第 123 回北海道整形外科外傷研究会 抄 録 平成 23 年 2 月 26 日 ( 土 ) 14:50~ 於 : 札幌教育文化会館 会長 : 富良野協会病院矢倉幸久先生共催 : 北海道整形外科外傷研究会大日本住友製薬株式会社
第 123 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 (1) 橈骨頚部骨折に対する保存療法後偽関節の1 例札幌徳洲会病院整形外科畑中渉先生 (2) 下腿遠位部関節内骨折 (Pilon 骨折 ) の治療戦略札幌東徳洲会病院外傷部辻英樹先生 主題 (1) 足関節内果骨折を合併するアキレス腱断裂の4 例医療法人社団刀圭会協立病院津村敬先生 (2) 皮弁形成を要したアキレス腱停止部開放性剥離骨折の一例札幌医科大学附属病院高度救命救急センター 整形外科入船秀仁先生 (3) 当院でのアキレス腱断裂に対する保存療法の検討遠軽厚生病院整形外科田中雅仁先生 (4) 当院におけるHalf-mini-Bunnell 法 ( 内山法 ) によるアキレス腱縫合術の治療成績整形外科札幌リハビリテーション病院金子知先生 (5) 新鮮アキレス腱皮下断裂に対する縫合術後に早期後療法の治療効果整形外科三条医院宮武慎先生 (6) アキレス腱再断裂例についての検討市立函館病院整形外科中島菊雄先生 (7)Lange 改良法によるアキレス腱陳旧性及び再断裂の治療経験森山病院整形外科仲俊之先生 (8) アキレス腱術後に両側とも感染を生じ難治した1 例市立札幌病院整形外科平地一彦先生 (9) 北海道のアキレス腱断裂治療 ( アンケートの結果より ) 富良野協会病院矢倉幸久先生 (10)Marti 法を用いた両側アキレス腱断裂同時手術 (1 例報告 ) 江戸川病院整形外科高畑智嗣先生教育研修講演 アキレス腱断裂について 関東労災病院スポーツ整形外科部長内山英司先生
一般演題 (1) 橈骨頚部骨折に対する保存療法後偽関節の 1 例 札幌徳洲会病院整形外科畑中渉 はじめに 成人橈骨頚部骨折に対する治療方針は Mason 分類の type1 では保存治療を type2 で転位が 2mm 未満ないし骨頭傾斜角が 15 未満では保存治療 転位が大きいものでは観血的治療を type3 では観血的治療と推奨されている 今回 転位が 2mm 未満 骨頭傾斜角が 15 未満の Mason 分類 type 2 の橈骨頚部骨折に対し保存療法を選択した結果 偽関節となった症例を経験し type2 に対する治療法の再考を行ったので報告する 症例 66 歳女性 利き手側受傷 高血圧症と麻痺の無い脳梗塞後の既往あり 犬の散歩中に転倒して受傷され来院 初診時 肘内側部の皮下出血を伴う腫脹形成があり 外反不安定性を軽度認めた 回内外時に Click あり 内側の圧痛はあるが 外側の圧痛ははっきりせず X 線上 Mason 分類 type2 の橈骨頚部骨折を認めるが 転位が 2mm 未満で骨頭傾斜角が 15 未満のため 上腕シーネによる外固定を行った 3 週間後の外固定除去時には架橋形成がみられていたが 6 週経過時から透瞭像形成が見られるようになったが 自他覚症状は改善していたため放置 最終 28 週時には 圧痛は無く杖使用時に疼痛自覚することがある程度であったが X 線上は偽関節を呈していた 考察 橈骨頚部骨折に対する保存療法の結果 玉木らは 5 例中 2 例が遷延治癒 中村らは 3 例中 1 例が偽関節と 比較的高率に遷延治癒 偽関節が生じている その要因は 大腿骨頚部と同様に血行動態の安定化が問題で 輪状靭帯のため橈骨頭は安定しているが 頚部は回内外で不安定となっていることによる そのため Type1 でも偽関節となることがある まとめ 最低 3 週は 中間位での上腕ギプス固定と厳重な X 線管理が必要であり 固定除去時期には注意が必要である
一般演題 (2) 下腿遠位部関節内骨折 (Pilon 骨折 ) の治療戦略 札幌東徳洲会病院外傷部辻英樹 土田芳彦 村上裕子 綾部真一 工藤雅響 名和正行 松田知倫 佐藤和生 士反唯衣 はじめに 関節内骨折の治療戦略は部位によって異なるが 大きく1 関節面骨片の整復固定を行った後 骨幹部と固定する2 関節内骨片を各 columnに分けその columnと骨幹部と整復固定することで関節面が整う の2つに大別される 今回下腿遠位部関節内骨折 (Pilon 骨折 )2 例の治療経過を提示しその治療戦略について考察する 症例 症例 1:44 歳男性 4mの高所より転落しAO43-C3.2 受傷 受傷 2 日目に外果 plate 固定 受傷 12 日目に前内側アプローチより前内側と前方 locking plate 固定 人工骨移植術を施行した 術後 13 週で骨癒合が得られ 術後 14 ヵ月で抜釘術を施行したが 足関節前外側の整復が不十分で約 2mmのgapと軽度の関節症変化を認めている 症例 2:48 歳男性 7mの高所より転落しAO43- C3.1 受傷 受傷 5 日目に内後方の同一皮切より内果骨片と後果骨片をplate 固定 受傷 20 日目に前外側 locking plate 固定 人工骨移植術を施行した 受傷 3ヵ月の現在関節面のgapはなくリハビリ中である 考察 Pilon 骨折の治療戦略は上記 2に相当する つまり1. 下腿遠位部骨折を外果 後果 内果 脛骨前外側の4columnに分け それぞれのcolumnの整復固定を行う 2. 陥没を伴う骨片は距骨関節面に押し下げ整復しlocking screwを複数本関節面に平行に刺入することで筏状に支えるが この骨片を直接操作できるアプローチを選択する この治療戦略を完遂するためには 段階的手術の考慮 皮切部位の配慮が必要になる
主題 (1) 足関節内果骨折を合併するアキレス腱断裂の 4 例 医療法人社団刀圭会協立病院津村敬 佐藤幸宏 伊林克也 はじめに アキレス腱断裂は我々が診療する機会の多い外傷であるが 足関節内果骨折を合併する症例は比較的稀であり まとまった報告は少ない そこで 演者がこれまでに治療した 足関節内果骨折を合併するアキレス腱断裂 の 4 例をまとめて 本外傷の特徴と受傷機転に関して分析し報告する 症例 症例の内訳は 男性 3 例 女性 1 例 年齢は 33 歳から 74 歳であった 受傷機転は 階段を登る際の段差の踏み外しが 2 例 1 メートルの高さからの飛び降りが 1 例 階段を下りる際に 前のめり に転倒が 1 例である いずれの症例も足関節内果とアキレス腱に圧痛と腫脹を認めるものの 患者が明確に両損傷部位の疼痛を訴えたものはなかった X 線写真では 比較的転位の少ない足関節内果骨折を認め 骨折線の後方が頭側に切れ上がる傾向にあった 全例に骨接合術とアキレス腱縫合術を行い 術後 4 から 5 週のギプス固定を行った 術後経過は良好であり 合併症を認めたものはなかった 考察 足関節内果骨折を合併するアキレス腱断裂の症例報告は 学会等でしばしば見られるものの その存在は整形外科医の間でも意外なほど知られていない また 各々の損傷部位に愁訴を有さない場合も多く 一方の外傷に目を奪われてしまうと他方を見落としてしまう可能性があるため 我々は両損傷の合併の可能性を念頭に置いて診療にあたる必要がある 受傷機転に関しては 下腿三頭筋の収縮と足関節の強制背屈によってアキレス腱断裂を生じ その結果 足関節が回内位で過背屈して特異な形態の足関節内果骨折を来たしたと推測する
主題 (2) 皮弁形成を要したアキレス腱停止部開放性剥離骨折の一例 札幌医科大学附属病院高度救命救急センター 整形外科入船秀仁 はじめに アキレス腱停止部剥離骨折は比較的まれな損傷であり 閉鎖性骨折でも皮膚障害の頻度が高いことが知られている 今回 皮弁形成を要した開放骨折症例を経験したので 文献的考察を加えて報告する 症例 39 歳男性 軽乗用車の助手席に乗車中に前方のトラックに突っ込み受傷 両下肢が挟まれた状態で 車内からの救出に時間を要し 当センター搬入となった 搬入時 意識レベルは GCS9 バイタルに問題なし 右踵部に広範囲な開放創があり heel pad が完全にはがれている状態で 内外側から動脈性出血を認めていた 足趾の血流に問題はなかった 即日 洗浄 止血と創縫合を施行した X 線 CT にて踵骨アキレス腱停止部の剥離骨折と底部にも骨折線を認めた 開放創部中心の皮膚壊死が予想されたが 予想以上の皮膚壊死を来たし 感染も併発してしまったため 抗生剤投与 デブリードマンを行って感染の沈静化を待ち 受傷後 4 週にて拡大デブリードマンと剥離骨折に対する骨接合を行い 皮膚欠損部に対して皮弁形成術を行い被覆を行った 術後 特に問題なく経過し 術後 3 ヶ月目と 6 ヶ月目に除脂術を追加施行した 受傷後 1 年経過した現在 歩行は独歩で 長時間歩行時に踵部の疼痛を軽度認めるのみで 患者の満足度は高かった 考察 本骨折は全踵骨骨折中の 4% 前後に見られるとされ比較的まれな損傷である 合併症として皮膚障害の頻度が高く 治療に難渋することが多いとされている 本例では受傷時から皮膚壊死は必発と考えていたが 予想以上に壊死範囲が広く また感染も併発してしまったが 広範囲デブリードマンと皮弁形成により比較的満足のいく結果が得られた
主題 (3) 当院でのアキレス腱断裂に対する保存療法の検討 遠軽厚生病院整形外科田中雅仁三宅康晴林真 対象 H19 年 4 月から H22 年 7 月の期間に当院で加療したアキレス腱断裂 37 例中保存療法をおこなった 30 例を対象とし診療録を元に検討した 全例新鮮皮下断裂であり 男性 20 例 女性 10 例 受傷時年齢は 23 歳から 77 歳で 受傷原因はスポーツが 22 例でありその内訳はミニバレー 9 例 バレーボール 5 例 バスケットボール 2 例 野球 3 例 剣道 2 例 フットサル 1 例であったが全例レクレーションレベルであった 方法 当院での保存療法は特別な装具を用いることなく 6 週間のギブス固定のみを基本としている 初診時に患肢足関節を最大底屈位にて膝下よりギブス固定し その後 2 週ごとにギブスを巻き替え徐々に足関節を背屈し 6 週間で背屈 0 度となるようにする ギブスを除去した後は 足関節可動域訓練およびつま先立ち訓練を指導し 片足でのつま先立ちが可能となった時点でジョギングを許可した 結果 全例免荷期間は初期の 2 週間のみで 2 週間後ギブスを巻きかえた時点でアキレス腱ギブスヒールをつけ荷重開始となっていた 4 週間後にはギブスのまま補助具なしでの全荷重歩行が可能となっており 20 例が 6 週間でギブス除去 10 例が 6 週後に足関節背屈 0 度に達していなかったため 1 週間ギブスを追加され 7 週間後にギブス除去となっていた 1 例がギブス除去後 10 日目で再断裂し手術で縫合した 再断裂例を除く 29 例において 両足つま先立ち訓練が可能となったのは平均 9.2 週 片足でのつま先立ちが可能となったのは平均 15 週 6 か月の時点では 70 歳以上の高齢 3 例を除く全例でスムーズなランニングが可能であった 考察 アキレス腱新鮮断裂に対する保存療法は手術療法に比べて再断裂が多いこと 固定期間が長いこと 下肢筋力の低下を認めることが欠点とされてきた しかしながら 1) 近年保存療法での再断裂は 2 3% との報告が多く 当院での保存療法でも再断裂は 30 例中 1 例 (3.3%) のみであり 手術療法と比較して頻度が高いとはいえなかった 2) ギブス固定期間は 6 週間と手術療法と比較して長いが 受傷後 2~4 週で上肢での支持なく歩行しており重労働以外であれば職務への復帰も可能であった 3) 下肢筋力の低下に関しては 診療録に詳細な記載はなく検討することが出来なかったが 日常生活レベルでの不便さを訴える症例はなかった 以上から 特別な手技や装具を必要としない当院の保存療法でも満足のいく結果が得られており 早期のスポーツ復帰を最優先に考える症例でなければ有用な治療法であると思われた スポーツレベルに関しても今後前向きに研究していきたい
主題 (4) 当院における Half-mini-Bunnell 法 ( 内山法 ) によるアキレス腱縫合術の治療成績 整形外科札幌リハビリテーション病院金子知整形外科北新病院青木喜満井上千春 はじめに アキレス腱断裂は幅広い年齢層に発生する外傷であり, 一般社会にもスポーツ外傷の代表的なものとして認知されている 治療には保存的治療, 手術治療を含め, 様々な治療法が報告されている 当院では早期に確実な機能回復を目的に, 新鮮アキレス腱皮下断裂に対して Half-mini- Bunnell 法 ( 内山法 ) を施行している 今回その術後成績を評価, 検討したので報告する 対象と方法 2009 年 5 月より 2010 年 8 月までに新鮮アキレス腱皮下断裂 25 例に対して Uchiyama ら (Am J Sports Med, 2007) の方法に準じて手術および後療法を施行した そのうち術後 6 ヶ月以上経過観察可能であった 19 例について, 装具装着期間, 足関節背屈制限消失時期, 両脚および片脚ヒールレイズ達成時期,MMT5 達成時期, を調査した 結果 手術症例 25 例の内訳は男性 10 例, 女性 15 例, 受傷時年齢は 16 69 歳 ( 平均年齢 41.5 歳 ) 受傷から手術までの期間は 1 7 日 ( 平均 3.9 日 ) 入院期間は 2 32 日 ( 平均 13 日 ) 手術時間は平均 48.8±6.3 分であった 評価対象の装具装着期間は平均 6.6 週 (46.5±5.5 日 ) 足関節背屈制限消失は平均 6.5 週 (45.8±9.2 日 ) 両脚ヒールレイズ達成は平均 8.5 週 (59.8±6.0 日 ) 片脚ヒールレイズ達成は平均 12.7 週 (88.7±14.7 日 ) MMT5 達成は平均 17.1 週 (119.8±26.7 日 ) であった 術後合併症は肥厚性瘢痕 2 例, 再断裂 1 例であった 考察 当院での成績は, すでに報告のある内山ら (Arthritis, 2008), 鈴木ら ( 整スポ会誌,2010) の報告とほぼ同等であり, 年齢層, 競技種目, スポーツレベルの相違はあっても, 多施設間で同等の成績が得られていると考えられる したがってこの結果は, 治療の標準化に有効で, 計画性のあるリハビリテーションを安全かつスムーズに勧められ, 治療および復帰スケジュールに対する患者の理解も得られやすいと考えられる Half-mini-Bunnell 法 ( 内山法 ) による強固な縫合方法と適切な運動療法は, 筋力回復および日常生活, スポーツへの早期復帰に有効であると考える
主題 (5) 新鮮アキレス腱皮下断裂に対する縫合術後に早期後療法の治療効果 宮武慎 1,2 塩崎一抄 3 小林三昌 4 菊田圭彦 4 4 廣田誼北海道大学大学院医学研究科運動機能再建医学分野 1 整形外科三条医院 2 リラ整形外科クリニック 3 4 札幌リハビリテーション病院整形外科 目的 新鮮アキレス腱皮下断裂に対して腱縫合術が行われることは多い しかし後療法のスタンダードはなく 荷重歩行の開始を数日以内に開始している報告は少ない そこで我々は術後早期に荷重を開始する方法を行ったのでその治療成績を報告する 対象と方法 2006 年 5 月 ~2010 年 9 月までに新鮮アキレス腱断裂に対し縫合術を行った 13 例を対象とした 2007 年 3 月までの 6 例 ( 緩徐リハ群 ) は縫合術 (Kirchmayer 法 ) 後ギプス固定とし 2 週以降で荷重開始 4 週以降で全荷重 ギプス固定除去とした 2007 年 4 月以降の 7 例 ( 早期リハ群 ) は縫合術 (Krockow 法 ) 翌日以降にアキレス装具を装着し 直ちに 1/2 荷重歩行を開始する 1 週前後で全荷重 装具は自動背屈が 20 を越えれば装具を除去した 両群のギプス固定期間 荷重開始時期 入院期間 4 週 8 週 12 週 16 週の足関節背屈および底屈の角度を検討した 結果 ギプス固定期間は 緩徐リハ群が平均 30 日 早期リハ群は平均 2 日であった アキレス腱装具は緩徐リハ群は使用なく 早期リハ群平均 40 日であった 入院期間は緩徐リハ群 38 日に対し 早期リハ群 9.2 日であった 4 週 8 週 12 週 16 週での足関節背屈の可動域は緩徐リハ群はそれぞれ 8 15 23 40 に対し 早期リハ群 15 38 41 44 であった 4 週 8 週 12 週 16 週での足関節底屈の可動域は緩徐リハ群は 40 47 60 60 早期リハ群は 66 70 72 70 であった 両群とも再断裂例はなかった 考察 早期リハの方が入院期間は短かった 可動域については 足関節背屈は 12 週まで 底屈は 8 週まで早期リハの方が有意に高かった 早期リハは 歩行の早期回復および可動域の回復に有効な結果が得られた
主題 (6) アキレス腱再断裂例についての検討 市立函館病院整形外科中島菊雄 佐藤隆弘 平賀康晴 岩澤智宏 佐々木英嗣 われわれは 2006 年 1 月から 2010 年 12 月の 5 年間に当科を受診したアキレス腱断裂症例について retrospective に調査した この期間に当科を受診したアキレス腱断裂例は 86 例であったが 7 例は転院での治療を希望し 当院で治療を行った症例は 79 例であった このうち開放例は 3 例 受傷後 3 週以上経過して受診した陳旧例は 6 例 10 年以上前の受傷 手術歴のあるもの 1 例であった 開放例と既往のある症例では再断裂は見られなかったが今回の検討から除外した 手術 保存療法はその長短を説明のうえ本人に選択させた 新鮮例は原則として局所麻酔下に外来手術として行い 術後 4~5 週間の BK cast の後 段階的に高さを減らせるハイヒール型装具を 3~4 週装着した 新鮮 手術例は 42 例で再断裂は 5 例 11.9% 新鮮 保存例は 28 例で再断裂は 1 例 3.6% 陳旧 手術例は 2 例で 1 例が再断裂を生じた 再断裂の時期は手術例では術後 34~82 日目 保存例では受傷後 94 日目に生じていた 日整会ガイドラインによれば 再断裂率は手術療法で 1.7~2.8% 保存療法で 10.7~20.8% とされる われわれの症例では 手術療法での再断裂が高いものとなっている しかし 再断裂の理由の多くは滑って足を強くついたなどの予想外の負荷によるものであり 手術例の方に過信 油断が生じやすい可能性が考えられた 本調査での問題点は 治療方法の選択は本人の希望によりrandamizeされていないこと 縫合方法や後療法の protocol が出来ていないことから 再断裂率は治療法方法の違いによるとはいえないことである
主題 (7) Lange 改良法によるアキレス腱陳旧性及び再断裂の治療経験 森山病院整形外科仲俊之 岡本巡有山弘之 アキレス腱の陳旧性及び再断裂例を Lange 改良法により治療した 3 例を経験したので報告する 術式は Lange 法を改良したもので アキレス腱中枢部より採取した遊離腱片を上下逆にして抹消断端と縫合したのち 中枢断端を適当な筋緊張をもって縫合する 症例 1 35 歳 男性 農業従事 H14 年 2 月中旬 サッカー中受傷 2/12 他医にてアキレス腱縫合術受けるもその後何度かアキレス腱部を伸ばし つま先立ち困難なことに気づき H14 年 5/8 当科受診 左アキレス腱部陥凹触知せず 左 Thompson s test( ー ) だが左片足つま先立ち不能 以上から断裂と診断し 6/4 手術施行 術後尖足位膝下ギプス施行 10 日後 ヒール付きギプスに巻き替え全荷重開始 合計 6 週間ギプス固定 H23 年 2 月現在 左片足でのつま先立ち可能 走行可能である 症例 2 32 歳 男性 土木作業員 H22 年 5/12 サッカーにて受傷 5/14 当科にてアキレス腱縫合術施行 術後 4 週間膝下ギプス固定 7/11 滑って左下腿後面痛出現 7/12 受診時アキレス腱部陥凹なし 7/26MRI にて再断裂確認 7/28 手術 術後膝下尖足位ギプス施行 1 週後ヒール付きギプスに巻き替え合計 6 週間ギプス固定 H23,2/3 現在 左片足でのつま先立ち可能 下腿最大周径左右差は 0.8 cm ジョギング可能である 症例 3 56 歳 男性 焼鳥屋 H17 年 10/10 10 km マラソン出場 その後アキレス腱部周辺の疼痛持続 走行困難となる H18 年 1/30 当科受診 Thompson s test(+) 下腿最大周径差は 3 cm 右片足つま先立ち不能 2/22 手術 その後表在性創感染続発するも創洗浄し治癒 術後足関節底屈 20 膝下ギプス 4.5 週間とシーネ固定 3.5 週間施行後患肢全荷重開始 H23 年,2/3 調査時 下腿最大周径差は 2.4 cm 右足関節底屈 28 と制限あるも 右片足でのつま先立ちとジョギング可能である
主題 (8) アキレス腱術後に両側とも感染を生じ難治した 1 例 市立札幌病院整形外科平地一彦 佐久間隆 奥村潤一郎 平山光久 中山央 高橋敬介 高橋清彦 はじめに ギリシャ神話ではアキレスは無敵の戦士 しかしトロイの王子パリスに矢で踵を撃ちぬかれて落命し アキレス腱は致命的な弱点の代名詞となった アキレス腱断裂の治療で苦労した経験を報告する 症例 初診時 49 歳男性 ( 内科医 ) 既往にコントロール不良の糖尿病がある H16 年 7 月に散歩中に右アキレス腱を部分断裂し 8 月に階段を踏み外し完全断裂した 受傷後 53 日目に Bosworth 法にてアキレス腱を再建するも 術後 4 週で創が離開し白色ブ菌感染を併発した 創洗浄デブリドメンののち腱が 5cm 皮膚は 2 6cm の欠損となった 11 月に薄筋移植によるアキレス腱再建と lateral supramalleolar flap で創部を被覆した 皮弁は生着したが 創が完全治癒したのは最終手術後から 3 ヵ月を要した 慎重に後療法を行いアキレス腱は機能障害なく治癒した 53 歳時の H21 年スノーボード中に反対側の左アキレス腱の完全断裂を受傷した 受傷 3 日目に Marti 法によるアキレス腱縫合を行った 通常より遠位の骨付着部での変性断裂で腱は脆弱であった 右側の教訓から愛護的にアキレス腱を修復し 術後管理を厳密に行ったが ピンホールの創治癒不全からカンジダ感染を生じ 左側も創が離開した 受傷後 3 ヵ月で Sural artery flap を用いた閉創を行った 創の完全治癒まで 1 ヵ月を要した 術後 1 年半を経過した現在 感染再燃傾向はなく 跛行 疼痛 ROM 制限なくアキレス腱の機能障害もない 皮弁周囲の肥厚性瘢痕に軟膏塗布やサポーターが時々必要である 考察 今回の治療ではコントール不良な糖尿病が最大の敗因であった 新鮮外傷の左側アキレス腱断裂では保存治療も積極的に検討すべきであった 手術に至るには糖尿病管理を厳密にすることが原則であるが 医療者でこの点がきわめて曖昧であった 感染を伴うアキレス腱部の軟部組織欠損は VAC や湿潤療法は困難と思われ 皮弁手術が有効であったが 皮弁という武器を振り上げる前に致命的弱点の糖尿病を管理することが重要であった
主題 (9) 北海道のアキレス腱断裂治療 ( アンケートの結果より ) 富良野協会病院矢倉幸久 目的 アキレス腱断裂は 非常に発生頻度の高いスポーツ外傷であり 整形外科医が日常よく遭遇する疾患である 本会では平成 8 年 10 月の第 84 回研究会 ( 堀修司会長 ) 以来主題として取り上げていなかった 北海道の整形外科医がアキレス腱断裂治療をどのように行っているのか また 17 年前と比較してどのように変化しているのか さらに 整形外科医自身がアキレス腱断裂を受傷した際に治療法をどう選択されるのか 現状についてアンケートによる調査を行った 方法 第 123 回北海道整形外科外傷研究会開催に当たり 研究会会員約 250 名に演題募集とともにアンケート用紙を配布し 郵送で事務局 または演者まで直接返送していただいた 結果 91 名の会員から回答を得た 新鮮アキレス腱断裂の治療について 保存的治療中心 16 名 (17.6%) 手術的治療中心 68 名 (71.4%) 症例により両方 という回答が10 名 (11.0%) であった 回答数で一番多かったものは 手術的治療 入院 局所麻酔 Kirchmayer 法 であった 先生ご自身がアキレス腱断裂を受傷されました ご選択される治療方法は? に対して 保存的治療 27 名 (29.7%) 手術 60 名 (65.9%) その時の状況による 2 名 未記入 1 名であった 2 名の方が自らの治療体験を紹介された アンケート結果の詳細については 口演で報告する
主題 (10) Marti 法を用いた両側アキレス腱断裂同時手術 (1 例報告 ) 江戸川病院整形外科 高畑智嗣 まれな両側アキレス腱皮下断裂同時手術を経験したので治療経過を報告する 症例は 32 歳男性, 当院の初期研修医である まず左アキレス腱を皮下断裂した 保存療法を選択し, 休まずに研修を続けた 5 日後. 右脚でケンケンした際に右アキレス腱を皮下断裂した 早期社会復帰を目的として, 両側アキレス腱の同時手術を施行した 左受傷後 7 日 ( 右受傷後 2 日 ) で手術施行 両側ともに Marti 法 (triple bundle 法 ) で縫合した 術後 1 日. 自動最大背屈位で下腿キャスト固定し, その足背部を除去して, 自動背屈運動の励行を指示した 術後 7 日. 両側とも足関節背屈 3 を達成したため, その角度で下腿キャストを新調し, 全荷重を許可して歩行を促した 術後 9 日. 短距離なら杖無しで歩行可能となり, 病室より研修に復帰した 術後 10 日. 自宅へ退院 術後 2 週. 舟底付き下腿装具に変更, 足関節は固定とした 術後 4 週. 両下腿装具を除去 足関節自動背屈は右 25, 左 20 であった 術後 7 週. 足関節他動背屈は左右とも 35 であった 術後 6 ヵ月の現在, 片脚つま先立ち可能で, 階段を駆け上ることも出来る 考察 両側アキレス腱断裂の報告は少なく, 演者が渉猟し得た日本語文献は 15 例であった それらの後療法は, 片側断裂よりも慎重に行われていた しかし今回の症例の後療法は,Marti 法の片側例と同様とした Marti 法は side to side suture なので縫合部の強度回復が早いと思われる 縫合による腱の腫大がわずかなのでパラテノンで完全に被覆出来る場合が多く, 癒着が生じにくい 加えて縫合による腱短縮がわずかなので, 足関節背屈の回復が早い さらに, 術後に縫合部で延長しても腱実質同士の接触が保たれる しかし, 手術手技は煩雑で時間がかかり, 手術創が長いのが欠点である
教育研修講演 アキレス腱断裂について 関東労災病院スポーツ整形外科部長内山英司先生