夫婦の働き方からみた WLB に関する多様なニーズ 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング株式会社主任研究員矢島洋子 よろしくお願いいたします 第 1 部の4 人の発表のうちの最初の発表を行わせていただきます 三菱 UFJリサーチ & コンサルティングの矢島と申します いま佐藤先生からご紹介がありましたとおり 私は 働く人の立場から見てワーク ライフ バランスについてどんなニーズがあるのか 現状はどうなっているのかといったことをご紹介したいと思います 正社員の両立支援に対するニーズ この調査は 子どもを持って正社員として働いている人に注目しています なぜ子どもを 持って働いている正社員の人に注目するのかということを まずお話しします 主に両立支援の対象となっている 子どもを持つ女性正社員 は極めて少ない図表 1 のグラフは 横軸にライフステージを示しています 向かって一番左から未婚時代 既婚で子どもがいない時代 既婚で子どもが小さい時代 それからだんだん子どもが大きくなっていく過程を示しています ( 左側の 現状 のグラフは ) 縦軸には それぞれのライフステージで実際にどういう働き方をしているのかという割合を示しています 100% 90% 80% 70% 図表 1 ライフステージ別働き方の現状と希望 働き方の現状 ライフステージ別働き方の希望 100% 90% 働きたくない 80% 働いていない 70% 60% 50% 40% 契約 派遣等 在宅 内職 60% 50% 40% 家でできる仕事 短時間勤務 30% 20% 10% 0% 未婚 正社員 既婚 子どもなし 既婚 子どもが 3 歳以下 既婚 子どもが 4 5 歳 ハ ート アルハ イト 自営 家族従業等その他 0% 既婚 子どもが 6~11 歳 既婚 子どもが 12 歳以上 30% 20% 10% 結婚していない場合 残業もあるフルタイムの仕事 結婚して子どもがいない場合 子どもが 3 歳以下 子どもが 4 歳 ~ 小学校入学前 子どもが小学生 フルタイムだが残業のない仕事 子どもが中学生以上 出所 : 内閣府男女共同参画局 女性のライフプランニング支援に関する調査 平成 19 年 3 月
正社員はピンク色で示されています 未婚や既婚で子どもがいないときは ある程度正社員の割合は高いのですが 子どもが 3 歳以下のときからぐっと減りまして その後子どもの年齢が上がっていっても正社員の割合は上がってきません 子どもが大きくなると 働いている割合は徐々に上がっていきますが パート アルバイトが中心で 正社員の割合は戻らないのです 一方 ライフステージ別の働き方の希望をみると 右側のグラフのように 働きたくない という白いところは非常に少なく 子どもが小学生ぐらいになると 9 割の女性は 働きたい と答えています 働き方としては 子どもの年齢が高くなるにつれ オレンジ色の フルタイムだが残業のない働き方 や赤い 残業もあるフルタイムの働き方 という正社員タイプの働き方を希望する人が多くなっていきます しかし現実には子どもを持って働いている女性正社員は少なく 働き方の希望としては多いこのターゲットの層のデータが ( 女性全体や子どものいる女性を対象とした調査をした場合 ) 非常に少なくなってしまうのが現状です 育児休業制度等の両立支援策は 実質的には主に正社員層を対象としたものとなっていますが この層の人たちが持っているニーズや制度利用における課題がこれまでよくわかっていなかったということで 今回は ここの層の人たちにターゲットを当てた分析をしています 4つの課題ここでは 以下の 4 つの課題について見ていきたいと思います まず 両立しやすい職場環境とはどういった環境なのかということが一つのテーマです 具体的には職場の特徴や導入されている制度です 二つ目には両立支援のメリット 仕事への意欲や定着意識を見ています それから三つ目は両立支援に対するニーズということで ここでは男女の違いですとか 先ほど佐藤先生のお話にありましたような夫婦の働き方による違いなどを見ています 最後に四つ目として制度の利用とそれを運用していくための評価の関係などについても見ています < 課題 1> 両立しやすい職場環境とは? 仕事と子育ての両立がしやすい職場の特徴最初に 仕事と子育ての両立がしやすい職場の特徴について 夫婦ともに正社員で働く男女に聞いた結果を男女別に示しています 図表 2 をご覧ください それぞれの項目について 2 本ずつ棒グラフがあります 上の方の濃い青い棒は 両立しやすい職場だと答えている人の回答 下の方の薄い青の棒グラフは 両立しやすくないと答えている人の回答になります 左グラフは男性に尋ねた結果 右のグラフは女性に尋ねた結果です 男性の回答を見ていただきますと 男性で職場が両立しやすいと答えている人と両立しやすくないと答えている方の回答で差が大きいのは 生活時間の確保に配慮している あるいは 残業や休日出勤が少ない というところです 長時間労働の問題や休日取得の問題が 両立しやすい職場にいると感じるかそうでないかの差として表れていることがわかります
図表 2 職場の両立しやすさと特徴 男性 : 夫婦ともに正社員 女性 : 夫婦ともに正社員 生活時間の確保に配慮している男女の区別なく昇進 昇格できる残業や休日出勤が少ない子育てをしながら働く女性がいるやりがいのある仕事ができるフレックス等 柔軟に働ける環境がある子育て支援制度が活用できる趣味と両立させている男性がいる女性の先輩や管理職が多くいるいずれもあてはまらない 34.6 11.1 32.2 27.0 28.8 7.8 24.7 15.1 24.3 18.4 22.6 12.4 21.6 8.4 19.5 7.8 13.4 7.0 14.7 43.0 子育て支援制度が活用できる子育てをしながら働く女性がいる残業や休日出勤が少ない生活時間の確保に配慮している男女の区別なく昇進 昇格できる女性の先輩や管理職が多くいるやりがいのある仕事ができるフレックス等 柔軟に働ける環境がある趣味と両立させている男性がいるいずれもあてはまらない 51.4 24.4 43.1 26.1 36.5 17.1 33.0 10.1 32.5 30.9 28.3 25.8 25.6 23.3 19.0 7.9 12.6 4.8 9.6 24.4 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 両立しやすさ : そう思う ややそう思う両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 両立しやすさ : そう思う ややそう思う両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 一方女性は 子育て支援制度が活用できる とか 子育てをしながら働く女性がいる という子育てと仕事の両立関連の項目で 両立しやすい職場にいると感じるかそうでないかの差が出ていることがわかります もう一つ注目していただきたいのは 男性のデータと女性のデータの回答割合の差です 女性のデータのほうが全般的に回答割合が高くなっています 子育て支援制度が活用できる と答えている人は 5 割を超えていますし 女性の職場のほうが 全体に両立しやすい特徴があると答えている方が多くなっています その理由ですが 女性の場合 正社員として子どもを持って働いている人はまだ少数派で そういう女性がいる職場であること自体 日本社会全体の中で見れば子育てしやすい 比較的両立しやすい職場であるということなのだと考えられます 一方 男性のほうのデータですが 子どもを持っている男性の 8 割以上が正社員ですので こちらのデータの示す職場の特徴は日本のいわゆる一般企業の状況を示しているのではないかと考えられます 大企業と中小企業の両立しやすさ両立のしやすさを考えたときに 企業の規模による違いも注目されます 図表 3 に企業の従業員規模別の両立しやすさについて尋ねた結果を男女別に掲載しています 所属する企業の従業員規模別で見ますと 100 人未満 の職場で働いている人で 男性 女性ともに 両立しやすい と答える人が多くなっています
図表 3 従業員規模別両立しやすさ 男性 : 夫婦ともに正社員 100 人未満 16.0 34.2 27.6 22.2 100~300 人 12.6 26.8 29.9 30.7 301 人以上 11.3 30.3 35.5 22.9 女性 : 夫婦ともに正社員 そう思うややそう思うあまりそう思わないそう思わない 100 人未満 33.1 47.4 15.7 3.8 100~300 人 20.0 47.6 26.2 6.2 301 人以上 20.6 45.4 25.9 8.1 そう思うややそう思うあまりそう思わないそう思わない 両立しやすい職場で導入されている制度 次に 両立しやすい職場で導入されている具体的な制度を見ています 正社員のままでの短時間勤務 妊娠中の特別休暇や短時間勤務 半日や時間単位の有給休暇 図表 4 職場の両立しやすさと導入制度 フレックスタイム 所定外労働の免除 法定以上の期間の育児休業 始業 終業時刻の繰上げ繰下げ 子どもの看護のための休暇 再雇用制度 週に 2-4 日の勤務制度 ハ ートになっても正社員に戻れる 男性 : 夫婦ともに正社員 在宅勤務 育児休業の分割取得 子どもの学期に合わせた勤務 法定を上回る父親の出産休暇 転勤の免除等の配慮 その他 いずれもない 36.6 21.1 25.7 17.3 24.7 17.8 22.3 15.1 19.2 13.2 17.8 11.1 17.5 11.4 16.4 12.4 9.6 6.5 8.9 3.8 8.6 5.1 7.9 3.5 6.5 1.9 5.8 3.2 5.5 4.6 5.1 4.9 2.7 3.8 32.2 49.7 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 両立しやすさ : そう思う ややそう思う両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 正社員のままでの短時間勤務 妊娠中の特別休暇や短時間勤務 女性 : 夫婦ともに正社員 所定外労働の免除 半日や時間単位の有給休暇 子どもの看護のための休暇 始業 終業時刻の繰上げ繰下げ 法定以上の期間の育児休業 フレックスタイム 再雇用制度 ハ ートになっても正社員に戻れる 在宅勤務 週に 2-4 日の勤務制度 育児休業の分割取得 法定を上回る父親の出産休暇 転勤の免除等の配慮 子どもの学期に合わせた勤務 その他 いずれもない 52.1 45.5 36.5 28.1 34.6 26.7 34.5 23.6 34.5 23.6 28.5 19.7 26.2 25.0 24.2 13.5 10.4 6.5 9.7 7.0 8.7 3.1 8.4 3.9 6.9 3.7 6.4 3.4 5.4 7.6 4.8 3.1 1.6 2.8 19.6 23.9 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 両立しやすさ : そう思う ややそう思う両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 出所 :( 財 ) こども未来財団 企業における仕事と子育ての両立支援に関する調査研究報告書 平成 20 年 3
これも男女別に見ていますが 導入されている制度については 男女間で順序はそう変わりません 男女ともに多いのは 正社員のままでの短時間勤務 ですし 2 番目に多いのは 妊娠中の特別休暇や短時間勤務 となっています ただ 先ほど見ていただきました職場の特徴と同じように 女性のほうが全般に導入されている制度が多いという結果になっていまして 正社員で働き続けられている女性のいる職場にはさまざまな両立支援制度が導入されていることがわかります 女性の中でも 両立しやすい職場とそうでない職場で差がある制度は 半日や時間単位の有給休暇 や 子どもの看護のための休暇 などとなっています 企業規模別導入されている制度 利用されている制度企業の従業員規模別の 制度の導入状況 と 利用した制度 について尋ねた結果が図表 5 です 先ほど見ていただいた結果のように なぜ中小企業のほうが両立しやすいという回答が多いのか その理由を見てみたいと思います 図表 5 女性 : 従業員規模別制度の導入状況と利用した制度 制度の導入状況 利用した制度 35.1 正社員のままでの短時間勤務 45.8 65.6 25.9 ハ ートになっても正社員に戻れる 26.4 38.6 24.9 所定外労働の免除 28.2 45.0 23.3 始業 終業時刻の繰上げ繰下げ 26.4 43.1 20.1 フレックスタイム 33.5 41.0 19.7 週に2-4 日の勤務 25.6 31.8 13.5 半日や時間単位の有給休暇 19.4 28.9 12.4 子どもの学期に合わせた勤務 22.5 39.7 10.8 在宅勤務 5.3 4.6 10.6 転勤の免除等の配慮 9.3 7.3 9.8 妊娠中の特別休暇や短時間勤務 3.1 6.6 5.6 法定以上の期間の育児休業 2.2 4.0 4.4 育児休業の分割取得 8.4 14.1 3.6 子どもの看護のための休暇 5.3 8.4 3.6 法定を上回る父親の出産休暇 3.1 8.4 3.4 再雇用制度 5.7 8.4 2.4 その他 0.9 2.2 31.1 いずれもない 23.8 10.2 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 100 人未満 100~300 人 301 人以上 30.3 正社員のままでの短時間勤務 28.9 31.0 23.1 妊娠中の特別休暇や短時間勤務 16.8 24.0 22.3 子どもの看護のための休暇 15.0 12.4 20.5 半日や時間単位の有給休暇 32.4 30.1 16.5 所定外労働の免除 14.5 14.9 14.2 始業 終業時刻の繰上げ繰下げ 13.9 9.2 12.4 フレックスタイム 13.3 17.3 11.0 在宅勤務 0.6 2.4 7.5 週に2-4 日の勤務 1.7 0.4 7.2 法定以上の期間の育児休業 12.1 17.9 4.0 子どもの学期に合わせた勤務 0.6 0.6 3.2 ハ ートになっても正社員に戻れる 4.0 2.2 2.9 転勤の免除等の配慮 2.9 2.4 0.6 育児休業の分割取得 1.7 1.0 0.6 法定を上回る父親の出産休暇 2.3 1.4 0.6 再雇用制度 3.5 1.4 1.7 その他 0.6 0.4 21.7 いずれもない 26.0 24.8 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 100 人未満 100~300 人 301 人以上 左側のグラフは 制度が導入されているかどうかですが 従業員規模 100 人未満 は一番上の濃い青い棒グラフ 一番下の黄色い棒グラフは 301 人以上 の企業の回答です 制度の導入状況を見ますと 全般に黄色いグラフの大企業でその割合が高いことが見てとれます 一方 利用した制度ということで聞きますと 子どもの看護のための休暇 ですとか 始
業 終業時刻の繰り上げ繰り下げ それから 在宅勤務 や 週に 2~4 日の勤務 というような短日勤務 こういった制度については 100 人未満 の企業で回答割合が高い つまり大企業のほうが導入されている制度は多いのですが そういった制度が実際にどの程度利用されているかという状況を見ると 中小企業のほうが利用されているものもあるという状況が見てとれます < 課題 2> 両立支援のメリット両立しやすさと仕事への意欲やはり企業の方にとっては 両立支援をすることでどういったメリットがあるかというところが非常に気になると思います ここでは両立しやすさと仕事への意欲を見ています 上の2 本の棒グラフが男性 下の 2 本の棒グラフが女性で それぞれ上のほうが 両立しやすい職場 2 番目が 両立しにくい職場 の回答になっています 図表 6 職場の両立しやすさと仕事への意欲 男性 両立しやすさ : そう思う ややそう思う 23.6 53.4 18.2 4.1 0.7 両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 19.2 40.5 28.4 10.8 1.1 女性 両立しやすさ : そう思う ややそう思う 18.9 53.9 23.9 3.3 0.0 両立しやすさ : そう思わない あまりそう思わない 10.4 47.5 32.6 8.4 1.1 <Q. 仕事に目的意識を持って取り組んでいるか?> そう思うややそう思うあまりそう思わないまったくそう思わないその他 仕事に目的意識を持って取り組んでいるかどうかを見ているのですが やはり男性も女性も職場が 両立しやすい と答えている人のほうが 仕事に目的意識を持って取り組んでいるかということに対して そう思う ややそう思う と答えている割合が高いという状況になっています 両立支援に取り組んだ場合のメリットとしては このように仕事に対する意欲が高まるということのほかに 仕事の満足度なども聞いていますがやはり同じような傾向があります 働き方と定着意識 ( 勤務先の変更希望 ) もう一つ見方を変えて 働き方について 定時退社か残業が多いのか 働き方に融通性があるのかないのか という勤務時間の長さと融通性に着目して職場を4カテゴリーに分け それぞれの職場で 職場を変わりたいと思うことがあるか を聞いたデータを図表 7 に示しています
男性 図表 7 働き方別勤務先の変更希望 定時退社で融通性もある 41.9 55.4 2.7 定時退社だが融通性はない 58.3 39.1 2.6 残業が多いが融通性はある 51.1 44.9 4.0 残業が多く融通性もない 65.6 27.7 6.7 女性 定時退社で融通性もある 43.6 51.4 5.0 定時退社だが融通性はない 54.9 37.5 7.6 残業が多いが融通性はある 54.0 41.5 4.5 残業が多く融通性もない 66.1 20.9 13.0 変わりたいと思うことがある変わりたいと思うことはない仕事を辞めたい これを見ていただきますと 男性の場合は定時退社か残業かにかかわらず 融通性があるかどうかというところで 職場を変わりたいと思うことがある と答える割合に違いがあります 融通性がない と答えている人は 職場を変わりたいと思うことがある と答える割合が高くなっています 女性の場合は 融通性だけではなくて 定時退社か残業かというところも関係していまして 下のほうの働き方になればなるほど 職場を変わりたいと思うことがある と答える人が多くなっています つまり ワーク ライフ バランスに取り組むことで就業意欲が高まるとか満足度が高まるというメリットの他に 逆に 取り組まないと 職場を変わりたいと思う と答える方が多くなっているということは 取り組まないことのデメリットがあるということなのではないでしょうか < 課題 3> 両立支援に対するニーズ職場の両立支援に対する男女のニーズの違い次に両立支援に対するニーズですけれども 図表 8 のグラフで男女別の違いを見ていただきたいと思います 職場に導入されている両立支援制度について 利用したいかどうかを聞いているものです 上の濃い棒グラフが女性で下の薄い棒グラフが男性になっています
図表 8 職場の子育て支援に対するニーズ ( 利用したい 利用したかったサービス ) 正社員のままでの短時間勤務子どもの看護のための休暇フレックスタイム制度子どもの学期に合わせた勤務制度妊娠中の特別休暇や短時間勤務週に2-4 日の勤務制度半日や時間単位の有給休暇法定以上の期間の育児休業在宅勤務始業 終業時刻の繰上げ繰下げ制度所定外労働の免除一時的にハ ートになっても正社員に戻れる制度法定を上回る父親の出産休暇育児休業の分割取得再雇用制度転勤の免除等の配慮その他いずれもない 41.4 17.2 37.1 15.7 33.5 18.4 33.2 12.5 31.0 7.8 30.6 12.1 28.5 12.8 27.7 9.4 27.4 13.0 26.1 12.9 24.9 12.1 23.4 5.2 17.9 13.9 17.3 8.0 15.9 5.0 14.2 女性 8.2 3.1 2.5 20.8 男性 52.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 一目見てわかるように 全体に女性のニーズが圧倒的に高くなっている状況で 男性は一番下の いずれもない という回答が非常に高くなっています 仕事と子育ての両立支援制度ということになりますと これだけ男女差が出るのですが 職場の環境改善のための取り組み ということで 例えば 所定の時間で仕事を終える工夫 とか 長時間残業の縮減 とか 基本的な働き方を変える取り組みについて見ますと 男女でこのニーズの差はほとんどなくなります
図表 9 環境改善推進のための取組ニーズ ( 職場に必要だと思う取組 ) 所定の時間で仕事を終える工夫長時間残業の縮減多様な働き方を認める雰囲気管理職に対する研修定期的な社員のニーズ調査調整担当者の配置成果で仕事を評価する意識の浸透仕事のみを最優先とする意識の変革早朝 夜間の会議や会合の禁止定期的な労使間の話し合いの機会チームで仕事を進め情報を共有するフルタイムとハ ートタイムの処遇の均衡その他いずれもない 6.5 8.6 47.3 46.5 44.0 42.8 43.9 37.8 39.6 37.7 38.9 37.0 36.8 34.4 35.7 34.9 35.7 33.6 35.0 34.3 32.5 32.4 31.6 35.6 29.7 23.9 女性男性 17.3 20.5 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 男性は 職場が両立しやすいかどうかを判断するときに やはり勤務時間の長さ 残業が多いかどうかということや 有休がとれるかどうかというところで判断していることがわかります 男性も 基本的な働き方を変える制度については 非常に高いニーズがあることがわかります 夫の働き方による女性の職場に対するニーズの違いただ 子育て支援制度については 男性の多い職場ではあまり取り組まなくていいのだろうかということになりますが それについては図表 10 のグラフを見てください これは 先ほどみていただいたのと同様に 定時退社か残業か 融通性があるかないかということで働き方を 4 カテゴリーに分けたとき 女性のうち 定時退社で融通性がある に分類された人について 夫の働き方との組み合わせの違いで 自分の職場に対してどのような制度への要望が高いか その違いを示したものです 上の濃い青い棒グラフは 夫婦ともに定時退社で融通性がある場合 下の薄い棒グラフは 夫は長時間残業で融通性もない つまり夫婦の中で夫だけが非常にハードな働き方をしている場合です
図表 10 女性 : 夫婦の働き方別子育て支援ニーズ 子どもの看護のための休暇正社員のままでの短時間勤務フレックスタイム制度妊娠中の特別休暇や短時間勤務子どもの学期に合わせた勤務制度週に2-4 日の勤務制度半日や時間単位の有給休暇在宅勤務法定以上の期間の育児休業始業 終業時刻の繰上げ繰下げ制度ハ ートになっても正社員に戻れる子一人に休業を分割して取得できる法定を上回る父親の出産休暇所定外労働の免除転勤の免除等の配慮再雇用制度その他いずれもない 1.0 8.6 8.6 6.7 6.7 5.7 4.8 15.2 23.8 35.1 22.9 36.3 22.9 32.7 21.0 28.6 20.0 31.5 18.1 34.5 15.2 15.2 13.3 25.6 11.4 20.8 19.6 23.2 22.0 15.5 17.9 20.2 29.2 29.8 32.1 31.4 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 夫婦ともに定時退社で融通性あり夫は長時間残業で融通性もなし これを見ますと 夫婦ともにワーク ライフ バランスがとれた働き方をしていると 女性が自分の職場に求めるニーズは比較的抑えられていますが 夫が大変ハードな働き方をしていると その妻である女性が自分の職場に対して 子どものための看護の休暇や 短時間勤務といったものをもっと利用したいという声を多く上げるようになるということです こうなってきますと やはり女性が多い職場や企業だけが両立支援策を一生懸命していると その企業は従業員の夫の会社のために支援をしてあげているような状況になるということで 社会全体で見ると非常にアンバランスな状況になってくるという問題があります 同じ職種でも異なる男女の年収女性の職場に負担がかかるばかりではなく 他にも問題があります 現在の女性と男性の職種別の年収を見ますと 女性の場合 専門 技術 管理職であっても 男性と比べて非常に年収水準が低くて 300 万未満の割合が高い 他の職種を見ても 同じ正社員で働いているといっても 女性のほうが年収の水準が非常に低くなっています
図表 11 職種別年収 女性 男性 2.0 専門 技術 管理職 24.3 53.3 13.8 2.1 専門 技術 管理職 26.9 42.0 28.6 0.6 6.5 事務系 44.4 41.2 9.9 2.0 事務系 3.8 34.3 33.8 25.7 2.4 2.5 販売 サービス 48.9 34.6 11.0 3.9 販売 サービス 8.0 56.8 26.1 9.1 0.0 1.6 その他 45.2 38.7 8.1 6.5 その他 8.9 56.0 25.3 8.0 1.8 1.6 300 万円未満 300~500 万円未満 500~700 万円未満 700 万円以上 わからない 300 万円未満 300~500 万円未満 500~700 万円未満 700 万円以上 わからない これでは せっかく正社員で両立支援をして就業継続はできていても 女性の能力を十分に活用している状態とは言えないのではないかということです 単に女性のニーズがあるから女性だけ両立支援をするとか 男性は現状ニーズが低いのでしなくてよいということではなくて 男女でバランスよく支援をしていくことで 女性の能力を活用することにもつながるのだと思います 背景に 家庭内の家事や子育ての役割分担こういった年収差の背景には 家庭内の家事や子育ての役割分担の問題があります 一日の家事時間も子どもを見ている時間も女性のほうに非常に偏っている傾向があり 夫婦でもう少し家事や子どもを見る 子育てについて分担ができるような状況をつくっていくと 女性の能力活用が進むのではないかと言えます
図表 12 1 日の家事時間 図表 13 平日主に子どもをみている人 1.5 女性 : 夫婦ともに正社員 5.416.6 58.8 17.7 女性 : 夫婦ともに正社員 73.5 2.3 8.214.7 1.3 男性 : 夫婦ともに正社員 4.5 77.1 10.9 1.4 男性 : 夫婦ともに正社員 39.0 24.6 21.0 13.9 1.5 6.1 男性 : 専業主婦 1.8 93.8 2.7 0.7 男性 : 専業主婦 56.9 21.2 14.0 6.91.1 1.1 15 分未満 15 分以上 30 分未満 30 分以上 1 時間未満 1 時間以上 3 時間未満 3 時間以上 主に自分がみている主に配偶者 ハ ートナーがみている主に自分と配偶者 ハ ートナーでみている主に祖父母や近所の人がみているその他 仕事と家事 子育て優先度の希望と現実役割分担や年収における差が 単に家庭内の夫婦間でのワーク ライフ バランスというか 夫婦間で納得されてそうなっているのであれば 企業がいくら取り組みを変えてもその実態は変わらないかもしれませんが 必ずしもそうではないようです 仕事と家事 子育て優先度の希望と現実 というデータがあり これは仕事と家事 育児をどのように重視したいかを聞いています 図表 14 仕事と家事 子育て優先度の希望と現実 仕事等自分の活動に専念 どちらかといえば仕事等が優先 仕事と家事 育児を同時に重視 どちらかといえば家時 育児が優先 家事や育児に専念 無回答 母親 希望 4.2 9.9 58.6 17.7 9.2 0.3 0.8 母親 現実 5.5 12.4 43.4 37.7 0.2 1.4 父親 希望 10.3 19.8 51.6 15.9 1.0 0.4 父親 現実 12.5 52.7 25.9 7.3 1.2 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 上の 2 本の棒グラフが母親で 下の 2 本の棒グラフが父親です 回答を見ますと 棒グラ
フの真ん中の緑色が 仕事と家事 育児を同時に重視したい という回答で 女性で 6 割弱 男性でも5 割強ということで 子どもを持っている父親も母親も 仕事と家事 育児を同時に重視したいという希望は持っている けれども 現実にはそれができていないという状況があって 現実と希望にギャップがある そういう状況ですので 職場環境が変われば ( 役割分担等も ) ある程度変わっていくのではないかということが期待されます < 課題 4> 制度利用と評価の関係休暇 休業復帰後の評価と取得時の不安最後に 制度利用と評価の関係です 育児休業復帰後の評価について 育児休業を取得したことが評価に影響するかどうか聞いたところ 男女ともに 影響するかどうかわからない と答えた割合が非常に多いという結果でした 図表 15 育児休業復帰後の評価 女性 男性 評価にマイナスの影響を与える 17.2% 無回答 4.5% 評価に影響することはない 35.4% 評価にマイナスの影響を与える 17.8% 無回答 2.0% 評価に影響することはない 27.4% 影響するかわからない 42.9% 影響するかわからない 52.8% また 影響するかどうかわからない と答えた人や 影響する と答えた人は 育児 休業を取得することに対して不安を感じているという結果が出ています 図表 16 評価への影響別育児休業取得時の不安 女性 男性 評価に影響することはない 12.9 45.1 30.7 11.2 影響するかわからない 23.4 46.5 25.8 4.3 評価にマイナスの影響を与える 36.4 36.4 20.5 6.6 強く不安を感じた不安を感じたそれほど感じなかった全く感じなかった
評価に影響することはない 3.8 10.1 40.4 45.7 影響するかわからない 5.4 14.4 40.8 39.4 評価にマイナスの影響を与える 9.2 17.2 48.3 25.3 強く不安を感じた不安を感じたそれほど感じなかった全く感じなかった 今後 制度利用を進めるためには 制度を導入するだけではなく もっと広い観点から 制度を利用した人 利用しなかった人の間の公正な評価という面まで環境を整備する そのことによって さらに制度の利用が進むのではないでしょうか 特に男性の平均育児休業取得期間は この調査では 大方 3 日程度だったのですが 3 日ぐらいしか取得していないにもかかわらず 評価に不安がある と答えている人が多いということで 男性の制度利用 両立支援を考えた場合には評価制度が非常に重要だと考えられます 両立支援に対するニーズ最後に両立支援に対するニーズに関して これまでの内容を振り返ってみます 育児休業や短時間勤務 看護休暇等の両立支援制度のニーズは ( 男性よりも ) 女性に多いのが実状です ただし 男性の働き方が変わらないと 女性の職場が夫の分も負担する 支援することになる また 女性の就業継続はできても 能力活用はできない それから基本的な働き方の見直し 生活時間への配慮に対するニーズは男女に差がない ワーク ライフ バランスを推進することによるプラスの効果のみならず ワーク ライフ バランスを推進しないことによって 職場を変わりたいと思ってしまうというマイナスの影響も見られる それから制度利用促進 特に男性の制度利用促進のためには 人事評価への配慮も必要であるということになります 駆け足で大変失礼いたしました ありがとうございます ( 拍手 )