定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

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今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

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★HP版調整事件解説集h28[043]

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

「高年齢者雇用安定法《のポイント

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平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

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2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

市報2016年3月号-10

3. 継続雇用制度の対象者基準の経過措置 Q3-1: Q3-2: Q3-3: Q3-4: Q3-5: Q3-6: Q3-7: すべての事業主が経過措置により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることができますか 改正高年齢者雇用安定法が施行された時点で労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する

①公表資料本文【ワード軽量化版】11月8日手直し版【1025部長レク⑤後】平成30年61本文(元データあり・数値1004版)

契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

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1. 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴う留意点 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い 厚生労働省より Q&A が公表されています 今回はこの Q&A に記載があるものについて 参考になると思われるものについてピックアップしてまとめています (1) 継続雇用制度の導入について i. 定年退職者を嘱託やパ

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PPTVIEW

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

た本件諸手当との差額の支払を求め ( 以下, この請求を 本件差額賃金請求 という ),2 予備的に, 不法行為に基づき, 上記差額に相当する額の損害賠償を求める ( 以下, この請求を 本件損害賠償請求 という ) などの請求をする事案である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりであ

第 Ⅰ 部本調査研究の背景と目的 第 1 節雇用確保措置の義務化と定着 1. 雇用確保措置の義務化 1990 年代後半になると 少子高齢化などを背景として 希望者全員が その意欲 能力に応じて65 歳まで働くことができる制度を普及することが 政策目標として掲げられた 高年齢者雇用安定法もこの動きを受

違反する 労働契約法 20 条 長澤運輸事件最高裁 ( 平成 30 年 6 月 1 日判決 ) 速報 2346 号定年後再雇用の嘱託者につき精勤手当 超勤手当を除く賃金項目は労働契約法 20 条に違反しないとされた例 定年後 1 年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック乗務員の一審原告らが 定年前

Microsoft Word - 雇用継続制度

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

5. 退職一時金に係る就業規則のとりまとめ 退職一時金に係る就業規則の提供があった企業について 退職一時金制度の状況をとりまとめた なお 提供された就業規則を分析し 単純に集計したものであり 母集団に復元するなどの統計的な処理は行っていない 退職一時金の支給要件における勤続年数 退職一時金を支給する

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

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問題の背景 高齢者を取り巻く状況の変化 少子高齢化の急速な進展 2015 年までの労働力人口の減少 厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ 少なくとも 年金開始年齢までは働くことのできる 社会 制度づくり ( 企業への負担 ) 会社にとっての問題点 そしてベストな対策対策が必要に!! 2

26公表用 栃木局版(グラフあり)(最終版)

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

基発第       号

第36号

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

みずほインサイト 政策 2013 年 2 月 20 日 希望者全員を 65 歳まで雇用義務化高齢者が活躍できる職場の創設と人材育成が課題 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 年 4 月 1 日に高年齢者雇用安

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として採用するものとする 第 2 条の3 前条に定めるほか 職員就業規則第 11 条第 1 項により退職 ( 以下 定年退職という ) した者であって 退職後引き続き研究所以外の機関 ( 以下 再就職先 という ) において勤務する者 ( 定年退職後 任期付職員就業規則または契約職員就業規則の適用を

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

長澤運輸事件(東京地判平成28年11月2日)について

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

務が他の職種の職務と明確な差異がある場合には 解雇回避努力の内容として 配置転換や職務転換に限られず 退職金の上乗せ 再就職支援等をもって解雇回避努力を尽くしたとされる場合があり 他方 限定された職務が高度な専門性や高い職位を伴わない場合 あるいは当該職務が他の職種の職務と差異が小さい場合には 解雇

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

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報酬改定(処遇改善加算・処遇改善特別加算)

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均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

審議するものとする 2 前項の審議は 当該任期付職員の在任中の勤務態度 業績等の評価及び無期労働契約に転換した場合に当該任期付職員に係る退職日までの人件費の当該部局における措置方法について行うものとする 3 教授会等は 第 1 項の審議に当たり 必要に応じて 確認書類の要求 対象者への面接等の措置を

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

事業活動の縮小に伴い雇用調整を行った事業主の方への給付金

I 事案の概要 本件は 東証一部上場企業の物流大手である株式会社ハマキョウレックス ( 以下 被告 被控訴人 又は 上告人 といいます ) との間で有期雇用契約 1 を締結している契約社員 ( 以下 原告 控訴人 又は 被上告人 といいます ) が 以下に掲げる正社員と契約社員との間の労働条件 (

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無期契約職員就業規則

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平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

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労働相談とはなにか

9( 以下, 併せて 上告人 X1ら という ) は, 平成 19 年 9 月 30 日まで, 旧公社の非常勤職員であったが, 同年 10 月 1 日, 被上告人との間で有期労働契約を締結して, これを7 回から9 回更新し, 上告人 X1, 同 X2, 同 X3, 同 X5, 同 X6 及び同 X

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

(1) 第 1 無期転換ルールとは? 無期転換ルールの目的 Q 1 平成 25 年 4 月 1 日に施行された 無期転換ルール とは どういうもの ですか? A 1 無期転換ルール とは 有期労働契約が反復更新されて5 年を超える場合には 当該契約の初日から末日までの間に労働者が使用者に期間の定めの

第 50 号 2016 年 10 月 4 日 企業年金業務室 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大及び厚生年金の標準報酬月額の下限拡大に伴う厚生年金基金への影響について 平成 28 年 9 月 30 日付で厚生労働省年金局から発出された通知 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能

JILPT 高齢者の雇用 採用に関する調査結果 (2008) の概要 高齢者の雇用 採用に関する調査 (2008 年 8-9 月実施 ) 高年齢者雇用関連の法制度が整備される中で 企業の高齢者の雇用や採用に関する最近の取組等を把握 全国の常用雇用 50 人以上の民営企業 社を対象 有効回

2. 様式の改正については平成 25 年 4 月 1 日付けで行う予定としているが 4 月以降も当面の間は改正前の様式を引き続きご利用できること 3. 改正後の新様式で届出を行う場合の記載方法等については別添 1 改正前の様式で届出を行う場合の記載方法については別添 2のとおりリーフレットを作成した

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

2019-touren1-1

平成  年(オ)第  号

支給開始日以前に カ月の標準報酬月額がある場合 06 年 月 日まで 06 年 4 月 日以降 休んだ日の標準報酬月額 0 日 / 支給開始日以前の継続した カ月間の各月の標準報酬月額の平均額 0 日 / ( 例 ) 支給開始日以前の継続した カ月間に 標準報酬月額が 6 万円の月が カ月 0 万円

Microsoft PowerPoint - 02 別添 パンフレット (3)

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資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

国際自動車事件 判例解説 1 事件の概要 [ 1 ] 事件の要旨本件は Y 社に雇用され タクシー乗務員として勤務していたXらが 歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する金額を控除する旨を定めるY 社の賃金規則上の定めが無効であり Y 社は 控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払い義務を負う

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知って役立つ労働法

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特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

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本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

改正労働基準法

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筑紫野市学童保育連絡協議会学童クラブ指導員就業規則

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平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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除されたものを除く ) について 1 本件は, 被上告人を定年退職した後に, 期間の定めのある労働契約 ( 以下 有期労働契約 という ) を被上告人と締結して就労している上告人らが, 期間の定めのない労働契約 ( 以下 無期労働契約 という ) を被上告人と締結している従業員との間に, 労働契約法

あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか

07体制届留意事項(就労継続支援A型)

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図 1 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 65 歳 生年月日 60 歳到達年度 特別支給の 男性 S24.4.2~S 平成 21~24 年度 女性 S29.4.2~S 平成 26~29 年度 男性 S28.4.2~S 女性 S33.4.2~S35.

2016年 弾丸メールセミナー № 33 雇用保険法 高年齢再就職給付金

Transcription:

Q22. トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくる 1 高年齢者雇用確保措置の概要高年法 9 条 1 項は,65 歳未満の定年の定めをしている事業主に対し, その雇用する高年齢者の65 歳までの安定した雇用を確保するため, 1 定年の引上げ 2 継続雇用制度 ( 現に雇用している高年齢者が希望するときは, 当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度 ) の導入 3 定年の定めの廃止のいずれかの措置 ( 高年齢者雇用確保措置 ) を講じなければならないと規定しています 2 高年齢者雇用確保措置の内容厚生労働省の 今後の高年齢者雇用に関する研究会 が取りまとめた 今後の高年齢者雇用に関する研究会報告書 によると, 平成 22(2010) 年において, 雇用確保措置を導入している企業の割合は, 全企業の96.6% であり, その内訳は以下のとおりです 1 定年の引上げの措置を講じた企業の割合 13.9% 2 継続雇用制度を導入した企業の割合 83.3% 3 定年の定めを廃止した企業の割合 2.8% 3 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準改正前の高年法 9 条 2 項は, 過半数組合又は過半数代表者との間の書面による協定により,2 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることができる旨規 - 1 -

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準については, 平成 37 年 3 月 31 日までの間は, 段階的に基準の対象となる年齢が以下のとおり引き上げられるものの, なお効力を有するとされています 平成 25 年 4 月 1 日 ~ 平成 28 年 3 月 31 日 61 歳以上が対象平成 28 年 4 月 1 日 ~ 平成 31 年 3 月 31 日 62 歳以上が対象平成 31 年 4 月 1 日 ~ 平成 34 年 3 月 31 日 63 歳以上が対象平成 34 年 4 月 1 日 ~ 平成 37 年 3 月 31 日 64 歳以上が対象継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は具体的で客観的なものである必要があり, トラブルが多い社員は継続雇用の対象とはならないといった抽象的な基準を定めたのでは, 公共職業安定所において, 必要な報告徴収が行われるとともに, 助言 指導, 勧告の対象となる可能性があり, 勧告を受けた者がこれに従わない場合は企業名が公表される可能性もあります ( 高年法 10 条 ) 健康状態, 出勤率, 懲戒処分歴の有無, 勤務成績等の客観的基準を定めるべきです JILPT 高齢者の雇用 採用に関する調査 (2008) によると, 実際の継続雇用制度の基準の内容としては, 以下のようなものが多くなっています 1 健康上支障がないこと (91.1%) 2 働く意思 意欲があること (90.2%) 3 出勤率, 勤務態度 (66.5%) - 2 -

4 会社が提示する職務内容に合意できること (53.2%) 5 一定の業績評価 (50.4%) 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者が, 継続雇用制度の対象者に係る基準を労使協定で定めた場合には, 就業規則の絶対的必要記載事項である 退職に関する事項 に該当することとなるため, 労基法 89 条に定めるところにより, 労使協定により基準を策定した旨を就業規則に定め, 就業規則の変更を管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります 4 高年法 9 条の私法的効力高年法 9 条には私法的効力がない ( 民事訴訟で継続雇用を請求する根拠にならない ) と一般に考えられていますが, 就業規則に継続雇用の条件が定められていればそれが労働契約の内容となり, 私法上の効力が生じることになります したがって, 就業規則に規定された継続雇用の条件が満たされている場合は, 高年齢者は, 就業規則に基づき, 継続雇用を請求できることになります 就業規則に定められた継続雇用の要件を満たしている定年退職者の継続雇用を拒否した場合, 会社は損害賠償義務を負う可能性があることに争いはありませんが, 裁判例の中には, 解雇権濫用法理の類推などにより, 継続雇用自体が認められるとするものもあります 津田電気計器事件最高裁第一小法廷平成 24 年 11 月 29 日判決は, 定年に達した後引き続き1 年間の嘱託雇用契約により雇用されていた労働者の継続雇用に関し, 東芝柳町工場事件最高裁判決, 日立メディコ事件最高裁判決を参照判例として引用して, 本件規程所定の継続雇用基準を満たすものであったから, 被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方, 上告人において被上告人につき上記の継続雇用基準を満たしてい - 3 -

ないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは, 他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上, 客観的に合理的な理由を欠き, 社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない したがって, 本件の前記事実関係等の下においては, 前記の法の趣旨等に鑑み, 上告人と被上告人との間に, 嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり, その期限や賃金, 労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される と判示しています この最高裁判決は, 定年退職後の嘱託社員を継続雇用しなかった事案に関するものであり, 正社員が定年退職した直後に継続雇用されなかった事案に関するものではありませんが, 正社員が定年退職した直後に継続雇用されなかった事案についても同様の判断がなされる可能性もあり, 十分な検討が必要です 5 希望者全員を継続雇用するという選択肢トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくることに対する対策としては, 1 改正法施行前から継続雇用制度を採用していた会社で 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準 を維持する 2 再雇用自体は認めた上で, トラブルが生じにくい業務を担当させる ( 接客やチームワークが必要な仕事から外す等 ) ことや, 賃金の額を低く抑えること等により不都合が生じないようにすること等が考えられます 継続雇用制度を維持した上で, 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準 を定める方法によりトラブルの多い社員の継続雇用を阻止することができればそれに - 4 -

越したことはありませんが, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みは原則として廃止されています 改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準については, 平成 37 年 3 月 31 日までの間は, 段階的に基準の対象となる年齢が引き上げられながらもなお効力を有するとされていますが, 例外的制度であるという位置づけは否めません また, 基準を適用することによる継続雇用拒否は, 紛争を誘発しがちです 高年齢者雇用確保措置が義務付けられた主な趣旨が年金支給開始年齢引き上げに合わせた雇用対策であること, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止される方向に向かっていることからすれば, 原則どおり, 希望者全員を継続雇用するという選択肢もあり得るのではないでしょうか 統計上も, 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準制度により離職した者が定年到達者全体に占める割合は, わずか2.0% に過ぎないとされています ( 今後の高年齢者雇用に関する研究会報告書 ) トラブルが多い点については, トラブルが生じにくい業務を担当させる ( 接客やチームワークが必要な仕事から外す等 ) ことや, 賃金の額を低く抑えること等により対処することも考えられます 改正法では, 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大についても規定されていますので, そういった規定を活用することも考えられるところです 6 継続雇用後の労働条件による調整高年法上, 継続雇用後の賃金等の労働条件については特別の定めがなく, 年金支給開始年齢の65 歳への引上げに伴う安定した雇用機会の確保という同法の目的, 最低賃金法等の強行法規, 公序良俗に反しない限り, 就業規則, 個別労働契約等において - 5 -

自由に定めることができます もっとも, 就業規則で再雇用後の賃金等の労働条件を定めて周知させている場合, それが労働条件となりますから, 再雇用後の労働条件を, 就業規則に定められている労働条件に満たないものにすることはできません 高年齢者雇用確保措置の主な趣旨が, 年金支給開始年齢引上げに合わせた雇用対策, 年金支給開始年齢である65 歳までの安定した雇用機会の確保である以上, 継続雇用後の賃金額に在職老齢年金, 高年齢者雇用継続給付等の公的給付を加算した手取額の合計額が, 従来であれば高年齢者がもらえたはずの年金額と同額以上になるように配慮すべきであり, 時給 1000 円,1 日 8 時間 週 3 日勤務 程度の賃金額にはしておきたいところです 高年法が求めているのは, 継続雇用制度の導入であって, 事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく, 事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば, 労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず, 結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても, 高年法違反となるものではありません したがって, トラブルの多い社員との間で, 再雇用後の労働条件について折り合いがつかず, 結果として継続雇用に至らなかったとしても, それが直ちに問題となるわけではありません 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士藤田進太郎 - 6 -