ノイズ除去と画像の強調 画質改善 第4章 pp.101~136 入力画像にはさまざまな 雑音 と 歪み が含まれている 画質劣化 の要因を取り除く 画像を見やすくする 有用な情報を抽出しやすく強調する ことは 画像処理の最も重要な役割の一つ 目的 人間にとって見やすい画像を作る 画像の解析や認識にとって 特徴抽出が容易に行えるための 前処理 preprocessing) ノイズ除去と画像の強調 ノイズ除去と画像の強調 画像強調の代表的な手法 濃度変換によるコントラスト強調 ノイズ除去のための平滑化 エッジを強調する鮮鋭化 画像の強調(enhancement)は 見やすい画像を 得る処理で 原画像に忠実しなくてもよい 平滑化 鮮鋭化 画像の低周波成分 高周 波成分の強調処理に相当 方法 劣化過程の数学モデルを構築し その逆変 換により原画像を再現する そして 入力機器や伝送過程で生じる幾何的 歪みや放射量の歪みを取り除く処理 ボケを増やさずに平滑化 雑音を増やさずに 鮮鋭化を達成する非線形処理もある 劣化の原因を取り除き 原画像を忠実に再現 する処理は画像の復元 restoration)である コントラスト強調 コントラスト強調 Xout 濃度階調変換によるコントラスト強調 b 画像の濃度範囲を[c,d]から[a,b]に変換する 最 も簡単なのは線形変換で 次の式で表される xout ( xin < c) a b a = ( xin c) + a (c xin d ) d c ( xin > d ) b a c d Xin 1
Xout 2 値化 原画像 2 値化 b T=44 a 閾値 T Xin T=82 T=154 Xout 白黒逆転 白黒逆転 b a Xin 2 段階コントラスト強調 Xout 2 段階コントラスト強調 b a Xin 2
擬似カラー 隣接する画素との濃度差の強調 赤外線カメラにより得られた画像などで 異な る温度ごとに異なる色を割りあてて温度変化 を強調させることがある このように濃淡画素 の濃淡を強調して表示する方法を 擬似カ ラーまたはシュードカラー(Pseudo Color)という 衛星画像で 地球表面の植生の分布などを 分かりやすくした画像がある これは 光の周 波数ごとにRGBの各色を割り当てて 混色とし て画像を表現している このような方法を フォールスカラー(False Color)という 平滑化とぼかし 一般的な画像には 隣同士の画素は似た画素 値を持つ特徴がある ノイズがのった画像も上記の特性が保存されて いると考えられることが多い 例えば 故障した 画素 あるいは画素値に平均値が0のランダム 数値が足された場合 この場合 各画素をその周りの画素の重みつき 平均値に置き換えることにより ノイズを除去す ることができる この処理は平滑化(smoothing)あ るいはぼかし(blurring)と呼ばれる カラーのガウスノイズ 画像ノイズの例とその ヒストグラム 一様ノイズ 一様ノイズ ガウスノイズ ゴマ塩ノイズ カラーの一様ノイズ 3
ノイズなしの画像とノイズのみの画像 ノイズなしの画像とノイズ画像のスペクトル 低周波数 成分の方 は強い. 一様 周波数=0 周波数=0 ノイズ 画像 中央にある行の上の画素のスペクトル ノイズ無の画像とノイズ画像との和 もう一つの例 ある周波数を 超えると ノイズの方が 強くなる (v, u ) 2< (v, u ) 2 (v, u ) 2> (v, u ) 2 (v, u ) 2< (v, u ) 2 元画像 ノイズ画像 画像 ノイズ 移動平均フィルタ ある画素を中心とした近傍領域内の濃度値 の平均を出力する処理をすべての画素につ いて行えば 濃度値の変化が滑らかになり 平滑化の効果がある 移動平均フィルタでは フィルタの重み係数 がすべて等しい 4
Gaussian平滑フィルタ 平滑フィルタ 平滑化による画像のボケを少しでも防ぐために 注目 平滑化による画像のボケを少しでも防ぐために 注目 画素 近傍の重みを大きくした加重平均フィルタもよく用 近傍の重みを大きくした加重平均フィルタもよく用 いられ その代表はGaussianフィルタである フィルタである いられ その代表は Gaussianフィルタの核は下記の フィルタの核は下記のGaussian関数である 関数である フィルタの核は下記の 平滑フィルタの応用1 ノイズ除去 x2 + y2 Gσ ( x, y ) = exp 2πσ 2 2σ 2 1 平滑フィルタの応用2 新聞などの印刷物にある白黒写真の処理 5
平滑フィルタの応用 3 縮小画像をきれいに 6
スキャンした印刷物の画質の改善 Image from Adobe Photoshop CS2 documentation. 7
CMYK 標準ハーフトンスクリーン ハーフトンの模様 cyan magenta 105 75 yellow black 90 45 space domain images 拡大画像 ぼかしによるノイズ削減 ガウシァンぼかしの結果(σ=2) blurred σ = 2 差 元画像 128 0 結果は理想的でない ノイズは少なくなる が 画像もボケる 中間値フィルター Median Filter 非線形フィルタによる平滑化 周囲の画素の中間値が結果となる 移動平均や加重平均フィルタは一種のローパ スフィルタであるため 高周波成分の情報が 失われエッジが鈍るなどの問題がある 非線形である 平均値を返す意味で 一様移動平均フィルターと似ている 一様移動平均フィルターと異なるところ ステップエッジがボケな い メディアンフィルタおよびエッジ保存フィルタは 非線形フィルタであるが 上記のような問題が 生じにくいためよく用いられる 8
メディアンフィルタ 3 3のメディアンフィルタの処理例 ノイズがのっているステップエッジ 移動平均ぼかし 9近傍 メディアンフィルター 9近傍 メディアンフィルター vs. ぼかし median blurred noisy step 9
2値画像の結果 2値画像の結果 Noisy Original 処理した画像 ノイズのない元画像 Noisy Original Noisy Noisy 3x3-blur x 1 3x3-median x 1 3x3-blur x 2 3x3-median x 2 10
3x3-blur x 3 3x3-median x 3 3x3-blur x 4 3x3-blur x 5 3x3-median x 5 3x3-median x 4 3x3-blur x 10 3x3-median x 10 カラーメディアンフィルター カラーメディアンフィルター Jim Woodring A Warm Shoulder ノイズ画像 3 3 color median filter applied once 3 3 color median filter applied twice www.jimwoodring.com 11
エッジ保存フィルタ (Edge-Preserving Filter) 近傍領域を図に示すような小領域に分割し それぞれの領域ごとに濃度の分散を計算する エッジが含まれる領域では分散が大きくなる という性質があるため それぞれの小領域の 分散が最も小さくなる小領域の平均値を出力値 とする これによりエッジをぼかすことなく雑音が取り 除かれ エッジ自体も鮮鋭化される エッジ保存フィルタに おける領域の分割例 ただし メディアンフィルタよりもさらに計算量 が多いという欠点がある フィルタによるノイズ除去 12
フィルタによるノイズ除去 鮮鋭化 図より ゴマ塩ノイズのようなスパイク状のノ イズは加重平均フィルタでは取り除くことは難 しいが メディアンフィルタでは良好に除去で きることが分かる 画像の濃度値が本来は急変しているべき 輪郭の部分などで濃度値の変化がゆるや かになっている場合 図形の輪郭がぼやけ た画像となる だたし メディアンフィルタはデータの並び替 え ソーティング の処理に時間がかかるため 線形平滑化フィルタに比べて一般的に計算時 間は長くなる このような画像に対しては 濃度値の変化 を強調することで鮮明な画像が得られる この処理を画像の鮮鋭化(Sharpening) また は鮮明化 という ラプラシアンフィルタ (Laplacian Filter) 鮮鋭化の手法の一つに 原画像の2次微分であるラプラシアン 鮮鋭化の手法の一つに 原画像の 次微分であるラプラシアン フィルタによる結果を原画像から差し引く方法がある ラプラシアンフィルタ 続 図より 原画像にはないくぼみ(アンダーシュート)と こぶ オーバーシュート が生じており また エッジ の傾斜も大きくなっている これにより エッジ部分の濃度値の変化が強調さ れ 鮮明な画像となる f x2(if,(ij,) j=) =f (if xx+(1i,, jj)) + ff (yyi,(ij,) j ) = f (i, j 1) + f (i 1, j ) 4 f (i, j ) + f (i + 1, j ) + f (i, j + 1) f y (i, j ) = f (i, j + 1) f (i, j ) ラプラシアンフィルタ 続 ラプラシアンフィルタ 続 以下にその具体的な計算法について述べる ディジタル画像 においては 微分は差分により代用される いま x方向および y方向の一次微分をそれぞれ次式のように計算される 上式の重み係数に注目すれば 本フィルタのオペレータは(a) のように得られる これは隣接する上下左右の4画素につい ての2次微分を用いた場合のオペレータ 4近傍鮮鋭化フィル タ であるが 斜め方向に隣接する画素を含む8画素におけ る鮮鋭化フィルタ 8近傍鮮鋭化フィルタ は(b)のようになる 0-1 0-1 -1-1 -1 5-1 -1 9-1 0-1 0-1 -1-1 (a) 4近傍鮮鋭化フィルタ (b) 8近傍鮮鋭化フィルタ f x (i, j ) = f (i + 1, j ) f (i, j ) f y (i, j ) = f (i, j + 1) f (i, j ) 2次微分について もう一度差分を取れば次式のように求まる 次微分について もう一度差分を取れば次式のように求まる f xx (i, j ) = { f (i + 1, j ) f (i, j )} { f (i, j ) f (i 1, j )} = f (i 1, j ) 2 f (i, j ) + f (i + 1, j ) f yy (i, j ) = { f (i, j + 1) f (i, j )} { f (i, j ) f (i, j 1)} = f (i, j 1) 2 f (i, j ) + f (i, j + 1) ラプラシアンは 以下のように定義される 2 f (i, j ) = f xx (i, j ) + f yy (i, j ) = f (i, j 1) + f (i 1, j ) 4 f (i, j ) + f (i + 1, j ) + f (i, j + 1) 原画像からラプラシアンを差し引けば 鮮鋭化された画像が得 られる g (i, j ) = f (i, j ) 2 f (i, j ) = f (i, j 1) f (i 1, j ) + 5 f (i, j ) f (i + 1, j ) f (i, j + 1) 13
8近傍鮮鋭化フィルタにより鮮鋭化を行った例 近傍鮮鋭化フィルタにより鮮鋭化を行った例 8近傍鮮鋭化フィルタにより鮮鋭化を行った例 近傍鮮鋭化フィルタにより鮮鋭化を行った例 鮮鋭化の問題点 ノイズ強調 鮮鋭化処理がノイズに対する効果 鮮鋭化処理は 空間周波数の高い成分を強調する効果があ る 画像のエネルギー分布は 低周波成分に集中 ノイズ成分は 低周波 高周波 に渡って一様 高周波強調 画像成分より ノイズ成分はより強調される 元画像 鮮鋭化処理がノイズに対する効果 元画像の鮮鋭化 ノイズある画像の鮮鋭化 ノイズのある画像 鮮鋭化処理がノイズに対する効果 元画像 鮮鋭化の結果 14
鮮鋭化処理がノイズに対する効果 ノイズ画像鮮鋭化の結果 1. 図 1 に示す画像に対して 3x3 の移動平均フィルタを用いて処理しなさい 但し 最外周の画素を処理しないこと 30 50 30 60 90 80 70 80 8 8 12 20 28 36 40 40 40 0 50 30 75 85 90 75 8 8 12 20 28 36 40 40 50 30 40 30 75 0 80 85 19 19 20 23 26 28 30 30 30 50 30 60 90 80 70 80 30 30 28 26 23 20 19 19 40 99 50 30 75 85 90 75 40 40 36 28 20 12 8 8 50 30 40 30 75 75 80 85 40 40 36 28 20 12 8 8 図 1 図 2 2. 図 1 に示す濃淡画像に対して 3x3 のメディアンフィルタを用いて処理しなさい 但し 最外周の画素を処理しないこと 3. 次の 3x3 の鮮鋭化フィルタを用いて 図 2 の濃淡画像の鮮鋭化を行ってください 但し 最外周の画素を処理しないこと 0-1 0-1 5-1 0-1 0 4 近傍鮮鋭化フィルタ 15