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: (a) ( ) A (b) B ( ) A B 11.: (a) x,y (b) r,θ (c) A (x) V A B (x + dx) ( ) ( 11.(a)) dv dt = 0 (11.6) r= θ =

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FEATURE Kavli IPMU CMB IPMU CMB CMB?? F(θ) CMB F(θ) [T(θ) T ]/T T(θ) θ CMB T CMB 3 F(θ) F(θ) CMB Planck 5 3 40 000 CMB 500 F(θ) 3 3 /60 40 Kavli IPMU News No 6 June 04

図 宇宙論解析の流れ 次元データの CMB の例 宇宙論ゆらぎ場 F (θ) の測定 左上図 ゆらぎ場のフーリエ波数分解 右上図 右下図は パ ワースペクトル推定の結果 灰色点は各波数ビンでの測定値 エラーバーを伴う青点は 複数の波数ビンで測定値を平均した結果 エラーバーとして 有限数のフーリエモードしか測定できないという事実から生じる標本分散および検出器などに付随するエラーが考慮されている 実線はベストフィットの ΛCDMモデルの理論予言 統計誤差内で観測データを良く再現している 左下図は 測定とモデルの比較により得られた宇宙論パラメータの推定結果 の例 パワースペクトルの統計誤差をパラメータの決定の信頼区間に伝播させている という原理です 要するに 宇宙には特別な場所ある 解を考えましょう フーリエ分解とは F(θ)場を以 いは方向が存在しない あるいは我々の天の川銀河は 下のようにモード分解する方法です 図 の右上図 宇宙のなかで特別な位置に存在するわけではない と いう民主的な考えです この宇宙原理を受け入れれば 我々が観測したF(θ) F (θ) = Ωs l F l ei l θ () Feature 場は 広大な宇宙のなかに存在する母集団の { F(θ) } 簡単のため 天球の曲率は無視し 天球上の観測領域 から得られた典型的な標本サンプルと考えられます を次元平面と近似することにします 観測領域の天 CMBの例で言えば 宇宙のなかで遠く離れたところに いる観測者 人類とは限りませんが がCMBを観測した 球上での面積をΩsとすれば フーリエ分解の最小波 / / 数 いわゆる基本波数は lf ~_ π/ωs Ωs は面積の一 としても 我々が見ているCMB温度ゆらぎ場と 大体 辺の長さ となります この基本波数の整数倍の波数 同じものを見るだろうと考えるわけです この 同じ つまり l = lf (nx, ny) (nx, ny = ±, ±,...) の波数で ゆ 程度 つまりどのくらい我々の観測した CMB 場が 典 らぎ場F(θ)をモード分解します フーリエ係数 F l は 型的 かを確率的に定量化する必要があります F(θ)場が波数 l のモードに対して どの程度の振幅を 観測したゆらぎ場を定量化するために フーリエ分 持つかを表す量になります 4

l F l = F l e iφ l 4 F l ˆP F (l) Σ l' l l' l N mode (l) l πl l l l (π) /Ω s = l f 5 l l l = l N mode (l) () (3)? 4 F(θ) 5 3 N mode (l)ω s l l l l F l πl l (π) / Ω s 3? CMB ζ k ζ k ζ k' P ζ (k)(π) 3 δ 3 D(k+k') (4) P ζ (k) δ 3 D (k+k') 3 4 Kavli IPMU News No 6 June 04

P ζ k = k ζ k P ζ (k) ζ(x) 6 7 8 9 CMB 0 sample variance Cov[ ˆP F (l), ˆP F (l )] ˆP F (l) ˆP F (l ) ˆP F (l) ˆPF (l ) δ K llʹ l=lʹ δ K llʹ = δ K llʹ = 0 4 = (5) Ω s l PˆF(l) ±σ 6 4 ζ(x ) ζ(x ) ζ(x 3 ) ζ(x 4 ) 7 3 ζ(x ) ζ(x ) ζ(x 3 ) 8 9 0 F l = F * l N mode (l) δk ll P F (l) Feature 43

P F (l) σ(p F (l)) σ(p F (l))=cov[(pˆf(l), PˆF(l)] / l N mode (l) N mode (l) Ω s l l Ω s l l (6) PlanckCMB l l = N mode (l) PˆF (l) P F model [l; P ζ (k), Ω m0 h, Ω b0 h, Ω de,...] (7) F C L Planck Planck l 000 CMB () () (3) () () (3) 4 CMB CMB CDM CDM 44 Kavli IPMU News No 6 June 04

図 冷たいダークマター構造形成モデルに基づく宇宙論 N 体シ ミュレーションの例 ガウシアン場の初期条件から出発したと しても 非線形重力進化の結果として ダークマターの分布は 複雑な非ガウシアン性を有する ダークマターが特に集中して いる領域はダークマターハローと呼ばれる フィラメントの交 差点には 太陽質量の05倍もの銀河団スケールの巨大ハロー が存在することがある 図の中心にある巨大ハローはそのよう な例 宇宙全体の総質量に対して銀河スケール以上のハロー に含まれるダークマター質量は数0%にも及ぶ 一方 70%ほ どの体積比は ダークマター密度が平均より少ない 質量密度 ゆらぎが負になっているボイド領域が占める このような非対 称性より ダークマター分布は ゼロでない多点相関関数を持 つことになる た観点では ダークマターの質量密度場 速度場は 進化を始めるのです 原始ゆらぎがガウシアン場が 膨張宇宙における渦なし 無圧力の流体の方程式系に あったとしても 重力の非線形性がダークマターの空 従うことが示されます 間分布にガウシアン性を誘発するのです その非ガウ 3 δm + [( + δm) vm ] = 0 t a vm a + vm + (vm ) vm = φ t a a a ス性の程度は 小スケールほど また現在に近い低赤 方偏移ほど大きいことになります (8) φ = 4πG ρ m a δm このように 現在の宇宙のダークマターの分布の 統計的性質は パワースペクトルの情報だけでは記述 できません 実際に図に示されるような CDM構 a(t) は宇宙のスケール因子であり 宇宙膨張とともに 造形成モデルのN 体シミュレーションの研究は ダー 増加する関数 δm(x) [ ρm(x) ρ m]/ρm は質量密度ゆら クマターの分布が一般に3点以上の多点相関関数の値 ぎ場であり vm(x) は固有速度ベクトル場 ϕ(x) は重 を持つようになることを示しています 例えば 非ガ 力ポテンシャルです 一様等方宇宙では 至るところ ウシアン性の情報を持つ最低次の3点相関関数を考え で δm = vm = 0 になる宇宙ですので δmとvm はゆらぎ てみましょう 非線形構造の成長の結果として 低密 場です CMB の測定で制限されているゆらぎの初期 度領域については 最小でもダークマターが空っぽの 条件から出発し この方程式系を解くことにより 宇 領域 (ρm(x) = 0) になりますが そこでは δm(x) = で 宙構造の力学進化を調べることができます この方程 す 一方 ダークマターが密集する領域では 質量密 式系から明らかなように ゆらぎ場の振幅が小さいと 度 ρm(x) は幾らでも増幅する可能性があり 実際にN き つまり δm = vm << 光速 c = の単位系 では 体シミュレーションではダークマターが密集するダー 方程式は線形化でき ゆらぎ場は線形進化します し クハローの中心で密度が発散する領域 δm が現 かし ゆらぎが時間とともに成長し 非線形項 δmvm れることを予言しています このように 密度分布の (vm )vm が無視できなくなると ゆらぎ場は非線形 非対称性により 一般に3点相関関数が値を持つよう 進化することになります つまり 異なる波数のフー になるのです 複雑な リエモードが混合し モードカップリング 3 厳密には無衝突ボルツマン方程式系を解く必要があり N体シミュレーションはそれ を近似的に解く方法になっています 以上を踏まえ 宇宙論場の統計的情報量という観点 から疑問が生じます 前節で述べたように 線形段階 にある宇宙初期ゆらぎはガウシアン場であり その統 45 Feature

Cumulative information content: I(<l max ) Gaussian information content Simulation maximum multipole: l max 3 I(< l max ) z s = 400 6 l min = 7 x l max I(< l max ) Δl 6 l max l max Ω / s l max 3 I(< k max ) k 3/ V / max s V s 3 CDMN? CDM N 3 N l 46 Kavli IPMU News No 6 June 04

l 00 HSC 000 3 4 3 N 5 IPMU SuMIRe CMB CMB! M Takada and S Bridle New J Phys 9 446 (007) M Takada and B Jain MNRAS 395 065 (009) M Sato et al Astrophys J 70 945 (009) I Kayo M Takada and B Jain MNRAS 49 344 (03) M Takada and W Hu Phys Rev D 87 3504 (03) Y Li W Hu and M Takada Phys Rev D 89 08359 (04) M Takada and D N Spergel MNRAS 44 456 (04) Feature 47