中国組織再編税制アップデート 72 号通達が日本企業の中国子会社再編に与える影響

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

フィリピンの税務実務 第1 回 最終源泉税の基礎と最近の動向

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

日本版スクーク ( イスラム債 ) に係る税制措置 Q&A 金融庁

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

チャイナアラート(中国速報)- 第6回, 2012年4月-増値税ゼロ税率課税役務の税金免除、控除及び還付の管理弁法の公布について

税法実務コース 海外勤務者と外国人の出国 入国 滞在時の国際税務 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 1 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 第 7 章 第 8 章 テーマ 1 居住者 非居住者判定テーマ 2 課税範囲についてテー

スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

チャイナアラート(中国速報)-第2回, 2012年1月-2011年度税務確定申告のためのチェックリスト

国外転出時課税制度(出国税)の導入

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

税が課税される所得を生み出す事業活動に使われているか否かを基準に損金算入規制を設けていると考えられます 株式などの出資の取得のために資金を使った場合, 株式から生じる配当やキャピタルゲインは資本参加免税により非課税となります このケースでは, オランダでの課税所得を生じないことが想定されるため, 出

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

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6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

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海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

Invincible

( 外国 ) 同上 ケース ( ) 相続人が取得した全 2 財産に対して課税 ( 外国 ) 国内財産に対しての み課税 ケース ( ) 相続人が取得した全 3 財産に対して課税 ( 外国 ) 同上 ( 平成 25 年度税制改正より ) ケース ( ) 被相続人 相続人いず 4 れも 5 年超居住の場

1 < 目次 > 第 1 部中国進出 ( 進出方式の選定 現地法人 駐在員事務所の開設 ) 4 Ⅰ. 中国進出に際しての組織選定 4 1. 進出形態 ( 駐在員事務所 現地法人 支店 ) 2. 各種形態の特徴 Ⅱ. 現地法人 ( 外商投資企業 ) の設立 6 1. 資本金 2. 現地法人 ( 外商投

?? TAX LAW NEWSLETTER 2017 年 2 月号 (Vol.24) 国税庁 米国リミテッド パートナーシップをパススルー ( 構成員課税 ) と取り扱うとの見解を公表 Ⅰ. はじめに Ⅱ. これまでの議論 Ⅲ. 今回の国税庁の見解の内容 Ⅳ. 最高裁判決との関係 ( 納税者のパスス

完全子会社同士の無対価合併 1. 会社法の規制 100% 子会社同士が合併する場合は 兄弟合併とも言われます 実務上は新設合併はマイナーで 法律上の許認可の関係で一方が存続する吸収合併が一般的です また 同一企業グループ内での組織再編成の場合は 無対価合併が一般的です 簡易合併に該当する場合は 存続

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

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新しい非居住者債券所得非課税制度の概要 < 平成 22 年度税制改正前の制度の概要 > 非居住者等が受ける振替国債及び振替地方債のについては 一定の手続要件を満たせば非課税とされていました しかし 非居住者等が受ける振替社債等のについては 原則 15% の税率により源泉徴収課税がなされていました 非

税効果会計シリーズ(3)_法定実効税率

3 平成 25 年 4 月に給与の支給規程を改訂し 平成 24 年分 10 月にまでさかのぼって実施する こととなり 平成 25 年 4 月の給与支給日に支払うこととなった平成 24 年 10 月から平成 25 年 3 月までの給与改訂差額 A 3 1 給与所得の収入金額の収入すべき時期は 契約又は

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目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

上場株式等の配当等に対する課税

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

メキシコ税制改正の最新動向

外国税額控除 この取り扱いは 平成 21 年度税制改正の 海外子会社の配当の益金不算入制度 ( 法法 23 条の 2) により廃止されました 原則として 平成 21 年 4 月 1 日以降に開始する親会社の事業年度から適用されます ( 附則 6) ただし 租税負担率 25% 以下の軽課税国に所在する

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

間の初日以後 3 年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間 6 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例事業者 ( 免税事業者を除く ) が簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額特定資産の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り ( 以下 高

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

1. 国際的二重課税の発生理由と態様 3 税を行っていますが 諸外国においても 一般に 我が国の場合と同様に 国だけでなく地方公共団体も独自に課税権を有していますので 国の段階と地方公共団体の段階とで重複して 国際的二重課税 が生ずることとなっています 国際的二重課税 とは 基本的には このように捉

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【表紙】

[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

II. 課税標準の確定申告と納付 ( 地 税法第 103 条の23) 1. 申告期限 各事業年度の終了 が属する の末 から4ヶ 以内 ( 連結法 は5ヶ 以内 ) に納税地管轄の地 治 団体の に申告 納付しなければなりません 法 地 所得税の申告納付期限は下記のとおり 部変更されました 区分 従

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土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

第一法基通改正7

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

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投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 2 4. 外国子会社合算税制の適用フローチャート 改正前 合算課税の適用対象となる内国法人等の判定 用語解説 丸数字は左のフローチャートと対応 合算対象法人における判定 1 外国法人の株式を 10% 以上保有しているか? 合算所得な

「恒久的施設」(PE)から除外する独立代理人の要件

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

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(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

フィリピンの税務実務 第2 回 法人所得税の基礎とPEZA 登録企業への課税動向

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

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1 各調整方式の比較 前提 : 法人実効税率 % 金融所得の税率 20% ( 配当軽課の場合の配当分の法人税率は 30%) 比較のポイント 適用税率 法人税率か所得税率か 金融所得課税一元化にマッチするか( 税率 損益通算 ) 簡素な制度か 特定口座への対応はか 法人の税負担は軽減されるか

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

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【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

1 どちらかをご選択特定口座と客さま般口座の特定口座の概要 特定口座とは 個人のお客さまが公募株式投資信託を換金され利益が出た場合は 原則 確定申告が必要ですが お客さまの確定申告にかかる負担を軽減させるべく当金庫が納税の代行などを行う制度として 特定口座 があります 特定口座 をご利用いただくこと

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

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企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

第 8 章 税 金 外国人の方であっても, 一定の要件に当てはまる場合には, 税金を納める必要があります 例えば, 日本国内で働いて得た収入があると, 原則として所得税を納めなければなりません また,1 月 1 日現在で日本に住所がある方は, 前年の所得について課税される住民税を納めなければなりませ

Q. 確定申告は必要ですか? A. 今回の配当によるみなし譲渡損益が特定口座の計算対象とならない場合 または源泉徴収の無い特定口座や一般口座でお取引いただいている場合につきましては 原則として確定申告が必要になります 申告不要制度の適用可否を含め 株主の皆様個々のご事情により対応が異なりますので 具

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目次 Ⅰ タックス ヘイブン対策税制の概要 3 Ⅱ 非課税所得の範囲 連結納税を適用している場合の取扱い 1 非課税所得の範囲 2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法 Ⅲ 各国の事例に基づく検討 1 米国 ( 現物分配 連結納税 LLC) 2 英国 ( グループリリーフ ) 3 ドイ

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 1 中国組織再編税制アップデート 72 号通達が日本企業の中国子会社再編に与える影響第 2 回香港オフショア会社の傘下への再編および日本国内における再編 KPMG 中国上海事務所税務部門 ディレクター米国弁護士 D デイビット avid H ファン uang シニアマネジャー日本税理士長谷川朋美 中国国家税務総局は 2013 年 12 月に 財税 [2009]59 号 企業再編業務に係る企業所得税処理に関する若干の問題に関する通達 ( 以下 59 号通達 という ) を補足する国家税務総局公告 [2013]72 号 非居住者企業による持分譲渡における特殊税務処理の適用に関する問題についての公告 ( 以下 72 号通達 という ) を公布しました 72 号通達において言及されている 3 つの再編パターンについて 9 月号 (KPMG Insight Vol.8/Sep 2014) の第 1 回では 1つ目の再編パターンである中国投資性公司の傘下への再編について解説しました 第 2 回となる本稿では 2 つ目の再編パターンである香港オフショア会社の傘下への再編および 3 つ目の再編パターンである日本国内における再編について解説し 日本企業がこれらの再編を目指した目的や留意点等 おさらい となる内容から この 72 号通達による変更点や今後予想される影響に至るまでを解説します なお 文中意見に関する部分は 筆者の私見であることをお断りしておきます D デイビット avid H ファン uang KPMG 中国上海事務所税務部門ディレクター米国弁護士 ポイント 香港オフショア会社の傘下に中国を移動する最大のメリットは 中国 香港間の経済貿易緊密化協定 (CEPA) と日本の国外配当免税制度をフル活用できることにあるが 中国投資性公司 (CHC) の傘下への再編と同様に 特殊税務処理の適用を得るためには 再編取引に合理的なビジネスリーズンがあり 税負担の減少 免除あるいは繰延べを主な目的としない要件が必要となる 香港オフショア会社の傘下への再編に関し 72 号通達による最も注目すべき内容は 中国が持分譲渡前から保有する留保利益については たとえ香港オフショア会社の傘下へ移動した後に配当を実施したとしても CEPA に基づく 5% 優遇税率は享受できず 10% にて源泉課税を受ける点である 日本国内で合併が生じた場合において その被合併法人が中国を保有していた場合等の取扱いについて 72 号通達では その合併に伴う中国持分の移動は 譲渡 されたものとみるが 59 号通達に規定される要件を満たすことができれば特殊税務処理の適用がある旨が規定された は長 せ がわ 谷川 ともみ朋美 KPMG 中国上海事務所税務部門シニアマネジャー日本税理士

2 KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 Ⅰ 再編パターン 2 香港オフショア会社の傘下への再編 1. 再編パターンの説明 再編パターン 2は 非居住者企業が保有する居住者企業持分を 保有する他の非居住者企業へ譲渡する再編 であり ここでは が中国持分を持分現物出資の手法を用いて香港オフショア会社傘下に移動する再編を用いて解説します この持分現物出資も再編パターン1と同様に香港オフショア会社がから中国持分を譲り受け 香港オフショア会社は その対価として に対して自らの持分を提供する取引となります この香港オフショア会社が譲り受ける持分の金額について 59 号通達に規定される特殊税務処理の要件を充足できれば 簿価にて譲り受けることができるため は この中国持分の譲渡にあたって譲渡益課税を受けないこととなります ( 図表 1 参照 ) なお 特殊税務処理の要件については 3. 特殊税務処理の要件と実務上の弊害 にて詳述します 図表 1 香港オフショア会社の傘下への再編 1 中国現法持分の譲り受け 2 対価として持分をへ提供 2. 再編のメリットと事前に留意すべき事項 (1) 再編のメリット- 日本の国外配当免税制度の活用香港オフショア会社の傘下に中国を移動する最大のメリットは 中国 香港間の経済貿易緊密化協定 (Closer Economic Partnership Arrangement 以下 CEPA という ) と日本の国外配当免税制度をフル活用できることにあります つまり 中国企業所得税法上 中国から非居住者に対する配当は10% の源泉課税が行われますが 香港オフショア会社への配当について CEPAが適用される場合は 5% の軽減税率が適用されます また 香港には 香港域外所得免税規定があるため この配当に対して課税は行わず さらに 香港オフショア会社からへ配当を行う場合 香港は源泉課税を行いません よって この配当に係る税務コストは での課税前までは 5% のみとなります 一方 が中国を直接保有する場合は への配当について 日本 中国租税条約にはこのような配当に対する源泉税率軽減措置は設けられていないため 中国企業所得税法の規定どおり 10% 源泉税率が適用されます よって 配当によって資金回収を行う観点からは 前者の香港経由での投資が有利となります 日本では 以前は 配当に対して外国税額控除制度が適用されていたことから いくら日本国外での税務コストを軽減したとしても 最終的には日本の実効税率による課税が行われ 外国納付税額の控除を受けられるに過ぎませんでした しかし 現在は この配当に対して国外所得免税制度が導入されたことから 国外からの一定の配当に対し 日本では軽微な課税のみに止める代わりに 外国納付税額の控除も行わないように改正されため 国外での税務コストの軽減は 直接のベネフィットとなることとなりました これにより この改正以降は 中国への直接出資から 香港オフショア会社を間に挟む間接出資形式の組織再編を検討する企業が後を絶たない状況となったのです (2) 事前に留意すべき事項 1 1 租税条約上の受益者の認定 ( 国税函 [2009]601 号 ) 香港オフショア会社を経由して中国を保有することが配当に対する税務コストの低減効果をもたらすことは 前述のとおりです しかし 中国税務当局の観点からは この香港オフショア会社がどのような会社であっても 5% 軽減税率の恩恵を与えるわけにはいきません そこで中国税務当局は 2009 年にこの国税函 [2009]601 号通達を公布し 香港オフショア会社が受益者として認定されない場合は 中国企業所得税法上 この香港 1. 事前に留意すべき事項に記載する 租税条約上の受益者の認定 および 外国投資者による居住者持分の間接譲渡 に関して 本稿では概要のみを掲載するが デイビット ファン= 長谷川朋美 中国における税務リスクマネジメント 後編 (AZ Insight Vol51/May 2012) にて詳解しているため 参照されたい

KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 3 オフショア会社の存在を無視し あたかも中国は日 本本社へ配当を行ったものとみなして 10% 源泉税率が適用 される旨を規定したのです ( 図表 2 参照 ) つまり この香港 オフショア会社を経由して中国を保有することに合 理的なビジネスリーズンが存在するか否か その香港オフショ ア会社に実体が備わっているのか等 総合的に判断したうえ で優遇税率の適用の可否が決定されるのです 図表 2 国税函 [2009]601 号の概要 が受益者として認定される場合 香港域外への配当は源泉税なし香港域外所得に対する課税なし 配当 5% 軽減税率適用 持分譲渡益に関して中国に課税権はないという観点によるものです しかし オフショア会社は 通常 ペーパーカンパニー等であることが多く その資産の大半は 中国の価値によって構成されているにもかかわらず 企業がこのオフショア会社ごと転売し続ける限り 中国に課税権が一切生じないのでは 中国当局にとって不合理です そこで中国税務当局は このような外国投資者が不当に中国企業を間接的に譲渡し続けることにより 中国に課税権が生じないことを防止する目的として この間接譲渡が一定の要件に該当するときは 中国へ出資するオフショア会社の存在を否認し あたかも中国の持分が譲渡されたものとして取り扱う旨を 698 号通達に規定したのです ( 図表 3 参照 ) よって が香港オフショア会社ごと他者へ譲渡する場合において 698 号通達に規定される要件に該当するときは はあたかも中国を直接譲渡したものとして取り扱われるため この中国に係る持分譲渡益について 中国にて 10% の課税を受けます 図表 3 国税函 [2009]698 号の概要 が受益者として認定されない場合 従来の規定 の持分譲渡契約 他者 無視 配当 10% 源泉税 中国法人を保有するを譲渡 中国では譲渡益に対する課税権なし 2 外国投資者による居住者持分の間接譲渡 ( 国税函 [2009]698 号 ) 欧米企業が中国へ進出する場合 その大半が香港経由と言われています その理由としては 大きく分けて 2つ考えられます 1つは ビジネス上の理由です 直接保有する中国を他者に譲渡する場合 自らが各種関連当局に名義変更等の手続きを行う必要がありますが 香港オフショア会社を介して中国を保有し この香港オフショア会社ごと他者へ譲渡する場合は 香港での名義変更等の手続きは必要であるものの より煩雑な中国国内での手続きが不要になるという観点によるものです もう1 つは 税務上の理由です 中国企業所得税法上 直接保有する中国を他者に譲渡する場合は その持分譲渡益に対して10% の課税が行われますが 中国を保有するオフショア会社ごと譲渡する場合は たとえその傘下に中国が存在するとしても そのオフショア会社に係る 698 号通達が適用される場合 無視 の持分譲渡契約 他者 中国法人の譲渡とみなす 中国にて譲渡益課税 (10%)

4 KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 3. 特殊税務処理の要件と実務上の弊害 (1) 特殊税務処理の要件 中国持分を香港オフショア会社へ現物出資する場 合において 特殊税務処理の適用を受けるためには まず 基本要件を充足する必要があります 基本要件は 以下のと おりです 基本要件 1 再編取引に合理的なビジネスリーズンがあり かつ 税負担の減少 免除あるいは繰延べを主な目的としないこと 2 買収企業 ( すなわち ) が購入する持分が被買収企業 ( すなわち 中国 ) の全持分の 75% 以上であること 3 組織再編後の連続する 12 ヵ月内に 再編資産に係る元の実質的な経営活動が変化しないこと 4 買収企業による持分支払額がその取引総額の 85% 以上であること 5 組織再編において 持分支払を取得する元の主要な出資者 ( すなわち ) が 再編後の連続 12 ヵ月内に 取得した持分を譲渡しないこと また 持分買収が中国国内外を跨ぐクロスボーダー取引に該当する場合は この基本要件に加えて 以下の追加要件もすべて充足する必要があります 追加要件 1 非居住者企業が保有する居住者企業の持分を 直接支配する他の非居住者企業に譲渡すること 2 将来年度においてその持分譲渡所得に係る源泉税の負担が変化しないこと 3 譲渡側の非居住者企業が 主管税務局に対し 保有する譲受側非居住者企業の持分を 3 年間譲渡しないことを 書面をもって承諾すること この再編パターンは が保有する中国居住者企業持分を 保有する香港オフショア会社へ譲渡するため 1 の追加要件は充足できます よって 残りの2および3を充足できれば この追加要件は充足できることになります 2 (2) 実務上の弊害前述のとおり 組織再編において特殊税務処理の適用を得るために最も重要なことは 基本要件の 1である 再編取引に合理的なビジネスリーズンがあり かつ 税負担の減少 免除あるいは繰延べを主な目的としないこと という要件をクリ アすることであり この 合理的なビジネスリーズン が説明できない再編取引は 特殊税務処理の取扱いを却下されることとなります しかし 中国を香港オフショア会社の傘下に移動する最大のメリットは 配当に対する源泉税を 5% に軽減できることであることから いかなるビジネスリーズンを説明しようとも 税務当局には この再編は 税負担の軽減 が主な目的であるものと認識され 基本要件すら充足できない状況が続いていたのです 4. 72 号通達による変更点と今後予想される影響 (1)72 号通達による変更点再編パターン 2に関し 72 号通達にて規定される変更点は 大きく分けて以下の 5つです 1 再編の主導側再編パターン2における再編の主導側は 72 号通達においても 4 号通達と同様に持分の譲渡側であり 持分の譲渡側が譲渡される企業所在地の主管税務当局に届出を行います よって 持分の譲渡側であるが中国を所轄する税務当局に届出を行うことになりますが は代理人に委託して届出を行うこともできます なお 委託する場合は 代理人が主管税務当局に対して授権委託書を提出する必要があります 2 認可制度から届出制度へ再編パターン 1と同様に認可取得を必要とする 698 号通達第 9 号が廃止され 再編の主導側 すなわちが中国の主管税務当局へ届出を行うことに変更されました 3 確認期間の具体化 72 号通達では 再編パターン1と同様に 税務当局による確認作業に一定の期限が設けられました まず 再編の主導側であるから規定の資料の届出を受けた中国の主管税務当局は 規定の資料が揃っている場合は その場で受理する必要があります その後 30 日営業日以内に届出事項を調査確認し その処理意見を省レベルの主管税務当局に報告する必要があります 2. 中国における譲渡益課税は が中国を譲渡した場合は 譲渡益に対して 10% であるが 香港オフショア会社が中国持分を譲渡した場合は 1. 譲渡持分がその中国持分の 25% 未満であること ( この解釈には諸説あり 25% 未満しか保有しておらず これを譲渡した場合に限られるといわれている ) 2. 不動産保有特定会社等に該当しないことの 2 要件を充足できれば CEPA によって免税 充足できなければ譲渡益に対して 10% である よって 厳密には 香港オフショア会社が譲渡する場合は が譲渡する場合と比較して源泉税が変化するとみられ 追加要件を満たさないと指摘される可能性はあるが 特殊税務処理の適用を受けるためには 中国の持分を少なくとも 75% は移動するわけであるから 25% 未満しか保有せず それを譲渡する状況に該当することは極めて稀であるため 結果として 源泉税が変化するとはみられないものと思われる

KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 5 4 届出書類および届出期限再編パターン 1と同様です 5 軽課税国に所在する非居住者企業に対して持分譲渡を行う場合の留意点以下の2つは 72 号通達において新たに設けられた内容であり とりわけ (ⅱ) は非常に重要な事項です と判断される場合は 10% の源泉課税となり 持分譲渡後に 生じた利益であると判断される場合は 5% の源泉課税となり ます この判断基準については 明確な規定は存在しない 3 た め 実際に配当を行う際に当局との論争が予想されます Ⅱ 再編パターン 3 日本国内における再編 (ⅰ) 中国での譲渡益課税が低減する場合税務当局は この持分譲渡を行うことにより 持分譲渡所得に係る源泉税の負担が譲渡前と譲渡後で変化が生じることが調査確認時において発覚した場合は 特殊税務処理を適用してはなりません つまり が中国の持分を譲渡した場合に中国で課される源泉税よりも 香港オフショア会社が中国の持分を譲渡した場合に中国で課される源泉税が低い場合は 特殊税務処理が適用されないのです なお 先述のとおり 同様の内容が既にクロスボーダー取引に係る追加要件に含まれているため この規定は新しい内容ではありません (ⅱ) 配当に対する軽減税率適用への制限譲渡側の非居住者企業と譲受側の非居住者企業が同一の国家もしくは地域に所在しない場合において 譲渡される企業が持分譲渡前に得た留保利益を譲渡後に配当するときは 譲受側の非居住者企業が所在する国家または地域と中国が締結する租税条約に基づく配当に対する源泉優遇措置を享受しないこと つまり 中国が持分譲渡前に得た留保利益を香港オフショア会社へ譲渡後に配当する場合であっても CEPA に基づく 5% 優遇税率を享受しないことを条件としているのです 中国の主管税務当局が特殊税務処理の適用を抵抗することの根源は この留保利益に対する 税負担の軽減 であったことから この条件を設けることによって 最大の問題の解消を意図しているものと思われます (2) 今後予想される影響再編パターン2について 最も注目すべき内容は 中国が持分譲渡前に得た留保利益を香港オフショア会社へ譲渡後に配当する場合 CEPAに基づく5% 優遇税率は享受できず 10% にて源泉課税を受ける点です では 持分譲渡前に得た留保利益を配当せず 欠損で食い潰した場合はどうなるのでしょうか たとえば 持分譲渡前からの留保利益が 100 あったが持分譲渡後に100の欠損が発生し その後 50の利益が生じたものとします この時点の留保利益である 50を配当する場合 その配当原資が持分譲渡前に得た留保利益である 1. これまでの取扱い 図表 4のように が保有する日本国内の子会社を吸収合併するような場合において その日本子会社が中国にを保有しているときは 中国では の出資者の名義を日本子会社からへ変更する手続きが必要となります この場合 中国において単なる名義変更にあたるのか それとも中国の 譲渡 として取り扱われるのか 不透明な状態が続いていました 図表 4 が日本子会社を吸収合併する場合の取扱い 吸収合併 日本子会社 2. 72 号通達による変更点 出資者の名義変更? 中国の譲渡? 上記 1で述べたように 日本国内で合併が生じた場合において その被合併法人が中国を保有していた場合の取扱いについて 72 号通達では 外国企業の分割 合併により 3. 同様の議論が 2007 年以前に稼得した留保利益による配当にも存在するので留意のこと たとえば 2007 年以前に稼得した留保利益が 100 あるが 2008 年以後に 100 の欠損が生じ その後 50 の利益が発生したものとする この時点の留保利益である 50 を配当する場合 その配当原資が 2007 年以前に稼得した留保利益と判断される場合は免税 2008 年以後に生じた利益であると判断される場合は 10% 源泉課税となる

6 KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 中国居住者企業の持分が譲渡された場合でも 59 号通達の第 7 条第 1 項に該当すれば 特殊税務処理の適用があることを示しました この59 号通達の第 7 条第 1 項とは 再編パターン2において特殊税務処理の適用を受けるための追加要件として紹介した 非居住者企業が保有する居住者企業の持分を 直接支配する他の非居住者企業に譲渡すること ( 他の2 要件は省略 ) です よって 日本国内において合併等が生じた場合においても その取引が 59 号通達に規定する基本要件を充足し かつ 上記の追加要件を充足する場合は 中国において特殊税務処理が適用されることとなったのです また このような取引が 中国において単なる名義変更にあたるのか それとも中国の 譲渡 として取り扱われるのかについては この 72 号通達では 外国企業の分割 合併により 中国居住者企業の持分が譲渡された場合 として 中国居住者企業持分が 譲渡 されたことを前提に規定されていることから 名義変更を前提としていないものと考えられます なお この点に関する重要性は 4. 今後予想される影響 にて詳述します この 72 号通達による変更点を踏まえて 上記 1の日本国内における合併により 中国持分の譲渡が生じた場合において 中国組織再編税制上 特殊税務処理が適用されるか否かを検証します が中国を保有する日本子会社を吸収合併する場合 中国は 日本子会社からへ譲渡されることとなります この取引を上述の追加要件にあてはめた場合 日本子会社 ( 非居住者企業 ) が保有する ( 居住者企業 ) 持分を 直接支配しない ( 他の非居住者企業 ) への譲渡 であるため 追加要件を満たすことができず 特殊税務処理は適用されないこととなります よって 日本子会社は 中国を譲渡したものとして取り扱われ 譲渡益が生じる場合は 中国にて 10% の源泉税が課せられる可能性が高いものと思われます 編するために本社から一事業部を分割し その他の関連会社を吸収合併するようなイメージを持っていただきたいのです これについても 2つの取引に区分して検証する必要があります まずステップ 1は を分割して分割承継会社を設立する取引です このの分割による分割承継会社の設立については 中国持分は何ら移動しないため 中国での課税要因に該当しません 次にステップ 2は 分割承継会社へ日本子会社を吸収合併する取引です この取引は 日本子会社が保有する中国を分割承継会社へ譲渡する取引であるため 前述の追加要件にあてはめた場合 日本子会社 ( 非居住者企業 ) が保有する ( 居住者企業 ) 持分を日本子会社が 直接支配しない分割承継会社 ( 他の非居住者企業 ) への譲渡 となるた 図表 5 内の一事業部の分割 分割承継会社と日本子会社の合併 日本子会社 日本子会社 分割承継会社 1 分割 現物出資 合併 ( 存続会社 ) 3. その他のケースの検証 - 内の一事業部の分割 分割承継会社と日本子会社との合併 2 日本子会社から分割会社への持分譲渡 日本国内で生じる分割 合併について 中国が譲渡されたものとして取り扱われるのか否か また 譲渡されたものとして取り扱われる場合は 特殊税務処理の適用の可能性があるのか否かにつき 次のケースについて検証します これは 実務上 日本国内での再編として検討されそうなケースであるため ぜひご参照ください 図表 5は を分割し 分割承継会社に中国を保有する日本子会社を吸収合併する再編を図式化したものです このケースは 一見すると の一部を日本子会社へ吸収分割すれば済むように思えます しかし このケースでの前提は から分割される部分は その傘下に多数の国内外子会社を有する事業部であり この事業部を再 分割継承会社

KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 7 め 要件を充足することはできず 中国組織再編税制上 特殊税務処理は適用されないこととなります よって この再編については 上記の 2つのステップに区分して検証した結果 日本国内の合併取引について 日本子会社は 中国を譲渡したものとして取り扱われ 譲渡益が生じる場合は 中国にて 10% の源泉税が課せられる可能性が高いものと思われます しかし もし日本子会社が存続会社である場合は結果が異なります つまり 日本子会社が分割承継会社を吸収合併する手法が採用できるのであれば 中国持分は何ら移動しないため 中国での課税要因に該当しないのです 4. 今後予想される影響これまで 日本国内において合併等が生じたことにより 中国の名義変更が必要となった場合において これを持分の 譲渡ではない として譲渡益課税を受けていないケースが多々ありました しかし この 72 号通達において 外国企業の分割 合併により 中国居住者企業の持分が譲渡された場合 として 中国居住者企業持分が 譲渡 されたことを前提に規定されていることから 今後は 譲渡 として取り扱われる可能性が高いものと思われます そこで問題となるのが この 72 号通達が公布日以前に実施された再編取引についても 譲渡 があったものとして 遡及して譲渡益課税が行われるのか否かです この点について 72 号通達は 公布日 (2013 年 12 月 12 日 ) より施行する旨が規定されていますが 発生した非居住者企業による持分譲渡における特殊税務処理の適用事項が現在においても未処理の場合は この通達の内容に基づき手続を行う旨が規定されています つまり 2013 年 12 月 12 日前に実施した日本国内での合併等の再編取引について 特殊税務処理の適用について 一定のジャッジを受けているのであれば 遡及される可能性は低いものと思われますが 譲渡ではない として譲渡益課税を受けていないケースは その処理については 中国にて何らジャッジを受けていないものと思われるため 再調査の可能性は残るものと思われます また 譲渡益課税が行われる場合 本来の申告納税期限 4 から実際に納税を行った日までの期間に応じ 日歩 0.05% の延滞利息が さらに悪質と見られる場合は 未納税額の50% から最大 500% までのペナルティが科せられる可能性がある点にも留意する必要があります Ⅲ おわりに 72 号通達の公布内容には 再編パターン1および2については これまで特殊税務処理の適用可否に係る判定が意図的に先延ばしにされてきた原因を解消するために有効と思われる事項が盛り込まれています つまり 再編パターン 1については 届出先当局をCHC の主管税務当局とすることにより 譲渡される中国側の主管税務当局の意見が介入する余地が封じられたことや 特殊税務処理の適用に関する調査確認に一定の期限を設けられたことがこれにあたります また 再編パターン 2については 持分譲渡前に係る留保利益を配当する場合は 租税条約上の優遇税率の享受を禁止することにより 譲渡される中国の主管税務当局の不利益を解消したものと考えられます よって とりわけ再編パターン2への特殊税務処理の適用については 今後 前進が期待されるものと思われます しかし 今後予想される影響 でも述べたように 72 号通達では これらの原因を完全には解消していません また 納税者に対して特殊税務処理の適用に関するフィードバックがなされないのであれば 将来における調査時まで適用否認に関するリスクを抱えなければならないこととなります 納税者は持分譲渡契約を締結し かつ 工商変更登記が完了した後 30 日以内に届出を行わなければならない点からもわかるように 納税者が実際に再編取引を実施した後でなければ 正式な特殊税務処理に関するジャッジは行われないのです 再編取引は行ったが 特殊税務処理が適用されるか否かは不明 という事態を避けるためにも 事前に関連税務当局と綿密なディスカッションの機会を持ち 一定のジャッジを聞き出すことは引き続き肝要であるものと思われます また 再編パターン3については これまで 譲渡ではない として譲渡益課税を受けていないケースに対して再調査が行われる可能性は残るものと思われ 再調査が行われた場合は 譲渡益課税を免れることは難しいものと予想されます しかしながら 本来の申告納税期限から 72 号通達が公布された日までの間に係る延滞利息とペナルティについては このような中国国内で実施される再編が課税対象であるか否かが不安定な状態が続いていたことから 72 号通達の公布日から起算する等 一定の交渉の余地はあるものと思われます 4. 698 号通達第 2 条 非居住者企業は 契約書又は協議書に約定した出資持分譲渡日 ( 譲渡側が事前に出資持分譲渡収入を得た場合は 出資持分譲渡収入を実際に収受した日 ) より 7 日以内に 譲渡される中国居住者企業所在地の主管税務当局に企業所得税を申告納税しなければならない

8 KPMG Insight Vol. 9 / Nov. 2014 バックナンバー 中国組織再編税制アップデート 72 号通達が日本企業の中国子会社再編に与える影響第 1 回中国投資性公司 (CHC) の傘下への再編 (KPMG Insight Vol.8/Sep 2014) 本稿は 月刊 国際税務 (Vol.34 7 税務研究会発行 ) に寄稿したものに一部加筆したものです 本稿に関する質問は 以下の者までご連絡くださいますようお願いいたします KPMG 中国上海事務所ディレクター David Huang( デイビット ファン ) TEL: + 86-21-2212-3605 david.huang@kpmg.com シニアマネジャー長谷川朋美 TEL: +86-21-2212-3758 tomomi.hasegawa@kpmg.com あずさ監査法人中国事業室室長高﨑博 TEL: 03-3266-7521 hiroshi.takasaki@jp.kpmg.com

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