3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 計画修繕は 定期点検等で明らかになった建物の劣化の補修のため 調査 診断 修繕計画の作成 工事の実施へと 区分所有者の合意を形成しつつ 進められる 当勉強会で実施したヒアリングより 管理会社による点検 定期点検は 1 回 / 年の頻度で行っている 目視

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図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

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平成 年度 保全工事 に係る参加資格要件 工事区分表 ( 別冊 ) 千里住まいセンター用大阪住まいセンター用泉北住まいセンター用兵庫住まいセンター用京都住まいセンター用奈良住まいセンター用阪神住まいセンター用住まいセンター業務区域表 1 頁 2 頁 3 頁 4 頁 5 頁 6 頁 7 頁

構造 用途 鉄筋コンクリート造鉄骨 鉄筋コンクリート造 高品質の場合 普通の品質の場合 高品質の場合 重量鉄骨 鉄骨造 普通の品質の場合 軽量鉄骨 ブロック造れんが造 木造 学校庁舎 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 40 以上 Y 60 以上 Y 60 以上

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青文字は、長谷川が修正したものです

記入上の注意 1 施設点検表 ( 統括表 ) 施設点検入力シート 写真帳 のシートの 黄色のセル のみ記入してください 2 施設点検表 ( 統括表 ) シートの主な不具合点には 特に無し や 無し 等の入力は行わないでください シート名の変更は行わないでください 非表示になっているシートがあります

(1)調査の目的

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添付資料 割れから浸入した雨水等により周辺塗膜の浮きや剥離を引き起こします また ひび割れに沿って中性化が健全な部分に比べ早く鉄筋の位置まで進行します 中性化が鉄筋の位置まで進行し 雨水等が鉄筋と接触すると鉄筋が発錆します 特にベランダの梁へのひび割れは建物の強度を担保する構造部分であるだけに重大で

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Ⅰ. 概要 団地型マンションの修繕に対する資金 ( 会計 ) は棟別に会計するのが理想とされるが 実際に棟別会計が必要か? 団地型マンションで 現在一般的に取られている会計手法を整理し 棟別会計の利点を確認 実際にはどのように棟ごとに修繕費の格差が生じているかを検証 団地型マンションにおける修繕費の

215 参考資料

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(2) 消火用屋外給水施設の点検の方法 別添点検基準 ( 案 ) のとおり (3) 経年劣化及び詳細な点検を行う消火用屋外給水施設の把握 設置から 40 年を経過した消火用屋外給水施設の把握は 消火用屋外給水施設とし て完成した日 ( 完成検査の日 ) とする (4) 留意事項本点検の考え方は 消火

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1 個別施設計画の基本的な考え方本計画は 公共施設等総合管理計画の内容を基本とし 同計画に示す類型のうち中分類を基本に現状の施設管理者を勘案して個別に策定した 計画の基本的考え方として 個別具体の方向性を示し 原則 長寿命化を推進し 鉄筋コンクリート造の建築物は目標供用年数を 80 年とし 長寿命化

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目次 1 はじめに 2 (1) 本マニュアルの目的 (2) 用語の意義 2 アドバイザー派遣制度の趣旨 目的 3 (1) 京都市住宅マスタープランにおける分譲マンションに係る施策の方向 (2) アドバイザー派遣の目的 3 アドバイザー派遣制度の概要 3 (1) 対象 (2) アドバイザーの業務内容等

現場名 ********* 工事日報 19 2 月 28 日 火曜日 気温 : 9 天気 : 晴れ Bブロック ( エレベーター塔 ) 下地補修工事 下地補修 2 27 廊下側 クラック 欠損部補修等 Bブロックシーリング工事 シーリング 5 16 廊下側 打継目地 サッシ回り等シーリング打替 廊下

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資料6 野口委員提出資料

第 4 章保全に係る基準の設定 保全に係る基準の設定フロー 前章の老朽化状況の把握からの保全に係る基準の設定フローを以下に示します 老朽化状況の把握 1 躯体の健全性調査 2 躯体以外の劣化状況調査 残存耐用年数 躯体の健全性調査による残存耐用年数 構造別の目標耐用年数の設定 ( 長寿命化 ) 長寿

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(3) 中規模改修工事費 建設年代別にm2単価を設定する 大規模改修後及び改築後は 水準別にm2単価を設定し 冷房設備ありの場合は別途m2単価を設定して加算する 表 中規模改修工事費 大規模改修前 大規模改修後 改築後 中規模改修建設年代改築後改築後大規模改修後円 / m2従来改築一般施

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2 目次 大規模修繕とは 大規模修繕の目的 大規模修繕工事の事前準備 修繕委員会等の発足 コンサルタント依頼 建物の調査診断 大規模修繕設計 修繕工事業者選定 総会開催 大規模修繕工事 工事期間 工事工程 工事内容 工事説明会 工事での留意点 竣工検査 竣工図書 長期修繕計画の見直し 修繕積立金 ア

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資料 -2 空き家実態調査 中間報告

目次 1 ガイドライン策定の目的と考え方 ガイドライン策定の背景 目的 ガイドライン策定に当たっての基本的な考え方 趣旨 既存住宅現況検査の適正な実施について 既存住宅現況検査の内容... 4 (1) 基本的な考え方... 4 (2

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第 4 章公共施設の老朽化状況の把握 建築物の老朽化状況については 1 躯体の健全性把握調査と 2 躯体以外の劣化状況把握 調査の 2 つの調査を実施し 実態を把握の上 評価しました 1 公共施設の保有状況公共施設の保有状況 築年別用途別規模別築年別用途別規模別 躯体の健全性の把握 3

参考資料 -1 補強リングの強度計算 1) 強度計算式 (2 点支持 ) * 参考文献土木学会昭和 56 年構造力学公式集 (p410) Mo = wr1 2 (1/2+cosψ+ψsinψ-πsinψ+sin 2 ψ) No = wr1 (sin 2 ψ-1/2) Ra = πr1w Rb = π

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鋼道路橋防食便覧 目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円 平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行 第 Ⅰ 編共通編 第 1 章総則 Ⅰ 総論 Ⅰ 適用の範囲 Ⅰ 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼

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第1章 長寿命化改修の基本的事項(1)

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第3章 長寿命化改修と併せて検討したいこと

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イ使用年数基準で更新する施設 ( ア ) 使用年数基準の設定使用年数基準で更新する施設については 将来の更新需要を把握するためにも 更新するまでの使用年数を定める必要がありますが 現時点では 施設の寿命に関する技術的な知見がないことから 独自に設定する必要があります このため あらかじめ施設を 耐久

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通達第1号

また 建築工事市場単価フォローアップ要領 の3. 検討のための要件及び対応の内 3-4 本施行されている工種の急激な価格変動が認められた場合 の調査方法について フォローアップにおける定点調査の所要な変更を行った 内容は次回の定点調査は代表細目から全細目に変更することし 解りやすい表現とした 3.2

60 年超土地長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 (H21.6 施行 ) に基づく長期優良住宅に係る認定制度の創設 長期優良住宅の建築 維持保全に関する計画を所管行政庁が認定 認定住宅は 税制 融資の優遇措置や補助制度の適用が可能 認定基準 <1>


様式及び記入例 (3) 点検結果一覧表 ( その 1) 半田市橋梁点検 補修設計業務 橋梁諸元 定期点検結果 整理番号 橋梁 ID 橋梁名 橋梁形式 径間 長根橋 ( 上流側 ) PC 単純プレテンホロー桁橋 1 橋種 PC 橋 有効 橋長 幅員 橋面積 (m) (m) (m2) 供

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3-1 共同住宅の修繕工事 1 修繕工事の実態 共同住宅では 発生した不具合を修繕する工事だけでなく 長期修繕計画に基づき積み立てた修繕積立金を用いた計画修繕等が行われている マンション管理会社 (A 社 ) の受注した工事 計画修繕工事実施時の資金調達 計画修繕の工事資金は修繕積立金で賄うことが多い 大規模修繕工事 ( 計画修繕工事のうち足場を設置したもの )1.9% 計画修繕工事 ( 屋上防水工事 ).6% 計画修繕工事 ( 給水管工事 ).9% 件数ベース 計 25 億円 金額ベース 計 1 万 6 千件 計画修繕工事 ( その他 )1.6% 計画修繕工事 ( 排水管工事 ).2% 事後的修繕工事 85.7% 大規模修繕工事 ( 計画修繕工事のうち足場を設置したもの )48.% 計画修繕工事 ( 屋上防水工事 )1.5% 計画修繕工事 ( 給水管工事 )7.2% 計画修繕工事 ( 配水管工事 )2.3% 計画修繕工事 ( その他 )22.9% 事後的修繕工事 18.% ( 出典 ) マンション管理会社提供データ ( 平成 21 年度 ) N=1,127 修繕積立金の算出方法 修繕積立金制度があるマンションでは 約 8 割が長期修繕計画から必要額を算出 N=1,924 ( 不明を除く ) ( 出典 ) 平成 2 年度マンション総合調査 23

3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 計画修繕は 定期点検等で明らかになった建物の劣化の補修のため 調査 診断 修繕計画の作成 工事の実施へと 区分所有者の合意を形成しつつ 進められる 当勉強会で実施したヒアリングより 管理会社による点検 定期点検は 1 回 / 年の頻度で行っている 目視による外観点検であるが 不具合箇所を写真や図面で確認し管理組合に提出する 点検の結果 すぐに修繕可能なものは対応するが 大規模な足場を必要とするような場合は大規模修繕を管理会社より提案する 長期修繕計画に記される修繕周期 屋根や外壁は 12 年を修繕周期としている 設備は過去の修繕データを踏まえて部位ごとに修繕周期を設定している 実際に行われる計画修繕 ( 大規模修繕 ) 1 回目は 12~15 年で屋根 外壁等の修繕工事を実施 (UR は 18 年毎 ) 最近は建築部材の性能が上がっているので 周期が長くなっても支障が少なくなってきているがシーリングの劣化が早い 定期報告制度で 1 年毎に歩行者に危険のある場所は全面打診等が必要なこと 施工業者の保証期間も影響 定期点検報告書事例 24

3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 当勉強会で実施したヒアリングより 計画修繕 ( 大規模修繕 ) の進め方 大規模修繕を検討することとした管理組合では 修繕検討委員会の設置や 詳細な調査を行い大規模修繕の実施を決める 工事の内容は 詳細調査の結果で必要とされた箇所に加え 住民へのアンケート結果から決める 管理会社として大規模修繕の検討開始や経費の予算化など 各段階で管理組合の理事会や総会での意志決定を補助している また コンサルタント 施工業者として工事に関わることが多い 大規模修繕の進め方チャート 25

3-1 3 修繕工事の間隔 ( 外壁 躯体 屋上防水 ) 屋上防水工事 外壁修繕工事などは 実際に行われた工事間隔に一定の傾向が見られる 35 3 25 件 2 15 1 5 ( 屋上防水屋上等 ) アスファルト露出防水 / : 修繕 (n=91) n=91 : 平均 14.5 年 6 5 4 件 3 2 1 外壁等の大規模修繕 ( ) タイル / n=145 : 修繕 (n=145) 出典 マンション管理会社 設計事務所から修繕の実施状況を調査した結果を集計 ( 平成 23 年 3 月 ) 配布数 : 約 1,14 件回答数 : 568 件 修繕周期 は 修繕を実施した理由を 調査 診断により劣化の状況を確認して実施 と回答した工事について 前々回の修繕時期 と 直近に実施した修繕時期 との期間差を算出したもの 1 3 5 7 9 1113151719212325272931333537394143454749 : 平均 13.7 年 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 ( 参考 ) 公表データに見られる修繕周期の傾向 1. 屋根防水 2. 床防水 3. 外壁塗装等 4. 鉄部塗装 科目 1. 屋根防水 ( 露出防水 ) 2. 庇 笠木等防水 1. バルコニー床防水 2. 開放廊下 階段室等床防水 1. コンクリート補修 2. シーリング 3. タイル張り 4. 外壁塗装吹付 1. 内部 2. 外部 改修周期の傾向 ( 年 ) 件数平均値 164 13.3 174 14. 241 15.1 191 14.3 237 14.6 1. シーリング ( 建具廻り ) 238 14.4 2. シーリング ( 躯体目地 その他 ) 237 14.4 1. タイル張り補修 ( 洗浄 ) 179 13.5 2. タイル張り補修 ( 浮き 欠損部補修 ) 179 13.2 263 14.6 1. 内部付属物 144 11.5 2. 内部建具 145 12.5 1. 外部付属物 168 12. 2. 外部建具 139 11.1 アスファルト露出防水の件数には 修繕周期が 6 年程度とされる保護塗料 ( トップコート ) の塗替えが含まれている 出典 改修工事 ( 集合住宅 ) のマクロ的価格傾向に関する研究 ( その 5) ( 財 ) 建設物価調査会総合研究所平成 24 年 3 月公表 調査対象工事 :28~211 年に完了した非木造の集合住宅 ( マンション ) 改修工事 調査先 : 主要建設会社 設計事務所 発注機関 143 社 回収率 :9.4%(134 社 ) 回収サンプル数 :511 件 左表は 1 件以上のサンプルを有する項目のみを抜粋して掲載 26

3-1 4 修繕工事の間隔 ( 設備 ) 給水管や給水ポンプなど設備系は 実際に行われた工事間隔にばらつきが見られる ( 給水管 ) 水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管管材 :SGP-VB( 内面 ) 継手 : コーディング継手 ( 管端防食継手 ): 更生 n=19 ( 給水ポンプ ) 揚水ポンプ : 取替え n=19 7 一般部 / 水道用硬質塩化ヒ ニルライニンク 鋼管 管材 :SGP-VB( 内面 ) 継手 : コーティンク 継手 / 更生 (n=19) 12 揚水ポンプ / 取替 (n=38) 6 1 件 5 4 3 2 : 平均 19.1 年 件 8 6 4 : 平均 2.9 年 1 2 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 出典 マンション管理会社 設計事務所から修繕の実施状況を調査した結果を集計 ( 平成 23 年 3 月 ) 配布数 : 約 1,14 件回答数 : 568 件 修繕周期 は 修繕を実施した理由を 調査 診断により劣化の状況を確認して実施 と回答した工事について 前々回の修繕時期 と 直近に実施した修繕時期 との期間差を算出したもの 27

ォ サ [ 3-1 5 建物の経年劣化の進行 建物躯体の経年劣化を放置すれば いずれコンクリート中性化や鉄筋腐食が進行し 構造耐力の低下につながる このため 共同住宅の構造躯体が適切に保護されるよう 外壁や構造躯体を修繕することが求められる コンクリートの中性化と鉄筋腐食の関係 S[ 屋外側 ] リひび割れが発生すると鉄筋中性化進行曲線 フの腐食速度は大きくなる鉄筋腐食進行曲線 ひび割れ発生腐食量 [ 屋内側 ] H ハ 2mm ゥ年数 t1 t2 t3 ヤ 屋内側は中性化がかぶり厚さを超えて 2mm 奥まで進行したら腐食開始するウt1: 屋外側の中性化がかぶり厚さ深さまで進行した時点 t2: 屋内側の中性化がかぶり厚さより 2mm 奥まで進行した時点 t3: 鉄筋腐食によって屋外側コンクリートにひび割れが発生した時点 ウ 経年により 鉄筋の位置までコンクリートの中性化が進行すると鉄筋が腐食し始め やがてかぶりコンクリートに鉄筋の位置に沿ったひび割れが発生する ひび割れが発生すると 屋外側の鉄筋の腐食速度は大きくなり劣化が急速に進行する 出典 建築工事標準仕様書 同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事 (29), 日本建築学会 28

3-1 6 耐久性総プロにおける耐用年数 経年劣化により補修すべき時期に参考になる研究として 建築研究所による耐久性総プロ (S55~59) で示された屋上防水 外装塗り仕上げ材の耐用年数がある 耐用年数はリファレンスサービスライフとして引き継がれ 各分野で研究が進められている 耐久性総プロに示された 耐用年数 の例 屋上メンブレン防水 屋上メンブレン防水が何らかの原因で故障し 雨漏りするような状態に至ったとき を耐用年数に達したものとする Ye( 推定耐用年数 ) =Y D M = Ys s a b c D M 押えアスファルト防水 露出アスファルト防水 シート防水 Ys( 標準耐用年数 ) 17 年 13 年 13 年 ウレタン塗膜防水 1 年 Y: 新築時の期待耐用年数 D: 劣化係数 M: 維持管理係数 Ys: 標準耐用年数 ( 表 ) s: 防水工法の選択係数 a: 設計係数 b: 施工係数 c: 気象係数 外装塗り仕上げ材 塗り仕上げ面が劣化外力により機能 性能が低下し 通常の修繕や一部分の補修では許容できる限界まで回復することができなくなり 施工後最初に修繕を行う時期 をもって 耐用年数に達したものとする Ye( 推定耐用年数 ) =Ys a b c d e 塗料 薄付け仕上げ塗料 複層仕上げ塗剤 厚付け仕上げ塗剤 Ys( 標準耐用年数 ) 6 年 7 年 1 年 12 年 Ye: 標準耐用年数 ( 表 ) a: 材料係数 b: 施工係数 c: 部位係数 d: 環境係数 e: 維持管理係数 耐久性総プロとリファレンスサービスライフについて 建築物の耐久性向上技術の開発 ( 耐久性総プロ )(S55~59 建築研究所 ) において 外装塗り仕上げ材 及び 屋根防水メンブレン防水 について耐用年数の算定方法が示された 耐久性総プロの成果等は ISO15686 シリーズに反映され 標準耐用年数及び耐用年数推定式が リファレンスサービスライフ等として採用された 同規格では リファレンスサービスライフを 建築物又はその部分に適用される ( または予想される ) ある特定の使用条件の組み合わせ ( 代表的組み合わせ ) のもとでの耐用年数 としている 29