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トランプ政権、税制改革案を公表

米国税制改革法の概要と経済効果

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

税制の国際的潮流と抜本的税制改革

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

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障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

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iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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( 外国 ) 同上 ケース ( ) 相続人が取得した全 2 財産に対して課税 ( 外国 ) 国内財産に対しての み課税 ケース ( ) 相続人が取得した全 3 財産に対して課税 ( 外国 ) 同上 ( 平成 25 年度税制改正より ) ケース ( ) 被相続人 相続人いず 4 れも 5 年超居住の場

グローバル化する経済の中での税制の課題政府税制調査会に対する IMF スタッフによるプレゼンテーション (2007 年 5 月 1 7 日東京 ) 所得税の 4 つの主要なモデルとして 4 つある (1) 包括的所得税 (Comprehensive income tax) (2) 支出税 (Expe

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[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

税が課税される所得を生み出す事業活動に使われているか否かを基準に損金算入規制を設けていると考えられます 株式などの出資の取得のために資金を使った場合, 株式から生じる配当やキャピタルゲインは資本参加免税により非課税となります このケースでは, オランダでの課税所得を生じないことが想定されるため, 出

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4. 附加価値への試みと挫折 現行事業税へ昭和 24 年 (1949 年 ) 第一次シャウプ勧告事業税の課税標準について 原料等 他の事業から購入したものの価値に その企業が附加したところの額である とし 課税標準を事業の所得によるのではなく 附加価値を採用すべきである旨勧告昭和 25 年 (194

上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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税調第20回総会 資料2-1

市場と経済A

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

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土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

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トランプ政権と共和党指導部は 税制改革の統一案を発表トランプ政権と共和党指導部は 9 月 27 日 税制改革の統一案を発表した ( 第 1 表 ) 所得税と法人税の税制改革は トランプ政権と共和党の当面の最優先政策課題となっている 今回発表された統一案は これまでトランプ政権と共和党が発表してきた内

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

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トランプ次期大統領 共和党ともに法人税改革を主張所得税 法人税の包括的な税制改正は トランプ次期大統領と議会多数派の共和党ともに主張していて 当面の優先順位の高い政策課題とみられる 本 Weekly ではそのうちの法人税部分について トランプ次期大統領の選挙前の主張 ( 以下 トランプ氏案 ) と下

外国税額控除 この取り扱いは 平成 21 年度税制改正の 海外子会社の配当の益金不算入制度 ( 法法 23 条の 2) により廃止されました 原則として 平成 21 年 4 月 1 日以降に開始する親会社の事業年度から適用されます ( 附則 6) ただし 租税負担率 25% 以下の軽課税国に所在する

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平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

15 18 定率減税の縮減 (15% 控除 7.5% 控除 (2 万円上限 )) 資本金等の額 ( 税法に規定する資本金等の額又は連結個別資本金等の額 ) が 50 億円超 800,000 円 10 億円超 50 億円以下 540,000 円 1 億円超 10 億円以下 130,000 円 1 千万

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

2 その他 H26 中間申告義務のない事業者が 届出 012 書を提出した場合には 自主的に中間申告 納付することができる旨を 検討したか ( 平成 26 年 4 月 1 日以 後開始課税期間より適用 ) 本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H26 課税期間の基準期間

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第 5 章 N

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(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

られる 日本でも消費税に飲食料品に対する軽減税率を導入する方向で作業が進んでいることから 将来的に日本でもゼロ税率が導入される道が開かれつつあると言えるかもしれない 非課税措置については 日本の消費税では図表 1のように分類されている 一般に 非課税措置が導入されるケースは 技術的に消費税を課税でき

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図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

残された税制の課題

5 事業用の車両等を売却 ( 譲渡 ) した場合の売却益 ( 譲渡益 ) 売却損 ( 譲渡損 ) については 事業所得とはならない 総合課税の譲渡所得 ( 土地 建物以外 ) の扱いになり 所有期間 (5 年超か以下か ) によって長期譲渡所得 短期譲渡所得に区分される 6 使用可能期間が1 年未満

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本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H27 課税期間の基準期間における課税売上高を確 の判定 014 認したか H27 事業年度を変更している場合等 前々事業年 015 度が1 年未満の場合の基準期間を確認したか ( 法人の場合 ) H27 基準期間が1 年でない場合

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また 国外財産調書制度は 2013 年 12 月末の国外財産から調書の提出義務が始まりましたので 5,000 万円超の国外財産を保有の方はご留意ください これに関連して 国税庁より 2013 年 11 月 15 日に FAQ が発表されており FAQ は国税庁のホームページで閲覧等できます 資産税ニ

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

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【資料1-2】予算及び税制

所得控除 雑損控除 医療費控除 社会保険料控除等 旧生命保険料控除 旧個人年金保険料控除 ( 実質損失額 - 総所得金額等の合計額 10%) 又は ( 災害関連支出の金額 -5 万円 ) のうち いずれか多い方の金額医療費の実質負担額 -(10 万円と総所得金額等の 5% のいずれか低い金額 ) 限

Transcription:

トランプ税制について 中央大学法科大学院教授東京財団上席研究員 森信茂樹 東京財団税 社会保障調査会 https://tax.tkfd.or.jp 1

現行 トランプ 共和党案 個人 税率 10-39.6% の7 段階 12,25,33% の3 段階 利子総合課税トランプ案は原則 現行制度を維持配当 長期キャピタ 0,15,20%( 分離課 ( 共和党案は所得の50% を控除し 見直ルゲイン税 ) し後の通常税率 (12,25,33%) で課税 ) 相続税 ( 遺産課税方式 ) 18%-40% の 12 段階 廃止 ( ただしトランプ案では 1,000 万ドルを超える未実現のキャピタルゲインについては課税 ) 法人税率 35% 15%( 共和党案は20%) 投資 ( 課税ベース ) 減価償却費 利払いは控除 共和党案はキャッシュフロー税制 ( トランプ案は 即時全額償却かつ利払いの控除不可 とするかどうかを選択可 ) 国際課税 トランプ大統領税制改革案 全世界所得課税と外国税額控除のセット 海外子会社の留保利益について 10% で一回限り課税 ( 共和党案は軽減税率で一回限り課税し 以後は国外所得非課税 ) 共和党案は 仕向地課税 ( 輸入課税 輸出免税 ) で国境調整

消費課税の類型 課税ベース 税制 消費 (C) VAT 消費税 所得 (Y)- 貯蓄 (S) 支出税 ( 直接税 ) 賃金 (W)+ 利潤 (P) + 利子 (R)+ 減価償却 (D)- 設備投資 (I) 設備投資の控除を認めず減価償却のみの場合には 所得課税型になる賃金 (W)+ 利潤 (P) + 利子 (R)- 減価償却 (D) 加算型 ( 消費型 ) 付加価値税 累進要素をもたせたフラット タックス エックス タックス 所得型付加価値税 ボックス税制 二元的所得税をこの一種ととらえることができる

ブッシュ大統領米国税制改革案の比較 (05 年 11 月 ) 第 1 案ー簡素な所得税制案 第 2 案ー成長及び投資税制案 家計 税率 15 25 30 33% 15,25,30% 受取り配当非課税 15% で課税 株式譲渡益 4 分の 1 だけ総合課税 15% で課税 受取利子総合課税 15% で課税 ( 注 )1 案も 2 案も 税率構造を簡素化 代替ミニマム税を廃止 住宅ローン利子控除 慈善寄附金控除等の各種項目別控除については 整理 縮減 人的控除 ( 基礎控除 扶養控除に類似 ) 概算控除 勤労所得税額控除 子女税額控除等の各種控除を家族税額控除と就労税額控除の 2 制度に統合 法人 税率事業体への課税 31.5% 大規模企業は 組織形態に関わらず法人課税 投資簡素な加速度償却即時損金算入 30% あらゆる事業体について同等に課税 支払利子現行どおり金融機関以外控除できず 受取利子現行どおり金融機関以外非課税 国際課税外国所得非課税仕向け地課税 ( 国境調整 ) 4

米国の法人税改革について トランプ公約 共和党の改革案 各種報道ベース 税率 35 15 下院案は20 財源は 全ての租税特別措置を 廃止 研究開発税制を除く 本国への資金還流を促すため 今後生じる海外子会社の利益に軽課 税率10 下院案は免税 国際 課税 仕向地 キャッ シュフ ロー税 過去の海外子会社の内部留保には 一度だけ課税 税率10 下院案は8 75% 米国企業の競争力を維持 強化するため 国境調整措置を導入 輸出免税 輸入課税 キャッシュフローの定義は一律ではないが 共和党案のもとになるUCバー クレーのAlanAuerbach教授のMCT TheModernCorporateTax では ミード報告書におけるR+Fと同じキャッシュフロー税で 資産取得や投 資は 実資産でも金融資産でも即時控除をする 譲渡 や運用からの収益は 控除を認めずに課税する 支払利子は控除する 出資の受入れと配当や分 配は課税対象外 となっている 5

海外子会社からの配当に対する課税方法 全世界所得課税方式 米国 域内所得課税方式 日本 英国 ドイツ フランス 海外子会社の利益は本国の親会社に 配当した際に本国の法人税率で課税 課税 35 配当 海外子会社からの配当は非課税 本国への資金還流を促す ため税率10 に引下げ 親会社 国内 海外 海外 内部留保 非課税 過去分のみ一度きり 経済産業省資料 10 で課税 非課税 親会社 国内 子会社 配当 子会社 内部留保 非課税 6

米国企業によるリパトリエーション (2015 年 2 月 18 日付みずほ総合研究所みずほインサイトより ) 7

国境調整措置の内容 法人税の課税対象から 輸出収入は除外する一方 輸入した原材料や部品等は経費として控除することを認めない < 従来の法人税 > < 国境調整型 > 収入 +) 米国内販売による収入 輸出収入 収入 (+) 米国内販売による収入 輸出収入 輸出免税 支出ー ) 米国産原材料 部品等の購入 海外製原材料 部品等の輸入 支出 ( ー ) 米国産原材料 部品等の購入 海外製原材料 部品等の輸入 輸入課税 経済産業省資料 課税対象 課税対象 課税対象 8

国境調整措置の背景 米国を除く OECD 各国では 付加価値税 ( 日本では消費税 ) が導入されており 輸入品には輸入時点で課税し 輸出品には輸出時に還付する 国境調整 措置が存在 共和党は 米国にはこのような国境調整ができる税制がなく 米国企業の競争力低下の要因になっている と主張 米国は 連邦レベルの付加価値税がない一方 州レベルでは 50 州中 4 5 州で小売売上税を導入 ( 参考 2) 各州との役割分担で 連邦が付加価値税を導入することは現実的に困難なので 法人税を付加価値税的な課税ベースに修正の上で 国境調整措置を導入すべき との考え 9

参考 消費税の国境調整措置 消費税は 輸入品は輸入時に課税 輸出品は輸出時に還付する国境調整措置あり 輸出還付 輸出時に原料 部品段階の消費税を還付 税務当局 消費税還付 消費税 消費税 部品 メーカー 原料 メーカー 輸入課税 自動車 メーカー 海外 市場 輸入時に外国製品に消費税を課税 海外 自動車 メーカー 自動車 ディーラー 消費税 消費税 経済産業省資料 消費者 税務当局 10

1 メリット 国境調整税 税率が立地選択に影響せず企業の海外移転を抑制し国内回帰を促す 移転価格の操作が無くなり税制や税務執行が簡素になる キャッシュフローベースなので 設備投資即時全額控除による投資促進効果 利払い課税で 負債 ( 借入 ) と資本 ( 株式 ) が税制上中立 過剰な債務抑制 輸入超過の米国では増収になる 2 デメリット 輸出企業は巨額還付を受け国民から批判 輸入産業は価格転嫁ができず損失 執行上の課題は山積 輸出の不正還付 IRS( 米国歳入庁 ) が反対する可能性 WTO との整合性 法人税の輸出時還付が輸出補助金 輸入時課税が 国産品の場合認められる経費控除が認められないので内外無差別条項違反 の可能性 米国では 税制法案を立案し可決する権限はすべて議会にあり 共和党議員全員を巻き込まなければ法案は成立しない 国境調整税のハードルは極めて高い 11

12 法人税の課税方式の特徴 課税原則 概要 現行制度 ACE CBIT CF 法人税 源泉地主義 一部居住地主義 減価償却制度による資本コストの増加 支払利子控除による負債調達の優遇 仕向地主義 CF 法人税 源泉地主義源泉地主義源泉地主義仕向地主義 新株発行に対して株式控除を導入 イタリア オーストリア ベルギー クロアチア ブラジルでの導入例あり 支払利子控除を廃止 ブッシュ政権時代の 1992 年に 米国財務省が提案 減価償却を廃止し 設備投資を当該年度の経費として全額控除 支払利子控除を廃止 ミード報告やマーリーズ レビューにて提案 VAT の課税ベースから人件費を控除したものが課税ベース 輸出売上高を課税対象から除外する一方 輸入仕入高の経費としての控除を否定 マーリーズ レビューにて提案 1 投資への中立性 ( 資本コストへの影響の有無 ) 2 株式調達と負債調達の中立性 ( 負債調達の優遇の有無 ) 経済産業省資料 3 国際的な経済活動への中立性

13 課税ベースの比較 粗付加価値 = 利益 + 人件費 + 支払利子 + 減価償却費 ( 簡略化の都合で賃借料は省略 ) 消費税 粗付加価値 設備投資 輸出売上 輸入高 法人税 粗付加価値 人件費 支払利子 減価償却 外形標準課税 粗付加価値 減価償却 仕向地主義型キャッシュフロー課税 粗付加価値 人件費 設備投資 輸出売上 輸入高 ACE 粗付加価値 人件費 支払利子 減価償却 みなし配当 CBIT 粗付加価値 人件費 減価償却 経済産業省資料

WTO 補助金協定第三条禁止 3.1 農業に関する協定に定める場合を除くほか 第一条に規定する補助金のうち次のものについては 禁止する 附属書 1 輸出補助金の例示表 (e) 商工業を営む企業が支払う又は支払うべき直接税又は社会保障負担金につき 輸出 に関連させてその額の全部又は一部の免除 軽減又は繰延べを認めること (g) 輸出される産品の生産及び流通に関し 同種の産品が国内消費向けに販売される場合にそ の生産及び流通に関して課される間接税の額を超える額の間接税の免除又は軽減を認めること 直接税 とは 賃金 利潤 利子 賃貸料 ロイヤルティその他の所得に対して課される税及び不 動産の所有に対して課される税をいう 間接税 とは 売上税 個別消費税 取引高税 付加価値税 フランチャイズ税 印紙税 流通 税 事業資産税 国境税その他の税であって直接税及び輸入課徴金以外のものをいう GAT 第三条内国の課税及び規則に関する内国民待遇 2 いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは 同種の国内産品 に直接又は間接に課せられるいかなる種類の内国税その他の内国課徴金をこえる内国税その 他の内国課徴金も 直接であると間接であるとを問わず 課せられることはない 14

個人所得単身 ($) 所得税ー現行制度とトランプ案の比較 単身既婚 ( 子供なし ) 現行税率 (%) トランプ案 (%) 世帯所得 ($) 現行税率 (%) トランプ案 (%) 0 10,300 0 0 0 20,600 0 0 10,300 19,525 10 0 20,600 39,050 10 0 19,525 29,000 15 0 39,050 58,000 15 0 29,000 47,750 15 10 58,000 95,500 15 10 47,750 54,000 25 10 95,500 108,000 25 10 54,000 101,050 25 20 108,000 171,800 25 20 101,050 154,000 28 20 171,800 251,050 28 20 154,000 199,600 28 25 251,050 308,000 33 20 199,600 421,800 33 25 308,000 432,100 33 25 421,800 423,500 35 25 432,100 485,450 35 25 423,500 ~ 39.6 25 485,450 ~ 39.6 25 米国 TPC

分位 税率変更による所得分配 ( トランプ案 ) 税引き後所得の変化 (%) 全体の税額変化に占める割合 (%) 税額の変化 : 各分位での平均 ($) 変化 (%) 平均税率 トランプ案 (%) 第 1 分位 1.1 0.8-209 -1.1 3.4 第 2 分位 3.1 4.5-1,323-2.8 5.9 第 3 分位 4.9 11.1-3,621-4.2 10.0 第 4 分位 5.2 15.7-6,210-4.3 12.9 第 5 分位 9.5 67.3-32,276-7.0 19.2 合計 6.9 100.0-6,594-5.5 14.8 付録 80-90 4.6 9.0-8,391-3.7 16.4 90-95 4.8 6.2-11,778-3.8 17.9 95-99 7.8 12.3-31,582-5.9 19.2 上位 1 % 17.6 39.8-407,375-11.7 21.8 上位 0.1 % 18.3 18.0-1,780,826-12.0 22.3 米国 TPC

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ダイナミックスコアリング 18