(2) 主要シェール オイル鉱床シェール オイルの 3 大産地 ( テキサス州のパーミアン地域とイーグル フォード地域 ノース ダコタ州のバッケン地域 ) での生産量は 全体の約 50% を占めている 広い鉱床を有し 生産性 経済性に優れるテキサス州中西部パーミアン堆積盆地に開発が集中している 20

Similar documents
Microsoft PowerPoint - Itoh_IEEJ(150410)_rev

2013 年中 米国石油精製企業の収益減少が目立った第 2 四半期 (4-6 月 ) 第 3 四半期 (7-9 月 ) において 各社が要因として挙げたのは 米国内原油市況と国際原油市況の価格差縮小による原油調達コスト面での競争力低下と バイオ燃料の使用義務を定めた再生可能燃料基準遵守にかかわるコス

2007年12月10日 初稿

週刊原油190704 米国石油週報・メキシコの石油精製設備稼働率低下

週刊原油190509米国石油週報 EIA短期需給予測5月号.xlsx

北米からの原油供給量は 2011 年は前年比日量 +21 万バレル増であったが 2012 年は前年比 +158 万バレル増となり 2013 年は +130 万バレル増 2014 年は +92 万バレル増と見込まれている 北米を含めた OECD 先進諸国からの供給は 2011 年は +1 万バレル増

原油価格の動向 2019 年 2 月 株式会社三井住友銀行 コーポレート アドバイザリー本部企業調査部 本資料は 情報提供を目的に作成されたものであり 何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません 本資料は 作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づいて作成されたものですが

本文

米国における石油企業の開発動向

週刊原油170406米国の石油週報・中国に対する非OPEC諸国原油の増加

週刊原油171207米国石油週報・米国中西部の原油輸入増加

ecuador

2016年度までの日本の経済・エネルギー需給見通し

週刊原油171026米国石油週報・EIAの短期需給予測

週刊原油170713米国石油週報 短期需給予測

2 Ⅰ. 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の動向 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の伸び アジア 太平洋における油種別の需要伸長予測 アジア 太平洋域内での需給バランスと地域外からの輸出入 ( ガソリン 軽油 ) アジア 太平洋の需要伸長は大きく 域内及び域外との石油製品輸出入が多く 競争が

[000]目次.indd

インドネシア港(%) ラリア査対象とするが 一部の国については統計上の制約から部分的な言及にとどめている 2. 原油価格上昇の影響に関する理論的考察 (1) 油価上昇と交易条件 交易利得 / 損失本稿では 交易条件の変化により起こる国家間の所得移転を示す交易利得 / 損失を油価上昇の影響を測る手段と

TOPICs 世界の原油需給 by OPEC Oil Market Rerort 214 年 3 月号より 世界の原油需要 世界の原油需要 28 年 29 年 21 年 211 年前年比 212 年前年比 213 年 OPEC Oil Market Report 214 年 3 月号 前年比 28

Microsoft Word _out_l_co_heavy_oil.doc

週刊原油170518米国石油週報・OPEC5月号

2/4 ページ 2 原油価格下落による MLP の中流エネルギー事業への影響 MLP の時価総額の約 5% は中流セクター 214 年 11 月末現在 米国の MLP( マスター リミテッド パートナーシップ ) は 122 銘柄が上場しており 総時価総額 は 5,323 億米ドル ( 約 3 兆円

スーパーメジャー: 「スケール」から「クオリティ」へ

Invesco Premia Plus Fund

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

untitled

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

Microsoft Word ミル消費報告2014

<4D F736F F D E937890AC96F18EC090D195F18D C A E646F63>

目 次 Ⅰ. 総括編 1. 世界各地域の人口, 面積, 人口密度の推移と予測およびGDP( 名目 ) の状況 ( 1) 2. 世界の自動車保有状況と予測 ( 5) 3. 世界の自動車販売状況と予測 ( 9) 4. 世界の自動車生産状況と予測 ( 12) 5. 自動車産業にとって将来魅力のある国々 (

(Microsoft Word \224N\203\215\203V\203A\213\311\223\214\223\212\216\221.doc)

確実に縮小する国内の石油市場 1 我が国の石油製品需要は ピーク時の 1999 年から 3 割減少 2030 年までに更に約 2 割減少する見込み 我が国の石油精製能力と石油製品需要量の推移 我が国の石油製品需要量の見込み 石油精製能力 ( 万 BD)

目次 年度第 3 四半期決算 (1) 概要 (2) セグメント別情報 年度業績予想 (1) 概要 (2) セグメント別情報 3. 参考資料 1

表 2.1 世界のGDP 成長率 (%) 年 北米 中南米 ヨーロッパ 旧ソ連圏

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

第1章

現代資本主義論

目次 Ⅰ エネルギー供給の概要 1. 主要国の一次エネルギー供給構成 1 2. 主要国の石油輸入依存度 2 3. 我が国の一次エネルギー供給状況の推移 3 Ⅱ 石油 1. 世界の石油消費量の推移 4 2. 我が国の石油需給原油輸入状況 ( 国別 ) 5 製油所の能力と立地状況 6 石油製品生産量の推

【No

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

リムLNG年鑑2010

LNGチェーンにおける事業者の変化とわが国の課題に関する調査

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

目次 Ⅰ エネルギー供給の概要 1. 主要国の一次エネルギー供給構成 1 2. 主要国の石油輸入依存度 2 3. 我が国の一次エネルギー供給状況の推移 3 Ⅱ 石油 1. 世界の石油消費量の推移 4 2. 我が国の石油需給原油輸入状況 ( 国別 ) 5 製油所の能力と立地状況 6 石油製品生産量の推

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

原稿メモ

PISAPミニレポート

扉〜目次

1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

【表示サンプル】 昭和シェル石油

03_2_oil

ガス市場について

我が国中小企業の課題と対応策

目次 Ⅰ エネルギー供給の概要 1. 主要国の一次エネルギー供給構成 1 2. 主要国の石油輸入依存度 2 3. 我が国の一次エネルギー供給状況の推移 3 Ⅱ 石油 1. 世界の石油消費量の推移 4 2. 我が国の石油需給原油輸入状況 ( 国別 ) 5 製油所の能力と立地状況 6 石油製品生産量の推

第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

特集 ロシア NIS 圏で存在感を増す中国特集 ロシアの消費市場を解剖する Data Bank 中国の対ロシア NIS 貿易 投資統計 はじめに今号では ロシア NIS 諸国と中国との経済関係を特集しているが その際にやはり貿易および投資の統計は避けて通れないであろう ただ ロシア NIS 諸国の側

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

<4D F736F F F696E74202D A8E9182CC A4D4C508E738FEA82CC93AE8CFC82C68DA18CE382CC8CA992CA82B5202E >

週刊原油 xlsx

第2部

需要国へと変貌する東南アジアの需要国へと変貌する東南アジアの

出力-トンボなし.indd

( 出所 : 各種資料を基に JOGMEC 調査部作成 ) 図 1 メキシコ湾油流出事故発生後の海底からの漏油箇所 (5 月 3 日 ) ( 左から右に : 海底に横たわるライザーパイプの端 ライザーパイプから突き出た掘管 BOP の損傷部分 ) この背景を油田開発の歴史から説明します 1960 年

最近の油価下落による欧州石油業界への影響と見通し

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

ASEAN との経済関係が再び強まる韓国 ASEAN ASEAN ASEAN ASEAN ASEAN1 16 RCEP 1. ほぼピークに達した対中輸出依存度 (1) 上昇傾向にある対 ASEAN 輸出依存度 ASEAN 2 WTO 21 RIM 213 Vol.13 No.49

Microsoft Word - 報告書.doc

Microsoft PowerPoint - weekly_oil.pptx

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

平成28年 成田空港貿易概況(速報)

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

産業トピックス

2017年第3四半期 スマートフォンのグローバル販売動向 - GfK Japan

スライド 1

2010年における原油価格の見通しについて

週刊原油181129 米国石油週報・その他のニュース

化繊輸入は 近年上昇を続けており 2016 年は前年比 10% 増の 43 万トンとなりました 素材別には ポリエステル F 長繊維不織布が中心ですが 2016 年はポリエステル S の輸入も大幅増となりました 化学繊維輸出推移 化学繊維輸入推移 生産が微減 輸出が横ばい 輸

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

1.1. WTI- ブレント市況格差の推移毎年 7 月に EIA が発表する Refining Capacity Report によれば 2013 年 1 月 1 日時点の 1 日当たりの米国原油処理能力は 前年比 50 万バレル増加しており 2012 年の米国製油所稼働の好調さを示している 主な要

別紙2

特集 平成 2 5 年 5 月 2 2 日東京税関調査部調査統計課 金の輸出入 2012 年の世界の金需要は 4,405 トン 2012 年に合金も含む金を日本は 132 トン輸出し 11 トン輸入しています 日本の 2006 年から 2010 年の平均年間金産出量は 10 トン足らずですが 200

目 次 Ⅰ. 今後の電力需給見通しと燃料について Ⅱ. 原油 重油を巡る状況について Ⅲ.LNGを巡る状況について IV. 石炭を巡る状況について V. 電力の燃料調達について ( まとめ ) 2

<8A C52E786C7378>

030 シェールオイル、シェールガス増産下の米国石油精製産業-その4

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

原稿メモ

< 米国のエタンと欧州 / アジアのナフサの価格比 > ( 重量ベースの価格比 ) カーの稼働率が上昇し プロピレン ベンゼン 及び他の併産物の生産増加につながって 短期的に ( 特に米国において ) シェール関連のビジネスチャンスに影響を及ぼすことが予想される しかし 米国のエタンは アジア及び欧

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 49_2

第2部

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

Transcription:

米国のエネルギーを取り巻く市場 米国ではシェールガス オイルの採掘技術の進歩により生産コストが低下し これまで採算上困難であったシェールガス オイルの生産が商業ベースで可能となってきている すでに多くの議論が紹介されているところであるが 機械を含む製造産業にも影響をもたらす米国エネルギーの最新市場動向や需要予測等について報告する 1. シェール オイル開発と原油生産量の増加 (1) 米国における原油生産量の長期的トレンド米国の原油生産量は 2009 年以降急激に増加し 2017 年の平均生産量は 日量約 930 万バレルまで到達している 2018 年も増産傾向が継続しており 1~6 月の平均生産量は日量約 1,040 万バレル 2018 年 7 月の平均生産量は 過去最高の日量約 1,095 万バレルで これは 2 年前と比べ 25% 増加 10 年間で倍増している結果になる 出所 : 米エネルギー情報局図 1 米国における原油生産量および天然ガス販売用生産量の長期トレンド 14

(2) 主要シェール オイル鉱床シェール オイルの 3 大産地 ( テキサス州のパーミアン地域とイーグル フォード地域 ノース ダコタ州のバッケン地域 ) での生産量は 全体の約 50% を占めている 広い鉱床を有し 生産性 経済性に優れるテキサス州中西部パーミアン堆積盆地に開発が集中している 2017 年平均では国内原油生産量全体の 26% に相当する日量約 250 万バレルを生産しているが 掘削コスト 操業コストの低減化も進んでおり 今後も同地域からの増産が継続する見込みである 図 2 主要シェール オイル鉱床 出所 : 米エネルギー情報局 ( 単位 : 千バレル / 日 ) 出所 : 米エネルギー情報局公表月間データを基に JPEC 作成図 3 米国原油生産量 15

(3) 原油の国際指標価格推移 2017 年は 掘削済み未仕上げ (DUC) の坑井数が前年末比で 4 割程度増加している これは主にパーミアン堆積盆地において DUC 坑井数が 2016 年第 4 四半期以降 大幅に増加していることによるものであり 2018 年に入っても DUC 坑井数は増加傾向にある 2018 年 6 月現在 主要 5 鉱床のみで 7,000 坑以上 うち約 3,400 坑はパーミアン地域である 油井掘削技術の進歩や震探データの活用などにより 新規開発油井の損益分岐点は 2017 年第 1 四半期にバレル当たり 50 ドルを下回るレベルまで低下したが 最近の原油価格の上昇に伴い 2018 年第 1 四半期はやや上昇となっている 操業費割れにより生産井停止が必要な水準は 2018 年第 1 四半期で 33 ドル程度である いずれも 現在の WTI 価格水準 (8 月 13 日現在 :67 ドル程度 ) を大幅に下回っている 出所 : 米エネルギー情報局およびダラス連邦準備銀行提供データより JPEC 作成図 4 原油の国際指標価格 ( スポット価格 ) 推移と 米国における新規坑井の損益分岐点および既存生産井の限界コストの推定値 (4) 米エネルギー情報局による米国原油生産量の将来の見通し今後数年間は パーミアン地域 バッケン地域などにおけるシェール オイルの増産が継続する見込みである 2017 年はシェール オイルの生産増により 米国産原油の 56% が軽質低硫黄原油 (API35 度以上 硫黄分 0.3% 以下 ) である 2020 年には軽質低硫黄原油が占める割合は 60% まで達し その後も シェール オイルなどタイト オイルの生産量は堅調に推移するとのシナリオが描かれている 他方 在来型の原油生産は長期的に減退し 2050 年には 軽質低硫黄原油が占める割合が 70% になる見込み 16

図 5 年次エネルギー展望 (2018) におけるベースシナリオ 出所 : 米エネルギー情報局 今後の米国原油生産量は テキサス州のパーミアン地域とイーグル フォード地域を擁するメキシコ湾岸地域の占める割合がさらに増加する見込みであるが ノース ダコタ州のバッケン地域を擁する中部地域を加えた 2 地域からの原油生産量は 中長期的に米国の全生産量の約 8 割に達する見込みとなっている メキシコ湾岸地域 バッケン地域ともに軽質低硫黄原油の生産割合が高いことが分かる 出所 : 米エネルギー情報局図 6 年次エネルギー展望 (2018) におけるベースシナリオ ( 地域別米国原油生産量の将来見通し ) 17

2. 原油輸出および原油輸入の現状 (1) 米国産原油輸出量の推移オイルショックを背景に 1975 年にエネルギー政策 保存法が導入され 米国生産原油や天然ガスの輸出を原則禁止された 2012 年以降 カナダの大西洋沿岸地域の製油所が米国中部地域で生産される軽質原油の調達が開始され 2012 年から 2013 年 10 月までの輸出量は 日量 10 万バレル程度の水準で推移していた 2015 年 4 月には カナダが日量 52 万バレルの米国産原油を輸入するまでに至ったが カナダの原油輸入市場は飽和状態に近づく結果となり 米国の石油産業は増産するシェールオイルの輸出先として カナダ以外にも売り先を確保する必要性に迫られる 2015 年 12 月には 原油輸出解禁 ( 共和党主張 ) と再生可能エネルギーの税優遇措置 ( 民主党主張 ) を両議会が承認 オバマ前大統領は 再生可能エネルギー対策が含まれていた背景もあり 2015 年 12 月に原油輸出解禁法案に署名した もって 40 年にわたる禁輸期間が全面的に解禁されることとなった その後の輸出量は堅調に増加し 2016 年の輸出量は日量 40 から 80 万バレル程度の範囲で推移している 2016 年 11 月に OPEC Non-OPEC の減産合意が発表されると その翌月は輸出量が落ち込んだものの 2017 年に入り輸出量は急激に増加している 特に 2017 年 9 月以降の増加が顕著で カナダを除く海外諸国向けが増加し 2017 年 10 月には月間平均で日量 173 万バレルの原油を輸出している OPEC と非 OPEC 原油生産国 計 21 カ国による協調減産が行なわれたこと WTI 原油がブレント及びドバイ原油比 3~4 ドル割安に推移し価格競争力を有していたことなども原因にあげられる その後 輸出量はいったん減少したが 2018 年 4 月には単月では日量 176 万バレルまで回復し 5 月以降も輸出量は増加している (2018 年 6 月現在で 230 万バレル水準 ) 出所 : 米エネルギー情報局提供データより JPEC 作成図 7 米国産原油輸出量推移 18

(2) 米国産原油輸出量の国別推移カナダ向け輸出の割合が 2016 年の 61% から 2017 年には 29% へと半減する一方で 中国 韓国向けなどのアジア向けや 英国 オランダなど欧州向け輸出が増加している 特に軽質油の需要のある中国向け輸出の増加が顕著であり 2017 年平均で日量約 22 万バレル ( 全体の 20%) 2018 年第 1 四半期はさらに増加し約 36 万バレルに達してる ( ただし 4 月以降は減少傾向 ) 米国産原油の生産増に加え 国際指標である Brent 油価が米国国内指標である WTI 価格よりも高価格水準で推移したことから 原油輸出解禁後 2 年目にあたる 2017 年は 原油輸出により収益を求める傾向が顕著になった その結果 2017 年の平均輸出量は日量約 110 万バレル ( 原油生産量の 10% 以上 ) となり 2016 年平均から倍増している テキサス州における輸出港やパイプライン輸送能力の拡充など輸出インフラの整備も進んでおり 2018 年も輸出量は増加し 2018 年 1~6 月の平均輸出量は日量約 180 万バレル程度まで増加 ( 原油生産量の 17% 程度 ) した 出所 : 米エネルギー情報局提供データより JPEC 作成図 8 米国産原油の国別輸出量推移 (3) 米国原油輸入量の推移 2015 年 12 月の米国原油輸出の解禁後も 米国の原油輸入量は堅調に推移し 2016 年及び 2017 年の輸入量の平均は 日量 790 万バレル程度である (2018 年 1~6 月現在の平均輸入量もほぼ同水準 ) 米国の石油精製能力の過半数を占めるメキシコ湾岸地域に立地する製油所の多くは 主 19

に南米やカナダ産等の割安な重質原油を輸入し精製することを前提とした装置構成となっており これらの製油所で処理する原油を軽質なシェール オイルに置き換えることは技術的 経済的にも困難であるため シェール オイルの増産が続いている一方で原油輸入量は大きくは減少していない アクセスが容易で安価なカナダからの輸入は増加傾向にあり 現在の輸入量の 4 割程度はカナダ原油となっている 原油生産量が低下しているメキシコからの輸入は若干減少傾向だが カナダにメキシコを加えた北米からの輸入は総輸入量の約半数となっている 出所 : 米エネルギー情報局提供データより JPEC 作成図 9 米国産原油の国別輸出量推移 (4) 米国における原油の純輸入量推移ピークの 2006 年には平均で日量約 1,010 万バレルに達していた原油の純輸入量は 2017 年平均では日量 680 万バレル程度まで減少 2018 年に入っても減少傾向は継続しており 1~6 月平均では日量 620 万バレル水準まで減少している 純輸入量減少の原因としては 米国内製油所の処理原油の一部が輸入品から米国産シェール オイルに置き換えられたことに加え 原油輸出が全面的に解禁された 2015 年末以降 WTI 油価が Brent 油価より割安に推移していることによって 原油輸出が急激に増加していることが挙げられる 20

出所 : 米エネルギー情報局提供データより JPEC 作成 図 10 米国における原油の純輸入量 ( 輸出入ネット ) 推移 3. 米国製油所の状況 (1) 米国の石油精製能力米国製油所の石油精製能力は 世界最大であり 現時点では米国精製能力の 53% にあたる日量 975 万バレルが PADD3( メキシコ湾岸地域 ) に集中している 米国の精製能力は漸増傾向であり 2000 年は日量 1,660 万バレルのところ 2017 年は 1,846 万バレル 2018 年 6 月には 1,859 万バレルまで上昇している PADD3 に立地する製油所は 装置が高度化されていることに加えて低廉な天然ガス利用等により 世界市場において高い競争力を有している 図 11 国防石油行政地区 出所 : 米エネルギー情報局 21

出所 :BP 統計 2017 年版データを基に JPEC 作成 図 12 主要国の石油精製能力の推移 (2) 米国の製油所稼働率全米平均の稼働率は 2010 年以降上昇し 世界平均を上回っている ハリケーン Harvey の影響により昨年 9 月上旬に急落したメキシコ湾岸地域 (PADD3) の稼働率は回復し 2018 年 1~6 月の全米平均稼働率は 92% 程度を維持している 出所 :BP 統計 2017 年版データを基に JPEC 作成図 13 主要国の製油所稼働率の推移 22

4. 石油製品の国内出荷の推移 (1) 国内消費の状況米国では石油製品の国内出荷量の 4 割以上がガソリンであり ガソリンに軽油 /A 重油やジェット燃料を加えた輸送用燃料が 国内出荷量の 7 割以上を占める 出所 : 米エネルギー情報局公表データを基に JPEC 作成図 14 石油製品の米国内出荷の推移 米国内の石油製品の今後の需要予測では 今後 20 年程度は緩やかに減少するものの 堅調に推移する見込みである 自動車燃費の向上などによりガソリン消費は 2050 年までの期間で年率 1.0% の割合で減少 他方 航空輸送需要の伸びにより ジェット燃料は 2050 年までの期間で年率 1.5% の割合で増加するとの見込みである 出所 : 米エネルギー情報局 年次エネルギー展望 (2018 年版 ) の基準ケースを基に JPEC 作成 図 15 石油製品消費の将来見通し ( 熱量ベース ) 23

熱量ベースでの予測では 石油製品 (petroleum and other liquid) は 2050 年までの全 ての期間において エネルギー消費需要を満たす最大のエネルギー源としての地位を占める見込みである 出所 : 米エネルギー情報局 年次エネルギー展望 (2018 年版 ) のベース シナリオ図 16 米国におけるエネルギー消費の将来見通し ( 熱量ベース ) (2) 米国における石油製品の輸出入量バランス推移米国では 石油製品においても総輸入量 ( グラフの赤線 ) が総輸出量 ( グラフの青線 ) を上回っていたが シェール革命による影響などにより 2011 年半ばから輸出量が輸入量を上回るようになった これは LPG や軽油留分の増産 / 輸出量増加に加え 欧州などからのガソリン輸入量が減少したのが主な要因である 2016 年平均では石油製品の総輸出量が総輸入量を日量 200 万バレル程度上回り 2017 年にはネット輸出量が日量 260 万バレルを上回った なお 2018 年 1~6 月の平均は日量 280 万バレル程度の輸出超であり 米国は 現時点で世界最大の石油製品輸出国となっている 24

出所 : 米エネルギー情報局公表の週間データを基に JPEC 作成 図 17 米国石油製品の輸出入量バランス推移 2013 年までは 軽油 /A 重油やガソリンなど輸送用燃料油の輸出が主であったが 2014 年ころよりシェール革命により余剰となった LPG の輸出が急増している 現在は トランプ政権下での積極的なガス輸出政策をとっており LPG 輸出のための設備投資も活発に行われている ガソリンについては欧州などから輸入している一方で メキシコ湾岸地域からメキシコなど中南米諸国に輸出している 図 18 米国石油製品の輸出推移 出所 :Nexant 社 25

2010 年に純輸出になって以来 米国の LPG の輸出は 2017 年までに堅調に増加している 2017 年の米国 LPG の 3 大輸出国は 日本 ( 日量 196 千バレル ) メキシコ( 日量 123 千バレル ) 中国( 日量 123 千バレル ) 輸出の 50% 以上はアジア向けである なお 2017 年に輸出された LPG のうち 約 9 割は PADD3( メキシコ湾岸地域 ) 地域の製油所にて生産 出所 :BP 統計 2017 年版データを基に JPEC 作成 図 19 LPG 輸出相手国 米国の今後の石油製品輸出入バランスの見込みは 2020 年代前半に米国はガソリンを含 む全ての主要石油製品の純輸出国となる見通しである 原油は当面純輸入国に留まるが 石油製品に関しては世界最大の輸出国の立場を維持していくものと予測されている 出所 : 出所 :Nexant 社図 20 石油製品輸出入バランスの見込み 26

5. 最後にシェール革命により米国産原油 天然ガスの生産量は飛躍的に増大し 輸出国としての経済効果も出しつつある 米エネルギー情報局の予測において 今後 25 年程度はテキサス州を中心とするタイト オイルの生産が堅調とのシナリオを描いている トランプ政権下では エネルギー生産の増加による自給率向上と経済成長促進を打ち出しており 今後は 米国のエネルギー政策および日本に与える影響について 引き続き調査していきたい 本資料は 財団法人石油エネルギー技術センター (JPEC) が実施している調査に基づいています 27