不飽和土の力学を用いた 締固めメカニズムの解明
締固めとは 土に力を加え 間隙中の空気を追い出すことで土の密度を高めること 不飽和土 圧縮性の減少透水性の減少せん断 変形抵抗の増大 などに効果あり 締固め土は土構造物の材料として用いられている
研究背景 現場締固め管理 締固め必須基準 D 値 施工含水比 施工層厚 水平まきだし ( ρdf ) 盛土の乾燥密度 D値 = 室内締固め試験による最大乾燥密度 ( ρ ) d max D 値管理の概念図 しかし 締固めは経験的に管理されるにとどまっている 締固めの力学的な説明が必要新たな現場の締固め管理手法の提案
研究目的 土の締固め 不飽和土の非排水圧縮変形 土 / 水連成有限要素解析プログラム (DACSAR-UA) を用いて締固めメカニズムについて検討していく
解析に用いた不飽和構成モデル S e -Hardening モデル ( 大野ら,2007) 有効飽和度 S e サクション応力が有効応力に寄与 剛性の増減を表現するパラメータに有効飽和度 S e を使用 q せん断応力 0 S e = p sat p sat a 不飽和土の降伏曲面の概念図 0 平均有効主応力 p S = 1 e a : 不飽和化による降伏応力の増加を規定するパラメータ p ' sat : 飽和土の圧密における降伏時の平均有効主応力 a=10, p sat =98(kPa) とする
水分特性曲線 ロジスティック曲線式 ( 杉井 宇野,1995) S r -S ra S rf -S ra = 1 1+exp(A+Bloges) S r : 飽和度 S ra : 残留飽和度 S rf :s=0での飽和度脱水曲線でのパラメータ A D =-34.70 B D =5.9 吸水曲線でのパラメータ A W =-23.95 B W =4.62 * 但し A,B はサクション (kpa) に対する値 Degree of saturation S r (-) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 S r (drying) S r (wetting) 0 0 200 400 600 800
解析条件 1 荷重 300 2cm Load (kpa) 200 100 5cm 非排水境界 0 載荷 50 分 Time t (min) 除荷 5 分 解析領域において 中央の最上部要素から得られる解析結果を示す 間隙水圧が正になる場合は それと同時に水頭を設定し排水条件とする
解析条件 2 < 材料パラメータ > λ κ M ν k(m/day) m G s 0.075 0.010 1.333 0.33 0.01 0.8 2.7 a n e 0 S r0 A D B D A W B W 10 1.0 0 0.15-34.70 5.9-23.95 4.62 * 但し A,B はサクション (kpa) に対する値 初期含水比 :10-42%(2% 間隔 ) の計 17 パターン 初期全水頭 : 各含水比ごとに水分特性曲線 ( 吸水曲線 ) より設定 p sat (kpa) 高さによらず圧力水頭が一定の状態から 全水頭一定になるまで必要な時間をおく 98 乾燥密度 ρ d の求め方 ある要素の間隙比(e- e) から求める 高さ方向の変位( h) から求める
解析結果 ( 締固め曲線 ) 試験から得られた締固め曲線 ( 土質試験 / 試験と手引き ) 解析結果から得られる締固め曲線 1.3 8 6 4 2 ( 中央最上部要素 ) ゼロ空気間隙曲線本解析によって 締固め曲線を表現できた
解析結果 ( 締固め曲線 ) Void ratio e (-) Degree of saturation S r (-) 2 1.15 1.1 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 小 含水比 大大 含弾性状態弾塑性状態 50 100 log p' (kpa) 水比 小400 200 400 600 800 ( 中央最上部要素 ) ゼロ空気間隙曲線1.3 8 6 4 2 締固め曲線の傾き 0 弾性状態 or 弾塑性状態
解析結果 ( 締固め曲線 ) 1.3 8 6 4 2 ( 中央最上部要素 ) ゼロ空気間隙曲線 9 8 7 非排水 排水 ( 水頭を設定 ) 6 39 40 41 42 43 高含水比 ( 飽和度 ) 域 間隙空気圧による影響の考慮が必要 間隙水圧の分担役割大 山形の締固め曲線
解析結果 ( 実験データとの比較 ) Load (N) 400 1500 300 1000 500 低含水比高含水比 Load (N) 200 100 250 200 100 解析結果 w=16% w=24% w=32% w=40% Degree of saturation Sr (%) 0 140 150 160 170 180 190 192 190 188 186 184 30 20 Time(min) 140 150 160 170 180 190 Time(min) 185 190 Degree of saturation S r (%) 0 60 70 80 80 60 40 20 80 70 60 50 40 30 Time(min) 60 70 80 Time(min) 20 40 60 80 ( 流田寛之 ; 修論 /2002 年 ) Degree of saturation S r (-) 50 載荷 (50 分 ) 除荷 (5 分 ) Time t (min) 1 w=40% 0.8 w=32% 0.6 w=24% 0.4 w=16% 0.3 50 100 200 250 含水比高 サクション変化が急激 締固め = 不飽和土の非排水圧縮変形という仮定の妥当性が示された
解析条件の違いが締固めに与える影響 続いて 締固め応力の繰り返し載荷 不飽和状態の降伏応力を規定するパラメータ a 供試体スケール ( 高さによる違い ) の違いが締固めに与える影響を検討する
解析結果 ( 締固め応力の繰り返し載荷 ) Load (kpa) Void ratio e (-) 300 200 100 0 270 200 100 70 2 1.15 1.1 1.08 載荷 50 分 除荷 5 分 20 分放置 5 Time t (min) 載荷 50 分 除荷 5 分 20 分放置 5 Time t (min) w=16% w=24% w=32% w=40% 徐々に増加 載荷 50 分 除荷 5 分 20 分放置 5 Time t (min) w=16% w=24% w=32% w=40% 徐々に減少 1.3 8 6 4 2 : 締固め 1 回 : 締固め 5 回 ( 全体の平均 ) 含水比が高くなるにつれてより密に締固まっている
解析結果 ( パラメータ ) a a : 不飽和化による降伏応力の増加を規定するパラメータ a 1.3 8 6 4 2 :a=10 :a=20 :a=30 の値 大 ( 全体の平均 ) 締固め曲線のピークはほぼ同じところにきている 弾塑性状態に入りにくくなる
解析結果 ( 供試体スケール ) 2cm 10cm 100cm 5cm 1.3 8 6 4 2 : 平均 : 最上部要素 : 最下部要素 1.3 8 6 4 2 5cm : 平均 : 最上部要素 : 最下部要素 1.3 8 6 4 2 50cm : 平均 : 最上部要素 : 最下部要素 わずかに差が見られる Degree of saturation S r (-) 0.8 0.78 0.76 0.74 0.72 : 最上部要素 : 最下部要素 0.7 140 150 160 170 Degree of saturation S r (-) 0.78 0.76 0.74 0.72 : 最上部要素 : 最下部要素 0.7 140 150 160 170 Degree of saturation S r (-) 0.8 0.78 0.76 0.74 0.72 : 最上部要素 : 最下部要素 0.7 140 150 160 170 180
まとめ 土の締固め = 不飽和土の非排水圧縮現象 ととらえることで 解析によって締固め曲線を表現することができた 間隙空気圧による影響の考慮 より正確な締固め曲線の表現 新たな現場の締固め管理手法の提案
ご静聴ありがとうございました 終
a,p sat について p = p + p s 土被り圧サクション応力 (=S re s) S e = S r -S ra S rf -S ra 1 有効飽和度 S re 有効飽和度 S e (-) 0.8 0.6 0.4 :2cm 5cm 0.2 :10cm 5cm :100cm 50cm 0 0 10 20 30 a p ' sat 平均有効応力 p' (tf/m 3 ) = 0( %) p sat p sat 不飽和土の降伏曲面の概念図 : 不飽和化による降伏応力の増加を規定するパラメータ : 飽和土の圧密における降伏時の平均有効主応力 a=10, p sat =98(kPa) とする q せん断応力 0 S re 平均有効主応力 a S re p = 100( %)
解析結果 ( 供試体スケール ) 1.3 8 6 4 2 :2cm 5cm :10cm 5cm :100cm 50cm ( 全体の平均 ) ほとんど差は見られない
解析結果 ( 載荷重の大きさ ) 載荷重の大きさの違いが締固めに与える影響を検討する 1.32 1.3 5 :150(kPa) :300(kPa) :450(kPa) :600(kPa) 等サクション線 (kpa) 200 190180 ( 全体の平均 ) 170 160 150 飽和度一定曲線 (%) 50 60 70 80 90 100 最大最荷重 大 等サクション線と飽和度一定曲線は平行でない 最大乾燥密度 大
解析結果 ( 載荷時間 除荷時間 ) 載荷時間 除荷時間の違いが締固めに与える影響を検討する 1.3 8 6 4 2 :50 分 5 分 :500 分 5 分 :5 分 5 分 :50 分 50 分 :50 分 0.5 分 ( 全体の平均 ) 全く差は見られない
解析結果 ( 初期間隙比 ) e 0 初期間隙比 e 0 の違いが締固めに与える影響を検討する 初期間隙比小 1.6 1.5 1.4 1.3 鋭く立った形状を示し 左上方に位置する ( 全体の平均 ) :e 0 =0.8 :e 0 =1.0 :e 0 =