感染予防の為の 口腔ケア 平成 21 年 6 月 13 日 歯科衛生士八木ひとみ
本日の講義のポイント 口腔ケアの効果 123 ブラッシングのコツ 口腔ケアの現状と実際 効率のよい清掃器具の選択と紹介 注文方法
口腔内は細菌の巣窟! 人には700 種にも及ぶ微生物が生息している なかでも口腔内には400 種以上もの細菌が存在する
口腔内微生物 口腔内には粘膜 舌 歯牙 歯肉及び唾液など環境因子の異なる部位等が存在しており それぞれに特有の常在菌が存在している それらは歯の喪失 摂取食物の種類 唾液の性状 清掃程度などによって影響を受け変化する
口腔内細菌により発症 進行が 促進すると考えられる全身疾患 誤嚥性肺炎 糖尿病 冠動脈性心疾患 掌せき膿胞症 低体重児早産 脳卒中
歯垢 ( プラーク ) という名の バイオフィルム 歯垢 ( プラーク ) は清掃が不十分な歯の表面に固着し 歯垢 ( プラーク ) の約 70% は細菌が占め その細菌数は歯垢 1g あたりにおよそ 1 億個含まれる バイオフィルムとは固体表面に付着した細菌やその産生物からなる複合体のことをいい 歯垢 ( プラーク ) は細菌性バイオフィルムの代表的なものといえる
歯垢 ( プラーク ) の特性 歯垢 ( プラーク ) は薬が効きにくい 成熟した細菌バイオフィルムの上から薬液を振りかけても薬液の浸透が悪かったり 細菌が眠っていたり 細菌の性格が変わったりし 薬に対する抵抗性が格段に上がっている 治療の第一選択は機械的除去 歯垢 ( プラーク ) が付着したままであると歯石となり 自己では除去出来なくなる
口腔ケアの目的 口腔内を清掃することで食べかすや歯垢を 取り除き 細菌の繁殖を抑える 口腔ケアの効果 1 虫歯 歯周病の予防 2 誤嚥性肺炎など全身的感染症の予防 3 脳への刺激 ( 話す 食べるなどQOL の向上 )
口腔ケアと口腔内細菌数の関係 米山武義 : 口腔ケアと誤嚥性肺炎.
口腔ケアと肺炎発症率の関係 米山武義 : 口腔ケアと誤嚥性肺炎.
脳が受ける刺激のうち 約 40% は口腔内が関与している Penfield W, Rasmussen G: The Cerebrel Cortex of Man. Macmillan, 1950
口腔内への刺激が脳への刺激となり 脳内神経伝達物質 サブスタンス P が増え 嚥下反射 咳反射を促す 誤嚥性肺炎を予防 口腔内は尐ない労力で 効率の良い刺激部位であ る!! Sasaki H:Benefits of oral care In the eldeerly.jama,2001
良いハブラシや清掃器具が必要な 理由 忙しい看護の現場で短時間で効果的な 口腔ケアを行う為 又 ハブラシや清掃器具の選択によって清掃能力 操作性 安全性に差がある ガーゼやトゥースエッテで拭き取るだけでなく 毛先を有効に使ってかき出すことが大切
良いハブラシを選ぶ為の チェックポイント 毛の材質はナイロン又は PBT( ポリブチレンテレフタレート ) 天然毛は ヘッドは小さめ 毛束は平坦なストレート型 ネックは細長く ストレート ハンドルはストレート 毛先は歯肉を傷つけないもの 炎症のある歯肉にはやわらかい毛を
ヘッドは小さめ 毛束は平坦 ハンドルはストレート ハブラシの取替え時期は 1 ヶ月に 1 回が目安
8 列 3 列 小さめのヘッドの目安
ハブラシの当て方と動かし方 歯の表面に対して 45 度から 90 度に当てる 毛束を押し付けない 2~3 ミリの幅で小さく動かす 汚れ ( 歯垢 ) の溜まりやすいところにブラシを当てる
ブラシ圧 200~250g 手の甲にブラシを当ててこすってみて痛くない程度 強く当てすぎると毛が寝てしまい 清掃効果が低下 又 患者さんに痛みを与えたり 歯や歯肉を傷つけたりする * 持ち方はペングリップが良い 歯みがきが気持ちが良いものと感じてもらおう!
ブラッシング圧が強い例
ブラッシング圧が適当な例
歯垢のつきやすいところ 歯と歯肉の境目 歯と歯の間 前歯の裏側 奥歯の咬み合わせの溝 奥歯の後ろ 片麻痺の人は麻痺のある側
自分は上手く磨けているのかな? ケアをする側が自分の歯を上手く磨けないのでは 患者さんに良いケアを提供出来ない 自分の歯ブラシは適切か? 磨き方はどうか? 磨けているのか? 赤染め液を使ってチェックしてみよう!!
口腔ケアについての アンケート 平成 18 年 3 月実施 対象 病棟看護師 383 名
口腔ケアでの悩み 口腔乾燥 痂疲の除去 口臭 開口障害 誤嚥の可能性がある場合 ケアが不安 出血傾向のある場合 舌苔等々
アンケート結果からの考察 ケアの時間は 3~5 分 短時間に効率の良い清掃器具の選択と使用方法 使用器具はハブラシとほぼ同じ頻度でトゥースエッテが使用されている 患者さんに合った清掃器具の選択 勤務場所によって口腔ケアの意識の差が大きい 勤務移動時の為にも 統一したマニュアルが必要
83 才男性 誤嚥性肺炎 口臭がひどい 口腔ケア時の姿勢は基本的には座位
1,995( 売店にて販売 )
いきなり口腔内を触らず 口唇 口角にも保湿剤を塗布し徐々にアプローチする
保湿剤 グリセリン 84~87% にレモンエッセンスを添加 痂疲の除去 オキシドール 2 5~3 5w/v% 滅菌水で 2 倍希釈
まず保湿剤にて乾燥した痂疲を柔らかくする
開口器 オーラルケアー ( 株 )S.L サイズ 12 個入 1 個 495 円
カラー レッド / グリーン 12 本入
吸引ブラシにて歯牙を清掃 コップに溜めた水で振り洗いしながら行う
カラー ピンク / ブルー 1 箱 (12 本 ) 各色 6 本
清掃と同時に唾液腺のマッサージ ストレッチも行う
患者さんの歯間のサイズにあったものを使用する
口腔内より除去した痂疲
オーラルケアー ( 株 ) TEL 0120-500-418
1 箱 (24 本 )
柄付くるりーナ 470 カラー ピンク / ブルー 1 箱 (12 本 ) 各色 6 本
100 100 円ショップ 390 T タイプ (12 本入 ) オーラルケアー ( 株 ) 舌ブラシ
患者さんの口腔内の観察 口腔内の汚れの状況 口腔清掃の状況 義歯清掃の状況 歯科疾患の状況 ( 歯牙 歯肉 義歯の適合 ) 口腔乾燥 舌苔の有無 摂食 嚥下機能の障害 低下の有無 * ライトやペンライトを用いて口腔内を観察
歯牙がある場合 トゥースエッテ等を使用せず ハブラシ 歯間ブラシを使用する 誤嚥の可能性がある場合は 吸引ブラシ 吸引くるりーナ等吸引をしながら行う 全身的に出血傾向がある場合 歯肉に炎症がなければ通常通りのブラッシングを行い 炎症がある場合は歯頸部を指で被い歯牙のみブラッシングし 低温の水で含嗽
歯牙がない場合 くるりーナ トゥースエッテ等使用する 誤嚥の可能性がある場合は 吸引くるりーナ等 吸引しながら使用する 義歯を装着している場合は義歯を外し 義歯と口腔内を清掃する 義歯は就寝時に外し 清掃後水に浸漬する 水は毎日交換する
化学療法前の口腔ケアのポイント 出血傾向 口内炎の出現について患者さんに説明する 化療前に虫歯 歯周炎の治療を行う 又 適切なブラッシング法 ハブラシの選択を指導する 感染予防には毎食後の歯磨きを習慣化する
本日の講義のポイント 口腔ケアの効果 ブラッシングのコツ 口腔ケアの現状と実際 効率のよい清掃器具の選択と紹介 注文方法 * 何かあれば ご相談下さい
POHC/ 米山武義先生考案 ( 介護口腔ケア ) 生活の中へしっかり根づかせた口腔ケア 1 日 3 回が難しかったら 夕食後の口腔ケアに力点をおいてほしい 食後の座位など 食に関する環境整備に配慮 歯科衛生士に体調や精神的変化などの情報を伝達 残食料など摂食状況について注意 食欲が落ち認知機能が落ちたときには 特に口腔ケアに力を入れる 介護予防の 1 つの柱として機能的な口腔ケアの導入 米山武義 : 心が開けば口が開く 口が開けば心が開く. 補綴臨床,vol37(4),367~388,2004
POHC/ 米山武義先生考案 ( 看護口腔ケア ) 肺炎などの感染症予防を意識した積極的な口腔ケア 在院日数を減らすことを意識した口腔への刺激 食後の座位の保持 手術日が決まったら 歯科医療関係者と共働して術前の口腔ケアを導入 退院後の生活を考え チューブ栄養から口から食べることができるよう支援 医師との間に立って 連携の要となること 米山武義 : 心が開けば口が開く 口が開けば心が開く. 補綴臨床,vol37(4),367~388,2004
POHC/ 米山武義先生考案 ( 専門的歯科口腔ケア ) 徹底したバイオフィルムの除去 口腔ケア啓発のリーダーシップ 口腔に精通している立場から口腔疾患の予防に努め 疾患が発見された場合 歯科医師への的確な連絡 心のケアに心がけ 口腔ケアで困っている患者さんやほかの専門職 家族の相談にのる 口腔ケアのケアプランを立て 調整役を担う 口から食べることを支援する 米山武義 : 心が開けば口が開く 口が開けば心が開く. 補綴臨床,vol37(4),367~388,2004
ご清聴ありがとうございました