糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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プランの策定の支援などが議論されました こうした状況を踏まえ 我が国においても薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランを取りまとめるべく G7 ドイツ ベルリン保健大臣会合後の昨年 2015 年 11 月 厚生労働省に薬剤耐性 (AMR) タスクフォースを設置し 有識者ヒアリング等による検討を重ね

中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

説明文書

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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耐性菌届出基準

(案の2)

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

平成 29 年度感染症危機管理研修会資料 2017/10/11 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランの進捗 厚生労働省健康局結核感染症課 アウトライン 1. 現状と動向 2. アクションプラン 3. 施策と進捗状況 4. 今後の方向 1

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

薬剤耐性 (AMR) に起因する死亡者数の推定 0 年現在の AMR に起因する死亡者数は低く見積もって 0 万人 何も対策を取らない場合 ( 耐性率が現在のペースで増加した場合 ) 00 年には 000 万人の死亡が想定される ( 現在のがんによる死亡者数を超える ) 欧米での死亡者数は 0 万人

2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

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Microsoft PowerPoint  税-1(平成28年度補てん状況把握)

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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資料 2-1 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン に基づく施策のフォローアップについて ( 概要 ) 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン ( 平成 28 年 4 月 5 日国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議決定 ) に記載の取組について 昨年のフォローアップ以後の各府省における

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抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

DOTS 実施率に関する補足資料 平成 26 年 12 月 25 日 結核研究所対策支援部作成 平成 23 年 5 月に改正された 結核に関する特定感染症予防指針 に DOTS の実施状況は自治体による違いが大きく実施体制の強化が必要であること 院内 DOTS 及び地域 DOTS の実施において医療

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薬剤耐性とは何か? 薬剤耐性とは 微生物によって引き起こされる感染症の治療に本来有効であった抗微生物薬に対するその微生物の抵抗性を言う 耐性の微生物 ( 細菌 真菌 ウイルス 寄生虫を含む ) は 抗菌薬 ( 抗生物質など ) 抗真菌薬 抗ウイルス薬 抗マラリア薬などの抗微生物薬による治療に耐えるこ

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

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抗菌薬の適正使用に向けた8学会提言 抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship ; AS)プログラム推進のために

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第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

名称未設定

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 院内感染対策サーベイランス集中治療室部門 3. 感染症発生率感染症発生件数の合計は 981 件であった 人工呼吸器関連肺炎の発生率が 1.5 件 / 1,000 患者 日 (499 件 ) と最も多く 次いでカテーテル関連血流感染症が 0.8 件 /

づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

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項目 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランについて 耐性菌の基礎知識 薬剤耐性モニタリング (JVARM) の成績 コリスチン耐性について 薬剤耐性菌のリスク分析 動物用医薬品の慎重使用について 2

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第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

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通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

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シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号


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別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

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審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

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topics vol.82 犬膿皮症に対する抗菌剤治療 鳥取大学農学部共同獣医学科獣医内科学教室准教授原田和記 抗菌薬が必要となるのは 当然ながら細菌感染症の治療時である 伴侶動物における皮膚の細菌感染症には様々なものが知られているが 国内では犬膿皮症が圧倒的に多い 本疾患は 表面性膿皮症 表在性膿

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医療費適正化計画の概要について 国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から 医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため 国 都道府県は 医療費適正化計画を定めている 根拠法 : 高齢者の医療の確保に関する法律作成主体 : 国 都道府県計画期間 :5 年 ( 第 1 期 : 平成 20~24

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平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

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平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

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2018 年 6 月 20 日放送 内服抗菌薬使用状況の現状 -national database 解析より 京都薬科大学臨床薬剤疫学分野教授村木優一はじめに我が国では 2016 年 4 月 5 日に行われた国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議において薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランがまとめられました また 2017 年 4 月には国立国際医療研究センターに AMR 臨床リファレンスセンター (AMRCRC: Antimicrobial Resistance Clinical Reference Center) が設立されるなど 世界的に問題になることが予想されている耐性菌の脅威に対して国家をあげた様々な取り組みが実施されています こうした取り組みは AMR 対策アクションプランで掲げられた 6 つも目標に基づき行われていますが 本日は その目標の 1 つである 動向調査 監視 における抗菌薬の使用動向調査についてご説明させていただきます 医薬品の使用状況を把握する ものさし まず 医薬品の適正使用や合理的な使用を評価するためには ものさし が必要です 従来 その ものさし として医薬品の使用本数や力価 売上高などが用いられてきました 一方 1 つの国際一般名 (international nonproprietary name;inn) または医薬品一般的名称 (Japanese accepted name;jan) には 併売品やジェネリック医薬品など複数の商品名や規格が存在します そのため 1 つの医薬品の使用量を把握するには それらすべての使用量を把握し 合算しなければなりません また 同じ薬効に対して比較する場合には 医薬品ごとに維持量が異なるため 単に使用本数

や力価の合算では評価できません さらに 抗菌薬では その構造に応じて細かく分類されており 比較するには分類ごとに合算する必要があります これらを解決する ものさし として考えられた指標に AUD(antimicrobial use density) DOT(day of therapy) DID などがあります ( 図 1) AUD は 一定期間における抗菌薬の力価総量を世界保健機関 (WHO) で定義された DDD(defined daily dose) で除した値 (DDDs) を在院患者延数で補正した値 であり 単位は DDDs/100 bed-days や DDDs/1000 patient-days などで示されます 欧州を中心に使用されている AUD は WHO で提唱されている測定方法であり 算出が比較的容易で 力価で算出するためコスト計算にも利用できる利点があります 一方 DDD は医薬品の主な適応症に対する成人の 1 日仮想平均維持量として設定されているため 小児や高齢者 腎機能低下患者等には適用できず 定義された DDD が自国の承認用量や推奨量と異なる場合 過少あるいは過大評価を招きます また 力価総量を DDD で除したものを 1 日につき千人当たりの人口で補正した DID(DDDs/1000 inhabitants/ day) という指標も欧州を中心として使用されており 他国との比較に用いられ 後ほどお示しする値も DID を示しています DOT は 一定期間における抗菌薬の治療日数の合計 (DOTs) を在院患者延数で補正した値 であり 単位は DOTs/100 bed-days や DOTs/1000 patient-days などで示されます アメリカで標準的な指標として用いられており 小児や腎機能低下患者等にも適用できますが 投与量の概念が入らず 併用患者の投与も重複して数えることから治療期間を厳密に推定できません また 分母に在院患者延数ではなく入院患者数を用いる場合もあり 耐性率との相関は入院患者数を分母とした場合の方が良好という報告があります その他にも ICU など病棟単位での評価に有用とされている 各患者に投与された抗菌薬の投与日数の合計 を示す LOT(length of therapy) や AUD と DOT の比や DOT と LOT の比を取るなどして 抗菌薬適正使用を評価しようとする試みも進んできています また これらの値は 従来は入院患者を対象としていましたが 外来患者や地域における経口薬も含めて使用状況を評価するためには 分母を外来患者数や住民とするなど 対象とする範囲や目的に応じて適切に選択する必要があります これまでに明らかにした日本における抗菌薬の使用動向我々はこれまでに日本病院薬剤師会を通じて調査した日本における注射用抗菌薬の使用動向や厚生労働科学研究で構築した抗菌薬使用動向調査システム (JACS: Japan Antimicrobial Consumption Surveillance, https://www.jacs.asia) のなかで販売量に基づく経口抗菌薬も含めた抗菌薬の使用動向 レセプト情報 特定健診等情報データベース (NDB) を用いた年齢別における抗菌薬の使用動向を明らかにしました 耐性菌や抗菌薬使用の動向を他国と比較する場合 医療費や病床数など様々な背景が異なることから 単に耐性菌の耐性率や発生率と AUD などの数値を示すのではなく 日本におけ

る医療環境を示すことが大切だと考えました そこで 2013 年に報告した内容では 日本における医療機関を機能別に分類し 施設特性や感染対策における環境を示しました ( 表 1 2 3) 例えば 高度医療を提供する特定機能病院では 移植医療や血液腫瘍を扱うため 必然的に全体の抗菌薬だけでなく カルバペネム系などの広域抗菌薬の使用割合も多くなります 一方 特定機能病院では 感染対策に関わるスタッフの数も多くなっています しかしながら 届出制 など 抗菌薬管理プログラムの有無についてはいずれにおいても変化がなく 質的な評価が必要であることが考えられました 2013 年の報告では注射用抗菌薬のみ解析を行ったため 2016 年の報告では販売量に基づき 全ての抗菌薬の使用状況を明らかにしました ( 図 2) 日本における抗菌薬全体の使用量は 経口 注射薬共に 2009 年と比較して増加傾向にあり EU 諸国 (21.6 DID 2014 年 ) 韓国 (21.7 DID 2012 年 ) アメリカ (24.9 DID 2014 年 ) と比較してもそれほど大きな違いはありませんでした 一方 使用量の約 9 割を経口薬が占めていました 使用比率では わが国では欧州と比べてペニシリン系が少なく 特にセファロスポリン系 マクロライド系 キノロン系が高いことも明らかになりました ( 図 3) また キノロン系薬では 特にガチフロキサシン ガレノキサシン シタフロキサ

シン モキシフロキサシンといった経口の第 3 世代フルオロキノロンの使用量が増加し 広域な経口キノロン系薬の安易な使用も懸念されますが 高齢者の増加に伴う肺炎患者の増加なども影響していることが要因として考えられます 注射用抗菌薬では 第 1 世代セファロスポリン系薬が増加しており 手術件数の増加に伴う手術部位感染予防薬の適正使用が推進されていることや メチシリン感受性黄色ブドウ球菌が判明した際における抗 MRSA 薬からのデ エスカレーションの推進が影響していることが推察されました NDB を用いた調査では 販売量データと異なり 使用した患者背景で分類できるため 年齢を 5 歳毎に分類して使用状況を明らかにしました ( 図 4 5) 経口抗菌薬の使用状況は小児や高齢者で多く 注射用抗菌薬は高齢になる程使用されています また これらの値は医薬品の主な適応症に対する成人の 1 日仮想平均維持量である DDD で補正しているため 実際の小児や高齢者に対しては過少評価をしている可能性があり 実際はさらに使用されている

ことが推察されます また 小児や高齢者において 第 3 世代セファロスポリン系薬 マクロライド系薬 キノロン系薬の使用頻度も多いことも明らかとなり 個々の患者に対するさらなる適正使用の推進が求められます さいごに 我々が使用量の調査研究を始めて約 10 年が経とうとしていますが ようやくサーベ イランスを行う土台ができあがりつつあります 今後は これを確実なものとするため 継続的に実施できる体制を AMRCRC を通じて構築したいと思っています 抗菌薬使用量 の把握は 上述したように繁雑な作業を伴い 算出された値が妥当かどうか判断する必 要があり 専門的知識を持った薬剤師の関与が不可欠です 現在 様々な情報源がある 中で それぞれの情報源から効率良く目的に応じた抗菌薬使用量を算出できる プログラム ( Antimicrobial Consumption Aggregate System ( ACAS: http://www.meiz.co.jp/acas.html)) も開発しました 今後は得られた値をより簡便に フィードバックできる環境を提供し 各医療機関や地域などで利活用できる方法論の確 立を目指したいと思っています AMR 対策における抗菌薬の適正使用は 使用量を単に減らすことが目標となってはいけません 患者さんへのアウトカム ( 治療効果の向上 副作用の低減 ) を最優先に考えるべきです さらに 専門知識を持った多職種から成るチームが専門としない医師の処方行動を支援した結果が伴うことが重要です 日本における感染症診療や AMR 対策が世界に誇れるものであることを示す一助となるよう これからも全国の感染症診療や感染対策に関わる皆さんと努力していきたいと思います 最後に 私が調査結果を残せたのは 協力してくださっている全国の薬剤師のおかげであり 多くのご助言やご支援の上に成り立っています 深謝するとともに 今後とも変わらぬご支援をお願いしたいと思っています