2007 年 6 月 27 日経済産業省 の概要 経済産業省は 今般 急速に拡大している自動車 携帯電話等に内蔵されているソフトウェア ( 組込みソフトウェア ) に関し その実態を把握するために 組込みソフトウェアに係わる企業 技術者等を対象として調査を行いました その結果 組込みソフトウェア品質の二極化やスキルレベルの高い技術者の不足などの課題が浮き彫りになりました それらを踏まえ 経済産業省では 人材育成 信頼性向上のための技術開発 ソフトウェア エンジニアリングの実践などからなる組込みソフトウェア産業競争力強化策を推進していきます 組込みソフトウェア産業実態調査の概要 < 調査方法 > 2006 年 12 月 ~2007 年 3 月にかけて 組込みソフトウェア産業に関連する工業会 協会に所属する約 7,500 社の経営者 組込みソフトウェア開発プロジェクト責任者 組込みソフトウェア技術者にアンケート調査を実施 ( 有効回答数 :311 事業部門 (293 社 ) 525 プロジェクト 組込みソフトウェア技術者個人 769 名 ) < 結果概要 >( 図は別紙を御参照下さい ) (1) 組込みソフトウェア産業規模は急拡大我が国の組込みソフトウェア開発の規模は 約 3 兆 2,700 億円 ( 対前年比 19.8%) に増加し 急拡大しています (2) 組込みソフトウェア品質の二極化が拡大 図 1 製品出荷後の品質問題を起こした製品の比率は この 3 年間で なし が 8% から 30% へと増加し 高い品質の製品供給が急拡大しています その一方で 品質問題を発生している製品の比率が 30% 以上 の企業も 14% から 27% と倍増しています このことは 高品質の組込みソフトウェア開発ができる企業が増加しているとともに そのような体制が構築できていない企業も増加しており 組込みソフトウェアの信頼性という観点から見て企業の組込みソフトウェア開発能力が二極化していると考えられます (3) 組込み製品の品質問題の 4 割以上はソフトウェア不具合が原因 図 2 組込み製品出荷後の品質問題の最も大きな原因として ソフトウェアの不具合 は 43.8% で 2 位の 製品企画 仕様の不具合 (17.9%) 3 位の ハードウェア設計の不具合 (16.9%) に比べて大きな割合を占め
ています これらの設計上の不具合は 全体の約 80% を占めており 組込み製品では 従来の工業製品の主要な不具合原因であった 製造上の不具合 運用 保守の不具合 は計約 16% と割合は少なく 様相が異なっております (4) 不足する職種 :1 位ブリッジ SE 2 位 QA スペシャリスト 図 3 組込みソフトウェアの大規模化に伴い 複数拠点にまたがる拠点での開発が必要となっていることから 分散する複数拠点間を結んで一つの開発チームとして機能させるブリッジ SE の不足が顕著となっています ( 不足率 76%) 高品質な組込みソフトウェア開発を行うための QA( 品質管理 ) スペシャリスト ( 不足率 60%) の不足がこれに続いています (5) 高いスキルを持つ組込みソフトウェア技術者に人材需要が集中 図 4 エントリレベル ( 入門者 ) の技術者の不足率が 28% であるのに対して ハイレベル ( 熟達者 ) の技術者の不足率は 65% となっており 高いスキルを持つ組込みソフトウェア技術者に人材需要が集中しています 注 1) エントリレベル : 上位レベルの指導の下で 業務上の課題の発見 解決しながら遂行できる ミドルレベル : 業務上の課題の発見 解決をリードしながら遂行できる ハイレベル : テクノロジーやメソドロジー ビジネスをリードしながら遂行できる または 新技術開発や標準化などにより社内 社外をリードしながら遂行できる (6) 品質向上 人材育成を目的にソフトウェア エンジニアリング手法を導入 図 5 図 6 注 2 ソフトウェア エンジニアリング センター (SEC) 成果物注 3 の導入目的の選択理由として 品質向上 が80% 以上と最も高く ついで 人材育成 が70% 以上となっています 組込みソフトウェアが抱える主要な課題を解決するためにSEC 成果が有効であると認識されており 既にSEC 成果物を導入している70% 以上の企業が 期待以上 期待どおり と高い評価を与えています 注 2) 独立行政法人情報処理推進機構内に2004 年設立 : 所長鶴保征城注 3) 組込みソフトウェアスキル標準 ETSS 組込みソフトウェアコーディング作法 ESCR 組込みソフトウェア開発プロセス標準 ESPR 組込みソフトウェアプロジェクトマネジメント標準 ESMR は経済産業省のホームページよりダウンロードできます
( 参考 ) 組込みソフトウェア産業競争力強化策上記の調査結果等を踏まえ 経済産業省として下記の施策を推進していきます 人材育成策高度なスキルを有する高度組込みソフトウェア開発人材の育成を加速するため 組込みソフトウェア開発に必要となる知識 スキルを体系的に整理した組込みスキル標準 (ETSS) の開発 普及を進めます ETSS により スキルの見える化を促進し スキル管理 キャリアアップ等を効果的に推進します その際には 自動車 産業機器等といった業界に標準的なスキル体系となることを目指します 信頼性向上のための技術開発自動車のエンジンやブレーキなどの制御向けの高信頼な基盤ソフトウェアを有限責任中間法人 JASPAR への委託により開発します また 信頼性の高いソフトウェアを作り出す開発ツール ( 設計支援 動作検証など ) を整備するとともに 開発プロセス標準 (ESPR) プロジェクトマネジメント標準 (ESMR) 等を適用することで 開発工程の高信頼化 効率化を実現する開発手法を確立します ソフトウェア エンジニアリングの更なる実践 ( 独 ) 情報処理推進機構ソフトウェア エンジニアリング センター (SEC) と連携して 組込みソフトウェア開発の生産性 信頼性を向上させる 3 手法 ( 開発プロセス標準 ESPR プロジェクトマネジメント標準 ESMR コーディング作法 ESCR) の高度化を進めるとともに 開発現場での適用を拡大していきます 本件に関するお問い合わせ先経済産業省商務情報政策局情報処理振興課安田 渡辺 TEL:03-3501-2646 FAX:03-3580-6073 独立行政法人情報処理推進機構ソフトウェアエンジニアリングセンター牧内 TEL:03-5978-7543 FAX:03-5978-7517
別紙 図 1 製品出荷後の設計品質問題の発生率 なし 10% 未満 10~20% 未満 20~30% 未満 30% 以上 2005 年 2006 年 2007 年 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 出典 : ( 経営者 向け調査報告書 ) 図 2 製品出荷後の品質問題の原因 製造上の不具合 12.7% 運用 保守の不具合 3.7% その他 5.0% 製品企画 仕様の不具合 17.9% ハードウェアの不具合 16.9% ソフトウェアの不具合 43.8%
図 3 職種別不足率 プロダクトマネージャ 52% プロジェクトマネージャ 53% システムアーキテクト 43% ソフトウェアエンジニア 35% テストエンジニア 42% ドメインスペシャリスト 45% QA スペシャリスト 60% 開発プロセス改善スペシャリスト 56% 開発環境エンジニア 54% ブリッジ SE 76% 42% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 図 4 キャリアレベル別不足率 ハイレベル 65% ミドルレベル 41% エントリレベル 28% 42% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%
図 5 SEC 成果物を導入 検討している目的 1 番目 2 番目 3 番目 経営者 品質向上のため 人材育成のため 生産性向上のため 開発期間短縮のため 社会的な要請に応えるため コストダウンのため 人材確保のため 事業拡大のため 取引要件を満たすため その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 図 6 SEC 成果物の導入効果 期待以上期待どおり期待以下わからない 経営者 導入済み 導入検討中 導入は未定 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%