2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

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2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

申告者と配偶者の合計所得金額の入力フォーム 申告者 ( 給与の支払いを受ける人 ) の事業所得 雑所得 配当所得 不動産所得 その他の所得の収入金額と必要経費を入力して合計所得金額を計算します 申告者の合計所得金額が 900 万円を超えると 配偶者控除または配偶者特別控除の控除額が変動します 申告者

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

2018年度税制改正で所得税はどう変わるか

はしがき 配偶者控除 と 配偶者特別控除 は 昭和 36 年と昭和 62 年の税制改正で導入された歴史ある制度です ここ数年 配偶者控除の改正について様々な議論が行われてきましたが 平成 29 年度税制改正において 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除と配偶者特別控除の見直し

平成19年度税制改正.xls

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

平成19年度市民税のしおり

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

平成19年度分から

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

あなたと生計を一にする配偶者やその他の親族が受け取る公的年金等から引き落とされている国民健康保険 料 後期高齢者医療保険料 介護保険料はあなたの控除の対象とはなりませんので御注意ください 5 生命保険料控除 地震保険料控除 について それぞれ該当する欄に昨年中に支払った金額を記入し 以下の計算方法に

所得税算出の流れ Q&A 通信の所得税の流れを詳しく教えてください 改めて以下の図版を見てください は収入から引かれる金額です 引かれる金 額の算出の計算方法をこれから解説します 1 支払金額 ( 給料 賞与 ) 2 給与所得控除後の金額 A 給与所得 所得税算出の流れ B 課税所得 D 所得税 E

第6回税制調査会 総6-3

Ⅰ 年の中途で行う年末調整の対象となる人 年末調整は 原則として給与の支払者に 給与所得者の扶養控除等 ( 異動 ) 申告書 ( 以下 扶養控除等申告書 といいます ) を提出している人について その年最後に給与の支払をする時に行うことになっていますので 通常は12 月に行うこととなりますが 次に掲

PowerPoint プレゼンテーション

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特定支出控除拡大でも税負担軽減者は少ない

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第5回基礎問題小委員会 礎5-4

Microsoft Word - ke1106.doc

所得控除 雑損控除 医療費控除 社会保険料控除等 旧生命保険料控除 旧個人年金保険料控除 ( 実質損失額 - 総所得金額等の合計額 10%) 又は ( 災害関連支出の金額 -5 万円 ) のうち いずれか多い方の金額医療費の実質負担額 -(10 万円と総所得金額等の 5% のいずれか低い金額 ) 限

目次 1. 平成 30 年改正対応 ( 平成 31 年 1 月リリース予定 ) (1) 改正内容 (2) 様式変更 (3) 画面イメージ (4) 帳票イメージ 1-2. 電子申告 (1) 様式変更 (2) メッセージボックスセキュリティ強化 (3) 納付手続き手順の変更 2. 注意事項 1

平成 30 年分給与所得者の扶養控除等 ( 異動 ) 申告書 ( マル扶 ) の手引き 平成 29 年末に記載する際は 平成 30 年 1 月 1 日時点の情報を書きましょう 平成 30 年の年末調整にて再度記入する際は 平成 30 年 12 月 31 日時点の情報に書き換えます X A 9/19

MR通信H22年1月号

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給与の所得金額の算出速算表 収入金額 給与所得の金額 0 ~ 650, ,000 ~ 1,618,999 収入金額 -650,000 1,619,000 ~ 1,619, ,000 1,620,000 ~ 1,621, ,000 1,622,000 ~ 1,6

資料5 表紙

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

給与等の収入金額給与所得控除額 1,800,000 円以下の場合 1,800,000 円を超え3,600,000 円以下の場合 3,600,000 円を超え6,600,000 円以下の場合 6,600,000 円を超え8,500,000 円以下の場合 8,500,000 円を超える場合 収入金額 4

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第2回税制調査会 総2-2

1 生命保険料控除が改組され『介護医療保険料控除』が新設されました

( その 1) 月収額の計算のしかた 給与所得者の場合 1. 年間総収入の計算あなたが仕事を始めた時期 対 象 の 収 入 金 額 1 現在の勤務先に前年 1 月 1 日以前から引 前年中の年間総収入金額 き続き勤務している方 ( 源泉徴収票の支払金額の欄 ) 2 現在の勤務先に前年 1 月 2 日

< 所得控除の詳細 > 1 所得控除額計算一覧表 控除名 控除の詳細 控除額町県民税 控除額 参考 所得税 次の イ と ロ のい 次の イ と ロ のい ずれか多い方の金額 ずれか多い方の金額 災害や盗難等により 本人や本 イ ( 損害金額 - 保険 イ ( 損害金額 - 保険 雑損控除 人と同一

税・社会保障等を通じた受益と負担について

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配当所得は 他の所得と総合し 累進税率を適用して税額を計算しますが 一定の上場株式等の配当等については 他の所得と分離して税額を計算する申告分離課税を選択することができます ただし 申告分離課税を選択すると 配当控除を受けられず 確定申告をする一定の上場株式等の配当等の全てについて総合課税とするか

平成 28 年度市民税 県民税申告の手引き 申告書を提出しなければならない人平成 28 年 1 月 1 日現在 幸手市内に住所を有する人 (1 月 2 日以降に幸手市に転入した人は従前の住所地で申告を行ってください ) ただし 次に該当する人は この申告をする必要はありません 1 平成 27 年分の

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3 ページ 4 ページ 5 ページ 5 6 ページ 7 ページ 8 ページ 8 ページ 9 ページ 10 ページ 2

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消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>

第8回税制調査会 総8-2(案とれ)

このページを印刷する 2017 年 11 月 23 日森信茂樹 : 中央大学法科大学院教授東京財団上席研究員 副業 兼業の時代 所得税控除見直 し で不公平を正せ 来年度税制改正の作業が 与党税調で始まっている 連日のように改正案の 断片が報道されているが 全体像がいまだよくわからない そこで これ

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

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内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

個人市民税 控除・税率等の変遷【市民税課】

妙高市 税に関するWEBページ

第2回基礎問題小委員会 礎1-2

税法実務コース 所得税 学習スケジュール 回数 学 習 テ ー マ 内 容 第 1 章 テーマ1 所得税の仕組みテーマ2 所得税額の計算テーマ3 非課税所得 所得税の仕組み 税額計算 所得税が課税されないものについて学習します テーマ1 各種所得金額の計算の概要テーマ2 利子所得テーマ3 配当所得

平成 31 年度 ( 平成 30 年分 ) 所得控除 雑損控除 納税義務者又はその者と生計同一の配偶者 その他親族が有する資産について 災害 盗難 横領によ る住宅 家財 現金の損害一定額 控除計算 A B いずれか多い方の金額 A:( 損失額 - 保険金等による補てん額 )-( 総所得金額等の合計

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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Microsoft PowerPoint - (参考資料1)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について

VBA PRO 給与計算 年末調整 システムの年末調整用データの入力 給与所得に対する源泉徴収簿の入力用ユーザーフォーム 年末調整用の所得税源泉徴収簿のフォームでデータを給与と賞与のデータを編集できます 給与明細書の源泉徴収簿フォーム 給与明細の計算 タブの 1 月 から 12 月 のボタンから給与

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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第13回税制調査会 総務省説明資料(個人住民税)

A&K パートナーズ税理士法人 秋山税理士事務所 秋山総合研究所 1

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

第 7 章 間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 52ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期

FX取引に係る確定申告について

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変更履歴 版数 内容 変更頁 変更日 1.00 新規作成 - H

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( その 1) 月収額の計算のしかた 給与所得者の場合 1. 年間総収入の計算あなたが仕事を始めた時期 対 象 の 収 入 金 額 1 現在の勤務先に前年 1 月 1 日以前から引 前年中の年間総収入金額 き続き勤務している方 ( 源泉徴収票の支払金額の欄 ) 2 現在の勤務先に前年 1 月 2 日

第5回基礎問題小委員会 礎5-1

変更の場合 1. 年度 スタッフ NO 入力もしくは年末調整検索 ([ ] ボタン ) を行い 対象の年末調整データを表示します 2. 年末調整の明細情報を変更します 3. 登録 (F2) ボタンを押下して 年末調整データを登録します 削除の場合 1. 年度 スタッフ NO 入力もしくは年末調整検索

(0830時点)PR版

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5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

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2018年度税制改正大綱ポイント整理

第 3 表所得控除表 ( 続 ) ( その 2) 合計 事業所得者 生 命 保 険 料 控 除 一般 個人年金 介護医療 人員 金額 人員 金額 人員 金額 合 70 万円以下 100 万円 150 万円 200 万円 250 万円 300 万円 400 万円 500 万円 600 万円 700 万


市 県民税 ( 住民税 ) 市民税は 県民税と合わせて住民税と呼ばれ 住民のみなさんがそれぞれの税の負担能力に応じて分担し合うという性格をもつ税金で 個人が負担する個人市民税と 会社などが負担する法人市民税があります 市民税には 均等の額によって納めていただく均等割と 個人の所得に応じて納めていただ

市場と経済A

スライド 1

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

平成20年2月

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

目次 1. 平成 29 年改正対応 ( 2018 年 1 月リリース予定 ) (1) 改正内容 (2) 様式変更 (3) 医療費控除の対応について (4) 画面イメージ (5) 帳票イメージ 1-2. 電子申告 (1) 画面イメージ (2) 帳票イメージ 2. 機能改良 (2018 年 1 月リリー

目次 1. 年末調整とは 2. 平成 30 年分の留意点 3. 給与所得者の扶養控除等 ( 異動 ) 申告書の書き方 4. 給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方 5. 給与所得者の保険料控除申告書の書き方 2

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所得税改革の次なる論点は?

Transcription:

3. 給与所得控除等の見直し 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景給与所得控除については 給与所得者の実際の勤務関連支出と比べても金額が大きく また 主要国の概算控除額との比較においても過大となっていることから 中長期的には主要国並みの控除水準とすべく見直しが必要であるとの平成 26 年度税制改正大綱における方向性に沿って 平成 28 年 29 年に続き 給与所得控除の引下げを行う (2) 内容 1 給与所得控除額を一律 10 万円引下げ 加えて 上限額が適用される給与等の収入金額を 850 万円 ( 改正前 : 1,000 万円 ) その上限額を 195 万円 ( 改正前 :220 万円 ) に引下げる 2 給与収入が 850 万円を超える場合であっても 介護 子育て世帯は 所得金額調整控除により給与所得控除額の上限の見直しによる負担増が生じないようにする 3 給与収入以外に公的年金等収入がある場合は 給与所得控除額と公的年金等控除額の双方が 10 万円引下げられるため 基礎控除額の 10 万円引上げと 所得金額調整控除により負担増が生じないようにする (4) 影響 1 給与収入が850 万円以下の場合は 給与所得控除の額が10 万円引下げられる一方で 基礎控除の額が10 万円引上げられるため 改正後においても税負担は変わらない 2 給与収入以外に公的年金等収入がある場合は 給与所得控除の額と公的年金等控除の額の双方の引下げに対する調整がされ 負担増への配慮がなされる 3 介護 子育て世帯以外の給与収入 850 万円超の個人については 増税となる 3-1 ( 所得税 住民税 ) ( 万円 ) 給 450 与 400 所得 350 控除 300 額 250 200 150 100 50 0 10 万円引き下げ 給与所得控除額の見直しイメージ ( 介護 子育て世帯以外 ) 給与所得控除の上限額は平成 25 年以後 漸次引下げ (3) 適用時期平成 32 年分以後の所得税及び平成 33 年度分以後の個人住民税について適用される 上限 195 万円 平成 24 年 平成 25 年 平成 28 年 平成 29 年 平成 32 年 ( 万円 ) 給与収入の金額

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかったことや (2) 当時の税率構造は現在よりも非常に累進的であった ( 最高税率 93%) ため 高度経済成長による賃金の上昇に伴い 会社員の負担累増感が急上昇したこと等から 給与所得控除を大幅に拡充し 控除限度額も廃止されたことで 概ね平成 24 年以前の給与所得控除の姿となった 2 平成 25 年から平成 29 年 (1) 実際の給与所得者の勤務関連支出と比べても また主要国の概算控除と比べても給与所得控除の水準が過大となっていること (2) 主要国の概算控除は 定額又は上限が設定されていること等を踏まえ 高所得者の給与所得控除について限度額を設け 限度額を漸次引き下げていった 3 平成 30 年 ( 今回 ) 平成 30 年度税制改正においても 上記 2の方針に沿って 引続き給与所得控除の引下げを行う ただし 子育てや介護に対して配慮する観点から 23 歳未満の扶養親族が同一生計内にいる者や特別障害者控除の対象となる扶養親族等が同一生計内にいる者については 負担増が生じないように措置を講ずる ( 参考 ) 給与所得控除制度の沿革 ( 出典 ) 政府税制調査会第 5 回 ( 平成 28 年 10 月 25 日 ) 財務省説明資料 ( 所得税 3) より一部抜粋 3-2 ( 所得税 住民税 )

3. 改正の内容 (1) 給与所得控除について 次の見直しを行う 1 控除額を一律 10 万円引下げる 2 給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850 万円 その上限額を195 万円に引下げる 給与所得控除額の速算表 給与等の収入金額 給与所得控除額 ( 給与所得の源泉徴収票の支払金額 ) 改正前 改正後 162.5 万円以下 65 万円 55 万円 162.5 万円超 180 万円以下 収入金額 40% 収入金額 40%-10 万円 180 万円超 360 万円以下 収入金額 30%+18 万円 収入金額 30%+8 万円 360 万円超 660 万円以下 収入金額 20%+54 万円 収入金額 20%+44 万円 660 万円超 850 万円以下収入金額 10%+110 万円収入金額 10%+120 万円 850 万円超 1,000 万円以下 195 万円 1,000 万円超 220 万円 (2) 所得金額調整控除給与所得控除の上限の引下げによる介護 子育て世帯の負担増 給与所得控除額と公的年金等控除額の双方が10 万円引下げられることによる負担増への配慮として それぞれ下記の所得金額調整控除が設けられる 1 介護 子育て世帯の場合給与収入が 850 万円を超え かつ 下記 ( イ )~( ハ ) のいずれかに該当する者は 給与所得の金額から 次の算式で計算した金額を控除する { 給与等の収入金額 ( 上限 1,000 万円 )-850 万円 } 10% 本改正により税負担は変わりなし ( イ ) 特別障害者 ( ロ )23 歳未満の扶養親族を有するもの ( ハ ) 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有するもの 2 給与収入と公的年金等の双方がある場合給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額があり かつ それらの合計額が 10 万円を超える場合は 給与所得の金額から 次の算式で計算した金額を控除する 給与所得控除後の給与等の金額 ( 上限 10 万円 )+ 公的年金等に係る雑所得の金額 ( 上限 10 万円 )-10 万円 給与所得控除額と公的年金等控除額の両方の引下げがあっても 本改正により税負担は変わりなし 3-3 ( 所得税 住民税 )

(3) 特定支出の範囲について 次の見直しを行う 1 職務の遂行に直接必要な旅費等で通常必要と認められるものを加える 2 単身赴任者の帰宅旅費に 帰宅のために通常要する自動車を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金の額を加える 3 単身赴任者の帰宅旅費に 1 月に 4 往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃する 参考 1 特定支出控除の概要給与所得者が特定支出をした場合には その支出額のうち一定額 ( 特定支出控除額 という ) を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる 特定支出控除のイメージ 特定支出控除額 = 特定支出の額の合計額 - 給与所得控除額 1/2 2 特定支出の範囲特定支出とは以下の費用の合計額をいい 給与支払者の証明があるものに限られる ( 注 1) 改正前 通勤費 転居費 研修費 資格取得費 帰宅旅費 : 単身赴任などの場合で その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの (1 月に 4 往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を除く ) 勤務必要経費 (65 万円を限度 ) 職務と関連のある図書の購入費 職場で着用する衣服の衣服費 職務に通常必要な交際費 ( 注 1) その支出について 1 給与の支払者から補填される部分があり かつ その補填される部分につき所得税が課されない場合におけるその補填される部分 2 教育訓練給付金等が支給される部分は 特定支出から除く 改正後 特定支出の範囲に 次の費用が追加される 職務の遂行に直接必要な旅費等 帰宅旅費について自動車等を使用することにより支出する燃料費 有料道路の料金 及び修理のための支出 ( 帰宅旅費に係る部分に限る ) 1 月に 4 往復を超えた旅行に係る帰宅旅費 3-4 ( 所得税 住民税 ) 特定支出の額の合計額 超える部分の金額 = 特定支出控除額 1/2 給与所得控除額

4. 適用時期平成 32 年分以後の所得税及び平成 33 年度分以後の個人住民税について適用される 5. 改正の影響 1 給与収入が 850 万円以下の場合は 給与所得控除の額が 10 万円引下げられる一方で 基礎控除の額が 10 万円引上げられるため 改正後においても税負担は変わらない 2 給与収入以外に公的年金等収入がある場合は 給与所得控除額と公的年金等控除額の双方の引下げに対する調整がされ 負担増への配慮がなされる 3 介護 子育て世帯以外の給与収入 850 万円超の個人については 増税となる 3-5 ( 所得税 住民税 )

4. 参考 (1) 参考 1 勤労者世帯の年間収入 5 分位階級別 1 世帯当たり品目別年間支出金額調 ( 出典 ) 政府税制調査会第 16 回 ( 平成 29 年 11 月 20 日 ) 参考資料 (6/8) 3-6 ( 所得税 住民税 )

(2) 参考 2 給与所得者を対象とした概算控除の国際比較 ( 出典 ) 政府税制調査会第 16 回 ( 平成 29 年 11 月 20 日 ) 参考資料 (6/8) 3-7 ( 所得税 住民税 )