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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

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調査実施の背景 今日 様々な調査において 仕事上重要な能力の1つとして コミュニケーション能力 が上位にあげられています しかし 一言でコミュニケーション能力といっても 企業で求められるそれは多岐にわたり 具体的にどのような能力がどのような人で重要ととらえられ 各人においてそれぞれのコミュニケーショ

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参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若

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調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル


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「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

<4D F736F F D20819D819D F F9193C18F FEA816A8DC58F4994C52E646F6378>

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電通総研、「女性×働く」調査を実施

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2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

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三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名


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派遣社員の評価に関する 派遣先担当者調査結果

「新入社員意識調査」に関するアンケート調査結果

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男女共同参画に関する意識調査

第三章:保育士の就業・就職行動と意識

地域包括支援センターにおける運営形態による労働職場ストレス度等の調査 2015年6月

関東地方の者が約半数を占める (45.3%) 続いて近畿地方 (17.4%) 中部地方 (15.0%) となっている 図表 2-5 地域構成 北海道 東北関東中部近畿中国四国九州 沖縄総数 (%) 100.0% 8.9% 45.3%

man2

働き方の現状と今後の課題

調査結果 転職決定者に聞く入社の決め手 ( 男 別 ) 入社の決め手 を男 別でみた際 性は男性に比べると 勤務時間 休日休暇 育児環境 服装 オフィス環境 職場の上司 同僚 の項目で 10 ポイント以上 かった ( 図 1) 特に 勤務時間 休日休暇 の項目は 20 ポイント以上 かった ( 図

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

25~34歳の結婚についての意識と実態

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第2回「若手社員の仕事・会社に対する満足度」調査 

25~44歳の子育てと仕事の両立

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

調査概要 1) 調査期間 2013 年 2 月 4 日 ~3 月 20 日 2) 調査方法 1 施設調査 2 個人調査とも 自記式調査票を郵送配布 回収 3) 調査対象 1 全国の 8,633 病院の看護管理代表者回収数 2,651 件 ( 回収率 30.7%) 2 本会会員 1 万人を無作為抽出有

PowerPoint プレゼンテーション

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離職経験は圧倒的に女性に多く 男性 5% に対して女性の 14% が離職経験ありと回答している 離職の理由 ( 複数回答 ) の第一位は男女ともに キャリアアップ ( 約 50%) であるが 2 番目に多い項目で男女で差があり 男性は 職務の内容 ( 研究テーマを含む ) (40%) であるのに対し

調査結果 1. 働き方改革 と聞いてイメージすること 男女とも 有休取得 残業減 が 2 トップに 次いで 育児と仕事の両立 女性活躍 生産性向上 が上位に 働き方改革 と聞いてイメージすることを聞いたところ 全体では 有給休暇が取りやすくなる (37.6%) が最も多く 次いで 残業が減る (36

質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21


男女共同参画に関する意識調査

2019 年 3 月 経営 Q&A 回答者 Be Ambitious 社会保険労務士法人代表社員飯野正明 働き方改革のポイントと助成金の活用 ~ 働き方改革における助成金の活用 ~ Question 相談者: 製造業 A 社代表取締役 I 氏 当社における人事上の課題は 人手不足 です 最近は 予定

第5回 「離婚したくなる亭主の仕事」調査

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

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最初に あなたの働く目的は何ですか? という質問をしたところ 20~50 代のすべての年代において 生活 家族のため と答えた人が最も多かった その割合は 20 代が 63.6% 30 代が 74.0% 40 代が 83.8% 50 代が 82.5% だった また 全年代共通で 第 2 位が 自由に

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

目次. 独立行政法人労働政策研究 研修機構による調査 速報値 ページ : 企業調査 ページ : 労働者調査 ページ. 総務省行政評価局による調査 ページ

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労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

調査結果 ~~ 中の働き方 ~~ 中の 日の労働時間 約 8 時間 が最多 9 時間以上 は 割半 正社員 正職員では 9 時間以上 が 4 人に 人以上 9 時間以上 働くことが多かった早産した人では 4 人に 人 流産してしまった人では 5 人に 人の割合に 中の働き方 立ったままの仕事が多かっ

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(2) 予定される行動計画導入方法 ( 問 21 で 2 策定に向けて検討中である と答えた方へ ) 付問 1 一般事業主行動計画は どのような方法で導入する予定ですか ( はいくつでも ) 次世代育成支援対策推進法に基づく 一般事業主行動計画 を策定に向け検討中の事業所で どのような方法で導入する

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

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2. 有期契約労働者を雇用しているか 設問 1 パート アルバイト 契約社員 嘱託 派遣社員などの有期契約労働者を雇用していますか 選択肢 1 雇用している 2 雇用していないが 今後雇用する予定 3 雇用していないが 以前雇用していた 4 雇用しておらず 今後も雇用しない予定 全体

<4D F736F F F696E74202D FA8C6F B938C8FD888EA95948FE38FEA8AE98BC6817A81758A4F8D91906C97AF8A7790B682CC8DCC977082C693FA967B8CEA945C97CD82C98AD682B782E992B28DB881768C8B89CA838C837C815B83678DC58F4994C52E70707


リスモン調べ 第4回 離婚したくなる亭主の仕事

調査の背景 わが国は今 女性の活躍推進を掲げ 結婚や出産をしても働き続けることを後押しする社会を目指しています しかしながら 出産後も働き続ける女性は未だ半数にとどまっているばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も多くありません こうした中 北海道においても地域や職場 家庭などのさまざまな

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

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日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

第2回「離婚したくなる亭主の仕事」調査

IT 人材のプロフェッショナル意識調査2009

回答者のうち 68% がこの一年間にクラウドソーシングを利用したと回答しており クラウドソーシングがかなり普及していることがわかる ( 表 2) また 利用したと回答した人(34 人 ) のうち 59%(20 人 ) が前年に比べて発注件数を増やすとともに 利用したことのない人 (11 人 ) のう

スライド 1

調査の背景と目的 健康長寿社会の実現がわが国の重要課題となる中 企業が人々の健康づくりに取り組むことを促す動きが広がっています また 健康経営 という観点から 企業が従業員の健康づくりに取り組んだり それを推進したりする動きもあります こうした動きと並行して 従業員の健康づくりへの取り組み状況等に関

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第1回「離婚したくなる亭主の仕事」調査

◎公表用資料

Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

日本医師会男女共同参画についての男性医師の意識調査 クロス集計

ニュースリリース:P&G「ダイバーシティ時代の“管理職1000人の本音”調査」を実施(参考資料)

2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

質問 1 何歳から 長生き だと思いますか? 男性 女性ともに 80 歳 がトップ ( 合計 :42.3% 男性 :43.2% 女性 41.3%) 平均すると 男性が 81.7 歳 女性が 83.0 歳 と女性の方がより高年齢を 長生き と思うという 傾向があり 女性の 5 人に 1 人 (20.8

Transcription:

Report 職場でのコミュニケーションの現状と課題 性 雇用形態 職位の違いによるギャップ 上席主任研究員宮木由貴子目次 1. はじめに 12 2. 職場のコミュニケーション 13 3. 性 雇用形態 職位別にみたコミュニケーション相手 16 4. 職場の人間関係の自己評価と満足度 19 5. 考察 21 要旨 1 今日の職場においては 女性管理職や男性非正規社員が増加するなど 様々なライフスタイルや事情 背景を持つ就労者によって構成されているケースが多くなった こうした中 職場でのコミュニケーションの実態を探るべくアンケート調査を実施した 2 職場の人と楽しい人間関係を築きたい 職場の仲間を信頼している とする人は 大企業の男性管理職で最も多かった 職場の同僚や部下が悩んでいたら 積極的に相談に乗ったりフォローをする 職場の人たちには 何かと気配りするように心がけている 業務を円滑に進める上で タイプの合わない人ともうまく付き合うべきだと思う とする割合は 大企業の女性管理職で多かった 3 男性は女性より 異性と仕事をするより 同性と仕事をするほうが楽である と考える人が多い また 中小企業の女性非正規社員においては 正規社員とのコミュニケーションが難しいと思う割合が他に比べて高かった 4 職場の人間関係における自己評価 満足度は 中小企業の男性非正規社員で最も低い 5 アンケートの結果から 性 雇用形態 職位の違いによって職場におけるコミュニケーションにギャップがある点が確認された 中小企業 大企業の別でも差がみられている 今日の職場でのコミュニケーションを考えるにあたっては 個々の職場独自の事情に合わせて課題を発見し 対策を考える必要性がある キーワード : 職場のコミュニケーション 女性管理職 非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 11

Report 1. はじめに (1) 研究の背景と目的 近年 ライフスタイルの多様化が進んでいる 生涯未婚率は 1990 年には男女とも 5% 前後だったが 2010 年には男性で約 20% 女性で約 10% に達した また 世帯構成も大きく変化している 1990 年から2010 年にかけて単身世帯は約 1.8 倍に増加し 一人親世帯も増えた さらに 25 歳から39 歳の女性就業率が上昇し 共働き世帯も増加している こうした中で 男女共同参画の観点から女性管理職の積極的な登用が推進されている 我が国の女性の管理職は 国際的に見てもその数が極めて少ないことから 2020 年までにあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30% 程度まで引き上げるとする 202030 目標が掲げられ その数値に注目が集まっている アベノミクスにおいても女性の活躍が推進されており 厚生労働省や経団連をはじめとする各団体からも 女性活用に関して企業に向けた提言が出されている ただし 女性の働き方についてみると 男性の就業者の多くが正規社員であるのに対して 女性では非正規社員の占める割合が高い また 出産 育児支援制度があるにもかかわらず 出産を機に退職をする女性は未だ少なくない その背景としては 育児と仕事を両立して 続けられない という事情がある場合と 続けたくない という自らの意思である場合がある また 配偶者の転勤や転職に伴う転居を機に自分の仕事を変える もしくは退職するのは女性であるケースが多く こうした事情も女性の正規社員としての就労継続を難しいものとしている 一方 ライフスタイルの多様性は女性に比べると高くないとされる男性だが それでも多様化の傾向はみられる 例えば男性においても育休の取得が推奨されるようになり 積極的に取得を推進する企業もある また 男性の非正規社員の占める割合も上昇した このように 今日の職場は 様々なライフスタイルや事情 背景を持つ就労者によって構成されているケースが多くなった そこには 例えばキャリア志向の強い女性管理職 就労はあくまで家計補助と位置づける女性 従来の日本型企業の価値観で組織を捉え女性の上司に違和感を覚える人 非正規社員として働く人など 様々な人がおり それぞれが異なる意識を持っている 多様性が高まればこそ 相互理解に向けたコミュニケーションがより重要となると考えられるが こうした状況において職場でのコミュニケーションは円滑に行われているのだろうか そこで本稿では 今日の職場におけるコミュニケーションの現状と課題を明らかにすることを目的として アンケート調査を実施した 12 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

Report (2) 調査概要調査概要と主な属性は図表 1 のとおりである 図表 1 調査概要と主な属性 調査時期 : 2014 年 9 月 27~28 日 調査地域と対象 : 全国の企業に勤める 20~59 歳の男女 1,440 名 調査方法 : インターネット調査 ( 株式会社クロスマーケティング ) 正規社員 管理職 ( 部長 課長 ) 非管理職 ( 係長 役職なし ) 非正規社員 ( 単位 : 人 ) 中小企業大企業 (20~300 人未満 ) (300 人以上 ) 合計 合計 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 合計 720 720 1,440 1,440 2. 職場のコミュニケーション まず それぞれの人が職場に対してどのような意識を持っているかについてみた この場合の 職場 とは 勤め先の中で主に仕事をしている部 課などを指している (1) 職場の楽しさ 職場の仲間への信頼 職場では わきあいあいと楽しい人間関係を築きたい ( 以下 楽しい人間関係 ) と 職場の仲間を信頼している ( 以下 仲間を信頼 ) についての意識をたずねたものをみる ( 図表 2) 楽しい人間関係 仲間を信頼 ともに 大企業の男性管理職で そう思う ( そう思う と まあそう思う の合計 ) とする割合が相対的に高かった 楽しい人間関係 については 中小企業 大企業ともに 管理職では女性より男性で高く 非管理職と非正規社員では女性で高い傾向がみられた 特に大企業の管理職における男女差は20ポイントと大きく 意識に差がある様子がうかがえる また 仲間を信頼 については 管理職では6 割から7 割を占めた 男性非正規社員では4 割程度と低い一方で 女性非正規社員では半数を超えており 男女で10ポイント近い差があることがわかった 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 13

女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性男性男性男性男性性Report (%) 図表 2 職場のコミュニケーション < 楽しさ 信頼 > 84.9 80 60 40 73.0 57.8 67.2 64.7 61.0 48.3 69.0 51.3 60.9 40.0 66.1 51.7 68.9 70.6 64.2 60.0 58.8 72.0 55.6 66.9 42.7 72.5 51.3 20 100 男職場では わきあいあいと楽しい人間関係を築きたい 職場の仲間を信頼している 0 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 中小企業 大企業 注 : そう思う と まあそう思う の合計 (2) 職場の人への気遣い続いて 職場の同僚や部下が悩んでいたら 積極的に相談に乗ったりフォローをする ( 以下 相談やフォロー ) 職場の人たちには 何かと気配りするように心がかけている ( 以下 気配り ) についてたずねた結果をみる ( 図表 3) まず 全体的にみていずれの回答も男性より女性で 中小企業より大企業で割合が高いことがわかる 最も割合が高かった大企業の女性管理職では 75.4% が 相談やフォロー と回答しているのに対し 最も低かった中小企業の男性非正規社員では 31.8% と その差は 43.6 ポイントに及ぶ 気配り については 中小企業の男性非正規社員のみ半数に満たないとの結果だった 14 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性男性男性男性男性性Report (%) 図表 3 職場のコミュニケーション < 気遣い > 80 79.2 74.8 75.6 75.4 60 55.3 62.9 62.2 67.8 43.9 53.4 49.6 61.9 48.6 45.7 64.7 67.2 59.7 60.2 58.1 48.7 54.7 55.0 67.5 40 31.8 20 100 男職場の同僚や部下が悩んでいたら 積極的に相談に乗ったりフォローをする 職場の人たちには 何かと気配りするように心がけている 0 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 中小企業 大企業 注 : 図表 2 に同じ (3) 職場の人との付き合い方さらに 業務を円滑に進める上で タイプの合わない人ともうまく付き合うべきだと思う ( 以下 うまく付き合うべき ) と 職場では 理解しあうこと より 衝突しない ことの方が重要だと思う ( 以下 衝突しないことが重要 ) についてたずねたものをみる ( 図表 4) 全体的にみて 図表 3と同様に男性より女性の回答割合が高いことがわかる うまく付き合うべき についてみると 大企業の女性管理職は 85.0% を占めて最も高かった 続いて回答が多かったのは中小企業の女性非正規社員 (80.0%) で これに中小企業の女性管理職 (78.3%) が続いている 一方 割合が低かったのはここでも男性非正規社員で 中小企業 大企業ともに6 割に満たなかった 衝突しないことが重要 が最も高かったのは 大企業の女性非管理職(67.5%) で 以下 中小企業の女性非正規社員 (64.7%) 中小企業の女性非管理職(59.0%) 中小企業の男性非正規社員 (55.2%) と続いた 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 15

女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性男性男性男性男性性Report (%) 図表 4 職場のコミュニケーション < 付き合い方 > 100 78.3 80 71.6 69.5 60 46.2 43.5 44.1 40 男業務を円滑に進める上で タイプの合わない人ともうまく付き合うべきだと思う 72.6 59.0 59.0 55.2 80.0 64.7 78.0 35.6 職場では 理解しあうこと より 衝突しない ことの方が重要だと思う 85.0 42.4 68.1 49.2 77.8 67.5 58.5 48.3 72.5 50.4 20 0 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 注 : 図表 2 に同じ 中小企業 大企業 3. 性 雇用形態 職位別にみたコミュニケーション相手に対する意識 このように 職場のコミュニケーションに対する意識やとらえ方が 属性によって異なる状況下で 就労者は職場の人とのコミュニケーションについてどのように考えているのだろうか (1) 仕事における同性 異性別のやりやすさまず 自分は異性と仕事をするより 同性と仕事をするほうが楽である についてたずねたものをみる ( 図表 5) その結果 あてはまる ( 非常にあてはまる と まああてはまる の合計) と回答したのは 大企業の男性非管理職 (47.9%) 大企業の男性管理職(44.2%) 中小企業の男性管理職 (44.0%) の順で多かった その割合は半数に満たないが 女性の回答結果と比べると差が非常に大きいことがわかる 最も差が大きかった大企業の非管理職では男女差が 30.3 ポイント 大企業の管理職で 29.7 ポイント 中小企業の管理職で 26.0 ポイントとなっていた 16 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

Report (%) 100 8.6 80 60 40 図表 5 自分は異性と仕事をするより 同性と仕事をするほうが楽である への回答割合 47.4 16.2 65.8 8.1 58.6 16.2 55.9 8.6 56.2 14.2 61.1 5.0 50.8 29.9 55.6 8.5 43.6 22.2 60.2 17.5 43.0 20.7 52.6 まったくあてはまらない あまりあてはまらない まああてはまる 20 0 36.2 38.3 39.3 30.7 26.1 30.5 24.3 17.7 22.4 13.5 11.1 12.0 7.8 4.5 7.2 3.6 4.8 7.1 5.8 3.4 8.5 5.6 8.8 4.3 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 管理職 非管理職 管理職 非管理職 正規社員 非正規社員 正規社員 非正規社員 中小企業 大企業 非常にあてはまる (2) 性 雇用形態 職位別にみたコミュニケーションに対する意識続いて 管理職からみた部下 部下からみた上司 正規社員からみた非正規社員 非正規社員からみた正規社員 非正規社員同士 のコミュニケーションについてみる 1) 上司 ( 管理職 ) からみた部下 ( 非管理職 非正規社員 ) とのコミュニケーションの難しさ上司としての管理職の回答をみると 男性管理職で男性の部下とのコミュニケーションを難しいと感じている割合は 中小企業で18.3% 大企業で16.0% であるのに対し 女性の部下とのコミュニケーションについては中小企業で 23.4% 大企業で21.7% となっており 男性より女性の部下とのコミュニケーションのほうが難しいと感じられていることがわかった ( 図表 6) これに対し 女性管理職においても 男性の部下 ( 中小企業 21.6% 大企業 17.4%) より女性の部下 ( 中小企業 28.1% 大企業 27.4%) とのコミュニケーションの方が難しいと感じられている 特に 大企業の女性管理職では 女性部下とのコミュニケーションを難しいと感じる割合 (27.4%) が男性部下とのコミュニケーションを難しいと感じる割合 (17.4%) を10.0ポイント上回っている 男女ともに 管理職は女性部 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 17

中小企業女性 - - 36.0 33.0 大企業Report 下とのコミュニケーションを難しいと感じているのは興味深い結果である 2) 部下 ( 非管理職 非正規社員 ) からみた上司 ( 管理職 ) とのコミュニケーションの難しさ次に 部下としての非管理職からみた男性上司 女性上司とのコミュニケーションについてみる 中小企業においては 女性非管理職と男性非正規社員で 男性上司より女性上司とのコミュニケーションを難しいと考えている人が多いとの結果を得ており 男性非管理職と女性非正規社員においてはその逆の傾向が示されたが いずれもその差は大きくない 一方 大企業ではいずれも男性上司より女性上司とのコミュニケーションが難しいとの回答傾向があり その差は男性非管理職で 12.0 ポイント 女性非正規社員で 10.5 ポイントとなっていた 正規社員 非正規社員 管理職 非管理職 図表 6 上司と部下のコミュニケーションの難しさ 男性の部下とのコミュニケーションは難しい 女性の部下とのコミュニケーションは難しい 男性の上司とのコミュニケーションは難しい ( 単位 :%) 女性の上司とのコミュニケーションは難しい 男性 18.3 23.4 - - 女性 21.6 28.1 - - 男性 - - 27.7 24.2 女性 - - 24.1 29.9 男性 - - 23.2 31.7 管理職正規社員非管理職非正規社員 男性 16.0 21.7 - - 女性 17.4 27.4 - - 男性 - - 22.0 34.0 女性 - - 15.2 21.3 男性 - - 16.1 25.7 女性 - - 21.6 32.1 注 1: 図表 2 に同じ 3) 正規社員からみた非正規社員とのコミュニケーションの難しさ一方 正規社員からみた非正規社員とのコミュニケーションについてみると 男性非正規社員とのコミュニケーションが難しいとする割合は全体的に高くなかったが 女性非正規社員とのコミュニケーションについては 中小企業の男性管理職 大企業の男性 女性管理職で2 割を超えた ( 図表 7) 大企業の男性非管理職においても 19.2% と 約 2 割は女性非正規社員とのコミュニケーションを難しいとした しかし 全体として3 割を超えるものはなく 正規社員からみた非正規社員とのコミュニケーションを難しいと感じる人はそれほど多くないといってよい 18 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

中小企業女性 - - 32.4 29.1 14.0 大企業Report 4) 非正規社員からみた正規社員とのコミュニケーションの難しさこれに対し 非正規社員からみた正規社員とのコミュニケーションの実態については異なる結果が示された 中小企業についてみると 非正規社員が正規社員とのコミュニケーションに対して難しいと感じる割合は 正規社員が非正規社員に感じる割合よりも高い 特に差が大きかったのは 中小企業の正規社員と女性非正規社員との意識ギャップである 中小企業の女性非正規社員は 正規社員に対するコミュニケーションが難しいと思っている割合が高く 特にそのギャップは男性非管理職との間では 27.5 ポイント ( 中小企業の男性非管理職の回答 4.9% 中小企業の女性非正規社員の回答 32.4%) に及んでいる 一方で大企業ではそれほど大きな差は見られなかった 参考として 非正規社員同士のコミュニケーションに対して難しさを感じるかどうかもたずねたが この結果は正規社員に対して難しさを感じる割合よりも低く コミュニケーションの相手が正規社員か非正規社員かで 感じ方が異なることが示された 正規社員 非正規社員 図表 7 正規社員と非正規社員のコミュニケーションの難しさ 管理職 非管理職 男性の非正社員とのコミュニケーションは難しい 女性の非正社員とのコミュニケーションは難しい 男性の正社員とのコミュニケーションは難しい 女性の正社員とのコミュニケーションは難しい 男性 17.8 20.0 - - - 女性 14.9 17.6 - - - 男性 6.9 4.9 - - - 女性 13.7 11.9 - - - ( 単位 :%) 非正社員同士のコミュニケーションは難しい 男性 - - 19.6 23.4 14.3 管理職正規社員非管理職非正規社員 男性 15.6 21.8 - - - 女性 16.3 24.3 - - - 男性 13.3 19.2 - - - 女性 15.2 14.4 - - - 男性 - - 11.7 19.6 7.2 女性 - - 15.3 21.4 13.8 注 1: 図表 2 に同じ注 2: 調査票中では正規社員を 正社員 非正規社員を 非正社員 としてたずねている 4. 職場の人間関係の自己評価と満足度 (1) 職場の人間関係の自己評価職場の人間関係の自己評価として あなたご自身は 職場でのコミュニケーションについて 自分はうまくやっている と思いますか との設問文でたずねた その結果 うまくやっている ( 非常にうまくやっている と どちらかといえばうまくやっている の合計 ) と回答した割合が最も高かったのは大企業の女性管理職で 84.2% 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 19

Report を占め これに大企業の女性非正規社員では 82.5% と続き 中小企業の女性管理職と大企業の男性管理職がともに 80.0% となった ( 図表 8) それぞれの属性ごとにみると 全体的に男性より女性で評価が高いことがわかる 最も自己評価が低かったのは中小企業の男性非正規社員で 53.3% となっており 最も高かった大企業の女性管理職と比べると 30 ポイント以上の差がみられた 図表 8 職場でのコミュニケーションについて 自分はうまくやっている と思う割合 (%) 100 どちらかといえばうまくやっている非常にうまくやっている 80 67.5 80.0 66.7 70.0 71.7 80.0 84.2 65.0 77.5 64.2 82.5 60 53.3 40 65.8 75.0 61.7 62.5 68.3 70.8 71.7 58.3 66.7 58.3 70.8 50.8 20 0 1.7 5.0 5.0 7.5 2.5 3.3 9.2 12.5 10.8 11.7 6.7 5.8 男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性管理職非管理職管理職非管理職正規社員非正規社員正規社員非正規社員中小企業大企業 (2) 職場の人間関係の満足度最後に 職場の人間関係の満足度についてみる 満足度 ( 非常に満足している と どちらかといえば満足している の合計値 ) は 大企業の女性非正規社員で 72.5% を占めて最も高かった ( 図表 9) これに大企業の女性管理職が 70.8% で続いている 以下 中小企業の女性管理職 大企業の男性管理職 大企業の女性非管理職がいずれも 67.5% で続いた それぞれの属性ごとに比較すると 男性より女性で 中小企業より大企業で満足度が高い傾向がある 最も満足度が低かったのは中小企業の男性非正規社員で 満足度は 46.7% と半数に満たなかった 20 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

女性男性性Report (%) 図表 9 職場の人間関係の満足度 どちらかといえば満足している非常に満足している 80 60 59.2 67.5 55.0 64.2 46.7 50.0 67.5 70.8 60.0 67.5 54.2 72.5 40 20 55.8 60.8 52.5 57.5 45.0 44.2 58.3 60.0 54.2 59.2 50.8 63.3 100 男0 3.3 6.7 2.5 6.7 1.7 女性女性男性男性5.8 9.2 10.8 5.8 8.3 女性女性男性男性3.3 9.2 女性管理職非管理職管理職非管理職 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 中小企業 大企業 5. 考察 今回の調査結果から 性 雇用形態 職位の違いによって職場のコミュニケーションに対する意識や自己評価 満足度に差があり 職場にいる人の多様化が進む中でコミュニケーションの複雑化が進む可能性が示唆された 例えば今回の調査結果にもあるように 正規社員からみた非正規社員とのコミュニケーションと 非正規社員からみた正規社員とのコミュニケーションには明らかな意識ギャップがある また 非正規社員男性の職場コミュニケーションの自己評価や満足度が他に比べて目立って低いことも確認された しかしこうした事実は 職場において漠然とは認識されたとしても 正規社員と非正規社員で共有される機会は少ない しかも 今日の職場にいる人の多様化は性 雇用形態 職位の違いにとどまらない 例えば 年金支給開始年齢の引き上げは 60 歳以降も働く人の増加を促進し 定年後再雇用制度の活用などによって就労者の年齢幅も広がっていく傾向にある また 障害者や外国人の雇用も増加傾向にある 本稿では中小企業と大企業という大きな分類で分析を試みたが 日本企業の多くは中小企業である こうした企業規模の違いに加 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Spring 2015.4 21

Report え 業種や男女比 地域等によっても コミュニケーションの問題が様々であることは想像に難くない 職場にいる人の多様化に伴い 従業員がコミュニケーションの面でとまどうケースは少なくない 多様な人々を受容し 円滑なコミュニケーションができる職場を構築していくにあたっては それぞれの職場ごとに個別の対応を考えていく必要がある そのためにはまず実態の把握が不可欠であるが アンケートやヒアリングだけでは 複雑化した職場の実態を把握することは難しいと考えられる 職場のコミュニケーションの課題は 個々の職場のメンバーが時間をかけてコミュニケーションを重ねていくことでしか把握できないだろう 従来 職場での人間関係の維持や相互理解を図るためのコミュニケーションは ランチや飲み会といった業務外の時間に持たれることが多かった しかし 今日そうした機会は減少傾向にあり 職場のコミュニケーション機会の確保は難しくなっているのが実態である ( 宮木 2015) 加えて 業務時間内のやりとりもメールなどで行われることが多く 対面でのコミュニケーション機会自体が不足している職場も少なくない 飲みニケーション が死語となった今日 職場の人間関係の構築 維持に向けたコミュニケーション機会の確保は ライフスタイルの多様化に伴ってますます難しいものとなるだろう しかし 多様化しているからこそ 相互理解に向けた職場のコミュニケーションが重要であると考えられる こうした意識の下 企業ごとに自社の状況に合わせた職場のコミュニケーションを考えていく必要があるだろう ( 研究開発室みやきゆきこ ) 参考文献 宮木由貴子,2015, 職場のランチ 飲み会はどう評価されているか Life Design Report (Spring 2015.4) 宮木由貴子,2011, 女性管理職の社内コミュニケーションの実態 - 男性管理職 男女一般職との比較から- Life Design Report (Summer 2011.7) 22 Life Design Report Spring 2015.4 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部