 7.6 5.9 30-39 歳 106 35.8 27.4 22.6 14.2 17.0 10.4 5.7 40-49 歳 132 40.2 35.6 24.2 16.7 13.6 7.6 9.8 50-59 歳 122 32.8 23.0 23.8 15.6 18.9 5.7 8.2 女性 /20-29 歳 89 25.8 31.5 28.1 11.2 20.2 18.0 6.7 30-39 歳 108 29.6 25.0 24.1 12.0 16.7 19.4 8.3 40-49 歳 121 28.9 26.4 27.3 17.4 11.6 7.4 12.4 50-59 歳 134 30.6 25.4 22.4 14.9 13.4 11.2 11.2 注 : 学び直しを おこなうつもりはない と回答した人対象 6 Life Design Report Summer2018.7 第一生命経済研究所

(4) 学び直しをするために勤務先に期待すること最後に 実施状況別に学び直しをするにあたり勤務先に期待することをたずねた結果をみる 特にない の回答割合が 学び直し経験者では男性 14.7% 女性 18.5% 将来おこないたい人では男性 10.4% 女性 17.3% といずれも2 割以下であるが おこなうつもりはない人では男性 64.7% 女性 57.7% を占めた ( 図表省略 ) 学び直しをおこなうつもりはない人では6 割前後が特に期待することはないとしているが 残りの約 4 割は 期待すること を回答しており その具体的内容が 学び直しに消極的な人々のインセンティブにつながる一つのヒントを示すものと考えられる 期待することが 特にない と回答した人を除いて 期待することの具体的な内容を 男女それぞれ学び直しの実施状況別にみたものが図表 6である 男女ともに 学び直し経験者と将来おこないたい人では 社員が職業能力開発をしやすいように 教育機関や内容についての情報を提供してほしい ( 以下 情報提供 ) 社員に必要な教育訓練のプログラムを教え 計画的に育成をしてほしい ( 以下 計画的育成 ) 職業能力開発のための費用を援助してほしい ( 以下 費用援助 ) を回答している人が多い 他方 おこなうつもりはない人は 男女ともに 職業能力開発の成果に応じて 昇進や昇給など処遇に反映してほしい ( 以下 処遇に反映 ) が1 位であり 学び直し経験者などが上位に挙げた 情報提供 や 費用援助 を上回る回答割合である 学び直しに関心がなく 自分事と捉えていない人には 学び直しによる成果を昇進や昇給など 処遇に反映 させることが 学び直しをする一つのインセンティブになるということが示された 図表 6 学び直しの実施状況別にみた学び直しをするために勤務先に期待すること ( 性別 )< 複数回答 > 60 50 49.5 45.5 40 36.9 29.8 35.5 34.7 30 26.0 18.9 18.9 30.4 27.3 20.1 29.0 24.4 22.4 21.5 14.8 22.4 25.6 34.3 22.0 20.7 27.2 21.5 16.9 21.3 男性 20 9.5 10 0.5 0.8 1.2 0 社員が職業能力開発をしやすいように 教育機関や内容についての情報を提供してほしい 社員に必要な教育訓練のプログラムを教え 計画的に育成をしてほしい 職業能力開発のための費用を援助してほしい 職業能力開発ができるよう 時間外労働の削減など労働時間を考慮してほしい キャリアカウンセリングをおこなってほしい 職業能力開発について 社員の相談に応じてほしい 職業能力開発の成果に応じて 昇進や昇給など処遇に反映してほしい 職業能力開発のための休暇制度を導入してほしい 人材育成の重要性について 経営者トップの意識を改革してほしい その他 0 10 20 30 40 50 60 0.0 0.0 0.0 女性 19.9 25.1 32.4 29.5 37.0 41.0 37.6 24.6 29.6 19.2 15.7 23.6 20.9 13.1 11.0 21.8 20.9 31.9 27.8 38.7 46.8 25.0 24.8 23.0 13.4 14.5 学び直し経験者 13.6 将来おこないたい おこなうつもりはない 注 : 対象は勤務先に期待することが 特にない と回答した人以外 学び直しの実施状況の区分については図表 3 と同じ 回答者数は 学び直し経験者 は男性 214 人 女性 216 人 将来おこないたい 男性 242 人 女性 234 人 おこなうつもりはない は男性 169 人 女性 191 人である 第一生命経済研究所 Life Design Report Summer2018.7 7

3. 多くの人が学び直しができる社会へ 人生 100 年時代に向け 長く働くことで生計を維持するため AI( 人工知能 ) など技術の進展に対応し 新しい技術や知識と共存することを模索しなければならないとされている しかしながら本調査では こうした社会情勢を受け 自ら学び直しをしている人は少数派であり 学び直しをおこなうつもりはないと回答した人が 調査対象である正社員男女の約半数を占めた ただし就業意識をみると 学び直しをおこなうつもりはないという人も 学び直し経験者と同様 自分の仕事にやりがいを感じており 現在の職場で出来る限り働き続けたいと思っている人が少なくない 学び直し経験者と異なるのは 学び直しをおこなうつもりがない人は 長く働き続けるためには学び直しが必要である との認識が低い人が多いということである 学び直しをしても処遇に反映されるわけではないし 学び直しをしなくても働き続けることができると思っているため 学び直しに関心がなく自分事として捉えていない人が多いということが推察される 他方 情報技術の進展と人口構造の変化に対応し 厳しい国際競争の中で生き抜くには人材能力を高め 労働生産性を向上させることの必要性を認識している企業は多い 企業にとっても社員の職業能力の開発 強化は課題であるとされている したがって これからは 長く働き続ける ないし生産性を高めるためには学び直しが必要である という認識を 働き手と企業の双方が持つことが求められる その際 まずは企業から社員に求めるキャリアやそのために必要な職業能力を示し 学び直しの必要性を伝えることが重要である その上で 学ぶ意欲がある人々には情報提供や相談 教育費用などのサポートを強化することが必要であるが 他方 学び直しに消極的な人々については 学んだ成果を昇進や昇給など処遇に反映させることが一つのインセンティブになるということも示された なお今回は 学び直しの実施状況を踏まえ 学び直しをしていない人に焦点を当て 学び直しの壁となっている意識などについてみてきたが 学び直しを普及させるための具体的方法や社会的支援のあり方については次稿で論じていくこととする ( ライフデザイン研究部まとばやすこ ) 注釈 *1 人生 100 年時代の働き方に関するアンケート調査 この調査は当研究所が2018 年 3 月 全 国の20 歳 ~59 歳の民間企業で働く正社員男女を対象に 調査機関 ( 株式会社クロス マーケ ティング ) の登録モニターから性 年代別に各 250サンプル 合計 2,000サンプルを抽出し実 施された 回答者の勤務先の企業規模別内訳は以下の通りである 人数 ( 人 ) 99 人以下 100~299 人 300~999 人 1,000 人以上 全体 2,000 45.7 15.3 13.0 26.1 男性 1,000 36.9 16.4 14.2 32.5 女性 1,000 54.4 14.1 11.8 19.7 8 Life Design Report Summer2018.7 第一生命経済研究所