203/8/20 203 年 8 月 7 日 ( 土 ) JA 愛知厚生連海南病院薬剤科飯田昭宏. がん疼痛とアセスメント がん性疼痛とは 疼痛評価 2. がん疼痛治療法 鎮痛薬の特徴 使用方法 副作用と対処法 3. 患者指導にあたって 当院での指導 誤解や不安による恐怖感の軽減 患者自身の薬剤管理能力を高める がん患者の終末期に現れる身体症状 主要な身体症状の出現からの生存期間 疼痛 便秘 呼吸困難感咳食欲不振死前喘鳴悪心 嘔吐不穏 全身倦怠感 腹水 不眠 恒藤暁 (999). 最新緩和医療学最新医学社 がん疼痛 がん終末期患者がもつトータルペイン がんの直接浸潤による痛み (77%) 骨転移 神経への圧迫 浸潤 消化管閉塞 がん治療に伴う痛み (9%) 手術 化学療法 放射線療法 がんと無関係な痛み (3%) 身体的苦痛 痛み 痛み以外の症状 治療による苦痛 日常生活の支障 精神的苦痛 不安 いらだち 孤独感 恐れ うつ状態 怒り トータルペイン全人的な痛み 社会的苦痛 仕事上の問題 経済上の問題 家庭内の問題 人間関係 相続の問題 霊的苦痛 ( スピリチュアルペイン ) 人生の意味への問い 価値体系の変化 苦しみの意味への問い 罪の意識 死の恐怖 神の存在への追求 死生観に対する悩み
203/8/20 疼痛評価 日常生活への影響 2 痛みのパターン ( 持続痛 突出痛 ) 3 痛みの強さ 4 痛みの部位 5 痛みの経過 6 痛みの性状 ( 体性痛 内臓痛 神経障害性疼痛 ) 7 痛みの増悪 軽快因子 8 現在の治療の反応 9 レスキュードーズの効果と副作用 痛みのパターン 持続痛 24 時間のうち 2 時間以上経験される平均的な痛み 突出痛 持続痛の有無や程度 鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強 持続痛 突出痛 NRS 治療の方針 日を通してずっと痛い 時間 たいていはいいが時々痛くなる NRS NRS 時間 基本的な治療方針 オピオイドを増量 レスキューを使用 時間 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 200 年版 NRS(Numerical Rating Scale ) : 数値的評価スケール 痛みの分類 性状 0 2 3 4 5 6 7 8 9 0 VAS(Visual Analogue Scale): ビジュアルアナログスケール 0cmの直線痛みなし想像できる最も強い痛み Face Scale : フェイススケール 分類 障害部位 痛みを起こす刺激 痛みの特徴 例 有効薬剤 体性痛 皮膚 骨 関節 筋肉などの体性組織胸 腹膜 機械的刺激 ( 切る 刺す ) 炎症等の化学的刺激 持続性の鈍痛場所が明らか体動時痛増強あり 骨転移痛リンパ節転移に伴う深部組織障害腹膜 胸膜の炎症 侵害受容性疼痛 内臓痛 食道 胃 小腸 大腸などの管腔臓器内臓組織 管腔臓器の内圧上昇臓器被膜の進展 漠然とした鈍痛腹部正中関連痛あり 消化管の通過障害肝被膜の痛み 神経障害性疼痛 神経 脊髄 神経の圧迫 断裂 腫れを伴う痛み電撃痛知覚 運動障害あり がんの腕神経叢 腰仙部神経叢浸潤 脊椎転移の硬膜外浸潤 脊髄圧迫 NSAIDsが奏功 オピオイドが奏功 オピオイドは効きにくく鎮痛補 助薬を併用 0 2 3 4 痛みの感じ方を増減する因子 痛みの閾値を上げる 不快不眠疲労不安恐怖怒り悲しみうつ状態倦怠感内向的心理状態孤独感社会的地位の喪失 痛みの閾値を下げる 症状緩和睡眠休憩周囲の人々の共感理解人とのふれあい気晴らしとなる行為不安減退気分高揚 鎮痛薬 抗不安薬 抗うつ薬. がん疼痛とアセスメント がん性疼痛とは 疼痛評価 2. がん疼痛治療法 鎮痛薬の特徴 使用方法 副作用と対処法 3. 患者指導にあたって 当院での指導 誤解や不安による恐怖感の軽減 患者自身の薬剤管理能力を高める 2
203/8/20 痛みのアセスメントと治療の流れ WHO 三段階除痛ラダー 痛みが緩和するまで見直し 疼痛治療の開始 痛みの残存 オピオイドの増量 NSAIDs の併用 鎮痛補助薬の併用 その他の治療法検討 痛みの初期アセスメント 継続アセスメント 痛みの軽減 消失 副作用の予防 対策 副作用の持続 副作用対策の再検討 鎮痛薬の変更 ( 種類 投与経路など ) StepⅠ StepⅡ + 弱オピオイド リン酸コデイン トラマドール オキシコドン ( 低用量 ) 非オピオイド ± 鎮痛補助薬 アセトアミノフェン NSAIDs StepⅢ + 強オピオイド モルヒネ フェンタニル オキシコドン ( 高用量 ) WHO 方式がん疼痛治療法の 5 原則 経口を基本として (by mouth) 2 時刻を決めて規則正しく (by the clock) 3 除痛ラダーに沿って効力の順に (by the ladder) 4 患者ごとの個人的な量で (for the individual) 5 細かい配慮を (with attention to detail) 各オピオイドのプロファイル 剤形 受容体 モルヒネオキシコドンフェンタニル 末 内服液 徐放製剤 射 坐剤 徐放 散剤 射 貼付剤 射 μ +++ +++ +++ δ + 代謝肝肝肝 代謝物 未変化体尿中排泄率 グルクロン酸抱合 CYP3A4 CYP2D6 CYP3A4 M6G(+) M3G(-) オキシモルフォン (+) ノルオキシコドン (-) ノルフェンタニル (-) 約 8~0% 約 5.5~9% 約 0% 嘔気 嘔吐 ++ +~++ + めまい ++ + + 便秘 +++ +++ ± 眠気 ++ +~++ ± そう痒感 + ± +( 局所 ) オピオイドの副作用 オピオイドの副作用. 便秘 (90%) 2. 嘔気 (30%) 3. 嘔吐 (0%) 4. 眠気 (0%) 5. せん妄 混乱 (0%) 6. 呼吸抑制 (<%) 7. 排尿障害 8. そう痒感 9. 口渇 0. 発汗 症状の原因 疾患に起因 対策 オピオイドに起因 主な副作用 嘔気 嘔吐 オピオイド開始時には予防的な治療を行うべき 便秘 投与開始直後からみられオピオイド投与中は継続する 眠気 過量で発現しやすい 退薬現象による症状 ( 副作用 ) 精神症状 : 意識混濁 イライラ感 循環器症状 : 頻脈 頻呼吸 異常発汗 消化器症状 : 嘔気 唾液分泌亢進 腹痛 下痢 3
203/8/20 オピオイドの副作用ラダー 000 00 0 0.0 357.5 死亡 0.4 3.4 呼吸抑制 2.6 行動カタトニー鎮痛抑制 0.02 嘔気 嘔吐便秘 モルヒネの数種薬理作用と 50% 鎮痛用量の関係 オピオイドの副作用ラダー 000 00 0 0.0 357.5 死亡 0.4 /0 3.4 呼吸抑制 2.6 行動カタトニー鎮痛抑制 0.02 嘔気 嘔吐便秘 モルヒネの数種薬理作用と 50% 鎮痛用量の関係 オピオイドによる嘔吐の機序 抗ヒスタミン薬 前庭器 ( 運動 ) オピオイド 消化管 ( 胃 腸 ) 消化管運動改善薬 大脳大脳皮質 ( 感情 : 暗示 連想 情動 ) 第四脳室 CTZ 延髄 VC 嘔吐 ドパミン受容体拮抗薬 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 200 年版 オピオイドによる嘔吐 嘔吐の予防と治療薬一覧 主な作用部位薬剤名剤形 回投与量 CTZ ( ドパミン受容体拮抗薬 ) 前庭器 ( 抗ヒスタミン薬 ) 消化管 ( 消化管運動改善薬 ) CTZ VC など ( 非定型抗精神病薬 ) プロクロルペラジン ( ノバミン ) ハロペリドール ( セレネース ) クロルプロマジン ( コントミン ) ジフェンヒドラミン / ジプロフィリン ( トラベルミン ) マレイン酸クロルフェニラミン ( ポララミン ) メトクロプラミド ( プリンペラン ) ドンペリドン ( ナウゼリン ) オランザピン ( ジプレキサ ) リスペリドン ( リスパダール ) 坐剤 液 5mg 5mg 0.75mg 2.5~0mg 2.5mg 5mg 40mg/26mg 2.5~5mg 2mg 5mg 5~0mg 0mg 5~0mg 60mg 2.5mg 0.5mg 0.5mg がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 200 年版 4
203/8/20 オピオイドの副作用ラダー 主な便秘の原因 000 00 0 0.0 357.5 死亡 0.4 3.4 呼吸抑制 2.6 /50 行動カタトニー鎮痛抑制 0.02 嘔気 嘔吐便秘 モルヒネの数種薬理作用と 50% 鎮痛用量の関係 全身性 消化管 電解質 衰弱低栄養発熱 嘔吐などによる脱水長期臥床入浴困難 消化管狭窄 閉塞腸管癒着腹水 骨盤内腫瘍による圧迫宿便痔核 高カルシウム血症低カリウム血症 神経因性 ( 脊椎転移などによる ) 脊髄圧迫 薬剤性 オピオイド抗コリン剤 ( 抗うつ薬 抗パーキンソン薬など ) 制酸剤利尿剤 オピオイドの副作用による便秘の治療薬一覧 浸透圧性下剤 分類薬剤名 日用法 用量 大腸刺激性下剤 消化管運動改善薬 塩類下剤酸化マグネシウム 000~2000mg( 分 2~3 回 ) 糖類下剤ラクツロース ( モニラック ) センナ ( アローゼン ) センノシド ( センノサイド ) ピコスルファート Na ( ラキソベロン ) 0~60mL( 分 2~3 回 ) ~3g( 分 2~3 回 ) 2~48mg( 就寝前または起床時と就寝前 ) 5~30 滴 /2~6 ( 分 2~3 回 ) ビサコジル 日 ~2 回 ( 頓用 ) クエン酸モサプリド ( ガスモチン ) 5mg( 分 3 回 ) 漢方薬大建中湯 7.5~5g( 分 2~3 回 ) 坐薬 炭酸水素ナトリウム ( 新レシカルボン ) 個 ( 頓用 ) 浣腸グリセリン 0~50mL/ 回 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 200 年版 オピオイドの副作用ラダー 000 00 0 0.0 2.6 倍 357.5 死亡 0.4 3.4 呼吸抑制 2.6 行動カタトニー鎮痛抑制 0.02 嘔気 嘔吐 眠気 便秘 モルヒネの数種薬理作用と 50% 鎮痛用量の関係 眠気対策 眠気の原因を検索し 治療開始 オピオイドが原因 痛み (-) オピオイド減量 2 痛み (+) オピオイドを変更して増量 NSAIDs の強化 (NSAIDs にアセトアミノフェンを併用 ) 鎮痛補助薬を併用してオピオイドを減量 リタリンの併用 5
203/8/20 オピオイドの換算比の目安 オピオイド鎮痛薬開始時の要点 オキシコドン経口 40mg 2/3 モルヒネ経口 60mg 00 3/2 フェントステープ 60mg /2 2 50 モルヒネ 30mg フェンタニル 0.6mg /50 MS コンチン 5mg 30mg 60mg 20mg 80mg 240mg 基本薬とレスキューを同時に処方 NSAIDs+ 徐放性オピオイド + 速放性オピオイド 副作用対策 吐き気 便秘の予防 使用方法の説明 誤解や不安への対処 オキシコンチン 0mg 20mg 40mg 80mg 20mg 60mg フェントステープ 0.5mg (mg 半面 ) mg 2mg 4mg 6mg 8mg レスキューの要点 オピオイドのタイトレーションに使用回数をみてベースの増量を検討 突出痛に対しての使用すぐに使えること タイミングが重要 適切な量を使用一日量の /6(/4~/8) が基本. がん疼痛とアセスメント がん性疼痛とは 疼痛評価 2. がん疼痛治療法 鎮痛薬の特徴 使用方法 副作用と対処法 3. 患者指導にあたって 当院での指導 誤解や不安による恐怖感の軽減 患者自身の薬剤管理能力を高める 当院での患者指導パンフレット 服薬指導のポイント. 疼痛管理の重要性 2. 鎮痛薬を使った治療の進め方 3. オピオイドに対する誤解や不安の解消 4. 定時投与の必要性 5. オピオイド製剤の特徴と使用方法 意点 6. オピオイドの副作用の説明 6
203/8/20. 疼痛管理の重要性 2. 鎮痛薬を使った治療の進め方 痛みを我慢しない 痛みを医療者に訴えないことが多い 鎮痛薬使用に対しての抵抗感 痛みは患者本人にしかわからない苦痛症状 痛みをとることでの利点 痛みを我慢するデメリット ( 不眠 食欲不振 体力低下 ) 除痛を行うメリット 痛み治療への参加 痛みは主観的な知覚であり 患者自身の痛みの 評価 や 訴え が治療には不可欠 痛みの表現方法について説明 痛み止めを使う治療の目標設定 痛みに妨げられない夜間の睡眠 2 安静時の痛みの消失 3 動いた時の痛みの消失 当院での痛みの経過表 3. オピオイドに対する誤解や不安の解消 早期から使用できる 寿命が縮むことはない 依存性にはならない 神経のバランスが崩れて痛みが生じており オピオイドはそのバランスを整える 副作用は対処法がある 便秘 下剤 吐き気 吐き気止め 医療用麻薬のイメージ オピオイドによる依存形成抑制の概念 痛みが和らぐ 最後の手段だと思う 60.5 82.7 健常時 3 疼痛時 疼痛 副作用がある 依存になると思う 体に悪いと思う 26.7 39.8 52.5 μ μ 中毒になる 22 寿命が縮むと思う 7 その他 3.5 無回答 0.3 0 20 40 60 80 00 (%) 20~89 歳の男女 00 名にアンケート調査 2 健常時にオピオイド投与 μ 4 疼痛時にオピオイド投与 オピオイドオピオイド疼痛 依存形成 μ ホスピス 緩和ケアに関する意識調査 7
203/8/20 4. 定時投与の必要性 5. オピオイド製剤の特徴と使用方法 意点 痛みが出る前に抑える 痛い時に使用する薬ではなく 痛みが出ないように定期的に服用して 痛みを抑えるようにする定時投与について NSAIDsと違い 胃腸への影響はないことを説明し 毎日等間隔に決められた時間に服用する 製剤による違い 定時投与薬とレスキューの違い レスキューの使い方 定時投与で補えない痛みに対して使用する 一定時間をあければ 日に何回使用してもよい NSAIDsの併用について 痛み止めが変わったと思い 服用を中止してしまうことが多いが 作用するところが異なるため 一緒に飲んでもよい 薬を使用するのを忘れた場合の対応 がん疼痛の特徴と鎮痛薬の使用法 6. オピオイドの副作用の説明 定時投与薬 ( 徐放性製剤 ) 突出痛 持続する痛み Rescue Dose ( 速効性製剤 ) 突出痛 Rescue Dose ( 速効性製剤 ) 便秘対策 オピオイドを使用している間は便秘になる 排便があっても 便が腸内に滞留している場合も多く 定期的な下剤服用を促す ( 少なくとも2~3 日に 度は十分な排便があるように下剤の量を調節 ) 悪心 嘔吐対策 服用初期や量を増やした際に生じやすいが ~2 週間程度で改善する 眠気対策 服用初期や量を増やした際に生じやすいが ~2 週間程度で改善する 眠気が強く起きていることが辛いようなら相談してもらう 家族への説明 痛みは患者本人にしか分からない 鎮痛薬使用の抵抗感 そんなに痛み止め使っていいの? 患者キャラクターの理解 痛みを我慢しがちな患者か 痛いと訴えることへの抵抗感 疼痛緩和へのサポート 精神的 社会的な苦痛により疼痛も増強する トータルペインの緩和 ご清聴ありがとう ございました 8