別紙様式 2( 第 3 条関係 ) No.1 光科学研究科光科学専攻 学籍番号 :D 学位論文要旨 氏 名 : 伊藤哲平 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる新規骨形態計測法の開発と慢性腎臓病の病態解析 研究背景 骨の健康指標である骨強度は 原発性骨粗鬆症や骨軟化症など骨疾患

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

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4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

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免疫学的検査 >> 5C. 血漿蛋白 >> 5C146. 検体採取 患者の検査前準備検体採取のタイミング記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料ネ丸底プレイン ( 白 ) 尿 9 ml 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

内 容 目 次

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

学位論文審査結果報告書

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

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博士学位論文審査報告書

SP8WS

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )


( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

王子計測機器株式会社 LCD における PET フィルムの虹ムラに関する実験結果 はじめに最近 PETフィルムはLCD 関連の部材として バックライトユニットの構成部材 保護シート タッチセンサーの基材等に数多く使用されています 特に 液晶セルの外側にPET フィルムが設けられる状態

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関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (


83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

学位論文の要約

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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(1) (2) (3) (4) (5) 2.1 ( ) 2

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平成14年度研究報告

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高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

偏光板 波長板 円偏光板総合カタログ 偏光板 シリーズ 波長板 シリーズ 自社製高機能フィルムをガラスで挟み接着した光学フィルター

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

氏 名 下村 淳子 学位の種類 博士 ( 健康科学 ) 学位記番号 甲第 2 号 学位授与年月日 平成 26 年 3 月 31 日 学位授与の要件 学位規則第 3 条第 2 項該当 学位論文題目 Study on the risk factors of injuries resulting in h

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Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

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博 士 学 位 論 文

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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在学生向け 大学院生 平成 31 年度 < 社会人大学院生対象 > 長期履修の申請について 本学では 社会人の大学院生の様々な学習需要に対応するために 長期履修制度 を導入しています この制度は 標準の修業年限を超えて計画的に教育課程を履修し修了することにより学位を取得することができる制度です 対象

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微小粒子状物質曝露影響調査報告書

であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

時間がかかる.DOSS は妥当性が検証されておらず, 更に評価に嚥下造影検査が必要である. FOSS や NOMS は信頼性と妥当性が評価されていない.FOIS は 7 段階からなる観察による評価尺度で, 患者に負担が無く信頼性や妥当性も検証されている. 日本では Food Intake LEVEL

認定科目表に掲げる授業科目を履修したものとみなす際の手続き及び方法について

Akita University 氏名 ( 本籍 ) 若林 誉 ( 三重県 ) 専攻分野の名称 博士 ( 工学 ) 学位記番号 工博甲第 209 号 学位授与の日付 平成 26 年 3 月 22 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研究科 専攻 工学資源学研究科 ( 機能物質工学

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 中谷夏織 論文審査担当者 主査神奈木真理副査鍔田武志 東田修二 論文題目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transpl

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

平成24年7月x日

Crystals( 光学結晶 ) 価格表 台形状プリズム (ATR 用 ) (\, 税別 ) 長さ x 幅 x 厚み KRS-5 Ge ZnSe (mm) 再研磨 x 20 x 1 62,400 67,200 40,000 58,000

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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報告にも示されている. 本研究では,S1P がもつ細胞遊走作用に着目し, ヒト T 細胞のモデルである Jurkat 細胞を用いて血小板由来 S1P の関与を明らかにすることを目的とした. 動脈硬化などの病態を想定し, 血小板と T リンパ球の細胞間クロストークにおける血小板由来 S1P の関与につ

機能分類や左室駆出率, 脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic peptide, BNP) などの心不全重症度とは独立した死亡や入院の予測因子であることが多くの研究で示されているものの, このような関連が示されなかったものもある. これらは, 抑うつと心不全重症度との密接な

第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

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study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

博士学位申請論文内容の要旨

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

博士学位論文 内容の要旨および審査結果の要旨 2018 年度中部学院大学 氏名 ( 本籍 ) 小川征利 ( 岐阜県 ) 学位の種類 博士 ( 社会福祉学 ) 学位授与の日付 2019 年 3 月 21 日 学位番号 甲第 8 号 学位授与の要件 中部学院大学学位規則第 4 条の規定による 学位論文題

<4D F736F F F696E74202D2095B68CA38FD089EE E48FE392F18F6F2E B93C782DD8EE682E890EA97705D205B8CDD8AB B836

論文の内容の要旨

FT-IRにおけるATR測定法

検査項目情報 6154 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E016. カテコールアミン3 分画 カテコールアミン3 分画 [ 随時尿 ] catecholamines 3 fractionation 連絡先 : 3764 基本情報 4E016

早稲田大学大学院日本語教育研究科 修士論文概要書 論文題目 ネパール人日本語学習者による日本語のリズム生成 大熊伊宗 2018 年 3 月

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血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

研究計画書

厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

博士学位論文 内容の要旨及び論文審査結果の要旨 第 11 号 2015 年 3 月 武蔵野大学大学院

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博士学位論文要旨等の公表 学位規則 ( 昭和 28 年 4 月 1 日文部省令第 9 号 ) 第 8 条に基づき 当該博士の学位の授与に係る論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する 氏名 伊藤哲平 学位の種類博士 ( 理工学 ) 報告番号 甲第 21 号 学位授与の要件学位規程第 4 条第 2 項該当 学位授与年月日平成 30 年 3 月 17 日 学位論文題目 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる新規骨形態 計測法の開発と慢性腎臓病の病態解析 論文審査委員主査教授木村 - 須田廣美 委員教授下村政嗣 委員教授大越研人

別紙様式 2( 第 3 条関係 ) No.1 光科学研究科光科学専攻 学籍番号 :D2150010 学位論文要旨 氏 名 : 伊藤哲平 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる新規骨形態計測法の開発と慢性腎臓病の病態解析 研究背景 骨の健康指標である骨強度は 原発性骨粗鬆症や骨軟化症など骨疾患の他 糖尿病 高血圧 慢性腎臓病に伴うミネラル代謝異常により低下することが知られている 骨強度の評価は骨密度を計測することが最も有用な手段であると考えられていたが 2001 年 NIH Consensus Conference において 骨強度には骨密度が 70% と骨質 ( 構造特性 材質特性 ) が 30% 程度反映される と定義されてからは 骨質に関する基礎研究が盛んに行われるようになり 従来は材料解析に用いられてきた機器分析を採用した骨質評価法が注目されるようになった 我々はこれまで赤外イメージングやラマンイメージングを用いた骨質解析を行ってきた しかしながら 得られた骨質データは必ずしも骨強度と強い相関関係にはなく 骨質の新規計測 解析法の開発が課題となった そこで本研究では 骨成分であるコラーゲン線維と骨アパタイト ( 主にヒドロキシアパタイト ) の配向性に着目し 赤外二色性イメージングによるコラーゲン線維と骨アパタイトの配向性評価法の開発および従来法と配向性評価法を駆使した慢性腎臓病 (CKD) モデルラットの病態解析を行った また 試料調整によって生じる骨の変性を最小限に留め 調整時間短縮と低コストを目的とした凍結切片作製法の開発も行った 動物および実験方法 赤外二色性イメージングによるコラーゲン線維と骨アパタイトの配向性評価法の開発では 生後 16 日と 6 12 33 週齢の雄 SD ラットの大腿骨を用い 週齢に伴う骨アパタイトとコラーゲン線維配向性の変化について検討した 安楽死後に摘出した大腿骨は ポリメタクリル酸メチル (PMMA) による包埋を施し 3 m の薄切片にした 赤外二色性イメージングでは 赤外イメージング装置に偏光子設置し 回転角 0 と 90 で各薄切片を透過法と反射法で測定した コラーゲン線維と骨アパタイトの配向性は それぞれアミド I とリン酸の赤外吸収バンドを使った赤外二色性イメージから得た また 赤外イメージングにより 石灰化度 炭酸塩含有率 結晶化度 結晶成熟度も求めた CKD の病態解析では 7 週齢の SD ラット雄に 5/6 腎摘出術を施した高回転型および 5/6 腎摘出術と副甲状腺摘出術を施した低回転型 CKD モデルを作製した 各ラットは P と Ca の量を調整した飼料を与え 18 週間飼育した後 安楽死させ大腿骨を摘出した 骨質評価には赤外イメージング 赤外二色性イメージングを行った 新規凍結切片作製法では ポリプロピレン (PP) フィルに接着剤を塗布し 凍結切片をフィルムに固定した 赤外イメージングでは 試料が固定された PP フィルムの接着面を BaF2 基板と合わせて測定を行った 千歳科学技術大学大学院光科学研究科

別紙様式 2( 第 3 条関係 ) 結果と考察 赤外二色性イメージングによるコラーゲン線維と骨アパタイトの配向性評価法の開発 No.2 週齢の異なるラット大腿骨の骨質を比較した結果 石灰化度と結晶化度は週齢に伴って有意に増加した 一方 炭酸含有率は 16 日から 6 週齢の間に減少 結晶成熟度はその間向上したが 共にそれ以降有意な差は認められなかった 骨軸に沿ったコラーゲン線維の配向は 12 週齢の骨幹中央部において認められ 33 週齢に著しく向上したことから 週齢に伴うコラーゲン線維配向性向上が確認された ラット大腿骨の骨強度は週齢に伴って増加することから コラーゲン線維の配向性は 骨強度に影響を及ぼすと考えられる 一方 骨アパタイトの配向性を検討するためにリン酸バンドを波形処理により 7 成分に分け 各成分とコラーゲン線維の配向性を比較検討した その結果 低結晶性アパタイトの配向性はコラーゲン線維とよく一致するが 他の骨アパタイト成分の配向性は一致しなかった これらの結果から 骨アパタイトの結晶成熟度が向上した場合 コラーゲン線維の配向性と骨アパタイトの配向性は異なることが明らかとなり 石灰化度の進行に伴い骨アパタイトの配向性が変化することが示唆された また 透過法と反射法の赤外二色性イメージに差が認められなかったことから 赤外二色性イメージによるコラーゲン線維と骨アパタイト配向性評価法は 骨質を評価するのに極めて有効な手段であることが示された CKD モデルラットの病態解析 生化学検査から CKD モデルラットは高回転型 (H-CKD) が二次性副甲状腺機能亢進症を発症し 低回転型 (L-CKD) が発症していないことを確認した H-CKD と L-CKD の骨質を比較した結果 石灰化度と結晶化度は差を認めなかったが H-CKD の炭酸塩含有率と結晶成熟度は有意に低値を示した 特に 大腿骨骨幹端部の炭酸塩含有率と結晶成熟度は著しく低下した これは 二次性副甲状腺機能亢進症に伴う高リン血症による代謝性アシドーシスが原因で H-CKD の骨から炭酸塩が溶出したと考えられる また H-CKD と L-CKD は共に骨幹中央部で低結晶性アパタイトの偏光赤外吸収強度の角度依存性を示したことから 赤外二色性イメージングによる比較検討を行なった その結果 健常ラットと比べて CKD ラットの骨幹端における低結晶性アパタイトとコラーゲン線維配向性が低下することが認められ その傾向は H-CKD が著しいことを確認した これらの結果から CKD に伴う骨脆弱性は 骨幹端における低結晶性アパタイトとコラーゲン線維の配向性低下に特徴づけられた 新規凍結切片作製法の開発接着剤を塗布した 4 m の PP フィルムに凍結切片を固定する短期間かつ低コストでできる試料調整法を開発した その際 4 m の PP フィルムが赤外イメージング ( 透過法 ) や赤外二色性イメージングの結果に影響を及ぼさないことを確認した 同じマウスから摘出した左右大腿骨をそれぞれ凍結切片と PMMA 包埋による薄切片にし 赤外イメージングによる骨質解析を行った 赤外イメージから抽出した赤外スペクトルを比較した結果 骨アパタイト由来の PO4 3- バンドとコラーゲン由来の amide I バンドの幅や形状は凍結切片と PMMA 包埋による薄切片の間で異なることが確認された 皮質骨と海綿骨の石灰化度や結晶化度は 凍結切片で低値を示し 炭酸塩含有率は高値を示した 結論 赤外二色性イメージングによるコラーゲン線維と骨アパタイトの配向性評価は 新たな骨質評価法として極めて有効であることが示され 従来の骨質解析法と併用することにより H-CKD と L-CKD の骨質の違いを明らかにすることができた 一方 4 m の PP フィルムを用いた凍結切片作成法は試料調整の時間短縮と低コストを実現したことから 臨床における応用が期待される 千歳科学技術大学大学院光科学研究科

論文審査の結果の要旨 本研究は 新しい骨形態計測の分野で展開される骨質評価法の開発とその臨床応用への実現に向けて (1) 赤外二色性イメージングによるコラーゲン線維と骨アパタイト配向性評価法の開発 (2) 新規配向性評価法と従来法を駆使した慢性腎臓病 (CKD) モデルラットの骨の病態解析 及び (3) 骨の変性を最小限に抑え 試料調整時間の短縮と低コスト化を目指した凍結切片作製法の開発に取り組んだ (1) のコラーゲン線維と骨アパタイト配向性評価法の開発では 骨の主成分であるコラーゲン線維と骨アパタイト配向性の相関に着目し 赤外二色性イメージングによる配向性評価法を確立した 赤外二色性イメージングでは 赤外イメージング装置に偏光子を設置 回転角 0 ならび 90 で骨の薄切片を計測し 得られた赤外スペクトルのアミド I とリン酸バンドから赤外二色性イメージを得た これまで X 線や電子線回折による微小領域のコラーゲン線維や骨アパタイトの配向性評価は報告されているが 数 cm2 の配向性評価を可能にしたのは本評価法が初めてである 本評価法の開発に伴い 大腿骨皮質骨におけるコラーゲン線維配向性と低結晶生アパタイト配向性が一致することを見出した (2) の CKD モデルラットの骨の病態解析では SD ラット雄に 5/6 腎摘出術を施した高回転型 (H-CKD) および 5/6 腎摘出術と副甲状腺摘出術を施した低回転型 CKD モデル (L-CKD) を作製し 赤外イメージングと赤外二色性イメージングによる大腿骨の骨質解析を行った 赤外イメージングによる骨質解析において H-CKD の炭酸塩含有率と結晶成熟度は有意に低値を示し 特に骨幹端部では著しいことが示された この結果は 二次性副甲状腺機能亢進症に伴う代謝性アシドーシスによる骨からの炭酸塩溶出が原因であると結論づけた 赤外二色性イメージングによる配向性評価において H- ならび L-CKD 大腿骨骨幹端のコラーゲン線維と低結晶性アパタイト配向性は 健常ラットに比べて低下することが明らかとなり その傾向は H-CKD が著しいことを確認した これにより CKD に伴う骨脆弱性は 骨幹端におけるコラーゲン線維と低結晶性アパタイト配向性低下に特徴づけられることを示した (3) の凍結切片作製法の開発では 接着剤を塗布した 4 µm のポリプロピレンフィルムに骨の凍結切片を固定する試料調整法を開発し 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる骨質解析の時間短縮 低コスト化を可能にした また この試料調整法は 脱水や樹脂包埋による骨の変性を最小限に抑えることができるため より生体内に近い状態の骨質を評価することができる これら 3 つの取組み結果から 生体内に近い状態でより多くの骨質情報が 短時間 かつ 低コストで得られるようになり 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる骨質解析の臨床応用への実現に向けて大きく前進したといえる 研究内容は研

究発表会 ( 公聴会 ) において詳細を発表し 参加された多くの先生方から質疑を頂いが いずれについても明快に説明を行った 以上の結果から 本論文は千歳科学技術大学大学院学則第 25 条及び千歳科学技術大学学位規定の定めるところより 博士 ( 理工学 ) の学位を授与するに十分との結論に達した