問題意識若者の地域移動言説再考 最近の若者は地方から都市 ( 大都市圏 ) に流出するようになっている という言説は本当なのだろうか? 1 社人研 人口移動調査 (2011) の二次分析世代別に若者の3 時点の地域移動パターンについて 全体像を把握する 調査は 国民生活基礎調査 実施に際して層化無作

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平成29年3月高等学校卒業者の就職状況(平成29年3月末現在)に関する調査について

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1. 調査の目的 初めての給料日は 新入社員が皆胸を躍らせるイベントだ 家族への感謝の気持ちを伝える機会に 1 ヶ月間頑張った自分へのご褒美に と 使い道を考えている時間が一番楽しいかもしれない しかし最近の若者は 車や高級品に興味がない 海外旅行に関心が薄い 節約志向で無駄遣いはしない などと言わ

Ⅰ. 調査の概要. 調査目的日本の全国民を対象に健康日本 2( 第二次 ) に関連する健康意識 認知度調査を評価することで 健康意識における重点課題を把握すること 2 経年的な健康意識の推移を把握することを目的とする これにより 今後の情報発信のあり方を検討する 本年調査は昨年調査に続いて2 回目の

1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

平成 22 年 12 月 8 日 国立の教員養成大学 学部 ( 教員養成課程 ) の平成 22 年 3 月卒業者の就職状況について 小 中 高等学校等の教員養成を目的とする国立の教員養成大学 学部卒業者 (45 大学 学部 ) の教員養成課程の就職状況については 毎年 文部科学省において取りまとめ公

ひと くらし みらいのために 宮城労働局 Miyagi Labour Bureau Press Release 報道関係者各位 平成 26 年 1 月 23 日宮城労働局職業安定部職業安定課課長千葉敏麿職業紹介係

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人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背

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(2) あなたは選挙権年齢が 18 歳以上 に引き下げられたことに 賛成ですか 反対ですか 年齢ごとにバラツキはあるものの概ね 4 割超の人は好意的に受け止めている ここでも 18 歳の選択率が最も高く 5 割を超えている (52.4%) ただ 全体の 1/3 は わからない と答えている 選択肢や

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TOPICS 就職観では 楽しく働きたい が不動の 1 位 前年より 3.6pt 上昇 (P3) 20 学生の就職観は 楽しく働きたい が 20 からみても不動の 1 位を継続しており 今年は 3 割 (33.3%) を超える結果となった 特に文系男子は前年の 27.3% から 4.8pt 上昇し

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データ集 採用マーケットの動向 学生の動向 企業の採用動向 大学の就職支援 付録 ( 添付資料 ) -45-

18 歳人口予測 ( 全体 : :217~228 年 ) 年 45,961 人 228 年 4,98 人 (5,863 人減少 ) は 12 年間で 5,863 人 12.8% 減少し 全国の減少率 9.6% を 3.2 ポイント上回る 223 年に 41,13 人まで減少した後 224

性別 女性 48% 男性 52% 男性 女性 年齢 29 歳 5% 30 歳以上 16% 20 歳未満 21 歳 1% 1% 22 歳 7% 23 歳 10% 20 歳未満 21 歳 22 歳 23 歳 24 歳 28 歳 8% 24 歳 14% 25 歳 26 歳 27 歳 27 歳 12% 26

性別 女性 48% 男性 52% 男性 女性 年齢 29 歳 5% 30 歳以上 16% 20 歳未満 21 歳 1% 1% 22 歳 7% 23 歳 10% 20 歳未満 21 歳 22 歳 23 歳 28 歳 8% 24 歳 14% 24 歳 25 歳 26 歳 27 歳 27 歳 12% 26

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組合員対象 奨学金制度に関するアンケート の集計状況 1. はじめに調査概要とサンプル特性について < 調査概要 > 調査実施期間 2016 年 11 月 16 日 ~12 月 28 日 調査対象 全国の国公立および私立大学の学部学生 院生 回収数 1,745 有効回答数 文責 : 加藤

6 市町村と連携した就職促進セミナー ( 総括 コーディネート ) 就職活動の進め方 履歴書の書き方 面接対策 等をテーマにしたセミナーを市町村等実施地区の関係者と協力 連携して実施 ( 県内 15 地区 ) 7 新入社員向け職場定着促進セミナー ( 総括 コーディネート ) 概ね入社後 1 年の若

(2) 幼保連携型認定こども園 1 園数 20 園 ( 公立 9 園 私立 11 園 : 前年度比 3 園増 ) 表 1 2 園児数 2,189 人 ( 前年度比 416 人増 ) 図 1 表 2 3 教員数 ( 本務者 ) 307 人 ( 前年度比 83 人増 ) 表 3 4 就園率 ( 本年度小

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(4) 教員数 [ 表 3] 教員数 は 1,295 人で 前より 43 人減少しました そのうち 女性教員の占める比率は 95.9% となっています (5) 小学校第 1 学年児童数に対する幼稚園修了者数の比率 [ 表 4] 当該の奈良県内の小学校第 1 学年の児童数に対する その年の 3 月の県

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Ⅲ 調査対象および回答数 調査対象 学校数 有効回答数児童生徒保護者 (4~6 年 ) 12 校 1, 校 1, 校 1,621 1,238 合計 41 校 3,917 ( 有効回答率 96.3%) 3,098 ( 有効回答率 77.7%) Ⅳ 調査の実施時期

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質問 1 何歳から 長生き だと思いますか? 男性 女性ともに 80 歳 がトップ ( 合計 :42.3% 男性 :43.2% 女性 41.3%) 平均すると 男性が 81.7 歳 女性が 83.0 歳 と女性の方がより高年齢を 長生き と思うという 傾向があり 女性の 5 人に 1 人 (20.8

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

最初に あなたの働く目的は何ですか? という質問をしたところ 20~50 代のすべての年代において 生活 家族のため と答えた人が最も多かった その割合は 20 代が 63.6% 30 代が 74.0% 40 代が 83.8% 50 代が 82.5% だった また 全年代共通で 第 2 位が 自由に

7 応募書類の 奨学金貸与証明 書 とは何ですか 日本学生支援機構へ申請することにより入手できます 奨学生証とは別のものです 申請方法については 日本学生支援機構のHPをご確認ください ( 就職後の状況報告の際に提出いただく 奨学金返還証明書 も同様です )

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1. 調査の概要アンケート調査 ( 平成 28 年 1 月実施 ) 調査会社に登録しているウェブ調査登録モニターを対象にスクリーニング調査を実施し 出身地と現在の居住地 地域移動経験に基づく 4 つの割付区分 ( 図 1 参照 ) を抽出した上 各区分の目標サンプル数 ( 図 1 の 1~3 が各

調査の結果 問 1 あなたの性別は 調査に回答していただいた生徒の性別は 男 が問 % 女 が 49.5% です 男 女 問 2 あなたは, 生まれてからずっと鈴鹿市に住んでいますか 生まれたときから鈴鹿市に ずっと住ん

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図表 2-1から 最も多い回答は 子どもが望む職業についてほしい (9%) であり 以下 職業に役立つ何らかの資格を取ってほしい (82.7%) 安定した職業についてほしい (82.3%) と続いていることが分かる これらの結果から 親が自分の子どもの職業に望むこととして 最も一般的な感じ方は何より

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世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

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調査結果の概要 1. 3 つの原則 関連 何を学ぶか 働き手の 理想のキャリアパス と 学び直す内容 ( スペシャリスト志向にも関わらず 趣味 生活に関する学び を志向 ) や 企業と働き手 ( 生涯を通して新しいスキルと専門技能を獲得しつづけること に対する認識 ) の間にギャップがあ

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その他 事業の実施にあたって求められる事項 (1) 若年者地域連携事業の趣旨に基づき 神奈川県が行うジョブカフェ事業 併設されているハローワークとの連携を踏まえた 地域の実情に沿った取組を行う企画内容であること (2) 事業の実施に当たっては 労働局 神奈川県と事前に協議 調整を行うこと また 労働

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2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) について 静岡大学 本学は,2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) より [ 註に明記したものは, その前年度より ], 志願者のみなさんの能力をこれまで以上に多面的に評価することを目的として, 課す教科 科目等を以下のとおりに変更いた

Transcription:

若者の地域移動はどのような 状況にあるのか 地方から都市への移動を中心に 労働政策研究 研修機構 / 日本学術会議特任連携会員 堀有喜衣

問題意識若者の地域移動言説再考 最近の若者は地方から都市 ( 大都市圏 ) に流出するようになっている という言説は本当なのだろうか? 1 社人研 人口移動調査 (2011) の二次分析世代別に若者の3 時点の地域移動パターンについて 全体像を把握する 調査は 国民生活基礎調査 実施に際して層化無作為抽出された地区からさらに無作為抽出された 288 地区の全世帯 全世帯員に対して実施 ( 岩手 宮城 福島除く ) 学歴が高卒者以上 10,053 人が分析の対象となった 以下の分析はすべて初職正社員に限っている 2 若者の地域移動に関するインタビュー調査 (2013) マッチングの実態について事例を通じて把握する 事例の選定については地元のハローワークを通じ 高校については2007 年調査と同一の高校について 大学については地域移動者が多い大学という条件で新たにハローワークより依頼 < 青森 > 青森 Gハローワーク 青森 A 商業高校 青森 B 工業高校 青森 C 高校 青森 A 大学 青森 B 大学 < 高知 > 高知 Kハローワーク 高知 A 商業高校 高知 B 工業高校 高知 A 大学 高知 B 大学 高知 C 大学 青森県は大学が9 校あり うち3 校が国公立 高知は大学が3 校

(1) 若者の地域移動の全体像の把握 第 7 回人口移動調査 (2011 年実施 ) の二次分析 出身地 O(origin) 中学卒業時の居住地 進学地 E(education) 最終学校卒業した時の居住地 初職地 J( first job) 初職時の居住地 の 3 時点について地域間移動のパターンを 8 類型 ( 都市 / 地方 定着 / U ターン / 流出 ) に分類 先行世代に比べて現代の若者の 傾向が強まっている 特に高卒者で顕著だが 男性大卒者や女性の専門 短大 高専卒業者においても進学時に都市部に流出しなくなり 男性大卒者でも や地方 U ターン割合が増加

世代別 O-E-J パターン ( 男女計 ) * 地方 進学時流出 地方 就職時流出 が全体に占める割合は減少している 60 代 都市 地元定着 地方 進学時流出地方 就職時流出地方 Uターン 50 代 都市 地元定着 地方 進学時流出地方 就職時流出地方 Uターン 40 代 都市 地元定着 地方 進学時流出 地方 U ターン 地方 就職時流出 30 代 都市 地元定着 地方 進学時流出地方 就職時流出地方 Uターン 20 代 都市 地元定着 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 都市 地元定着都市 U ターン都市 進学時流出 都市 就職時流出地方 U ターン地方 進学時流出地方 就職時流出 資料出所 : 喜始 (2015) より作成

出身地が地方の若者 : 男女計 世代別 O-E-J パターン * の割合が高まり 進学時 就職時ともに地方から都市に流出する割合低下 60 代 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 50 代 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 40 代 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 30 代 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 20 代 地方 U ターン 地方 進学時流出 地方 就職時流出 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 地方 U ターン地方 進学時流出地方 就職時流出 資料出所 : 喜始 (2015) より作成

地方出身男性 : 高卒世代別 O-E-J パターン * の割合が高まる 100% 90% 80% 70% 地方 就職時流出, 11.7 地方 就職時流出, 23.9 地方 就職時流出, 22.2 地方 就職時流出, 39.0 地方 就職時流出, 38.6 60% 50% 40% 30% 20%, 87.4, 75.0, 75.0, 59.1, 60.3 10% 0% 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 地方 U ターン地方 進学時流出地方 就職時流出 資料出所 : 喜始 (2015)

地方出身男性 : 大学 大学院卒世代別 O-E-J パターン * 地方 U ターン割合高まる 100% 90% 地方 就職時流出, 7.4 地方 就職時流出, 10.3 地方 就職時流出, 12.6 地方 就職時流出, 12.5 地方 就職時流出, 10.0 80% 地方 進学時流出, 30.9 70% 地方 進学時流出, 36.6 地方 進学時流出, 42.9 地方 進学時流出, 45.2 地方 進学時流出, 47.3 60% 50% 地方 U ターン, 28.7 40% 30% 地方 U ターン, 23.9 地方 U ターン, 18.2 地方 U ターン, 20.6 地方 U ターン, 18.7 20% 10%, 33.0, 29.1, 26.4, 21.8, 24.0 0% 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 地方 U ターン地方 進学時流出地方 就職時流出 資料出所 : 喜始 (2015)

(2) 高卒就職における地域移動の現状 2000 年以降の高卒者の県外就職率の推移 : 青森 高知 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 全国全国男子全国女子青森男子高知男子青森女子高知女子 10.0 0.0 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 8 対照的な県外就職者の就職先青森県男性 : 製造業 27.0% サービス 27.9% 高知県男性 : 製造業 50.0% サービス 14.8% 県外就職 内実は異なる

青森県 高知県の高卒就職者の移動先地域の推移 ( 男性 )* 地域間の結びつきの安定性 60 50 40 30 20 10 0 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 青森から東京高知から愛知高知から大阪 9 高卒就職者に対する求人における製造業割合 : 愛知 > 大阪 > 東京 資料出所 : 文科省 学校基本調査 各年度

2003 年 /2013 年の高校単位での県外就職率の分布 ( 全日制 男性 ) 高知 : 地域移動が工業高校に集中 青森 : 地域移動は工業高校のみに集中してはいない 1.00 0.90 2103 年県外就職率 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 B 工業 工業工業 工業 工業 工業 工業工業 工業 工業工業 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 2003 年県外就職率 10 厚労省 ( 各年度 ) 高校要覧より作成

青森 B 工業地元に残りたい = 自信がない ( 県内求人だからという特別の指導のポイントはありますか?) 地元はほとんど厳しいので 半分ボランティアの 青森に地域活性化とか そういう思いを持って臨んでねという そのぐらいの意気込みで行ったほうがやりがいあるんじゃないのかなと ( 中略 ) 同級生と休みに会ったりしますよね 半年たって もう全然 ( 県内と県外の労働条件では ) 雲泥の差があるわけです でも 本人は地元にいたいといって選んだわけですから やはりそれは何でいるのかということですよね 地元に貢献しているというところがやっぱり ( 地元に残りたいという子の特徴は?) 親を面倒見なければとか 将来家にやっぱり残らなければとか 親が共働きでまだ兄弟が小さいのでとか 事情はそれぞれありますよね あと 自分で生活ちょっと自信がないとか 1 人で生活するのが自信がないというか そういう子もいます 11

高知 B 工業県内に残りたい = 自信がない ( 生徒の地元志向が強いかと言うと ) あんまりそういうわけではないですね 変な言い方をすると うちの学校の中では 就職でいったら 県内就職と県外就職だったら 県内就職のほうがマイノリティーですから 県外に出るほうが多数ですから それに対しての抵抗というのはあんまりないですね ただ 親御さんの思いとか 本人の思いとして そういうふうな声があることは知っています ただ 現実問題考えたときにっていう あとは選択肢も多いです 県外のほうが 今年は比較的県内の希望が多い年だったんです ( 今年が多かった理由は ) 生徒の性格的なものだと思うんですけど 私の目から見てなんですけど 非常に自分の自信のない子が多いかなと だから あんまり外に出たがらない子が例年より多いと 12

限られた範囲の中での地域移動 1 需要不足地域の高校就職指導は生徒の地域移動に対する水路付けを行っており 生徒が地域移動をする後押しをしていると見られた 2 地域移動のパタン - どこからどこに移動するのか - というのは マッチング機能 ( 高校就職指導 ) の歴史的経緯に依存する部分が大きく 安定しているといえる 3 出身地域がどこの都市と結びつくかによって 誰が移動するか あるいはどんな仕事に就くことになるかが規定される 移動先地域は基本的に安定的であるため 移動先の産業構造によって需要 ( 誰が移動するか どんな仕事に就くか ) が異なることになる 13

(3) 大卒就職における地域移動と就職支援 大卒労働市場は全国区の大きな市場 大学の選抜性 ( 選抜性の低い私立大学の就職においては大学の関与が重要 ) や 専攻 ( 理系の一部の大学では大学関与がまだ存在 ) による違いが存在 就職活動開始時期 面接や内定企業数等には地域差がある ( 労働政策研究 研修機構 2007) 進学時については 地元ブロック内での進学が主流 ( 学校基本調査 より ) 地方大学の就職部 キャリアセンターによる地域移動についての認識と支援の特徴とは? 14

地域移動に関する大学就職部の認識 大学は基本的に学生の 主体性 に任せており 就職地についての指導はほとんどない 進学移動をしておらず さらに地元就職を目指す学生は地元に対するこだわりが強いというよりは 視野が狭い こともあると大学は認識 就職活動において親の影響が大きく 特に就職先地域について親の希望を察知し 地元就職を考える 特に女子学生 ( とその保護者 ) に顕著 地方の学生は就職活動にお金と時間がかかり 就職先が限定されやすい 東京に出ようと思いながらも 経済的な側面で身動きが取れなくなって近場の就職をする 15

若者の地域移動を 社会学的 に捉えていくために 若者の地方から大都市への地域移動は近年減少傾向にあり またマッチングにおいても若い世代の地域移動のチャンスは制約されている 自明のように見える 地方からの若者流出説 は 現象を正しく捉えているのだろうか? 今後の議論に対して社会学的な見方が貢献できることは何か?

参考文献堀有喜衣,2015, 高校就職指導が地域移動に果たす役割 - 青森と高知を事例として 労働政策研究 研修機構, 若者の地域移動 - 長期的動向とマッチングの変化 - JILPT 資料シリーズ 162. 喜始照宣,2015, 進学 就職に伴う地域間移動のパターンとその推移 - 第 7 回人口移動調査による検討 労働政策研究 研修機構, 若者の地域移動 - 長期的動向とマッチングの変化 - JILPT 資料シリーズ 162. 中島ゆり,2015, 大卒就職における地域移動と就職支援 労働政策研究 研修機構, 若者の地域移動 - 長期的動向とマッチングの変化 - JILPT 資料シリーズ 162. 労働政策研究 研修機構,2007, 大学生と就職 労働政策研究報告書 78. 参考 : 出生年 ( 第 7 回調査 ) 10 代 : 1991 年 ~2001 年生まれ 20 代 : 1981 年 ~1991 年生まれ 30 代 : 1971 年 ~1981 年生まれ 40 代 : 1961 年 ~1971 年生まれ 50 代 : 1951 年 ~1961 年生まれ 60 代 : 1941 年 ~1951 年生まれ 70 代 : 1931 年 ~1941 年生まれ 80 代以上 : 1900 年 ~1931 年生まれ