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海上事故から得られた船員向けの教訓集 ( 第 18 回旗国実施小委員会 ) 1 沈没 貨物倉の浸水とその結果の船舶の損失 天候が悪くなり 南西の風 風力 10 の状況下 土とマンガンを積載した単船倉貨物船が 次の寄港地に向かっていた 船首トリムになっていたため 貨物倉を点検したところ 浸水が確認されたが 浸水箇所は明らかにできなかった ポンプを稼働したが 船舶の喫水の増大を止めることはできなかった 同船は放棄され その後沈没した 明確なことはわからなかったが 浸水は 貨物倉の前方部分若しくは船首端のデッキに溶接されたロープ棚において発生したと考えられる 浸水発見時には 貨物倉の中に 船首トリムとなるほどの水量があった 同船は 水位検出器と警報器を備えていなかった 船体への浸水を早期に発見するため 警報器の設置や測深 横揺れ周期の監視等を行うことの重要性 2 沈没 機関室の浸水とその結果の船舶の損失 機関区域無人化船である洋上補給船 ( 自動船位保持設備搭載 ) において 0350 時 機関室のビルジ警報が鳴った 監視担当の機関士は 床上 70cm の高さまで浸水しているのを発見した 彼は浸水元を特定できなかった 彼は 水を同区画から非常ビルジ吸引管でくみ出そうとしたが 海水管閉鎖弁や非常ビルジ吸引管に達することができなかった 結局 同船は浅瀬に曳航され 砂州上に引き上げられた その後に行われた同船の離礁作業は失敗し 推定全損となった 浸水の主な要因は 空調及び冷蔵に使用される中央補助クーラーへ接続されている海水管系統の 90/10 白銅製スプールピースが電触により損傷したことによることが 潜水士によって見つけられた 1

それは 冷却水系統を保護するための犠牲陽極である鉄パイプの直前に位置していた 当該損傷の原因は 溶接フランジから生じた白銅の特性の変化に加えて 同船が専ら温かく塩分濃度の濃い海域で運航を行っていたことによると推察される 管理者は それぞれの船長が 個々の船舶に合わせて修正することを意図した包括的な緊急時マニュアルを作成していた これは それぞれの緊急事案における特定の責務を割り当てることを含んでいた マニュアルではまた 各月に実行されるべき訓練を 1 年分の表にすることが求められていた しかしながら 同船の計画では この事例において発生した浸水事故を含むような詳細な記述が十分になされていなかった 後の船舶の全損への寄与要因 : 床上 70cm の高さに到達するまでビルジの水位が上がったことに気づかなかったこと 手動で操作する非常ビルジ吸引弁が床下に位置しており 近づきにくかったこと これは無人化された機関区域における SOLAS の要件に反している 浸水発見時 手動で操作する海水吸入弁へ近づきにくかったこと 機関長は事故時 健康上の理由で下船しており 船内には緊急時に必要な対応を効果的に統率し担当する十分な機関室要員がいなかった ビルジ警報装置は定期的に試験されるべきである 5 年ごとの検査でパイプ系統の消耗を確認すべきである一方 検査は絶対に正しいものではなく 構成部品が圧力試験に耐えたとしても その後の腐食は加速して進んでいく事例もある 運航者は 特に腐食が進行しやすい環境で船舶が運航される場合 日常の整備作業計画には 床下のパイプ系統の目視及び非破壊検査 (NDE) を含めるべきである 運航者は 緊急時にその場所を突き止め 操作することができるよう 重要な弁の位置と操作を十分に把握しておくべきである 船舶所有者は 緊急時を含む各船舶に応じた手順を文書化して提供し 実際の試行によって有効性を確認するべきである それらは プラスチックでラミネート加工した指示文書 図で提供すべきである 最小限それらが扱うべき事項は以下のとおり 操作すべきバルブ ( 開閉方法 浸水が起きた際にどれだけ立ち入れるか 遠隔制御か手動か ) 作動させるべきポンプ ( 始動装置の位置及び緊急時の操作 ) 緊急時の対応は 迅速にかつ連携して行われる必要がある 管理者が 適切な緊急時対応計画を作成し その計画された手順が適切に実行されるよう確固たる安全文化を促進することが不可欠である 緊急装置の配置と機能について把握しておくことが必要不可欠である 例えば ビルジの排水 バラスト移動 そして火災についてである 機関士は 最初の乗船時に 重要配管系統を自分自身で実際にたどって確認することが求められるべきである 浸水や火災などの事故を取り扱う実践的な訓練が 定期的に行われる必要がある 2

3. 火災若しくは爆発 不十分な管理による機関室の火災 機関室で火災が発生した 主火災ポンプには 濃い黒煙により近づくことが困難で 乗組員はまず主機を止めて機関室から避難した 燃料供給弁の緊急遮断操作及び機関室換気装置と油ポンプ遠隔停止操作がなされ 緊急火災ポンプを始動させた 乗組員は機関室換気装置のためのダンパーと煙突の通気口を閉じた 彼らは消火用ホースを用意し 機関室のケーシングと煙突の冷却及び空いている機関室の天窓を通じての放水を行った 50 分後 火災により緊急消火ポンプへの電力供給が遮断され 水は消火用ホースから放出されなくなった 結果的に 火災は固定式 CO 2 ガス装置によって消された 入手した証拠によると 最初の火災は 主機の左舷側にある第 3プラットフォームデッキ倉庫への入り口外側から起きた可能性がある 機関室の清掃に使用した油染みた布とウエスは 近くにある焼却炉で燃やす前にいつもそこに保管されていた さらに そこには焼却により生じた灰も 処分前に冷やすため 上部を切断したスチールドラム缶に入れていつも保管されていた 機関室における良好な整理整頓の重要性が 強調されるべきである 安全に避難した後に 固定式 CO 2 ガス装置を早期に使用すること 使用済の油染みた布 ウエス及び焼却灰は 明らかに火災の危険要素であり 安全かつ環境に配慮した形で処分するまでは安全に保管されるべきである 4 火災若しくは爆発 酸素アセチレン トーチの火が物質に着火 乗組員達は マンホールの蓋を取り換えるため 閉鎖空間で作業していた ブラケットを補強している隔壁のため 蓋を開口部に置くことが困難であった 彼らは 酸素アセチレン トーチを使いブラケットの一部を切断することにした トーチの火が隔壁の反対側の機関室倉庫にある物質に着火し その熱により 倉庫にあるキャンプ用ガス容器が爆発した 爆発と火球は 開いたマンホールを通り抜けて 持運び式消火器で火を消そうとしていた機関士が激しい火傷を負った 彼は 船室から現場へまっすぐにやってきており T シャツと短パンの服装であった 3

乗組員は 慎重なリスク分析を実行すること若しくは彼らの意図をすべての関係者 ( 特に船長 ) に知らせることなしに 危険な業務に乗り出した 酸素アセチレン トーチは 可燃物質とガスシリンダーを収納した場所と隔壁で隔てた場所で使用されていたが この収納場所から収納物を作業実施前に運び出すことをせず その場所には火災見張りも配備されていなかった 必要な消火装備は用意されておらず この作業を実行する前にチェックもされなかった 火気使用作業を実行する前はいつもリスク分析を実行する 酸素アセチレン トーチ器具の使用はいつも危険である 閉鎖空間で使われるときには 特に危険である 火気使用作業を実行する際は いつも隔壁の反対側に何があるのか考慮し 十分に状況の説明を受けた火災見張りを配置する すべての必要な火災防止や消火活動用の装備が整い すぐに使える状態であるということを二重確認する 援助の要請にこたえることは非常に称賛されるが 状況を判断し 不必要な危険を冒さない 5 火災若しくは爆発 貨物倉ハッチカバーの上での火気使用作業に起因する貨物倉火災 作業員が 酸素アセチレン熔断機でハッチカバーに溶接されたブラケットを取り除く作業を行っていたとき 不注意で穴が後部貨物倉ハッチカバーに開けられた 結果として 火花と熔解金属が貨物倉にしまわれていた貨物パレットの上に落ちたとき 貨物倉内で火災が起きた 乗組員は 固定式炭酸ガス及び固定式高膨張泡消火装置による船倉の消火を試みたが 失敗した 洋上補給船の水射機を使用して 同貨物倉に約 700 トンの海水を送り 火災は最終的に消火された 貨物倉ハッチカバーから留め具を外していた作業員は 英語を読むことができず それゆえ同船の安全管理システムに従って火気使用作業許可が必要であることを十分に理解できなかった また 同船の貨物積付計画も不正確で不完全であった 特に危険物の輸送のための船舶の貨物積付計画は 正確 かついつでも船上において利用できるべきである 火気使用作業を実行する前には いつもリスク分析を実行すること 酸素アセチレン装置を使うときは慎重になされるべきである 4

作業が始まる前に 火気使用作業許可が 得られておくべきであり 作業員及び作業責任者によって 同許可の必要性が十分に理解され署名されるべきである 6 火災若しくは爆発 機関室火災 出航から約 4 時間後 船舶の火災探知機が機関室で火災が発生していることを示した 二等機関士が調査し 3 番ディーゼル発電機が フレキシブル燃料ホースの損傷により火災となったことを発見した 彼は警報を発し 火災に向かって持ち運び式消火器を放射し 機関室から避難する前に機関室換気ファンを止めた 乗組員は素早く集まり 機関室ポンプ及び燃料タンク緊急遮断弁を止めるために機器を操作し 消火作業の準備をした 火災は 最終的に機関室の固定式ハロン消火装置によって消火された 長期間の摩擦と擦過によって 3 番ディーゼル発電機のフレキシブル燃料ホースが損傷していたこと 発電機のフレキシブル燃料ホースの維持管理が不適切であり また 発電機製造者によって指定された長さよりも長いホースを使っていた 発電機製造者の取説及び船舶の安全管理システムでも フレキシブル燃料ホースの定期的な交換や維持管理のための手引きが示されていなかった フレキシブル燃料ホースは 発電機製造者による仕様書に従って取り付けられなければならず 磨滅について定期的に検査されるべきである フレキシブル燃料ホースは 利用を続けるのに適さないと疑われるときはいつでもすぐに取り換えられるべきである 緊急時に乗組員が 効果的に対応することが重要である 7 火災若しくは爆発 混合金属スクラップ積載時における貨物倉火災 単船倉の多目的貨物船 ( 総トン数 1,318 トン ) が プレスされた耕耘機 オートバイエンジン 電子機器廃棄物 鉄くず プラスチックから成る混合金属スクラップを積んでいた 8 時 25 分ころ 貨物倉において火災が発生した 火災は 翌日 2 時に沿岸消防隊によって消された 火災による油汚染はなかったが 船舶の左舷前部外板と構造物が損傷した 5

混合金属スクラップに含まれていた可燃性物質は 積載作業中における鉄スクラップの相互の接触及び積まれたスクラップをパワーショベルで固めて均す作業で生じた摩擦熱によって発火した プレスされた耕耘機やオートバイが混じった金属スクラップには残余燃料が含まれている可能性があったが 可燃性物質として取り扱われていなかった 船員の安全に対する意識が十分でなかった 港湾作業員と荷送人は プレスされた耕耘機やオートバイの混じった金属スクラップには 残余燃料が含まれている可能性があったが 可燃性物質として取り扱われるべきであるとは理解していなかった 金属スクラップの積み荷は 有毒もしくは可燃性のおそれがある物質を含んでいる危険をはらんでいる 8 火災若しくは爆発 ガスフリー作業中のデッキ火災 総トン数 2,646 トンの貨物船は 錨泊し ナフサの荷揚を完了して ガスフリー作業を行っていた ガスフリー作業が No.3 及び No.4 タンクにおいて実行されていた際 デッキ上の左舷 No.4 マンホール開口部において 火災が発生した 火災は船員によって鎮火されたが 乗組員 1 名が死亡し 2 名が負傷した ガスフリー作業が 適切なガイドラインや手続きに従って行われなかった ガスフリー作業の際 認証されていない換気ファンが使用されていた ガスフリー作業中は 適正な認証された設備 ( 例えばファン等 ) が使用されるべきである ガスフリー作業中 危険な排気がデッキに蓄積することを避けるため ベントポストからガスは排出されるべきである 9 火災若しくは爆発 照明設備によって引き起こされた貨物倉火災 6

火災が 大量のプラスチックと段ボールが貯蔵された倉庫で発生した とても濃い煙が船橋を含む船舶全体にすぐに広がった 火災警報が作動したが 少しの間しか機能しなかった スモーク ダイバーによる居住区の人員捜索は 呼吸するための空気の欠如のためすぐに中止された 居住区内での消火活動も 同様の理由で断念せざるを得なかった 船内には 酸素ボトルを再充填するコンプレッサーはなかった 105 人の乗組員が救助された一方 11 人が亡くなった 本船は 3 週間燃え続けた 蛍光灯のソケット内でスパークが発生し 過熱のため周囲のプラスチックを溶かすこととなった 燃えているプラスチック素材は 蛍光灯の近くに置かれていた段ボールに落ちて引火した 照明設備は船上で使うのに適さない品質の悪いものだった 倉庫には 法定の消火装備がなかった 火災警報は 火が配線を切断したことにより停止した 防火扉は 木製ブロックによって開いたままになっていたため 煙と火が急速に広がった 船上には酸素ボトルを再充填するためのコンプレッサーがなかった 消防訓練が十分ではなかった すべての乗組員が 緊急時の手順について知らされ 慣れていたというわけではなかった 電気設備が 海上での使用に適していなければならない 船内の改修が行われた場合は それに応じた火災探知システムも備えられておかなければならない 緊急時の訓練は すべての乗組員が緊急時に適切な対応を確実にとるためにきわめて重要である 船員は 緊急手順に精通しなければならない ストッパーを使って防火扉を開けたままにしておくことの危険性 リスク評価を基礎として 効果的な消火活動を確実にするため 船内に十分な消火装備があるべきである 10 火災若しくは爆発 RO-RO 船における貨物倉火災 トラックを積んだ RO-RO 船のメインデッキにおいて 火災が探知された 以前 火災ではなくトラックの排気によって警報が誤作動したことが何回かあったため 乗組員たちは本当に火災かどうかデッキに調べに行った 火災を確認後 乗組員は鎮火のため消火ホースを持ってメインデッキに入った 何度か消火ポンプを始動させようとしたが失敗し 火災は急速に拡がった 最初の火災警報から 27 分後 スプリンクラーで散水することとなったが ドレンチャーポンプを始動させることができなかった 急速に拡大した火災とすさまじい量の濃い煙により 救命ボート 救助ボート 救命いかだへ 7

の脱出経路が阻まれた 乗組員は それから船首甲板へ退避した後 海へ飛び込んだ 22 人の乗組員と 9 人の乗客の全員が救助された 当該船舶は 2 日間燃え続け 推定全損となった 火災の正確な原因は特定されなかったが いずれかのトラックから生じたものと考えられる 固定式消火設備はただちに機能せず 火災による警報であることが確認されるまでに 10 分間かかり それゆえ消火活動に遅れがでた 火災は急速に拡がり 消火設備は作動しなかった ポンプの故障の原因はわからなかった どのような火災警報も 真剣に受け止められなければならない 警報が鳴ったときに 行動をためらうべきではない RO-RO 船では狭い間隔で車が積載されているため スプリンクラーや他の固定式消火装置を主要な消火手段としてみなし すぐに使用されるべきである 11 衝突 RO-RO 船と底引き網漁船の衝突 夜間 RO-RO 船と底引き網漁船が真向かいに接近していたが 進路は並行であった RO-RO 船は底引き網漁船から離れて通過できるよう小さく左転した 両船がおよそ 3 マイルの距離で RO-RO 船は元の針路へ戻り 底引き網漁船は右転した RO-RO 船は それから発光信号と音響信号を使って底引き網漁船に警告を発した 両船が1マイルの距離で RO-RO 船は手動操舵に切り替え 左舵一杯 を命じた 両船は衝突し 底引き網漁船の乗組員は 沈没する前に救助された RO-RO 船の左転は小さく 底引き網漁船にとって容易に認めることができるものではなかった 底引き網漁船のレーダーは作動しておらず 目視による操船をしていた当直者一人しかいなかった 両船は適切な時期にそれぞれの意図を知らせようとしなかった COLREG に従い すべての利用可能な航海設備を使用することが重要である 12 衝突 ( 単 ) ドックへの衝突 ( 単 ) を引き起こした可変ピッチプロペラの故障 8

良好な天候の下 RO-RO フェリーは回頭し 船長は船をリンクスパンへ後退させようとしていた 船長が後進させたとき 右舷可変ピッチプロペラ (CPP) 警報が鳴ったが 気付かれなかった 船長は 船を停止させるよう両舷の CPP の制御装置を操作したが 右舷 CPP は反応せず 後進し続けた 非対称の推力により 船尾が左舷方へふれ まず 左舷側の防舷杭に接触した 最初の警報が鳴った6 分後 船長は 中央コンソールで再度右舷 CPP の制御ができるようになったが 本船がリンクスパンと強く衝突するのを防ぐのに間に合わなかった 本船は外板に損傷を負い 船尾ランプは曲がった鉄材によってふさがれた 陸上では 防舷杭とリンクスパンの荷役用ランプに損傷を生じた CPP 不具合警報が船橋で鳴ったが 船橋チームはどの警報が鳴っているのか特定できなかった 機関室員は 警報が鳴り リセットされなかったのを見ていたが 船橋チームが措置を取っているかを確認するための連絡を取らなかった 船橋チームは 推進装置の緊急手順について慣れておらず 彼らが適切な措置を決めかねている間に時間が過ぎた 船橋 CPP 警報は短く鳴っただけで パネルの点滅光は少しして常時点灯した状態に戻った それゆえ どの警報が鳴っているかを示す聴覚的 視覚的情報は非常に一時的なものであった 徹底的な調査にも関わらず CPP 故障の原因は明らかにならなかった エンジン コントロール フィードバック インジケーターを継続的に見ることの重要性 緊急事態が生じる前にすべての警報インジケーターを理解することの重要性 13 衝突 狭い水路での追い越し中の衝突 小型のばら積みドライ カーゴ船が 良好な視界 天候のもと川の航路を下流に向け航行している間 同方向に航行していた大型コンテナ船と衝突した 大型コンテナ船は 右舷側にいるドライ カーゴ船があり それを追い越すために接近していた 同時に その大型コンテナ船の左舷側の狭い航路を 別の大きなコンテナ船が反航していた 両船が航過したとき どちらも水先人が嚮導中で 二船の距離はおよそ 38m しかなかった この区域の可航幅は 220m であった 3 船がほとんど並んでいたとき ドライ カーゴ船の推進系統が突然止まった 前進推進力及び操縦性を失った後 航路の右側を航行していた同船は 大型コンテナ船の追い越し中に発生した流体力に対する効果的な手段を取ることができなかった ドライ カーゴ船は大型コンテ 9

ナ船へ向けて左に旋回し 最終的に およそ 80 の角度で衝突した ドライ カーゴ船の船首は大きく凹損し 大型コンテナ船の右舷外板は 喫水線の上部において 8m にわたり亀裂が生じた 両船は浮力を維持し 自力で航行を続けることができた 衝突の結果 負傷者は出ておらず 環境汚染物質も流出しなかった この事故の主な要因は 小型船の主機の故障であった また 3 船が遭遇し 衝突が起きた場所には 回避操船する余裕がほとんどなかった 相対速度とそれに付随する排水量効果により 大型コンテナ船が低圧部を発生させ そこで小型船舶は強力かつ変動する吸引効果の影響を受けたが このことが同時に小型船舶の主機に過負荷をかけた可能性がある 狭い航路や河川を操船するとき及びその航海計画中においては 多数の船舶に遭遇するおそれがあることを考慮するべきである 速力が早く 大型で 深喫水の船舶の流体力学効果は 特に浅瀬において 航路や海峡を航行している水先人 航海士 船長によってよく理解されているべきである 著しく接近した状態における追い越しは危険である 狭い水路での追い越しは 流体力が増幅する性質を持っているため特に危険である 14 衝突 パイロットステーションにおける船舶の衝突 タンカーが 河口でドライ カーゴ船と衝突した タンカーは 出航中で 水先人を下船させるためにパイロットステーションに接近しており 一方 ドライ カーゴ船は衝突数分前に水先人を乗船させていた 当時は日中だったが 濃い霧により視程は約 120m になっていた 両船は 水先人の乗船 / 下船の準備に気をとられていた タンカーの船橋にいたのは水先人と船長だけであった 船長は手動操舵に注意を払わなければならず 水先人は下船の準備に専念していた 交通量と潮流のため ドライ カーゴ船は 出航路付近およそ 0.4 マイルにいた 両船は 互いの存在を事故の 6 7 分前に気づいた タンカーの水先人は ドライ カーゴ船に連絡しようと試みたが数分間は通じなかった その後 水先人たちはお互いの意図を伝え タンカーが南に向かい カーゴ船の左舷側を航過することに合意した しかし タンカーの水先人は 再び下船準備に気をとられており 合意された操船をしなかった 以降意思伝達の試みは 他船との交信が行われていたためうまくいかなかった 少しして 両船はお互いの視界に入り 衝突が差し迫っていると気付いた 水先人たちは 舵を中央に戻し 後進するよう助言したが 両船は衝突した その水域ではVTSが運用されていたが VTSオペレ 10

ーターは危険な状態が生じている間 受け身の対応をとった タンカーは 船首に損傷を受けた ドライ カーゴ船は 船首楼区域より下の 左舷側の船首倉 フォア ピーク タンク 錨鎖管付近に損傷を生じ 喫水線より下のフォア ピーク タンク及び球状船首付近に凹損を生じた 負傷者 環境汚染はなかった 濃霧のため視界が非常に悪く 何隻かの入航船舶と出航タンカーがほぼ同時に同区域にいて それらの多くは 水先人の乗船区域に集中していた 両船は乗船 / 下船の準備に気をとられていた 両船は お互いに動静を監視せず 意思疎通をしていなかった そして事故が起こる前に互いの意図を確認しなかった ドライ カーゴ船は 強い潮流のため出航路付近まで南に大きく流された 同船は水先人を乗せることができるように速力を相当に落としており これにより出航路付近までさらに圧流されることとなった ドライ カーゴ船の船橋チームと水先人は 自らの船位によって危険が生じていることに気づくのが遅れた タンカーは 水先人が他のことに気をとられていたことにより 合意された回避行動を取らなかった VTSは受け身な対応をとった 視界が非常に悪く ドライ カーゴ船が南方へ圧流され出航路付近まで移動したにも関わらず VTS は メッセージを受け取っただけで 他船の意図についてそれぞれの船舶に警告しなかった 両船の水先人と船橋チームは 衝突のおそれについて十分な判断をしなかった ARPAは 衝突のおそれを判断するために それぞれの船舶において効果的に使用されなかった ARPAがドライ カーゴ船において使用されたときには 確実な情報を提供するには遅すぎた タンカーの船長と水先人は互いに任せていたため 実質的には だれも操船指揮をとらず ドライ カーゴ船の意図についての話し合いや質問もなく 肝心なときには 著しく接近した状態にあった中 不適当な任務に没頭していた タンカーの船橋の人員配置は 当時の状況において不十分であった それは 会社が定めた規則や港湾当局の水先人への指導に従っていなかったが 水先人からは追加の人員の要請はなかった 関係者全員の間における意思疎通は 不明確で誤解されがちであった そして 標準海事用語が使用されなかった VTS を利用できる 水先人が乗船中である 若しくは水先人を乗せるために近づいているからといって 注意を怠ったり 若しくは適時に効果的な衝突回避行動をとることが遅れたりしてはならない 衝突回避行動は 1972 年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約の 8 条と 19 条に従い余裕のある時期にとられるべきであった 11

15 衝突 衝突につながる走錨 走錨した船舶 ( 主機を使わずに ) が他船に二度接触し その後錨泊地をさらに移動し続け 2 隻目に衝突した 天候が悪化し 同船は走錨した 同船は 錨泊地の他の船舶を避けて操船できるようエンジンを利用可能な状態にしていなかった 最初に衝突された船舶の船長は おそらく 天候によって自船やその周りの他船に生じる危険性を正しく理解していなかった 結果として 彼は当時の状況において揚錨するだけの十分な時間がなかった 悪天候時において緊急に主機を使用できるようにしておくことの重要性 錨泊区域において他の船舶によってもたらされる危険を評価することの重要性 以下を含む適切な錨泊方法の重要性 繰り出す錨鎖の量 使う錨の数 可能であれば船体をバラストで安定させることの必要性 天候が悪くなる前に外海に向かうことの重要性 16 衝突 疲労により生じた衝突 両船が 見張り員が衝突を避けるための措置を講じないうちにほとんど真向かいに衝突した 船舶 1 は衝突の結果沈没し その機関長が亡くなった 船舶 1 に乗っていた見張り員は 船橋のリクライニングチェアーで眠ってしまった 結果的に彼は見張りを維持できず 遅きに失するまで接近してくる船舶を見なかった 両船はほとんど真向かいに行き会う状況で互いに接近し 衝突のおそれがあったにも関わらず 船舶 2 の見張り員は 相手船が回避措置をとると思いこみ 何もしなかった 12

入港中及び出港後の海上の両方で疲労を管理することの重要性 適切で効果的な見張りを維持することの重要性 衝突のおそれのある状態で 相手船が衝突を避けるための措置をとるだろうとの思い込みをしないことの重要性 17 乗揚 貧弱な船橋チームの意思伝達によって生じた乗揚 載貨状態のドライ カーゴ船が 狭い川で停泊地に向かっていた 本船は水先人を乗せていた 停泊地に着く前に視界は悪化していた 一等航海士と船長は 船橋にいた 船長以外は誰もその特殊な操舵装置統御の使用方法を知らなかったので 船長が操舵装置のコンソールに座って操船した 無線機をもった甲板員が 見張りを行うため船首楼甲板にいた 機関長は 機関室にいた とても悪い視界の中 航行が続いていた 船舶は川の鋭曲部に接近していたため 速度を落とした その直後 前方の見張り員は 左舷船首方近くの岸壁に係留した船舶の甲板の灯火を報告した 船長がエンジン速度をさらに落とし 灯火から離すよう右に進路を変更していた間 船長と一等航海士 甲板員の間で母国語により連続した大声のやりとりがあった 水先人は船長と乗組員の間のやりとりを聞いていたが 理解できず 係留された船舶の接近についての彼らが心配したことや 船長が船舶の進路と速度を変更したことに気付かなかった 同船がその船舶を通り越すまでに その対地速力はおよそ2.5 ノットに減速し 上げ潮によって川の左側の川岸に向かって船体が流された 水先人は船長に 川の次の屈曲部をうまく通り抜けるために右舵をとるよう告げたが 彼が船舶の不十分な速度に気づいたとき 彼は船長に 速度をあげ もっと右舵 を告げた 少しして 同船は左側の川岸近くの川底に船尾を少しの間接触させた 船長は即座にアジマス スラスターのコントロールを全速前進にして右舷に切った 同船は鋭角に曲がり 川の真ん中の浅瀬に向かって川を横切って進み始め 船長はエンジンコントロールを左舵にとったが 船舶は浅瀬にまたも乗り揚げた 水先人は 船長に 船舶は上げ潮によって容易に離洲できると告げたが 船長はこの助言を無視し 全速後進とした 数分後 船長は機関長から 機関室の左舷アジマス スラスターのオイル ベントから水が吹きだしていると母国語で知らされた 水先人はこの問題に気づいていなかった 同船は 少しして上げ潮とエンジンの全速後進によって離洲した 同船は川の上を横切って回頭しながら後進し 船尾から三たび乗り揚げた 同船は しばらくして操船できるようになり 舷側付けで停泊した 13

その後の検査により 同船の左舷アジマス ポッドのケーシングは壊れていることがわかり そのプロペラ ブレードはひどく損傷していた 船舶は 修理港へ向かうことを許された 船舶が後にドライ ドック入りしたとき すでに受けていた損傷に加えて 左舷アジマス ドライブ シャフトを換えなければならないことがわかった 船舶の左舷後部の塗装にも最近損傷を生じた形跡があった 視界制限状態での狭い川における安全な航行には 船長と水先人間の良好な意思伝達と協調が必要であるが これらが今回欠けていたことを示す多くの要因があった 意思伝達や情報交換のための水先人 船長 船橋人員間の効果的な協調がなされておらず 他者の役割と職務が相互に理解されていなかった 同船のアジマス推進システムの操作に関する船舶管理者により発行された指導要領は 無視された 船長以外の誰も操作を知らず 彼がこの重要な任務を引き受けるだけの能力があると船長が思う人が船内にいなかったため 彼は川での航行中操舵をしていた 船長が操舵手であったため 船長は同船の航行を十分に指揮できなかった 結果として 視界制限状態で狭い川の中を安全に航行するための船橋チームの能力は大幅に低下した 港湾当局発行のその地域の大縮尺の海図は その川を航行する船舶が使用していた海図よりも適切なものであったが 残念なことに それらが入手できることはよく知られていなかった 水先人は 彼が持ってきたより大きな縮尺のその地域の海図を船長に示さなかった 使用していた海図の制約があったにしても 同船の河川航行計画は不十分で 安全な航行が完全に水先人任せにされていたことが明らかになった 船長と水先人のやりとりは短く 航行中の潜在的な問題や視界制限下の船橋での組織の限界に注目されなかった 特に視界制限下において 限定された水域で航行する間 船長と水先人間での良好な意思伝達や緊密な協力は 重要で最優先されるべきである 水先下での航行は 船舶の乗組員によって慎重に計画されるべきである 特別な推進装置と操舵装置を備えた船舶の操舵者として指名された航海士と乗組員は 定められた基準にそって訓練されるべきである 今回の事例では 船長は 特別な推進システムの制御に関し船舶管理者によって発出された指導を無視した 彼は どの乗組員にもこの業務を担当するための十分な能力があると思わず どの乗組員も訓練しなかった 結果的に 船長自身が河川を航行中 船の舵を取り続けなければならなかった 船長が操舵手となったため 彼は効果的な船舶の操船指揮を維持できなかった 彼は当時負担がかかりすぎ 視界制限下での河川内における安全な操船のための船橋チームの能力は大幅に低下した 地域的に作られた海図が利用可能なところであれば 乗船する水先人が船長との当初の意見交換において航行計画を議論するためにそれらを示すこと また 航行中において精査するためそれらの海図を利用できるようにしておくことはとても有効であろう 14

18 乗揚 疲労とアルコール摂取により生じた乗揚 フィーダー コンテナ船が 朝の早い時間帯に狭い海峡を航行していた 進路を変更後 船舶はいくつかの必要な進路変更をせず VTS 水先人 海岸無線からの呼び出しに応えなかった 無線呼び出しへの返答がなかったとき VTS 当局は水先ボートを配置に就かせ 調査するための海軍ヘリコプターを向かわせた 水先ボートと海軍ヘリコプターは音や警笛によって注意喚起を試みたが 船舶からは何の応答もなかった 船舶はすでに海峡外に出ており 少しのち浅瀬に乗揚げた 水先人は乗船して 見張員が船橋で眠ったままであることが分かった 船長と当直航海士双方の疲労及びアルコール摂取による酩酊が 第一の寄与要因である さらに 船橋で見張りが行われず 船橋見張り警告装置も使われていなかった 乗揚前に水先ボートやヘリコプターによって注意喚起のために鳴らされた音に 船内のどの乗組員も反応しなかった 疲労は増加の一途をたどっている問題であり この事故では重大な要因であった 乗組員 特に当直者は十分な休息を与えられ 当直に先だって体調を整えるべきである アルコールの摂取が 疲労の影響を増す 会社のアルコールに関する規定が いつでもすべての乗組員に遵守されるべきである すべての当直者は ブリッジ リソース マネジメントの手続きによく習熟し 注意深く従うべきである 船橋見張り警告装置は 定期的に点検されるべきである 19 乗揚 水先人の誤りと船舶の進行を監視する船橋チームの失敗による乗揚 72,437 トンの一軸バルクキャリアが 広く浅い川の西の砂洲に乗り揚げた 225m の同船は鉄鉱石を満載して 14m の喫水で 河川水先人が乗船していた 船舶は 8 ノットで上流に向かって進行しており 水先人は 向かってくる船舶を右舷対右舷でかわすことに同意した 両船が互いに並行したとき 水先人は操舵手に左舵をとるよう要請した 操舵手はそれに従い 少しして船舶はゆっくりと西の砂洲に乗り揚げた 水位は上がっていて エンジンと 15

舵を使うことにより 水先人は 1 時間後に船舶を離洲させることができた 明白な損傷はなく 航行を続け錨泊を許された そこで検査を受けたが やはり明らかな損傷はなかった 水先人による判断ミスが乗揚げを引き起こしたが 船橋チームは彼の指示にあまり注意を払わず 事故が起きる前に操舵ミスに気付かなかった 水先人も誤る可能性がある 航海士は水先人の計画を理解し 本船の進行を監視しなければならない パナマ運河を除き 船長は船舶の安全性に最終的な責任を負っている 船長は 必要であれば 事故を防止するため操船の指揮をとるべきである 20 浸水 悪天候による浸水 1972 年に建造されたバルクキャリアが 大暴風の気象及び海象の中 6 番と 7 番貨物倉に浸水した後 船長によって意図的に乗り揚げた 水は 固定式ポンプ 若しくは可搬式のポンプを貨物倉に入れたが取り除くことができなかった 全乗組員は乗揚後 同船から安全に避難した 悪天候や 船舶の動き ( パウンディング スラミング 縦揺れ 横揺れ ) の結果生じた船舶の構造への影響により 6 番 7 番貨物倉への浸水が生じたと考えられる 船舶のポンプ ( 固定 可搬式双方 ) が 水を外に出すことができなかった セメント貨物は吸湿性 ( 水分を吸収する ) であったため ある一定の時間にわたって 同貨物によって水が吸収された 水が貨物の上面まであがってきたとき ( 浸水状態 ) には手遅れであった 船長は 航行を計画したとき 天候が船舶に引き起こす危険について正しく認識しなかった 結果的に 古くなった船舶を悪天候の影響にさらしながら 彼はサイクロンの中へ航海させた どのような航海においても 天気の危険を適切に認識することの重要性 航行中や載貨中 貨物監視に関する手順を遵守することの重要性 古くなった船体構造が受ける天候の影響を考えることの必要性 21 乗揚 16

悪天候による乗揚 サイクロン接近中 船舶が避泊地へ航行しようとしている間に乗り揚げた 同航海は同船が岸へ接近して航行するもので それゆえ天候に対して針路を保持するのが難しいと分かったときには 同船はますます岸への接近を強いられており 結果として悪天候の中乗り揚げた エンジンは そのような状況下で針路を保持するための十分な出力がなく 乗組員は天候のなすがままの状態になっていた 悪天候により 同船が岸から離れた針路を保持できなくなった 結果として 同船は岸へと押され 同船には岸から安全な距離を保つための十分なエンジン出力がなかった 船長が航行計画時に天候が同船に及ぼす危険を正しく認識していなかった 結果として 船長は海岸から十分な距離 (5 海里以上 ) を取らなかった いかなる航海においても天候の危険を適切に認識することの重要性 事故調査報告書では簡単に検討されているだけであるが 可能であれば船舶をバラストで安定させることの必要性 22 負傷 ボイラーのフラッシュ バック ( コンポジット ボイラー ) ある機関士が コンポジット ボイラーのバーナーを換えていた 同船は 当時微速前進で航行していた フラッシュ バックがあり 機関士は顔と手に火傷を負った ファーネスのエアパージの後 バーナーを取り換える二度目の試みがなされた もう一回フラッシュ バックが起こり 一等機関士 二等機関士及びその当時二等機関士の後ろに立っていた機関員が負傷した 最初のフラッシュ バックの直前に バーナー点火を三回試みており それぞれの状況において未燃焼の重油がファーネスに蓄積していた バーナー ユニットの作動を停止したとき 点検カバー開口部の蓋が外されるまでファーネス内に空気の流れはなかった 耐火材とファーネスの壁の余熱は 燃料中の軽油成分を蒸発させるのに十分だったものと考えられる 事故前 主機の稼働時間は 3 時間未満であり 煙室の出口を通っていまだ燃え切らなかったすすの粒子や潤滑油 燃料があった可能性が考えられる 結果としてスパークは 爆発性の混合ガスを燃やし フラッシュ バックをもたらすのに十分であった 17

バーナー ユニットを入れる前にファーネスを開けて充分パージすることが基本的な安全上の注意事項である一方 時には これだけではフラッシュ バックを防ぐには不十分であったかもしれない もしバーナーの点火が何回もうまくいかなかったら 未燃油が 長時間のパージ後でさえ まだファーネス内に残っているかもしれない このようなときは ファーネスが開かれる前に十分に冷ましておくことが重要である フラッシュ バックの発生を防ぐために あらゆる予防策がとられる必要があるが このとき機関室にいて事故に巻き込まれたスタッフのだれもが適切な防護服を着ていなかったため 事態はさらに悪くなった 負傷した船員に応急手当が行われたとき 火傷軟膏が火傷部位に塗られた これは 火傷部位を多量の冷たく清潔な清水で冷やすことを奨励する現在の医療勧告と逆である 例えば 本事故の調査報告書で言及されているオーストラリアの St John Ambulance による応急処置及び火傷のためのクイック ガイド (A quick guide to first aid/burns)( ウェブサイト www.stjohn.org.au) や イギリスの船長の医療ガイド (Ship Captain s Medical Guide)( ウェブサイト www.mcga.gov.uk) を参照されたい この事故の寄与要因は 他のフラッシュ バック発生事例に関するボイラー製造者発行の重要な安全通知情報が本船に伝わっていなかったこと及びボイラー バーナー メンテナンスに関する本船における手順に多数の矛盾が含まれていたことである ボイラーバーナー取り付けに従事するとき 特に主機が稼働中のコンポジット ボイラーの場合は 多大な注意が払わなければならない サービス ブレティンや常設の指示パネル 保守マニュアルの方法などで製造者によって指導がなされている場合 これらは本船上で保存されるべきであり 保守整備作業を行う前に確認するべきである ファーネスは どのような点検カバーが外される前でも いつも徹底的にパージされていなければならない ファーネスののぞき窓がない場合は ( このときもそうであった ) ファーネスの出口を慎重に点検することによって 未燃焼の燃料油がファーネスの中にあることが分かる場合がある 白煙は 未燃焼の燃料油がファーネスや煙路内にあることを示していることがある どのような点検カバーでも開けるのは 煙が完全に消えた後 適度な時間が過ぎてからにすべきである 適切な防護服が船舶所有者によって提供されるべきであり バーナー ユニットの整備作業を始める前にはいつも着用されているべきである このような状況に関する手引きは イギリスの安全作業実践コード (Code of Safe Working Practices) のような刊行物に見られ www.mcga.gov.uk. から自由にダウンロードができる 同じようなコードが いくつかの行政機関から提供されている 危険要素を含むすべての業務のために 適切で 明確で はっきりした作業指針を提供することの重要性はいくら強調しても足りない 23 負傷 18

空気流量計が爆発した際の目の負傷 パナマックス コンテナ船の一等航海士は 船舶の呼吸装置 (BA:breathing apparatus) 用圧縮機の空気質年次試験を実施していた際 空気流量計が破裂し 左目を負傷した その試験で一定の時間 ガラス製アンプルに空気が流れ込むようになっていた 空気の流れは小さな調整バルブを使って手動で調整された 4 つの試験が良好に完了したが 5 番目の試験で 空気流量計が破裂し ガラスの破片が一等航海士の左目に飛んだ 事故の発生を見ていた研修生は負傷を免れたが 一等航海士は治療のため入院した 本事故は 流量計の最高使用圧力を超えたことによって起こった BA 圧縮機の使用圧力は 150 バールだが 流量計と試験装置の最大作業圧力は 10 バールで 圧縮機と流量計の間には減圧バルブがなかった 船内には 2 つの型の試験装置があり それぞれ異なる言語での指示書が付属していたが そのうち一つだけが減圧バルブの使用について言及していた しかしながら 一等航海士はどちらの指示書も知らなかった 空気試験業務の実施に関し それ以外の指示書や手順は船内にはなく 試験を開始する前に共通的あるいは動的なリスク評価も実行されなかった 業務を完了するため 多くの構成部品を組み立てなければならない場合 その組み立てが正しく行われ 業務が正確に実行されることを確保するための手順書や指示書が提供されるべきである 局所的に問題を解決することを試みるのではなく 指示書や手順書を整備するよう常に要請すること 潜在的な危険が存在する場合 このケースだと高気圧空気であるが リスク評価は作業を開始する前に行われるべきである 手本を示し いつも正しい防護服を身につけること 24 死亡事故 船外への落下 漁船の乗組員たちは 漁船から 1 組の底引網を投網しているところだった ある乗組員が投網中の網の隣に置いてあったもう 1 組の網の上に立っていたが 不注意にも 投網されている網のロー 19

プを自分が立っていたところの網に結び付けた 連結具が投じられたとき 乗組員が立っていた網と連結したコイル状のロープが 彼の足を巻き込み同乗組員は海中へ引きずり込まれた 網はウインチを使って揚げられ 乗組員も船上に引き上げられ 蘇生させようとしたが 成功しなかった 転落した乗組員に経験がなかった それぞれのロープの先端を見分けるために利用される方法はなく どちらが網を取り付け どちらが重りを連結するために使われるべきだったかを見分ける方法もなかった 網を収容していた場所は小さな閉鎖空間であったため 乗組員たちは 投網される網の横にある網の上に立たなければならなかった 未経験の新人乗組員に対し 作業に伴う危険を理解 考慮させながら 割り当てられる任務のために十分に訓練を行うことの重要性 未経験の新人乗組員を適切に監督することの重要性 投網される用具一式の近く 若しくは周りで作業するときには十分注意すること 25 死亡事故 高所からの転落 船は 乗組員を乗せてメキシコ湾に向かっていた 乗組員は 船のバラスト タンクを洗浄しており 事故当日は 右舷 No.4 バラスト タンクの洗浄を始めた 0806 時 右舷 No.4 バラストタンクが中に入っても安全だと確認された後 乗組員のうち 職長と一人の掃除作業員がタンクの中に入った 掃除作業員は いくつか器材を受け取るためにタンクの最上部に残った そして職長はタンクの底に向かって進んでいた 少し後に もう二人の掃除作業員がタンクの中に入り タンクの底に向かっていった 彼らがタンクの底に到着したとき 彼らは職長を見つけることができず そのため彼らは職長を探していたところ 船底の一階上の踊り場で横になっているのが見つかった 彼は 意識がなく 頭の傷 そして耳と鼻から血を流していた 警報が鳴らされ 緊急救助隊が タンクに集合した 職長は担架に移され 船の病室に連れて行かれたが そこで彼の状態は悪化し続けた 1000 時 職長は 死亡を宣告された 事故の目撃者はいなかった それゆえ本事故の調査報告書は 職長が No.4 右舷バラスト タンクのある区画から他所へ移動する際に 足を滑らせて落下し 金属構造物に頭をぶつけ 頭蓋骨の骨折及び / 又は脳出血を引き起こした と推測している この事故において 空気の欠乏が寄与要因であるとは考えられない 天候は穏やかで 梯子とタンク内の出入りの状態は良好であった 20

閉鎖空間のリスク分析を実施するときは つまづいたり落下したりする可能性を考慮すること 落下の危険性があるタンク内で作業をするときに 確かな足場を確保することの重要性 安全ベルト 落下防止装置を利用 着用することの重要性 26 死亡事故 荒海による死傷 悪天候下 船首楼に押し寄せた大波に打たれ 機関長が死亡し 一等航海士が負傷した 当時 二人は 船首楼で錨鎖を固定しようとしていた 大波が船首楼を襲ったとき 二人は右舷の錨鎖を固定させていた 機関長は一等航海士よりも無防備な状態になっており 波から大量の力を受けた 同船のサイズは大きく 船橋にいた者は波を見ることも感じることもなかった 船の速度や進路を調整することを考慮するなど 悪天候時に船首部に行く際の危険を適切に軽減することの重要性 危険特定に役に立つように 船内に適切な手引きを置いておくことの重要性 27 死亡事故 2 名の乗組員が窒息により死亡 2 名の乗組員が 空気中の酸素が欠乏した船首倉庫に入ったとき 窒息により死亡した 隣接する貨物倉に積載されていた鋼削りくずは 自己発熱しやすく 保管されている空間内の酸素を欠乏させ 貨物倉の空気が船首倉庫にも影響を及ぼしていた 船首倉庫を通る貨物倉換気ダクトと その換気管のふいご部分は 排水と貨物の残渣除去のために切り開かれていたが そのような処置は通気装置の設計では許されていなかった 倉内の空気は切り開かれた換気管を通って倉庫に入った 倉内の鋼削りくずの貨物は 空気中の酸素を欠乏させた 21

船首倉庫は 作業場であって閉鎖空間ではないと考えられ 2 名の亡くなった乗組員はだれにも知らせず中に入り すぐに窒息した 船舶証書によれば 酸素を欠乏させる他の貨物を運ぶことは許可されていたが 当時の貨物を運ぶことは許されていなかった 貨物の書類には 国際基準の定めに従ってその貨物について正しく記述されていなかった 適切な手順がとられなかったので 荷役中に貨物が湿りまた十分に圧縮されずその危険性が増大した 船長には貨物について不完全で不正確な情報が提供されたが 貨物の危険性に関する疑問点を解消しようと努力してみたり 積載を拒絶したりするために十分な情報を持っていた 船舶の船長並びに乗組員は 船舶内のシステムや設備を変更することに関する危険性を考慮すべきである 船長は 貨物に関して完全な情報を持っていなくても 荷役において引き起こされるであろう結果について考慮すべきである 閉鎖空間に隣接しているトランクや区画に入るときには 予防策がとられるべきである その空気は危険であるかもしれない 荷主 用船主 仲介業者 ターミナルを含む危険な貨物の運送に携わるすべての関係者は 国際規約に従って正確に記載されていること また 適切な積出し 荷役 運送手順が守られることを確実にすべきである 閉鎖空間に隣接した区画は そうでないと証明され 適切な予防策がとられない限り 閉鎖空間と考えられるべきである 閉鎖空間の危険性について一層の教育が必要である 酸化し 酸素を欠乏させる貨物の危険性 28 死亡事故 重い物体に押しつぶされた乗組員 夜間荷役中 乗組員の遺体がハッチカバーの間で見つかった その事故を目撃した者はいなかったが 彼の遺体には重い物体に押しつぶされたような傷が見られた 当時 同船のクレーンが その付近のハッチカバーを動かすために使われていた 死亡した乗組員は ハッチカバーが動かされている間 ハッチカバーの間のデッキに立っていたものと考えられる そして ハッチカバーが持ちあげられている間 ハッチカバーが揺れたか急に動いたかして乗組員にぶつかったものと考えられる クレーンの運転手は 暗闇の中 ハッチカバーの間 22

にいた乗組員が見えなかった可能性がある 乗組員と港湾作業者は 吊り下げられた貨物や持ち上げられようとしている貨物から十分に離れたところに立ち 適切な避難経路を確保しておくべきである クレーンの運転手は 積み荷の周囲にある危険要素すべてを確認できない場合 またはそれらを確認可能な者から指示を受けられない場合は 吊り上げを始めるべきではない 29 死亡事故 乗客が船舶と岸壁の間に落下 夜間クルーズの後 乗客を降ろしている間 船舶と岸壁の間に隙間が生じた ある乗客がその隙間に足を踏み入れ 同船と岸壁の間に落ち 溺れた 同船は 一点止めの斜係留の状態で機関を掛けたままで 操舵室は無人であった 乗客たちは 夜間クルーズの後で酒気を帯びており 船舶と岸壁の間に隙間が生じても 下船中に案内がいないままであった 下船場所の照明は不十分であった 機関を掛けて一点止めの斜係留を行うならば それに伴い増大する危険要因をできるだけ抑えなければならない 機関を掛けているときには 操舵室には要員を配置し だれかが機関制御と操舵にあたるべきである すべての乗船と下船箇所において 可能なときは常に または乗下船に使用されている間 適切な照明が提供されるべきである 乗船 下船時どのようなときでも乗客の案内を行うべきである 30 死亡事故 船倉の気圧増大によりハッチが開き 乗組員が死亡 貨物倉は 船舶の処女空船航海のためにバラストを注入中で 船倉への出入り用ハッチは 偶然閉鎖されていた 乗組員は 船倉への出入り用ハッチ上に立っており 締め付けの押さえ木を蹴飛ばした そのとき 船倉内で高まった気圧によりハッチが突然開き 乗組員は周囲の構造物の中にとばさ 23

れた 彼はその怪我により死亡した ポンプで送水する前に担当航海士によってクロス チェックが行われなかったので バラスト手順書に危険な行為として列挙されているにも関わらず 出入り用ハッチが閉鎖されたままであった その手順書はあいまいであり 出入り用ハッチを開放しておくのは バラスト積み込み作業中 空気圧を逃がすためというよりもむしろ 甲板に水をオーバーフローさせるためであると読み取れるものであった 乗組員は 倉内の高くなった空気圧に気づいていないようであった 同船の処女航海であり 乗組員はたった2 日間しか乗船していなかったので 危険な手順についてよく知らず訓練もされていなかった 圧力のかかっている入口を開く時は 注意が払われるべきである 手順書及び関連するチェックリストは なぜその業務が危険であると分類されているかの理由を記載すべきである 手順書及び関連するチェックリストは遵守されるべきであり また 危険な業務は担当航海士を含む複数の者によって確認されるべきである 乗組員は 特に 全乗組員が新しく または変わったばかりのとき 船舶に慣れるよう十二分の時間を与えられるべきである 31 潜水事故 潜水中プロペラに巻き込まれそうになった潜水士 自走式クレーン バージに乗っていた潜水士は 沈船の位置を表示する浮標係留索を取りかえるため水中に入った 潜水士は 20m の深さまで潜ったとき 彼への空気供給を含む命綱が バージの後部フォイト シュナイダ (VS) プロペラにからまってしまい 潜水士はその回転翼に向かって引っ張られてしまった 潜水士の空気源もまた甲板から引き抜かれたが 潜水士は酸素ボンベへと切り替えることに成功した 潜水士は プロペラが機関長により止められたとき 回転翼からおよそ 3m のところにいた それから 潜水士は自力で脱出して海面に浮上し 無傷で救助された 船長と当直航海士は プロペラが止まったと思っていたが まだ回り続けていた 24

推進器の制御装置が最近搭載されたが 使用手順が定められていなかった 乗組員に対して 習熟訓練が提供されなかったため 当直航海士はプロペラを止めたと思ったが 実際止めていなかった 当直航海士も船長も VS プロペラが止まったかどうか確かめず 彼らは 潜水業務が実行されようとしていたことを機関室に知らせなかった 同船の安全管理規程中の潜水業務の手順は 詳細に欠けており 十分確固としたものでもなかった 彼らは乗船した潜水士が従事する実務に 過度に依存していた 潜水業務は 船舶管理者により 若しくは外部監査中 重要な船上業務であるとは認識されていなかった 新しい装置が船舶に搭載されたときの手順と習熟訓練の重要性 つまり 新しい設備が 乗組員が使う前に理解されることの重要性 業務が機関の周りで実行されているときの船橋と機関室間の情報伝達の重要性 危険認識を助けるため 適切な手引きを船内に備えておくことの重要性 25