Microsoft Word - 優秀作品(土地)

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12. 地価公示は 土地鑑定委員会が 毎年 1 回 2 人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め その結果を審 査し 必要な調整を行って 標準地の正常な価格を判定し これを公示するものである 13. 不動産鑑定士は 土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては 近傍類地の取 引価格から

路線価図

11総法不審第120号

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す ) 5 地区 地域内の各筆の評価 ( 一画地の宅地ごとに評価額を算出します < 土地に対する課税 > (1) 評価のしくみ固定資産評価基準によって 地目別に定められた評価方法により評価します 平成 6 年度の評価替えから 宅地の評価は 地価公示価格の 7 割を目途に均衡化 適正化が図られています

所得税確定申告セミナー

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

相続財産の評価P64~75

~ 都市計画道路予定地の評価 ~ 今回の豆知識では 我々不動産鑑定士が日常の評価業務において良く目にする 都市計画 道路予定地 の評価について取り上げてみたいと思います 1. 都市計画道路とは? 都市計画法では 道路 公園 下水道処理施設等の施設 ( 都市施設 ) のうち必要なものを都市計画に定める

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

第 5 章 N

高島市職員措置請求に係る監査の結果について 第 1 請求の受付 1 請求書の提出平成 29 年 9 月 28 日 2 請求人 3 請求の要旨 ( 高島市職員措置請求書 の原文のまま記載) 1 請求の要旨高島市長による平成 29 年度の固定資産税の賦課において 別紙の固定資産について 家屋の未評価によ

3-3 新旧対照表(条例の審査基準).rtf

11総法不審第120号

11総法不審第120号

Q&A 〇税制度 Q1 生産緑地地区の指定を受けると 固定資産税は農地評価と聞いていますが 都市計画税はどうでしょうか A1 固定資産税 都市計画税が農地評価 農地課税となります Q2 主たる従事者の死亡や故障等により 生産緑地地区の指定から 30 年経過せずに指定が解除された場合 固定資産税を遡っ

目 次 1 固定資産税と固定資産税評価 1 1 固定資産税とは 1 2 固定資産税の課税のしくみ 2 (1) 固定資産税を納める人 ( 納税義務者 ) 2 (2) 税額の計算 2 2 固定資産税評価のあらまし 1 固定資産税評価の意義 2 固定資産税評価によって求める価格とは 3 固定資産の価格を求

1 天神 5 丁目本件土地及び状況類似地域 天神 5 丁目 本件土地 1 状況類似地域 標準宅地

固定資産税の課税のしくみ < 評価額と課税標準額と税額の推移 > ( 土地編 ) 課税標準額 評価額 税 額 なぜ, 地価が下落しているのに, 土地の固定資産税が上昇するの!? 2 なぜ, 平成 6 年評価額が急激に上昇したの!? 3 < 公的土地評価相互の均衡と適正化 > < 地価公示価格の一定割

[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

処分済み

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第1章 開発許可制度の概要

等調整都市計画税額が 当該商業地等に係る当該年度分の都市計画税の課税標準となるべき価格に 10 分の 6 を乗じて得た額 ( 当該商業地等が当該年度分の固定資産税について法第 349 条の 3( 第 20 項を除く ) 又は法附則第 15 条から第 15 条の 3 までの規定の適用を受ける商業地等で

税理士法人チェスター【紹介】

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市税のしおり2016表紙再3

宅地 雑種地 田に土盛りをして畑とした土地牧草栽培地 農業用施設の内部で用水を利用しないで耕作する土地 家屋建築用地として造成され 道路 上下水道 公共施設等を備えている土地建物に付随する広場 庭園 通路等に過ぎないと認められる土地 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場用地 家屋の敷地内にある

11総法不審第120号

第 3 章内部統制報告制度 第 3 節 全社的な決算 財務報告プロセスの評価について 1 総論 ⑴ 決算 財務報告プロセスとは決算 財務報告プロセスは 実務上の取扱いにおいて 以下のように定義づけされています 決算 財務報告プロセスは 主として経理部門が担当する月次の合計残高試算表の作成 個別財務諸

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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『知っておきたい 不動産所有コストの中身と抑えるコツ』

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電子メール テンプレート (標準)

一団地認定の職権取消し手続きの明確化について < 参考 > 建築基準法第 86 条 ( 一団地認定 ) の実績件数 2,200 ( 件 ) 年度別 ( 住宅系のみ ) S29 年度 ~H26 年度 実績件数合計 16,250 件 用途 合計 ( 件 ) 全体 17,764 住宅系用途 16,250

Q3 家屋の評価額が変わっていないのはなぜですか 家屋の評価額は 評価の時点において 全く同一の建物を同じ場所に新築した場合に必要とされる建築費 ( 再建築価格といいます ) に 経過年数による減価を考慮して求めることとなっています この評価額は 3 年ごとに見直し ( 評価替えといいます ) ます

計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

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販売用不動産の時価評価の基準(案)と論点

住民監査請求監査結果 第 1 請求の収受 1 請求人 ( 省略 ) 2 請求書の受付日平成 28 年 8 月 16 日 3 請求の内容請求人から提出された ( 省略 ) 建物への固定資産税の賦課において 公金の賦課を怠る事実に該当する福井市職員措置請求 ( 住民監査請求 ) 書 の要旨及び事実を証す

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Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

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生産緑地制度の概要 市街化区域内の農地で 良好な生活環境の確保に相当の効用があり 公共施設等の敷地に供する用地として適している 500 m2以上 *1 の農地を都市計画に定め 建築行為や宅地の造成を許可制により規制し 都市農地の計画的な保全を図る 市街化区域農地は宅地並み課税がされるのに対し 生産緑

平成  年(オ)第  号

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

災害被害者に対する個人市民税の減免について 質問 1 当市では6 月 10 日に地震が発生し 大きな被害が生じました 地方税法第 323 条の規定により 被災者に対して個人市民税を減免したいと考えています (6 月 20 日時点と仮定 ) 当市の個人市民税 ( 普通徴収 ) の納期は 6 月 (1

1 目的 建築基準法第 68 条の 5 の 5 第 1 項及び第 2 項に基づく認定に関する基準 ( 月島地区 ) 平成 26 年 6 月 9 日 26 中都建第 115 号 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 68 条の 5 の 5 第 1 項 及び第 2

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

日本基準基礎講座 有形固定資産

平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

表1-表4-2

総務省が所管する地方税法ではなく 財務省が所管する国有財産法の適用を受けるとのことであり 実施機関の本件決定は失当である (2) 本件は 国税庁からの教示による公文書公開請求であり これを実施機関が非公開決定するとは言語道断である (3) 尖閣諸島の国有化は 日本と中国の外交問題に発展していることも

あるが 人が通り抜けられる状態となっており 効用の増加が認められると判断しているので 1% を加算している 公法上の規制による減価の1% について 用途地域が第一種低層住居専用地域で 建蔽率の差が10% 容積率の差が20% こちらを勘案して1% の減価としている その他減価の整地の3% について 整

三ケ島工業団地周辺地区 第一回勉強会

#210★祝7500【H30税法対策】「登録免許税ほか」優先暗記30【宅建動画の渋谷会】佐伯竜PDF

はじめに 1 第 1 章土砂災害警戒区域の概要と現状分析 1 近年の土砂災害状況 2 2 土砂災害警戒区域 土砂災害特別警戒区域について 4 3 大阪府内の指定状況等について 6 4 土砂災害警戒区域等指定に伴う不動産価格への影響 8 第 2 章固定資産税評価について 1 固定資産税の概要 10 ⑴

借地権及び法定地上権の評価 ( 競売編 ) 出典 : 株式会社判例タイムズ出版 別冊判例タイムズ第 30 号 借地権の評価 第 1 意義 借地権とは 建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう ( 借地法 1 条 借地 借家法 2 条 1 号 ) 第 2 評価方法 借地権の評価は 建付地価格に

第 1 基本的事項 1 業務内容についての順守事項本業務を行う不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 ( 以下 不動産鑑定士等 という ) は 本業務が単に個別地点について行う鑑定評価と異なり 同一価格時点で大量に行う鑑定評価であり 特に面的な価格の均衡が求められる固定資産税評価のための基礎資料を作成するも

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相続対策としての土地有効活用

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農地中間管理機構 ( 仮称 ) の制度の骨格 ( 案 ) 資料 農地中間管理機構の指定都道府県のコントロールの下に適切に構造改革 生産コスト引下げを推進するため 都道府県段階に設置する 1 都道府県知事は 農地中間管理事業を公平かつ適正に行うことができる法人 ( 地方公共団体の第 3セク

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

地域経済分析システム () の表示内容 ヒートマップでは 表示する種類を指定する で選択している取引価格 ( 取引面積 mあたり ) が高い地域ほど濃い色で表示されます 全国を表示する を選択すると 日本全国の地図が表示されます 都道府県単位で表示する を選択すると 指定地域 で選択している都道府県

本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

和泉市の宅地開発における制度

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私立幼稚園の新制度への円滑移行について

◆JREI固定インフォ No17◆◆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

やさしい税金教室

又は法人が死亡又は消滅している場合の現所有者に係る情報は 所有者が提出する現所有者申告書等により把握する 入手した新規の納税義務者及び異動情報については 各市税事務所の職員が端末機により随時入力し 固定資産税 ( 土地 家屋 ) システムで管理する 2 土地台帳及び家屋台帳情報の管理 ( 随時 )

LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます 平成 29 年度不動産鑑定士論文式試験 ズバリ的中 鑑定理論 論文問題 問題 1 (50 点 ) 移行地に関する次の各問に答えなさい (1) 不動産の種別における移行地の定義について 見込地と比較した上で 説明しなさい (2) 移行地の個別的要因に

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

内部統制ガイドラインについて 資料

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ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

3. 同意要件との関係宿泊税について 不同意要件に該当する事由があるかどうか検討する (1) 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし かつ 住民の負担が著しく過重となること 1 課税標準宿泊行為に関連して課税される既存の税目としては 消費税及び地方消費税がある 宿泊税は宿泊者の担税力に着目して宿泊数

◆JREI固定インフォ No9◆◆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

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ており 土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていることから 土地の形状 道路との位置関係等に基づく個別的要因に係る補正 すなわち評価通達 15(( 奥行価格補正 )) から 20(( 不整形地の評価 )) まで及び 20-3(( 無道路地の評価 )) から 20-6(( 容積率の異な

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審 査 請 求 事 務 取 扱 要 領

Transcription:

平成 28 年度政策 実務研修 ( JAMP 共同実施研修 ) レポート優秀作 家屋建築の困難な土地に対する所要の補正について 大阪府豊中市財務部固定資産税課縣和憲 1. はじめに間口が 2m 未満の土地は 建築基準法上 市街化区域内であっても家屋の建築や建て替え ( 以下 再建築 とする ) ができないため 間口 2m 以上の土地と比較して 一般的にその価格水準は低位となる 固定資産評価基準の画地計算法における間口狭小補正は 間口が狭いという画地の形状のみに着目した補正であり 建築制限による減価が反映されるものではないため 個別の画地についてこれを補正するには 市町村長の定める所要の補正による必要がある 1 本研修にて 全国 200 以上の市町村が建築基準法上の規制等にかかる所要の補正を実施している 2 ことを知った 当市でも同様の補正を設けており その適用事例が増加していることから 本論では 他団体の設定する補正との比較によって 当市の補正の性質とその課題について検討したい 2. 豊中市の評価補正当市評価要領においては 建築基準法上家屋の建築または再建築ができない土地に対し 所要の補正として 建築困難補正 を設けており 接道状況および利用状況等を勘案し 事情聴取を行った上で減価が必要と認められる場合には 0.90 ~0.70 の補正率を適用している その場合分けと補正率は 下表の通りである なお ここでいう 間口 とは 当該土地に家屋を建築または再建築する場合 建築確認申請時に敷地設定されうる部分の接道面の辺長を想定したものであり 現地調査および建築部局への調査により確認される ( 以下 現況間口 とする ) 1 固定資産税務研究会編 固定資産税実務提要 p.2089-10 2 平成 27 年 5 月総務省調 その他の補正項目及び補正方法等に関する調 1

画地現況 間口 2m 他人地利用更地 補正率 以上 未満 していない 1.00 している 0.90 でない 0.80 である 0.70 表を読み替えると 場合分けと対応する補正率は次のように表される a. 現況間口が 2m 以上で 他人地を利用している土地 0.90 b. 現況間口が 2m 未満で 現に建物が存在する土地 0.80 c. 現況間口が 2m 未満で 現況が更地である土地 0.70 これらをさらに具体化すると a では 現況において 2m 以上の間口は確保されているものの 建築確認申請時に他人の所有地を含めた敷地設定をしなければ家屋の建築ができないという状況の土地等が想定されている b および c では 現況において間口が 2m 未満であり 物理的に間口が広がらない限りは家屋の建築ができないという状況の土地について b では現に家屋の敷地の用に供しているが 再建築不可である場合 c では現況が更地であり宅地化の見込みのない場合が想定されている 3. 他団体の評価補正同様の補正の実施状況について 研修期間中に他団体担当者の方々に取材を行った ( 全 15 団体 ) 結果は次の通りである 1 定率を適用するもの 4 団体 A 市定率 0.90 B 市定率 0.80 C 市定率 0.80 D 市定率 0.70 2 2.0m 未満 の区分が追加された間口狭小補正率を適用するもの 3 団体 E 市間口 2.0m 未満 0.80( すべての用途地区 ) F 市間口 2.0m 未満 0.80( すべての用途地区 ) 2

G 市間口 2.0m 未満 0.75( すべての用途地区 ) 3 場合に応じ 2 段階の補正率のいずれかを適用するもの 2 団体 H 市現に建物の敷地の用に供している場合は0.85 更地の場合は0.70 I 市現に建物の敷地の用に供している場合は0.90 更地の場合は0.70 4 該当する所要の補正なし 6 団体 このうち2については 冒頭で述べたように補正としては異なる性格のものであり 建築基準法上の規制を直接的に補正するものではないが 固定資産評価基準の間口狭小補正率の附表に区分を追加しているということは 間口 2.0m 未満の土地に対して補正すべき特段の減価要素を認めているということであり その要素には建築基準法上の規制が含まれているとの解釈が可能であるため 1の類型と見なしてここに挙げた 結果としては 15 団体中 9 団体が当該内容の補正を設定しており 1 2のように定率を設定している自治体は7 団体 3のように場合分けに応じて複数段階の補正率を設定している団体は2 団体であった また補正率については すべての団体が0.90~0.70の範囲内であった 4. 考察補正の適用条件と補正率のうち 後者については 当市と他団体との間に大きな差異は見られなかったこと 評価基準における無道路地補正 ( 下限 0.60) との均衡 3 という観点からも妥当性について特段の問題点はみられないことから 本論では主に前者 補正の適用条件について考察を行う 前段で示した類型のうち 当市のように具体的な土地の状況によって指定された場合分けに応じた補正率を適用する団体は 今回の調査では3の2 団体に留まったが そのいずれも 再建築不可の土地であっても 現に建物の敷地の用に供している場合は 当該地が更地である場合とは異なる補正率を適用するという対応であり 当市と共通するものであった これは 当該地が現に宅地としての効用 3 固定資産税務研究会編 固定資産税実務提要 p.2089-10 3

を果たしており 建て替えは不可能であってもリフォーム等で宅地としての効用を維持することが可能であることに着目し 宅地化の見込みがなく有効利用可能性の面で劣る更地との区別化を意図するものであると考えられる ちなみに 今回取材を行った団体の中には 当市 建築困難補正 のもつ 現況間口 の考え方を採用している団体は他になく 本論 2のaで示した 現況間口が2m 以上で 他人地を利用している土地 という場合分けは やや独自性の高いものといえるかもしれない しかし当市のこの3 種類の場合分けは 土地所有者が実際に家屋の建築を企図した際 生じる 困難 の程度によって区分することで 上記同様 土地の実情を正確に評価に反映しようと意図するものであるといえる このように場合分けによって細分化された補正は 個別の土地の状況を評価に反映させることを可能にする また 補正する内容が明瞭であることで 所有者からの理解も得やすいということも長所として挙げられるだろう その反面 このような補正の短所としては 個々の物件について詳細な調査を要するため その認定が容易でなく 実務担当者に大きな負担がかかるということが挙げられる 一方 前段の1 2のように 個別の土地の状況に関わらず 間口が2.0m 未満のものに定率の補正を適用するものについては 大きな長所としてその認定が容易なことが挙げられる 特に2の間口狭小補正率を適用するものに関しては 課税システムに通常通りに間口を入力すれば補正率が自動計算される仕組みであろうから 実務担当者が個々の物件について 家屋の建築や再建築ができない ことに注意を払う必要がなく 画地の正確な間口の捕捉ができている限り 論理的に認定もれは発生しないことになる しかしその反面 画一的な補正であることは否めず 個別の土地の状況を評価に反映させることは難しい ここに浮かび上がる構図としては 所要の補正はその適用条件が場合分けによって細分化されているほど 個々の物件の状況をより実態に沿った 明瞭な形で評価に反映させることができるが 認定作業が煩雑化し 実務担当者への負担は増大するのに対し 逆に適用条件がシンプルであるほど 認定が容易かつ確実であり 担当者への負担も軽減されるが 個々の物件の状況を評価に反映させにくい というものである この考察のもと 当市 建築困難補正 の客観的な位置付けを行うならば 当補正は明らかに前者の性質をもつものであるといえる その課題へのアプローチ 4

として 物件の間口情報と当補正の相関チェックを実施するなど 認定漏れの可能性を低下させる工夫や 建築部局との情報連携など 実務担当者の負担を軽減する工夫をしながら 個別の土地の状況を詳細に把握し 適切な補正率を適用していくことが望まれるだろう 5. おわりに本研修の講義で 固定資産の適正な時価の算定に不動産鑑定評価価格が導入された平成 6 年以降 各市町村において 所要の補正によって個別の土地に内在する減価要因を逐一評価に反映させようとする向きが強まったこと しかしながらその傾向は大量一括評価を前提とする固定資産評価のコンセプトとは本来的には相容れないところもあるということを学習した 本考察において示した構図は そのような事象を端的に象徴するものであるように思われるが 私は固定資産評価事務に従事する担当者として いずれかの考えに傾斜することなく双方の観点を持ち合わせておき 評価実務のあり方をつねに検証していく姿勢をもって業務にあたっていきたいと思う 5