06/06/4 応用流体力学 III. 地圏流体力学 東京大学工学部システム創成学科 (S セメスター 金 4 限 )
この講義で学習すること 水路の水理学 ( 今回 ) 管路流れ 開水路流れ 上 下水道 河川の流れ 湖沼の静振 地下の水理学 ( 第 ~3 回 ) ダルシー則 水理地質構造 ポテンシャル流れ 井戸水理 連成プロセス 地表水と地下水の相互作用 ( 第 4 回 ) 水路と地下水の交流 淡水レンズ 潮汐応答 堤防の安定性
地圏流体力学 (): 水路の水理学 水道整備と治水は 古代から現代に至るまで 社会インフラの最重要テーマの一つ 東京の水需要をどうやって満たすか? 洪水対策は どうする? 近世まで運河は重要な都市インフラ 現代では 水環境との調和も重視されるようになってきている 植物群落や魚類のことを考えた河川設計は どうしたらよいのか?
東京の河川と水道の略史 利根川の東遷 縄文時代約 000 年前江戸時代 防災効果 / 水運の経済効果 783 年には 浅間山噴火によって火山灰が降下し 利根川が浅くなって いろいろ問題が起こった 国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所 ttp://www.ktr.mlit.go.jp/tonejo/t onejo0085.tml
東京の河川と水道の略史
東京の河川と水道の略史 ttp://mizuiku.su ntory.jp/kids/stu dy/k009.tml ttps://www.waterworks.metro.tokyo.jp/kouou/pr/tamagawa/
東京の河川と水道の略史 地下水利用と公害の時代 遠藤ほか(00)
東京の河川と水道の略史 現在の水道水系 ttps://www.waterworks.metro.tokyo.jp/sui dojigyo/torikumi/plan004/0.tml
東京の河川と水道の略史 環境 野川の景観 ( 小金井市観光まちおこし協会 ) 立会川にトンネル湧出地下水を流したところ 水質向上によりボラが復活 (003 年ごろ ) (ttp://www.touc-ilove.co.jp/bora/kyonokawa.tm)
東京の上水道概況 東京都水道局の管轄は 3 区及び多摩地区 6 市町 ( 武蔵野市 昭島市及び羽村市は未統合地域 ) 延長 ~7,000km 地球約 /3 週 流量 ~4. 0 6 m 3 / 日 荒川や多摩川の.5 倍程度の流量
東京都区部の下水道概況 東京都下水道局の管轄は 3 区 延長 ~6,000km 地球約 0.4 週 流量 ~4.5 0 6 m 3 / 日 荒川や多摩川の.5 倍程度の流量 区部のみで上水道より多いのは 合流式であることや地下水の混入の影響がある
水路設計のポイント 代表的な仕様と制約の例 必要な流量 水路の材質 ( 粗度係数 価格 寿命 見た目 環境 ) スペース 立地 ( 長さ 空間配置 形状 ) 安全性 ( 堤防 ネットワーク冗長性 耐震性 ) 物理的側面 エネルギー 流量 運動量 水面形
管路編
Bernoulli の定理 管水路のエネルギー 単位体積あたりエネルギーの保存単位質量あたりエネルギーの保存 u g. u gz p const p z const. g z 平均流速 = を使って一次元化 基準面 um g z p g const. r u rdr 0 a um. (.0 と近似することも )
管水路のエネルギー 現実には摩擦等があるので Bernoulli の定理を修正 u m g p z f l const. g 高さの次元を持つ 水頭と呼ぶ エネルギーを水の高さで表す 速度水頭 位置水頭 圧力水頭 損失水頭 f : 摩擦損失水頭 l : その他の損失水頭 ( 形状損失水頭など ) 全エネルギー水頭 ピエゾ水頭 H p H E z p u m g z p g g 細い管を立てたときの 水位 を示す 原則 これが高い方から低い方に流れる
管内流の流速と摩擦抵抗の基本 Q Q 平均流速 = = Darcy-Weisbac の式 = = を摩擦損失係数と呼ぶ 摩擦損失水頭
円管の摩擦損失係数 層流 (Hagen-Poiseuille の流れ ) u m 乱流 a p a gf a g lum f 8 x 8 l 8 l 4ag.5.03log0 f 3.7d Re f f 3 64 au Re Colebrook の式 ( 一例 ) m : 相当粗度 d : 直径 a 繰り返し計算で求める
ムーディ線図 ttps://en.wikipedia.org/wiki/moody_cart
一般的な管路断面への拡張 径深と潤辺 断面積潤辺 A S 径深 f f R l u 4a g m A S f f l u 8R g m 円管のみ適用可 一般的な管路断面で適用可 断面積 A 潤辺 S
水路の平均流速公式 Manning の公式 ( 完全粗面乱流領域 ) 3 um R I n Manning の粗度係数と 摩擦損失係数の関係 n : Manning の粗度係数 I : 動水勾配 = ピエゾ水頭の勾配 R : 径深 f 8gn R 3 Manning の粗度係数 m 3 s 鋼管 鋳鉄管 コンクリート管 木管 新品普通滑らか粗滑らか粗 0.0-0.0 0.03-0.05 0.0-0.03 0.04-0.06 0.00-0.0 0.03-0.05 違いは少ないように見えるが n の範囲としては 63(=0.06 - )~00(=0.00 - ) 速度は 40% くらい違うことになるので 油断してはいけない
エネルギー保存運動量保存 管路の形状損失 ( 急拡 出口 ) p u p u g g g g m m Q u u A p p m m se 質量保存 Q Au A u m m se A A u g m f se A A 出口では A f se より 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
管路の形状損失 ( 急縮 ) エネルギー保存 運動量保存 p u p u g g g g 3 m3 m Q u u A p p m3 m 3 3 sc Q A u A u 質量保存 m 3 m3 sc A A 3 u g m f sc ただし A 3 A A 3 は実験的に求める必要がある この影響は小さい ここが重要 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
円管路の急拡 / 急縮の比較..0 形状損失係数 0.8 0.6 0.4 急縮 急拡 0. 0.0 0.0 0. 0.4 0.6 0.8.0 管径比
管路の形状損失 ( 入り口 ) e f e u m g 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
管路の形状損失 ( 漸拡 / 漸縮 ) 漸拡 f f ge ge se u m g 漸縮 漸縮による損失は多くの場合 無視できる 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
管路の形状損失 曲がり/屈折 曲がり b um f b f b g 屈折 be m u f be g 玉井ほか 04 水理学-改訂版- 玉井ほか 04 水理学-改訂版-
管路計算のイメージ 入口 速度水頭 曲 曲 出口 エネルギー水頭 障害物 ピエゾ水頭 T 水車 各ポイントでの形状損失および管路での摩擦損失 水車やポンプでのエネルギーの授受を計算し 流れるかどうかや流れる場合の流量を計算する
開水路編 : 河川の流れ
開水路流れの分類 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
z 開水路流れのエネルギー D D ~ Bernoulli の定理 p g b z 比エネルギー b u p H z const. g g より um H b const. g B m ( まずは 摩擦などは無視 ) u Q Q E H b g g A gb
E 開水路流れの水深と比エネルギー 同じ流量 比エネルギーで つの水深があり得る 最小の比エネルギーとなる水深を限界水深という c Froude 数 3 Q 3 gb 0 Q gb このとき 速度水頭は u Q c u g gb mc gc mc c Fr B Q g u u m mc E E c E Q gb 流速と限界流速の比 射流領域 c Fr 限界流 E c 常流領域 3 射流 : 水面が低くて速い流れ Fr 常流 : 水面が高くて遅い流れ c
比エネルギー一定の開水路流れの流量と水深の関係 Q gb E Q c Q gb E 3 g E 3 E 0 Q 射流領域 つまり限界水深のとき最大流量となる c 常流領域
Bernoulliの定理 um H b const. g 水面型の計算 より H Q x x g B x x b 0 b x Fr x 射流の場合は 水深がどんどん低小さくなる 常流の場合は 水深がどんどん大きくなる 限界流の場合は 水深が不定
突起上の流れ ( 越流 ) s x Fr x より s s Fr s x x x Fr x 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
開水路流れの平均流速公式 再び Manning の式 3 um R I n 径深で定義されているので 開水路でも使える 河川は 植生の有無や河床の状況などによって 値に幅がある 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
水面型の計算 ( 摩擦がある場合 ) Bernoulliの定理 ( 修正 ) um H b f const. g より H Q b f x x g B x x x 0 b f b n Q 4 3 x Fr x x Fr x R A 等流のとき B x 0 D ~ n 広幅の長方形断面なら 0 b x b n Q 4 3 x Fr x B Q B 0.3 f f f l u 8R g 8gn R 3 m
水面型と水路勾配の分類 b n Q 3 4 c 3 x x B 射流か常流かで水面型が変わる 摩擦損失なしのときと形状が全然違うことに注意! 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
水面型と水路勾配の分類 b 0 x 3 c x 0 3 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
水面型と水路勾配の分類 b 0 x 3 c x 0 3 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
その他の水面形の例 1 x c 3 b x 玉井ほか 04 水理学-改訂版- 0 0 3
その他の水面形の例 2 x x c 3 b x 0 0 3 玉井ほか 04 水理学-改訂版- c 3 n 4 3 Q B
湖面の動的な水面変化 ( 静振 ) H T nd mode st mode Scematic lake L L gh L, T,... gh 湖面の水位は一定ではない 気象条件にもよるが 形状に依存した定常波が発生しているため 時々刻々と場所ごとに水位が変化している 岸壁で振幅が大きくなる特徴がある 湖水の混合にも影響しており 生態にも関係がある
水深 潤辺 S 水位と通水能力 d cos d 流積 d d d d A cos sin sin 8 径深 d R 4 Manning の式より sin 3 d 3 sin um R I n n 4 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
水位と通水能力 満管との流速比 u u m mp sin 3 満管との流量比 Q Q p sin sin 3 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
植物群落の影響 植物があると 流れが乱れ Manning の粗度係数としては大きくなる 速度は下がり 水位が上がる 損失水頭 fp C D l g : 植物の面積当たり本数 Q B : 植物 本あたりの流路方向断面積 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 -
魚道の設計 魚の遊泳能力よりも流速を小さくする 魚の突進速度の経験式 魚の遊泳継続可能時間 U : 遊泳速度 U Max T 0 U 0.4 7.4L [min] [m/s] L : 体長 玉井ほか (04) 水理学 - 改訂 版 - : 魚依存パラメータ ( 突進速度付近で -0.6~-0.3) : 魚依存パラメータ ( 突進速度付近で -0.~.7) 4.5 0000 速度 [m/s] 4.0 3.5 3.0.5.0.5.0 0.5 0.0 0 0. 0. 0.3 0.4 0.5 0.6 体長 [m] 遊泳可能距離 [m] 000 00 0 0 0. 0. 0.3 0.4 0.5 0.6 体長 [m]
この講義で学習すること 水路の水理学 ( 今回 ) 管路流れ 開水路流れ 上 下水道 河川の流れ 湖沼の静振 地下の水理学 ( 第 ~3 回 ) ダルシー則 水理地質構造 ポテンシャル流れ 井戸水理 連成プロセス 地表水と地下水の相互作用 ( 第 4 回 ) 水路と地下水の交流 淡水レンズ 潮汐応答 堤防の安定性