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のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛みや倦怠感 ) および心理的 QOL( 緊張 不安や抑うつ ) を正しく評価し, 睡眠障害と併用して治療を行うことでがん患者の QOL を改善できると考えられる また, 睡眠障害の状態 ( 睡眠障害の種類 : 入眠障害, 中途覚醒, 早期覚醒, 熟眠困難 ) や抑うつなどの状態をフィードバックすることにより, 治療方針や臨床上役立つと考えられた < 方法 > 対象 2010 年 ~11 年に総合病院呼吸器内科で肺がん診療を受けた患者 調査方法 記名個別自記入式質問紙調査法 質問紙の構成 Athene Insomnia Scale(AIS)(8 項目 ) Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)(14 項目 ) European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire(EORTC) C30 および L13( 合計 33 項目 ) 統計解析 AIS のスコアは 6/5 を cut-off として 2 群に分類し,6 点以上を睡眠障害とした HADS のスコアは 11/10 を cut-off として 2 群に分類し,11 点以上をうつ状態とした 患者を睡眠障害患者 / 非睡眠障害患者の 2 群に分類し,AIS,HADS,EORTC C30/L13 の項目において Mann-Whitney の U 検定をおこなった P<0.05 を統計学的有意とした AIS スコア,HADS スコア,QOL, 倦怠感および痛みのスコアのそれぞれの相関および HADS スコアと AIS 各項目の相関は Spearman の順位相関係数に基づいて解析した 患者を睡眠薬服用群/ 睡眠薬非服用群の 2 群に分類し,AIS の各項目において Mann-Whitney の U 検定をおこなった P<0.05 を統計学的有意とした < 結果 > 患者数は 50 例で平均年齢は 71.8±3.5 歳であった 睡眠障害は 28 例 (53%) と先行研究 (30-50%) よりも高い結果となった また,60% の患者でうつ状態が認められた 睡眠薬を処方されている患者は 16 例と睡眠障害を有している患者と比べて少なく, 睡眠薬としては超短時間型あるいは短時間型が使用されていた 睡眠障害群 / 非睡眠障害群の 2 群に分け, 各項目を検討した結果,HADS, 倦怠感,QOL, 痛みの項目で睡眠障害群は非睡眠障害群と比較し有意に悪かった また各項目の相関について解析を行ったところ, すべての項目間で 0.4 以上 ( 中程度 ) の相関が認められた AIS の各項目において, 中途覚醒, 早朝覚醒を除いては HADS スコアとの相関がそれぞれある - 2 -

と考えられ, 精神的負担が睡眠そのものだけではなく, 日中の行動に影響を及ぼしていることが示唆されている AIS の各項目において睡眠薬服用群は睡眠薬非服用群に比較して早朝覚醒, 熟眠困難, 睡眠時間で有意に悪かった 睡眠薬を用いる患者は, 睡眠障害を自覚しており, すべての項目において差がでると推察していたが, 入眠困難, 中途覚醒に関しては有意差が認められなかった これは睡眠薬を用いることで入眠困難および中途覚醒については改善されていると推察している 睡眠障害になることで痛みの閾値も下がっていることが示唆された 睡眠障害と抑うつ, 倦怠感は互いに相関している症状クラスターが認められた 睡眠障害だけでなく抑うつや倦怠感への総合的介入が必要であることが示唆された < 考察 > 本研究では肺がん患者における睡眠障害の日本における実態と睡眠障害と関係がある因子について評価した これまでの研究報告で睡眠障害の発症率は 30%-50% であったが, 本検討では 58% と高くなった この一つの要因として, 患者の年齢 (71.8 歳 ±3.5 歳 ) があげられる 高齢者健常人での睡眠障害の比率は 60 代で 25%,70 代で 33% といわれている 一般的に高齢者は排尿障害や膀胱の機能性障害などによる中途覚醒が睡眠障害の原因といわれているが, 本研究では中途覚醒が原因ではなかった 一方で, 薬物治療の副作用やがん由来の痛みなどによる睡眠障害も考えられた そこで, 患者を薬物治療群と非薬物治療群の 2 群に分け, 睡眠障害について評価した その結果, 薬物治療群は非薬物治療群に比較して有意に悪く, 薬物療法による睡眠障害への影響が示唆された これまでの論文でも薬物療法が睡眠に影響を与えるという論文が出ているが, 本研究の結果より, 薬物治療群と非薬物治療群のスコアの差が大きい これは薬物種や環境の変化が大きいと推察している 近年では 10 年前と比較して, 自宅療法も多くなり, 薬物においても分子標的薬など副作用が少ない薬物も多くなっている 本研究でも約 20% の患者が分子治療薬となっていた 一方, オピオイドや NSAIDs(Non-steroidal anti-inflammatory drugs) などの鎮痛剤も睡眠に悪影響をあたえる オピオイドは REM 睡眠を低下させ, 倦怠感を増加させ, アスピリンやイブプロフェンは中途覚醒を促進し,NSAIDs はメラトニンの生成を抑制するとの報告がある 本研究ではオピオイドの使用はなく,NSAIDs の使用も 18% であったことから鎮痛剤の影響は小さいと考えられる 睡眠障害と相関がある因子として抑うつが挙げられる そこで本研究では抑うつと睡眠障害の種類についての相関に着目した 抑うつは中途覚醒および早朝覚醒以外の項目, 特に入眠障害, 日中の倦怠感や眠気との相関性が高いことが示唆された 患者が睡眠に不調を訴えた場合, 睡眠薬として超短期型および短期型が第一選択となる 本研究では約 30% の患者が睡眠薬を処方されているが, すべての患者において上述の超短期型および短期型であった これらによって, 入眠困難, 中途覚醒の項目は睡眠薬服用群と睡眠薬非服用群で有意差は認められず, 改善されているものの早朝覚醒, 睡眠時間, 熟眠困難は改善しておらず, 患者の病状にあった睡眠薬の処方が必 - 3 -

要となることが示唆された 一方で, 抗うつ薬と睡眠薬との併用で, 抗うつ薬単独よりも抑うつの症状の改善が早かったとの報告に加え, 抑うつ作用が改善することで, 睡眠, 痛みの症状も緩和するという報告もあり, 睡眠障害や抑うつ単独の症状に着目するのではなく総合的なケアが必要であると考えている < 結論 > 睡眠障害と抑うつ,QOL, 痛みの間には中程度の相関があり, 症状クラスターが認められたことから, 肺がん患者への不眠, 抑うつなど総合的にケアすることが患者の QOL を向上させるために必要があることが示唆された - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4 6 5 8 号西浦希 論文審査担当者 主査三宅智副査稲瀬直彦 西川徹 ( 論文審査の要旨 ) がん患者における睡眠障害の頻度は一般よりも高く その原因は多岐に渡る 睡眠障害は抑うつなどの精神症状の増加や不快な身体症状をもたらし 痛みの閾値を下げることで がん患者の Quality of life(qol) を低下させる 申請者は肺がん患者 50 名を対象に 睡眠障害群 / 非睡眠障害群の 2 群に分け QOL 抑うつ 痛み 倦怠感について単回の質問紙調査法により検討した すべての項目において 睡眠障害群では症状が強く出る傾向を認めた 各項目の相関について解析を行ったところ すべての項目間で相関係数 0.4 以上 ( 中程度 ) の相関が認められ 睡眠障害と抑うつおよび倦怠感は互いに相関している症状であることが示唆された 睡眠薬では 入眠困難 中途覚醒は改善されるものの 熟眠困難 早朝覚醒 日中の眠気などの改善は認めなかった これらの結果から肺がん患者への不眠 抑うつを中心とした精神身体症状を薬物療法も含めた総合的なケアを行うことが患者の QOL を向上させるために必要があることが示唆された ( 1 )