サブ課題Cの目標 大規模な宇宙論的構造形成シミュレーションの共分散解析による広域銀 河サーベイの統計解析 (吉田 石山) ブラックホール降着円盤の一般相対論的輻射磁気流体シミュレーション及 びグローバルシミュレーション 松元 大須賀 大規模なプラズマ粒子シミュレーションによる磁気再結合と高エネルギー

Similar documents
目次 Boltzmann 方程式 自己重力系 Vlasov-Poisson 方程式系 6次元位相空間上でのVlasov-Poissonシミュレーション 自己重力系でのVlasovシミュレーションの応用例 まとめ

PowerPoint Presentation

<4D F736F F F696E74202D208D E9197BF288CF68A4A B8CDD8AB B83685D>

Microsoft PowerPoint - qchem3-9

Microsoft PowerPoint - 発表II-3原稿r02.ppt [互換モード]

多次元レーザー分光で探る凝縮分子系の超高速動力学

計算機シミュレーション

Microsoft PowerPoint - Ppt ppt[読み取り専用]

大宇宙

( 慣性抵抗 ) 速度の 2 乗に比例流体中を進む物体は前面にある流体を押しのけて進む. 物 aaa 体の後面には流体が付き従う ( 渦を巻いて ). 前面にある速度 0 の流体が後面に移動して速度 vとなったと考えてよい. この流体の質量は単位時間内に物体が押しのける体積に比例するので,v に比例

OpenFOAM(R) ソースコード入門 pt1 熱伝導方程式の解法から有限体積法の実装について考える 前編 : 有限体積法の基礎確認 2013/11/17 オープンCAE 富山富山県立大学中川慎二

ポリトロープ、対流と輻射、時間尺度

数値計算で学ぶ物理学 4 放物運動と惑星運動 地上のように下向きに重力がはたらいているような場においては 物体を投げると放物運動をする 一方 中心星のまわりの重力場中では 惑星は 円 だ円 放物線または双曲線を描きながら運動する ここでは 放物運動と惑星運動を 運動方程式を導出したうえで 数値シミュ

Microsoft PowerPoint - H21生物計算化学2.ppt

今週の内容 後半全体のおさらい ラグランジュの運動方程式の導出 リンク機構のラグランジュの運動方程式 慣性行列 リンク機構のエネルギー保存則 エネルギー パワー 速度 力の関係 外力が作用する場合の運動方程式 粘性 粘性によるエネルギーの消散 慣性 粘性 剛性と微分方程式 拘束条件 ラグランジュの未

FFT

Microsoft PowerPoint - シミュレーション工学-2010-第1回.ppt

(Microsoft PowerPoint - \221\34613\211\361)

はじめに 動機 IGModel プロジェクトとは 目次 IGModel プロジェクトの構成 構造 現在の開発状況 IGMBaseLib, IGMTool IGModel-SW( 正二十面体格子全球浅水モデル ) IGModel-SW のテスト計算の結果 ( 一部 ) まとめ, 今後の展望

パソコンシミュレータの現状

Microsoft PowerPoint - aep_1.ppt [互換モード]

銀河風の定常解

3 数値解の特性 3.1 CFL 条件 を 前の章では 波動方程式 f x= x0 = f x= x0 t f c x f =0 [1] c f 0 x= x 0 x 0 f x= x0 x 2 x 2 t [2] のように差分化して数値解を求めた ここでは このようにして得られた数値解の性質を 考

相対性理論入門 1 Lorentz 変換 光がどのような座標系に対しても同一の速さ c で進むことから導かれる座標の一次変換である. (x, y, z, t ) の座標系が (x, y, z, t) の座標系に対して x 軸方向に w の速度で進んでいる場合, 座標系が一次変換で関係づけられるとする

Microsoft PowerPoint - siryo7

ニュートン重力理論.pptx

FEM原理講座 (サンプルテキスト)

Microsoft PowerPoint - ILEsympo_matsukiyo.pptx

Microsoft PowerPoint - 夏の学校(CFD).pptx

超伝導状態の輸送方程式におけるゲージ不変性とホール効果

技術資料 JARI Research Journal OpenFOAM を用いた沿道大気質モデルの開発 Development of a Roadside Air Quality Model with OpenFOAM 木村真 *1 Shin KIMURA 伊藤晃佳 *2 Akiy

微分方程式 モデリングとシミュレーション

微分代数方程式とINDEXの低減

プランクの公式と量子化

Microsoft PowerPoint - hoshino_part1.pptx

s ss s ss = ε = = s ss s (3) と表される s の要素における s s = κ = κ, =,, (4) jωε jω s は複素比誘電率に相当する物理量であり ここで PML 媒質定数を次のように定義する すなわち κξ をPML 媒質の等価比誘電率 ξ をPML 媒質の

DVIOUT-SS_Ma

解析力学B - 第11回: 正準変換

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

Microsoft Word - thesis.doc

第6章 実験モード解析

微分方程式による現象記述と解きかた

2 図微小要素の流体の流入出 方向の断面の流体の流入出の収支断面 Ⅰ から微小要素に流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅰ は 以下のように定式化できる Q 断面 Ⅰ 流量 密度 流速 断面 Ⅰ の面積 微小要素の断面 Ⅰ から だけ移動した断面 Ⅱ を流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅱ は以下のように

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

×××××××××× ×××××××××××××××

コロイド化学と界面化学

物理演習問題

画像解析論(2) 講義内容

本講演の内容 1. はじめに 2. 天体 MHD 現象のおもしろさ 3. 天体 MHD シミュレーションは超困難 4. 天体 MHD シミュレーションの魅力 5. 天体 MHD シミュレーションの魔力 はまると危険 ( 落とし穴の数々 ) 6. むすび : ノーベル賞課題 ( 超難問 ) に挑戦せよ

( 全体 ) 年 1 月 8 日,2017/1/8 戸田昭彦 ( 参考 1G) 温度計の種類 1 次温度計 : 熱力学温度そのものの測定が可能な温度計 どれも熱エネルギー k B T を

NumericalProg09

大阪大学物理 8 を解いてみた Ⅱ. 問 ( g cosq a sin q ) m - 台 B 上の観測者から見ると, 小物体は, 斜面からの垂直抗力 N, 小物体の重力 mg, 水平左向きの慣性力 ma を受け, 台 B の斜面と平行な向きに運動する したがって, 小物体は台 B の斜面に垂直な方

<4D F736F F F696E74202D20906C8D488AC28BAB90DD8C7689F090CD8D488A D91E F1>

ギリシャ文字の読み方を教えてください

PowerPoint プレゼンテーション

応用数学Ⅱ 偏微分方程式(2) 波動方程式(12/13)

線積分.indd

Microsoft PowerPoint - 2_FrontISTRと利用可能なソフトウェア.pptx

Microsoft PowerPoint - 第7章(自然対流熱伝達 )_H27.ppt [互換モード]

板バネの元は固定にします x[0] は常に0です : > x[0]:=t->0; (1.2) 初期値の設定をします 以降 for 文処理のため 空集合を生成しておきます : > init:={}: 30 番目 ( 端 ) 以外については 初期高さおよび初速は全て 0 にします 初期高さを x[j]

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

s とは何か 2011 年 2 月 5 日目次へ戻る 1 正弦波の微分 y=v m sin ωt を時間 t で微分します V m は正弦波の最大値です 合成関数の微分法を用い y=v m sin u u=ωt と置きますと dy dt dy du du dt d du V m sin u d dt

+ 量子操作と量子測定がひらく量子情報処理 一般物理分野 (A5 サブコース ) 村尾美緒

カイ二乗フィット検定、パラメータの誤差

国土技術政策総合研究所 研究資料

スライド 1

位相最適化?

伝熱学課題

Microsoft Word - 5章摂動法.doc

CBRC CBRC DNA

Transcription:

多次元高精度ブラソフソルバーの開発 素粒子 原子核 宇宙 京からポスト京に向けて シンポジウム 2017年2月17日 筑波大学 東京キャンパス 筑波大学 計算科学研究センター 吉川 耕司

サブ課題Cの目標 大規模な宇宙論的構造形成シミュレーションの共分散解析による広域銀 河サーベイの統計解析 (吉田 石山) ブラックホール降着円盤の一般相対論的輻射磁気流体シミュレーション及 びグローバルシミュレーション 松元 大須賀 大規模なプラズマ粒子シミュレーションによる磁気再結合と高エネルギー 粒子加速過程の解明 松本 Vlasovシミュレーションによる自己重力系の数値シミュレーション 吉川 宇宙大規模構造形成におけるニュートリノの力学的な影響 ストレッチ目標 Vlasovシミュレーションを用いた磁気プラズマの運動論的シミュレーション 簑島 松本

Vlasov シミュレーション 自己重力系 銀河 銀河団 宇宙大規模構造 磁気プラズマを対象 重力N体シミュレーションやPICシミュレーションといった粒子シミュレーション 位相空間上の物質分布をモンテカルロ的に粒子でサンプリングして計算 必然的に物理量にショットノイズが入る 分布関数のテイル部分が重要な役割を果たす運動論的な不安定性を正確に扱えない PICシミュレーションでは 電磁場を解く最小スケールがDebye長に固定される マクロなMHDスケールでの数値シミュレーションは困難 粒子シミュレーションの代わりにVlasov方程式 (無衝突ボルツマン方程式)を直接 数値シミュレーション 6次元位相空間上の分布関数

Vlasovシミュレーション Vlasov シミュレーションの特徴 粒子シミュレーションのような内在的なショットノイズがない 運動論的な不安定性 無衝突減衰 Landau damping を正確に扱える 速度分散の大きな成分のシミュレーションに向いている 速度分散が小さい成分は粒子シミュレーションでOK 磁気プラズマのVlasovシミュレーションではPICシミュレーションのような最 小スケールについての制約がない 大域的なMHDスケールまでの一貫した取り扱いが可能

自己重力系Vlasov-Poisson シミュレーション Yoshikawa, Yoshida, Umemura (2013)で6次元位相空間での計算を初めて実現 方向分割で6本の一次元移流方程式にわけて解く Vlasov シミュレーション N体シミュレーション

宇宙大規模構造におけるニュートリノの影響 Ishiyama (2012) ニュートリノ振動の発見 宇宙に大量に存在するニュートリノが質量を持つことが明らかに 重力相互作用を通じて大規模構造形成に影響 ニュートリノの及ぼす力学的影響 free streaming collisionless damping 速度分散 σ を持つ物質では 密度揺らぎしか重力不安定性で成長しない 非相対論的なニュートリノの速度分散 減衰スケール より大きいスケールの

ニュートリノの構造形成への力学的影響 バリオン音響振動 ニュートリノの質量によって減衰の度合いが異なる 銀河の広域サーベイによってニュートリノ質量を測定可能 注目すべきスケールはバリオン音響振動のスケールよりも大きい 将来の大規模銀河サーベイでニュートリノの質量を測定可能かも (Euclid Square Kilometer Array)

LSS Simulations with CDM and Neutrinos hybrid of N-body and Vlasov-Poisson simulations 速度分散の小さなCDMはVlasovシミュレーションでやる意味はあまりない CDMのダイナミクスはN体シミュレーションで cold dark matter : N-body simulation neutrino (hot dark matter) : Vlasov-Poisson simulation Poisson equation

Vlasov-Maxwell シミュレーション 基本的な数値解法はVlasov-Poissonシミュレーションと同じ 磁場のLorentz 力による移流回転は数値的に大きなチャレンジ MMAスキームの開発 必要メモリが多い Minoshima, Matsumoto, Amano 2013 並みのスキームではすぐに数値拡散で雲散霧消してしまう

Vlasov-Maxwell シミュレーション 磁気リコネクション MHDシミュレーションでは 電気抵抗モデルを手で与える必要がある PICシミュレーション 最小スケールの制約からマクロなMHDスケールまで計算が困難 Vlasov シミュレーションで MHDスケールでのエネルギー解放の素過程を解く 磁気回転不安定性 high ベータプラズマは電子の速度分散が大きくPICシミュレーションには向かない 磁気リコネクションによる不安定性の飽和過程 磁気乱流と粘性の発達過程 PICシミュレーションとVlasovシミュレーションとのカップリング 質量が大きく速度分散が小さいイオン成分は粒子法で解いた方がよい イオン成分はPICシミュレーションで 電子の運動はVlasovシミュレーション をもちいるハイブリッドシミュレーション イオンや電子が感じる電磁場は共通で 両方の運動を合わせて求める

高次精度 Vlasov Solver の開発 6次元位相空間を離散化しなければならない 必要なメモリ容量が膨大 解像度を向上させるのにメッシュ数を増やすの は現実的ではない 高次精度の移流スキームを用いて実効的な解像度を向上させる 我々の6次元Vlasov-Poissonシミュレーション PFC スキーム 空間3次精度 移流スキームに対する要請 単調性 (monotonicity) 正値性 (positivity) 最大値の原理 (maximum priciple) 単調性 正値性を備えた空間5次 7次精度の移流スキームを開発 実はもっと高次のスキームも構築可能 時間積分: TVD Runge-Kutta法 と semi-lagrange法

高次精度 Vlasov Solver の開発 時間積分に3段3次のTVD Runge-Kutta法とsemi-Lagrange法の採用 semi-lagrange法 : 時間精度が空間精度とリンク 時間積分が単段で計算コスト安い 正弦波の移流 空間3次精度 PFCスキーム 空間5次精度+ TVD-Runge-Kutta法 空間5次精度+ semi-lagrange法 空間7次精度+semi-Lagrange法

高次精度 Vlasov Solver の開発 流束制限法による正値性の確保 (positivity limiter) 1次風上スキームの数値流束 高次のMPスキームの数値流速

Vlasov-Poisson シミュレーションへの応用 初期ビリアル比が0.5の一様密度球の重力収縮 643 643 643 323

宇宙大規模構造のVlasovシミュレーション 宇宙論的共動座標系での 計算できる Vlasov方程式 移流速度が場所依存 CDMだけの宇宙大規模構造を Vlasovシミュレーション L=2000 h-1 Mpc, Nx=1283 Nv=323 PFCスキームは大スケールの線形理論 にすら合わない SL-MPPスキームはちゃんと線形成長 は再現できた 小さいスケールでN体シミュレーショ ンと食い違うのは分解能のせい

CDM+ニュートリノの大規模構造形成 N体シミュレーションとVlasovシミュレーションのハイブリッドシミュレーション CDMはN体シミュレーション N=5123 ニュートリノはVlasovシミュレーション Nx=1283 Nv=323 ニュートリノの有り無しによるCDMの密度揺らぎのパワースペクトルの比 ニュートリノのダンピングスケール (k=0.006 h/mpc) L=8000 h-1 Mpc L=500 h-1 Mpc 破線 摂動理論による計算結果 非線形効果

Vlasov-Maxwellシミュレーションへの応用 開発した高次精度スキームで正確に解けるか 2次元での剛体回転のテスト計算 空間7次精度スキームは100回転後も初期状態 をほぼ保つ 初期条件 約100回転後 PFC スキーム SL-MPP7 スキーム

Vlasov-Maxwell シミュレーション JICFuS のロゴを回してみる PFC スキーム SL-MPP7スキーム 10回転 Vlasov-Maxwellシミュレーション 簑島さん parallel wave propagation (4D) 磁気リコネクション (5D)

まとめ 自己重力系と宇宙磁気プラズマにおいてVlasovシミュレーションを推進 自己重力系 宇宙大規模構造形成におけるニュートリノの力学的影響 宇宙磁気プラズマ 磁気回転不安定性 磁気リコネクションの運動論的解明 高次精度の移流スキームを共同で開発 メッシュ数を増やせない制約のもとで数値シミュレーションの質を改善 磁気プラズマでの磁場のLorentz力による分布関数の回転にも耐えうる コードの最適化でも協力 粒子シミュレーションとVlasovシミュレーションのハイブリッドシミュレーション 粒子シミュレーション 宇宙大規模構造 磁気プラズマ CDM イオン Vlasovシミュレーション ニュートリノ 複数世代 電子