JMP Clinical 4.0 の日本での活用の試みと課題 富里遼太, 澤田克彦 大鵬薬品工業株式会社データサイエンス部 Efforts towards the JMP Clinical 4.0 application in Japan, and lessons learned from it Ryota Tomisato,Katsuhiko Sawada Data Science Department,Taiho Pharmaceutical Co. Ltd. 要旨 : SDTM 変換臨床試験データ, 市販後安全性データ (PMDA 公開副作用データベース ) を使用し JMP Clinical で安全性データのビジュアル解析を試みた. 今後の活用に参考となる知見を得たので報告する キーワード :JMP Clinical, CDISC, 医薬品副作用データベース, ビジュアル解析 1 1
発表の構成 はじめに 解析データの説明 1. 臨床開発相 2. 市販後相 解析時の留意点 ( 臨床開発相データ ) 問題への対処 ( 市販後自発報告データ ) 解析出力例 まとめ 2 はじめに 医薬品リスク管理計画指針 ( 平成 25 年 4 月 1 日適用 ) 医薬品の開発段階 承認審査時から製造販売後の全ての期間において ベネフィットとリスクを評価し これに基づいて必要な安全対策を実施することで 製造販売後の安全性の確保を図ることを目的とする http://www.info.pmda.go.jp/iyaku/file/h240411-001.pdf 3 2
はじめに JMP Clinical CDISC 形式データの安全性マイニングツールとして開発 Version 4.0 より Pharmacovigilance メニューが追加 検討事項 自社データをCDISC 形式とし JMP Clinical のデータ解析上の留意点を整理する Pharmacovigilance 機能は日本で活用出来るか確認する 4 解析データ ( 臨床開発相 ) 1. SDTM 準拠データセットの準備 自社の臨床試験データ (Phase III Global 試験 ) を対象 CRO と連携し, DTM Standard Domain を作成 AE, CO, CM, DM, DS, EG, EX, IE, LB, MH, QS, VS SDTM ver3.1.2 2. JMP Clinical で Study を作成 データセットの保存フォルダ先を指定して Study 名を登録 5 3
解析データ ( 臨床開発相 ) 3. 分析プロセスに必要な変数を確認 JMP Clinical の Check Required Variables ツールで分析に必要な変数が含まれているかを確認 6 解析データ ( 市販後相 ) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用データベース 英名 :Japanese Adverse Drug Event Report database (JADER) 薬事法に基づく副作用症例自発報告のデータ 2012 年 4 月よりCSVファイルでダウンロード可能 毎月更新 (2013 年 3 月更新分を利用 ) http://www.info.pmda.go.jp/fukusayou/menu_fukusayou_attention.html 7 4
解析データ ( 市販後相 ) JADER に含まれる情報 8 解析データ ( 市販後相 ) JADER より作成した自発報告例毎の副作用と報告薬剤の組み合わせ ( 607,911 オブザベーション ) 9 5
解析データ ( 市販後相 ) 副作用発現日等の日付データ不備対応 未記載 年のみ 年月まで 過記載 ( 年月日時分 ). 2009 201002 200903211000 対応未記載 年のみ 欠測処理年月 中間の15 日で補完過記載 年月日の部分のみ使用副作用発現日は80% 程度が利用可能 10 解析実施条件 環境 使用 PC ラップトップ PC( 東芝製 ) OS Windows 7 CPU/ メモリデュアルコア i5-2520 2.5GHz RAM 4GB JMP Clinical Version 4.0 (32bit OS 版 ) データ解析は全てインストールした PC 上 ( ローカル上 ) で実施 11 6
解析時の留意点 ( 臨床開発相データ ) Check Required Variables による出力結果 1(Domain 一覧 ) ADSL データが指定されていない場合 DM データセットを参照し自動で作成される JMP Clinical の解析に利用できるデータセットとして, 11 の SDTM データと 1 つの ADaM データ (ADSL) が必要であることが確認できる 12 解析時の留意点 ( 臨床開発相データ ) Check Required Variables による出力結果 2( 変数一覧 ) 各分析 Process に必要な変数が不足している場合 その Process 名と該当する変数のリストが出力される 13 7
解析時の留意点 ( 臨床開発相データ ) 必要変数をセットせず その Process を実行した場合 JMP 実行時エラー 例えば Study Visits Report を出力しようとしたが, SV Domain が含まれていなかったため, エラーとなった 14 解析時の留意点 ( 臨床開発相データ ) Check Required Variables による出力結果 3 SAS datasets: Process_Variables, Required_Variables Process_Variables ( 一部抜粋 ) Required_Variables ( 一部抜粋 ) Process_Name Process_File_Name VAR domain AE Distribution AEDistribution.sas AEBODSYS AE AE Distribution AEDistribution.sas AEDECOD AE AE Distribution AEDistribution.sas AEOUT AE AE Distribution AEDistribution.sas AESER AE AE Distribution AEDistribution.sas AESEV AE AE Distribution AEDistribution.sas AESTDTC AE AE Distribution AEDistribution.sas USUBJID AE AE Distribution AEDistribution.sas AGE DM AE Distribution AEDistribution.sas ARM DM AE Distribution AEDistribution.sas RACE DM AE Distribution AEDistribution.sas SEX DM AE Distribution AEDistribution.sas SITEID DM AE Distribution AEDistribution.sas USUBJID DM AE Incidence Screen AEIncidenceScreen.sas AEBODSYS AE AE Incidence Screen AEIncidenceScreen.sas AEDECOD AE AE Incidence Screen AEIncidenceScreen.sas AEENDTC AE CORE JMPC Core VAR domain Exists Matching_ Type Req Exp AEACN AE Yes Yes Yes Req Exp AEBODSYS AE Yes Yes Yes Req Req AEDECOD AE Yes Yes Yes Req Exp AEENDTC AE Yes Yes Yes Req Perm AEOUT AE Yes Yes No Req Exp AEREL AE Yes Yes Yes Req Exp AESER AE Yes Yes Yes Req Perm AESEV AE No No No Req Exp AESTDTC AE Yes Yes Yes Req Req AETERM AE Yes Yes Yes Req Req STUDYID AE Yes Yes Yes Req Req USUBJID AE Yes Yes Yes Matching_L abel 各プロセスごとに使用される変数のリスト 必須変数に関するチェック結果リスト ( この例では AESEV 変数が含まれていないことを表す ) 15 8
解析結果 ( Sample data : Nicardipine Study) 例 1:AE Distribution - 群別のツリーマップ 16 解析結果 (Sample data : Nicardipine Study) 例 2:Profile Subjects 17 9
問題への対処 ( 臨床開発相データ ) 文字の問題 全角文字 / 全角スペース, 記号 (±, α, など ) データについて JMP Clinicalで解析するには適当な変換が必要 Open CDISC (ver1.3) でSDTM 準拠チェック Req 変数, データタイプ (Num, Char), Terminology, 変数ラベル, などについての確認に有用 18 問題への対処 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) 言語の問題 日本語 (Shift-JIS コード ) SASで文字化け 解析不可 Unicode 変換 日本語 (UTF-8 コード ) SASで文字化け 解析不可 日本語 英名化 (MedDRA 辞書 医薬品データファイル ) ( 副作用名 100%, 薬剤名 98.7%) 英名表記 SASで解析可能 19 10
問題への対処 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) 英名表記化した JADER データ 20 問題への対処 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) Transpose 時の文字数制限に伴う問題 SAS でシグナル指標 (PRR, ROR, MGPS, BCPNN) を算出した後 副作用名 薬剤名を変数名とした Transpose が JMP への結果出力のために必須 32 文字の制限により 同一名変数の重複が生じる 例 薬剤名 CONCENTRATED HUMAN RED BLOOD CELLS CONCENTRATED HUMAN RED BLOOD CELLS(IRRADIATED) Transpose 時の変数名 CONCENTRATED_HUMAN_RED_BLOOD_CEL SAS プログラムの該当部分を改修し解決 21 11
問題への対処 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) データの大規模化に伴う問題 JADER に含まれる全副作用と薬剤の組み合わせ ( 約 60 万オブザベーション数 ) を対象にした場合 消費メモリーが 32bit 版 PC 実装上限 (4G byte) に達し プロセスが中断終了 大規模データでも破綻が生じない改修パッチを SAS Institute より入手, 追加インストールし解決 22 解析結果 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) 特定薬剤の全副作用のシグナル指標値 (ROR 95% 信頼区間下限値 ) ツリーマップ 23 12
解析結果 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) 特定副作用の薬剤毎のシグナル指標値 (ROR 95% 信頼区間下限値 ) 経時変化 (2003 年 ~2012 年 ) 24 解析結果 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) Pharmacovigilance Disproportionality 解析実行後の出力ファイル 25 13
解析結果 ( 市販後相 : 副作用自発報告データ ) 解析実行時の出力ファイル dispanal.sas7bdat の内容 26 JMP Clinical の出力データを利用したデータ視覚化の例 特定薬剤 特定副作用 ROR95%CI の推移 ( 経年変化 ) 27 14
JMP Clinical の出力データを利用したデータ視覚化の例 特定副作用の全薬剤 ROR 95%CI 下限値と χ 2 値散布図 28 まとめ 臨床試験の CDISC 標準化データ JMP Clinical で解析するのに必要な SDTM 変換データを準備することで, 一連の解析結果を出力することが確認できた. その確認には Check Required Variables 機能が有用であった 副作用自発報告のデータ 市販のコード辞書を利用して英語化し, 必要な改修を SAS 社に対応してもらう事により,JMP Clinical が副作用シグナルのマイニングツールとして利用出来る事が確認できた. 日本においても, 潜在的リスク分析を含む安全性情報分析を視覚的かつ効率的に実施する事ができると考えられる 29 15
まとめ 解析に使用する PC の性能については, 大規模データである JADER を解析する際, 実施途中でメモリー不足になる事もあり, 今後情報が継続的に JADER にデータが蓄積される事を勘案すると, 今回の検討に用いた 32bit 版 OS ではなく,64bit 版 OS に対応した JMP Clinical を利用することを推奨する 現行の Version 4.0 に含まれる SAS は English edition のみであるためデータの英語化が必須となっている 今後, Unicode edition の SAS が JMP Clinical で利用可能になれば, 日本語を含む各国言語のデータの解析が文字コードの Unicode 変換のみで実施出来ると考えられ, 今後の JMP Clinical の機能拡張に期待したい 30 謝辞 本研究にあたり JMP Clinical プログラムの改修に迅速にご対応いただいた SAS Institute の方, 並びに JMP Japan 事業部の方に, ご尽力いただきまして深く御礼申し上げます 31 16