1 施策等名 : 自衛官の再任用制度 平成 19 年度政策評価書 ( 総合評価 ) 担当部局 : 人事教育局人事計画 補任課実施時期 : 平成 19 年 10 月 ~20 年 3 月 2 政策体系 政策体系番号施策名施策の目的施策の目標備考 7-8 任用効果的かつ効率的な防衛省自衛隊の効率的 効果的かつ透明性の高い防運営の推進衛行政を推進するため 高度の専門性に裏打ちされた組織を維持 整備する 3 施策等の概要 (1) 概要と必要性自衛官の再任用制度は 高齢者活用等の観点から 定年退職後も自衛官として働く意欲と能力のある者を選考により採用するものであり 一般職における再任用制度導入に併せて 自衛官の特殊性を加味した上で 平成 13 年に導入したものである これは 我が国が高齢化する中 自衛官についても民間や他の公務部門と同様に 高齢者の労働力の活用を図っていく必要があること 将来予想される厳しい募集環境や今後の再就職の在り方を考慮すれば 自衛隊で長年かけて育成した者のうち 引き続き自衛官として働く意欲と能力のある者を自衛隊の精強性に支障を与えない範囲で 貴重な人的資源として公務内で活用していくことは適切と考えられること 雇用と年金の確保を可能な限り図っていく必要があること 自衛官の定年退職後における人生設計の選択肢をより広めるものであること といった観点を踏まえたものである 本件については 平成 15 年度にも総合評価を行っており その際 引き続き試行的に再任用制度の運用を行い 5 年程度の期間を経た後 再任用が自衛隊の精強性に与える影響等について検証を行い 再任用制度の適正な在り方について検討 評価を行っていくこと としており 今般再評価を行うものである (2) 実現しようとする目標定年退職者等の人的資源を有効活用するとともに 退職後の生活の基盤を提供することにより自衛官が安心して職務に専念する環境を整えること
(3) 目標を達成する手段 方法退職後 選考により 1 年以内の任期を定めて採用し 最長で 65 歳までの任用を可能とするものであるが これを今般 50 代の自衛官に限り 3 年までの任期を可能とするものである 任用するにあたり 考慮する点は以下の通りである 自衛隊の精強性を損なうことのないよう 希望者の勤務評定 最新の体力検定結果等により再任者を精選する 教育 研究 補給等の業務のうち体力への依存度が比較的小さいものに限定し 退職後引き続いた任用に限定する 給与としては 各階級ごとの再任用隊員用の俸給と一部の手当を支給する これは退職時の 5 割から 6 割の水準の給付となり 若年定年退職者給付金と合わせると退職時の給与の約 8 割の水準となる 4 評価 (1) 施策等の効果 自衛官の再任用実績 ( 在職者数 ) は 本制度を導入した平成 13 年度は 31 人 前回政策評価を行った平成 15 年度は 96 人 平成 20 年 3 月時点では 233 人 ( 予定 ) であり 定員に占める割合等 詳細は次の表のとおりである 再任用者の階級は 1 佐から曹長の範囲である 年度 ( 平成 ) 定員採用者数在職者数定員に占める割合 19 年度における各年度採用の在職者数平均在職期間 13 258,581 31 31 0.01% 17 約 4.7 年 14 258,290 37 63 0.02% 27 約 4.3 年 15 255,040 35 96 0.04% 28 約 3.5 年 16 253,180 36 121 0.05% 28 約 2.6 年 17 251,582 35 141 0.06% 31 約 1.9 年 18 251,111 35 167 0.07% 33 約 0.9 年 19( 注 ) 248,647 69( 注 ) 233( 注 ) 0.09% 69( 注 ) - ( 注 ) 平成 19 年度については 3 月末時点の予定の数値であり 9 月 1 日時点の実績は採用者数 25 人 在職者数 189 人 19 年度末ので採用者累計は 278 人となる予定 再任用者が着任した主なポストは 以下の業務のうち体力への依存が比較的小さいスタッフ的なポストが中心である 補給 ( 約 40 件 ) 教育( 約 30 件 ) 整備( 約 20 件 ) その他研究 総務 会計 人事 募集 厚生 給養 援護 情報 保全 検査 通信 電子 輸送 施設 気象 海象 衛生等 各年度の再任用者の平均在職期間は表に記載のとおりであり 平成 13 年度採用から平成 18 年度採用までの再任用者全体の平均在職期間は約 3 年
(2) 効果等の検証 1 再任用実績は上記 (1) のとおりであり 母集団の数が非常に大きいため自衛官の定員に占める割合は微少 (0.1% 未満 ) であるが 在職している再任用者数は年々増大していることが分かる 2 昨年度実施した自衛官に対するアンケート調査の結果は 概要以下のとおり 定年後 防衛省職員としての採用希望の有無 36% 12% 3% 10% 6% a. 自衛官への再任用を希望 b. 事務官等への再任用を希望 c. 定年退職時 事務官等への転換を希望 d. 非常勤務職員への採用を希望 e. 希望しない f. 分からない 33% 退職後の再任用制度を利用することについて ( 複数回答可 ) 9% a.65 歳までの収入を確保するために利用したい b. 仕事で満足感を得るために利用したい 18% 11% 40% c. その他の理由で利用したい d. 給与等処遇が下がるので利用したくない e.1 年毎の任用更新制で生活設計上不安なので利用したくない f. その他の理由で利用したくない g. その他 8% 2% 12%
4% 26% 18% 17% 再就職先決定時の重視事項 ( 複数回答可 ) 自衛官 OB 現職自衛官 10% 27% 4% 26% a. やり甲斐 誇り 23% 13% 27% 35% 18% 17% b. 在職時の知識経験を活かすこと c. 肉体的または精神的な負担が少ない d. 給与 収入 e. 特にない 退職後 何歳まで働きたいか ( 現職自衛官 ) 10% 3% 15% 72% a.60 歳 b. 年金が支給される 65 歳まで c. 再就職しない d. その他
隊務運営や部隊の指揮 統率に与える影響等については 実際に再任用された自衛官に対する印象として次のような意見が あった プラス面 : 知識 経験 技術が豊富なので 頼れる 後方支援に回せば 若い隊員を現場に回せる マイナス面 : 階級が高く 身分の扱いに困る 組織の新陳代謝が遅れる 上記アンケートの結果から 多くの自衛官が 年金が支給される65 歳まで勤労を続け収入を得ることを望んでおり そのための手段の一つとして 再任用制度は有効な施策であると考えられる 自衛隊の精強性維持への影響については 組織の新陳代謝が遅れる 等の指摘はあるが 再任用者希望者の適性を審査し 体力検定においても所定の成績を修めた者を精選して採用しているところであり いわゆる後方の業務のうち体力への依存が比較的小さいスタッフ的なポストに適用するという運用上の工夫もあり 現在のところ大きな障害は生じておらず 逆に再任用隊員を後方支援の業務に配置することにより若い隊員を現場に回せるという利点を有している また 現在までは補給 教育 整備等を中心に再任用を行ってきているが 再任用の対象となり得るポストは他にも多数存在するところである ( 例 : 研究 総務 渉外 広報 法務 会計 監査 人事 募集 厚生 給養 援護 警務 情報 保全 検査 監察 通信 電子 輸送 施設 気象 海象 音楽 衛生等 ) 以上から 再任用制度は 自衛隊の精強性を損なうことなく 定年退職者等の人的資源を有効活用するとともに 退職後の生活の基盤を提供することにより自衛官が安心して職務に専念する環境を整えるという目標に沿った効果を上げていると言えるところであり その適用を更に促進 拡大する余地があると考えられる (3) 施策等の有効性 上記 (1) 及び (2) のとおり 自衛官の再任用制度は定年退職者等の人的資源を有効活用するとともに退職後の生活基盤の安定を確保する上で有効な施策の一つであり 効果的かつ効率的な防衛省自衛隊の運営の推進という施策の目的に適っており 効率的 効果的かつ透明性の高い防衛行政を推進するため高度の専門性に裏打ちされた組織を維持 整備するという施策の目標に寄与していると考えられる (4) 方策等の検討 平成 13 年の本制度導入当初は 以下の理由により1 年以内の任期を更新していくこととしていた 1 年を超える任期を設定することは 定年年齢を超えた者の体力等が一般に大きく変化することを勘案すれば 自衛隊の精強性を確保する観点から適当でない 定年退職後においては 生活の過ごし方に対する考え方が多様化することが考えられることから 辞職せずとも1 年といった短期間で公務から自動的に引退できる仕組みを設けることが適当である 退職管理計画 採用計画などの人事計画と調和させながら 円滑に再任用を実施していく上では 任期を1 年とすることが適当である
また 制度運用を本格化するに当たり 実際の再任用が自衛隊の精強性に与える影響を分析する必要があることから 一定の試行期間を置くという考えであった 平成 13 年度の制度導入から7 年間にわたる制度運用の実績において 以下の点が明らかになったところである 教育 研究 補給といったいわゆる後方の業務における体力への依存度が低いスタッフ的なポストに再任用者を配置しても的確に隊務が遂行されており 自衛隊の精強性が低下することはないと考えられる 再任用者の実際の在職期間は 平成 13 年度の再任用者から18 年度の再任用者まで全体で平均約 3 年であり 特に15 年度採用者は約 3.5 年 14 年度採用者は約 4.3 年 13 年度採用者は約 4.7 年に及んでいる 現役自衛官中の潜在的な再任用希望者の意識としては 定年退職後 多様なライフスタイルに鑑み1 年という短期間で再任用制度を使用することが便宜という意識はあまりなく 逆に1 年という短期間ではなく2~3 年安定して収入が得られるならば再任用に応じたいという意見が多数である 自衛隊としても かかる意識の下で再任用制度により業務に従事するあまり高齢でない自衛官については 2~3 年周期の人事サイクルを適用することとしても特段の支障はない 以上から 若年で退職している自衛官については より長期の任期を設定しても自衛隊の精強性に影響を与えないと評価されることから 50 代での再任用に限り 再任用の任期を長期化することが適切である 具体的な任期については 通常の人事サイクルが2~3 年であること 極端に長期の任期とすると再任用ポストの固定化により柔軟な人事運用が困難になるおそれがあることを考慮し 3 年以内の任期とすることが適切である また 60 代での再任用については 自衛隊の精強性への影響を考慮し 現行どおり1 年以内の任期更新制を維持することが適切である * なお 平成 18 年 4 月以降 雇用と年金との間に収入の空白期間が生じないように 私企業においては 65 歳未満の定年の定めをしている事業主には継続雇用制度 ( 再雇用制度及び勤務延長制度 ) の導入等が義務づけられているところであり ( 高年齢者雇用安定法の改正による ) 自衛官の再任用制度の拡充はかかる私企業の取り組みと基本的な方向性を一にするものである 5 今後の対応 自衛官の再任用制度は自衛隊法 ( 昭和 29 年法律第 165 号 ) に規定されているところであり 上記 4(4) を実現するため 第 169 国会 ( 常会 ) に同法の一部改正法案を提出する その他の参考情報別紙のとおり